説明

複数き裂の進展解析方法および装置

【課題】構造物のき裂解析において、複数き裂の発生と合体の繰返しによる進展を対象とする解析が可能で、短時間で進展解析結果を提供することのできる複数き裂の進展解析方法および装置を提供する。
【解決手段】複数のき裂状欠陥を有する構造物を構成する材料のき裂進展特性データが入力されるデータ入力部と、き裂進展を計算する複数き裂進展計算部とを備えた複数き裂進展解析装置であって、前記複数き裂進展計算部が、前記データ入力部に入力された応力と部材寸法とき裂寸法とから個々のき裂の応力拡大係数を計算する応力拡大係数計算部と、計算された前記応力拡大係数と前記き裂進展特性データからき裂進展量を計算するき裂進展量計算部と、き裂間の距離が予め設定された基準値以下となるものを総ての隣り合うき裂同士について確認する合体判定部と、前記合体判定部によりき裂同士のき裂同士の距離が基準値以下と判定した場合にこのき裂同士を一つのき裂に置き換えるき裂置換部とを備えたことを特徴とする複数き裂の進展解析装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物のき裂の進展を解析するための、複数き裂の進展解析方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
き裂の評価は、構造物の強度の判定において重要な指標であるため、これまでにも種種の解析方法や解析装置によりき裂の進展が解析されている。こうした従来の解析方法および装置において3個以上の複数き裂の進展解析を実施したものはなく、一般に、き裂が2個の場合についてのみを対象として解析している。
【0003】
2つのき裂を対象とした複数き裂の進展解析方法および装置の場合、まずそれぞれのき裂の進展解析評価を単独で実施して時間とき裂寸法の関係を横並びに並べ、どの時点で最初に隣り合うき裂同士が合体したかを手作業で探し、いずれかの隣り合うき裂同士が合体したと判定された場合には、その時点で一つの大きいき裂に置き換えて進展解析を継続する。
【0004】
こうしたき裂の解析方法の従来の例として、以下のようなものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−207489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来の複数き裂の進展解析手段は、個々のき裂の進展解析を順次個別に実施し、それらの結果を横並びにしてどの時点で隣り合うき裂同士の間隔が合体判定の基準値を下回ったかを判定するものである。そのため、合体と判定された時点以降の計算が無駄となってしまう。従って、これらの無駄な時間が積み重なるため、構造物全体の解析には、多大な時間を要するという問題があった。
【0006】
また、従来のき裂の解析方法において、構造物における複数き裂の発生と合体との繰返しによる進展について判定し、合体後のき裂についての取扱方法に言及したものはなかった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、構造物のき裂解析において、複数き裂の発生と合体の繰返しによる進展を対象とする解析が可能で、短時間で進展解析結果を提供することのできる複数き裂の進展解析方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の複数き裂の進展解析方法は、上述した課題を解決するために、構造物に複数のき裂状欠陥が検出された場合に、前記データ入力部に入力された前記構造物の部材寸法と応力とき裂寸法とから個々のき裂について応力拡大係数計算部にて応力拡大係数を計算し、前記データ入力部に入力された前記構造物を構成する材料のき裂進展特性データと前記応力拡大係数に基づいて、き裂進展量計算部にて微小時間増分後のそれぞれのき裂寸法を計算し、合体判定部にて隣り合うき裂同士の間隔と予め定めた基準値とを比較し、隣り合うき裂の間隔が前記基準値以下である場合に該当する二つのき裂を合体したものと見なしてき裂置換部にて一つのき裂に置き換え、次の微小時間後におけるき裂の寸法を計算することを特徴とする方法である。
【0009】
また、本発明の複数き裂の進展解析装置は、上述した課題を解決するために、複数のき裂状欠陥を有する構造物を構成する材料のき裂進展特性データが入力されるデータ入力部と、き裂進展を計算する複数き裂進展計算部とを備えた複数き裂進展解析装置であって、前記複数き裂進展計算部が、前記データ入力部に入力された応力と部材寸法とき裂寸法とから個々のき裂の応力拡大係数を計算する応力拡大係数計算部と、計算された前記応力拡大係数と前記き裂進展特性データからき裂進展量を計算するき裂進展量計算部と、き裂間の距離が予め設定された基準値以下となるものを総ての隣り合うき裂同士について確認する合体判定部と、前記合体判定部によりき裂同士のき裂同士の距離が基準値以下と判定した場合にこのき裂同士を一つのき裂に置き換えるき裂置換部とを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複数き裂の進展解析方法および装置によれば、構造物における複数き裂の発生と合体との繰返しによる進展を短時間で解析するので、構造物の強度の計算結果を迅速に得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0012】
図1を用いて実施例1の複数き裂の進展解析装置について説明する。実施例1の複数き裂の進展解析装置10は、データ入力部1と複数き裂進展計算部2とからなり、データ入力部1は、例えば解析の判断で使用される寸法等の部材データ、位置、寸法等のき裂データ、応力データ、き裂進展速度等の材料データ等が入力される。そして、複数き裂進展計算部2は、応力拡大係数計算部5とき裂進展量計算部6と合体判定部7とき裂置換部8とから構成される。
【0013】
図2に本実施例にて解析するき裂のモデル図を示す。図2は、構造物20の表面のき裂21、き裂22、き裂23、き裂24、き裂25を図示しており、図2縦方向をX軸としてき裂長さの基準としている。
【0014】
ここで、添え字aは、き裂最深点におけるき裂の深さを表す。また、添え字cは、表面点を表しており、記号2cとは、構造物20の表面上でのき裂のX軸方向の長さを表す。添え字iは、き裂の番号を示す。なお、き裂進展機構が疲労の場合には、応力拡大係数KaおよびKcをそれぞれ応力拡大係数範囲ΔKaおよびΔKcに読み替え、微小時間Δtを微小繰返し数ΔNに読み替えて解析する。
【0015】
データ入力部1には、構造材を構成する部材の寸法、応力、半だ円表面き裂の位置xと初期寸法(き裂深さa,き裂長さ2c)、および材料のき裂進展特性データが入力される。応力拡大係数計算部5においては、応力と部材寸法およびき裂寸法から個々のき裂の応力拡大係数KaおよびKcが計算される。一方、き裂進展量計算部6においては、応力拡大係数計算部5で計算された応力拡大係数とき裂進展特性データから微小時間Δtにおけるき裂進展量ΔaおよびΔ2cが総てのき裂について同時に計算され、これらが元のき裂の寸法に足し合わされる。合体判定部7においては、き裂間の距離が基準値以下となるものがないかどうかを総ての隣り合うき裂同士について確認する。き裂置換部8においては、き裂同士の合体が検出された場合にそれらのき裂を一つのき裂に置き換える。ここで微小時間とは、本発明の複数き裂の進展解析方法および装置において、解析の時間幅として任意に設定される時間幅である。
【0016】
図3に、本実施例の複数き裂の進展解析方法における合体判定の仕組みについて図示する。
【0017】
合体判定部7において、図3に示す方法により、総ての隣接する二つのき裂同士(き裂31およびき裂32)の間隔を基準値sと比較する。時刻tにおいて基準値s以下であった(図3(A))き裂同士の間隔dが、時刻t+Δtにおいて基準値sを下回ったと判定された場合(図3(B))、き裂置換部8において、これら二つのき裂のうち深さが深い方のき裂32のものと深さが等しく、これら二つのき裂31とき裂32の両端を結んだものと長さが等しい一つの大きいき裂33に置き換える(図3(C))。
【0018】
なお、図3(B)において点線は、時刻tでのき裂を表現したものであり、また、図3(C)において点線は、時刻t+Δtでのき裂を表現したものである。
【0019】
このように構成された本実施例においては、複数のき裂の微小時間ごとの進展量を同時に計算し、同時刻における隣接するき裂間の間隔をステップ毎に基準値と比較しながら進展解析を実施する。すなわち合体判定を常に監視しながらき裂進展解析を行うアルゴリズムとなっている。
【0020】
従って、本実施例の複数き裂の進展解析装置10によれば、き裂同士の合体判定を常に監視しながら一度に複数のき裂進展解析を行うので、短時間で構造物全体の複数き裂の進展解析を実施することが可能である。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例2について、図4および図5を参照して説明する。
【0022】
時刻tにおいては、図4(A)に示すように、隣接する二つのき裂41とき裂42との間隔dは、合体判定の基準値sより大きいため、それぞれ独立したき裂として取り扱われているが、微小時間増分Δt後に図4(B)のように両き裂の間隔が基準値sをsovだけ下回ったとする。なお、図4(B)における点線は、時刻tにおける両き裂の寸法を示している。この場合、下記式(1)
【数1】

【0023】
により求められるΔt´だけ時刻を遡ることにより、二つのき裂の間隔がちょうど基準値sとなった(図4(C))ときの時刻を求めることができる。この時刻を合体時刻とする。ここで式(1)dc/dtおよびdc/dti+1とは、それぞれき裂41(き裂番号i)とき裂42(き裂番号i+1)の表面上でのそれぞれの進展速度である。
【0024】
このように、合体時刻からの超過分の時間幅Δt´を定義することにより、合体時刻t+Δt−Δt´におけるき裂41およびき裂42の寸法は、時刻t+Δtにおけるそれぞれのき裂寸法からき裂長さについてdc/dt×Δt´、き裂深さについてda/dt×Δt´だけ差し引くことにより決定することができる。合体判定の対象となった二つのき裂41およびき裂42は、合体時刻において一つのき裂に置き換えられる。なお、合体判定の基準値sが0である場合には、時刻t+Δt−Δt´において隣接する二つのき裂41およびき裂42は、ちょうど接触することになる。
【0025】
図5に、実施例2の複数き裂の進展解析方法のアルゴリズムを示す。この図5に示すように、本実施例の複数き裂の進展解析方法においては、ステップ51にて、時刻tにおけるき裂寸法が定義され、ステップ52にて微小時間後の時刻t+Δtにおけるき裂寸法を計算する。次にステップ53にて隣接するき裂同士の間隔と基準値とを比較し、ステップ54にてき裂同士の間隔が基準値以下と判定された場合、ステップ55にて超過分の時間幅Δt´を計算する。次にステップ56にて合体時刻t+Δt−Δt´におけるき裂寸法を計算する。次に、ステップ57にて終了条件の判定を行い、終了条件に達していない場合、き裂の寸法を更新して次の微小時間増分に移る。一方、ステップ54にてき裂同士の間隔が基準値より大きいと判定された場合には、直接ステップ57にて終了条件の判定を行う。
【0026】
なお、ステップ58にてき裂寸法の更新をする場合に、ステップ54にてき裂の間隔が基準値以下である場合には、ステップ51のaをa´に、2cを2c´に更新する。一方、き裂の間隔が基準値よりも大きいと判定された場合、ステップ51のaをa″に、2cを2c″に更新する。
【実施例3】
【0027】
次に、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例3について、図4および図6を参照して説明する。
【0028】
実施例3の複数き裂の進展解析方法においては、実施例2と同様に、時刻t(図4(A))において、隣接する二つのき裂41とき裂42の間隔dが、合体判定の基準値sより大きいため、それぞれ独立したき裂として取り扱われているが、微小時間増分Δt後(図4(B))に両き裂の間隔dが基準値sをsovだけ下回ったとする。式(1)によりΔt´を定義する。
【0029】
次に、修正微小時間増分Δt″をΔt″=Δt−Δt´と定義する。この修正微小時間増分Δt″を微小時間増分前の時刻tに加えることにより、二つのき裂41およびき裂42の間隔dがちょうど基準値sとなったときの時刻を求めることができる。
【0030】
図6に、実施例3の複数き裂の進展解析方法のアルゴリズムを示す。このように修正微小時間増分Δt″を定義することにより、図6に示すように、合体時刻t+Δt″におけるき裂のそれぞれの寸法は、ステップ61において、時刻tおけるき裂寸法に、き裂長さについてdc/dt×Δt″、き裂深さについてda/dt×Δt″だけ加えることにより決定することができる。図6において、図5と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
合体判定の対象となった二つのき裂41およびき裂42は、合体判定時刻において一つのき裂に置き換えられる。また、本実施例において合体判定の基準値sが0である場合には、時刻t+Δt″において隣接する二つのき裂41およびき裂42は、ちょうど接触することになる。
【実施例4】
【0032】
次に、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例4について、図7を参照して説明する。
【0033】
本実施例の構成によれば、材料のき裂進展特性データは、データ入力部と別のデータベース71として記憶媒体に記録されている。このような構成とした本実施例の複数き裂の進展解析装置70によれば、データ入力部1にて材料名を入力するか、あるいは材料名リストから材料名を選択することにより、解析の度に材料のき裂進展特性を調査して数値入力することなく、容易に複数き裂の進展を解析することが可能となる。
【実施例5】
【0034】
次に、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例5について、図8を参照して説明する。
【0035】
本実施例の複数き裂の進展解析装置80は、入力データおよび計算結果を記録媒体に保存するデータ保存部81を有することを特徴とする。このような構成とすることにより、後日計算結果を参照する際に、再度同じデータを入力して計算を行わなくとも、随時計算結果を引き出すことが可能となる。なお、計算を中断した場合などは、入力データのみを保存することも可能である。
【実施例6】
【0036】
次に、本発明に係る複数き裂の進展解析方法および装置の実施例6について、図9を参照して説明する。
【0037】
構造物の解析において、同一の部材形状、応力分布、およびき裂形状について解析する場合にも、複数の適用可能な応力拡大係数計算式が存在する場合がある。例えば、単純な引張応力と曲げ応力を受ける平板中の半だ円表面き裂に対しては、Newman & Rajuの式、Shiratoriの式、API規格の式などがある。そこで本実施例の複数き裂の進展解析方法90は、これらの適用可能な応力拡大係数計算式を記憶媒体であるデータベース71に記憶しておき、データ入力部1にて応力拡大係数の計算式の識別名のみを入力するかあるいはリストから選択することにより、評価者が最適な計算式を選択することが可能な構成としたものである。このような構成の複数き裂の進展解析装置によれば、解析制度や目的に応じて応力拡大係数計算式を選択することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る複数き裂の進展解析装置の構成図。
【図2】複数き裂のモデル例を図示する模式図。
【図3】複数き裂の合体判定と置換の実施を示す模式図。
【図4】複数き裂の合体時刻の判定を示す模式図。
【図5】実施例2の複数き裂の進展解析方法のアルゴリズムを示す図。
【図6】実施例3の複数き裂の進展解析方法のアルゴリズムを示す図。
【図7】実施例4の複数き裂の進展解析装置の構成図。
【図8】実施例5の複数き裂の進展解析装置の構成図。
【図9】実施例6の複数き裂の進展解析手段の構成図。
【符号の説明】
【0039】
1 データ入力部
2 複数き裂進展計算部
5 応力拡大係数計算部
6 き裂進展量計算部
7 合体判定部
8 き裂置換部
10 複数き裂の進展解析装置
21、22、23、24、25 き裂
31、32、33 き裂
41、42 き裂
51、52、53、54、55、56、57、58 ステップ
61 ステップ
70 複数き裂の進展解析装置
71 データベース
80 複数き裂の進展解析装置
81 データ保存部
90 複数き裂の進展解析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に複数のき裂状欠陥が検出された場合に、前記データ入力部に入力された前記構造物の部材寸法と応力とき裂寸法とから個々のき裂について応力拡大係数計算部にて応力拡大係数を計算し、前記データ入力部に入力された前記構造物を構成する材料のき裂進展特性データと前記応力拡大係数に基づいて、き裂進展量計算部にて微小時間増分後のそれぞれのき裂寸法を計算し、合体判定部にて隣り合うき裂同士の間隔と予め定めた基準値とを比較し、隣り合うき裂の間隔が前記基準値以下である場合に該当する二つのき裂を合体したものと見なしてき裂置換部にて一つのき裂に置き換え、次の微小時間後におけるき裂の寸法を計算することを特徴とする複数き裂の進展解析方法。
【請求項2】
前記き裂同士の間隔が前記基準値よりも大きく、微小時間増分の後に前記基準値を下回った場合に、前記基準値より下回った量を前記き裂同士のそれぞれのき裂の進展速度の和で除して超過分の時間幅を求め、この超過分の時間幅を前記微小時間増分の後の時刻より差し引いて前記き裂同士の間隔がちょうど前記基準値に達した時刻を求めて合体時刻とするとともに、前記超過分の時間幅に前記き裂のそれぞれの進展速度を掛け合わせたき裂進展増分の超過量を前記微小時間増分後の前記き裂の寸法から差し引くことにより、前記合体時刻での前記き裂のそれぞれの寸法をもとめ、さらに前記き裂同士を一つのき裂に置き換えることを特徴とする請求項1記載の複数き裂の進展解析方法。
【請求項3】
前記き裂同士の間隔が前記基準値よりも大きく、微小時間増分の後に前記基準値を下回った場合に、前記基準値よりも下回った量を前記き裂同士のそれぞれのき裂の進展速度の和で除して超過分の時間幅を求め、この超過分の時間幅を前記微小時間増分より差し引いて修正微小時間増分をもとめ、この修正微小時間増分を前記微小時間増分の前の時刻に加えることにより前記き裂同士の間隔がちょうど前記基準値に達した時刻を求めて合体時刻とするとともに、前記微小時間増分の前の時刻での前記き裂のそれぞれの寸法に前記修正微小時間増分に前記き裂のそれぞれの進展速度を掛け合わせたき裂進展増分を加えて前記合体時刻での前記き裂のそれぞれの寸法を求め、さらに前記き裂同士を一つのき裂に置き換えることを特徴とする請求項1記載の複数き裂の進展解析方法。
【請求項4】
前記構造物の裕度を評価するための模擬の複数き裂モデルを想定し、前記構造物を構成する材料のき裂進展特性データに基づいて、微小時間増分後における前記き裂モデルのそれぞれの寸法を同時に計算により求め、前記き裂モデル同士の間隔が前記基準値以下である場合に前記き裂モデル同士が合体したものと見なして一つのき裂モデルに置き換える一方、前記き裂モデル同士の間隔が前記基準値に達しない場合はそのままとして、次の微小時間後におけるき裂モデルの寸法を同時に計算することを特徴とする請求項1記載の複数き裂の進展解析方法。
【請求項5】
前記構造物において実際に検出された欠陥よりも大きい複数き裂モデルを想定し、前記構造物を構成する材料のき裂進展特性データに基づいて、微小時間増分後における前記き裂モデルのそれぞれの寸法を同時に計算により求め、前記き裂モデル同士の間隔が前記基準値以下である場合に前記き裂モデル同士が合体したものと見なして一つのき裂モデルに置き換える一方、前記き裂モデル同士の間隔が前記基準値に達しない場合はそのままとして、次の微小時間後におけるき裂モデルの寸法を同時に計算することを特徴とする請求項1記載の複数き裂の進展解析方法。
【請求項6】
前記微小時間増分毎の前記き裂のそれぞれの寸法を順次計算により求め、前記き裂の位置とき裂寸法のデータから総てのき裂の先端の位置と時間との関係を図示し、隣り合う前記き裂同士の間隔が最初に前記基準値を下回った時刻を検索し、その時刻で前記き裂同士が合体したものと見なして一つのき裂に置き換える一方、前記時刻から再度総ての前記き裂の進展解析を実施し、次のき裂の合体検索を繰り返すことを特徴とする請求項1記載の複数き裂の進展解析方法。
【請求項7】
複数のき裂状欠陥を有する構造物を構成する材料のき裂進展特性データが入力されるデータ入力部と、き裂進展を計算する複数き裂進展計算部とを備えた複数き裂進展解析装置であって、前記複数き裂進展計算部が、前記データ入力部に入力された応力と部材寸法とき裂寸法とから個々のき裂の応力拡大係数を計算する応力拡大係数計算部と、計算された前記応力拡大係数と前記き裂進展特性データからき裂進展量を計算するき裂進展量計算部と、き裂間の距離が予め設定された基準値以下となるものを総ての隣り合うき裂同士について確認する合体判定部と、前記合体判定部によりき裂同士のき裂同士の距離が基準値以下と判定した場合にこのき裂同士を一つのき裂に置き換えるき裂置換部とを備えたことを特徴とする複数き裂の進展解析装置。
【請求項8】
前記構造物を構成する材料のき裂進展特性データを予めデータベースとして備え、材料名のみを入力するかまたはリストから選択することによりき裂進展特性データを読み込み可能な構成としたことを特徴とする請求項7記載の複数き裂の進展解析装置。
【請求項9】
前記構造物のき裂解析の計算結果を記録する記憶媒体であるデータ保存部を備え、前記計算結果を出力自在な構成としたことを特徴とする請求項7記載の複数き裂の進展解析装置。
【請求項10】
前記データ保存部に記憶された過去の入力データを読み出して、前記入力データの一部を変更してき裂進展解析を実施することが可能な構成としたことを特徴とする請求項9記載の複数き裂の進展解析装置。
【請求項11】
前記応力拡大係数の計算に複数の応力拡大係数計算式が適用可能な場合に、これら複数の応力拡大係数計算式を前記データベースに備え、前記応力拡大係数計算式の識別名を入力するかまたはリストから選択することにより適合する応力拡大係数計算式を読み込むことを特徴とする請求項8記載の複数き裂の進展解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−64652(P2006−64652A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250410(P2004−250410)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】