説明

複合金属酸化物の製造方法

【解決課題】製造コストを低くすることができる複合金属酸化物の製造方法を提供すること。
【解決手段】アルカリ金属を含有する組成物を焼成し、複合金属酸化物を得る際に、該組成物を、該組成物と接触する部位が、セリウム化合物を焼結し得られる成分、又はセリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼結し得られる成分である載置体に配置して焼成することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアルカリ金属を含有する複合金属酸化物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルカリ金属含有複合金属酸化物、例えば、リチウム複合金属酸化物は、リチウムイオン二次電池用の電極として、カリウム複合金属酸化物は、摩擦材料用として有用な化合物である。リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウムニッケルコバルト複合酸化物等が用いられており、また、負極活物質としては、チタン酸リチウム複合酸化物等が用いられている。また、摩擦材料用として、KO・6(TiO)、KO・8(TiO)等が用いられている。
【0003】
これらのアルカリ金属含有複合金属酸化物は、アルカリ金属含有複合金属酸化物を製造するための製造原料の粉末を、匣鉢、坩堝(セッター)等の焼成用の部材に入れて、焼成することによって製造されている。通常、焼成用の部材には、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ムライト、コージェライト等の焼成用の部材が使用されているが、アルカリ金属は侵食性が高いため、焼成用の部材として、反応性が低く、耐久性が高いものを選択する必要がある。例えば、特開2004−63261号公報(特許文献1)には、焼成用の耐火物として、リチウム及びコバルトを含有し、リチウム含有率が2〜5質量%、コバルト含有率が2〜5質量%であるアルミナ、ムライト、コージェライトからなる耐火物が記載されている。
【0004】
また、特開2003−146658号公報(特許文献2)には、容器と焼成原料粉末との間に、炭化する材料からなるシート材を介在させ、焼成を行う複合酸化物の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−63261号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−146658号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルミナ、マグネシア、ジルコニア、ムライト、コージェライト等の焼成用の部材は、アルカリ金属に対する耐食性が十分でないため、アルカリ金属含有複合金属酸化物を焼成した後、焼成用の部材からのアルカリ金属含有複合金属酸化物の剥離性が悪く、生成したアルカリ金属含有複合金属酸化物が焼成用の部材に付着してしまう。
【0007】
焼成用の部材に付着したアルカリ金属含有複合金属酸化物を、製品として使用することはできないため、製品の歩留まりが低下する。そして、従来の焼成用の部材には、繰り返し使用により、アルカリ金属含有複合金属酸化物が付着し易くなるので、焼成用の部材の繰り返し使用回数が増えるほど、製品の歩留まりが低下するということがあった。
【0008】
また、従来の焼成用の部材は、耐熱衝撃性が低いため、繰り返し使用により破損するため、繰り返し使用による耐久性が低いということがあった。
【0009】
これらのことから、従来のアルカリ金属含有複合金属酸化物の製造方法には、アルカリ金属含有複合金属酸化物の製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0010】
また、焼成用の部材へのアルカリ金属含有複合金属酸化物の付着を防ぐために、アルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成原料と耐火物との間に、焼成時に炭化するシート材を介在させる場合は、製造原料を連続的に焼成すること、例えば、ロータリーキルン炉中で焼成することができず、製造効率を向上させることはできないという問題もあった。
【0011】
従って、本発明の目的は、アルカリ金属を含有する複合金属酸化物の製造原料を焼成するにあたって、焼成後のアルカリ金属を含有する複合金属酸化物が焼成用の部材に付着し難く、且つ、焼成用の部材の耐久性を高くすることにより、製造コストを低くすることができる複合金属酸化物の製造方法を供することにある。また、本発明の目的は、更に、製造効率が高いアルカリ金属を含有する複合金属酸化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、セリウム酸化物の焼結体は、焼成時にアルカリ金属を含有する複合金属酸化物が付着し難く、且つ、耐熱衝撃性が高いため、繰り返し使用による耐久性が高いということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、アルカリ金属を含有する組成物を焼成し、複合金属酸化物を得る際に、該組成物を、該組成物と接触する部位が、セリウム化合物を焼結し得られる成分、又はセリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼結し得られる成分である載置体に配置して焼成することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、焼成後のアルカリ金属を含有する複合金属酸化物が載置体に付着し難く、且つ、載置体の耐久性が高くなるので、製造コストを低くすることができる。更に、本発明によれば、製造効率が高い複合金属酸化物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の複合金属酸化物の製造方法は、アルカリ金属を含有する組成物を焼成し、複合金属酸化物を得る際に、該組成物を、該組成物と接触する部位が、セリウム化合物を焼結し得られる成分、又はセリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼結し得られる成分である載置体に配置して焼成することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法である。
【0016】
本発明の複合金属酸化物の製造方法では、複合金属酸化物の原料であるアルカリ金属を含有する組成物を焼成するときに、アルカリ金属を含有する組成物と接触する部位に、セリウム化合物を焼結し得られる成分、又はセリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼結し得られる成分を配置させて焼成する。
【0017】
本発明の複合金属酸化物の製造方法に係るアルカリ金属を含有する組成物は、アルカリ金属を含有する組成物を焼成することによりアルカリ金属を含有する複合金属酸化物を製造するための原料であり(以下、焼成原料とも記載する。)、アルカリ金属化合物を含有する。焼成原料に含有されるアルカリ金属化合物は、複合金属酸化物のアルカリ金属源となる化合物であり、アルカリ金属元素を有する化合物である。焼成原料に係るアルカリ金属元素は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム等であり、これらのうち、リチウム、ナトリウム、カリウムが好ましく、リチウム、カリウムが特に好ましい。焼成原料に係るアルカリ金属化合物としては、焼成原料に係るアルカリ金属元素の酸化物、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、沃化物)、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩等や、焼成原料に係るアルカリ金属原子を有する複合金属酸化物、例えば、アルカリ金属を含有する遷移金属酸化物等が挙げられる。焼成原料に係るアルカリ金属化合物は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0018】
また、焼成原料は、焼成温度よりも低い温度で仮焼成された焼成原料の仮焼成物であってもよい。
【0019】
また、焼成原料としては、焼成により生成させる複合金属酸化物と化学組成が同じ複合金属酸化物が挙げられる。なお、以下、焼成により生成させる複合金属酸化物を、複合金属酸化物Aとも記載し、また、複合金属酸化物Aと化学組成が同じ複合金属酸化物を、複合金属酸化物Bとも記載する。本発明の複合金属酸化物の製造方法において、焼成原料として、焼成により生成させる複合金属酸化物Aと化学組成が同じである複合金属酸化物Bを用いる目的は、焼成により、焼成原料である複合金属酸化物Bの結晶性、反応性、耐火度、耐熱性等の物理的性質を変化させ、複合金属酸化物Bとは物理的性質が異なる複合金属酸化物Aを製造するためである。例えば、本発明の複合金属酸化物の製造方法において、焼成原料として、化学組成がLiTi12(複合金属酸化物B)を用いて、焼成を行うことにより、焼成前のLiTi12(複合金属酸化物B)よりは結晶性が高いLiTi12(複合金属酸化物A)へと、物理的性質を変化させることができる。
【0020】
本発明の複合金属酸化物の製造方法に係るアルカリ金属を含有する組成物は、アルカリ金属化合物以外に、遷移金属化合物、マグネシム化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物を含有していてもよい。アルカリ金属を含有する組成物に含有されている遷移金属化合物は、複合金属酸化物の遷移金属源となる化合物であり、遷移金属元素を有する化合物であり、また、アルカリ金属を含有する組成物に含有されているマグネシウム化合物は、複合金属酸化物のマグネシウム源となる化合物であり、マグネシウムを有する化合物であり、また、アルカリ金属を含有する組成物に含有されているアルミニウム化合物は、複合金属酸化物のアルミニウム源となる化合物であり、アルミニウム元素を有する化合物であり、また、アルカリ金属を含有する組成物に含有されている珪素化合物は、複合金属酸化物の珪素源となる化合物であり、珪素を有する化合物である。アルカリ金属を含有する組成物に係る遷移金属元素は、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、クロム、スカンジウム、チタン、バナジウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ等であり、これらのうち、コバルト、鉄、ニッケル、マンガン、チタンが好ましく、チタンが特に好ましい。アルカリ金属を含有する組成物に係る遷移金属化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物としては、焼成原料に係る遷移金属元素、マグネシウム、アルミニウム又は珪素の酸化物、ハロゲン化物(塩化物、臭化物、沃化物)、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩等が挙げられる。アルカリ金属を含有する組成物に係る遷移金属化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、アルカリ金属を含有する組成物は、アルカリ化合物、遷移金属化合物、マグネシム化合物、アルミニウム化合物及び珪素化合物以外にも、他の金属化合物を含有していてもよい。なお、アルカリ金属を含有する組成物中の各化合物の組み合わせは、どのようなアルカリ金属を含有する複合金属酸化物を製造するかによって、適宜選択される。
【0021】
本発明の複合金属酸化物の製造方法に係る載置体は、アルカリ金属を含有する組成物と接触する焼結用治具や焼成炉の部品であり、例えば、坩堝、匣鉢、セッター、反応管、炉内壁、目砂、組成物の成形体を吊り下げる治具等が挙げられる。
【0022】
本発明の複合金属酸化物の製造方法では、先ず、アルカリ金属化合物と、複合金属酸化物の種類に応じて、遷移金属化合物、マグネシム化合物、アルミニウム化合物、珪素化合物等のアルカリ金属化合物以外の原料化合物と、を所定量秤量し、秤量された各原料化合物を混合し、必要に応じて更に成形して、アルカリ金属を含有する組成物を得る。次いで、得られたアルカリ金属を含有する組成物を、載置体に配置し、所定雰囲気、所定温度にて、所定時間焼成し、複合金属酸化物を得る。アルカリ金属を含有する組成物を焼成するときの焼成雰囲気は、アルカリ金属を含有する組成物の種類により適宜選択されるが、例えば、酸素ガス、空気等の酸化性雰囲気、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気である。また、アルカリ金属を含有する組成物を焼成するときの焼成温度は、アルカリ金属を含有する組成物又は複合金属酸化物の種類により、600〜1500℃程度の温度範囲で、適宜選択される。
例えば、アルカリ金属を含有する組成物の焼成温度は、複合金属酸化物が、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LiCoO、LiCo1−x−yMgAl)、リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNiO、LiNi1−xCo、LiNi1−x−yCoAl、LiNi1−x−yCoMn)、リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn、LiMn2−xCr、LiMn2−xAl、LiMn2−xNi)、リチウムチタン複合酸化物(例えば、LiTi12)の場合は、焼成温度は600℃以上であり、また、リチウムランタンジルコニウム複合酸化物(例えば、Li7+xLaZr12+(x/2)(−5<x<3))、リチウムランタンチタン複合酸化物(例えば、LiLa(2−x)/3TiO(x=0.1〜0.5))の場合は、焼成温度は1000℃以上であり、また、KO・n(TiO)(n=4〜8)(例えば、KO・4(TiO)、KO・6(TiO)、KO・8(TiO))の場合は、焼成温度は1000℃以上である。このようなことから、焼成温度は600℃以上が好ましい。ただし、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明の複合金属酸化物の製造方法により製造されるアルカリ金属を含有する複合金属酸化物としては、例えば、リチウムコバルト複合酸化物(例えば、LiCoO、LiCo1−x−yMgAl);リチウムニッケル複合酸化物(例えば、LiNiO、LiNi1−xCo、LiNi1−x−yCoAl、LiNi1−x−yCoMn);リチウムマンガン複合酸化物(例えば、LiMn、LiMn2−xCr、LiMn2−xAl、LiMn2−xNi);リチウムチタン複合酸化物(例えば、LiTi12);リチウムランタンジルコニウム複合酸化物(例えば、Li7+xLaZr12+(x/2)(−5<x<3));リチウムランタンチタン複合酸化物(例えば、LiLa(2−x)/3TiO(0.1≦x≦0.5));KO・n(TiO)(4≦n≦8)(例えば、KO・4(TiO)、KO・6(TiO)、KO・8(TiO));リチウムランタンハフニウム複合酸化物(例えば、LiLaHf12);リチウムリン複合酸化物(例えば、LiMPO(M はMn、Fe、Co及びNiよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素)、LiVPOF(0≦x≦1));Li1+xTi2−x(PO(MはAl、Y、Ga、In及びLaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、0≦x≦0.6));NASICON型複合酸化物(例えば、LiTi(PO、LiZr(PO、LiGe(PO)、β−Fe(SO)型Li(PO(MはIn、Sc等の異種元素));リチウムランタンチタンリン複合酸化物等が挙げられる。
【0024】
本発明の複合金属酸化物の製造方法において、アルカリ金属を含有する組成物と接触する載置体の部位は、(1)セリウム化合物を焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分、又は(2)セリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分である。以下、(1)セリウム化合物を焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分、又は(2)セリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分を総称して、セリウム酸化物成分とも記載する。また、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmを総称して、第2金属元素とも記載する。
【0025】
つまり、セリウム酸化物成分は、セリウム酸化物の焼結体、又は第2金属元素の酸化物を含有するセリウム酸化物の焼結体である。セリウム酸化物成分は、CeOが主体であるが、Ce/O比が異なる焼結体でも良い。また、セリウム酸化物成分が、第2金属元素の酸化物を含有するセリウム酸化物の焼結体の場合、焼結体は、セリウム酸化物と第2金属元素の酸化物とが焼結している焼結体が主体であるが、焼結体中には、焼結体中に含有されている酸化物の一部が他の金属種の酸化物に固溶して生成する複合金属酸化物が存在していてもよい。
【0026】
第2金属元素の酸化物は、Li、MgO、Al、SiO、CaO、Sc、TiO、SrO、Y、ZrO、SnO、WO、La、Pr11、Nd、Smである。
【0027】
セリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種を有する化合物と、を焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分の場合、セリウム酸化物成分に含有されている第2金属元素の酸化物の種類及びセリウム酸化物成分中の第2金属元素の酸化物の含有量は、焼成により生成するアルカリ金属を含有する複合金属酸化物の熱膨張係数、焼成原料を焼成するときの焼成温度、気孔率等、焼結体に要求される性能に応じて、適宜選択される。
【0028】
セリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種を有する化合物と、を焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分中、第2金属元素の酸化物の含有量は、好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10%質量以下である。なお、セリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種を有する化合物と、を焼成し焼結させて得られるセリウム酸化物成分が、2種以上の第2金属元素の酸化物を含有する場合、セリウム酸化物焼結体中の第2金属元素の酸化物の含有量は、それら2種以上の第2金属元素の酸化物の合計含有量である。
【0029】
セリウム酸化物成分の熱膨張係数であるが、1200〜1350℃におけるセリウム酸化物成分の熱膨張係数が、焼成により生成する複合金属酸化物の1200〜1350℃における熱膨張係数に近いことが好ましい。
【0030】
セリウム酸化物成分は、アルカリ金属を含有する組成物の焼成温度よりも200℃以上高い温度で焼結された焼結体であることが好ましい。
【0031】
セリウム酸化物成分の製造方法の一例を以下に示す。なお、以下に示すセリウム酸化物成分の製造方法は、一例であって、本発明の複合金属酸化物の製造方法においては、セリウム酸化物成分は、以下の製造方法に従って製造されたものに限定されるものではない。
【0032】
先ず、セリウム酸化物成分を製造するための製造原料、すなわち、酸化セリウム等のセリウム化合物と、必要に応じて、第2金属元素を有する化合物を用意する。セリウム化合物としては、酸化セリウム(CeO)、セリウムのハロゲン化物(塩化物、臭化物、沃化物)、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩等が挙げられる。第2金属元素(Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd、Sm)を有する化合物としては、第2金属元素の酸化物、第2金属元素のハロゲン化物(塩化物、臭化物、沃化物)、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、蓚酸塩等が挙げられる。第2金属元素の化合物は、1種単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、Li化合物としては、酸化リチウム(LiO)、塩化リチウム(LiCl)、炭酸リチウム(LiCO)、硝酸リチウム(LiNO)、リン酸リチウム(LiPO)、硫酸リチウム(LiSO)等が挙げられ、また、Mg化合物としては、酸化マグネシウム(MgO)、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム(Mg(NO))、リン酸マグネシウム(Mg)等が挙げられ、また、Al化合物としては、α−アルミナ、γ−アルミナ、キブサイト、バイヤライト、ベーマイト等の水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(Al)、硝酸アルミニウム(Al(NO)・9HO)、リン酸アルミニウム(AlPO)等が挙げられ、また、Si化合物としては、酸化珪素、溶融シリカ、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)等が挙げられ、また、Ca化合物としては、酸化カルシウム(CaO)、炭酸カルシウム(CaCO)、塩化カルシウム(CaCl)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、硝酸カルシウム(Ca(NO))等が挙げられ、また、Sc化合物としては、酸化スカンジウム(ScO)、炭酸スカンジウム(Sc(CO、塩化スカンジウム(ScCl)等が挙げられ、また、Ti化合物としては、酸化チタン(TiO)等が挙げられ、また、Sr化合物としては、酸化ストロンチウム(SrO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、塩化ストロンチウム(SrCl)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))、硫酸ストロンチウム(SrSO)等が挙げられ、また、Y化合物としては、酸化イットリウム(Y)、塩化イットリウム(YCl)、硝酸イットリウム(Y(NO)・6HO)、硫化イットリウム(Y)等が挙げられ、また、Zr化合物としては、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、部分安定化ジルコニア、安定化ジルコニア等が挙げられ、また、Sn化合物としては、酸化スズ(SnO)、メタスズ酸(HSnO)等が挙げられ、また、W化合物としては、酸化タングステン(WO)等が挙げられ、また、La化合物としては、酸化ランタン(La)、炭酸ランタン(La(CO))、水酸化ランタン(La(OH))、塩化ランタン(LaCl)、硝酸ランタン(La(NO))等が挙げられ、また、Pr化合物としては、酸化プラセオジム(Pr11)、炭酸プラセオジウム(Pr(CO))等が挙げられ、また、Nd化合物としては、酸化ネオジウム(Nd)、水酸化ネオジウム(Nd(OH))等が挙げられ、また、Sm化合物としては、酸化サマリウム(Sm)、水酸化サマリウム、塩化サマリウム(SmCl)等が挙げられる。これらのうち、酸化物、炭酸化物、水酸化物が、生産コストが安価となり合成上好ましい。
【0033】
セリウム酸化物成分の製造原料のセリウム化合物は、常温から1540℃まで加熱処理を行った際の収縮率が36%以下、より好ましくは25%以下である酸化セリウムであることが、セリウム酸化物成分、特に大型のセリウム酸化物成分を、歩留まり良く得ること(焼結後の焼結体へのクラックや割れの発生を低減)ができる点で、好ましい。また、セリウム酸化物成分の製造原料のセリウム化合物は、常温から1000℃まで加熱処理を行った際の重量減少率が10%以下、より好ましくは7%以下である酸化セリウムであることが、好ましい。例えば、常温から1540℃まで加熱処理を行った際の収縮率が36%以下、より好ましくは25%以下である酸化セリウム(CeO)、又は常温から1000℃まで加熱処理を行った際の重量減少率が10%以下、より好ましくは7%以下である酸化セリウム(CeO)は、900℃以上、好ましくは900〜1500℃の高温で酸化セリウムを仮焼することにより得られる。
なお、本発明の収縮率は下記の式により定義される。バインダーとして、アクリル樹脂系バインダー (中京油脂株式会社製、セルナWN−405)2.8gを含むセリウム化合物700gを、220mm角金型に詰め、プレス面圧400kg/cmにて成形する。この成形体を24時間放置した後、成形体の縦、横、高さの各寸法を測定し、空気中にて、20℃/時間で1540℃まで昇温し、更に、1540℃にて6時間加熱処理した後、20℃/時間で降温する。得られた焼結体の縦、横、高さの寸法を測定する。縦、横、高さの各収縮率を下記式より求め、これらの平均値を収縮率とする。
収縮率(%)={([加熱処理前の寸法(mm)]−[加熱処理後の寸法(mm)])/[加熱処理前の寸法(mm)]}×100
また、本発明の重量減少率は以下のように求める。熱重量分析法により、セリウム化合物試料を大気中で、常温から1000℃まで、1℃/分で昇温する。昇温後の重量減少量([試料の重量減少量(g)])、昇温前の試料の重量([昇温前の試料重量(g)])より、下記式を用いて求める。
重量減少率(%)=([試料の重量減少量(g)]/[昇温前の試料重量(g)])×100
【0034】
次いで、仮焼されていない酸化セリウム、仮焼された酸化セリウム等のセリウム化合物に、必要に応じて、第2金属元素を有する化合物を加え、更に、必要に応じて、分散剤を加え、ボールミル、ビーズミル、アトライター、ジェットミル、ピンミル、振動ミル等の公知の粉砕機にて粉砕を行う。その後、セリウム酸化物成分の製造原料へ、必要に応じてバインダーや水を添加し、混合した後、押出し成形、射出成形、プレス成形、鋳込み成形等の公知の方法で賦形して、成形体を得る。また、気孔率が30%以上のセリウム酸化物成分を得る場合には、製造原料に、更に、有機材料の気孔形成材を添加して、賦形する。また、賦形の際の成形圧により、気孔率を調整することもできる。
また、セリウム化合物を含有するセリウム酸化物成分の製造原料を湿式で粉砕及び混合する場合、粉砕及び混合して得られたスラリーを、キャスティング成形、押し出し、ドクターブレード成形にて、厚さ0.1〜200mmのシート状に成形した後乾燥することにより、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体を得ることもできる。また、スラリーを公知の方法で耐熱性の基材上に塗布し、基材上にセリウム酸化物成分の製造原料の成形体を得ることもできる。
【0035】
次いで、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体を、必要に応じて乾燥した後、電気炉、ガス炉等を用いて、1100〜1700℃、好ましくは1200〜1650℃の焼結温度で加熱して焼結させ、セリウム酸化物成分を得る。焼結温度を上記の焼結温度とすることで、緻密な焼結体を得ることができる。なお、セリウム酸化物成分の製造原料に、気孔形成材を添加した場合は、焼結に先だち、200〜600℃で加熱して脱脂を行うことが望ましい。成形体を加熱して焼結させる際の雰囲気は、特に制限されないが、酸素ガス、空気等の酸化性雰囲気、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気である。
【0036】
そして、本発明の複合金属酸化物の製造方法では、アルカリ金属を含有する組成物を、アルカリ金属を含有する組成物と接触する部位がセリウム酸化物成分である載置体に配置して、アルカリ金属を含有する組成物を焼成する。本発明の複合金属酸化物の製造方法に係る載置体では、アルカリ金属を含有する組成物が接触する部位がセリウム酸化物成分により構成されている。
【0037】
アルカリ金属を含有する組成物(焼成原料)を、焼成原料と接触する部位が、セリウム酸化物成分である載置体に配置して、焼成原料を焼成する方法としては、特に制限されず、例えば、
(i)セリウム酸化物成分からなる坩堝、匣鉢、反応管等の中で、焼成原料を焼成する方法、
(ii)セリウム酸化物成分によりコーティングされた坩堝、匣鉢、セッター、反応管等の中で、焼成原料を焼成する方法、
(iii)焼成原料と接触する部位に、セリウム酸化物成分からなる内壁を配置した反応炉内で、焼成原料を焼成する方法、
(iv)目砂を敷いたセリウム酸化物成分からなるセッター上に、焼成原料を載置して焼成する方法、
(v)セリウム酸化物成分からなる目砂を敷いたセッター上に、焼成原料を載置して焼成する方法、
(vi)セリウム酸化物成分からなる治具(例えばピン)に吊り下げ、焼成原料の成形体を焼成する方法、
等が挙げられる。上記(iii)の方法の形態例としては、例えば、レトルト内にセリウム酸化物成分からなる内壁を配置したロータリーキルン中で、焼成原料を焼成する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の複合金属酸化物の製造方法では、アルカリ金属を含有する組成物を焼成する際、アルカリ金属を含有する組成物と接触する載置体の部位を、セリウム酸化物成分(セリウム酸化物の焼結体、又は第2金属元素の酸化物を含有するセリウム酸化物の焼結体)とすることにより、セリウム酸化物成分と焼成原料との反応を少なく、セリウム酸化物成分への生成したアルカリ金属含有複合酸化物の付着を少なくすることができるので、複合金属酸化物を歩留まり良く得ることができる。また、本発明の複合金属酸化物の製造方法では、耐熱衝撃性が高いセリウム酸化物成分を用いているので、繰り返し焼成、例えば、20回程度繰り返し焼成を行っても、焼成後に載置体(セリウム酸化物成分)にクラックは発生しない。これらのことから、本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、複合金属酸化物の製造コストを低くすることができる。
【0039】
更に、本発明の複合金属酸化物の製造方法では、外熱式ロータリーキルンの耐熱金属製の円筒状のレトルトの内壁として、セリウム酸化物成分を配置することにより、複合金属酸化物の焼成原料を連続的に焼成できるので、本発明の複合金属酸化物の製造方法によれば、アルカリ金属を含有する複合金属酸化物の製造効率を高くすることができる。なお、外熱式ロータリーキルンの耐熱金属製の円筒状のレトルトに係る耐熱金属としては、焼成温度によるが、焼成温度1000℃以上ではCr−Al−Fe合金(例えば、Cr22(at%)−Al5.8(at%)〜4.3(at%)−Fe(残部))、ニッケル−クロム合金(例えば、Cr20(at%)−Ni(at%)、Cr15(at%)−Ni60(at%)−Fe25(at%))等が挙げられる。
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0041】
(平均粒径の測定方法)
試料5gを水200gに2.4質量%の濃度で加えた後、超音波分散装置にて5分間分散させ、分散液をレーザー回折/散乱式の粒度分布測定装置(LA−910、株式会社堀場製作所製、レーザー回折法)にて測定し、平均粒径を測定した。
【0042】
(X線粉末回折)
下記の装置を用い、以下の条件にて、試料の結晶型を特定した。
X線回折装置:RINT/Ultima+(株式会社リガク製)
X線管球:Cu
管電圧及び管電流:40kV、20mA
スリット:DS-SSが1度、RSが0.3mm
スキャンスピード:5°/分
測定範囲:20°〜40°
モノクロメータ:グラファイト
測定間隔:0.02度
計数方法:定時計数法
【0043】
(焼結体の密度の測定方法)
アルキメデス法にて焼結体の密度を測定した。
(Ce原子、Al原子、Ti原子、Zr原子、Mg原子の含有量)
Ce原子、Al原子、Ti原子、Zr原子、Mg原子は、ICP法により、金属酸化物焼結体中の含有量を測定した。求めた含有量より、Ce原子の含有量はCeO換算、Al原子の含有量はAl換算、Ti原子はTiO換算、Zr原子はZrO換算を行った。
【0044】
(セリウム酸化物成分の収縮率の測定方法)
バインダーとして、アクリル樹脂系バインダー (中京油脂株式会社製、セルナWN−405)2.8gを含む酸化セリウム700gを、220mm角金型に詰めた後、プレス面圧400kg/cmにて成形した。成形体を24時間放置した後、成形体の縦、横、高さの各寸法を測定した。その後、この成形体を、空気中にて、20℃/時間で1540℃まで昇温し、更に、1540℃にて6時間加熱処理した後、20℃/時間で降温した。得られた焼結体の縦、横、高さの寸法を測定し、縦、横、高さの各収縮率(=(([加熱処理前の寸法(mm)]−[加熱処理後の寸法(mm)])/[加熱処理前の寸法(mm)])×100)を求め、縦、横、高さの各収縮率の平均値を収縮率とした。
【0045】
(セリウム酸化物成分の重量減少率の測定方法)
熱重量分析法により、大気中で、常温から1000℃まで、1℃/分で昇温した際の、重量減少率(=([試料の重量減少量(g)]/[昇温前の試料重量(g)])×100)より求めた。
【0046】
(製造例1)
<セリウム酸化物成分A1の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼した。900℃で2時間仮焼後のセリウム酸化物の収縮率は25%、重量減少率は7%である。
仮焼した酸化セリウム100kgに純水150リットル、ポリカルボン酸アンモニウム塩系分散剤(互応化学工業株式会社製KE−511)を1kg加え、ボールミルにて、20時間粉砕した。粉砕後アクリル樹脂系バインダー (中京油脂株式会社製、セルナWN−405)を4kg加え、ボールミルにて15分間混合分散した。得られた粉砕混合スラリーを、スプレードライヤー(大川原化工機株式会社製、型式FOC20)に、噴霧し造粒をし、造粒粉末A1を得た。噴霧条件は、熱風温度が250℃、排風温度が100℃、アトマイザー回転数が12000rpmであった。
次いで、250gの造粒粉末A1を、面圧700kg/cmにて、100mm角、厚み3.5mmの大きさに成形し、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体A1を100枚得た。次いで、空気中にて、20℃/時間で1540℃まで昇温し、更に、1540℃にて6時間、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体A1を加熱した後、20℃/時間で降温して焼結させて、セリウム酸化物成分A1を得た。得られたセリウム酸化物成分A1の密度は6.73〜6.79g/cmであった。また、得られたセリウム酸化物成分A1のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0047】
(実施例1)
純度99.9%の酸化チタン粉末(東邦チタニウム株式会社製、ルチル化率90%)291.25gと、純度99.0%の炭酸リチウム粉末(和光純薬工業株式会社製)108.75gを大気雰囲気のグローブボックス中で秤量し、Li/Ti比が0.80の原料を採取した。採取した両粉末の平均粒径は、いずれも0.1〜10μmであった。次いで、採取した酸化チタン粉末と炭酸リチウム粉末とをロッキングミキサーに充填し、2時間かけて混合し、焼成原料粉末B1を得た。得られた焼成原料粉末B1から100g取り分けて直径50mmのチタン製金型に充填し、0.5トン/cmの圧力で複数個の焼成原料の成形体B1を作製した。次いで、焼成原料の成形体B1をセリウム酸化物成分A1の上に載置し、これらを加熱炉に挿入して、平均4℃/分で700℃まで昇温し、更に、700℃で4.5時間保持して、各焼成原料の成形体B1の仮焼を行った。仮焼の際、加熱炉に0.08〜0.1Nl/分の流量で酸素を供給し続けた。
次いで、仮焼された各焼成原料の成形体B1を加熱炉から取り出し、大気雰囲気のグローブボックス内で、めのう乳鉢を用いて粒径4〜12μmに粉砕し、焼成原料の仮焼物の粉砕粉B2を得た。
100gの焼成原料の仮焼物の粉砕粉B2を、直径50mmのチタン製金型に充填し、0.5トン/cmの圧力で成形し、焼成原料の仮焼物の成形体B2を作製した。次に、焼成原料の仮焼物の成形体B2をセリウム酸化物成分A1の上に載置し、これらを加熱炉に挿入して、800℃の温度で4.5時間保持する焼成を行った。焼成の際、加熱炉に0.08〜0.1Nl/分の流量で酸素を供給し続けた。
焼成された成形体B2を大気雰囲気のグローブボックス内で、めのう乳鉢を用いて粉砕し、焼成物の粉末を得た。得られた焼成物の粉末をX線粉末回折により確認したところ、ほぼ単相のLiTi12であった。
焼成後のセリウム酸化物成分A1の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A1への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A1に割れは発生していなかった。
【0048】
(実施例2)
実施例1のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、20回繰り返し行った。20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A1の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A1への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A1に割れは発生していなかった。
【0049】
(比較例1)
セリウム酸化物成分A1に代えて、100mm角、厚み3.5mmのアルミナ製のセッターとすること以外は、実施例1と同様に、アルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を行い、LiTi12の粉末を製造した。
このアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を繰り返し行ったところ、2回目の焼成後のアルミナ製のセッターに付着物が外観され、また、5回目の焼成時にアルミナ製のセッターが破損した。
【0050】
(実施例3)
平均粒径0.8mmの凝集体の酸化チタン8.7kg、粉末状炭酸カリウム2.7kg、チタン粉末447g及び木屑897gを、直径19mm、長さ640mm、1420g/ロッド、SS製の円柱状ロッドメディア303kgを充填した振動ミル(中央化工機株式会社製、商品名FV20)に充填し、さらにメタノール65g添加して、振幅8mm、振動数1000回/分、内温80℃で15分間粉砕処理し、焼成原料C1を得た。100gの焼成原料C1を、セリウム酸化物成分A1の上に載置し、これらを電気炉に入れ、12時間かけて室温から1250℃まで昇温し、その後1200〜1300℃の範囲で5.5時間焼成した。焼成後、13時間かけて室温まで冷却し、焼成物を取り出した。得られた焼成物をX線粉末回折により確認したところ、ほぼ単相のKO・6TiOであった。
焼成後のセリウム酸化物成分A1の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A1への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A1に割れは発生していなかった。
【0051】
(実施例4)
実施例3のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、20回繰り返し行った。20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A1の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A1への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A1に割れは発生していなかった。
【0052】
(比較例2)
セリウム酸化物成分A1に代えて、100mm角、厚み3.5mmのアルミナ製のセッターとすること以外は、実施例3と同様に、アルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を行い、KO・6TiOの粉末を製造した。
このアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を繰り返し行ったところ、3回目の焼成後のアルミナ製のセッターに付着物が外観され、また、7回目の焼成時にアルミナ製のセッターが破損した。
【0053】
(製造例2)
<セリウム酸化物成分A2の製造>
製造例1と同様の方法で得た造粒粉末A1を、面圧1000kg/cmにて、外径250mm、内径230mm、長さ500mmの大きさの円筒形に成形して、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体A2を得た。次いで、空気中にて、20℃/時間で1540℃まで昇温し、更に、1540℃にて6時間、セリウム酸化物成分の製造原料の成形体A2を加熱した後、20℃/時間で降温して、セリウム酸化物成分A2を得た。得られたセリウム酸化物成分A2のクラックや割れの発生はなかった。
得られたセリウム酸化物成分A2の外周を研削して外径を195mmに整え、内径200mm、長さ3mのCr−Al−Fe合金の内側に6セット固定し、外熱式ロータリーキルンのレトルトを作製した。
【0054】
(実施例5)
実施例3と同様の方法で得た焼成原料C1を、製造例2で作製した外熱式ロータリーキルンのレトルトが設置された外熱式ロータリーキルンにて、滞留時間1.0〜1.5時間で、焼成温度1050〜1150℃で焼成した。焼成物の粉末をX線粉末回折により確認したところ、ほぼ単相のKO・6TiOであった。
次いで、1000時間連続して、焼成原料C1の焼成を行った後、外熱式ロータリーキルンのレトルトの内側を確認したころ、セリウム酸化物成分A2への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A2に割れは発生していなかった。
【0055】
(製造例3)
<セリウム酸化物成分A3の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)110kgを1050℃で2時間仮焼すること以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A3を得た。1050℃で2時間仮焼後のセリウム酸化物の収縮率は18%、重量減少率は5%である。得られたセリウム酸化物成分A3の密度は、6.78〜6.84g/cmであった。また、得られたセリウム酸化物成分A3のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0056】
(実施例6)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A3とすること以外は、実施例3と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A3の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A3への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A3に割れは発生していなかった。
【0057】
(製造例4)
<セリウム酸化物成分A4の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)110kgを850℃で2時間仮焼すること以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A4を得た。850℃で2時間仮焼後のセリウム酸化物の収縮率は30%、重量減少率は8%である。得られたセリウム酸化物成分A4の密度は6.52〜6.59g/cmであった。また、得られた約50%のセリウム酸化物成分A4にクラックや割れが発生した。
【0058】
(実施例7)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A4とすること以外は、実施例3と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
9回目の焼成後のセリウム酸化物成分A4の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A4への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A4に割れは発生していなかったが、10回目の焼成後のセリウム酸化物成分A4の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A4への付着物の付着はなかったものの、セリウム酸化物成分A4に割れや形状の歪みが発生していた。
【0059】
(製造例5)
<セリウム酸化物成分A5の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼を行わないこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A5を得た。仮焼を行わなかったセリウム酸化物の収縮率は36%、重量減少率は10%である。得られたセリウム酸化物成分A5の密度は6.00〜6.50g/cmであった。また、得られた約90%のセリウム酸化物成分A5にクラックや割れが発生した。
【0060】
(実施例8)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A5とすること以外は、実施例3と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
1回目の焼成後のセリウム酸化物成分A5の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A5への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A5に割れは発生していなかったが、10回目の焼成後のセリウム酸化物成分A5の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A5への付着物の付着は発生し、セリウム酸化物成分A5に割れや形状の歪みが発生していた。
【0061】
(製造例6)
<セリウム酸化物成分A6の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)95kg及び酸化アルミナ(純度99.9%)5kgを1100℃で2時間仮焼したこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A6を得た。得られたセリウム酸化物成分A6の密度は6.55〜6.60g/cm、Alの含有量はAl換算で5.0質量%であった。また、得られたセリウム酸化物成分A6のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0062】
(実施例9)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A6とすること以外は、実施例1と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A6の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A6への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A6に割れは発生していなかった。
【0063】
(製造例7)
<セリウム酸化物成分A7の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)95kg及び酸化チタン(純度99.9%)5kgを1050℃で2時間仮焼したこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A7を得た。得られたセリウム酸化物成分A7の密度は6.61〜6.67g/cm、Tiの含有量はTiO換算で5.0質量%であった。また、得られたセリウム酸化物成分A7のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0064】
(実施例10)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A7とすること以外は、実施例1と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A7の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A7への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A7に割れは発生していなかった。
【0065】
(製造例8)
<セリウム酸化物成分A8の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)95kg及び酸化ジルコニウム(純度99.9%)5kgを1200℃で2時間仮焼したこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A8を得た。得られたセリウム酸化物成分A7の密度は6.67〜6.73g/cm、Zrの含有量はZrO換算で5.0質量%であった。また、得られたセリウム酸化物成分A8のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0066】
(実施例11)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A8とすること以外は、実施例1と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A8の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A8への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A8に割れは発生していなかった。
【0067】
(製造例9)
<セリウム酸化物成分A9の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)95kg及び酸化ランタン(純度99.9%)5kgを1200℃で2時間仮焼したこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A9を得た。得られたセリウム酸化物成分A9の密度は6.69〜6.75g/cm、Laの含有量はLa換算で5.0質量%であった。また、得られたセリウム酸化物成分A9のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0068】
(実施例12)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A9とすること以外は、実施例1と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A9の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A9への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A9に割れは発生していなかった。
【0069】
(製造例10)
<セリウム酸化物成分A9の製造>
酸化セリウム(純度99.9%)110kgを900℃で2時間仮焼することに代えて、酸化セリウム(純度99.9%)95kg及びマグネシア(純度99.9%)5kgを1300℃で2時間仮焼したこと、焼結温度を1600℃まで昇温し、更に、1600℃にて2時間加熱したこと以外は、製造例1と同様の方法で行い、セリウム酸化物成分A10を得た。得られたセリウム酸化物成分A10の密度は6.67〜6.63g/cm、Mgの含有量はMgO換算で5.0質量%であった。また、得られたセリウム酸化物成分A10のクラックや割れの発生は、一枚も観察されなかった。
【0070】
(実施例13)
セリウム酸化物成分A1に代えて、セリウム酸化物成分A10とすること以外は、実施例1と同様のアルカリ金属含有複合金属酸化物の焼成を、繰り返し行った。
20回目の焼成後のセリウム酸化物成分A10の外観を観察したところ、セリウム酸化物成分A10への付着物の付着はなく、セリウム酸化物成分A10に割れは発生していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明によれば、アルカリ金属を含有する複合金属酸化物の製造コストを低くすること、更には、製造効率良くアルカリ金属を含有する複合金属酸化物を製造することができるので、安価にアルカリ金属を含有する複合金属酸化物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属を含有する組成物を焼成し、複合金属酸化物を得る際に、該組成物を、該組成物と接触する部位が、セリウム化合物を焼結し得られる成分、又はセリウム化合物と、Li、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、Sr、Y、Zr、Sn、W、La、Pr、Nd及びSmから選ばれる少なくとも1種の元素を有する化合物とを焼結し得られる成分である載置体に配置して焼成することを特徴とする複合金属酸化物の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ金属を含有する組成物が、遷移金属化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属が、リチウム、カリウム又はナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の複合金属酸化物の製造方法。
【請求項4】
前記遷移金属がチタンであることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項記載の複合金属酸化物の製造方法。

【公開番号】特開2012−201525(P2012−201525A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65419(P2011−65419)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(511075690)東邦マテリアル株式会社 (1)
【Fターム(参考)】