説明

複層剥離フィルム

本発明は、硬化性エラストマーを含む第1の層と、当該第1の層と直接結合し且つ直接接している第2の層とを含む複層フィルムに関する。上記第2の層は、フルオロポリマーを含み、そして5.0μm未満の厚さを有する。当該複層フィルムは、少なくとも約5の厚さ比を有する。上記厚さ比は、第1の層の厚さの、第2の層の厚さに対する比である。当該複層フィルムは、概して平行且つ平面の対向する主要な表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この公表は、一般に、複層剥離フィルム及び当該フィルムを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業者は、化学及び環境に対するダメージに抵抗性を有する表面を作るためのポリマーを探索し続けている。さらに、製造業者は、他の表面との付着に抵抗性を有する表面を形成する、剥離特性を有するフィルムを探索している。特定の用途では、上記ポリマーから形成されたフィルムは、飛行機及び列車のカーゴホルダ、ビニル側線表面処理、光電池の保護カバー及び剥離フィルムとして用いられている。上記ポリマーの例には、低表面エネルギーポリマーが含まれる。低表面エネルギーポリマー、例えば、フルオロポリマーは、化学物質、例えば、メチルエチルケトン(MEK)への暴露により生じたダメージに対する抵抗性を示し、耐汚染性を有し、環境条件への暴露により生じたダメージに対する抵抗性を実証し、そして典型的には剥離表面を形成する。
【0003】
上記低表面エネルギーポリマーが必要とされるが、上記ポリマーは、高価な傾向にある。さらに、上記ポリマーは、低い湿潤特性及び剥離フィルムを形成する所与のそれらの傾向を示し、他のポリマー基材との付着性に乏しい。特定のフルオロポリマー、例えば、PVDFでは、製造業者は、適合性を有しない基材にフルオロポリマー層を付着するために、アクリルポリマー又はカルボン酸変性ポリオレフィンを含む接着層に注目し始めている。しかし、アクリルポリマーは、環境ストレス、例えば、紫外線暴露及び高温に対する耐性が弱いのが一般的である。フルオロポリマー層フィルムと下にある基材との間の結合が、経時的に弱まる場合がある。さらに、下にある基材及びフルオロポリマー層の機械的性質の間のミスマッチは、継続する機械的応力と共に上記層と上記基材との間の接触を弱くし、上記フルオロポリマー層と上記下にあるフィルム層との間の結合の剥離強度の低下と、分解の可能性が生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
改良した複層フィルム及び上記複層フィルムを製造するための方法が、望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特定の実施形態では、複層フィルムは、硬化性エラストマーを含む第1の層と、上記第1の層と直接結合し且つ接している第2の層とを含む。上記第2の層は、フルオロポリマーを含み且つ5.0μm未満の厚さを有する。上記複層フィルムは、少なくとも約5の厚さ比を有する。上記厚さ比は、上記第1の層の厚さの、上記第2の層の厚さに対する比である。上記複層フィルムは、平行且つ平面の対向する主要な表面を一般的に有する。
【0006】
別の例示的な実施形態では、複層フィルムは、ジエンエラストマーを含む第1の層を含む。上記第1の層は、第1及び第2の対向する主要な表面を有する。上記複層フィルムはまた、第1の層の主要表面と直接結合し且つ直接接している第2の層を含む。上記第2の層は、フルオロポリマーを含む。上記第1の層の厚さの上記第2の層に対する厚さ比は、少なくとも約5である。上記複層フィルムは、上記第1の層の第2の主要な表面と直接結合し且つ直接接している第3の層をさらに含む。上記第3の層は、フルオロポリマーを含む。
【0007】
さらに例示的な実施形態では、複層フィルムを形成する方法は、硬化性エラストマーを含む第1の層を押出す段階、上記第1の層と接している第2の層を押出し、未硬化の複層フィルムを形成する段階、そして当該未硬化の複層フィルムを硬化させる段階を含む。上記第2の層は、フルオロポリマーを含む。上記第1の層の厚さの、上記第2の層の厚さに対する厚さ比は、少なくとも約5である。
【0008】
特定の実施形態では、複層フィルムは、第1の層及び第2の層を含む。上記第1の層は、硬化性エラストマーを含むことができる。例えば、上記硬化性エラストマーは、ジエンエラストマーを含むことができる。上記第2の層は、低表面エネルギーポリマーを含む。例えば、上記低表面エネルギーポリマーは、フルオロポリマーを含むことができる。上記第2の層は、上記第1の層と直接結合し且つ直接接している。上記第1の層の厚さの、上記第2の層の厚さに対する厚さ比は、少なくとも約5であることができる。例示的な実施形態では、上記複層フィルムはまた、上記第1の層と直接結合し且つ直接接している第3の層を含む。上記第3の層は、例えば、低表面エネルギーポリマーを含むことができる。特定の例では、上記第2及び第3の層は、上記複層フィルムの対向する最外層を形成する。さらに、上記層は、一般的に平行且つ平面の対向する主要な表面を形成することができる。
【0009】
例示的な実施形態では、上記複層フィルムは、第1の層を押出すこと及び第2の層を押出すことにより形成されうる。上記第1の層の厚さの、上記第2の層の厚さに対する厚さ比は、少なくとも約5である。ある例では、上記第1の層は、ジエンエラストマー等の硬化性エラストマーを含む。上記第2の層は、低表面エネルギーポリマーを含む。例示的な実施形態では、上記第1の層及び第2の層は、お互いに直接接触するように共押出される。さらに、上記第1の層は、例えば、架橋により硬化されうる。例えば、上記複層フィルムは、e−ビーム放射線又は紫外線等の電磁線に暴露されうる。あるいは、水活性化架橋剤(water activated crosslinking agent)が、上記第1の層の硬化性エラストマーを硬化するために用いられうる。
【0010】
図1において具体的に説明するように、複層フィルム100は、最外面112を形成する層102を含むことができる。層102は、層104の主要な面108に沿って、層104と結合することができる。例示的な実施形態では、複層フィルム100は、層102及び層104等の2つの層を含む。あるいは、複層フィルム100は、3層等の、2層又は3層以上の層を含むことができる。例えば、第3の層106は、層104の第2の主要な面110と結合することができる。第2の主要な面110は、例えば、主要な面108と対向する主要な表面である。上記例では、第3の層106は、最外面112と対向する、最外面114を形成することができる。さらに別の実施形態では、層104は、複数のコア又は中間層から構成されうる。
【0011】
一般に、中間層104は、最外層102又は所望による最外層106よりも厚い。例えば、最外層、例えば、層102及び所望による層106は、複層フィルム100の約20体積%以下を構成することができる。例えば、層102は、複層フィルム100の約15体積%以下、例えば、複層フィルム100の約10体積%以下を構成することができる。特定の例では、最外層102及び所望による最外層106は、それぞれ複層フィルムの5体積%以下、例えば、3体積%以下、2体積%以下若しくは1体積%以下又はそれ未満を構成することができる。
【0012】
さらなる例では、最外層102及び所望による最外層106は、約5.0μm未満の厚さを有することができる。例えば、上記厚さは、約4.5μm以下、例えば、約3.5μm以下、約2.5μm以下又は約1.3μm以下であることができる。中間層104は、複層フィルム100の少なくとも約60体積%、例えば、複層フィルム100の少なくとも約70体積%又は複層フィルム100の少なくとも約80体積%を構成することができる。特定の例では、中間層104は、上記複層フィルムの少なくとも約90体積%、例えば、少なくとも約95体積%又は少なくとも約97体積%を構成する。さらなる例では、中間層104は、少なくとも約12.0μm、例えば、少なくとも約25.0μm、少なくとも約50.0μm、少なくとも約100.00μm又は少なくとも約200.0μmの厚さを有することができる。
【0013】
特定の実施形態では、最外層104の厚さの、中間層102の厚さに対する比として規定される厚さ比は、少なくとも約5である。例えば、上記厚さ比は、少なくとも約10、例えば、少なくとも約20、少なくとも約50又は少なくとも約100であることができる。
複層フィルム100の総フィルム厚は、少なくとも約13μmであることができる。例えば、複層フィルム100は、少なくとも約25μm、例えば、少なくとも約50μm、少なくとも約100μm、少なくとも約200μm若しくは少なくとも約250μm又はそれ超の総厚さを有する。
【0014】
例示的な実施形態では、上記層102は、低表面エネルギーポリマーから構成される材料を含む。例えば、低表面エネルギーポリマーは、低表面エネルギー表面を形成する傾向を有するポリマーであることができる。一例では、低表面エネルギーポリマーは、フルオロポリマーを含む。さらなる例では、上記フルオロポリマーは、パーフルオロ化ポリマーであることができる。例示的なフルオロポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー又はモノマー、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ビニリデン、フッ化ビニル、パーフルオロプロピルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル若しくはそれらの任意の組み合わせから生成されるポリマーブレンドから構成されることができる。例示的なフルオロポリマーには、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー(MFA)、エチレンとテトラフルオロエチレンとのコポリマー(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びビニリデンフルオリドを含むターポリマー(THV)又はそれらの任意の混合物又はそれらの任意のアロイが含まれる。例えば、上記フルオロポリマーは、FEPを含むことができる。さらなる例では、上記フルオロポリマーは、PVDFを含むことができる。例示的な実施形態では、上記フルオロポリマーは、e−ビーム等の放射線により架橋することができる、ポリマーであることができる。例示的な架橋性フルオロポリマーは、ETFE、THV、PVDF又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。THV樹脂は、Dyneon 3M Corporation Minneapolis,Minnから入手することができる。ECTFEポリマーは、Ausimont Corporation(イタリア)から、Halarの商品名で入手できる。本明細書で用いられる他のフルオロポリマーは、Daikin(日本)及びDuPont(米国)から入手することができる。特に、FEPフルオロポリマーは、Daikin(例えば、NP−12X)から市販されている。
【0015】
例示的な実施形態では、層104は、エラストマー材料から構成される材料を含む。特定の実施形態では、上記エラストマー材料は、硬化性エラストマーを含む。硬化性エラストマーの例には、シリコーンエラストマー、架橋性フルオロポリマー、ジエンエラストマー又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の例では、上記層104は、ジエンエラストマーを含むことができる。別の例では、上記エラストマー材料には、ジエンエラストマーとポリオレフィンとのブレンドが含まれる。典型的には、上記ジエンエラストマーは、少なくとも1種のジエンモノマーから構成されるコポリマーである。例えば、上記ジエンエラストマーは、エチレン、プロピレン及びジエンモノマーのコポリマー(EPDM)であることができる。
【0016】
例示的なジエンモノマーには、共役ジエン、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等;5〜約25個の炭素原子を含む非共役ジエン、例えば、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン等;環式ジエン、例えば、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン等;ビニル環式エン(vinyl cyclic ene)、例えば、1−ビニル−1−シクロペンテン、1−ビニル−1−シクロヘキセン等;アルキルビシクロノナジエン、例えば、3−メチルビシクロ−(4,2,l)−ノナ−3,7−ジエン等;インデン、例えば、メチルテトラヒドロインデン等;アルケニルノルボルネン、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン、5−(1,5−ヘキサジエニル)−2−ノルボルネン、5−(3,7−オクタジエニル)−2−ノルボルネン等;トリシクロジエン、例えば、3−メチルトリシクロ(5,2,l,02,6)−デカ−3,8−ジエン等;又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0017】
特定の実施形態では、上記ジエンには、非共役ジエンが含まれる。別の実施形態では、上記ジエンエラストマーには、アルケニルノルボルネンが含まれる。上記ジエンエラストマーには、例えば、ポリマーの約63重量%〜約95重量%のエチレン、約5重量%〜約37重量%のプロピレン、及び上記ジエンエラストマーの総重量に基づいて、約0.2重量%〜約15重量%のジエンモノマーが含まれうる。特定の例では、エチレン含有率は、約70重量%〜約90重量%であり、プロピレン含有率は、約17重量%〜約31重量%であり、そしてジエンモノマーの含有率は、ジエンモノマーの約2重量%〜約10重量%である。上記ジエンエラストマーは、少なくとも約20、例えば、約25〜約150のムーニー粘度を典型的には有する(ML 1+8、125℃)。
【0018】
例示的な実施形態では、上記ジエンエラストマーは、トルエン1デシリットル当たり、0.1グラムのジエンポリマーの溶液として、25℃において測定された、少なくとも約1、例えば、約1.3〜約3の希釈溶液粘度(DSV)を有する。架橋する前に、上記ジエンエラストマーは、約800psi〜約1,800psi、例えば、約900psi〜約1,600psiの未加工の(green)抗張力を有することができる。架橋していないジエンエラストマーは、少なくとも約600%の破断点伸びを有することができる。一般に、上記ジエンエラストマーは、少量のジエンモノマー、例えば、ジシクロペンタジエン、エチルノルボルネン、メチルノルボルネン、非共役ヘキサジエン等を含み、そして約50,000〜約100,000の数平均分子量を典型的には有する。例示的なジエンエラストマーは、Dow Dupontから、Nordelの商品名で市販されている。
【0019】
上記硬化性エラストマーが、ジエンエラストマーとポリオレフィンとのブレンドを含む場合には、上記ポリオレフィンのブレンドには、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、合金又はモノマー、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、メチルペンテン、オクテン若しくはそれらの任意の組み合わせから構成されるそれらの任意の組み合わせが含まれる。例示的なポリオレフィンには、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンオクテンコポリマー又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の例では、上記ポリオレフィンには、高密度ポリエチレンが含まれる。別の例では、上記ポリオレフィンには、ポリプロピレンが含まれる。さらなる例では、上記ポリオレフィンには、エチレンオクテンコポリマーが含まれる。
【0020】
特定の実施形態では、上記ポリオレフィンは、変性ポリオレフィン、例えば、カルボキシル基変性ポリオレフィンではなく、そして特にエチレンビニルアセテートではない。さらに、上記ポリオレフィンは、ジエンモノマーから形成されない。特定の例では、上記ポリオレフィンは、結晶化度を有する。例えば、上記ポリオレフィンは、少なくとも約35%の結晶化度を有することができる。特定の例では、上記ポリオレフィンは、少なくとも約50%、例えば、少なくとも約60%、又は少なくとも約70%の結晶化度を有することができる。特定の例では、上記ポリオレフィンは、高結晶化度ポリオレフィンであることができる。あるいは、上記ポリオレフィンは、35%以下の結晶化度を有する低結晶化度ポリオレフィンであることができる。低結晶化度ポリオレフィンは、剥離フィルムの順応性を強化するか又は透明度を改良することができる。例示的な市販のポリオレフィンには、Equistar8540、エチレンオクテンコポリマー;Equistar GA−502−024、LLDPE;Dow DMDA−8904NT7、HDPE;Basell Pro−Fax SR275M、ランダムポリプロピレンコポリマー;Dow 7C50、ブロックPPコポリマー;又はDupont Dowから、商品名Engageの下でかつて市販されていた製品が含まれる。
【0021】
ある例では、上記ブレンドには、約40重量%以下のポリオレフィン、例えば、約30重量%以下のポリオレフィンが含まれる。例えば、上記ブレンドは、約20重量%以下、例えば、10重量%以下のポリオレフィンを含むことができる。特定の例では、上記ブレンドは、約5重量%〜約30重量%、例えば、約10重量%〜約30重量%、約10重量%〜約25重量%、又は約10重量%〜約20重量%を含む。
【0022】
一般に、上記ブレンドは、ポリマー成分間の相溶性を示す。DMA分析は、相溶性の証拠を提供することができる。DMA分析は、適合性を示す、ブレンドの主要成分のガラス転移温度間の、単一のタンデルタピークを示すことができる。あるいは、相溶しないブレンドは、1つ超のタンデルタピークを示すことができる。一例では、上記ブレンドは、単一のタンデルタピークを示すことができる。特に、上記単一のタンデルタピークは、上記ポリオレフィンのガラス転移温度と上記ジエンエラストマーのガラス転移温度との間であることができる。
【0023】
一般に、硬化性エラストマーは、架橋により硬化されうる。特定の例では、硬化性エラストマーは、放射線、例えば、X線、ガンマ放射線、紫外線、可視光線、電子線(e−ビーム)又はそれらの任意の組み合わせにより架橋性となりうる。特定の例では、上記放射線は、化学線であることができる。紫外線(UV)放射線は、170nm〜400nm、例えば、170nm〜220nmの範囲の波長又は複数の波長における放射線を含むことができる。電離放射線は、イオンを発生させることができる高エネルギー放射線を含み、そして電子線(e−ビーム)放射線、ガンマ放射線及びX線を含む。特定の例では、e−ビーム電離放射線は、ファンデグラフ発電機、電子加速器又はX線により発生した電子線を含む。別の実施形態では、上記硬化性エラストマーは、熱的方法により、架橋性となることができる。さらなる例では、上記硬化性エラストマーは、化学反応、例えば、シラン架橋剤と水との間の反応により架橋性となることができる。
【0024】
例示的な実施形態では、中間層104の材料は、架橋剤、光開始剤、充填剤、可塑剤又はそれらの任意の組み合わせをさらに含むことができる。あるいは、上記ブレンドは、架橋剤、光開始剤、充填剤又は可塑剤を含まなくともよい。特に、上記ブレンドは、光開始剤又は架橋剤を含まなくともよい。
【0025】
架橋を促進するために、上記エラストマー層104の材料は、開始剤を含むことができる。例えば、上記エラストマー層104の材料は、開始剤又は増感(sensibilizer)組成物を含むことができる。例えば、紫外線が、照射の形態として企図された場合又はe−ビーム放射線が照射として企図された場合、上記材料は、架橋効率、すなわち単位放射線量あたりの架橋度を増すために、光開始剤を含むことができる。
【0026】
例示的な光開始剤には、ベンゾフェノン、オルト−及びパラ−メトキシベンゾフェノン、ジメチルベンゾフェノン、ジメトキシベンゾフェノン、ジフェノキシベンゾフェノン、アセトフェノン、o−メトキシアセトフェノン、アセナフテンキノン、メチルエチルケトン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α−フェニルブチロフェノン、p−モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4−モルホリノベンゾフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、3−o−モルホリノデオキシベンゾイン、p−ジアセチルベンゼン、4−アミノベンゾフェノン、4’−メトキシアセトフェノン、α−テトラロン、9−アセチルフェナントレン、2−アセチルフェナントレン、10−チオキサンテンオン、3−アセチルフェナントレン、3−アセチルインドール、9−フルオレノン、1−インダノン、1,3,5−トリアセチルベンゼン、チオキサンテン−9−オン、キサンテン−9−オン、7−H−ベンズ[de]アントラセン−7−オン、ベンゾインテトラヒドロフィラニルエーテル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)−ベンゾフェノン、1’−アセトナフトン、2’−アセトナフトン、アセト−ナフトン及び2,3−ブタンジオン、ベンズ[a]アントラセン−7,12−ジオン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセト−フェノン、α−ジエトキシ−アセトフェノン、α−ジブトキシ−アセトフェノン、アントラキノン、イソプロピルチオキサントン又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。例示的なポリマー開始剤は、ポリ(エチレン/一酸化炭素)、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ポリメチルビニルケトン、ポリビニルアリールケトン又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0027】
別の例示的な光開始剤には、ベンゾフェノン;アントロン;キサントン;Ciba−Geigy Corp.のIrgacure(商標)シリーズの開始剤、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Irgacure(商標)651)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure(商標)184)又は2−メチル−l−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モロフォリノプロパン−1−オン(Irgacure(商標)907)、;又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。一般的に、上記光開始剤は、エラストマー層104の材料からの移動が少ない。さらに、上記光開始剤は、押出し温度において、低蒸気圧と、エラストマー層104のポリマー又はポリマーブレンド中における十分な溶解性とを有し、効率的な架橋を生じさせる。例示的な実施形態では、上記光開始剤の蒸気圧及び溶解性、又はポリマー相溶性は、当該光開始剤を誘導体化して改良することができる。例示的な誘導体化された光開始剤には、例えば、4−フェニルベンゾフェノン、4−アリルオキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシベンゾフェノン又はそれらの任意の組み合わせ等の、ベンゾフェノンのより高分子量の誘導体が含まれる。一例では、上記光開始剤を、エラストマー層104の材料のポリマーに共有結合させることができる。
【0028】
例示的な実施形態では、エラストマー層104の材料は、約0.0重量%〜約3.0重量%、例えば、約0.1重量%〜約2.0重量%の光開始剤を含む。
【0029】
架橋はまた、化学架橋剤、例えば、ペロキシド、アミン、シラン又はそれらの任意の組み合わせにより促進されうる。例示的な実施形態では、エラストマー層104の材料は、固体状態のポリマー及び上記架橋剤(例えば、粉末状態)を乾式ブレンドすることにより調製されうる。あるいは、上記材料は、不活性な粉末状支持体中に吸収される液状で、又はコーティングされたペレット等を調製することにより調製されうる。
【0030】
例示的な熱活性化架橋剤には、熱分解にさらされた場合に、少なくとも1つ及び典型的には2つ又は3つ以上のフリーラジカルを生成し、架橋に影響を与えるフリーラジカル生成化学物質が含まれる。例示的な実施形態では、上記架橋剤は、有機過酸化物、アミン、シラン又はそれらの任意の組み合わせを含む有機架橋剤である。
【0031】
例示的な有機過酸化物には、2,7−ジメチル−2,7−ジ(t−ブチルペルオキシ)オクタジイン−3,5;2,7−ジメチル−2,7−ジ(パーオキシエチルカーボネート)オクタジイン−3,5;3,6−ジメチル−3,6−ジ(パーオキシエチルカーボネート)オクテン−4;3,6−ジメチル−3,6−(t−ブチルパーオキシ)オクテン−4;2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシベンゾエート)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシ−n−プロピルカーボネート)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシイソブチルカーボネート)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシエチルカーボネート)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(α−クミルパーオキシ)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(パーオキシβ−クロロエチルカーボネート)ヘキシン−3;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定の架橋剤は、Luperso l130の名称の下、Elf Atochemから入手できる、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3である。別の例示的な架橋剤は、Luperox 500Rとして、Elf Atochemから入手できる、ジクミルパーオキシドである。特定の実施形態では、上記架橋剤は、上記材料の重量に基づいて、約0.1重量%〜約5.0重量%、例えば、約0.5重量%〜約2.0重量%の量で、上記材料中に存在する。
【0032】
例示的なシラン架橋剤は、次の一般式:
【化1】

(式中、
R1は、水素原子又はメチル基であり;
x及びyは、0又は1であるが、xが1の場合には、yは1である;
nは、1〜12、好ましくは、1〜4の整数であり:そして
各Rは、独立して、加水分解可能な有機基、例えば、1〜12個の炭素原子から成るアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ(araloxy)基(例えば、ベンジルオキシ)、1〜12個の炭素原子の脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ若しくは置換されたアミノ基(例えば、アルキルアミノ、アリールアミノ)又は1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基であるが、3個のR基のうち1つ以下はアルキルである。)
を有する。
【0033】
有機過酸化物を使用して、上記シランをポリマーにグラフトすることができる。追加の材料、例えば、熱及び光安定剤、顔料又はそれらの任意の組み合わせがまた、材料中に含まれうる。一般に、上記架橋反応は、グラフトされたシラン基と水との間の反応により生じたものであることができる。水は、大気から又は水浴若しくは「サウナ(sauna)」からバルクポリマー中に浸透することができる。例示的なシランには、エチレン系不飽和ヒドロカルビル基、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル又はγ−(メタ)アクリルオキシアリル基及び加水分解基、例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ又はヒドロカルビルアミノ基を含む不飽和シランが含まれる。加水分解基の例には、メトキシ基、エトキシ基、ホルミルオキシ基、アセトキシ基、プロプリオニルオキシ(proprionyloxy)基、アルキル基、アリールアミノ基又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。特定のシランは、上記ポリマーにグラフトさせることができる不飽和アルコキシシランである。特に上記シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0034】
シラン架橋剤の量は、上記ブレンド、シラン、処理条件、グラフト化効率、最終用途及び類似の因子の性質により広く変わることができる。典型的には、少なくとも100部の樹脂あたり(phr)0.5部、例えば、少なくとも約0.7phrを用いる。一般的に、シラン架橋剤の量は、5phrを超えることはなく、例えば、約2phr以下である。
【0035】
別の例示的な実施形態では、アミン架橋剤には、モノアルキル、ドゥアリル(duallyl)又はトリアルキルモノアミン(ここで、上記アルキル基は、約2〜約14個の炭素原子;式N(R23Nのトリアルキレンジアミン;式HN(R22NHのジアルキレンジアミン;アルキレンジアミン、H2NR2NH2;ジアルキレントリアミン、H2NR2NHR2NH2;4〜6個の炭素原子の環式鎖を有する脂肪族アミン;又はそれらの組み合わせを含む)を含むことができる。上記式におけるアルキレン基R2は、約2〜約14個の炭素原子を含むことができる。例示的な環式アミンは、ヘテロ原子、例えば、酸素、例えば、N−アルキルモルホリンを有することができる。別の例示的な環式アミンは、ピリジン、N,N−ジアルキルシクロヘキシルアミン又はそれらの任意の組み合わせを含む。例示的なアミンは、トリエチルアミン;ジ−n−プロピルアミン;トリ−n−プロピルアミン;n−ブチルアミン;シクロヘキシルアミン;トリエチレンジアミン;エチレンジアミン;プロピレンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン;ピリジン;エチル−p−ジメチルアミンベンゾエート(EDAB);オクチル−p−ジメチルアミノベンゾエート(ODAB);又はそれらの任意の組み合わせである。例示的な実施形態では、上記材料は、約0.5重量%〜約10.0重量%のアミンを含む。
【0036】
特定の例では、Albemarle,Inc.から入手できるFirstCure ITXを用いて硬化を向上させる。FirstCure ITXはまた、アミン共力剤、例えば、エチル−p−ジメチルアミンベンゾエート(EDAB)又はオクチル−p−ジメチルアミノベンゾエート(ODAB)と併せて用いることができる。
【0037】
図1に戻ると、複層フィルム100は、共押出し、共ラミネーション、押出しラミネーション、予備生成された層のメルトコーティング又は共成形等の方法により形成されうる。特に共押出しは、フィルム又はシートを製造することができる。例えば、各層102、104及び所望による106のシートを、押出し、共押出しダイの中、熱軟化された条件の間、又は事前形成されうる製品を形成するためのダイのアウトレットの後に、一緒に置く。化学系架橋剤が存在する場合に、架橋が起こりうる。あるいは、上記シートを、放射線架橋にさらすことができる。
【0038】
一度、複層製品を事前形成させると、架橋を実施することができる。一例では、架橋は、層102,層104及び所望による層106の結合に作用することができる。上記架橋は、エラストマー層104の機械的性質を変え、そして層102、層104及び層106間の剥離強度を改良することができる。架橋は、層102、層104及び所望による層106を、一緒に置いた際に、高温、例えば、いずれかの成分の融点を超えて、室温で又はその間の任意の温度において実施されうる。
【0039】
放射線による架橋を具体的に説明するために、フィルムを押出し法により調製する。上記押出し法において、層102の材料、層104の材料及び所望による層106の材料を個別に溶融させ、そして別個に供給するか、又は一緒に溶融させ、共押出しフィードブロック及びダイヘッドに供給する(層102,層104及び所望による層106を含むフィルムが生成する)。例示的なダイは、「コートハンガー」型形態を用いる。例示的な線状のコートハンガーダイヘッドは、Extrusion Dies,Inc.(コネチカット)又はCloeren Die Corp.(テキサス)から市販されている。例示的な実施形態では、共押出しされた複層フィルムは、30:1以下、例えば、20:1以下の比において延伸される。あるいは、上記押出しされる層を、0.1MPa〜80MPaの範囲の圧力で共にプレスすることができる。
【0040】
一度上記フィルムを形成させたら、放射線架橋をすぐに実施し、そして上記フィルムを巻きとることができる。あるいは、上記フィルムを、未架橋の状態で巻き、後に巻出し、そして放射線架橋にさらすことができる。
【0041】
上記放射線は、層104の架橋性ポリマーに架橋を作り出すために効果的であることができる。層104内のポリマー分子の層間架橋により、硬化した組成物が提供され、そして複層フィルム100の層104に構造強度が付与される。さらに、放射線架橋は、フルオロポリマーから構成される最外層102とコア層104との間の結合を、例えば、中間層架橋により実施することができる。特定の実施形態では、高い耐剥離性を有する一体化された複合体をもたらす硬化されたコア層及び上記層の間の層間架橋結合の組み合わせは、高い耐付着性及び保護表面を有し、最少量の耐付着性材料を導入し、そしてさらに複層フィルム100の好適な取扱い及び配置のために物理的価値を有する。特定の実施形態では、少なくとも約5、例えば、少なくとも約10の厚さ比を有するフィルムは、より少ない硬化及び架橋を有する効果的な中間層結合を形成する。
【0042】
さらに、少なくとも約5、例えば、少なくとも約10の厚さ比を有する複層フィルムは、より低い絶対剥離強度でさえも、層間剥離に対する剥離性を有する。上記複層フィルムは、例えば、標準的な「T」−Peel状態において室温で試験した場合には、少なくとも約5gm/cmの幅の剥離強度を示すことができる。特に、厚さ1ミル未満のより薄いフィルムは、少なくとも約5gm/cm、例えば、少なくとも約10gm/cm、又は少なくとも約20gm/cmの剥離強度を有することができる。別の例では、上記複層フィルムの剥離強度は、少なくとも約30gm/cm、例えば、少なくとも約40gm/cm、少なくとも約45gm/cm、又はさらに少なくとも約50gm/cmであることができる。特に、より厚いフィルム、又は広い温度範囲にわたり粘着テープと共に用いられるフィルムは、少なくとも約30gm/cmの剥離強度を有することができる。
【0043】
特定の実施形態では、上記放射線は、170nm〜400nm、例えば、約170nm〜220nmの波長を有する紫外線であることができる。少なくとも約120J/cm2の放射線を用いて架橋を実施することができる。
一度形成され、そして硬化されると、上記複層ポリマーフィルムは、望ましい機械的性質を示すことができる。例えば、上記複層ポリマーフィルムは、ASTM D882−02試験法に基づいて、少なくとも約12MPaの抗張力を有することができる。例えば、上記複層フィルムは、少なくとも約15MPa、例えば、少なくとも約20MPaの抗張力を有することができる。
【0044】
別の例示的な実施形態では、上記複層フィルムは、ASTM D882−02試験法に基づいて、最大所望の抗張力における伸び率を示す。例えば、上記複層フィルムは、少なくとも約145%、例えば、少なくとも約170%、又は少なくとも約200%の最大抗張力における、伸び率を示すことができる。
【0045】
複層フィルムの特定の実施形態は、架橋性及び中間層結合を維持しながら、改良された機械的性質を有利に示す。例えば、複層フィルムの実施形態は、間にある接着層を用いることなく、フルオロポリマーの最外層及びコア層との間の結合並びにコア層内の内部架橋を示すことができる。さらに、上記複層フィルムの実施形態は、低い放射線暴露において、又はより低い剥離強度とともに、有効な界面結合を示すことができる。さらに、実施形態は、望ましい摩擦係数を予想外に示すことができる。
【実施例】
【0046】
例1
ブレンド化の検討のために、5種のポリマーを選択した。特に、EPDMと5種の市販のポリオレフィンのうちの1種とを含むブレンドを生成させた。上記市販のポリオレフィンは、Equistar 8540,エチレンオクテンコポリマー;Equistar GA−502−024,LLDPE;Dow DMDA−8904NT7,HDPE;Basell Pro−Fax,SR275M,ランダムポリプロピレンコポリマー;及びDow 7C50,ブロックPPコポリマーである。選択されたEPDMのグレードは、Dupont−Dowから入手できる、Nordel 4725である。EPDM及び少なくとも1種のポリオレフィンを含むブレンドは、Daikin NP−12XFEPから形成された最外層を含む複層フィルムのコア層又は中間層として含まれる。当該複層フィルムを共押出しし、そして紫外線放射に暴露し、当該コア層のブレンドを硬化させた。
【0047】
上記複層フィルムを、厚さ1ミルに共押出し、そしてFusion UV Systems Model VPS−6システムに包含されるH+バルブによって発生させた紫外線に暴露した。当該試料を、総照射線量129J/cm2の紫外線に複数回通して暴露させた。上記ブレンドは、光開始剤を含まなかった。
【0048】
上記ブレンドの相溶性を評価するために、動的機械分析(DMA)を用いた。DMAスキャンのタンデルタピークにより、総合的なブレンドに関するガラス転移温度(Tg)が提供された。相溶系において、Tgは、2成分ブレンドにおける各成分の相対量に従って動く。すなわち、上記ブレンドに関するTgは、上記2成分のガラス転移温度に関する中間値を有し、そしてTg値は、成分の相対量の関係に従って変化する。あるいは、不相溶なブレンドは、少なくとも2種の異なる材料としてふるまい、そして少なくとも2つのタンデルタピークがDMAスキャンに現れる。上述の試料における各ブレンドは、成分ポリマーのガラス転移温度の間に、1つのタンデルタピークを示した。
【0049】
例2
機械的性質、例えば、試料の抗張力及び最大の抗張力における伸び率(%)を試験した。手順は、ASTM D882−02に従った。5kNロードセルと共に、20インチ/分のクロスヘッド速度を用いた。試験前に、上記試料を12時間、23℃及び50相対湿度(RH)の条件においた。
【0050】
【表1】

【0051】
コア層として、100%Nordel 4725 EPDMを含む比較試料は、12.5MPaの抗張力を有した。表1において具体的に説明したように、上記各試料は、少なくとも約12MPaの抗張力を示した。中間又はコア層にブレンドを含む試料の多くは、少なくとも約15MPaの抗張力を示し、そして特定の試料は、20MPaを超える抗張力を示した。一般に、コア層のブレンドにポリオレフィンを添加すると、上記コア層内に100%Nordel 4725 EPDMを含む試料と比較して、上記試料の抗張力が増加した。特定の試料、例えば、直鎖の低密度ポリエチレンブレンドを含むブレンドを含む試料及びエチレンオクテンコポリマーを含むブレンドを含む試料は、約10%のところにピーク抗張力を示した。他の試料、例えば、高密度ポリエチレンを含むブレンドを含む試料及びポリプロピレンブロックコポリマーを含むブレンドを含む試料は、30%の量で高い抗張力を示した。
【0052】
最大抗張力における伸び率(%)をまた評価した。コア層として、100%Nordel 4725 EPDMを含む比較試料は、149%の最大抗張力における伸び率を有した。表2は、上述の試料に関する伸び率(%)を含む。各試料は、少なくとも約147%の最大抗張力における伸び率を示した。エチレンオクテンコポリマーブレンドを含む試料は、10〜20%エチレンオクテンコポリマーの組成のところにピーク伸び率(%)を示した。他の試料、例えば、LLDPブレンドを含む試料及びポリプロピレンランダムコポリマーブレンドを含む試料は、30%のところで高い伸び率(%)を示した。
【0053】
【表2】

【0054】
例3
A:B:Aの形態を有する3層フィルム(ここで、A及びBは、異なる材料から形成される層を表す)を押出した。層Aは、約205℃の融点を有するDaikin NP−12X FEP3から形成されていた。層Bは、約115℃の融点を有するDupont Dowから入手できる、EPDM Nordel1248から形成されていた。共押出しの前に、60℃において、約8時間、上記材料を事前乾燥した。層Aの材料を押出しするエクストルーダーの範囲は、240℃、280℃、285℃及び285℃にセットした。上記層Bの材料を押出しするエクストルーダーの範囲は、183℃、220℃、260℃及び266℃にセットした。層Bの材料を、200−メッシュスクリーンにより処理した。フィードブロックを、285℃にセットし、ダイを287℃にセットし、そしてキャストドラムを、75℃にセットした。清浄な装置上で、層Aの材料のエクストルーダーが、FEPでダイを満たし始めた。一度上記ダイがFEPで満たされたら、層Bの材料のエクストルーダーを導入した。
【0055】
上記フィルムの第1の試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約12%:77%:11%の体積比を有していた。総フィルム厚は、33.6μmであった。層Aは、それぞれ約4μmの厚さを有し、そして層Bは、約25.6μmの厚さを有していた。厚さ比は、6.4であった。
【0056】
上記フィルムの第2の試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ12%:78%:10%の体積比を有していた。総フィルム厚は、30.2μmであった。層Aは、それぞれ約3.5μm及び約3.3μmの厚さを有し、そして層Bは、約23.4μmの厚さを有していた。厚さ比は、7.1であった。
【0057】
上記フィルムの第3の試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約7%:86%:7%の体積比を有していた。総フィルム厚は、30.7μmであった。層Aは、それぞれ約2.0μmの厚さを有し、そして層Bは、約26.7μmの厚さを有していた。厚さ比は、13.3であった。
【0058】
例4
例3の方法に従って、A:B:Aの形態を有する3層フィルムを形成させた。ここで、層Aは、Daikin NP−12X FEPを含み、そして層Bは、Dupont Dowによる、Nordel4920 EPDMを含んでいた。
【0059】
2つの層Aの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、288℃、299℃、321℃、318℃及び318℃にセットした。層Bの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、160℃、188℃、204℃、215℃、215℃及び215℃にセットした。層Bの材料を、200−メッシュスクリーンにより処理した。フィードブロックを、288℃にセットし、ダイを290℃にセットし、そしてキャストドラムを121℃にセットし、その一方で、第2の冷却ロールを74℃にセットした。清浄な装置上で、層Aの材料のエクストルーダーが、FEPでダイを満たし始めた。一度、上記ダイがFEPで満たされたら、層Bの材料のエクストルーダーを導入した。エクストルーダーの回転速度を、所望のスキン及びコア層厚さを与えるように調整した。
【0060】
上記フィルムの試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約5%:90%:5%の体積比を有していた。総フィルム厚は、105.6μmであった。層Aは、それぞれ約5.5μmの厚さを有し、そして層Bは、約94.6μmの厚さを有していた。厚さ比は、17.2であった。15インチ/分において、H+600w/inバルブから紫外線に暴露させた後、当該試料は、45g/inの剥離強度を示した。
【0061】
例5
例3の方法に従って、A:B:Aの形態を有する3層フィルムを形成させた。ここで、層Aは、Daikin NP−12X FEPを含み、そして層Bは、Dupont Dowによる、Nordel4820 EPDMを含んでいた。
【0062】
2つの層Aの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、288℃、298℃、321℃、318℃及び318℃にセットした。層Bの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、160℃、188℃、204℃、215℃、215℃及び215℃にセットした。層Bの材料を、200−メッシュスクリーンにより処理した。フィードブロックを、293℃にセットし、ダイを、290℃にセットし、そしてキャストドラムを93℃にセットし、その一方で、第2の冷却ロールを74℃にセットした。清浄な装置上で、層Aの材料のエクストルーダーが、FEPでダイを満たし始めた。一度、上記ダイがFEPで満たされたら、層Bの材料のエクストルーダーを導入した。エクストルーダーの回転速度を、所望のスキン及びコア層厚さを与えるように調整した。
【0063】
上記フィルムの第1の試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約4%:92%:4%の体積比を有していた。総フィルム厚は、51.0μmであった。層Aは、それぞれ約5.0μmの厚さを有し、そして層Bは、約110.0μmの厚さを有していた。厚さ比は、24.0であった。
【0064】
上記フィルムの第2の試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約2%:96%:2%の体積比を有していた。総フィルム厚は、120μmであった。層Aは、それぞれ約2.5μmの厚さを有し、そして層Bは、約115μmの厚さを有していた。厚さ比は、46であった。
【0065】
例6
例3の方法に従って、A:B:Aの形態を有する3層フィルムを形成させた。ここで、層Aは、Daikin NP−12X FEPを含み、そして層Bは、Dupont Dowによる、Nordel4820 EPDMを含んでいた。
【0066】
2つの層Aの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、260℃、299℃、321℃、321℃及び315℃にセットした。層Bの材料を押出しするエクストルーダーの範囲を、100℃、130℃、170℃、200℃、215℃及び215℃にセットした。層Bの材料を、200−メッシュスクリーンにより処理した。フィードブロックを、280℃にセットし、ダイを280℃にセットし、そしてキャストドラムを135℃にセットし、その一方で、第2の冷却ロールを79℃にセットした。清浄な装置上で、層Aの材料のエクストルーダーが、FEPでダイを満たし始めた。一度、上記ダイがFEPで満たされたら、層Bの材料のエクストルーダーを導入した。エクストルーダーの回転速度を、所望のスキン及びコア層厚さを与えるように調整した。上記装置は、60インチ幅を超えるウェブを製造する、フルスケールの複層製造ラインであった。
【0067】
上記フィルムの試料は、層A:B:Aに関して、それぞれ約4%:92%:4%の体積比を有していた。総フィルム厚は、54μmであった。層Aは、それぞれ約1.25μmの厚さを有し、そして層Bは、約51.5μmの厚さを有していた。厚さ比は、41.2であった。スキン層は、厚みが薄い場合であっても、途切れのないことは明確であった。60インチ幅のウェブ全体にわたる精密な検査の下、EPDMが暴露されるべきどちらのFEPスキン表面にも、ギャップ又はラインが観察されなかった。従って、上記材料は、剥離フィルムとして機能性を有することは明らかである。上記極めて良好な厚さのスキン層を、製造スケールの装置内で実施することができることは驚くべきことである。
【0068】
上述の主題は、具体例であるとみなされるべきであり、そして限定的なものではなく、そして添付の特許請求の範囲は、本発明の真の範囲内である全ての改良、強化及び他の実施形態を覆うことを目的とする。従って、法律により許容される最大範囲まで、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最大の許容される解釈により決定され、そして上述の詳細な説明により、制限又は限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0069】
添付の図面を参照することにより、本開示を、より良好に理解することができ、そして非常に多くの特徴及び優位性が、当業者に明白となる。
【図1】図1は、例示的な複層フィルムの具体的な説明を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性エラストマーを含む第1の層;
前記第1の層と直接結合し且つ直接接している第2の層、当該第2の層は、フルオロポリマーを含み且つ5.0μm未満の厚さを有する:
を含む複層フィルムであって、
前記複層フィルムが、少なくとも約5の厚さ比を有し、当該厚さ比は、前記第1の層の厚さの、前記第2の層に対する比であり:そして
前記複層フィルムが、概して、複数の平行且つ平面の対向する主要な表面を有する、
前記複層フィルム。
【請求項2】
前記厚さ比が、少なくとも約10である、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項3】
前記厚さ比が、少なくとも約20である、請求項2に記載の複層フィルム。
【請求項4】
前記厚さ比が、少なくとも約100である、請求項3に記載の複層フィルム。
【請求項5】
前記第2の層の厚さが、約4.5μm以下である、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項6】
前記第2の層の厚さが、約3.5μm以下である、請求項5に記載の複層フィルム。
【請求項7】
前記第2の層の厚さが、約2.5μm以下である、請求項6に記載の複層フィルム。
【請求項8】
前記第2の層の厚さが、約1.3μm以下である、請求項7に記載の複層フィルム。
【請求項9】
前記第1の層の厚さが、少なくとも約12.0μmである、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項10】
前記第1の層の厚さが、少なくとも約25.0μmである、請求項9に記載の複層フィルム。
【請求項11】
前記第1の層の厚さが、少なくとも約200.0μmである、請求項10に記載の複層フィルム。
【請求項12】
前記複層フィルムが、少なくとも約25.0μmの総フィルム厚を有する、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項13】
前記総フィルム厚が、少なくとも約100μmである、請求項12に記載の複層フィルム。
【請求項14】
前記総フィルム厚が、少なくとも約200μmである、請求項13に記載の複層フィルム。
【請求項15】
前記複層フィルムが、少なくとも約5g/cmの、前記第1の層と第2の層との間の剥離強度を示す、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項16】
前記複層フィルムが、少なくとも約30g/cmの、前記第1の層と第2の層との間の剥離強度を示す、請求項15に記載の複層フィルム。
【請求項17】
前記複層フィルムが、少なくとも約45g/cmの、前記第1の層と第2の層との間の剥離強度を示す、請求項16に記載の複層フィルム。
【請求項18】
前記硬化性エラストマーが、ジエンエラストマーを含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項19】
前記ジエンエラストマーが、エチレンプロピレンジエンエラストマー(EPDM)を含む、請求項18に記載の複層フィルム。
【請求項20】
前記硬化性エラストマーが、ジエンエラストマーとポリオレフィンとのブレンドを含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項21】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー(MFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)及びテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンビニリデンフルオリドターポリマー(THV)から成る群から選択される、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項22】
前記フルオロポリマーが、パーフルオロ化ポリオレフィンを含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項23】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)を含む、請求項22に記載の複層フィルム。
【請求項24】
前記硬化性エラストマーが、化学線による硬化性を有する、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項25】
前記化学線が、紫外線を含む、請求項24に記載の複層フィルム。
【請求項26】
前記第1の層が、開始剤を含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項27】
前記開始剤が、光開始剤である、請求項26に記載の複層フィルム。
【請求項28】
前記第2の層と対向する主要な表面上に、前記第1の層と直接結合し且つ直接接しているフルオロポリマーを含む第3の層をさらに含む、請求項1に記載の複層フィルム。
【請求項29】
ジエンエラストマーを含む第1の層、当該第1の層は、第1及び第2の対向する主要な表面を有する;
前記第1の層の第1の主要な表面と直接結合し且つ直接接している第2の層、当該第2の層は、フルオロポリマーを含み、ここで、前記第1の層の厚さの、前記第2の層の厚さに対する厚さ比が、少なくとも約5である;及び
前記第1の層の第2の主要な表面と直接結合し且つ直接接している第3の層、当該第3の層は、フルオロポリマーを含む:
を含む複層フィルム。
【請求項30】
前記厚さ比が、少なくとも約10である、請求項29に記載の複層フィルム。
【請求項31】
前記厚さ比が、少なくとも約20である、請求項30に記載の複層フィルム。
【請求項32】
前記厚さ比が、少なくとも約100である、請求項32に記載の複層フィルム。
【請求項33】
前記第2の層の厚さが、約4.5μm以上である、請求項29に記載の複層フィルム。
【請求項34】
前記第2の層の厚さが、約3.5μm以上である、請求項33に記載の複層フィルム。
【請求項35】
前記第1の層の厚さが、少なくとも約12.0μmである、請求項29に記載の複層フィルム。
【請求項36】
前記第1の層の厚さが、少なくとも約25.0μmである、請求項35に記載の複層フィルム。
【請求項37】
前記フルオロポリマーが、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、トラフルオロエチレンとパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマー(PFA)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロメチルビニルエーテルとのコポリマー(MFA)、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)及びテトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレンビニリデンフルオリドターポリマー(THV)から成る群から選択される、請求項29に記載の複層フィルム。
【請求項38】
複層フィルムを形成する方法であって、
次の段階;
硬化性エラストマーを含む第1の層を押出す段階;
未硬化の複層フィルムを形成するために、前記第1の層と接触させて第2の層を押出す段階、当該第2の層はフルオロポリマーを含み、前記第1の層の厚さの、前記第2の層の厚さに対する厚さ比が、少なくとも約5である;そして
前記未硬化の複層フィルムを硬化させる段階:
を含む方法。
【請求項39】
前記未硬化の複層フィルムを、30:1以下の延伸比まで延伸することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記未硬化の複層フィルムを硬化させる段階が、前記未硬化の複層フィルムを照射することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記未硬化の複層フィルムを照射することが、紫外線を用いて照射することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記厚さ比が、少なくとも約10である、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記厚さ比が、少なくとも約20である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記厚さ比が、少なくとも約100である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記複層フィルムを硬化させる段階が、前記複層フィルムを、少なくとも一面から紫外線に暴露させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
前記複層フィルムを硬化させる段階が、前記複層フィルムを、二面から紫外線に暴露させることを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項47】
前記複層フィルムを紫外線に暴露し、EPDM層を所望の架橋密度の水準まで架橋させる、請求項38に記載の方法。
【請求項48】
硬化した複層フィルムが、少なくとも2つの接している層の間に、少なくとも10gm/cmの中間層剥離強度を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記硬化した複層フィルムが、少なくとも45gm/cmの中間層剥離強度を有する、請求項48に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−528194(P2009−528194A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557316(P2008−557316)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/004851
【国際公開番号】WO2007/100732
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(500149223)サン−ゴバン パフォーマンス プラスティックス コーポレイション (64)
【Fターム(参考)】