説明

複合的焼結物品を製造する方法及び構造体

【課題】複合物品を溶接を用いずに製造する方法を提供する。
【解決手段】キャビティを有する複合的焼結物品を製造する方法において、(a)焼結後、互いに1%以下だけ相違する量だけ収縮するよう、潤滑剤及びバインダを追加し粉体材料の混合体の1つの群を提供し、(b)焼結後、前記第一の供給材料の群が収縮する量の少なくとも10%だけ上廻る量だけ収縮する第二の群の供給材料を形成し、(c)いずれかの供給材料を圧縮成形して未焼成部品を形成し、(d)前記未焼成部品を異なる金型に搬送し、次に、何れかの供給材料の群から得られたある量の異なる供給材料を前記異なる金型内に射出する。(e)ステップ(d)及び(e)を繰り返して、これにより最終的な複合的未焼成部品を形成し、(f)脱バインダし、(g)焼結する。(h)全てのルーズな部品を除去し、これにより前記複合的焼結物品を形成することを含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2000年11月12日付けで出願された米国特許出願第09/733,527号の一部継続出願に基づくものである。
本発明は、複雑な構造体を製造することに特に関係する、全体として粉体金属及び圧縮成形の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体射出成形(PIM)法を使用して金属又はセラミック構造部品を製造することは周知である。この粉体は、バインダと混合させて、所望の部品に成形することのできる混合体を形成する。このバインダは、金型キャビティ内に射出し且つ部品を形成するため適宜な流動性を有しなければならない。成形された部品は、通常、最終部品の過大寸法の複製品である。この成形部品に対しバインダ除去が施され、バインダは、粉体の配向状態を乱すことなく除去される。バインダを除去した後、その部品に対する焼結工程を実施し、その結果、部品は、部分的に所望のレベルに高密度化される。
【0003】
PIM法により製造された部品は、複雑な幾何学的形状をしている。これらの部品は、また、単一材料で製造される傾向にある。例えば、PIM技術を使用して316Lステンレス鋼で歯科矯正用ブラケットを製造することができる。
【0004】
しかし、多数の部品を含み、その部品の各々が直ぐ隣接するものと性質が異なる別の材料から成る、PIM法により形成された物品が必要とされている。従来技術の方法は、かかる部品の各々を別個に製造し、次に、異なる材料から成るこれら異なる部品を共に接合するためコスト高の溶接工程又は機械的装着法を使用してこれら部品を組み合わせて完成品にするものであった。
【0005】
この問題点を解決しようとする本発明の基本的方策は、図1a乃至1bに概略図的に図示されている。図1aにおいて、参照番号11、12は、物理的性質が異なり且つPIM法により形成された2つの未焼成物が図示されている。図1bには、焼結後、単一物を形成し得るように接続された同一の2つの物品が図示されている。従来の技術において、未焼成物11、12間の境界面13は、通常、溶接部である(すなわち、未焼成物11、12と異なる材料の部分)。これと代替的に、最終製品が連続体でないようにするには、未焼成物11、12を単に圧力嵌めすれば十分であった。
【0006】
溶接に優る1つの明らかな改良又はより簡単な方法は、未焼成物11、12が互いに接触している間にこれらの未焼成物11、12を焼結することであると考えられる。しかし、実際には、通常、その2つの物品を焼結する間、適正に接合させることができないため、かかる方策は成功するに至っていない。本発明は、異なる物理的性質を有する材料で出来た異なる物品を一体化して単一の連続体を形成し得るように、この種の問題点を解決するための方法を教示するものである。
【0007】
日常的な従来技術の調査を行ったが、次の関連参考技術が探知できた。すなわち、1996年、アンドレア・ペスト(Andrea Pest)らによる粉体金属及び微粒子材料の進歩のvol.5 pp19−171、19−178における「粉体射出成形法による複合部品(Composite parts by power injection molding)」にて、1つ以上の材料から成る部品を共に焼結するときの問題点が議論されている。彼等は、焼結中の収縮を制御することは重要であることを明らかにしているが、その他のファクタ(以下に説明する)については言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、物理的性質が異なり且つ(又は)機能上の性質が異なる多数の部品を有し、任意の部品の間に接続材料(はんだ又は接着剤のような)が全く存在しない、連続体を製造する方法を提供することである。
【0009】
この目的は、色々な部品の相対的収縮率を慎重に制御すると共に、粉体射出成形法を使用することにより実現される。更に、物理的性質が部品間にて相違する場合、特定の1つの選んだ物理的性質のみが部品間にて相違することが許容される一方にて、使用される供給材料の組成を比較的僅かだけ変更することによりその他の性質を変更することができることを確実にすべく配慮されている。
【0010】
別の目的は、包囲体に取り付けられていない間に、この包囲体に保持された物品を1回の一貫的過程にて製造する方法を提供することである。
物品の収縮率が包囲体の収縮率よりも大幅に大きくされ、粉体射出成形法によりこの目的は達成される。その結果、物品は、焼結後、包囲体からそれ自体、分離し且つその内部で移動自由となることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、粉体の射出成形法を使用して多数材料から成る構成部品を製造する新規な方法に関するものである。異なる材料から成る物品を射出成形することは、その大きい製造能力及び最終形状の能力の点にて、商品価値ある完成物品を製造できる、経済的に魅力的な方法である。
【0012】
当該技術分野の当業者にとって周知であるように、焼結物品を製造するための基本的方法は、最初に、必要とされる材料を粉体の形態にて提供することである。次に、この粉体を潤滑剤及びバインダと混合して、供給材料を作成する。基本的に、金属製品の性質にとって有害である望ましくない残留物を残すことなく、高温度下にて分解する任意の色々な有機質材料を使用することができる。好ましい材料は、ステアリン酸、微破砕ワックス、パラフィンワックス及びポリエチレンのような、色々な有機質ポリマーである。ステアリン酸は、潤滑剤として機能する一方、その他の全ての材料はバインダとして使用することができる。粉体に追加されるバインダ/潤滑剤の量及び性質が供給材料の密度及び焼結中の収縮量を決定する。
【0013】
一度び、供給材料が作成されたならば、その材料を適宜な金型内に射出する。次に、形成された「未焼成」物品を金型から取り出す。この物品は、取り扱う間、加熱又は溶剤を使用してバインダを除去するとき、その形状を保持するのに十分な機械的強度を有している。次に、形成された「骨格体」を焼結炉内に配置し、典型的に、水素又は真空中にて約30乃至180分間、約1,200乃至1,350℃の範囲の温度で加熱する。
【0014】
上述したように、異なる材料で出来た部品を含む単一の物品を製造しようとする試みは、通常、部品を別個に製造し、次に、その部品を共に接続することに限定されていた。その理由は、異なる材料で出来た未焼成部品は、焼結過程中に常に適正に接合できることが確実であるとは限らないからである。
【0015】
本発明は、焼結中に接合し得ないことの原因は、(i)部品の収縮率が互いに臨界量以上、相違すること、(ii)特定の物理的性質が部品間にて相違することであることを教示する。
【0016】
同じ原因として、他の特定の物理的性質は接合に殆ど又は全く影響を与えずに、部品毎に極めて相違することができることが挙げられる。
良好に接合するために同一か又は同様でなければならない物理的性質は、熱膨張係数、溶融点を含む一方(但し、これに限定されない)、接合に影響を与えずに異なってもよい性質は、導電率、保磁力、誘電率、熱伝導率、ヤング弾性係数、硬度及び反射率を含む(但し、これにのみ限定されない)。
【0017】
本発明を実施する上で具合良く適する場合、2つの粉体の組成が互いに極めて大きく相違する必要はない。典型的に、2つの混合体は、その化学的組成が全ての成分内で約25%以下だけ相違する。
【0018】
更に、2つの部品の供給材料を作成するために使用した粉体は、粒子形状、テクスチャ及び寸法の分布のような同様の性質を共に有することが重要である。2つの粉体のタップ密度(tap densities)は、約30%以上相違しない一方、その双方の粉体の平均粒子寸法は、約1乃至40μmの範囲になければならない。
【0019】
一例として、1つの部品が軟質材料(例えば、低炭素鉄)である一方、別の部品が高炭素鉄のような硬質材料でなければならないならば、低炭素鉄を特定量の炭素にて合金化することにより、焼入れ性を向上させて高炭素鉄の基準を満たすことになる。これを行うとき、双方の粉体は依然として同様であり、同様の収縮率を有する。このことは、2つの材料を異なる性質を持ちつつ、良好に結合させることになる。
【0020】
同様に、一方の材料が低炭素鉄であり、他方がステンレス鋼であるならば、必要なステンレス鋼の組成を形成し得るように、ステンレス鋼のマスター合金を適当な量の鉄粉体と混合することで互いにより近似した全体的な粉体の性質を生じさせることができる。例えば、2つの材料が316Lステンレス鋼及び低炭素鉄ならば、そのときの方法は、1/3の316Lのマスター合金を2/3の低炭素鉄と混合させて実際の316L組成を形成することである。
【0021】
2つの材料から成る製品の成形は、一方の材料に対し最初に、単胴機械内の1つ又は幾つかのキャビティの1つの金型内で実現することができることを認識すべきである。成形した製品は、別の材料に対し別の単胴機械内の別の金型に、手動の取り上げ・配置操作により又はロボットアームを使用して搬送して所望の製品を製造することができる。この成形過程は、単一の金型内で2つの材料にて完成製品を成形するため双胴射出機械にて行うこともできる。
【第1の実施の形態】
【0022】
図2a及び図2bを通じてこの第一の実施の形態を示すが、開示する方法は、製造される構造体の形状、形態、寸法等と無関係であることを理解すべきである。
第一のステップは、第一の供給材料を作成することである。このことは、潤滑剤及びバインダを粉体混合体に追加することにより行われる(上述したように)。この粉体混合体は、重量比で、約0.05%炭素、約15%クロム、約0.5%マンガン、約0.5%けい素、約0.3%ニオブ、約4%ニッケル、及び約80%鉄から成っている。適宜な金型を使用して、この第一の供給材料を、図2aに図示するように、第一の未焼成部品21を形成し得るように圧縮成形する。この未焼成部品は、中空の中心を示す穴22を有する円筒状の形状体体となることがある。
【0023】
次に、重量比で約0.05%炭素、約15%クロム、約0.5%マンガン、約0.5%けい素、約0.3%ニオブ、約14%ニッケル、約70%鉄から成る粉体混合体に潤滑剤及びバインダを追加することにより第二の供給材料が作成される。焼結後、2つの供給材料の収縮量の差がその何れか一方が経験する全収縮量の約1%以下であることを保証する濃度にて潤滑剤及びバインダが存在することが重要である。
【0024】
ここで、2つの供給材料は、鉄の10%が追加的な10%のニッケルにて置換される点を除いて同一の組成を有することが分かる。この化学的組成の比較的小さい変化は、焼結の成功に関連する重要な物理的性質を不変のままにしつつ、磁気的性質に重要な変化を生じさせる。
【0025】
次に、第一の未焼成部品21を第二の金型に搬送し、次に、リング21の周りに部品23を配置することを通じてこの第二の金型内に、図2bに図示した構造体を完成するのに十分な量の第二の供給材料を射出する。
【0026】
一度び「複合的」未焼成部品が製造されたならば、上述した方法にて全ての潤滑剤/バインダを除去し、その結果、磁性及び非磁性部品の双方を有する連続体となるように焼結することのできる粉体骨格体となる。2つの供給材料を作成する元となる最初の粉体の組成のため、第一の供給材料から得られた図2bの部品21は、磁性である一方、第二の供給材料から得られた部品23は非磁性である。この特別な実施例において、磁性部品は、約800乃至1,500の範囲の最大透磁性(最大μ)を有する。
【0027】
図3には、穴22を通じて前後に移動自在であるロッド33を追加した、図2bに示した物品の等角図が図示されている。ロッド33が磁性であるならば、穴22に対するその位置は、外部コイル(図示せず)により発生された磁界を印加することにより制御することができる。部品21は磁性材料であるから、この部品は、この印加された磁界を集束させるコアとして機能する。ロッド33は、別個に製造するか又は第二の実施の形態に基づいて以下に説明する方法を使用して、一貫的製造方法の一環として、現場で製造することができる。
【0028】
上述したように、各々の性質が異なる多数の部品を有する連続体を製造することは、かかる2つの部品にのみ限る必要はない。図4において、各々の性質が異なる3つの部品を有する1つの物品の平面図が図示されている。全ての部品は同心状のリングである。構造体の中央には、内側リング43により取り巻かれた開口部44がある。リング43は非磁性である。該リングは、軟磁石であるリング41により取り巻かれている。その内側部分は、リング43と同一の厚さを有する。リング41は、リング43よりも厚い外側部分も有しており、このため、該外側部分は図5に図示した断面図で見ることができる側壁52を有するようにされる。硬磁石である中間リング42がこの側壁と整合され且つ該側壁に接触している。この明細書において、軟磁石という語は、高磁力飽和率を有する保磁力の小さい材料を意味する一方、硬磁石という語は、保磁力の大きい材料を意味するものとする。
【0029】
図4及び図5に図示した構造体は、リング41、43を製造した後、硬磁石42(別個に製造したもの)を一体の部品内に装着することにより製造される。磁性的に硬材料から成るリングを図3に図示したものと同様の構造体に追加する理由は、印加された外部磁界に恒久的バイアス力を提供することができるようにするためである。
【第2の実施の形態】
【0030】
この実施の形態において、外側の物品に内側の物品が取り付けられずに、別の物品により取り囲まれた1つの物品を1回の一貫的過程により製造する方法が開示される。第一の実施の形態の場合と同様に、この方法も一例として図示したものであるが、この方法は、任意の形状の包囲体内にある任意の形状の物品に適用可能であることが理解されよう。
【0031】
図6には、PIM法によって製造された1つの物品の概略図が図示されている。この製造過程の一環として、焼結後、未焼成形態部品61が比較的大きい量(典型的に、約20乃至50%)だけ収縮するように、バインダ/潤滑剤の量及び品質を選んだ。
【0032】
次に、図7を参照すると、焼結後、未焼成形態部品71が比較的少ない量(典型的に、約10乃至20%)だけ収縮するように、バインダ/潤滑剤が選ばれた第二の供給材料からの材料から成る完全に取り巻かれた部品61により形成された包囲部品71が図示されている。部品61、71に関する絶対的収縮に関係なく、2つの収縮率の差が少なくとも10%であることがこの過程の1つの重要な条件である。
【0033】
図7に図示した物品から全ての潤滑剤及びバインダを除去した後、形成される粉体骨格体を鉄合金鋼を得るため真空又は水素中で焼結する(約30乃至180分間、約1,200乃至1,380℃にて)。部品71よりも部品61の収縮率の方が比較的大きいため、焼結後の構造体は、部品81(当初の部品61)は、図8に示した外観を有し、この場合、部品81は、部品71から分離して、該部品が内部空間82内で自由に移動するのを許容するようになっているのが分かる。この型式の構造体の一例は、部品71が最終的に、ステータとして機能し、部品81がロータとして機能する静電気モータ(この段階では完成せず)である。従来技術において、かかる構造体は、部品81を部品71から分離させるため犠牲層を使用して製造しなければならなかった。
【機能上の性質】
【0034】
上記の説明において、物理的性質が異なる2つ又はより多くの部品を単一の連続的な構造体内で組み合わせることについて記述した。上記に教示したものと同一の原理は、その機能上の性質が異なる2つ又はより多くの部品を有する構造体にも当て嵌まる。機能上の性質とは、用途に関連したものを意味するものとする。機能上の性質は、物理的及び化学的性質から導かれるものであるが、化学的性質の巧妙な組み合わせであることがしばしばであり、また、説明のために用いた形容詞的表現はその目的とする用途に依存する。このため、所定の電気抵抗率は、抵抗器用の場合、低く、導体用の場合、大きいと考えることができる。このため、機能上の性質は、定義することが難しいが、これらを意味あらしめるためには、定義しなければならない。
【0035】
以下に、一例として、本発明に関連する一連の機能上の性質をその定義と共に掲げる。このリストは完全なみのではなく、本発明の精神から逸脱せずに、連続的構造体の部品に対しその他の機能上の性質を持たせることも可能であることが理解されよう。殆どの場合、これらの定義は正確であるが、時々、必要性のため、定量的な性質ではなく説明的なものでなければならないことがある。
【磁性−強磁性】
【0036】
耐食性−化学プロセス工業用の錬鉄及びニッケル系耐食性合金の耐食性を評価するためのASTMG157−98標準ガイドに定義された通りである。良好な耐食性を有する材料の例は、(非限定的に)純ニッケル、ニッケル銅(例えば、モネル(Monel)400、モネルK−500)、ニッケルクロム(例えば、インコネル(Inconel)617、インコネル625)、ニッケル−鉄−クロム(例えば、インコロイ(Incoloy)DS、インコロイ825)、及びニッケル系超合金(例えば、ニモニック(Nimonic)80A)を含む。
【0037】
制御された多孔度−これは、それ自体、相対的密度であることを明らかにするものであり、無孔材料(pore−free material)の密度90乃至100%が高密度とみなされ、50乃至90%の密度が低密度とみなされる。
【0038】
高熱伝導率−約100W/m.K以上
高密度−約9,000kg/m3以上
高強度−引張り強度約900Mpa以上、降伏強度約700Mpa以上
低熱膨張率−約12×10-6-1以下
耐摩耗性−約50HRC以下の硬度値を有すること
高弾性係数−200Gpa以上
高減衰能力−1サイクル当たり貯蔵エネルギの25%以上を損失すること
良機械加工性−AISI1212を1つの指針として使用し、スチールを100%で等級化し、50%以上の値のものは良とみなす
高耐疲労性−標準荷重及び0荷重を交互に加える108サイクルに耐え得ること
高硬度−50HRC以上
高靭性−シャルピー試験又はアイゾッド試験に基づき、靭性は、破断点まで1つの材料が吸収可能な単位容積当たりのエネルギとして定義される;高靭性は、約1×105キロジュール/m3以上の値であることを意味する
高融点−約1600℃以上(鉄は1537℃にて溶融する)
抗酸化性−上述した耐腐食性と同様であるが、腐食剤として酸素にのみ限定
易接続性−経験に基づくが、銅、銀、金のような材料を含む
【0039】
各々が異なる一組の物理的性質を有する多数の部品から成る連続体を製造する過程の上記の説明から、これらの過程は各々が異なる一組の機能上の性質を有する多数の部品から成る連続体の製造に適用することができることが明らかである。一般的な場合、これらの連続体は2つ以上の機能部品から成るが、ここでは機能的に相違する2つの部品のみが使用される特殊な場合について説明し、該異なる2つの機能は、その製造のために従来技術の過程を使用するとき、単一の連続体となるように組み合わせることは、特に困難であり且つ(又は)費用がかかる。
【0040】
以下にこの型式の対の機能上の性質について幾つかの例を掲げるが、本発明の精神から逸脱せずに、その他の機能上の性質をこのリストに加えることができることが理解される。
【0041】
磁性−耐食性、制御された多孔度−高熱伝導率、高密度−高強度、高熱伝導率−低熱膨張率、耐摩耗性−高靭性、制御された多孔度−高強度、高弾性係数−高減衰能力、高強度−良機械加工性、制御された多孔度−高耐疲労性、磁性−非磁性、高硬度−高靭性、耐摩耗性−抗酸化性、易接続性−耐食性及び低内部応力−制御された多孔度である。
【0042】
単一の連続的構造体となるように組み合わせることが通常、困難である2つの部品を有する構造体を製造するための本発明の適用例を更に示すため、本発明の2つの追加的な実施の形態について説明する。
【第3の実施の形態】
【0043】
この実施の形態において、切断工具を形成する方法及び構造体が開示されている。第一及び第二の実施の形態と同様に、この第三の実施の形態の過程は、粉体材料の2つの混合体を提供することより開始する。これらの混合体の一方は、焼結後、ハンドルとして使用するのに十分に適する一方、その他方はまた、焼結後、切断刃として使用するのに優れた性質を有している。
【0044】
ハンドルとすることを目的とする混合体は、鉄、及びあらゆる鉄系合金(炭素鋼、低合金鋼及びステンレス鋼のような)の如き材料から選ばれる。例えば、金属ハンドブック(Metals Handbook)、1990年、第10版第1巻を参照するとよい。
【0045】
切断刃となる混合体用の可能な材料は、水焼入れ鋼(型W)、耐衝撃鋼(型S)、冷間加工鋼(型O、A、D、H)、熱間加工鋼(型H)、高速度鋼(型T、M)、金型鋼(型P)及び炭化タングステンを含む、あらゆる工具鋼である。工具鋼の分類に関する詳細は、AISI(米国鉄及び鋼協会)ハンドブックに見ることができる。
【0046】
供給材料を作成するため混合体の各々に潤滑剤及びバインダを追加するが、その1つの重要な条件は、焼結後、上記供給材料の収縮量が約1%以下だけ互いに相違するようにすることである。次に、適正な供給材料を圧縮成形して、ハンドルを有する未焼成部品(図9に参照番号92として概略図的に図示)を作成し、次にその部品を第二の金型まで搬送し、十分な量のその他の供給材料をこの第二の金型に射出して切断刃(図9に参照番号91として概略図的に図示)の形状にて未焼成部品への伸長部を形成する。
【0047】
全ての潤滑剤及びバインダを除去した(これにより粉体骨格体を形成した)後、上記に説明したように、この粉体骨格体を焼結して切断工具となるようにする。
【第4の実施の形態】
【0048】
この実施の形態において、ワイヤーダイを形成する方法及び構造体が開示される。以前の実施の形態におけると同様に、この第四の実施の形態の過程は、粉体材料の2つの混合体を提供することより開始する。これらの混合体の一方は、焼結後、ハンドルとして使用するのに十分に適し且つ鉄、あらゆる鉄系合金(炭素鋼、低合金鋼及びステンレス鋼のような)から成る群から選ばれる一方、その他方は、ダイとして機能するのに十分に適し、水焼入れ鋼(型W)、耐衝撃鋼(型S)、冷間加工鋼(型O、A、D及びH)、熱間加工鋼(型H)、高速度鋼(型T及びM)、金型鋼(型P)及び炭化タングステンを含むあらゆる工具鋼から成る群から選ばれる。
【0049】
以前と同様に、供給材料を形成し得るように、これらの混合体に潤滑剤及びバインダを追加し、これらの供給材料は、焼結後、互いに約1%以下だけ相違する量だけ収縮する。
更に、焼結後、第一の2つの供給材料が収縮する量を少なくとも10%だけ上廻る程度、収縮するという1つの重要な性質を有する第三の供給材料が提供される。この場合、供給材料は、パラフィンワックスのようなワックス及びポリエチレンのような熱可塑剤を含むバインダのみから作成することができる。
【0050】
次に、適宜な供給材料を圧縮成形して、ハンドルの形状を有する未焼成部品(図10の参照番号92を参照)を作成し、その後、その部品を第二の金型に搬送し、この金型内には、第三の供給材料の十分な量が射出されて、未焼成部品に対し、円筒状のピン−緩衝体の形状を有する伸長体(図10の参照番号94を参照)を付与する。次に、この改変した未焼成部品を第三の金型に搬送し、この第三の金型内にピン−緩衝体形状の伸長部を取り巻くのに十分な量の最終的な供給材料を射出する(図10の参照番号93を参照)。
【0051】
次に、未焼成部品が固体の連続的材料となるように焼結することのできる粉体の骨格体となるように、全ての潤滑剤及びバインダを除去する。焼結後、最初に第三の供給材料の部品であった材料の残滓を機械的及び(又は)化学的手段により除去し、その結果、ダイキャビティ(図10に参照番号94として概略図的に図示)が形成されるようにすることができる。
【0052】
本発明は、その好ましい実施の形態に関して特に図示し且つ説明したが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに形態及び細部の点にて色々な変更を加えることができることが当該技術分野の当業者に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】1aは、異なる材料で出来た隣接する2つの部品の焼結前の図である。 1bは、異なる材料で出来た2つの隣接する部品の焼結後の図である。
【図2】2aは、本発明の過程のステップを示す図である。 2bは、本発明の過程のステップを示す別の図である。
【図3】図2bに断面図で図示した物品の等角図である。
【図4】1つの非磁性部品、1つの硬磁石、1つの軟磁石という3つの部品を有する1つの物品の平面図である。
【図5】図4の中心に沿った断面図である。
【図6】1つの物品が囲い物内で形成される第二の実施の形態の過程のステップを示す図である。
【図7】1つの物品が囲い物内で形成される第二の実施の形態を示す図6と別のステップを示す図である。
【図8】1つの物品が囲い物内で形成される第二の実施の形態を示す図6と別のステップを示す図である。
【図9】本発明を適用することにより形成された切断工具の図である。
【図10】本発明を適用することにより形成されたワイヤーダイの図である。
【符号の説明】
【0054】
11、12 未焼成物品 13 境界面
21 リング/第一の未焼成部品 22 穴
23 部品 33 ロッド
41 リング/軟磁石 42 中間リング/硬磁石
43 内側リング 44 開口部
52 側壁 61 未焼成形部品
71 未焼成形態部品 81 部品
82 内部空間 92 ハンドルの形状を有する未焼成部品
93 ピン−緩衝体の伸長部
94 円筒状のピン−緩衝体の形状を有する伸長体/ダイキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有する複合的焼結物品を製造する方法において、
(a)粉体材料の混合体の1つの群であって、該群の構成要素の各々が、焼結後、その群のその他の任意の構成要素が焼結後に有する機能上の性質と相違する一つの機能上の性質を有する、前記混合体の群を提供するステップと、
(b)前記混合体の群の全ての構成要素に対し潤滑剤及びバインダを追加し、これにより、第一の供給材料の群を形成し、該群の全ての構成要素が焼結後、互いに1%以下だけ相違する量だけ収縮するようにするステップと、
(c)焼結後、前記第一の供給材料の群の任意の構成要素が収縮する量の少なくとも10%だけ上廻る量だけ、焼結後、収縮する第二の群の供給材料を形成するステップと、
(d)金型内にて、何れかの供給材料の群からの供給材料を圧縮成形して未焼成部品を形成するステップと、
(e)前記未焼成部品を異なる金型に搬送し、次に、何れかの供給材料の群から得られたある量の異なる供給材料を前記異なる金型内に射出するステップと、
(f)双方の供給材料の群の全ての構成要素が成形される迄、毎回、異なる金型及び異なる供給材料を使用してステップ(d)及び(e)を繰り返して、これにより最終的な複合的未焼成部品を形成するステップと、
(g)最終的な複合的未焼成部品から全ての潤滑剤及びバインダを除去して、粉体骨格体を形成するステップと、
(h)粉体骨格体を焼結するステップと、
(i)全てのルーズな部品を除去し、これにより前記複合的焼結物品を形成するステップとを含む、連続的ステップとからなる、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記機能上の性質が、磁性、耐食性、制御された多孔度、高熱伝導率、高密度、高強度、低熱膨張、耐摩耗性、高弾性係数、高減衰能力、良機械加工性、耐疲労性、高硬度、高靭性、高融点、抗酸化性、易接続性及び低内部応力から成る群から選ばれる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、ルーズな部品の除去が機械的又は化学的手段により実現される、方法。
【請求項4】
構造体において、
少なくとも2つの部品を有する連続体を備え、該部品の各々が、取付け媒体として機能する以外の1つの機能を果たすように最適化され、前記部品が成形法により形成することのできる任意の形状を有する、構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の構造体において、任意の所定の部品が果たし得るように最適化される機能が、磁性、耐食性、制御された多孔度、高熱伝導率、高密度、高強度、低熱膨張、耐摩耗性、高弾性係数、高減衰能力、良機械加工性、耐疲労性、高硬度、高靭性、高融点、抗酸化性、易接続性及び低内部応力から成る群から選ばれる、構造体。
【請求項6】
請求項4に記載の構造体において、構造体の一部として少なくとも1つのキャビティを更に備える、構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−342430(P2006−342430A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175269(P2006−175269)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【分割の表示】特願2002−190193(P2002−190193)の分割
【原出願日】平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願人】(500167146)アドヴァンスト・マテリアルズ・テクノロジーズ・ピーティーイー・リミテッド (4)
【Fターム(参考)】