説明

複層塗膜形成方法

【課題】自動車車体の内装部品や外板等の各種工業製品に対して、ハイライトで高明度、全体に高彩度で深み感に優れた多彩模様が形成される複層塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】本発明は、45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15が70〜300の範囲内及び/又は、15度で受光したときのL*15と、45度で受光したときのL*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値が0.5〜3.0の範囲内である基材上に、色及び/又は質感が異なる2種類以上の着色塗料を同時に塗装して、異なる色の塗膜が混在する模様が形成される複層塗膜形成方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイライトで高明度、全体に高彩度で深み感に優れた多彩模様が形成される複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車や工業製品の外板部、内装部品等に塗装することは、製品を保護するために行なわれるものであった。また、製品の保護に加えてさらに消費者の製品に対する印象を高めるために種々の色に塗装することが古くから行なわれていた。近年、様々な工業製品において、高級な質感、従来とは異なる質感を持つ意匠が注目を浴びている。
【0003】
新規な意匠としては、色や質感が異なる部位が混在した多彩模様を挙げることができる。さらに、光輝感や深み感が付与された意匠が着目されている。
【0004】
特許文献1には、光輝感と立体感に富んだ色調を有する塗膜外観とザラツキ感のない塗装面の得られる多彩模様塗料として、分散媒および該分散媒に溶解しない状態で分散せしめた少なくとも2色の液状、またはゲル状の着色塗料粒子とからなる多彩模様塗料において、前記着色塗料粒子の少なくとも1つがメタリック顔料もしくは真珠光沢顔料によって着色してなる着色塗料粒子である多彩模様塗料が記載されている。特許文献1に記載された多彩模様塗料による塗膜は、多彩模様の一部が観察角度によって色の見え方が異なるメタリック色を呈するものであるが、全体の彩度が低く、深み感に乏しい問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開2000−7954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ハイライトで高明度、全体に高彩度で、深み感を有する多彩模様塗膜を形成可能な複層塗膜形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
1.45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15が70〜300の範囲内及び/又は、15度で受光したときのL*15と、L*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値が0.5〜3.0の範囲内である基材上に、色及び/又は質感が異なる2種類以上の着色塗料を同時に塗装して、異なる色の塗膜が混在する模様が形成される複層塗膜形成方法であって、該着色塗料は、硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm〜700nmの光線透過率が30%以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法、
2.着色塗料として用いる2種類以上の塗料を、複数の塗料吐出ノズルを具備する多ノズルエア霧化式スプレーガンを用いて塗装せしめる1項記載の複層塗膜形成方法、
3.着色塗料として用いる塗料が、2種類である1項又は2項に記載の複層塗膜形成方法、
4.着色塗料の少なくとも1種類の塗料が、塗装して得られた塗膜の正反射光に対して45度で受光したときのL*C*h表色系における彩度C*が20〜60の範囲内である3項に記載の複層塗膜形成方法、
5.2種類の着色塗料を各々塗装して得られた塗膜の、正反射光に対して45度で受光したときのL*a*b*表色系における色差ΔE*が10〜40の範囲内である3項又は4項に記載の複層塗膜形成方法、
6.2種類の着色塗料の、塗装30秒後における塗着塗料の固形分含有量が、40〜70質量%の範囲内である2〜5項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
7.着色塗料を塗装するときのパターンエア量及び霧化エア量が、各々40〜300NL/min.の範囲内である1項に記載の複層塗膜形成方法。
8.基材が被塗物にベース塗料を塗装せしめることによって得られたものである1項に記載の複層塗膜形成方法、
9.着色塗料による塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる1〜8項のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法、
10.クリヤー塗料が、艶調整剤を塗料中の樹脂組成物100質量部あたり1〜100質量部含む9項に記載の複層塗膜形成方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高明度及び/又は金属調の基材上に、硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm〜700nmの光線透過率が30%以上である2種類以上の異なる色の着色塗料を形成することによって、全体に高明度、高彩度で、深み感を有する多彩模様塗膜塗膜が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明方法においては、45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15が70〜300の範囲内及び/又は、15度で受光したときのL*15と、L*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値が0.5〜3.0の範囲内である基材に、後述する着色塗料を塗装する。
L*a*b*表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されている表色系を意味する。本発明方法における明度L*は、具体的には、多角度分光光度計MA−68II(商品名、x−rite社製)を使用して測定した分光反射率から計算して得られた数値として定義するものとする。
【0010】
本発明方法において、基材としては、鉄、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム等の金属やこれらを含む合金、及びこれらの金属によるメッキまたは蒸着が施された成型物、ならびに、ガラス、プラスチックや発泡体などによる成型物等を挙げることができる。これら素材に応じて適宜、脱脂処理や表面処理して基材とすることができる。
【0011】
本発明においては、特に金属素材そのものや、金属によるメッキや蒸着が施された各種素材及びこれら素材に脱脂処理や表面処理を行ったものを基材とすることが好ましい。
【0012】
本発明においては、上記基材に下塗り塗膜や中塗り塗膜を形成させて基材とすることができる。
【0013】
下塗り塗膜は、素材表面を隠蔽したり、素材に防食性及び防錆性などを付与するために形成されるものであり、下塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。この下塗り塗料種としては特に限定されるものではなく、例えば、電着塗料、プライマー等を挙げることができる。
【0014】
また、中塗り塗膜は、素材表面や下塗り塗膜を隠蔽したり、付着性や耐チッピング性などを付与するために形成されるものであり、素材表面や下塗り塗膜上に、中塗り塗料を塗装し、乾燥、硬化することによって得ることができる。中塗り塗料種は、特に限定されるものではなく、既知のものを使用でき、例えば、熱硬化性樹脂組成物及び顔料を必須成分とする有機溶剤系又は水系の中塗り塗料を使用できる。
【0015】
また、基材として、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を形成させる場合においては、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜上に、後述するベース塗料を塗装せしめて、基材としてもよい。
【0016】
ベース塗料を塗装する場合、下塗り塗膜あるいは中塗り塗膜を加熱し、架橋硬化後に塗装することができるが、下塗り塗膜及び/又は中塗り塗膜が未硬化の状態で、ベース塗料を塗装することもできる。
【0017】
本発明におけるベース塗料とは、基材の明度やFF値を特定の範囲内に調整するために塗装せしめるものであって、着色顔料及び/又は光輝性顔料と、ビヒクル形成成分である樹脂成分を含む塗料である。
【0018】
本発明方法におけるベース塗料において、塗装して得られた塗膜の45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15を、70〜300の範囲内とするために、着色顔料として酸化チタン顔料を配合せしめることができる。
【0019】
酸化チタン顔料は、屈折率が高いことから白色顔料として広く使用されているものであり、結晶形によってルチル型とアナターゼ型があり、本発明においてはいずれを使用しても良いが、耐候性の点からルチル型を使用することができる。また、分散性や耐候性を向上させることを目的として、表面をシリカ、ジルコニウム、アルミニウム等の無機化合物で処理したものを使用しても良い。塗膜の隠蔽力の点から、一次粒子径が100〜400nmの範囲内のものを使用することが好ましく、さらに好ましくは、200〜300nmの範囲内のものである。
【0020】
ベース塗料が酸化チタン顔料を含有する場合その含有量は、隠蔽性や仕上がり性の点から、後述するビヒクル形成成分である樹脂固形分100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、特に好ましくは、20〜150質量部である。
【0021】
ベース塗料には、酸化チタン顔料の他にも、複層塗膜の色相や明度を微調整することを目的として、着色顔料を配合することができる。着色顔料としては、特に制限されるものではないが、具体的には、チタンイエローなどの複合金属酸化物顔料や透明性酸化鉄顔料等の無機顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料等の有機顔料及びカーボンブラック顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明において、ベース塗料に酸化チタン顔料以外の着色顔料を配合せしめる場合その含有量は、複層塗膜の明度の点から、0.01〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05〜25質量部の範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明方法におけるベース塗料において、塗装して得られた塗膜の15度で受光したときのL*15と、L*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値が0.5〜3.0の範囲内とするために、鱗片状光輝性願料を配合せしめることができる。鱗片状光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル合金、ステンレス等の鱗片状金属顔料、表面を金属酸化物で被覆した鱗片状金属顔料、表面に着色顔料を化学吸着させた鱗片状金属顔料、表面に酸化還元反応を起こさせることにより酸化アルミニウム層を形成した鱗片状アルミニウム顔料、アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料、ガラスフレーク顔料、表面を金属酸化物で被覆したガラスフレーク顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたガラスフレーク顔料、表面を金属で被覆したガラスフレーク顔料、表面を二酸化チタンで被覆した干渉マイカ顔料、干渉マイカ顔料を還元した還元マイカ顔料、表面に着色顔料を化学吸着させたり、表面を酸化鉄で被覆した着色マイカ顔料、表面を二酸化チタンで被覆したグラファイト顔料、表面を二酸化チタンで被覆したシリカフレークやアルミナフレーク顔料、板状酸化鉄顔料、ホログラム顔料、合成マイカ顔料、らせん構造を持つコレステリック液晶ポリマー顔料、オキシ塩化ビスマス顔料などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、基材のFF値を特定の範囲にする点から、鱗片状光輝性顔料として鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0025】
鱗片状アルミニウム顔料は、一般にアルミニウムをボールミルやアトライターミル中で粉砕媒液の存在下、粉砕助剤を用いて粉砕、摩砕して製造される。粉砕助剤としては、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸のほか、脂肪族アミン、脂肪族アミド、脂肪族アルコールが使用される。粉砕媒液としてはミネラルスピリットなどの脂肪族系炭化水素が使用される。
【0026】
鱗片状アルミニウム顔料は、粉砕助剤の種類によって、リーフィングタイプとノンリーフィングタイプに大別することができる。リーフィングタイプは、塗料組成物に配合すると塗装して得られた塗膜の表面に配列(リーフィング)し、金属感の強い仕上がりが得られ、熱反射作用を有し、防錆力を発揮するものであるため、タンク・ダクト・配管類および屋上ルーフィングをはじめ各種建築材料などに利用されることが多い。本発明のベース塗料においては塗装して得られる塗膜の深み感の点から、ノンリーフィングタイプの鱗片状アルミニウム顔料を使用することが好ましい。
【0027】
上記鱗片状アルミニウム顔料の大きさは、平均粒径が5〜30μmの範囲内のものを使用することが、塗装された塗膜の仕上がり性やハイライトの明度の点から好ましく、より好ましくは平均粒子径が7〜25μmの範囲内もの、特に好ましくは8〜23μmの範囲内ものである。厚さは0.05〜5μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう粒径及び厚さは、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
【0028】
本発明のベース塗料において、鱗片状光輝性顔料を使用する場合その配合量は、塗装して得られる塗膜の隠蔽性や、ハイライトの明度の点から塗料中の樹脂固形分100質量部に対し1〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜25質量部、特に好ましくは5〜20質量部の範囲内である。
【0029】
ベース塗料におけるビヒクルである樹脂成分としては、具体的には、水酸基などの架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂などの基体樹脂と、必要に応じてメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物(ブロック体も含む)などの架橋剤とを併用したものが挙げられ、これらは有機溶剤及び/又は水などの溶媒に溶解または分散して使用される。
【0030】
さらに、ベース塗料には、必要に応じて、水あるいは有機溶剤等の溶媒、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。
【0031】
ベース塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は硬化塗膜に基づいて5〜60μmの範囲内とするのが、塗膜の平滑性の点から好ましく、より好ましくは10〜50μmの範囲内である。ベース塗料による塗膜は通常、常温〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【0032】
本発明においてベース塗料を塗装せしめる場合、その塗膜は、加熱硬化させることなく未硬化の状態で、着色塗料を塗装することができる。通常は、ベース塗料を塗装後、塗着塗料の固形分含有量が50質量%以上、好ましくは、70質量%以上となった後に着色塗料を塗装することが模様形成の点から好ましい。
【0033】
本発明方法における着色塗料は、上記基材と色及び/又は質感が異なる塗膜を形成し得る液状塗料である。色とは、明度、彩度、色相を意味し、質感とは、光沢、IV値、FF値等を意味する。具体的には、色は、マンセル表色系、L*a*b*表色系、L*C*h表色系、XYZ表色系等の色度及び明度で表わすことができ、質感は、光沢やメタリック塗色において金属感を表わすIV値やSV値、フリップフロップ感を表わすフリップフロップ値(FF値)等で表わすことができる。それぞれ、市販の色彩計、分光光度計、光沢計等を用いて測定したり、測定値に基づいて計算することができる。
【0034】
本発明における着色塗料は、硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm〜700nmの光線透過率が30%以上となるように後述する着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料の種類や量を決定する。
【0035】
本明細書において上記光線透過率は、具体的には、着色塗料を硬化塗膜として20μmの膜厚となるように平滑なPTFE板に塗装後、乾燥硬化させたものを剥離した塗膜を分光光度計「MPS−2450」(商品名:島津製作所製)にて測定した可視光領域(波長400nm〜700nm)における光線透過率として定義するものとする。可視光領域の光線透過率とは、可視光光線を透過する割合であって、数値が大きいほど透明度が高いことを意味する。
【0036】
本発明の着色塗料には、着色成分として、透明性着色顔料を含有することができる。透明性着色顔料とは、平均一次粒子径が小さく、塗膜中に分散された場合において透明な塗膜が得られる顔料を意味し、具体的には、平均一次粒子径が200nm以下である顔料を意味する。平均一次粒子径が大きい隠蔽性顔料を使用すると、上記光線透過率が減じてしまって好ましくない。
【0037】
上記透明性着色顔料としては、具体的には、透明性酸化鉄顔料、チタンイエロー等の複合酸化金属顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属キレートアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、インダンスロン系顔料、ジオキサン系顔料、インジゴ系顔料等の中から任意のものを1種もしくはそれ以上を組み合わせて使用することができる。該透明性着色顔料の含有量は、塗膜の仕上がり性の点から、塗料組成物中の樹脂固形分100質量部に対し20質量部以下が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量部、特に好ましくは0.5〜10質量部の範囲内である。
【0038】
本発明の着色塗料は、さらに透明性着色顔料として明度を制御するカーボンブラック顔料を使用することができる。該カーボンブラック顔料としては、インク用、塗料用及びプラスチック着色用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて含有することができるが、塗膜の明度、深み感の点から、一次粒子径が、3〜20nmのものが特に好ましく、より好ましくは5〜15nmのものである。具体的には、Monarch1300(商品名、CABOT社製、一次粒子径:13nm)、Raven5000(商品名、コロンビア社製、一次粒子径:11nm)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0039】
上記カーボンブラック顔料の配合量は、得られる塗膜の深み感の点から着色塗料中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜2.5質量部の範囲内、特に好ましくは0.1〜2質量部の範囲内である。
【0040】
本発明の着色塗料には、模様に観察角度による色変化を付与するために鱗片状光輝性顔料を使用することができる。鱗片状光輝性顔料としては、上記ベース塗料に使用することが出来るものとして例示したものを同様に使用することができる。特に、着色塗料による塗膜の光線透過率を特定の数値範囲に調整する点から、光干渉タイプの鱗片状光輝性顔料を使用することができる。具体的には、マイカ、人工マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、ガラスフレーク等の半透明の基材を金属酸化物で被覆した顔料やコレステリック液晶ポリマーを破砕した顔料を使用することができる。
【0041】
金属酸化物被覆マイカ顔料は、天然マイカ又は人工マイカを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。天然マイカとは、鉱石のマイカ(雲母)を粉砕した鱗片状基材であり、人工マイカとは、SiO、MgO、Al、KSiF、NaSiF等の工業原料を加熱し、約1500℃の高温で熔融し、冷却して結晶化させて合成したものであり、天然のマイカと比較した場合において、不純物が少なく、大きさや厚さが均一なものである。具体的には、フッ素金雲母(KMgAlSi10)、カリウム四ケイ素雲母(KMg25AlSi10)、ナトリウム四ケイ素雲母(NaMg25AlSi10)、Naテニオライト(NaMgLiSi10)、LiNaテニオライト(LiMgLiSi10)等が知られている。被覆される金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
【0042】
金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料は、アルミナフレークを基材とし、基材表面に金属酸化物が被覆した顔料である。アルミナフレークとは、鱗片状(薄片状)酸化アルミニウムを意味し、無色透明なものである。酸化アルミニウム単一成分である必要はなく、他の金属の酸化物を含有するものであってもよい。被覆される金属酸化物としては、酸化チタンや酸化鉄を挙げることができる。被覆する厚さによって、干渉色を発現することができるものである。
【0043】
金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料とは、鱗片状のガラス基材に金属酸化物を被覆したものであって、基材表面が平滑なため、強い光の反射が生じて粒子感を発現する。被覆する金属酸化物としては、特に制限されるものではないが、酸化チタンや酸化鉄が知られている。
【0044】
金属酸化物被覆鱗片状シリカ顔料は、表面が平滑で且つ厚さが均一な基材である鱗片状シリカを、基材とは屈折率が異なる金属酸化物で被覆したものである。
【0045】
コレステリック液晶ポリマーは、例えば、メタクリロイロキシ基またはアクリロイロキシ基を側鎖に有するポリオルガノシロキサン等の三次元架橋性ポリマーと液晶性物質を基材に、分子をそれぞれ平行な層に整えた後、螺旋構造とするために、電場または磁場により少しずつ異なる分子配向となるように層状に積み重ね、重合反応によって配向した分子を固定化し薄膜層を三次元架橋させた後、基材から分離し、続いて所望の粒子サイズに粉砕することにより得られたものを挙げることができる。
【0046】
上記鱗片状光輝性顔料は、分散性や耐水性、耐薬品性、耐候性等を向上させるための表面処理が施されたものであってもよい。
【0047】
上記鱗片状光輝性顔料の大きさは、平均粒径が5〜50μmの範囲内のものを使用することが、模様塗膜の質感の点から好ましく、より好ましくは粒径が7〜35μmの範囲内のものである。厚さは0.05〜7.0μmの範囲内のものを使用することが好ましい。ここでいう粒径及び厚さは、マイクロトラック粒度分布測定装置 MT3300(商品名、日機装社製)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を意味する。
【0048】
平均粒径が、前記上限値を越えると、粒子感が過剰になって意匠的に好ましくない場合があり、下限値未満では、光輝性顔料による干渉色の発現が不十分になる場合がある。
【0049】
上記鱗片状光輝性顔料の配合量は、得られる塗膜の仕上がり外観の点から着色塗料中のビヒクル固形分100質量部に対して、0.5〜50質量部の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは1〜30質量部の範囲内、特に好ましくは3〜20質量部の範囲内である。
【0050】
本発明の着色塗料には、微粒子酸化チタン顔料を使用することができる。微粒子酸化チタン顔料とは、平均粒子径0.01〜0.1μmの酸化チタン顔料であり、通常、表面にアルミナ及び/又はジルコニアを被膜せしめたものを使用する。特定の波長の光を散乱することによって二色性を発現する効果を奏するものである。平均粒子径が上記範囲外のものを使用すると二色性が発現しない可能性があって好ましくない。
【0051】
本発明の着色塗料において微粒子酸化チタン顔料を使用する場合その配合量は、着色塗料中のビヒクル固形分100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内とすることが好ましく、より好ましくは0.2〜5質量部の範囲内である。
【0052】
着色塗料には、上記着色顔料や鱗片状光輝性顔料のほかに、ビヒクルとして、液状の樹脂成分を含有することができる。樹脂成分としては、具体的には、前述のベース塗料に含有する樹脂成分として挙げたものを同様に使用することができる。
【0053】
さらに、着色塗料には、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤、体質顔料、艶調整剤などを適宜配合することができる。
【0054】
上記着色塗料は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。第2ベース塗料は通常、塗装に際して、固形分含有率を、塗料組成物に基づいて、10〜50質量%、好ましくは15〜40質量%に、また、20℃における粘度を10〜40秒/フォ−ドカップ#4に調整しておくことが好ましい。
【0055】
本発明方法における複数の着色塗料のうち、少なくとも1種の着色塗料は、塗装して得られた塗膜のL*C*h表色系における彩度C*が20〜60の範囲内となるように、上記着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料の種類や量を決定することが、得られた複層塗膜の模様発現や深み感の点から好ましい。
【0056】
ここでいうL*C*h表色系とは、1976年に国際照明委員会で規定され、JIS Z 8729にも採用されているL*a*b*表色系をベースに考案された表色系であって、C*は彩度を表わし、色度図において中心からの幾何学距離を数値化したものであり、数値が大きいほど彩度が高いことを意味するものである。
【0057】
本明細書において、着色塗料の彩度C*とは、具体的には、予め黒色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に硬化塗膜として20μmの膜厚となるように着色塗料をエアスプレー塗装し、硬化乾燥せしめて得られた塗膜に、45°の角度から照射した光を、正反射光に対して45°で受光した分光反射率から計算された数値として定義するものとする。
【0058】
本発明において、複数の着色塗料として2種類の着色塗料を用いる場合、その両方の彩度C*を20〜60の範囲内とすることができるが、いずれか一方の彩度C*は前記範囲外であってもよい。
【0059】
本発明において、複層塗膜の模様発現の点から、2種類の着色塗料による塗膜のL*a*b*表色系による色差ΔE*を10〜40の範囲内となるように各々の着色塗料の着色顔料及び/又は鱗片状光輝性顔料の種類や量を決定することが好ましい。
【0060】
本発明において、基材としてベース塗料による塗膜を使用する場合においては、ベース塗料による塗膜が未硬化の状態で、着色塗料を塗装することができる。その場合、ベース塗料による塗膜上に塗装された着色塗料は、乾燥硬化の過程で混層し滲むことにより、意匠が発現する。着色塗料を塗装後の塗着塗料の固形分が低すぎると過度の混層が生じて模様が滲んでしまい意匠性が低下するので好ましくない。一方、着色塗料の塗着塗料の固形分が高すぎると混層せず模様が滲まず意匠性が低下する。そこで、着色塗料を塗装30秒後における塗着塗料の固形分は、模様形成の点から40〜70質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは50〜65質量%の範囲内である。
【0061】
本発明における塗着塗料の固形分含有量は、具体的には、予め質量を測定したアルミホイルを一定面積例えば、8cm×15cm面積を露出しその周囲を適当な治具(中をくりぬき周辺部のみ残した板状磁石が便利である。)で覆い、治具で覆われたアルミホイルに塗装し、30秒後に治具をはずしてアルミホイルを回収し、ただちに畳み込むことによりそれ以後の溶媒の蒸発を起こらないようにして速やかに質量を測定し、その後アルミホイルを開いて塗膜の焼き付け条件と同じ条件で乾燥し質量を測定し、これらの質量及び予め測定したアルミホイル自体の質量から計算することにより得られる数値を意味する。
【0062】
塗着塗料の固形分は、該塗料中の溶剤組成によって調整することができる。具体的には、沸点の低い溶剤と沸点の高い溶剤の配合量を調整することにより、目標とする塗着塗料の固形分となるように調整することができる。
【0063】
本発明方法においては、着色塗料は、多ノズルエア霧化式スプレーガンを使用して塗装することができる。多ノズルエア霧化式スプレーガンとは、塗装機に塗装ガンヘッドを1個有し、該塗装ガンヘッドは近接する塗料吐出ノズルを2個以上有する塗装機である。多ノズルエア霧化式スプレーガンの各塗料吐出ノズルから互いに異なる色の塗料を吐出させて異なる塗色の塗料が混在する塗色を作製することができる。多ノズルエア霧化式スプレーガンとしては、例えば、特開平9−299833号公報に記載のスプレーガンを挙げることができる。多ノズルスプレーガンのノズルの位置は、各ノズルから吐出され異なった色の塗料が混合し、被塗物上に均一な模様塗料層を形成できる位置であればよく、例えば2個以上のノズルが独立して配置されたものでもよく、また、各ノズルが同心円状に一体に配置され、内側のノズル及び外側のドーナツ状のノズルが形成されたものであってもよい。
【0064】
本発明方法における着色塗料の具体的な塗装条件としては、複数の塗料吐出ノズルそれぞれについて、パターンエア量が40〜300NL/min.、霧化エア量が40〜300NL/min.の範囲内において適宜調整して塗装することができる。それぞれのノズルの霧化エア量及びパターンエア量は、同一であっても異なっていても良い。霧化エア量及びパターンエア量はスプレーガンと被塗物との距離に合わせて適宜調整することができる。また、スプレーガンの移動速度は、目標とする塗色に合わせて適宜調整して塗装することができる。
【0065】
本発明においては、着色塗料を塗装後、加熱し、前記ベース塗料による塗膜と着色塗料による塗膜を同時に硬化せしめた後にさらにクリヤー塗料を塗装することができる。または、着色塗料を塗装後、その未硬化の塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装して、トップクリヤー塗膜を形成させることができる。着色塗料の塗膜それ自体は常温乾燥又は約60〜約150℃の温度で硬化させることができる。
【0066】
または、基材として、ベース塗料による塗膜を使用しない場合においては、着色塗料による未硬化の塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装してもよい。あるいは、着色塗料による塗膜を乾燥硬化せしめた後にクリヤー塗膜を形成せしめることができる。
【0067】
本発明方法において、クリヤー塗料は、樹脂成分及び溶剤を主成分とし、さらに必要に応じて着色顔料及び/又は染料や艶調整剤その他の塗料用添加剤などを配合してなる無色もしくは有色の透明塗膜を形成する液状塗料であって、着色塗料によって形成された塗膜表面を覆い、平滑にしたり耐候性や耐水性、耐薬品性を付与するものである。また、艶調整剤が配合されたクリヤー塗料を塗装した場合においては、光沢を抑えることによる柔らかな質感の塗膜が得られるものである。
【0068】
クリヤー塗料としては、従来公知のクリヤー塗料を制限なく使用できる。例えば、基体樹脂及び架橋剤を含有する液状の塗料組成物が適用できる。基体樹脂の例としては、水酸基、カルボキシル基、シラノール基、エポキシ基などの架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂などが挙げられる。架橋剤としては、前記基体樹脂の官能基と反応しうる反応性基を有するメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等が挙げられる。また、必要に応じて、水や有機溶剤等の溶媒、硬化触媒、消泡剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0069】
本発明方法におけるトップクリヤー塗料には、透明性を損なわない範囲内において、着色顔料、染料や艶調整剤を適時配合することができる。
【0070】
上記クリヤー塗料に含有させることができる着色顔料としては、インク用、塗料用として従来公知の顔料を1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。具体的には、前述のベース塗料に含有する着色顔料として挙げたものを同様に使用することができる。
【0071】
上記着色顔料を配合させる場合、その配合量は、得られる塗膜の透明性や仕上がり外観の点からクリヤー塗料中のビヒクル固形分100質量部に対して、通常、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部が適当である。
【0072】
上記クリヤー塗料に含有させることができる染料としては、インク用、塗料用、プラスチック用として従来公知の染料を1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。該染料の具体例としては、アゾ系染料、アンスラキノン系染料、銅フタロシアニン系染料、金属錯塩系染料等を挙げることができる。
【0073】
上記染料を含有させる場合、その配合量は、得られる塗膜の色相や仕上がり外観の点からクリヤー塗料中のビヒクル固形分100質量部に対して、通常、0.001〜5質量部が好ましく、特に好ましくは0.01〜3質量部である。
【0074】
上記クリヤー塗料に含有させることができる艶調整剤としては、インク用、塗料用として従来公知の艶調整剤を1種あるいは2種以上組み合わせて使用することが出来る。具体的には、粉末状あるいは粒子状のシリカ、セラミック等の無機物及びアクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂微粒子を使用することが出来るが特に限定されるものではない。
【0075】
上記クリヤー塗料に艶調整剤を含有させる場合、その配合量は、得られる塗膜の光沢値の範囲や仕上がりの点から、トップクリヤー塗料中のビヒクル固形分100質量部に対して、通常、1〜100質量部が好ましく、特に好ましくは3〜60質量部である。
【0076】
また、クリヤー塗料は、静電塗装、エアスプレー、エアレススプレーなどの方法で塗装することができ、その膜厚は、塗膜の平滑性の点から硬化塗膜に基づいて10〜50μmの範囲内とするのが好ましい。
【0077】
本発明において、着色塗料を塗装して得られた塗膜が未硬化の状態でクリヤー塗料を塗装した場合には、トップクリヤー塗料を塗装後、前記ベース塗料を塗装した塗膜を含めた3層の塗膜を同時に乾燥硬化させることができる。また、クリヤー塗料の塗膜それ自体は約60〜約150℃の温度で架橋硬化させることができる。
【実施例】
【0078】
次に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
実施例及び比較例
(1)ベース塗料1〜3の調製
ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
(製造例1)水酸基含有アクリル樹脂の製造
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート50部を仕込み、撹拌混合し、135℃に昇温した。次いで下記のモノマー/重合開始剤の混合物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート10部、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)0.6部からなる混合物を135℃に保持した反応容器内に1時間30分かけて滴下し、さらに2時間熟成した。次にエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを減圧下で留去し、樹脂固形分65質量%の水酸基含有アクリル樹脂溶液を得た。得られた水酸基含有樹脂は、水酸基価54mgKOH/g、数平均分子量20,000であった。ここで数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものを意味する。
モノマー/重合開始剤の混合物:
メチルメタクリレ−ト38部、エチルアクリレ−ト17部、n−ブチルアクリレ−ト17部、ヒドロキシエチルメタクリレ−ト7部、ラウリルメタクリレ−ト20部及びアクリル酸1部及び2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)2部からなる混合物。
【0079】
(製造例2〜4)ベース塗料1〜3の調製
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液を固形分として75部、ユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)を固形分として25部からなるビヒクル形成成分である樹脂固形分100質量部に対して、光輝性顔料及び/又は着色顔料を表1に示す比率で配合して攪拌混合し、さらに有機溶剤を加えて希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製し、ベース塗料1〜3を得た。
【0080】
【表1】

【0081】
(2)基材の調整
1)基材1
JIS H 4000に規定されているアルミ合金板(合金番号1080、大きさ400×300×0.8mm)表面を溶剤脱脂して、基材1とした。
2)基材2〜4
脱脂及びりん酸亜鉛処理した鋼板(JIS G 3141、大きさ400×300×0.8mm)にカチオン電着塗料「エレクロンGT−10HT」(商品名:関西ペイント株式会社製、エポキシ樹脂ポリアミン系カチオン樹脂に硬化剤としてブロックポリイソシアネート化合物を使用したもの)を硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で20分加熱して架橋硬化させて電着塗膜を得た。
【0082】
得られた電着塗面に、中塗塗料「ルーガベーク中塗りグレー」(商品名:関西ペイント株式会社製、ポリエステル樹脂・メラミン樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚30μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、中塗り塗膜を形成した塗板を得た。
【0083】
得られた塗板にベース塗料1〜3を各々エアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚20μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、ベース塗料1〜3による塗膜を形成せしめ、基材2〜4とした。
【0084】
基材1〜4について、MA−68II(商品名、多角度分光光度計、x−rite社製)を使用して測定した分光反射率から、45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15及び15度で受光したときのL*15と、45度で受光したときのL*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値を求め、結果を表1に示した。
【0085】
(3)着色塗料の調整
製造例1で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液を固形分として75部、ユーバン28−60(商品名、ブチルエーテル化メラミン樹脂、三井化学社製)を固形分として25部からなるビヒクル形成成分である樹脂固形分100質量部に対して、光輝性顔料及び/又は着色顔料を表2に示す比率で配合して攪拌混合し、さらに有機溶剤を加えて希釈して、固形分約25%の有機溶剤型塗料を調製し、着色塗料1〜6を得た。
【0086】
さらに、上記12種類の塗料それぞれの塗装30秒後における塗着塗料の固形分含有量(塗着NV)を以下の手順にて測定し、結果を表2に示した。
予め質量を測定したアルミホイルを横8cm×縦15cmの面積を露出するように、中をくりぬき周辺部のみ残した板状磁石で覆い、この上に塗装し、30秒後に磁石をはずしてアルミホイルを回収し、ただちに畳み込むことによりそれ以後の溶媒の蒸発を起こらないようにして速やかに質量を測定し、その後アルミホイルを開いて140℃で30分間加熱乾燥し質量を測定し、これらの質量及び予め測定したアルミホイル自体の質量から計算して、塗着塗料の固形分含有量(質量%)を得た。
【0087】
【表2】

【0088】
黒色(N−2)の塗膜を形成した塗板上に硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装し、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、硬化させた塗装板を下記の方法で測定して各塗料の正反射光に対して45°の角度で受光したL*、a*、b*、C*、色相h及び次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)にてフリップフロップ値(FF)を測定し、結果を表2に示した。
着色塗料を平滑なPTFE板に硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、乾燥硬化させたものを剥離した塗膜を分光光度計「MPS−2450」(商品名:島津製作所製)を使用して、可視光領域(波長400nm〜700nm)における光線透過率を測定し、結果を表2に示した。
【0089】
(トップクリヤー塗料)
クリヤー塗料「ルーガベーククリヤー」(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)を塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約30%の有機溶剤型塗料を調整し、トップクリヤー塗料を作成した。
(艶調整トップクリヤー塗料)
クリヤー塗料「ルーガベーククリヤー」(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)に艶調整剤として、ミズカシルP−526(商品名、合成シリカ系艶調整剤、水澤化学社製)をビヒクル固形分100質量部に対して、固形分として15質量部添加し、攪拌混合後、塗装に適正な粘度に希釈して、固形分約30%の有機溶剤型塗料を調整し、艶調整トップクリヤー塗料を作成した。
(試験板の作成)
表3に示す構成で複層塗膜を形成して試験板とした。
【0090】
【表3】

【0091】
(実施例1〜5及び比較例1,2)
表3に示した構成で、基材に、着色塗料2種類をS型塗装機(商品名、エヌピーシー社製、4系統の塗装通路を具備する多ノズルスプレーガン)を用いて、ブース温度20℃、湿度60%の条件で塗装した。塗装後、室温にて10分間放置し、ついで、これらの未硬化塗面にトップクリヤー塗料(商品名、関西ペイント製、アクリル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型)をエアスプレーガンを用いて、ブ−ス温度20℃、湿度60%の条件で硬化塗膜として、35μmとなるように全面に塗装した。塗装後、室温にて10分間放置した後に、熱風循環式乾燥炉内にて、140℃で30分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
実施例6及び7については、実施例2と同様に着色塗料をせしめた後に、室温約20℃の実験室に10分間放置後、表3に示したトップクリヤー塗料を、エアスプレーにて硬化塗膜に基づいて膜厚35μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して架橋硬化させて、複層塗膜を同時に乾燥硬化せしめて試験板とした。
【0092】
(4)評価試験
実施例1〜7及び比較例1,2で得られた試験板について、晴れた日の午後に、直射日光が当たらない屋外において、自動車外板向け塗料の塗色設計に3年以上従事している熟練した技術者及びデザイナーが、観察角度を変えて塗板を観察して、塗膜の明度、彩度、模様の発現性を評価し、結果を表3に示した。
4:ハイライトで明度が高く、全体に彩度が高く、2種類の着色塗料が適度に滲んでいる。
3:ハイライトで明度が高いが、全体の彩度は中程度であり、2種類の着色塗料が適度に滲んでいる。
2:ハイライトの明度、全体の彩度が中程度で、2種類の着色塗料が適度に滲んでいる。
1:ハイライトの明度、全体の彩度が低く、2種類の着色塗料の発色が不十分である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の塗膜形成方法は、各種工業製品、特に自動車車体の内装部品や外板に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
45度から照射した光を正反射光に対して15度で受光したときのL*a*b*表色系における明度L*15が70〜300の範囲内及び/又は、15度で受光したときのL*15と、45度で受光したときのL*45とから次式FF=2×(L*15−L*45)/(L*15+L*45)によって計算されるFF値が0.5〜3.0の範囲内である基材上に、色及び/又は質感が異なる2種類以上の着色塗料を同時に塗装して、異なる色の塗膜が混在する模様が形成される複層塗膜形成方法であって、該着色塗料は、硬化塗膜として20μmの膜厚となるように塗装して得られる塗膜の波長400nm〜700nmの光線透過率が30%以上であることを特徴とする複層塗膜形成方法。
【請求項2】
着色塗料として用いる2種類以上の塗料を、複数の塗料吐出ノズルを具備する多ノズルエア霧化式スプレーガンを用いて塗装せしめる請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項3】
着色塗料として用いる塗料が、2種類である請求項1又は2に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項4】
着色塗料の少なくとも1種類の塗料が、塗装して得られた塗膜のL*C*h表色系における彩度C*が20〜60の範囲内である請求項3に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項5】
2種類の着色塗料を各々塗装して得られた塗膜の、L*a*b*表色系における色差ΔE*が10〜40の範囲内である請求項3又は4に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項6】
2種類の着色塗料の、塗装30秒後における塗着塗料の固形分含有量が、40〜70質量%の範囲内である請求項2〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項7】
着色塗料を塗装するときのパターンエア量及び霧化エア量が、各々40〜300NL/min.の範囲内である請求項1に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項8】
基材が被塗物にベース塗料を塗装せしめることによって得られたものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項9】
着色塗料による塗膜上にさらにクリヤー塗料を塗装してクリヤー塗膜を形成せしめる請求項1〜8のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法。
【請求項10】
クリヤー塗料が、艶調整剤を塗料中の樹脂組成物100質量部あたり1〜100質量部含む請求項9に記載の複層塗膜形成方法。

【公開番号】特開2013−52348(P2013−52348A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192415(P2011−192415)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】