説明

複合緩衝構造

開示は、主表面を有するフルオロポリマー層と、フルオロポリマー層の主表面上に重ねられたポリマー層とを含む複合緩衝構造に向けられている。複合構造は、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、複合緩衝構造およびこのような構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD電子製品の製造においては、回路の電子部品を表示スクリーンの電子部品に接着することが必要であった。これを達成するため、2つの電子部品セットの間に熱により活性化される異方性導電膜(ACF)が使用される。表示スクリーン電子部品に対する回路のボンディングは、典型的に、ACFを活性化するためにホットプレスすなわち熱と圧力を用いるヒートシールプロセスを用いて達成される。
【0003】
ヒートシールプロセス中、電子部品を、鋼製工具ヘッドにより加えられる圧壊または損傷から保護する必要があり、非平面部分を適合させる必要がある。同時に、工具ヘッドを、電子部品の間の露出部域から工具ヘッドに対し接着するかもしれないACFから保護する必要がある。従来、保護様式は、スカイブしたPTFE(2ミルまたは6ミル)、シリコーンシート、PTFEコーティングされたファブリック(2.0ミル)、またはPTFE、シリコーンおよび金属シートの組合せに由来するものであった。これらの材料は、材料の連続ロールの形をしており、シートを順方向にインデクシングし、ヒートシール部域内にバージン部域を提供できるようになっている。電子部品に粘着する、または例えば10サイクル未満の短いサイクルの後に欠陥を呈するいずれかのことに関して、これらの材料に問題が発生してきた。
【0004】
LCDテレビのサイズの大型化および経済的圧力に伴って、工具ヘッドから電子部品を緩衝し、電子部品の全長にわたって圧力を水準化し、電子部品をACFから剥離させるのに役立つ複合材を提供することに対する関心が高まってきた。期待されるのは、緩衝用製品が、多数のヒートシールサイクルの下でその特性を維持する能力を有し、サイクルあたりのコストを削減するという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改良型緩衝用材料ならびにこのような緩衝用材料を製造するための方法を提供することが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、複合緩衝構造が提供される。複合緩衝構造は、主表面を有するフルオロポリマー層と、フルオロポリマー層の主表面上に重ねられたポリマー層とを含む。複合構造は、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる。
【0007】
別の例示的実施形態において、複合緩衝構造が提供される。複合構造は、主表面を有するフルオロポリマー層と、フルオロポリマー層の主表面上に重ねられたそのポリマー層を含む。ポリマー層は、ポリマー層の総重量の最高約75重量パーセントで存在する熱伝導性充填材を含む。複合構造は、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる。
【0008】
本開示は、添付図面を参照することによってより良く理解でき、その数多くの特徴および利点が当業者にとって明白になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】例示的複合緩衝構造の説明図を含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特定の一実施形態において、複合緩衝構造は、主表面を有するフルオロポリマーを含む。複合構造はさらに、フルオロポリマー層の主表面の上に重ねられたポリマー層を含む。一実施形態において、フルオロポリマー層は、間に層が全く介在しない状態でポリマー層の主表面上に直接配置されてもよく、この表面と直接接着する。一実施形態において、複合緩衝構造は、ホットプレスのヒートプラテンと直接接触した状態で設置される。典型的には、ホットプレスは、電子部品の対面する2つの層の間に挟まれている異方性導電膜(ACF)をヒートシールするために使用される。例示的実施形態においては、複合緩衝構造は、ヒートシールプラテンから電子部品を緩衝する作用を提供する。さらに、複合緩衝構造は、ヒートシールプロセス中にヒートシールプラテンからの電子部品に対する圧力を水準化する。
【0011】
フルオロポリマー層を形成するのに使用される例示的フルオロポリマーには、例えばテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、ペルフルオロメチルビニルエーテルなどのモノマーから形成されたホモポリマー、コポリマー、タ−ポリマーまたはポリマーブレンド、またはその任意の組合せが含まれる。例えば、フルオロポリマーはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である。例示的フルオロポリマー膜は、流延、スカイビングまたは押出しされてもよい。ポリテトラフルオロエチレンはSGPPLから市販されている。
【0012】
さらなる例示的フルオロポリマーとしては、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンを含むターポリマー(THV)またはそれらの任意のブレンドまたは任意のアロイが含まれる。例えば、フルオロポリマーはFEPを含んでいてもよい。さらなる実施例において、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンとペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)を含んでいてもよい。例示的実施形態において、フルオロポリマーは、電子ビームなどの放射線を通して架橋可能なポリマーであってもよい。例示的な架橋性フルオロポリマーとしては、ETFE、THV、PVDFまたはそれらの任意の組合せが含まれていてもよい。
【0013】
一実施形態においては、フルオロポリマー層とそれが直接接触する層との接着力が改善するように、フルオロポリマー層を処理してもよい。一実施形態において、この処理には、表面処理、化学的処理、ナトリウムエッチング、プライマーの使用またはこれらの任意の組合せが含まれていてもよい。一実施形態において、処理には、化学的処理例えばナトリウムナフタレン表面処理またはナトリウムアンモニア表面処理が含まれる。一実施形態では、処理には、コロナ処理、UV処理、電子ビーム処理、火炎処理、スカッフィングまたはそれらの任意の組合せが含まれていてもよい。
【0014】
典型的には、フルオロポリマー層は、約0.1ミル〜約3.0ミルの厚みを有する。例えば、フルオロポリマー層は約0.15ミル〜約0.30ミルの厚みを有していてもよい。一実施形態において、フルオロポリマー層は、約2.0ミル〜約3.0ミルの厚みを有していてもよい。
【0015】
ポリマー層はフルオロポリマー層の上に重ねられる。一実施形態において、ポリマー層は、フルオロポリマー層と直接接触する。ポリマー層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂などのポリマー材料を含む。例示的ポリマー材料としては、シリコーンを含み得る。一実施形態において、ポリマー材料には、ポリアルキルシロキサン類を含み得るシリコーン、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルプロピルシロキサンまたはそれらの組合せなどの前駆物質で形成されたシリコーンポリマーが含まれる。一実施形態において、シリコーンは、高粘度ゴム状物質(HCR)である。例示的シリコーンは、液状シリコーンゴム(LSR)例えば架橋性液状シリコーンゴムである。市販の架橋性液状シリコーンゴムは、2液型液状シリコーンゴムである。シリコーンは触媒作用、例えば白金触媒作用、過酸化物触媒作用またはそれらの組合せを受けてもよい。このような液状シリコーンゴムは、例えばWacker社およびDow Corning社から入手してもよい。さらなるポリマー材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはそれらの任意の組合せが含まれていてもよい。緩衝用、水準化用およびホットプレス条件に適した任意のポリマー層が企図される。
【0016】
一実施形態において、ポリマー層は熱伝導性充填材を含んでいてもよい。特定の一実施形態において、熱伝導性充填材は、ポリマー層の総重量の約20重量パーセント超、例えば約25重量パーセント超、例えば約30重量パーセント超、例えば約40重量パーセント超、例えば約50重量パーセント超、例えば約60重量パーセント超またさらには最高約75重量パーセントの量で存在する。ポリマー層を通した伝導性を改善する任意の熱伝導性充填材が企図されてもよい。熱伝導性充填材は好ましくは、ASTM D1530にしたがって測定した場合に、約0.5〜1000.0Watts/meter−Kのバルク熱伝導率を有するさまざまな材料から選択される。適切な熱伝導性充填材の例としては、窒化ホウ素、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ベリリウム、炭化ケイ素、ニッケル粉末、銅フレーク、黒鉛粉末、粉末ダイアモンド、酸化鉄、カーボンブラックおよびその混合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、熱伝導性充填材は酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化鉄、カーボンブラックまたはそれらの組合せである。特定の一実施形態においては、熱伝導性充填材の粒径、粒径分布および充填材使用量(ポリマー層中の濃度)は、充填率を最大にして最も効率の良い熱伝導性を生み出すように選択される。例えば、熱伝導性充填材の粒径は、約2ミクロン〜約100ミクロンであってもよい。特定の一実施形態においては、熱伝導性充填材の添加によりスリップ層の必要性が無くなるかもしれない。一実施形態においては、ポリマー層は、実質的にいかなる酸化ケイ素も含まない。すなわち、ポリマー層内に酸化シリコーンは存在しない。
【0017】
典型的には、ポリマー層は、少なくとも約0.5ミルの厚みを有する。例えばポリマー層は、約7.0ミル〜約25.0ミル、例えば約7.0ミル〜約9.0ミルの厚みを有していてもよい。
【0018】
一実施形態においては、強化層を使用してもよい。この強化層は、構造に補強を提供するため、複合構造内部の任意の位置に配置されてもよい。例えば、強化層は、ポリマー層と接触した状態にある。一実施形態においては、強化層は、ポリマー層の主表面上に重ねられていてもよい。一実施形態においては、強化層は、ポリマー層内に実質的に埋め込まれてもよい。本明細書で使用される「実質的に埋め込まれた」という用語は、強化層の総表面積の少なくとも25%、例えば少なくとも約50%さらには100%がポリマー層内に埋め込まれている強化層を意味する。一実施形態では、ポリマー層の少なくとも約25%さらには約50%さらには約100%が、フルオロポリマー層と直接接触している。強化層は、複合構造の強化特性を増大させる任意の材料であり得る。例えば、強化層は天然繊維、合成繊維またはその組合せを含んでいてもよい。一実施形態において、繊維はニット、レイドスクリム、ブレード、織布または不織布の形態をしていてもよい。例示的強化繊維としては、ガラス、アラミドなどが含まれる。一実施形態において、強化繊維は、ガラス繊維例えばガラス繊維織布である。強化層の厚みは、約5.0ミル未満、例えば約2.0ミル未満さらには約1.0ミル未満であってもよい。
【0019】
場合により、複合構造はさらに、ポリマー層全体を覆って配置されたスリップ層を含んでもよい。一実施形態においてスリップ層は、帯電防止特性を有する。例示的スリップ層は、複合構造の剥離特性を改善する。すなわち、ホットシールプレスの工具ヘッドに粘着しない。特定の一実施形態において、スリップ層は複合構造の摩擦係数を低減させる。例えば、スリップ層は、ホットプレス機器を通して引張られるにつれて複合構造の抗力を低減させる。典型的には、スリップ層は最も外側の層すなわちホットプレスプロセス中ヒートプラテンと接触した状態にある保護被膜であってもよい。一実施形態において、スリップ層は、間に層が全く介在しない状態で、ポリマー層の上に重ねられる。例えば、強化層が使用されない場合、スリップ層は、ポリマー層と直接接触状態にあってもよい。一実施形態において、強化層が存在する場合、スリップ層は、この強化層とポリマー層の上に重ねられていてもよい。
【0020】
スリップ特性を有するあらゆる熱可塑性または熱硬化性材料が企図されてもよい。例示的熱可塑性または熱硬化性材料には、シリコーンが含まれる。一実施形態において、ポリマー材料には、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジプロピルシロキサン、メチルエチルシロキサン、メチルプロピルシロキサンまたはその組合せなどの前駆物質で形成されたシリコーンポリマーなどのポリアルキルシロキサンを含み得るシリコーンが含まれる。例示的材料としては、液状シリコーンゴム(LSR)例えば、帯電防止性が付与されていてもよい架橋性液状シリコーンゴムが含まれる。市販の架橋性液状シリコーンゴムは、Dow Corning(登録商標)3715 Topcoatなどの2液型液状シリコーンゴム組成物である。シリコーンは、触媒作用、例えば白金触媒作用、過酸化物触媒作用またはその組合せを受けてもよい。他の液状シリコーンゴムをWacker社から入手してもよい。さらなるスリップ材料としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂またはそれらの任意の組合せが含まれてもよい。典型的には、スリップ層の厚みは、1.0ミル未満、例えば約0.1ミル〜約1.0ミルである。
【0021】
一実施形態において、スリップ層は帯電防止性にされている。添加剤を含まない材料と比べてスリップ層の帯電防止特性を増大させるために、妥当な任意の添加剤を使用してもよい。帯電防止特性を増大させる添加剤としては、例えばアミン類(第四級アミン等)、カーボンブラック、エステル類、金属類、炭素および黒鉛繊維、無機充填材、例えば酸化アンチモンスズ、酸化インジウムスズ、炭化ケイ素、アンチモンスズ、グレーキャシテライト(灰色錫石)、酸化亜鉛ウィスカ、アルミニウム粉末、銅粉末、金粉末、モリブデン粉末、ニッケル粉末、銀粉末類、金属類でコーティングされた中実および中空ガラス球、導電性ポリマー、例えばポリエチレングリコールおよびそれらの任意の組合せが含まれる。典型的には、添加剤は、スリップ層に対して帯電防止特性を提供するのに有効な量で存在する。一実施形態において、充填材は、スリップ層の総重量の最高4重量パーセント例えば最高10重量パーセントの量で添加されてもよい。
【0022】
複合構造の層は、意図された使用に特異的な他の特性を有していてもよい。例えば、層のいずれかは、ポリマー層の外見または他の物理的特性を変化させるために、充填材、鉱物充填材、金属充填材、安定剤、添加剤、加工助剤、着色剤、またはそれらの任意の組合せを含んでいてもよい。
【0023】
複合緩衝構造100の一例示的実施形態が図1に示されている。複合構造は、主表面104を有するフルオロポリマー層102を含む。ポリマー層106が、フルオロポリマー層102の主表面104の上に重なっている。図1を見ればわかるように、ポリマー層106は、フルオロポリマー層102と直接接触していてもよい。一実施形態においては、複合構造100は、ポリマー層106と接触した状態にある任意の強化層108を含んでいてもよい。図1に示されているように、強化層108は、ポリマー層106上に配置されていてもよい。一実施形態において、複合構造100は、強化層108上に配置された任意のスリップ層110を含んでもよい。
【0024】
一実施形態において、複合構造は、フルオロポリマー層を提供するステップを含む方法を通して形成されてもよい。典型的には、フルオロポリマー層は、任意の妥当な方法により押出し、流延またはスカイブされてもよい。フルオロポリマー層を提供するステップは、担体構造を含んでいてもいなくてもよい。特定の一実施形態において、フルオロポリマーは担体構造上に流延またはコーティングされる。例示的担体構造は、複合構造に対するいかなる物理的損傷もなく複合構造がひとたび形成された時点で、フルオロポリマー層から除去される。典型的担体構造はポリイミド膜であってもよい。担体構造は典型的に、3ミル〜約5ミルの厚みを有する。ひとたびフルオロポリマー層が提供されると、この層は、任意の妥当な表面処理を受けてもよい。特定の一実施形態において、フルオロポリマーは化学的エッチング、例えばナトリウムナフタレンエッチングを受ける。
【0025】
この方法にはさらに、ポリマー層を提供するステップが含まれる。一実施形態において、ポリマー層は、間に層が全く介在しない状態で、フルオロポリマー層上に重ねられ、これに直接接触する。ポリマー層の適用は、典型的に使用される材料により左右される。例えば、ポリマー層を加工してもよい。ポリマー層特に熱可塑性樹脂の加工には、流延、コーティング、押出しまたはスカイビングが含まれてもよい。例えば、複合構造は従来の膜コーティング方法と類似の方法を通して形成されてもよい。一実施形態において、コーティング方法には、押出しコーティング、ナイフオーバーロールおよびリバースロールコーティングヘッドが含まれるが、これらに限定されない。任意の妥当なコーティング方法が企図される。一実施形態においては、ポリマー層は、溶媒和熱可塑性または熱硬化性材料であってもよい。溶媒和熱可塑性または熱硬化性材料は、典型的には、材料の乾燥(溶媒の揮発)および任意の硬化に充分な時間と温度を供給するコーター上で加工される。
【0026】
一実施形態においては、複合構造は強化層を含んでもよい。強化層を配置する方法は、強化層ならびにそれが直接接触する層の材料に左右される。任意の適切な方法を企図してもよい。一実施形態において、強化層はポリマー層上に置かれてもよい。別の実施形態において、強化層は、ポリマー層を提供する前にフルオロポリマー層とポリマー層の間に置かれてもよい。さらなる実施形態において、ポリマー層内に強化層が提供されてよく、例えば市販の材料は、ポリマー層内に実質的に埋め込まれた強化層を含んでいるかもしれない。
【0027】
一実施形態において、複合構造はスリップ層を含んでもよい。スリップ層を複合構造上に設置するために、任意の妥当な方法を使用してもよい。この方法は、典型的には、スリップ層のために使用される具体的材料により左右される。例えば、スリップ層は流延、コーティング、押出し、溶融またはラミネートされてもよい。特定の一実施形態においては、スリップ層は、グラビアコーティングなどにより、コーティングされてもよい。コーティングされる場合、スリップ層は乾燥され硬化されてもよい。
【0028】
担体が使用される場合、複合構造を形成する最終ステップには、担体から複合構造を剥ぎ取るステップが含まれてもよい。複合構造を任意の企図されたサイズにトリミングしてもよい。特定の一実施形態において、複合構造の幅は最高1.5メートルであってもよい。
【0029】
ひとたび形成された時点で、以上で開示した複合緩衝構造の特定の実施形態は、有利にも所望の特性を示す。例えば、複合層は均一な厚みおよび圧縮たわみを有する。さらに、複合層の材料は、典型的には、それらが類似の熱膨張係数を有するような形で選択される。所望の特性としては、帯電防止特性、耐熱性および1つの部域がヒートシール条件中に耐えることのできるサイクル数が含まれてもよい。1サイクルは、加熱加圧下にある時間と「休止」位置にある時間として定義される。典型的には、ホットプレスの各特定時間は、メーカー間および製造されている部品間で変動し得る。例示的実施形態において、全サイクルは、ホットシールプラテンが約330℃〜約400℃の温度および約3.0MPa〜約5.0MPaの圧力にある状態で、電子部品と接触状態にあるホットプレスの約5秒〜約15秒の時間であってもよい。ホットプレスは次に、約1秒〜約5秒間休止状態にあってもよい。一実施形態において、平均的な合計サイクル時間は約20秒である。特定の一実施形態において、複合構造は、その緩衝および剥離特性にマイナスの影響を及ぼす特性または他の物理的変化なしに、少なくとも約15サイクル、例えば約30サイクル超、例えば約40サイクル超、さらには約80サイクル超に耐えられるかもしれない。一実施形態によると、上述の熱サイクリングに耐えるこの構造の能力は、目視、さらに具体的には、構造の物理的劣化の検出のために拡大を援用しない目視に基づいて判断される。
【0030】
一実施形態において、複合構造は、ホットプレスサイクル中、所望の耐熱性を有する。例えば、耐熱性は、ASTM E−1530にしたがって測定した場合約0.85W/mK〜約1.15W/mKであってもよい。一実施形態において、複合構造はホットプレスサイクル中、設定された低い圧縮に耐えることができる。
【0031】
電子部品のヒートシールプロセス向けの緩衝/水準化のために、複合材料は、工具ヘッドすなわちヒートプラテン、電子部品および異方性導電膜(ACF)からの所望の剥離特性を有する。詳細には、複合構造のスリップ層は、ヒートシールプレスのヒートプラテンと直接接触した状態にある。別の実施形態において、スリップ層が存在しない場合、ポリマー層はヒートプラテンと直接接触した状態にあってもよい。典型的には、ヒートプラテンは、セラミクスまたは金属例えば炭素鋼でできている。複合構造は、ヒートプラテンに対する剥離特性を有する。すなわち粘着しない。詳細には、ヒートプラテンと直接接触する複合構造の層、すなわちスリップ層またはポリマー層は、3MPa〜約5MPaの圧力で約330℃〜約400℃の温度の多数回のホットプレスサイクルに耐える剥離特性を有する。さらに、複合構造が任意の電子部品および異方性導電膜(ACF)と接触した状態にある場合、それは所望の剥離特性を有し、多数回の温度および圧力サイクル全体にわたり粘着しない。例えば、フルオロポリマー層は、ボンディングすべき電子部品と直接接触した状態にあってもよい。詳細には、電子部品と接触状態にあるフルオロポリマー層は、フルオロポリマー層と電子部品の間のボンドラインの部位における温度、すなわち3MPa〜約5MPaの圧力で約175℃〜約200℃のボンドライン温度に耐える剥離特性を有する。
【0032】
複合構造のさらなる任意の利用分野としては、例えば、上述の帯電防止特性、耐熱性および/または緩衝特性などの特性が所望される用途が含まれる。複合材料は同様に、企図されている任意の特定の利用分野のために所望される他の特性を有していてもよい。
【実施例】
【0033】
実施例1
支持材料上で例示的試料を作製する。まず第1に、担体として使用されているポリイミド膜(約3ミル〜5ミル)上に約0.25ミルで流延して、PTE膜を融解させる。これは、PTFEの標準的な浸漬コーティング方法を用いて行なう。ポリイミド担体上の膜、つまり流延PTFEを、ナトリウムナフタレンエッチ液を用いて化学エッチングする。
【0034】
まだ担体上にあるエッチングされた膜に、次に約7.0ミル〜約25.0ミルの厚みで液状シリコーンゴムをコーティングし、(必要に応じて)乾燥させ硬化させる。液状シリコーンゴムは、70というショアAデュロメーター硬度を有する2液型白金硬化LSRとして市販されている。まだ担体を伴っている複合材を、今度は、約1.0ミル以下の厚みを有するDow Corning(登録商標)3715 Topcoatを含む帯電防止/スリップコーティングで被覆する。まだ担体を伴っているこの複合材は次に、ポリイミド担体を剥ぎ取り複合材から離すことにより改造される。その後、複合材をサイズに合せてトリミングする。
【0035】
実施例2
ガラス繊維強化を伴う例示的複合材料を作製する。例えば、架橋性液状シリコーンゴム(LSR)のコーティングは、支持された態様を含め、複数の態様をとり得る。第1の態様では、ガラス繊維織物は、それが流延PTFEと密に接触した状態になるような形で、流延PTFE/担体膜と同時にコーティングヘッドを通して補給される。液状シリコーンゴムは、ウェブ通路の幾何形状によりガラス繊維織物を通ってオーブンまで駆動される。一実施形態において、ガラス繊維織物は架橋性液状シリコーンゴム内に実質的に埋め込まれている。オーブンは、液状シリコーンゴムを乾燥させ硬化させるのに充分な温度およびライン速度にある。その後、織物により付与されるあらゆるテクスチャを除去するよう、硬化したシリコーンの上面に液状シリコーンゴムのスキムコーティングを置く。仕上げステップは、実施例1の複合材と同様である。
【0036】
別の実施形態では、複合材中のガラス繊維織物の設置は、約1.0ミル〜約7.0ミルのシリコーンの薄い被膜をコーティングし硬化させることにより、制御可能である。その後、ガラス繊維織物は硬化したシリコーンの上面に補給され、織物の上面に第2の量のシリコーンが塗布される。第2のシリコーン被膜を次に乾燥させ硬化させる。この実施形態において、織物は、複合材の流延PTFE側から離れるように可変的な厚み距離にあり得る。
【0037】
実施例3
第3の例示的試料は、ナトリウムナフタレンエッチングを受けた、エッチング済みPTFE織物(供給業者:SGPPL Kilrush、Irland)の膜である。担体を使用しない点を除き、全てのステップは上述の場合と同じである。例えば、エッチング済みの膜はその後、70というショアAデュロメーター硬度を有する2液型白金硬化LSRでコーティングされ、(必要な場合には)乾燥され硬化される。その後、複合材を、約1.0ミル以下の厚みを有するDow Corning(登録商標)3715 Topcoatを含む帯電防止スリップコーティングで被覆する。
【0038】
3つの試料は全て、約5.0MPaの圧力で約370℃の温度でのヒートシールプレス中、ヒートプラテンおよび電子部品に対して剥離特性を示す。ホットプレスおよび複合緩衝構造は、約5秒の休止時間を伴って約15秒間電子部品と接触状態にある。3つの試料は少なくとも15サイクルに耐えることができる。実施例2の強化された試料は80サイクル超に耐えることができる。
【0039】
以上で開示した主題は、限定的なものではなく例示的なものとみなされるべきであり、添付のクレームは、本発明の真の範囲内に入る全ての修正、拡張および他の実施形態を網羅するように意図されている。したがって、本発明の範囲は、以下のクレームおよびその等価物の許容可能な最も広義の解釈により、法律が許容する最大限度で決定されるべきであり、以上の詳細な説明により制約または限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面を有するフルオロポリマー層と、
前記フルオロポリマー層の前記主表面上に重ねられたポリマー層と;
を含む複合緩衝構造において、前記複合構造が、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる、複合緩衝構造。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデンターポリマー(THV)からなる群から選択される、請求項1に記載の複合構造。
【請求項3】
前記フルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項2に記載の複合構造。
【請求項4】
前記フルオロポリマー層が、約0.1ミル〜約0.3ミルの厚みを有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項5】
前記ポリマー層が熱硬化性材料または熱可塑性材料である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項6】
前記ポリマー材料が液状シリコーンゴム(LSR)または高粘度ゴム状物質(HCR)を含む、請求項5に記載の複合構造。
【請求項7】
前記ポリマー層が、ポリマー層の総重量の最高約75重量パーセントで存在する熱伝導性充填材を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項8】
前記熱伝導性充填材が、アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)、酸化アルミニウム(AlO)、窒化ホウ素、酸化鉄、カーボンブラックまたはそれらの組合せである、請求項7に記載の複合構造。
【請求項9】
前記ポリマー層が約7.0ミル〜約25.0ミルの厚みを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項10】
前記ポリマー層と接触した状態でさらに強化層を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項11】
前記強化層が合成繊維、天然繊維またはそれらの組合せを含む、請求項10に記載の複合構造。
【請求項12】
前記強化層が、ガラス繊維織物である、請求項11に記載の複合構造。
【請求項13】
前記ポリマー層の上に重ねられたスリップ層をさらに含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項14】
前記スリップ層が、熱硬化性材料または熱可塑性材料を含む、請求項13に記載の複合構造。
【請求項15】
前記スリップ層が、架橋性液状シリコーンゴム(LSR)を含む、請求項14に記載の複合構造。
【請求項16】
前記スリップ層が、スリップ防止添加剤をさらに含む、請求項13に記載の複合構造。
【請求項17】
前記スリップ防止添加剤がカーボンブラックである、請求項16に記載の複合構造。
【請求項18】
前記スリップ層が約0.1ミル〜約1.0ミルの厚みを有する、請求項13に記載の複合構造。
【請求項19】
ASTM E−1530にしたがって測定した場合に約0.85W/mK〜約1.15W/mKの耐熱性を有する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項20】
前記ポリマー層が前記フルオロポリマー層と直接接触する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項21】
主表面を有するフルオロポリマー層と、
前記フルオロポリマー層の前記主表面上に横たわり、前記ポリマー層の前記総重量の最高約75重量パーセントで存在する熱伝導性充填材を含むポリマー層と;
を含む複合緩衝構造において、
前記複合構造が、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる、複合緩衝構造。
【請求項22】
前記フルオロポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロプロピルビニルエーテルのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンフッ化ビニリデンターポリマー(THV)からなる群から選択される、請求項21に記載の複合構造。
【請求項23】
前記フルオロポリマーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、請求項22に記載の複合構造。
【請求項24】
前記ポリマー層が熱硬化性材料または熱可塑性材料である、請求項21〜23のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項25】
前記ポリマー材料が液状シリコーンゴム(LSR)または高粘度ゴム状物質(HCR)を含む、請求項24に記載の複合構造。
【請求項26】
前記熱伝導性充填材が、アルミニウムトリヒドロキシド(ATH)、酸化アルミニウム(AlO)、窒化ホウ素、酸化鉄、カーボンブラックまたはそれらの組合せである、請求項21〜25のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項27】
前記ポリマー層と接触した状態でさらに強化層を含む、請求項21〜26のいずれか一項に記載の複合構造。
【請求項28】
前記強化層が合成繊維、天然繊維またはそれらの組合せを含む、請求項27に記載の複合構造。
【請求項29】
主表面を有するポリテトラフルオロエチレン層と;
前記ポリテトラフルオロエチレン層の前記主表面上に重ねられた液状シリコーンゴム層と;
前記液状シリコーンゴム層と接触状態にある強化層と;
前記強化層の上に重ねられた液状シリコーンゴムの帯電防止スリップ層と、
を含む複合緩衝構造。
【請求項30】
前記複合構造が、少なくとも約15サイクルの間、少なくとも約330℃〜約400℃の温度および約3MPa〜約5MPaの圧力でのホットプレスに耐えることができる、請求項29に記載の複合構造。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500176(P2013−500176A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521835(P2012−521835)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/043076
【国際公開番号】WO2011/011701
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】