説明

複合粒子製造方法

【課題】 粒度の揃った金属粒子を担体の表面に強い吸着力で担持することができる複合粒子製造方法を提供すること。
【解決手段】 金属粒子と溶媒とを含有するコロイド溶液を準備する準備工程と、前記コロイド溶液と担体とを混合して、混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、前記混合溶液にアルコールを混合して、前記担体の表面に金属粒子が接合又は担持された複合粒子を作製する複合粒子作製工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体の表面に金属粒子が接合又は担持された複合粒子を作製する複合粒子製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粒子径が1μm以下であるナノ粒子は、そのサイズの微小さや表面積の大きさから、医療・診断分野やバイオテクノロジー分野や環境関連分野等への応用が期待されてきている。例えば、生体内に注入された異物は、生体防御機構によって排除されるが、ナノ粒子は異物であっても生体防御機構を回避でき、さらに血管壁を透過して組織や細胞内にも取り込まれるため、ドラッグデリバリーシステム(DDS)における薬剤や遺伝子のキャリアとして有望視されている。
【0003】
さらに、粒子径が1μm以下であるナノ粒子(担体)の表面に、粒子径が10nm程度である金属粒子を担持させた複合粒子の開発が進められている。このような複合粒子の製造方法としては、例えば、(1)含浸法(加熱法)や(2)還元法等が開示されている(特許文献1参照)。
(1)含浸法では、金属酸化物(担体)を含有する水溶液に、pH7〜11の条件下で、Au化合物を含有する水溶液を滴下した後、100〜800℃に加熱することで、金属酸化物の表面に、粒子径が250オングストローム(25nm)以下であるAu粒子(金属粒子)が担持された複合粒子を作製している。
(2)還元法では、金属酸化物(担体)と金化合物とを含有する水溶液に、pH7〜11の条件下で、還元剤(ヒドラジン、ホルマリン等)を滴下することで、金属酸化物の表面に、粒子径が250オングストローム以下であるAu粒子(金属粒子)が担持された複合粒子を作製している。
【0004】
また、他の複合粒子の製造方法として、(3)γ線照射法や(4)超音波を利用する方法も開示されている。
(3)γ線照射法では、TiOナノ粒子(担体)を含むAu水溶液中に60Coガンマ線を照射して、TiOナノ粒子の表面に、Au粒子(金属粒子)が担持された複合粒子を作製している。
(4)超音波を利用する方法では、担体を含むテトラクロロパラデート(Pd)水溶液中に超音波を照射して、担体の表面に、Pd粒子(金属粒子)が担持された複合粒子を作製している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5−34284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、(1)含浸法や(2)還元法や(3)γ線照射法や(4)超音波を利用する方法は、担体の表面に担持された金属粒子の粒子径がかなりばらつくものであり、特に、医療・診断分野において実用できる性能を有する複合粒子を作製することができなかった。すなわち、複合粒子は、医療・診断分野での活用が期待されているものの、(1)含浸法や(2)還元法や(3)γ線照射法や(4)超音波を利用する方法では、解明されていない複雑なメカニズムを経るものと考えられ、粒度の揃った金属粒子を担体の表面に担持することができない問題点があった。また、金属粒子を複雑な構造を持つコアシェル構造等とすることもできなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明者らは、上記課題を解決するために、複合粒子を作製する複合粒子製造方法について検討を行った。(1)含浸法や(2)還元法や(3)γ線照射法や(4)超音波を利用する方法は、金属化合物と溶媒と担体とを混合して、溶液を作製する溶液作製工程と、ある条件下で加熱したり還元剤を滴下したりガンマ線を照射したり超音波を照射したりすることで、担体の表面に金属粒子が担持された複合粒子を作製する複合粒子作製工程とを含むことになる。つまり、複合粒子作製工程で、金属化合物の金属粒子を作製しながら、担体の表面に金属粒子も担持していくことになる。そのため、あらかじめ粒子径、構造を制御して作製した金属粒子を、そのままの状態で担体に担持することは困難であった。
よって、金属化合物の金属粒子を作製する工程と、担体の表面に金属粒子を担持していく工程とを分離することとした。しかし、金属化合物の所望の金属粒子を作製する工程を実行し、その後、担体の表面に金属粒子を担持していく工程を実行したが、担体の表面に所望の金属粒子を強い吸着力で担持することができなかった。そこで、様々な検討をした結果、金属化合物の所望の金属粒子を作製する工程を実行し、その後、担体の表面に金属粒子を担持していく工程を実行する際には、所定量のアルコールを添加することにより、担体の表面に所望の金属粒子を強い吸着力で担持することができることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の複合粒子製造方法は、金属粒子と溶媒とを含有するコロイド溶液を準備する準備工程と、前記コロイド溶液と担体とを混合して、混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、前記混合溶液にアルコールを混合して、前記担体の表面に金属粒子が接合又は担持された複合粒子を作製する複合粒子作製工程とを含み、前記複合粒子作製工程において、前記アルコールの添加量は、前記混合溶液100体積部に対して、30体積部以上1000体積部以下であるようにしている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の複合粒子製造方法によれば、所望の金属粒子が接合又は担持された複合粒子を、容易に作製することができる。すなわち、粒度の揃った金属粒子を担体の表面に担持することもできし、コアシェル構造の金属粒子を担体の表面に担持することもできる。
【0010】
(他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明の複合粒子製造方法は、前記アルコールは、メタノール、エタノール又は2−プロパノールであるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の複合粒子製造方法は、前記溶媒は、水であるようにしてもよい。
また、本発明の複合粒子製造方法は、前記金属粒子は、コアシェル構造であるようにしてもよい。
【0012】
そして、本発明の複合粒子製造方法は、前記金属粒子の平均粒子径は、1nm以上500nm以下であるようにしてもよい。
さらに、本発明の複合粒子製造方法は、前記担体の平均粒子径は、30nm以上1μm以下であるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】紫外可視光吸光度スペクトルである。
【図2】紫外可視光吸光度スペクトルである。
【図3】実施例1に係る複合粒子のTEM写真である。
【図4】実施例2に係る複合粒子のTEM写真である。
【図5】実施例3に係る複合粒子のTEM写真である。
【図6】実施例4に係る複合粒子のTEM写真である。
【図7】実施例5〜7に係る複合粒子のTEM写真である。
【図8】比較例1に係る複合粒子のTEM写真である。
【図9】比較例2に係る複合粒子のTEM写真である。
【図10】比較例5に係る複合粒子のTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0015】
本発明に係る複合粒子製造方法は、金属粒子と溶媒とを含有するコロイド溶液を準備する準備工程(A)と、コロイド溶液と担体粒子とを混合して、混合溶液を作製する混合溶液作製工程(B)と、混合溶液にアルコールを混合して、担体粒子の表面に金属粒子が担持された複合粒子を作製する複合粒子作製工程(C)と、複合粒子と溶媒及びアルコールとを分離する回収工程(D)とを含むことになる。
【0016】
(A)準備工程
金属粒子と溶媒とを含有するコロイド溶液を準備する。
上記溶媒としては、例えば、水等が挙げられる。
上記金属粒子としては、例えば、Au−Pd粒子、金、銀、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、レニウム等が挙げられるが、本発明に係る複合粒子製造方法では、Au−Pd粒子等のコアシェル構造を有する金属粒子を使用することができる。そして、金属粒子の平均粒子径としては、所望の平均粒子径とすることができるが、1nm以上500nm以下であるものを用いることが好ましい。
なお、コロイド溶液には、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム等)、水溶性高分子化合物(例えば、ポリビニルアルコール等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等)、ポリオール類(アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン等)、カルボン酸類(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸等)等が含有されていてもよい。
また、このようなコロイド溶液は、公知の製造方法にて作製されればよい。例えば、テトラクロロパラデート(Pd)水溶液中に超音波を照射することにより、Pd粒子(金属粒子)を作製してもよい。
【0017】
(B)混合溶液作製工程
コロイド溶液と所定量の担体粒子とを混合して攪拌して、混合溶液を作製する。
このとき、攪拌の方法としては、担体粒子を均一に分散することができればよく、例えば、超音波洗浄機を用いること等が挙げられる。
上記担体粒子としては、例えば、チタニア(TiO)、アルミナ、セリア等が挙げられる。そして、担体粒子の平均粒子径としては、所望の平均粒子径とすることができるが30nm以上1μm以下であるものを用いることが好ましい。さらに、混合溶液中における担体粒子の所定量は、13.2重量%以下であることが好ましく、0.38重量%以上13.0重量%以下であることがより好ましい。
【0018】
(C)複合粒子作製工程
混合溶液を攪拌しながら所定量のアルコールを混合して、担体粒子の表面に金属粒子が担持された複合粒子を作製する。
このとき、攪拌の方法としては、例えば、スターラを用いること等が挙げられる。
上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等が挙げられるが、エタノール、メタノール、2−プロパノールであることが好ましい。さらに、アルコールの添加量は、混合溶液100体積部に対して、30体積部以上1000体積部以下であり、100体積部であることが好ましい。30体積部未満であると、金属粒子が担体粒子の表面に接合又は担持されない。
【0019】
(D)回収工程
複合粒子と溶媒及びアルコールとを分離する。
このとき、回収の方法としては、例えば、フィルタ、遠心分離器等を用いること等が挙げられる。
【0020】
以上のように、本発明に係る複合粒子製造方法によれば、所望の金属粒子が接合又は担持された複合粒子を、容易に作製することができる。すなわち、粒度の揃った金属粒子を担体粒子の表面に担持することもできし、コアシェル構造の金属粒子を担体粒子の表面に担持することもできる。また、加熱する工程や温度を調整する工程も必要でなくなるため、高温で安定性が悪い金属粒子が接合又は担持された複合粒子を、容易に作製することができる。さらに、pHを調整する工程も必要でなくなるため、金属粒子が接合又は担持された複合粒子を、容易に作製することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【実施例1】
【0022】
<100体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持>
(A)準備工程
0.5mmol/LのNaAuCl4・2H2Oと、0.5mmol/LのPdCl2・2NaCl・3H2Oと、8mmol/Lのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、60mlの水とを含有する溶液を、ガラス製のバイアルビンに入れた。その後、バイアルビンの内部に存在する空気を、アルゴンガスに置換した。
そして、20℃で、周波数200kHz、出力4.2W/cmの条件下で超音波照射を行い、Au−Pd粒子(コアシェル構造の金属粒子、平均粒子径9nm)とSDSと水(溶媒)とを含有するコロイド溶液を得た。
【0023】
(B)混合溶液作製工程
40mgのTiO(「P25」、平均粒子径30nm)と、10mlのコロイド溶液とを混合して、超音波洗浄機を用いて攪拌して、混合溶液を作製した。なお、混合溶液中におけるTiOの量は、13.2重量%である。
(C)複合粒子作製工程
混合溶液をスターラで攪拌しながら10mlのエタノールを混合して、TiOの表面にAu−Pd粒子が担持された複合粒子を作製した。
(D)回収工程
複合粒子と水及びエタノールとを、口径25nmのフィルタを用いて分離することにより、実施例1に係る複合粒子を得た。
【実施例2】
【0024】
<100体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持>
実施例1における10mgのTiO(「P25」)の代わりに、25mgのTiO(「P25」)を使用したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る複合粒子を得た。
【実施例3】
【0025】
<100体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持>
実施例1における40mgのTiO(「P25」、平均粒子径30nm)の代わりに、40mgのTiO(「ST41」、平均粒子径200nm)を使用し、さらに10mlのコロイド溶液と10mlのエタノールとを混合した代わりに、20mlのコロイド溶液と20mlのエタノールとを混合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る複合粒子を得た。
【実施例4】
【0026】
<30体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持>
実施例1における40mgのTiO(「P25」、平均粒子径30nm)の代わりに、50mgのTiO(「ST41」、平均粒子径200nm)を使用し、さらに10mlのコロイド溶液と10mlのエタノールとを混合した代わりに、10mlのコロイド溶液と3mlエタノールとをそれぞれ混合したこと以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る複合粒子を得た。なお、TEM試料として、実施例4に係る複合粒子を含む混合溶液を攪拌して、TEMメッシュに滴下し作製したものを用いた。
【実施例5】
【0027】
<30体積部のエタノールの添加によるAu粒子の担持>
(A)準備工程
0.5mmol/LのNaAuCl4・2H2Oと、8mmol/LのSDSと、60mlの水とを含有する溶液を、ガラス製のバイアルビンに入れた。その後、バイアルビンの内部に存在する空気を、アルゴンガスに置換した。
そして、20℃で、周波数200kHz、出力4.2W/cmの条件下で超音波照射を行い、Au粒子(金属粒子、平均粒子径9nm)とドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と水(溶媒)とを含有するコロイド溶液を得た。
【0028】
(B)混合溶液作製工程
50mgのTiO(「ST41」、平均粒子径200nm)と、10mlのコロイド溶液とを混合して、超音波洗浄機を用いて攪拌して、混合溶液を作製した。
(C)複合粒子作製工程
混合溶液をスターラで攪拌しながら3mlのエタノールを混合して、TiOの表面にAu粒子が担持された複合粒子を作製した。
(D)回収工程
TEM試料として、実施例5に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を攪拌して、TEMメッシュに滴下し作製したものを用いた。
【実施例6】
【0029】
<30体積部のメタノールの添加によるAu粒子の担持>
実施例5における3mlのエタノールの代わりに、3mlのメタノールを使用したこと以外は実施例5と同様にして、実施例6に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
【実施例7】
【0030】
<30体積部の2−プロパノールの添加によるAu粒子の担持>
実施例5における3mlのエタノールの代わりに、3mlの2−プロパノールを使用したこと以外は実施例5と同様にして、実施例7に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
【0031】
<比較例1>従来技術によるAu−Pd粒子の担持
0.5mmol/LのNaAuCl4・2H2Oと、0.5mmol/LのPdCl2・2NaCl・3H2Oと、8mmol/Lのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と、60mlの水と、300mgのTiO(「ST−41」、平均粒子径200nm)とを含有する溶液を、ガラス製のバイアルビンに入れた。その後、バイアルビンの内部に存在する空気を、アルゴンガスに置換した。
そして、20℃で、周波数200kHz、出力4.2W/cmの条件下で超音波照射を行い、TiOとAu−Pd粒子(コアシェル構造の金属粒子、平均粒子径17nm)の混合溶液を作製した。
その後、この混合溶液を、口径25nmのフィルタを用いて分離することにより、比較例1に係る複合粒子を得た。
【0032】
<比較例2>0体積部のアルコールの添加によるAu−Pd粒子の担持
実施例4における3mlのエタノールの代わりに、エタノールを使用しなかったこと以外は実施例4と同様にして、比較例2に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
<比較例3>5体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持
実施例4における3mlのエタノールの代わりに、0.5mlのエタノールを使用したこと以外は実施例4と同様にして、比較例3に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
<比較例4>10体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持
実施例4における3mlのエタノールの代わりに、1mlのエタノールを使用したこと以外は実施例4と同様にして、比較例4に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
<比較例5>20体積部のエタノールの添加によるAu−Pd粒子の担持
実施例4における3mlのエタノールの代わりに、2mlのエタノールを使用したこと以外は実施例4と同様にして、比較例5に係る複合粒子を含む混合溶液(複合粒子溶液)を得た。
【0033】
<評価1>紫外可視光吸光度測定
実施例3〜7及び比較例2〜5に係る複合粒子溶液を遠心分離したのち、上澄み液に対し紫外可視光吸光度測定を行った。なお、遠心分離の条件は、粒子径が大きいTiOは沈殿するが、粒子径が小さいAu粒子は沈殿しない5000rpm、5分間とした。このとき、Au粒子がTiOの表面に担持されていれば、TiOとともに沈殿することになる。
図1は実施例3,4及び比較例2〜5に係る複合粒子溶液を遠心分離した後の上澄み液及び複合粒子のみの溶液の紫外可視光吸光度スペクトルであり、図2は実施例5〜7に係るナノ粒子溶液の紫外可視光吸光度スペクトルである。
図1に示すように、エタノールの添加量が2ml以下であるときには、吸光度スペクトルがAuPdSDS(溶液、ベースライン)と比較して大きく変化せずTiOの表面にAu−Pd粒子が担持されていない(比較例2〜5)。一方、エタノール添加量が3ml以上であるときには、TiOの表面にAu−Pd粒子が担持された(実施例3、4)。
図2からわかるように、メタノール(実施例6)、エタノール(実施例5)、2−プロパノール(実施例7)いずれのアルコールにおいても吸光度スペクトルは、AuSDS(溶液、ベースライン)と比較して減少し、Auナノ粒子はTiOの表面に担持された。
【0034】
<評価2>透過型電子顕微鏡(TEM)観察
実施例1〜3及び比較例1に係る複合粒子をTEMにより倍率9万倍で写真を撮影した。実施例4〜7及び比較例2,5に係る複合粒子をTEMにより倍率3万6千倍で写真を撮影した。
図3は、実施例1に係る複合粒子のTEM写真であり、図4は、実施例2に係る複合粒子のTEM写真であり、図5は、実施例3に係る複合粒子のTEM写真であり、図6は、実施例4に係る複合粒子のTEM写真であり、図7は、実施例5〜実施例7に係る複合粒子のTEM写真である。図8は、比較例1に係る複合粒子のTEM写真であり、図9は、比較例2に係る複合粒子のTEM写真であり、図10は、比較例5に係る複合粒子のTEM写真である。
【0035】
図3〜図6に示すように、実施例1〜4に係る複合粒子では、TiOの表面にAu−Pd粒子(平均粒子径9nm)が多数担持されている。このとき、TiOの表面に担持されるAu−Pd粒子の粒子径は、かなり揃っていることがわかる。また、TiOの表面に、Au−Pd粒子が強い吸着力で担持されていることもわかる。
また、図7に示すように、実施例5〜7に係る複合粒子(Au粒子)では、Au粒子がTiOの表面に多数担持されている。すなわち、いずれのアルコールを使用しても、Au粒子をTiOの表面に多数担持することができることがわかる。
一方、図8に示すように、比較例1に係る複合粒子では、TiOの表面にAu−Pd粒子(平均粒子径17nm)がほとんど担持されていない。また、図9に示すように、比較例2に係る複合粒子ではTiOの表面にAu−Pd粒子(平均粒子径9nm)がほとんど担持されていない。さらに、図10に示すように、比較例3に係る複合粒子ではTiOの表面にAu粒子(平均粒子径9nm)がほとんど担持されていない。
【0036】
以上のように、実施例1〜7に係る複合粒子は、粒度の揃ったAu−Pd粒子やAu粒子をTiOの表面に担持することができ、コアシェル構造のAu−Pd粒子もAu粒子と同等にTiOの表面に担持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、担体の表面に金属粒子が接合又は担持された複合粒子を作製する複合粒子製造方法等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子と溶媒とを含有するコロイド溶液を準備する準備工程と、
前記コロイド溶液と担体とを混合して、混合溶液を作製する混合溶液作製工程と、
前記混合溶液にアルコールを混合して、前記担体の表面に金属粒子が接合又は担持された複合粒子を作製する複合粒子作製工程とを含み、
前記複合粒子作製工程において、前記アルコールの添加量は、前記混合溶液100体積部に対して、30体積部以上1000体積部以下であることを特徴とする複合粒子製造方法。
【請求項2】
前記アルコールは、メタノール、エタノール又は2−プロパノールであることを特徴とする請求項1に記載の複合粒子製造方法。
【請求項3】
前記溶媒は、水であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の複合粒子製造方法。
【請求項4】
前記金属粒子は、コアシェル構造であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の複合粒子製造方法。
【請求項5】
前記金属粒子の平均粒子径は、1nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の複合粒子製造方法。
【請求項6】
前記担体の平均粒子径は、30nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の複合粒子製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−140405(P2011−140405A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−351(P2010−351)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】