説明

複合樹脂水性分散液およびその製造方法

【課題】 加工時の取り扱い性に優れ、且つ皮膜となった後の耐水性にも優れるウレタン樹脂とアクリル系重合体とが複合化された樹脂の水性分散液およびその乾燥皮膜、さらにその製造方法。
【解決手段】 ウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが複合化されてなる樹脂の水性分散液において、ウレタン樹脂(A)の原料成分として、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールを用いていることを特徴とする複合樹脂水性分散液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂とアクリル系重合体とが複合化された樹脂の水性分散液およびその乾燥皮膜、さらにその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、樹脂中に特定のポリアルキレングリコールに由来する骨格を有する複合樹脂水性分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリウレタン樹脂が有する強度、耐摩耗性、耐溶剤性などの特性と、アクリル系重合体が有する耐候性、耐加水分解性、低コストなどの特性を併せ持つ複合樹脂の水性分散液が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
しかしながら、特許文献1〜3に示されている複合樹脂の水性分散液は乾燥後の再分散性が不十分であり、塗工、含浸などの加工を行う際に装置のロール等にしだいに乾燥した樹脂皮膜が付着し、ときどき付着した皮膜が剥がれて製品に付着することにより、製品の外観・物性等の欠陥となりやすい。これを改良するために複合樹脂中の自己乳化基であるカルボキシル基の量を増やしても、カルボキシル基を中和しているアミンが揮発して自己乳化能を失うため効果が少なく、また、樹脂皮膜の耐水性が低下する問題が起こる。
【特許文献1】特開平5−320299号公報
【特許文献2】特開平10−30057号公報
【特許文献3】特開2000−344810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、加工時の取り扱い性に優れ、且つ皮膜となった後の耐水性にも優れるウレタン樹脂とアクリル系重合体とが複合化された樹脂の水性分散液およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成すべく本発明者は鋭意検討を重ねてきた。その結果、特定の構造を有する複合樹脂の水性分散液により、上記課題を達成できることを見出し、それらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、ウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが複合化されてなる樹脂の水性分散液において、ウレタン樹脂(A)の原料成分として、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールを用いることを特徴とする複合樹脂水性分散液である。
また、ウレタン樹脂(A)が、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を2〜10質量%の割合で有していることが好ましく、ウレタン樹脂(A)が、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂(A)100g当たり2〜20mmol有していることが好ましく、上記複合樹脂水性分散液中に界面活性剤を0.2〜2質量%含有することが好ましい。さらに、ウレタン樹脂(A)およびアクリル系重合体(B)の質量比が、20/80〜70/30である複合樹脂水性分散液であることが好ましい。
【0006】
そして、本発明は、上記複合樹脂水性分散液を乾燥して得られた樹脂皮膜である。
【0007】
さらに、本発明は、界面活性剤を含有する上記ウレタン樹脂(A)の水性分散液の存在下に(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマー(b)を乳化重合して上記複合樹脂水性分散液を製造する複合樹脂水性分散液の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン樹脂とアクリル系重合体とが複合化された樹脂の水性分散液は、加工時の取り扱い性に優れ、且つ皮膜となった後の耐水性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で用いるウレタン樹脂(A)は、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、鎖伸長剤を反応させて製造したものであり、高分子ポリオールとして酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールを用いることが必要である。酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1よりも小さい場合には、ウレタン樹脂(A)および複合樹脂の水性分散液が増粘しやすく製造時に凝集物が多く生成するなどの問題が生じてポリアルキレングリコールの共重合量を減らす必要があるため、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着の抑制が不十分となる。一方、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.5よりも大きい場合にも、ポリアルキレングリコールの親水性が低くなりすぎ、加工装置ロール等への複合樹脂皮膜の付着の抑制が不十分となる。酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.15〜2.3であるポリアルキレングリコールを用いることが、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましい。
炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールの具体例としては、オキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体(オキシエチレンとオキシプロピレンのモル比が90/10〜50/50)、オキシエチレンとテトラヒドロフランの共重合体(オキシエチレンとテトラヒドロフランのモル比が95/5〜75/25)などが挙げられる。炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールの数平均分子量は、600〜3000であることが加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましく、900〜2500であることがより好ましい。
また、ウレタン樹脂(A)が、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を2〜10質量%の割合で有して共重合していることが加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましく、2.5〜8質量%であることがより好ましい。
【0010】
酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールとともに用い得るその他の高分子ポリオールとしては、公知の高分子ポリオールのいずれも使用することができ、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)など酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1未満または2.5より大きいポリアルキレングリコール;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン アジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン セバケート)ジオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン カーボネート)ジオールなどのポリカーボネートポリオール;ポリエステルカーボネートポリオールなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
高分子ポリオールの数平均分子量は、樹脂製造の容易性などの点から、その数平均分子量が600〜5,000であることが好ましく、800〜4,000であることがより好ましく、1,000〜3,000であることがさらに好ましい。
【0011】
ウレタン樹脂(A)の製造に用い得る有機ポリイソシアネートとしては、ウレタン樹脂の製造に従来から用いられている有機ポリイソシアネートのいずれもが併用でき、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどを挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0012】
ウレタン樹脂(A)の製造に用いうる鎖伸長剤としては、ウレタン樹脂の製造に従来から使用されている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応性の活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好ましく用いられる。好ましく用いられる鎖伸長剤の具体例としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミン等のトリアミン類;トリエチレンテトラミン等のテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパン等のトリオール類;ペンタエリスリトール等のペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してウレタン樹脂の分子量を調整してもよい。
【0013】
ウレタン樹脂(A)は、カルボキシル基を樹脂骨格中に有していることが複合樹脂製造の容易性や加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着の抑制の点から好ましい。樹脂骨格中へのカルボキシル基の導入は、ウレタン樹脂(A)の原料としてカルボキシル基を有し且つイソシアネート反応性基を1個以上有する化合物を併用することにより達成される。用いうるカルボキシル基を有し且つイソシアネート反応性基を1個以上有する化合物としては、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオールなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
カルボキシル基は、少なくとも一部が沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されていることが、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましい。アミン化合物の沸点が100℃未満の場合には、複合樹脂水性分散液の使用中にアミン化合物が揮発し樹脂の親水性が低下するため、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着が起こりやすい。一方、アミン化合物の沸点が150℃を超える場合には、樹脂皮膜乾燥時にアミン化合物が十分に揮発せず樹脂が強い親水性を示すため、樹脂皮膜の耐水性が低下しやすい。また、アミン化合物の水への溶解度が100g/L未満の場合には、アミン化合物で中和されたカルボキシル基の親水性が不十分となり、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着が起こりやすい。
沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物としては、N,N−ジメチルアミノエタノールなどを挙げることができる。また、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物とともに、沸点が100℃未満または150℃以上、あるいは25℃での水への溶解度が100g/L未満のアミン化合物を併用しても良い。このようなアミン化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエタノールなどが挙げられる。沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物とその他のアミン化合物の比率は、モル比で100/0〜10/90であることが、加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましく、80/20〜15/85であることがより好ましく、60/40〜20/80であることがさらに好ましい。
ウレタン樹脂(A)中の、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基の含有量は、ウレタン樹脂(A)100g当たり2〜20mmolであることが加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましく、3〜15mmolであることがより好ましい。
【0014】
本発明に用いられるアクリル系重合体(B)は、(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマー(b)を重合することによって製造することができる。なお、本発明において(メタ)アクリル酸誘導体とは、アクリル酸誘導体およびメタクリル酸誘導体を意味する。
用い得るエチレン性不飽和モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸またはその誘導体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミドなどの不飽和カルボン酸のアミド類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはこれらの誘導体;ビニルピロリドンなどの複素環式ビニル化合物;塩化ビニル、アクリロニトリル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミドなどのビニル化合物;エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
エチレン性不飽和モノマーのうち、(メタ)アクリル酸誘導体の割合が60質量%以上であることが、複合樹脂の製造の容易性やコスト、複合樹脂皮膜の耐久性などの点から好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体の割合が70質量%以上であることがより好ましく、(メタ)アクリル酸誘導体の割合が80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0015】
さらに必要に応じて、エチレン性不飽和モノマー(b)として、2官能以上の多官能性エチレン性不飽和モノマーを併用することができる。多官能性エチレン性不飽和モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどのテトラ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼンなどの多官能性芳香族ビニル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレートなどの2個以上の異なるエチレン性不飽和結合含有化合物;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートの2:1付加反応物、グリセリンジメタクリレートとトリレンジイソシアネートの2:1付加反応物などの分子量が1500以下のウレタンアクリレートなどを挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。
多官能性エチレン性不飽和モノマーの割合が、エチレン性不飽和モノマー(b)全体に対して0.5〜7質量%であることが複合樹脂皮膜の耐久性などの点から好ましく、1〜6質量%であることがより好ましく、1.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0016】
ウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とを複合化させる方法としては、ウレタン樹脂(A)の水性分散液を製造した後に、その存在下で(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマー(b)を乳化重合する方法が、複合化が容易であるため好ましい。
【0017】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液を製造する方法としては、公知の方法のいずれも使用可能であるが、そのうちでも、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートおよび必要に応じて鎖伸長剤の一部を反応させて末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、そのプレポリマーを界面活性剤の存在下または非存在下に水中に乳化分散させた後/または同時に鎖伸長剤を反応させて高分子量化したウレタン樹脂の水性分散液を製造する方法が好ましい。乳化には、ホモミキサー、ホモジナイザー等の乳化分散装置を使用することもでき、その際、イソシアネート基と水との反応を抑制するために、乳化温度を40℃以下とすることが好ましい。
また、ウレタンプレポリマーを水中に乳化分散し易くするために、ウレタンプレポリマーをアセトン、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの有機溶媒で希釈して水性液体中に乳化分散させてもよい。ウレタンプレポリマーの希釈に用いた有機溶媒は、ウレタン樹脂の水性分散液の製造後に減圧留去等により除去することができる。
【0018】
本発明では、特に、ウレタン樹脂(A)の水性分散液が下記の要件(1)〜要件(3);
(1)水性液中で界面活性剤の存在下にイソシアネート末端ウレタンプレポリマーに鎖伸長剤を反応させて調製したウレタン樹脂の水性分散液である;
(2)ウレタン樹脂骨格中に、ウレタン樹脂100g当たり、中和されたカルボキシル基を5〜25mmolの割合で有するウレタン樹脂の水性分散液である;および
(3)ウレタン樹脂100g当たり界面活性剤を0.5〜6gの割合で有するウレタン樹脂の水性分散液である;
を満足することが、エチレン性不飽和モノマー(b)を重合した際にウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)との粗大相分離が起こらず良好に複合化され、複合樹脂皮膜の物性が一層優れることから好ましい。
【0019】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液の製造に用いることができる界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、界面活性剤の少なくとも一部がアニオン性界面活性剤からなることが、アクリル系重合体(B)との複合化が容易であり、複合樹脂皮膜の物性が一層優れていることから好ましい。
【0020】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液は、水性分散液の質量に基づいて、ウレタン樹脂(A)の固形分の含有割合が10〜60質量%であることが、水性分散液の安定性、アクリル系重合体(B)との複合化の容易性、生産性などの点から好ましく、20〜50質量%であることがより好ましい。
【0021】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液中に含まれる樹脂粒子の平均粒子径が、動的光散乱法により測定し且つキュムラント法で解析して求めたときに、80〜400nmであることがアクリル系重合体(B)との複合化が容易であり、複合樹脂皮膜の物性が一層優れていることから好ましい。平均粒子径が90〜350nmであることがより好ましく、100〜300nmであることがさらに好ましい。
【0022】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液の存在下にエチレン性不飽和モノマー(b)を乳化重合して複合樹脂の水性分散液を製造する方法としては公知の乳化重合方法を用いることができるが、0〜90℃の温度で行うことが好ましい。
重合系へのエチレン性不飽和モノマー(b)の供給は、重合の進行とともに分割または連続して添加する方式や、最初の段階でエチレン性不飽和モノマー(b)の全量を供給する方式で行うことができるが、重合の進行とともに連続して添加する方式がウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)との複合化を円滑に行うことができることから好ましい。
また、重合系へのウレタン樹脂(A)の水性分散液の仕込み量およびエチレン性不飽和モノマー(b)の供給量は、乳化重合により得られる複合樹脂の水性分散液中での複合樹脂の含有量が、水性分散液の全質量に基づいて、10〜60質量%、特に20〜55質量%の範囲内になるような量とすることが、重合安定性、得られる水性分散液の安定性、コストなどの点から好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂(A)の水性分散液の存在下でエチレン性不飽和モノマー(b)を乳化重合する際に用いる開始剤としては従来公知の重合開始剤のいずれも用いることができ、例えば、過酸化水素、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどで代表される水溶性過酸化物;アゾビスシアノ吉草酸、2,2′−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩などで代表される水溶性アゾ化合物;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシドなどで代表される油溶性過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)などで代表される油溶性アゾ化合物などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。また、前記重合開始剤とともに、還元剤、および必要に応じてキレート化剤を併用したレドックス開始剤系を用いても良い。還元剤としては、例えば、ロンガリット(ナトリウム ホルムアルデヒドスルホキシレート)などで代表されるアルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシレート類;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムなどで代表される亜硫酸塩;ピロ亜硫酸ナトリウムなどで代表されるピロ亜硫酸塩;チオ硫酸ナトリウムなどで代表されるチオ硫酸塩;亜リン酸、亜リン酸ナトリウムなどで代表される亜リン酸塩類;ピロ亜リン酸ナトリウムなどで代表されるピロ亜リン酸塩;メルカプタン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどで代表されるアスコルビン酸塩類;エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウムなどで代表されるエリソルビン酸塩類;グルコース、デキストロースなどで代表される糖類;硫酸第一鉄、硫酸銅などで代表される金属塩;二酸化チオ尿素などが挙げられる。キレート化剤としては、ピロリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸塩などが挙げられる。これらの使用量は、それぞれの開始剤系の組み合わせに応じ適量を用いる。
複合樹脂の水性分散液の製造の容易性の点から、油溶性過酸化物と還元剤を組み合わせたレドックス開始剤系を用いることが特に好ましい。重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和モノマー(b)の種類、ウレタン樹脂(A)とエチレン性不飽和モノマー(b)の質量比などに応じて調節し得るが、一般的には、エチレン性不飽和モノマー(b)の質量に基づいて、油溶性過酸化物を0.01〜1質量%、還元剤を0.01〜1質量%の割合で用いることが、複合樹脂の水性分散液が円滑に得られる点から好ましい。金属塩およびキレート化剤をさらに併用する場合は、エチレン性不飽和モノマー(b)の質量に基づいて、金属イオンを1〜1000ppm、キレート化剤を1〜10000ppmの割合で用いることが好ましい。
重合系への重合開始剤の供給方法は特に制限されず、従来既知のエチレン性不飽和モノマーの乳化重合におけるのと同様にして行うことができるが、そのうちでもウレタン樹脂(A)の水性分散液中に予め還元剤を添加しておき、油溶性過酸化物をエチレン性不飽和モノマー(b)とともに逐次添加しながら供給する方法がエチレン性不飽和モノマー(b)を重合する上で、重合安定性に優れ、しかも工業的な実施が容易であることから好ましい。
【0024】
また、本発明の目的の妨げにならない範囲で、複合樹脂の水性分散液の製造時または製造後に必要に応じて界面活性剤をさらに添加してもよい。用い得る界面活性剤としては、ウレタン樹脂(A)の水性分散液の製造に用いることができる界面活性剤として上記したものと同じものが挙げられる。複合樹脂水性分散液中に界面活性剤を0.2〜2質量%含有することが加工装置ロール等への樹脂皮膜の付着がより抑制され、乾燥皮膜の耐水性がより優れることから好ましく、0.3〜1.5質量%含有することがより好ましい。
【0025】
複合樹脂中におけるウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)との質量比は20/80〜70/30であることが好ましく、30/70〜60/40であることがより好ましい。ウレタン樹脂(A)の割合が20質量%未満である場合には、複合樹脂皮膜の強伸度が不十分となりやすい。一方、ウレタン樹脂(A)の割合が70質量%を超える場合には、複合樹脂皮膜の耐光性や耐久性が劣る傾向であり、またコスト的にも高くなるため好ましくない。
【0026】
本発明のウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが複合化されてなる樹脂の水性分散液は、本発明の目的を損なわない限り、樹脂水性分散液にさらに他の樹脂成分を含有してもよい。そのような樹脂成分としては、例えば、ウレタン樹脂、アクリル系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリアミド系重合体、ポリエステル系重合体、ポリブタジエン系重合体、ポリイソプレン系重合体、シリコーンなどを挙げることができる。
また、本発明の複合樹脂の水性分散液は、必要に応じて、さらに他の添加物、例えば、耐光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、浸透剤、レベリング剤、増粘剤、感熱ゲル化剤、造膜助剤、架橋剤、ポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、充填剤などの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0027】
本発明の複合樹脂の水性分散液は、乾燥したときに生成する皮膜の透明性、柔軟性、力学的特性、耐候性、耐屈曲性、耐溶剤性などの特性に優れているので、それらの特性を活かして、塗料、被覆剤、繊維処理剤、インク用添加剤、接着剤、ガラス繊維収束剤、他の樹脂水性分散液の改質剤などとして有効に用いることができる。
【0028】
複合樹脂の水性分散液から皮膜を形成する方法は特に制限されず、公知の方法により行うことができる。例えば、室温または加熱した状態で水分を蒸発させて乾燥することにより容易に皮膜化することができる。また、多孔質基材や繊維質基材等に含浸する場合は、厚み方向に均一に付着させるために、水性分散液をゲル化させて流動性を失わせておいた後に乾燥させても良い。
乾燥後、複合樹脂の粒子間の融着を促進して皮膜の物性を向上させるため、100〜200℃の温度で1〜30分程度熱処理することが好ましい。
【0029】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により何ら制限されない。
【0030】
[ウレタン樹脂水性分散液中の粒子の平均粒子径]
大塚電子株式会社製「ELS−800」を使用して、動的光散乱法により測定し、キュムラント法により解析して、ウレタン樹脂水性分散液中の粒子の平均粒子径を求めた。
【0031】
[複合樹脂の製造安定性]
エチレン性不飽和モノマーの重合後に複合樹脂の水性分散液を100メッシュのフィルターで濾過し、フィルター上に捕捉された凝集物を乾燥して質量(w1)を測定。複合樹脂の水性分散液の質量(w2)に対する質量%(w1/w2×100)を複合樹脂の製造安定性の目安とした。
【0032】
[加工装置ロールへの樹脂皮膜の付着]
キスロールコーターを用いて、ロール直径の下部約3分の1が複合樹脂の水性分散液に漬かるようにした状態で20rpmで3時間ロールを回転した後、ロール表面の水性分散液を水で洗い流し、ロールに付着していた樹脂皮膜を回収した。樹脂皮膜を完全に乾燥させた後、質量を測定した。
【0033】
[皮膜の耐水性]
複合樹脂の水性分散液を室温で乾燥して得られた厚さ約200μmの皮膜を140℃で10分間熱処理した後、130℃の熱水中に1時間浸漬して、吸水による質量増加率を求めた。
【0034】
《ウレタン樹脂水性分散液の製造》
[参考例1]
フラスコに、数平均分子量が1400のポリテトラメチレングリコール150g、数平均分子量が2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール150g、数平均分子量が2000のオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体ジオール(オキシエチレンとオキシプロピレンのモル比が80/20)15.0g、2,2−ジメチロールブタン酸8.99g、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート115.4gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で3時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。これに2−ブタノン225gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン4.30gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、ラウリル硫酸ナトリウム1.80gおよびN,N−ジメチルアミノエタノール1.51gを蒸留水663gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加え3分間撹拌して乳化した後、直ちにヒドラジン・1水和物2.99g、ピペラジン・6水和物8.29gおよびジエチレントリアミン4.70gを蒸留水162gに溶解した水溶液を加えて3分間撹拌し、鎖伸長反応を行った.その後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除去し、樹脂濃度35質量%のウレタン樹脂水性分散液を得た。ウレタン樹脂水性分散液の平均粒子径は135nmであり、またこのウレタン樹脂は酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.2であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を3.3質量%、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂100g当たり3.8mmol有している。
【0035】
[参考例2]
フラスコに、数平均分子量が1400のポリテトラメチレングリコール150g、数平均分子量が2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール150g、数平均分子量が1000のオキシエチレン/オキシプロピレン共重合体ジオール(オキシエチレンとオキシプロピレンのモル比が70/30)24.0g、2,2−ジメチロールブタン酸9.25g、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート120.1gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で3時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。これに2−ブタノン232gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン3.10gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、ラウリル硫酸ナトリウム1.85gおよびN,N−ジメチルアミノエタノール2.73gを蒸留水683gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加え3分間撹拌して乳化した後、直ちにヒドラジン・1水和物2.98g、ピペラジン・6水和物8.26gおよびジエチレントリアミン4.68gを蒸留水167gに溶解した水溶液を加えて3分間撹拌し、鎖伸長反応を行った.その後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除去し、樹脂濃度35質量%のウレタン樹脂水性分散液を得た。ウレタン樹脂水性分散液の平均粒子径は110nmであり、またこのウレタン樹脂は酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.3であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を5.2質量%、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂100g当たり6.6mmol有している。
【0036】
[参考例3]
フラスコに、数平均分子量が1400のポリテトラメチレングリコール150g、数平均分子量が2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール150g、2,2−ジメチロールブタン酸8.55g、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート109.9gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で3時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。これに2−ブタノン214gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン4.09gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、ラウリル硫酸ナトリウム1.71gおよびN,N−ジメチルアミノエタノール1.44gを蒸留水631gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加え3分間撹拌して乳化した後、直ちにヒドラジン・1水和物2.82g、ピペラジン・6水和物7.82gおよびジエチレントリアミン4.43gを蒸留水154gに溶解した水溶液を加えて3分間撹拌し、鎖伸長反応を行った.その後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除去し、樹脂濃度35質量%のウレタン樹脂水性分散液を得た。ウレタン樹脂水性分散液の平均粒子径は140nmであり、またこのウレタン樹脂は酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を有しておらず、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂100g当たり3.8mmol有している。
【0037】
[参考例4]
フラスコに、数平均分子量が1400のポリテトラメチレングリコール150g、数平均分子量が2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール150g、数平均分子量が1000のポリエチレングリコール15.0g、2,2−ジメチロールブタン酸9.00g、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート116.4gを秤取し、乾燥窒素雰囲気下、90℃で3時間撹拌して系中の水酸基を定量的に反応させ、イソシアネート基末端のプレポリマーを得た。これに2−ブタノン225gを加えて均一に撹拌した後、40℃にフラスコ内温度を下げ、トリエチルアミン4.30gを加えて10分間撹拌を行った。次いで、ラウリル硫酸ナトリウム1.80gおよびN,N−ジメチルアミノエタノール1.52gを蒸留水664gに溶解した水溶液を前記プレポリマーに加え3分間撹拌して乳化した後、直ちにヒドラジン・1水和物2.93g、ピペラジン・6水和物8.11gおよびジエチレントリアミン4.60gを蒸留水162gに溶解した水溶液を加えて3分間撹拌し、鎖伸長反応を行った.その後、2−ブタノンをロータリーエバポレーターにより除去し、樹脂濃度35質量%のウレタン樹脂水性分散液を得た。ウレタン樹脂水性分散液の平均粒子径は85nmであり、またこのウレタン樹脂は酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を有しておらず、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂100g当たり3.8mmol有している。
【実施例1】
【0038】
冷却管付きフラスコに、参考例1で得られたウレタン樹脂水性分散液720g、硫酸第一鉄・7水和物0.003g、ピロリン酸カリウム0.92g、二酸化チオ尿素0.66g、エチレンジアミン四酢酸・2ナトリウム塩0.015gおよび蒸留水362gを秤取し、40℃に昇温した後、系内を十分に窒素置換した。次いで、アクリル酸n−ブチル263g、メタクリル酸メチル17.6g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5.85g、メタクリル酸アリル5.85g、ノニオン性界面活性剤(三洋化成株式会社製「ナロアクティN−140」)7.02gおよびクメンヒドロパーオキシド0.59gからなる混合液をフラスコ内に240分かけて滴下し、さらに滴下終了後40℃に30分間保持した。続いて、メタクリル酸メチル15.1g、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート0.31g、ノニオン性界面活性剤(三洋化成株式会社製「ナロアクティN−140」)0.15gおよびクメンヒドロパーオキシド0.032gからなる混合液をフラスコ内に30分かけて滴下し、さらに滴下終了後40℃に60分間保持して重合を完了させ、樹脂濃度40質量%の複合樹脂水性分散液を得た。この複合樹脂水性分散液は界面活性剤を0.6質量%含有し、ウレタン樹脂とアクリル系重合体の質量比は45/55である。また、重合時に生成した凝集物量は水性分散液に対し、0.01質量%であった。
この複合樹脂水性分散液のロールへの皮膜付着量は0.013gであり、樹脂皮膜の130℃熱水浸漬後の質量増加率は13%であった。
【実施例2】
【0039】
実施例1において、参考例1で得られたウレタン樹脂水性分散液の代わりに参考例2で得られたウレタン樹脂水性分散液を用いること以外は同様にして、樹脂濃度40質量%の複合樹脂水性分散液を得た。この複合樹脂水性分散液は界面活性剤を0.6質量%含有し、ウレタン樹脂とアクリル系重合体の質量比は45/55である。重合時に生成した凝集物量は水性分散液に対し、0.02質量%であった。
この複合樹脂水性分散液のロールへの皮膜付着量は0.021gであり、樹脂皮膜の130℃熱水浸漬後の質量増加率は14%であった。
【0040】
比較例1
実施例1において、参考例1で得られたウレタン樹脂水性分散液の代わりに参考例3で得られたウレタン樹脂水性分散液を用いること以外は同様にして、樹脂濃度40質量%の複合樹脂水性分散液を得た。この複合樹脂水性分散液は界面活性剤を0.6質量%含有し、ウレタン樹脂とアクリル系重合体の質量比は45/55である。重合時に生成した凝集物量は水性分散液に対し、0.01質量%であった。
この複合樹脂水性分散液のロールへの皮膜付着量は0.305gであり、樹脂皮膜の130℃熱水浸漬後の質量増加率は13%であった。
【0041】
比較例2
実施例1において、参考例1で得られたウレタン樹脂水性分散液の代わりに参考例4で得られたウレタン樹脂水性分散液を用いること以外は同様にして、樹脂濃度40質量%の複合樹脂水性分散液を得た。この複合樹脂水性分散液は界面活性剤を0.6質量%含有し、ウレタン樹脂とアクリル系重合体の質量比は45/55である。重合時に生成した凝集物量は水性分散液に対し、0.42質量%であった。
この複合樹脂水性分散液のロールへの皮膜付着量は0.018gであり、樹脂皮膜の130℃熱水浸漬後の質量増加率は19%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)とアクリル系重合体(B)とが複合化されてなる樹脂の水性分散液において、ウレタン樹脂(A)の原料成分として、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールを用いることを特徴とする複合樹脂水性分散液。
【請求項2】
ウレタン樹脂(A)が、酸素原子に対する炭素原子のモル比が2.1〜2.5であるポリアルキレングリコールに由来する骨格を2〜10質量%の割合で有している請求項1に記載の複合樹脂水性分散液。
【請求項3】
ウレタン樹脂(A)が、沸点が100〜150℃且つ25℃での水への溶解度が100g/L以上のアミン化合物で中和されたカルボキシル基をウレタン樹脂(A)100g当たり2〜20mmol有している請求項1または2に記載の複合樹脂水性分散液。
【請求項4】
複合樹脂水性分散液中に界面活性剤を0.2〜2質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散液。
【請求項5】
ウレタン樹脂(A)およびアクリル系重合体(B)の質量比が、20/80〜70/30である請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散液。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散液を乾燥して得られた樹脂皮膜。
【請求項7】
界面活性剤を含有するウレタン樹脂(A)の水性分散液の存在下に(メタ)アクリル酸誘導体を主成分とするエチレン性不飽和モノマー(b)を乳化重合して請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合樹脂水性分散液を製造することを特徴とする複合樹脂水性分散液の製造方法。

【公開番号】特開2006−274096(P2006−274096A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96785(P2005−96785)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】