説明

複合構造体

【課題】繊維及び発泡体を含み、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが小さく、負荷が解放された場合に、形成された沈み込み部が円滑に復元される、板状の複合構造体を提供する。
【解決手段】本発明は、互いに接着している繊維(2)と、繊維どうしの空隙に配され且つ繊維(2)に接着している発泡体(7)とを含む板状の複合構造体(1)であって、繊維は、複合構造体の一面側から他面側に配向しており、発泡体の含有量は、繊維、発泡体及び接着剤の合計100質量%に対して、7〜65質量%であることを特徴とする。発泡体の大きさは、JIS Z8801に準ずる、目開き19.0mmのふるいを通過する大きさであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維及び発泡体を含む板状の複合構造体に関する。本発明は、更に詳しくは、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが小さく、負荷が解放された場合に、負荷により生じた沈み込みが回復した後の沈み込み量が小さい複合構造体に関する。本発明の複合構造体は、床用部材、壁用部材等として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、繊維を含む成形体は、車両の床や、家屋等の建物の天井、壁、床等に配設される、衝撃吸収材、吸音材、断熱材等として用いられている。
特許文献1には、非弾性捲縮短繊維及び熱接着性複合短繊維が、所定の割合で混綿され、その後、加熱により短繊維どうしが交差した状態で接着された繊維基材であって、熱接着性複合短繊維と非弾性捲縮短繊維が、繊維基材の厚さ方向に配列している繊維基材が、厚さ方向にプレスされた板状の繊維構造体を含む吸音材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−89620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された繊維構造体によれば、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが大きいため、負荷が解放されても、形成された沈み込み部が十分に回復されず、その表面を平滑に保つことができなかった。
本発明の目的は、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが小さく、負荷が解放された場合に、負荷により生じた沈み込みが回復した後の沈み込み量が小さい、板状の複合構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、多数本の繊維と、自動車のシートクッション等に用いられている樹脂発泡体の小片とを一体化させて、繊維を、その厚さ方向に平行に、即ち、その一面側から他面側に配向させた板状の複合構造体とすることによって、上記課題が解決される知見を得た。
本発明は、以下に示される。
1.互いに接着している繊維と、繊維どうしの空隙に配され且つ繊維に接着している発泡体とを含む板状の複合構造体であって、
繊維は、複合構造体の一面側から他面側に配向しており、
発泡体の含有量は、繊維、発泡体及び接着剤の合計100質量%に対して、7〜68質量%であることを特徴とする複合構造体。
2.発泡体が、JIS Z8801に準ずる、目開き19.0mm(以下、呼び寸法を意味する)のふるいを通過する大きさである上記1に記載の複合構造体。
3.厚さが2〜100mmである上記1又は2に記載の複合構造体。
4.JIS L1021に準じて、前記複合構造体の表面に、220kPaの荷重を負荷したとき、荷重の負荷を解放した直後の複合構造体の沈み込み率(t2/t1)及び荷重の負荷を解放して1時間経過後の複合構造体の沈み込み率(t3/t1)が、それぞれ、下記式(1)及び(2)を満足する上記1乃至3のいずれか一項に記載の複合構造体。
(t2/t1)×100>50.00 (1)
(t3/t1)×100>87.00 (2)
(式中、t1は、荷重を負荷する前の複合構造体の厚さ、t2は、荷重を負荷した直後の複合構造体の厚さ、t3は、荷重の負荷を解放してから1時間経過後の複合構造体の厚さである。)
【発明の効果】
【0006】
本発明の複合構造体は、多数本の繊維及び発泡体を含む弾性体であるので、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが小さく、負荷が解放された場合に、負荷により生じた沈み込みが回復した後の沈み込み量が小さく、即ち、耐久性(外観性、形状安定性等)に優れる。
発泡体が、JIS Z8801に準ずる、目開き19.0mmのふるいを通過する大きさである場合には、上記効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の複合構造体の断面構造を示す模式図である。
【図2】本発明の複合構造体において、繊維が整列していることを示す斜視図である。
【図3】本発明の複合構造体において、繊維が年輪状に配されていることを示す斜視図である。
【図4】実施例及び比較例で用いた角形容器を示す模式図である。
【図5】比較例5等で得られた複合構造体の断面構造を示す模式図である。
【図6】実施例における結果を利用して、発泡体の含有量と、厚さ減少値(t1−t3)との関係を示したグラフである。
【図7】実施例における結果を利用して、発泡体の大きさと、厚さ減少値(t1−t3)との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の複合構造体は、互いに接着している繊維と、繊維どうしの空隙に配され且つ繊維に接着している発泡体とを含む板状の複合構造体であり、その概略断面は、図1に例示される。即ち、図1の複合構造体1は、互いに接着している繊維2と、繊維どうしの空隙に配され且つ繊維に接着している発泡体3とを含み、繊維2は、複合構造体1の一面側から他面側に配向している。即ち、本発明の複合構造体1における繊維2の配向は、図1における上面側から下面側に向かって、縦方向又は斜め方向である。尚、本発明の複合構造体は、横方向に配向する繊維を含んでもよい。
【0009】
本発明の複合構造体の厚さは、目的、用途等により、適宜、選択されるが、好ましくは2〜100mm、より好ましくは5〜80mm、更に好ましくは30〜80mmである。
【0010】
本発明の複合構造体を構成する繊維としては、綿、ウール等からなる天然繊維、カーボン繊維や、熱可塑性樹脂を含む繊維等の合成繊維等が挙げられる。これらのうち、取り扱い性及びリサイクル性の観点から、合成繊維が好ましい。合成繊維に含まれる樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリピバロラクトン、ポリ乳酸(PLA)、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアクリレート等が好ましく、熱特性の観点から、ポリエステルを含む繊維が特に好ましい。ポリエステルとしては、リサイクル性、繊維形成性等の観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0011】
上記繊維は、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、抗菌剤、艶消し剤等を含んでいてもよい。
【0012】
上記繊維の形状及び大きさは、特に限定されない。
繊維の形状としては、直線状、曲線状、螺旋状、捲縮されたもの等とすることができ、繊維の先端がカールしていてもよい。
繊維の長さ(以下、「繊維長」という。)及び外径(以下、「繊維径」という。)は、複合構造体の厚さ等により、適宜、選択される。
好ましい平均繊維長は、複合構造体の剛性の観点から、5mm以上であり、より好ましくは5〜25mm、更に好ましくは5〜15mmである。
また、好ましい平均繊維径は、複合構造体の剛性の観点から、2〜19dtexであり、より好ましくは2〜12dtex、更に好ましくは2〜7dtexである。
上記の平均繊維長及び平均繊維径は、電子顕微鏡等により、測定することができる。
【0013】
本発明の複合構造体を構成する発泡体は、通常、樹脂発泡体であり、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂等の合成樹脂等からなるものとすることができる。
本発明においては、体圧分散性の観点から、軟質の樹脂発泡体が好ましく、複合構造体の表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いを小さくすることができ、負荷が解放された場合に、負荷により生じた沈み込みが回復した後の沈み込み量を小さくすることができることから、軟質ポリウレタンフォームが特に好ましい。
【0014】
上記発泡体の形状及び大きさは、複合構造体の厚さ等により、適宜、選択されるものであり、特に限定されない。複合構造体に含まれているときの発泡体は、圧縮されていてよいし、圧縮されていなくてもよい。
【0015】
発泡体の形状としては、多面体、球体、半球体、楕円球体、星形、不定形等とすることができる。
【0016】
発泡体の好ましい大きさは、JIS Z8801に準ずる、目開き19mmのふるいを通過する大きさであり、より好ましくは、目開き19mmのふるいを通過し、目開き4.75mmのふるいを通過しない大きさであり、更に好ましくは、目開き16mmを通過し、目開き4.75mmのふるいを通過しない大きさである。尚、目開き4.75mmのふるいを通過する、小さな発泡体を含んでもよいが、そのような小さな発泡体の含有量は、発泡体の全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1〜7質量%である。
尚、発泡体の最大長さは、複合構造体の厚さに対して、15〜65%に相当する長さであることが好ましい。
【0017】
本発明の複合構造体における発泡体の含有量は、複合構造体の剛性の観点から、繊維、発泡体及び接着剤の合計100質量%に対して、7〜68質量%であり、好ましくは15〜65質量%、より好ましくは20〜60質量%である。
【0018】
本発明の複合構造体において、繊維どうしは、互いに絡み合いつつ、あるいは、点又は線で接触しつつ、接着剤による接着層を介して接合している。また、繊維及び発泡体もまた、接着剤による接着層を介して接合している。接着層の構成材料は、特に限定されないが、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0019】
本発明の複合構造体は、板状であり、一面側から他面側に通気性の有無は、特に限定されない。好ましい態様は、繊維及び発泡体が、充填率を向上させつつ、高密度で集積した形態である。
【0020】
本発明の複合構造体は、上記のように、繊維が、その一面側から他面側に配向しており、図2に示すように、繊維2が規則的に配列した構造を備えることができる。
【0021】
また、本発明の複合構造体においては、図3に示すように、繊維どうしが接着しつつ、繊維2が、仮想軸21を中心として、年輪状に配列した構造を備えることができる。このような年輪模様は、複合構造体の表面を目視することにより、確認することができる。
上記構造は、例えば、繊維どうしが接着して形成されたシートが、仮想軸21を中心として同心円状に、幾重にも巻かれており、しかも、隣り合うシートにおいても、繊維どうしが接着している形態である。また、発泡体は、シートの中に含まれているか、あるいは、隣り合うシートの間に含まれている。尚、「繊維による年輪状に配列した構造」は、本発明の複合構造体において、必ずしも、円形又は略円形を反映するものではなく、半円状等の弧状であってもよい。
【0022】
年輪模様(仮想軸)の数は、複合構造体の一面側において、1つのみであってよいし、2つ以上であってもよい。
上記構造を有する複合構造体は、平面方向に張力を与えた場合に、変形及び破断が生じにくく、好ましい態様である。
【0023】
本発明の複合構造体は、その表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いが小さく、負荷が解放された場合に、負荷により生じた沈み込みが回復した後の沈み込み量が小さい構造体であり、JIS L1021に準じて、複合構造体の表面に、220kPaの荷重を負荷したとき、その負荷を解放した直後の複合構造体の沈み込み率[(t2/t1)×100](単位:%)及び負荷を解放して1時間経過後の複合構造体の沈み込み率[(t3/t1)×100](単位:%)が、それぞれ、下記式(1)及び(2)を満足するものである。
(t2/t1)×100>50.00 (1)
(t3/t1)×100>87.00 (2)
(式中、t1は、荷重を負荷する前の複合構造体の厚さ、t2は、荷重を負荷した直後の複合構造体の厚さ、t3は、荷重の負荷を解放してから1時間経過後の複合構造体の厚さである。)
上記式(1)において、好ましくは(t2/t1)×100>55である。
また、上記式(2)において、好ましくは(t3/t1)×100>90である。
【0024】
本発明の複合構造体の製造方法は、特に限定されないが、熱融着性繊維を含む原料繊維と、樹脂発泡体とを、例えば、貫通孔を有する容器、又は、貫通孔を有さない容器に、原料繊維が特定の方向に配向するように充填した後、充填物を加熱して熱融着性繊維の少なくとも一部を融解し、融解成分を接着剤として作用させて、繊維どうしを接着し、樹脂発泡体と繊維とを接着し、一体化物とする方法が挙げられる。
【0025】
この方法において、原料繊維は、熱融着性繊維を少なくとも1質量%含むことが好ましい。従って、原料繊維として、熱融着性繊維のみを用いてよいし、熱融着性繊維と、熱融着性を有さない繊維(以下、「通常繊維」という。)とを組み合わせて用いてもよい。後者の場合、熱融着性繊維及び通常繊維の使用量の割合は、繊維どうしの接着性、及び、複合構造体の剛性の観点から、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは35〜99質量%及び1〜65質量%、より好ましくは40〜98質量%及び2〜60質量%、更に好ましくは45〜95質量%及び5〜55質量%である。尚、熱融着性繊維の使用量が少なすぎると、複合構造体の形状が保持されず、剛性が得られない場合がある。
【0026】
熱融着性繊維は、その一部が熱により融解し、融解成分により、通常繊維どうしを接着することができるものであれば、特に限定されない。この熱融着性繊維としては、全溶融型繊維や、高融点樹脂及び低融点成分からなり、低融点成分が、繊維の表面の少なくとも一部に露出している複合型繊維(以下、「熱融着性複合型繊維」という。)等が挙げられる。これらの熱融着性繊維は、単独で用いてよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0027】
熱融着性繊維の形状及び大きさは、特に限定されない。
熱融着性繊維の形状としては、直線状、曲線状、螺旋状、捲縮されたもの等とすることができる。
熱融着性繊維の繊維長及び繊維径は、製造する複合構造体の厚さ等により、適宜、選択される。
好ましい平均繊維長は、複合構造体の剛性及び製造のしやすさの観点から、5mm以上であり、より好ましくは5〜25mm、更に好ましくは5〜15mmである。
また、好ましい平均繊維径は、複合構造体の剛性の観点から、2〜19dtexであり、より好ましくは2〜12dtex、更に好ましくは2〜7dtexである。
【0028】
上記方法において、熱融着性繊維として、熱融着性複合型繊維を用いることが好ましい。この場合、高融点樹脂の融点より低い温度で熱処理することにより、高融点樹脂の骨格を残しつつ機械的強度の低下を抑制することができ、複合構造体の剛性を高く維持することができる。
熱融着性複合型繊維としては、芯鞘型、サイドバイサイド型、断面が2以上の成分で分割されたオレンジ型、海島型等がある。熱融着性複合型繊維において、低融点成分の融点と、高融点樹脂の融点との差は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上である。
熱融着性複合型繊維における高融点樹脂、及び、上記の通常繊維の構成材料は、互いに同一であってよいし、異なってもよい。
【0029】
高融点樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトン等の他、共重合ポリエステルとすることができる。
【0030】
また、低融点成分としては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコ−ル等が挙げられる。
【0031】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸と、ジオールとを用いて得られたポリエステルであって、その融点が、好ましくは200℃〜300℃、より好ましくは230℃〜260℃のポリエステルである。
本発明においては、繊維どうしの接着性の観点から、共重合ポリエステルが好ましい。
【0032】
共重合ポリエステルは、好ましくは、ジカルボン酸と、ジオールと、ヒドロキシカルボン酸とを用いて得られたポリエステルである。
【0033】
ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’−ジカルボキシビフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、オクタデカン二酸、アイコサン二酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。尚、これらのジカルボン酸は、無水物であってもよい。
【0034】
ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族グリコール;ビスフェノールA、ビスフェノールS、4,4’−ビフェノールのエチレンオキサイド付加体又はプロピレンオキサイド付加体、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0035】
また、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、乳酸、オキシラン、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、グリコール酸、2−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、5−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、10−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0036】
尚、必要に応じて、上記のジカルボン酸、ジオール及びヒドロキシカルボン酸に加えて、3官能以上のカルボン酸、3官能以上のアルコールを用いてもよい。
3官能以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水べンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸等の芳香族カルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸が挙げられる。
また、3官能以上のアルコールとしては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、α−メチルグルコース、マニトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0037】
ポリウレタンとしては、分子量が500〜6000程度のポリオールと、分子量500以下の有機ジイソシアネートと、分子量500以下の鎖伸長剤と、を反応させて得られたポリマー等が挙げられる。
ポリオールとしては、ジヒドロキシポリエーテル、ジヒドロキシポリエステル、ジヒドロキシポリカーボネート、ジヒドロキシポリエステルアミド等が挙げられる。
有機ジイソシアネートとしては、p,p’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート水素化ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、鎖伸長剤としては、グリコール、アミノアルコール、トリオール等が挙げられる。
【0038】
熱融着性複合型繊維における高融点樹脂及び低融点成分の割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは25〜75質量%及び25〜75質量%、より好ましくは30〜70質量%及び30〜70質量%、更に好ましくは35〜65質量%及び35〜65質量%である。
【0039】
熱融着性繊維と併用される通常繊維は、本発明の複合構造体を構成する繊維として、上記した繊維を用いることができる。市販されている合成繊維のほか、雑綿又は反毛とよばれるリサイクル繊維を用いることができる。
通常繊維の繊維長及び繊維径は、製造する複合構造体の厚さ等により、適宜、選択される。
好ましい平均繊維長は、複合構造体の剛性及び製造のしやすさの観点から、5mm以上であり、より好ましくは5〜25mm、更に好ましくは5〜15mmである。
また、好ましい平均繊維径は、複合構造体の剛性の観点から、2〜19dtexであり、より好ましくは2〜12dtex、更に好ましくは2〜7dtexである。
【0040】
熱融着性繊維が、熱融着性複合型繊維である場合、通常繊維としては、好ましくは、熱融着性繊維における低融点成分の融点の最高温度よりも融点が高い材料からなる繊維が用いられる。そして、通常繊維の構成材料は、熱融着性複合型繊維における高融点樹脂と同じ種類であることが好ましく、同じ樹脂であることが特に好ましい。この態様とすることにより、剛性の安定した複合構造体を得ることができる。特に、通常繊維が、ポリエステルからなる繊維であり、熱融着性複合型繊維が、高融点樹脂としてポリエステルを、低融点成分として共重合ポリエステルを、それぞれ、備える繊維である場合、ポリエステルからなる繊維が、共重合ポリエステルにより十分に接着されてなり、表面に荷重が負荷された際の沈み込みの度合いの小さい複合構造体を得ることができる。
【0041】
通常繊維及び熱融着性複合型繊維の使用量の割合は、通常、熱融着性複合型繊維における高融点樹脂及び低融点成分の割合等により、選択されるが、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは40〜97質量%及び3〜60質量%、より好ましくは45〜92質量%及び8〜55質量%、更に好ましくは52〜88質量%及び12〜48質量%である。
【0042】
樹脂発泡体は、本発明の複合構造体を構成する発泡体として、上記した樹脂発泡体を用いることができる。市販されている樹脂発泡体のほか、例えば、自動車のシュレッダーダストから、回収された樹脂発泡体を、所定の大きさとしたものを用いることができる。
尚、樹脂発泡体を構成する樹脂の融点は、熱融着性複合型繊維を構成する低融点成分の融点より高いことが好ましく、ポリウレタンフォームが特に好ましい。
【0043】
樹脂発泡体の好ましい大きさは、JIS Z8801に準ずる、目開き19mmのふるいを通過する大きさであり、より好ましくは、目開き19mmのふるいを通過し、目開き4.75mmのふるいを通過しない大きさであり、更に好ましくは、目開き16mmを通過し、目開き4.75mmのふるいを通過しない大きさである。尚、目開き4.75mmのふるいを通過する、小さな発泡体を含んでもよいが、そのような小さな発泡体の含有量は、発泡体の全量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは1〜7質量%である。
【0044】
樹脂発泡体の使用量は、熱融着性繊維を含む原料繊維、及び、樹脂発泡体の合計を100質量%とした場合に、好ましくは7〜68質量%、より好ましくは15〜65質量%、更に好ましくは20〜60質量%である。
【0045】
通常繊維及び熱融着性複合型繊維からなる原料繊維を用いる場合、まず、原料繊維及び樹脂発泡体を、図4に示す容器(貫通孔を有してもよい)に、原料繊維が矢印の方向に配向するように、充填する。このとき、容器内の原料繊維及び樹脂発泡体を加圧しながら充填することができる。その後、充填物を、好ましくは、熱融着性複合型繊維を構成する低融点成分の融点以上であり且つ高融点樹脂の融点未満の温度で加熱することにより、通常繊維、熱融着性複合型繊維における高融点樹脂部及び樹脂発泡体を一体化することができる。図4に示す容器を用いる場合には、加熱方法は、特に限定されない。容器が貫通孔を備える場合には、貫通孔は、上面、下面及び側面のいずれにあってもよく、その貫通孔を利用して、熱風加熱することができる。充填物を加熱する際、及び、加熱後には、必要に応じて、加圧を行ってもよい。
以上のようにして、図1に示す複合構造体を製造することができる。
【0046】
また、他の製造方法としては、以下に例示される。
(X)熱融着性を有さない、通常の繊維と、樹脂発泡体とを、例えば、図4に示す容器に、原料繊維が矢印の方向に配向するように、充填した後、接着剤組成物を充填して、繊維どうしを接着させつつ、樹脂発泡体と繊維とを接着させ、一体化物とする方法。
(Y)熱融着性を有さない、通常の繊維を、接着剤組成物に接触させた後、この繊維と、樹脂発泡体とを、例えば、図4に示す容器に、原料繊維が矢印の方向に配向するように、充填し、繊維どうしを接着させつつ、樹脂発泡体と繊維とを接着させ、一体化物とする方法。
【0047】
上記方法(X)及び(Y)において、接着剤組成物としては、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、SBR系接着剤等を用いることができる。その形態は、特に限定されず、エマルション等とすることができる。
また、上記方法(X)及び(Y)において、樹脂発泡体と繊維とを一体化物する場合には、必要に応じて、混合物を加圧してもよい。
【0048】
本発明において、図3に示す構造の複合構造体を製造する場合には、例えば、板状の中空空間を有する成形用型であって、その中央付近の底壁に原料供給孔を有し、上面、下面又は側面に通気性の貫通孔を有する成形用型が好ましく用いられる。通常繊維及び熱融着性複合型繊維からなる原料繊維及び発泡体を、気流を利用する等により、原料供給孔から導入すると、成形用型の中空域における、原料供給孔から遠い空間部から、原料繊維及び発泡体が、順次、堆積するように、充填される。このとき、原料供給孔が、成形用型の中央付近にあるので、原料繊維は、原料供給孔を中心軸として同心円状に充填される。成形用型に、原料繊維及び発泡体の充填が完了すると、上記と同様にして、加熱を行って、図3に示す複合構造体を製造することができる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明について、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。また、以下の記載において、「部」及び「%」は、特記しない限り、質量基準である。
【0050】
1.原料成分
複合構造体の製造に用いた原料成分を、以下に示す。
1−1.繊維
(1)繊維(A1)
高安社製短繊維「SD150」(商品名)を用いた。繊維の材質はポリエチレンテレフタレート、平均繊度は3.3dtex、平均繊維長は10mmである。
(2)繊維(A2)
東レ社製芯鞘型熱融着性短繊維「T9611」(商品名)を用いた。芯部の材質はポリエチレンテレフタレート(融点230℃)であり、鞘部の材質は共重合ポリエステル(融点110℃)である。芯部及び鞘部の質量比は1:1である。また、平均繊度は2.2dtex、平均繊維長は10mmである。
1−2.発泡体
塊状の軟質ポリウレタンフォームを、破砕して得られた破砕物を用いた。発泡体の密度は0.015〜0.030g/cmである。
【0051】
2.複合構造体の製造及び評価
実施例及び比較例における複合構造体の製造に際して、図4に示す容器を用いた。
図4は、上部に開閉可能な蓋の付いた金属製の角形容器(内寸:250mm×250mm×36mm)の概略図を示し、いずれかの表面には、直径2mmの貫通孔が一定の間隔で設けられている。また、内寸幅36mmの空間部は、前面又は後面が可動できるようになっており、内寸幅30mmまで狭めることができる。
【0052】
実施例1
繊維(A1)40部、及び、繊維(A2)20部を、開繊機に2回通して、繊維混合物を得た。次いで、繊維混合物と、JIS Z8801に準ずる、目開き5.6mmのふるいを通過し、目開き4.75mmのふるいを通過しない発泡体40部とを混合し、原料混合物(合計5グラム)を調製した。
その後、原料混合物を、図4に示す角形容器の上部開口部から、繊維が図4における矢印方向に配向するように、押圧しながら充填した。
次に、原料混合物が充填された角形容器を、熱風乾燥機に入れ、熱風が、貫通孔内に流れるようにして、温度180℃で60秒間加熱した。その後、予熱を利用しつつ、加圧により、厚さを36mmから30mmとした。圧縮成形物の冷却を行い、板状の複合構造体を得た(図1及び図2参照)。
【0053】
得られた複合構造体の評価を、JIS L1021−6(2007)に準じて行った。評価方法を以下に示す。
静的荷重試験機を用いて、複合構造体の表面に220kPaの圧力を2時間負荷した。そして、圧力を負荷した直後の複合構造体の厚さ(t2)、及び、負荷を解放してから1時間経過後の複合構造体の厚さ(t3)を測定し、製造直後の複合構造体の厚さ(t1)を用いて、(i)厚さの減少値(t1−t2)、(ii)厚さの減少値(t1−t3)、(iii)加圧部における荷重の負荷を解放した直後の複合構造体の沈み込み率[(t2/t1)×100](単位:%)、及び、(iv)加圧部における荷重の負荷を解放して1時間経過後の複合構造体の沈み込み率[(t3/t1)×100](単位:%)を算出した。厚さの減少値(t1−t2)及び(t1−t3)が小さいほど、沈み込みからの回復が円滑であることを意味する。
以上の結果を、表1に示す。
【0054】
実施例2
目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0055】
実施例3
目開き16mmのふるいを通過し、目開き13.2mmのふるいを通過しない発泡体を用いた以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0056】
実施例4
繊維(A1)40部、繊維(A2)20部、及び、目開き22.9mmのふるいを通過し、目開き19mmのふるいを通過しない発泡体40部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0057】
実施例5
繊維(A1)20部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体60部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0058】
実施例6
繊維(A1)60部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体20部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0059】
実施例7
繊維(A1)70部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体10部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0060】
実施例8
繊維(A1)72.5部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体7.5部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0061】
実施例9
繊維(A1)15部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体65部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0062】
比較例1
発泡体を用いず、繊維(A1)及び繊維(A2)を、それぞれ、80部及び20部用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0063】
比較例2
繊維(A1)を用いず、繊維(A2)及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体を、それぞれ、20部及び80部用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0064】
比較例3
繊維(A1)10部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体70部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0065】
比較例4
繊維(A1)75部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体5部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、実施例1と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0066】
比較例5
繊維(A1)40部、及び、繊維(A2)20部を、開繊機に2回通して、繊維混合物を得た。次いで、繊維混合物と、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体40部とを混合し、原料混合物(合計5グラム)を調製した。
その後、原料混合物を、図4に示す角形容器の上部開口部から、繊維が図4における矢印方向に対して垂直に配向するように、充填した。
次に、原料混合物が充填された角形容器を、熱風乾燥機に入れ、熱風が、貫通孔内に流れるようにして、温度180℃で60秒間加熱した。その後、予熱を利用しつつ、加圧により、厚さを36mmから30mmとした。圧縮成形物の冷却を行い、図5に示す、板状の複合構造体を得て、実施例1と同様にして複合構造体の評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0067】
比較例6
繊維(A1)60部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体20部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、比較例5と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0068】
比較例7
発泡体を用いず、繊維(A1)及び繊維(A2)を、それぞれ、80部及び20部用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、比較例5と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0069】
比較例8
繊維(A1)20部、繊維(A2)20部、及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体60部を用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、比較例5と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0070】
比較例9
繊維(A1)を用いず、繊維(A2)及び、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体を、それぞれ、20部及び80部用いた(原料混合物の合計5グラム)以外は、比較例5と同様にして、複合構造体の製造及び評価を行った。評価結果を、表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
表1から明らかなように、比較例1〜4は、繊維の配向が縦方向である複合構造体の例であり、厚さの減少値(t1−t3)が4.00mmを上回り、負荷を解放して2時間経過しても、沈み込み部の回復が十分ではなかった。また、比較例5〜9は、繊維の配向が横方向である複合構造体の例であり、厚さの減少値(t1−t2)が15.00mmを上回り、また、沈み込み率(t2/t1)が50%未満であり、負荷を解放した直後における沈み込み部の回復が十分ではなかった。
一方、実施例1〜9の複合構造体は、厚さの減少値(t1−t3)が3.80mmを下回り、厚さの減少値(t1−t2)が14.60mmを下回り、沈み込みからの回復性に優れる。特に、実施例2、3、5及び6においては、厚さの減少値(t1−t2)及び(t1−t3)が、いずれも小さく、また、沈み込み率(t3/t1)が87.00%以上と高く、沈み込みからの回復性に優れていることが分かる。
【0073】
目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない発泡体を用いて、発泡体の含有量を変化させた製造原料を用いて、厚さ約30mmとした実施例2、6〜9を比較すると、図6から、発泡体の含有量を約20質量%とすると、厚さの減少値(t1−t3)が小さく、沈み込みからの回復性に、特に優れていることが分かる。
【0074】
発泡体の大きさを変化させた以外は、繊維及び発泡体の使用量の割合を同じとした製造原料を用いて、厚さ約30mmとした実施例1〜4を比較すると、図7から、実施例2及び3において用いた、目開き16mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない大きさの発泡体が好ましいことが分かる。
また、目開き11.2mmのふるいを通過し、目開き9.5mmのふるいを通過しない大きさの発泡体の含有量が、それぞれ、60%及び20%である実施例5及び6は、厚さの減少値(t1−t2)及び(t1−t3)が、いずれも小さく、沈み込みからの回復性に、特に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の複合構造体は、家屋等の建物、車両等の床に配設される部材、家屋等の建物の天井、壁等に配設する部材等として好適である。本発明の複合構造体は、例えば、衝撃吸収材、吸音材、断熱材等として用いることができる。
【符号の説明】
【0076】
1:本発明の複合構造体
2:繊維
7:発泡体
9:比較例で作製した複合構造体
19:角形容器
21:仮想軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接着している繊維と、該繊維どうしの空隙に配され且つ該繊維に接着している発泡体とを含む板状の複合構造体であって、
前記繊維は、前記複合構造体の一面側から他面側に配向しており、
前記発泡体の含有量は、前記繊維、前記発泡体及び接着剤の合計100質量%に対して、7〜68質量%であることを特徴とする複合構造体。
【請求項2】
前記発泡体が、JIS Z8801に準ずる、目開き19.0mmのふるいを通過する大きさである請求項1に記載の複合構造体。
【請求項3】
厚さが2〜100mmである請求項1又は2に記載の複合構造体。
【請求項4】
JIS L1021に準じて、前記複合構造体の表面に、220kPaの荷重を負荷したとき、該荷重の負荷を解放した直後の複合構造体の沈み込み率(t2/t1)及び該荷重の負荷を解放して1時間経過後の複合構造体の沈み込み率(t3/t1)が、それぞれ、下記式(1)及び(2)を満足する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の複合構造体。
(t2/t1)×100>50.00 (1)
(t3/t1)×100>87.00 (2)
(式中、t1は、荷重を負荷する前の複合構造体の厚さ、t2は、荷重を負荷した直後の複合構造体の厚さ、t3は、荷重の負荷を解放してから1時間経過後の複合構造体の厚さである。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255771(P2011−255771A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131535(P2010−131535)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】