説明

複層ガラスパネル、障子、及び開口部装置

【課題】より簡易に防火性能を高めることができる複層ガラスパネルを提供する。
【解決手段】防火性を有する第一の板ガラス(13)と、第一の板ガラスに所定の間隔を有して配置され、第一の板ガラスより低い防火性能である第二の板ガラス(14)と、間隔のうち第一の板ガラス及び第二の板ガラスの外周端部に充填され、第一の板ガラスに第二の板ガラスを接着固定して複層ガラス(12)を形成するパネル間シール材(16)と、複層ガラスの外周端部を覆うように配置されるグレージングチャンネル(17)と、複層ガラス及びグレージングチャンネルの間に配置され、所定の温度で体積を膨張させる加熱膨張体(18、18’)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅や公共施設等の建物に用いられる、開口部装置に具備される複層ガラスパネル、該複層ガラスパネルを備える障子、及び開口部装置に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や公共施設等の建物のうち、その開口部に備えられるサッシ窓等の開口部装置は、開閉可能なものについては室外との連通・遮断が自在であり、人や物の出入り、及び換気等をすることができる。また、近年では開閉の可否にかかわらず、開口部装置に複層ガラスパネルが用いられることが多くなっている。これにより、断熱性や遮音性を向上しつつもガラスの光透過性を利用して閉鎖の姿勢でも室内に光を取り入れることができ、室内を明るくして暖をとる等、室内環境の向上が図られる。
【0003】
このような複層ガラスパネルは、その外周部を金属、又は樹脂による枠や框により囲まれて構成される。その際には、枠又は框と複層ガラスパネルとの気密性、水密性を確保するために、枠又は框と複層ガラスパネルとの間には樹脂等によるシール部材が配置される。シール部材としては例えばグレージングチャンネル等を挙げることができる。
【0004】
ところが、火災等により開口部装置に大きな熱量が加わった場合、開口部装置に用いられる各種材料の性質上、シール部材が溶けて消失してしまう傾向にある。シール部材が消失すると、板ガラスを保持できなくなり、複層ガラスパネルが分解してしまう場合や、分解しなくてもシール部材が消失した部位において室内外の連通が生じる場合があり、煙や炎がここを通じて反対側に広がる虞がある。このような炎や煙の広がりを防止するための手段として特許文献1のような技術が開示されている。特許文献1によれば熱膨張材を用いて複層ガラスパネルの分解や室内外の連通を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−184372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明は、例えば該特許文献1の図2や明細書等(例えば請求項1の記載)からもわかるように、熱膨張材が膨張するような状態となった際にも、具備される板ガラスはいずれも割れや崩落をおこさずに残存し、またシーラント材が框の溝内に残っているものとされている。
【0007】
しかしながら、複層ガラスパネルに具備される全ての板ガラスにこのような防火性を有するものを適用するとコストがかかり、また、外観を含めた設計上の自由度が低くなる傾向にある。特に、大きな面積の開口部に配置する開口部装置にあっては、ここに用いられる板ガラス自体も大きくなるので、このような大きな板ガラスの全てに防火性を有する板ガラスを適用することは困難である場合が多い。
【0008】
また、板ガラスを框内に固定して水密気密の効果を発揮するシール部材についても、現在では施工性や機能性の観点からグレージングチャンネルを用いることが主流となっている。ところが、グレージングチャンネルは樹脂により形成され、火災時等においてはその主要な部分が熱により消失してしまうことが多い。
【0009】
すなわち、防火性を高めるための特定の構成部材の適用はできるだけ抑制することでより多くの種類の開口部装置に対して適用可能とし、できるだけ簡易に防火性能を高めることが求められる。
【0010】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、より簡易に防火性能を高めることができる複層ガラスパネル、障子、開口部装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。ここではわかりやすさのため、構成部材に括弧書きにて図面の参照符号を付して表すが、本発明はこれに限定されることはない。
【0012】
請求項1に記載の発明は、防火性を有する第一の板ガラス(13)と、第一の板ガラスに所定の間隔を有して配置され、第一の板ガラスより低い防火性能である第二の板ガラス(14)と、間隔のうち第一の板ガラス及び第二の板ガラスの外周端部に充填され、第一の板ガラスに第二の板ガラスを接着固定して複層ガラス(12)を形成するパネル間シール材(16)と、複層ガラスの外周端部を覆うように配置されるグレージングチャンネル(17)と、複層ガラス及びグレージングチャンネルの間に配置され、所定の温度で体積を膨張させる加熱膨張体(18、18’)と、を備える複層ガラスパネル(11)である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の複層ガラスパネル(11)において、加熱膨張体(18、18’)は複層ガラス(12)の端面に貼り付けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、複層ガラスパネル(12)と、該複層ガラスパネルの外周端部に配置される框体(20)と、を備える障子(10)であって、複層ガラスパネルは、防火性を有する第一の板ガラス(13)と、第一の板ガラスに所定の間隔を有して配置され、第一の板ガラスより低い防火性能である第二の板ガラス(14)と、間隔のうち第一の板ガラス及び第二の板ガラスの外周端部に充填され、第一の板ガラスに第二の板ガラスを接着固定して複層ガラス(12)を形成するパネル間シール材(16)と、複層ガラスの外周端部を覆うように配置されるグレージングチャンネル(17)と、複層ガラス及びグレージングチャンネルの間に配置され、所定の温度で体積を膨張させる加熱膨張体(18、18’)と、を有し、框体は、複層ガラスパネルの外周端部を挿入する溝(21a)を具備し、複層ガラスパネルの外周端部が框体の溝に挿入されて形成されている、障子である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の障子(10)において、加熱膨張体(18、18’)は複層ガラスの端面に貼り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、建物開口部の縁に沿って配置される枠体(31)と、枠体により区画される枠内に配置される請求項3又4に記載の障子(10)と、を備える、開口部装置(30)である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複層ガラスの一部に防火性の低い板ガラスが用いられ、汎用的なグレージングチャンネルを用いても防火性能を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】1つの実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図4(a)は図2のうちその一端側に注目した図で、図4(b)は分解図である。
【図5】障子10を備えた開口部装置の水平方向断面図である。
【図6】障子10を備えた開口部装置の鉛直方向断面図である。
【図7】作用を説明する図である。
【図8】1つの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のこのような作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0020】
図1は、1つの実施形態を説明する図で、障子10の正面図である。図2は、図1にII−IIで示した線に沿った断面図、図3は、図1にIII−IIIで示した線に沿った断面図である。また、図4には、図2のうち左側端部に注目して拡大した図(図4(a))及びこれを分解して示した図(図4(b))を表した。
【0021】
障子10は、複層ガラスパネル11、及び框体20を備えている。複層ガラスパネル11は、複層ガラス12、グレージングチャンネル17、及び加熱膨張体18を具備している。ここで複層ガラス12は、板ガラス13、14、スペーサー15、及びパネル間シール材16を有して構成されている。また、框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これらが矩形枠状に組み合わされている。以下各構成部材について説明する。
【0022】
初めに複層ガラスパネル11について説明する。
板ガラス13、14は、複層ガラス12に含まれる構成部材の1つであり、いずれも矩形板状の板ガラスである。板ガラス13と板ガラス14とは、その板面が対向するように所定の間隔を有して並べて配列されている。
【0023】
板ガラス13は線状の金属が埋め込まれた網入りガラスである。すなわち、防火性を有する第一の板ガラスとして機能し、火災等による加熱があっても崩落することなく維持できる種類の板ガラスが適用される。このように、第一の板ガラスは防火性を有する板ガラスである。防火性を有する板ガラスとは、防火性が高められた公知の板ガラスを含む概念である。かかる観点から板ガラス13は、上記のような網入りガラスの他、耐熱強化ガラスであってもよい。
【0024】
一方、板ガラス14は、板ガラス13より防火性の低いガラスであり、第二の板ガラスとして機能する。従って、板ガラス14は防火性能が高いガラスである必要はなく、火災等による加熱があった際には割れたり、崩落したりすることが想定されるガラスでよい。本実施形態では板ガラス14はLOW−Eガラスとした。
【0025】
すなわち、複層ガラス12では、複層ガラス12を構成する板ガラスのうち少なくとも1つは他の板ガラスに比べて防火性の低い板ガラスを用いてよく、加熱があった際に割れたり、崩落したりすることが想定されるガラスを用いることができる。従って、薄くしたり、他の機能を持たせたり、比較的安価であったり等、設計の自由度を高めることが可能となる。
特にベランダや庭先との連通のために配置される開口部装置は大型となる。このような大型の開口部装置の複層ガラスパネルの全ての板ガラスに防火性の高いものを適用すると、複層ガラスパネルが高価となってしまい、また、厚くなり外観上の問題点が生じることもある。これに対して複層ガラス12によれば、ここに具備される板ガラスのうち少なくとも1つには、他の板ガラスに比べて防火性の低い板ガラスを適用することができ、上記の問題を解消することができる。
【0026】
スペーサー15は、複層ガラス12を構成する部材の1つであり、板ガラス13と板ガラス14との間隙により形成される空間のうち、その外周端部よりやや内側に、板ガラス13、14の辺に沿って配置されている。従って、スペーサー15は、板ガラス13、14間に矩形枠状に形成されている。スペーサー15は公知のものを用いることができ、板ガラス13と板ガラス14との間隙を所定の大きさに維持することを主要な機能とする。ただし、スペーサー15に乾燥剤を含ませることにより、スペーサー15と板ガラス13、14とに囲まれる空間内側を適切な湿度に保つことが可能となる。
【0027】
パネル間シール材16は、複層ガラス12を構成する部材の1つであり、板ガラス13と板ガラス14との間隙のうち、スペーサー15よりも外側となる当該間隙の外周端部に充填されている。パネル間シール材16は、板ガラス13と板ガラス14とを強固に接着固定しつつ、水密性(密封性)を保持することを主要な機能とする。かかる観点から、パネル間シール材16としてはシリコン系、ポリサルフィド系の接着剤が用いられることが好ましい。
【0028】
なお、本実施形態では、複層ガラス12には2枚の板ガラス13、14を具備する例を示したが、これに限定されることはなく、3枚以上の板ガラスを備えるものであってもよい。その場合、少なくとも1つは板ガラス13のように防火性を有する板ガラスであり、少なくとも他の1つは板ガラス14のように、板ガラス13よりも防火性能が低い板ガラスである。
【0029】
グレージングチャンネル17は、図2〜図4に表れる断面を有して、該断面とは直交する方向(紙面の奥/手前方向)に延びるように構成された長尺の部材である。図2〜図4からわかるように、グレージングチャンネル17は断面が略コ字状であり、底片と、この底片の両端から同じ方向に立設される2つの立設片と、を備えている。従って、立設片間に間隙ができ、底片が配置されない側には断面コ字状の内側に通じる開口部が形成される。
そしてグレージングチャンネル17は、当該開口部から立設片間に複層ガラス12の端部を差し込むように配置する。本実施形態では公知のグレージングチャンネルを用いることができる。すなわち、グレージングチャンネル17は、複層ガラス12の端面、及び端部を覆うとともに、複層ガラス12の周囲を囲むように配置される。
【0030】
グレージングチャンネル17の材質は、グレージングチャンネル用の材料として公知のものを用いることができ、例えば塩化ビニル系、シリコン系の材料を挙げることができる。また、これらについて硬質と軟質の材料を組み合わせたり、又は軟質のみにより構成することも可能である。
すなわち、従来において防火性能の観点から、複層ガラスパネルを框に固定して水密気密をとる手段として、板ガラスと框との間に耐火性を有するシーラント材が充填されることがあった。このようなシーラント材の充填には手間もかかり、耐火性を有するシーラント材は高価なものとなる。これに対して本実施形態によれば、通常のグレージングチャンネルを用いることができ、障子の組み立てを容易にすることができ、より汎用的となる。
【0031】
加熱膨張体18は、本実施形態では通常時において図2〜図4に示すように断面が矩形であり、一方に延びる細長の板状の部材である。このような加熱膨張体18は、その長手方向が複層ガラス12の端面に沿うように、グレージングチャンネル17と複層ガラス12との間に配置される。
【0032】
加熱膨張体18は、難燃性であるとともに、所定の温度にまで加熱されると膨張して体積が増加する材料により構成されている。具体的な膨張開始温度は特に限定されることはないが、建築基準法及び同施工令の加熱曲線に合せ、150℃程度であることが好ましい。
また、膨張倍率も特に限定されることはないが、10倍〜40倍であることが好ましい。
加熱膨張体18の具体的な材料はこのような性能を有するものであれば特に限定されることはなく、公知のものを用いることができる。これには例えば黒鉛や炭素繊維等の熱発泡体を含有した材料であり、その際には基材としてエポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ブチルゴム等を使用したものを挙げることができる。
【0033】
加熱膨張体18はグレージングチャンネル17と複層ガラス12との間に配置されていればその位置や配置態様は特に限定されることはない。本実施形態では加熱膨張体18を複層ガラス12の端面に貼り付けるように配置した。これにより、複層ガラスパネル11を製造するに際して加熱膨張体18を配置、取り付けることが容易となり生産性を向上させることができる。
また、加熱膨張体18は、少なくとも防火性が他よりも低い板ガラス14の端部に接触して、又は接触していなくても板ガラス14の端部近傍に設けられていることが好ましい。これにより火災時等に板ガラス14が崩落しても後述するように加熱膨張体18が膨張してこの部分を埋めるので板ガラス13を保持することができる。
【0034】
次に框体20について説明する。上記したように框体20は、長尺の縦框21、22、上横框23、及び下横框24を有し、これが矩形枠状に組み合わされている。縦框、上横框、及び下横框は框体を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が選択される。本実施形態の框体20は後述するように引き戸式の開口部装置30に用いられるので(図5、図6参照)、縦框21が戸先框、縦框22が召し合わせ框として機能し、上横框23及び下横框24が上枠34、下枠35にガイドされる框として機能する。
ただし、框体20を構成する縦框21、22、上横框23、及び下横框24はいずれも、上記加熱膨張体18、グレージングチャンネル17の少なくとも一部、及び板ガラス13、14の端部を挿入可能な溝部(例えば図4(b)の溝部21a)を具備している。
【0035】
障子10は、上記構成部材が例えば次のように組み合わされて形成されている。
すなわち、図2〜図4からわかるように、複層ガラス12の端部に加熱膨張体18が配置される。そして、複層ガラス12の端部及び加熱膨張体18がグレージングチャンネル17のコ字状の内側に挿入され、該グレージングチャンネル17に囲まれるように配置されて複層ガラスパネル11が形成される。
【0036】
このように形成された複層ガラスパネル11の端部を縦框21、22、上横框23、及び下横框24に形成される溝部(例えば図4(b)に表した溝部21a)に挿入するように配置して障子10となる。
【0037】
次に障子10が具備された開口部装置30について説明する。図5、図6は障子10を備える開口部装置30の断面図で、図5は水平方向断面、図6は鉛直方向断面を表している。図5では、紙面上が室外側、紙面下が室内側を示している。また、図6では紙面左が室外側、紙面右が室内側を表している。本実施形態において開口部装置30は、いわゆる引戸式のサッシ窓である。
開口部装置30は、建物開口部の4辺の縁に沿って配置される枠体31、及び該枠体31の内側に具備されて引戸式に開閉する2枚の障子10を備えている。図5、図6を参照しつつ開口部装置30について説明する。
【0038】
枠体31は、左右に所定の間隔を有して平行に配列される縦枠32、33、及び、縦枠32、33の端部間を渡して、上下のそれぞれに水平に配置される長尺部材である上横枠34、下横枠35を備え、これらが枠状に組み合わされている。縦枠31、32、上横枠34、及び下横枠35は開口部装置の枠を形成することができればよく、その具体的な断面形状は限定されることはない。すなわち、障子が適用される開口部装置の種類等により適切な断面形状が形成される。本実施形態では引戸式のサッシであるため、上横枠34には障子10の上横框23に挿入され上横框23をガイドするガイド片34a、34bが備えられ、下横枠35には障子10の下横框24を案内するレールとして機能するレール片35a、35bが設けられている。
また、断熱性を向上する観点から枠体31には樹脂により形成され、枠体31の内側面に具備されたカバー部材32a、33a、34c、35cが取り付けられていてもよい。
【0039】
障子10については既に上記したのでここでは説明を省略する。ただし、開口部装置30に備えられる2つの障子10は、室内側に配置される障子10と室外側に配置される障子10とでは、配置される位置に基づいて框体の断面形状は異なる。本実施形態では縦框21が戸先框、縦框22が召し合せ框として機能する。
【0040】
2枚の障子10が枠体31の枠内に引戸式に配置されることにより開口部装置30が形成されている。すなわち、上横枠34のガイド片34a、34bに障子10の上横框23がガイドされ、下横枠35のレール片35a、35bに障子10の下横框24がガイドされることにより、引戸式に障子10を開閉できる。
【0041】
次に複層ガラスパネル11による作用について説明する。図7に当該作用を説明する図を示した。図7は図4(a)と同様の視点による図である。
複層ガラスパネル11を備える開口部装置30が火災等により加熱され、所定の温度に達すると複層ガラスパネル11に具備される樹脂材料により形成された部材であるグレージングチャンネル17が溶けて消失し、他の板ガラスに比べて防火性の低い板ガラス14は割れる等して崩落することがある。これに対して複層ガラスパネル11に設けられた加熱膨張体18が、例えば図7に示したように、框21のうち複層ガラスパネル11が差し込まれた部位内に火災等の熱によって膨張する。そして図7からわかるように防火性を有することにより崩落する可能性の低い板ガラス13の端部を保持する。板ガラス13が保持されることにより、開口部装置30は室外側との閉鎖、遮断の機能を発揮することができるので、火災等の火炎が開口部装置30を挟んだ反対側におよぶことを抑制することが可能となる。また加熱膨張体18が框内を通じた内外の連通も遮断することができる。
【0042】
図8には変形例にかかる障子10’のうち、図4(a)に相当する図を示した。障子10’では、加熱膨張体の配置が障子10と異なるのみであり、他の構成は障子10と共通するので、共通部分は同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0043】
障子10’は加熱膨張体18’が板ガラス13、14の面のうち、板ガラス13と板ガラス14とが対向する面とは反対側の面の端部に配置されている。このような加熱膨張体18’の配置によっても上記と同様の効果を奏するものとなる。
【0044】
以上では複層ガラスパネル11に関連して説明したが、本発明の趣旨に矛盾しない限り、他の部位に開口部装置の防火性能を高めるための公知の構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10 障子
11 複層ガラスパネル
12 複層ガラス
13 板ガラス(第一の板ガラス)
14 板ガラス(第二の板ガラス)
15 スペーサー
16 パネル間シール材
17 グレージングチャンネル
18 加熱膨張体
20 框体
30 開口部装置
31 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火性を有する第一の板ガラスと、
前記第一の板ガラスに所定の間隔を有して配置され、前記第一の板ガラスより低い防火性能である第二の板ガラスと、
前記間隔のうち前記第一の板ガラス及び前記第二の板ガラスの外周端部に充填され、前記第一の板ガラスに前記第二の板ガラスを接着固定して複層ガラスを形成するパネル間シール材と、
前記複層ガラスの外周端部を覆うように配置されるグレージングチャンネルと、
前記複層ガラス及び前記グレージングチャンネルの間に配置され、所定の温度で体積を膨張させる加熱膨張体と、を備える複層ガラスパネル。
【請求項2】
前記加熱膨張体は前記複層ガラスの端面に貼り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の複層ガラスパネル。
【請求項3】
複層ガラスパネルと、該複層ガラスパネルの外周端部に配置される框体と、を備える障子であって、
前記複層ガラスパネルは、
防火性を有する第一の板ガラスと、
前記第一の板ガラスに所定の間隔を有して配置され、前記第一の板ガラスより低い防火性能である第二の板ガラスと、
前記間隔のうち前記第一の板ガラス及び前記第二の板ガラスの外周端部に充填され、前記第一の板ガラスに前記第二の板ガラスを接着固定して複層ガラスを形成するパネル間シール材と、
前記複層ガラスの外周端部を覆うように配置されるグレージングチャンネルと、
前記複層ガラス及び前記グレージングチャンネルの間に配置され、所定の温度で体積を膨張させる加熱膨張体と、を有し、
前記框体は、前記複層ガラスパネルの外周端部を挿入する溝を具備し、
前記複層ガラスパネルの前記外周端部が前記框体の前記溝に挿入されて形成されている、障子。
【請求項4】
前記加熱膨張体は前記複層ガラスの端面に貼り付けられていることを特徴とする請求項3に記載の障子。
【請求項5】
建物開口部の縁に沿って配置される枠体と、
前記枠体により区画される枠内に配置される請求項3又4に記載の障子と、を備える、開口部装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96130(P2013−96130A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239502(P2011−239502)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】