説明

複数のリザブワーからの流体の音響出射

【課題】複数の流体包含リザブワー(13、15)のそれぞれからの流体小滴(49)の音響出射のための方法およびデバイス(11)を提供すること。
【解決手段】小滴(49)は、沈着のために基板表面(51)上のサイトに向けて出射される。デバイスは、以下から構成される:流体を含むようにそれぞれ適応される複数のリザブワー(13、15):音響放射を発生するための手段と、リザブワーの流体から流体小滴(49)を出射するために発生された音響放射を集束するための手段とを含むイジェクター(33):およびリザブワー(13、15)のそれぞれに対して音響的に結合された関係においてイジェクター(33)を位置づけするための手段(43)。本発明は、多数のコンテクストにおいて有用であり、特に、ペプチドアレイおよびオリゴヌクレオチドアレイ等の生物分子のアレイの調製において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は概して、流体小滴の生成において集束された音響エネルギーの使用に関する。より詳細には、各複数のリザブワーからの流体小滴の音響出射に関する。本発明は、無機、有機、および生体分子化学の分野における利用性を見出す。本発明の特有の焦点は、基板表面上の複数のコンビナトリアルサイトからその特徴形態(form of feature)で構成されたコンビナトリアルライブラリを含む、高濃度のマイクロアレイのシステマチックな生成に関することである。
【背景技術】
【0002】
(背景)
有用な生物学的、化学的、および/または物理学的特性を有する新規な物質の発見は、しばしば有用な製品および技術の出現に至る。近年の広範囲な研究は、潜在的に有用な化合物を評価するための新しい方法およびシステムの開発および実現に焦点が当てられてきた。生体高分子の領域では、例えば、ヌクレオチド、ペプチド、サッカライドポリマーを含む生体高分子の高密度アレイをスクリーニングすることによって、リガンドおよびレセプタ相互作用を含む特定のモノマー配列の種々のオリゴマーの性質を迅速かつ正確に同定するための潜在的な方法に対して多くの最新の研究が行われてきた。
【0003】
生物学的分子に対して、例えば一次構造以外のタンパク質のコンフォメーションまたは構造を決定する生物学的相互作用および物理的相互作用の複雑さおよび多様性は、この時点で生物学的、物質的、物理的、および/または化学的性質の理論的考察からの予測可能性を不可能にする。バルク液体および固体を含む非生物学的物質に対して、多くの調査および理解の膨大な進歩にもかかわらず、新規な物質の組成、構造、および合成調製の十分正確な新規の予測を可能にする理論的枠組みは、未だに欠如している。
【0004】
その結果、新規の有用な物質の発見は、物質の新しい組成を作製および特徴付ける能力に大幅に依存する。多重元素(multi−elemented)化合物を作製するために使用され得る周期表内の元素の内、実際に無尽蔵の可能な化合物の内の比較的少数が作製または特徴付けられてきた。その結果、新規な物質を合成するための方法および有用な性質のために新規な物質をスクリーニングするためのより体系的な、効率的な、および経済的な方法に対する当該分野における一般的な必要性が存在する。さらに、種々の物質の種類の物質の組成および物質の種類の組み合わせを作製するためのフレキシブルな方法のための必要性が存在する。種々の物質の種類の物質の組成および物質の種類の組み合わせは、分子性物質、結晶性共有結合物質およびイオン性物質、合金、ならびにこれらの組み合わせ(結晶性イオン性物質および合金の混合物、あるいは結晶性イオン性物質および合金層状物質等)を含む。
【0005】
免疫系は、自然に実施される組織的タンパク質および核酸高分子コンビナトリアル化学の例である。体液免疫系および細胞媒介性免疫系の両方は、所望の性質のために組織的にスクリーニングされる分子の膨大なライブラリを生成することによって、新規な機能を有する分子を生成する。例えば、体液免疫系は、異なる抗体分子を作製するどの1012のB−リンパ球クローンが特有のエピトープまたはイムノゲン位置に結合するかを決定することを可能にし、イムノゲンの種々のエピトープを特異的に結合し、抗体を作製する血漿細胞へのクローンの増殖および成熟を刺激するこれらのクローンを見出す。細胞媒介免疫を担うT細胞は、細胞およびキラーT細胞の調節性クラスを含み、調節性T細胞クラスは、また体液および細胞応答の両方を制御することに関与するため、T細胞のクローンがB細胞のクローンよりも多く存在し、適切な免疫応答のためにスクリーニングされそして選択されなければならない。さらに、T細胞およびB細胞の両方の発生学的な発達は、重鎖および軽鎖のための組織的で、実質的なコンビナトリアルDNAスプライシングプロセスである。例えば、Eds.Austen(Blackwell Science Cambridge MA、1996)らによるTherapeutic Immunologyを参照のこと。
【0006】
最近では、免疫系の組み合わせ能力が、ハプテン等の小さい有機分子に対抗する抗体のために選択するように利用されてきた。これらの抗体の内のいくつかは、小さい有機分子を基質として用いて、酵素活性と類似の触媒活性を有するように示されてきた(抗体触媒「catalytic antibodies」(Hsiehら(1993)Science 260(5106):337〜9)と称する)。抗体触媒の提示された機構は、基質の分子コンフォメーションの反応のための遷移状態への変形であり、さらに静電的な安定性を含む。分子の大きいライブラリを合成およびスクリーニングすることはまた、予想されるように試薬発見のために利用されてきた。タンパク質は、基質またはリガンド等の結合された分子のための誘導された適合を形成することが公知である(Stryer、Biochemistry、第4版(1999)W.H.Freeman&Co.、New York)。手が手袋に適合するようにこの結合された分子がそのサイトに適合し、それによりその手袋のためのいくつかの基本構造を要求し、次いで基質またはリガンドの支援により結合された構造に形成される。
【0007】
Geysenら(1987)によるJ.Immun.Meth.102:259〜274は、第1のアミノ酸の共有結合性連結を可能にするポリマーロッドの末端を機能化することを含み、そして個々のアミノ酸の溶液中でその末端を連続的に浸漬するロッドまたはピン上で平行に(in parallel)コンビナトリアルペプチド合成を開発してきた。Geysenらによる方法に加えて、異なるペプチドの大きいアレイおよび固体表面上で他のポリマーを合成するための技術が最近導入されてきた。さらに効率的なスクリーニングツールであるものとしてアレイが容易に理解され得る。アレイの小型化は合成試薬を節約し、サンプルを保存し、生物学的観点および非生物学的観点から有用な改良を維持する。例えば、Southernらによる米国特許第5,700,637号および米国特許第6,054,270号を参照のこと。これらの特許は、離散細胞または支持物質の領域内部の選択されたモノマーユニット長さのオリゴヌクレオチドの高密度アレイを化学的に合成する方法を説明する。本方法は、個々のモノマーを支持体上に沈着させるためにインクジェットプリンタを利用する。しかし、これまで小型化されたアレイは、作製するには高価であり、所望された生成物が作製されるサイトにおいて著しい量の所望されない生成物を含んでいた。従って、生物学的領域であっても、所与のサンプルは固有であり、従って貴重であり得る。高密度生体高分子の使用は、高価すぎるために学会による抵抗に遭い、そのため研究者によって作製されたアレイと比較してまだ十分に信頼できない。
【0008】
要素の数千または数百万の異なる組成のアレイは、このような方法によって形成され得る。ポリマー合成技術から誘導された種々の固相ミクロ電子製造は、「超大規模固定化ポリマー合成」または「VLSIPS」技術と呼ばれてきた。このような方法は、リガンドのレセプタに対する相対的な結合親和力を決定するために潜在的なペプチドおよびオリゴヌクレオチドリガンドをスクリーニングする際に成功していた。
【0009】
コンビナトリアル生体分子ライブラリを調製するために現在使用された、固相空間的に平行配向された合成技術は、段階的または連続的なモノマーの結合を必要とする。Pirrungらの米国特許第5,143,854号は、ポリペプチドアレイの合成を説明する。Fodorらへの米国特許第5,744,305号は、基板の表面に光除去可能な基を共有結合的に結合させることによって基板上のインサイチュのオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを合成する同様の方法を説明する。選択された基板表面サイトは、マスクの使用によってそのサイトを活性化するための光に露出される。次いで、光除去可能な基を有するアミノ酸またはヌクレオチドモノマーが、活性化された領域に取り付けられる。活性化および取り付けの工程は、所望された長さおよび配列のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを作製するために繰り返される。Southernらへの米国特許第5,700,637号および米国特許第6,054,270号によって例示された他の合成技術は、インクジェットプリンタの使用を教示する。これらの特許はまた、実質的に並列合成である。なぜなら、合成パターンは、パターンの「プリント」の開始前に予め規定されなければならないためである。構築ブロック(例えばアミノ酸)の連続的な結合を含み、関心のある化合物を形成するこれらの固相合成技術は、多くの無機化合物および有機化合物を調製するために容易に使用され得ない。
【0010】
Schulzらによる米国特許第5,985,356号は、物質科学の領域におけるコンビナトリアル化学技術を教示し、合成するための方法および装置、ならびに基板の予め規定された領域の種々の物質のアレイの使用を提供する。基板上の異なる物質のアレイは、物質の種々の組成の成分を予め規定された基板表面サイトに送達することによって調製される。この合成技術は、物質物質の多くのクラスが組織的なコンビナトリアル方法によって作製されることを可能にする。物質のタイプの例は、以下に限定されないが、イオン性結晶物質および共有結合性結晶物質を含む無機物質、金属間物質、金属合金、ならびにセラミックスを含む複合物質を含む。以下に限定されないが、このような物質は、合成されたアレイとしての有用なバルクおよび表面性質のためにスクリーニングされ得る。この性質は、例えば、超電導および半電導性を含む電気的性質、熱的、機械的、熱電気的、光学的、光電子的、蛍光および/または免疫抗原性を含む生物学的性質が挙げられる。
【0011】
物質の発見および性質決定は、しばしば、詳細に公知の化学組成、濃度、化学量論、面積および/または厚さの薄膜の基質上への組み合わせの沈着を必要とする。薄層沈着方法を利用する組織的なコンビナトリアルアレイベースの合成および分析を可能にする、異なる物質(各物質は、公知の基板位置において、異なる組成、濃度、化学量論、および薄層の厚さを有する)のアレイを作製するためのデバイスおよび方法は、既に公知である。既存の薄層方法が異なる物質のアレイを作製するために必要とされた試薬送達の精度に影響を与えてきたが、これらの合成技術に必要とされた前定義はフレキシブルではなく、技術は遅く、従って比較的高価である。さらに、薄層技術は、熱力学的に可逆またはほぼ可逆である条件から著しく逸脱する条件下で実験物質を作製するのに本来ほとんど適さない。従って、薄層方法によって達成可能な方法よりも情報の前決定および形成条件に関してより多くのフレキシビリティを有する、物質アレイ調製のために必要な試薬の正確な量のより効率的かつ急速な送達のための必要性が存在する。
【0012】
生体高分子のコンビナトリアル合成において、上述したように、Southernらへの米国特許第5,700,637号および米国特許第6,054,270号は、離散細胞または支持物質の領域内の選択されたモノマーユニット長のオリゴヌクレオチドのアレイを生成するための方法を記載する。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド合成について一般的に説明されたインサイチュ方法は、ヌクレオチド前駆体を細胞位置または細胞領域の離散された所定のセットに結合する工程と、ヌクレオチド前駆体を細胞位置または細胞領域の第2のセットに結合する工程と、ヌクレオチド前駆体を細胞位置または細胞領域の第3のセットに結合する工程と、所望されたアレイが生成されるまで結合工程の配列を継続する工程とを含む。支持の表面または以前の工程において結合されたヌクレオチドのいずれかへの共有結合リンクは、各位置において影響を与える。
【0013】
’637および’270特許はまた、高い組み合わせサイトの密度のために、不浸透性の基板が浸透性の基板(例えば紙)よりも好ましいことを教示する。なぜなら、高密度に対して要求された小さい形状の大きさの達成を除いて、必要な流体量は浸透性のある基板を通って移動またはウィッキングを生じることを必要とするからである(例えば、これは平行フォトリソグラフィック合成によって達成可能であり、この合成は、光学的に滑らか(smooth)であり、さらに一般に不浸透性である基質を必要とする(Fodorらへの米国特許第5,744,305号を参照のこと))。インクジェットプリント方法は、本来の予め決定されるべきアレイを必要とし、従ってフレキシブルではなく、ミクロン範囲またはそれ未満の特徴サイトを不可能にするため、フォトリソグラフィックアレイによって達成可能な高密度を提供し得るフォトリソグラフィックではないインサイチュ組み合わせアレイ調製方法に対する当該分野における必要性を維持する平行合成技術であり、所定のサイトの配列を必要とする高度に平行プロセスの非柔軟性なしで少量の試薬および高度に正確な沈着方法を必要とする処置(feat)である。あるいは、浸透性の基板は、アレイ構成の局在化のためのより大きい表面積を提供するために、浸透性基質の使用を可能にする十分小さい量の送達によって、組み合わせ高密度アレイに非フォトリソグラフィカルに影響を与える方法はまた、アレイ作製の分野の現在の技術を超える状態の進歩である。
【0014】
上述のように、高密度の生体分子アレイ(例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアレイ)の平行フォトリソグラフィックインサイチュ形成もまた当該分野で公知である。例えば、Fodorらへの米国特許第5,744,305号および米国特許第5,445,934号は、平面の多孔質ではない固体支持の表面に、400および1000の異なるオリゴヌクレオチド/cmを超える密度でそれぞれ取り付けられたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドのアレイを記載する。このアレイは、光配向空間アドレス可能合成技術(米国特許第5,143,854号および5,405,783号、ならびに国際特許公報WO90/15070も参照)を用いて生成される。これらのフォトリソグラフィック平行インサイチュで合成されたマイクロアレイに関して、Fodorらは、感光性ヌクレオシドおよびペプチド保護基、ならびにマスキングおよび自動化技術を開発した(米国特許第5,489,678号および国際特許公報WO92/10092を参照)。
【0015】
上記特許は、半導体製造に一般的に使用されたフォトリソグラフィック技術が高密度のアレイの製造において適用され得ることを開示する。フォトリソグラフィックインサイチュ合成はパラレル合成には最良であるが、連続的インサイチュコンビナトリアルアレイ合成に影響を与える膨大な数のマスキング工程を必要とする。最小数のマスキング工程を利用するパラレルコンビナトリアルアレイ合成であっても著しい数のこのような工程を使用し、これにより合成において加えられた各モノマーユニットに対して増加する。さらに、パラレルフォトリソグラフィックインサイチュアレイ合成はフレキシブルではなく、所定のマスク配列を必要とする。
【0016】
フォトリソグラフィック製造は、多数のマスキング工程を必要とするため、このプロセスの収量は、いくつかの感光性保護基によって保護の失敗および/または不適切な光脱保護によって非フォトリソグラフィックインサイチュ合成に対して低下される。感光性保護基化合物を用いるこれらの問題は、一般に光化学工程を合成プロセスに加えることによって、多工程インサイチュ合成のための実際の収量問題の折り合いを付ける。この問題は、このような感光性保護物をインサイチュ合成のために作製および使用する当業者によってなされた進歩によって解決されなかった。なぜなら、部分的に、いくつかの感光性保護基が光から遮断されるかまたはその保護基の上にあるポリマーによって「隠され」、増大するポリマー長さによって悪化された影響のためである。従って、アレイが感受性および選択性の両方を低減させ得る所望されない生成物の著しい不純物を含むため、所望された生成物の純度は低い。
【0017】
インサイチュ合成のためのフォトリソグラフィックプロセスは、マスクの線を有するサイトエッジを規定するため、マスクの不完全性および誤配置、基板の光学的滑らかさの回折効果および摂動が、サイトエッジにおいてより明らかになる問題と組み合わせられて、所望されたポリマーと同様の配列および/または構造のポリマーを不純物として生成することによって純度を低減し得る。これは、フォトリソグラフィックプロトコルが隣接するサイトを有するアレイを作製することによってサイトの密度を最大化するように試みる場合に悪化する。マスクの不完全性または誤配置の可能性は、マスキング工程の数およびマスクの関連付けられた数によって増加するため、これらのエッジ効果は、特定のアレイを製造するために、増大されたマスキング工程の数およびより多くのマスクパターンの利用によってさらに悪化する。サイトの不純物、すなわち、所望されたポリマーと同様の配列および/または構造のポリマーの生成は、ヌクレオチド配列を分析するために設計されたアレイのための低減された感受性および選択性を生じる。
【0018】
プリント技術(特にインクジェットプリント技術)を適用して、生体分子アレイを形成するいくつかの努力が行われてきた。例えば、Baldeschwielerらへの米国特許第6,015,880号は、多工程インサイチュ合成を使用するアレイ調製に関する。第1の試薬を含む流体マイクロドロップが、多重ジェット試薬ディスペンサの単一のジェットによって試薬の共有結合を可能にするように化学的に調製された表面上のサイトに付与される。次いで、試薬ディスペンサは、表面に対して置換され、またはその表面はディスペンサに関して置換され、第1の試薬または別のディスペンサジェットからの第2の試薬のいずれかを含む少なくとも一つのマイクロドロップが第2の基板のサイトに付与され、これによりさらに第2の試薬の共有結合に対して反応性であるように化学的に活性化される。第2の工程が第1または第2の試薬、あるいは異なるディスペンサジェットからの異なる液体によって運ばれる試薬のいずれかを使用して任意に繰り返される。各試薬は基質表面に共有結合的に結合する。本特許は、インクジェット技術がマイクロドロップを適用するために使用され得ることを開示する。
【0019】
しかし、通常のインクジェット技術は多くの欠点を被る。しばしば、インクジェット技術は、加熱または圧電素子を用いて、出射された流体を表面上に向けるためにノズルを介して流体を押し出すことを含む。従って、流体は、出射する前に200℃を超える表面に露出され得る。全ての場合ではないが、ほとんどの場合、タンパク質を含むペプチド分子は、このような極端な温度下で分解する。さらにノズルを介してペプチド分子を押し出すことは、分子構造を変化させ得るせん断力を生成する。特に高分子を含む流体を出射するために使用された場合、ノズルは詰まりやすくなり、高温の使用はこの問題を悪化させる。なぜなら流体の蒸発はノズル上に沈殿した固体の沈着を生じるからである。次いで、詰まったノズルは、誤った方向に向けられた流体または不適切なサイズの小滴の出射を生じる。最終的に流体出射のためのノズルを利用する通常のインクジェット技術は、一般的に半導体プロセスに通常使用されたフォトリソグラフィーまたは半導体プロセスに使用される他の技術を用いて入手可能であるものと比較して形状密度を有するアレイを沈着するために使用できない。
【0020】
多くの特許は、プリントの際に音響エネルギーの使用を説明している。例えば、Loveladyらへの米国特許第4,308,547号は、液体本体から移動している文書に流体小滴を出射して、文書に文字またはバーコードを形成する際に音響の原理を利用する流体滴下エミッタを説明している。インクの制御された滴下が、インクの表面において、またはインクの表面よりも下にある曲がったトランスデューサによって生成された音響力によって推進されるノズルのないインクジェットプリント装置が使用される。インクジェットプリント装置とは対照的に、上記特許に説明されたノズルのない流体出射デバイスは、詰まることがなく、詰まりに関連する不利益(例えば、誤った方向に向けられた流体または不適切なサイズの小滴)の影響を受けない。
【0021】
ノズルのない流体出射の利用可能性は、一般的にインクプリント用途に対して理解されてきた。インクプリント用途の開発は、プリントコストおよび受理可能なテキストのための速度によって主に経済的に駆動される。従って音響プリントに対して、開発努力が品質を改善するのではなくプリントコストを低減することおよび精度よりもプリント速度を増大することに集束されてきた。例えば、Rawsonらへの米国特許第5,087,931号は、軸に沿って配置された複数のイジェクタ(各イジェクタは、液体インクの自由表面に関連付けられる)を有する音響インクプリンタに一定の流れによってインクを輸送するシステムに関する。複数のイジェクタは、単一のイジェクタの代わりに使用される場合、一般的にプリント速度は増大するが、流体出射(特に小滴配置)を制御することはより困難になる。
【0022】
Quateによる米国特許第4,797,693号は、記録媒体上にポリクロマティックな画像をプリントするための音響インクプリンタを説明する。このプリンタは、複数の異なる色付き液体インクを含むキャリア、集束している音響波をキャリアに発射するためにキャリアに音響的に接続された単一の音響プリントヘッド、異なる色のインクをプリンタヘッドに連続的に位置合わせするためにキャリアを位置決めするインク輸送手段、およびインク小滴を出射するために使用された放射圧力を調製するためのコントローラの組み合わせを含むものとして説明される。このプリンタは、コスト節約の実現に対して設計されたものとして説明される。十分近接して配置された一次色の2つの小滴(例えば、シアンおよびイエロー)は、複合色または二次色として現れるので、必要な精度のレベルはかなり低く、生体分子アレイ形成のためには不十分である。このようなプリンタは、正確な小滴沈着および一定の配置を必要とし、その結果適切な化学反応が発生するインサイチュ合成には特に不適である。すなわち、複合二次色の認識に影響を与えるのに必要とされた小滴配置の精度は、フォトリソグラフィック密度レベルにおける化学合成に対して必要とされた精度よりもはるかに低い。その結果、視覚的に認識できる物質をプリントするために適する音響印刷デバイスは、マイクロアレイ調製に対して不適である。また、このデバイスは、液体メニスカスが音響焦点から移動し、流体小滴出射が停止する前に、キャリアから制限された量のインクのみを出射し得る。これは、生物学的流体を用いる重要な制限であり、これにより、典型的には、インクよりもはるかにより高価になり貴重になる。上記Quateらの特許は、外部ソースからさらなる流体を追加することなく閉じたリザブワーの流体のほとんどをどのようにして使用するかを解決しない。
【0023】
ペプチドアレイ(すなわち、複数のペプチド分子から構成されたアレイ)に関して、潜在的な利点は、広く研究者、科学者、および臨床医によって理解される。ペプチドアレイは、特定の態様でアレイ内の一つ以上のペプチドと相互作用し得る化合物の高スループットスクリーニングを可能にする。例えば、特定の生物学的レセプタのためのリガンドとして潜在的に適切なペプチド分子のアレイは、そのレセプタに対して調製され、そして「スクリーニング」され得る。あるいは、抗体のアレイは、患者のサンプル内の複数の病原性抗原に対してスクリーンニングするために使用され得る。タンパク質の組み合わせは、また分子に対してスクリーニングするために使用され得、これは、同様の代謝経路と相互作用するかまたはその代謝経路の一部である。さらに、ペプチドアレイは、患者が特定のペプチド抗原への抗体を開発したか否かを決定するために臨床医によって使用され得る。しかし、ペプチドアレイの規則(promise)は、十分に知られていない。このことは、製造努力によって大部分知られているが、他の問題も同様に遭遇する。
【0024】
従って、改良されたアレイ調製方法論が当該分野で一般的に必要とされている。理想的なアレイ調製技術は、基板表面上の流体の微小量の高度で正確な沈着を提供する。小滴量(従って基板表面上の「スポット」サイズ)は、注意深く制御され得、基板表面上の特定のサイトに正確に向けられ得る。このような技術が多孔性または浸透可能な表面を用いて使用され得る場合最適であり、このような表面は、アレイ構成要素として働く分子の部分に結合する実質的により大きな表面積を提供し得るため、より高密度アレイの調製を可能にする。これまで上記で暗示したように、高密度アレイは、多孔質ではない、不浸透性表面上のみで調製され、低濃度アレイのみが多孔質表面上で調製され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
(発明の要旨)
従って、当該分野において上記の必要性に近づくデバイスおよび方法を提供することが本発明の目的である。
【0026】
本発明の一局面では、基質上への沈着のために基板表面上の離散サイトに複数の流体小滴を音響的に出射するためのデバイスが提供される。このデバイスは、流体を含むようにそれぞれ適応された複数のリザブワーと、音響放射を生成するための音響イジェクタおよび小滴をリザブワーから出射するように各リザブワー内の流体表面の十分近くの焦点に音響放射を集束するための集束手段とを含む音響イジェクタと、リザブワーのそれぞれに対する音響結合関係でイジェクタを配置するための手段とを含む。好ましくは、リザブワーのそれぞれは除去可能であり、ウエルプレートにおける個々のウエルおよび/またはアレイに配置された個々のウエルから構成される。さらに、これらのリザブワーは、互いに実質的に音響的に区別不可能であることが好ましい。
【0027】
別の局面では、本発明は、基板表面上への沈着のために流体リザブワーから基板表面上の離散サイトに流体を出射するための方法に関する。本方法は第1の流体を含む流体を含むリザブワーに音響的に結合された関係を有するように音響イジェクタを位置決めし、次いで基板表面上のサイトに流体小滴を出射するように流体への音響放射を生成および配向するように活性化することを含む。次いで、イジェクタは、第2の流体を含むリザブワーに音響的に結合された関係にあり、上記のように再度活性化するように再位置決めされて、第2の流体の小滴を基板表面の第2の流体に出射する。第1のサイトおよび第2のサイトは同一であってもよいし、同一でなくてもよい。所望ならば、本方法は、流体をそれぞれ含む複数の流体リザブワーを用いて繰り返され得るが、一般的に各リザブワーは、必ずしも異なる流体を含んでいるわけではない。従って、音響イジェクタは、各イジェクタから基板表面上の異なるサイトまたは基板上の小滴「スポット」を既に有するサイトに小滴を出射するように反復的に再位置決めされる。このように、本方法は基板表面上の分子部分のアレイを生成する際に使用するために容易に適応される。
【0028】
本発明のさらに別の局面は、種々の化学的化合物または基板表面上の物質の高密度アレイを提供する。本発明の集束音響出射方法論は、基板表面の1cm当たり少なくとも62,500の化学構成要素(すなわち、アレイ要素)、好ましくは、少なくとも250,000、より好ましくは少なくとも1,000,000、最も好ましくは基板表面の1cm当たり少なくとも1,500,000の要素から構成されたアレイの調製を可能にする。これらのアレイは、フォトリソグラフィックマスキングの光学的および位置決め効果を生じるエッジ効果を有さず、試薬のインクジェットノズル配向沈着からの不完全なスポッティング位置決めの影響も受けない。
【0029】
本発明の別の局面では、ペプチドアレイが光結合部分を介して基板表面に取り付けられた複数のペプチド分子から構成されるように提供される。ペプチドアレイのペプチド分子のいずれも、実質的にせん断応力の徴候を示さない。さらに実質的に全てのペプチド分子は未処理であり、基板表面上の所定のサイトに結合されるか、および/または基板表面上の少なくとも1つの設計されたサイトが脂質物質を含む。さらにペプチドアレイは、好適にはフォトリソグラフィック処理物質が実質的にない。
【0030】
図1Aおよび図1B(まとめて図1と呼ぶ)は、第1および第2のリザブワー、音響イジェクタ、およびイジェクタ配置手段を含む本発明のデバイスの実施形態の簡略化された断面図を図解的に示す。
【0031】
図2A、図2B、および図2C(まとめて図2と呼ぶ)は、図1の本発明の実施形態の改変を概略的な図で示す。リザブワーは、リザブワーウエルプレートにおける個々のウエルを含み、基板は対応する数のウエルを有するより小さいウエルプレートを含む。
【0032】
図3A、図3B、図3C、および図3D(まとめて図3と呼ぶ)は、ダイマーが図1のデバイスを用いて基板上でインサイチュ合成される本発明の方法の実施形態を簡略化された断面図で図解的に示す。
(項目1) 複数の流体リサブワーのそれぞれから流体の小滴を音響出射するためのデバイスであって、
流体を含むように適応される複数のリサブワーと、
音響放射を発生するための音響放射ジェネレータと発生された該音響放射を集束するための集束手段とを含む音響イジェクタと、
該リザブワーのそれぞれに対する音響的結合関係において該音響イジェクタを位置づけるための手段と
を含む、デバイス。
(項目2) 単一の音響イジェクタを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目3) 上記リザブワーのそれぞれは、上記デバイスから取り外し可能である、項目1に記載のデバイス。
(項目4) 上記リザブワーは、ウェルプレートに別個のウェルを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目5) 上記リザブワーは、アレイ状に配列される、項目1に記載のデバイス。
(項目6) 任意の二つの隣接するリザブワーの中心間の距離は、約1cm未満である、項目4に記載のデバイス。
(項目7) 任意の二つの隣接するリザブワーの中心間の距離は、1mm未満である、項目5に記載のデバイス。
(項目8) 任意の二つの隣接するリザブワーの中心間の上記距離は、約0.5mm未満である、項目6に記載のデバイス。
(項目9) 上記リザブワーは、実質的に音響的に区分不能である、項目1に記載のデバイス。
(項目10) 上記デバイスは、96個のリサブワーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目11) 上記デバイスは、384個のリザブワーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目12) 上記デバイスは、1536個のリザブワーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目13) 上記デバイスは、少なくとも約10,000個のリザブワーを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目14) 上記デバイスは、少なくとも100,000個のリザブワーを含む、項目12に記載のデバイス。
(項目15) 上記デバイスは、約100,000〜約4,000,000個のリザブワーを含む、項目14に記載のデバイス。
(項目16) 少なくとも一つのリザブワーは、たかだか約100ナノリッターの流体を含むように適応される、項目1に記載のデバイス。
(項目17) 少なくとも一つのリザブワーは、たかだか約10ナノリッターの流体を含むように適応される、項目15に記載のデバイス。
(項目18) 各リザブワーは、流体を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目19) 各リザブワーにおける上記流体は、生物分子を含む、項目18に記載のデバイス。
(項目20) 各リザブワーにおける上記生物分子は、異なっている、項目19に記載のデバイス。
(項目21) 上記リザブワーの少なくとも一つは、水性流体を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目22) 上記リザブワーの少なくとも一つは、非水性流体を含む、項目1に記載のデバイス。
(項目23) 上記非水性流体は、有機溶媒を含む、項目22に記載のデバイス。
(項目24) 上記生物分子は、ヌクレオチドである、項目19に記載のデバイス。
(項目25) 上記生物分子は、ペプチドである、項目19に記載のデバイス。
(項目26) 上記生物分子は、モノマーである、項目19に記載のデバイス。
(項目27) 上記生物分子は、オリゴマーである、項目19に記載のデバイス。
(項目28) 上記生物分子は、ポリマーである、項目19に記載のデバイス。
(項目29) 上記イジェクター位置づけ手段は、所定配列の各リザブワーから小滴を出射するように適応される、項目1に記載のデバイス。
(項目30) 各リザブワー内の上記流体を一定温度に維持するための手段をさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目31) 上記一定温度は、上記流体の溶融点をたかだか約10℃超えているだけである、項目30に記載のデバイス。
(項目32) 上記一定温度は、上記流体の溶融点をたかだか約5℃超えているだけである、項目31に記載のデバイス。
(項目33) 上記基板表面を上記イジェクターに対して位置付けするための基板位置づけ手段をさらに含む、項目1に記載のデバイス。
(項目34) 上記基板表面の温度を下げるための冷却手段をさらに含む、項目33に記載のデバイス。
(項目35) 上記冷却手段は、上記基板表面を、該基板表面と接触した後に沈着された流体が実質的に個体化される温度に維持するように適応される、項目34に記載のデバイス。
(項目36) 上記基板上の上記別個のサイトは、アレイを形成する、項目1に記載のデバイス。
(項目37) 上記音響的結合関係は、上記音響放射が発生されて、上記リザブワーの外部に集束されるように上記イジェクターを位置付けすることを含む、項目1に記載のデバイス。
(項目38) 上記イジェクターと各リザブワー内の上記流体との間の音響的結合関係は、該イジェクターと該リザブワーとの間に音響伝導媒体を提供することによって確立される、項目37に記載のデバイス。
(項目39) 上記イジェクターと各リザブワー内の上記流体との間の音響的結合は、該イジェクターと各リザブワーとの間の所定の距離で確立される、項目1に記載のデバイス。
(項目40) 化学エンティティのアレイを基板の表面上に発生するための方法であって、該方法は、集束された音響エネルギーを、流体内に化学エン ティティをそれぞれ含む複数のリザブワーのそれぞれに適用する工程を包含し、該集束された音響エネルギーは、音響放射ジェネレータと集束手段とから構成される単一のイジェクターを用いて、各小滴内の該化学エンティティが付着するように各リザブワーから該基板の表面上のサイトに向けて小滴を出射するために効 率的な様式で適用される、方法。
(項目41) 上記集束された音響エネルギーは、(a)上記音響イジェクターに代わって各リザブワーを音響的に結合し、(b)各音響的結合工程に続 いて、該リザブワーから上記基板表面上のサイトに向けて流体小滴を出射するために該流体表面に十分近い焦点を有する音響放射を発生するように該イジェクターを活性化することによって複数のリザブワーのそれぞれに適用される、項目40に記載の方法。
(項目42) 上記出射された小滴のそれぞれは、約1pL〜約5pLの範囲の容量を有する、項目41に記載の方法。
(項目43) 上記出射された小滴のそれぞれは、約1pL未満の容量を有する、項目42に記載の方法。
(項目44) 各化学エンティティは、分子である、項目41に記載の方法。
(項目45) 上記分子は、生物分子である、項目44に記載の方法。
(項目46) 上記分子は、ヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである、項目45に記載の方法。
(項目47) 上記分子は、ペプチドである、項目45に記載の方法。
(項目48) 上記分子は、サッカライドである、項目45に記載の方法。
(項目49) 基板の表面に付着された化学エンティティのアレイを調製するための方法であって、
(a)第一の化学エンティティを第一の流体内に含む第一のリザブワーを、音響放射を生成するイジェクターに音響的に結合する工程と、
(b)小滴を該基板表面上の第一のサイトに向けて出射するために該第一の流体の表面に十分近い焦点を有する音響放射を発生するように該イジェクターを活性化する工程と、
(c)第二の化学エンティティを第二の流体内に含む第二のリザブワーを、該イジェクターに音響的に結合する工程と、
(d)該第二のリザブワーから該基板表面上の第二のサイトに向けて第二の流体の小滴を出射するように工程(b)と同様に該イジェクターを活性化する工程と、
(e)化学エンティティを流体内にそれぞれ含むさらなるリザブワーを用いて小滴が各リザブワーから出射されるまで、工程(c)および(d)を繰り返す工程と
を包含し、工程(b)および(d)は、結果として、各小滴内の該化学エンティティの該基板の表面への付着を生じさせる、方法。
(項目50) 活性化工程の間の時間周期は、約1秒未満である、項目49に記載の方法。
(項目51) 活性化工程間の上記時間周期は、約0.1秒未満である、項目50に記載の方法。
(項目52) 活性化工程間の上記時間周期は、約0.01秒未満である、項目51に記載の方法。
(項目53) 活性化工程間の上記時間周期は、約0.001秒未満である、項目52に記載の方法。
(項目54) 上記基板表面は、多孔性物質から構成される、項目49に記載の方法。
(項目55) 上記多孔性物質は、透過性物質である、項目54に記載の方法。
(項目56) 上記基板表面は、非多孔性物質から構成される、項目49に記載の方法。
(項目57) 上記アレイは、上記基板表面の平方センチメータあたり少なくとも約62,500のアレイエレメントの密度で調製される、項目49に記載の方法。
(項目58) 上記アレイは、上記基板表面の平方センチメータあたり少なくとも約250,000アレイエレメントの密度で調製される、項目57に記載の方法。
(項目59) 上記アレイは、上記基板表面の平方センチメータあたり少なくとも約1,000,000アレイエレメントの密度で調製される、項目58に記載の方法。
(項目60) 上記アレイは、上記基板表面の平方センチメータあたり少なくとも約1,5000,000アレイエレメントの密度で調製される、項目59に記載の方法。
(項目61) 上記少なくとも二つの出射された小滴は、上記基板表面上の同一の指定されたサイトに沈着される、項目49に記載の方法。
(項目62) 上記少なくとも二つの出射された小滴のそれぞれは、他の生物分子への共有結合性または非共有結合性の結合が可能な生物分子を含む、項目61に記載の方法。
(項目63) 工程(a)の前に、上記第一のリザブワーを上記第一の流体で満たすために音響出射を用いる工程さらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目64) 工程(a)の前に、上記基板表面を改変する工程をさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目65) 工程(a)の前に、
(a−1)上記イジェクターを、表面改変流体を含む改変因子リザブワーに音響的に結合する工程と、
(a−2)該表面改変流体の少なくとも一つの小滴を該基板表面に向けて上記第一の指定されたサイトに沈着用に出射するために表面改変流体の表面近くに焦点を有する変更因子出射音波を発生するように該イジェクターを活性化する工程と
をさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目66) 工程(a−1)および(a−2)は、上記表面改変流体の小滴を上記第二の指定されたサイトに沈着するために繰り返される、項目65に記載の方法。
(項目67) 工程(a−1)および(a−2)は、上記表面改変流体の小滴をすべての指定されたサイトに沈着するために繰り返される、項目65に記載の方法。
(項目68) 上記表面改変流体は、上記出射された流体のそれぞれに対して上記基板表面の上記表面エネルギーを増加させる、項目67に記載の方法。
(項目69) 上記表面改変流体は、上記出射された流体のそれぞれに対して上記基板表面の上記表面エネルギーを減少させる、項目67に記載の方法。
(項目70) 各イジェクターの活性化工程の前に、上記イジェクターと音響的に結合された関係におけるリザブワー内の上記流体のレベルを測定する工 程と、小滴の大きさおよび速度の一定性を保証するために各活性化工程に必要とされる上記音響放射の強度を調節するために該測定を用いる工程とをさらに包含する、項目49に記載の方法。
(項目71) 各測定する工程は、音響により実行される、項目70に記載の方法。
(項目72) 各イジェクター活性化工程の前に、上記音響出射ジェネレータに対する関係における各リザブワー内の上記流体表面の配向を決定する工程 と、小滴軌道の一定性を保証するために要求される上記集束された音響放射の方向を調製するために該測定を用いる工程とをさらに包含する、項目70に記載の方法。
(項目73) 複数の生物分子のアレイを、複数の個別の表面サイトに分割された基板表面上に含む生物分子アレイであって、各サイトは、該サイト内の 局在化された領域における該基板表面に付着された一つの生物分子を含み、該生物分子は、平方センチメータあたり少なくとも62,500の生物分子の密度で存在する、生物分子アレイ。
(項目74) 上記密度は、平方センチメータあたり少なくとも250,000の生物分子である、項目73に記載のアレイ。
(項目75) 上記密度は、平方センチメータあたり少なくとも250,000の生物分子である、項目74に記載のアレイ。
(項目76) 上記密度は、平方センチメータあたり少なくとも250,000の生物分子である、項目75に記載のアレイ。
(項目77) 基板表面に付着された複数のペプチド分子から構成されるアレイを調製するための方法であって、該方法は、集束された音響エネルギー を、ペプチド分子を流体内にそれぞれ含む複数のリザブワーのそれぞれに適用する工程を包含し、該集束された音響エネルギーは、各リザブワーから基板表面上の異なるサイトに向けて小滴を出射することに効果的な様式で適用される、方法。
(項目78) 上記集束された音響エネルギーは、(a)音響放射を生成するイジェクターに代わって各リザブワーを音響的に結合し、(b)各音響的に 結合工程に続いて、該リザブワーから上記基板表面上の指定されたサイトに向けて流体小滴を出射するために上記流体表面に十分近い焦点を有する音響放射を発生するように活性化することによって複数のリザブワーのそれぞれに適用される、項目77に記載の方法。
(項目79) 各ペプチド分子は、約5〜約10,000のアミノ酸から構成される、項目78に記載の方法。
(項目80) 各ペプチド分子は、約5〜約1,000のアミノ酸から構成される、項目79に記載の方法。
(項目81) 各ペプチド分子は、オリゴペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である、項目78に記載の方法。
(項目82) 上記ペプチド分子は、酵素、抗体、抗原、凝固モジュレータ、サイトカイン、エンドルフィン、ペプチドホルモンおよびキニンからなる群から選択される、項目81に記載の方法。
(項目83) 各ペプチド分子は、異なっている、項目78に記載の方法。
(項目84) 上記出射された小滴のそれぞれは、約1pL〜約5pLの範囲の容積を有する、項目78に記載の方法。
(項目85) 上記出射された小滴のそれぞれは、約1pL未満の容積を有する、項目78に記載の方法。
(項目86) 任意の連結部分を介して基板表面にそれぞれ付着された複数のペプチド分子から構成されたペプチドアレイであって、せん断応力の徴候を 示すペプチド分子が実質的に存在せず、および、実質的にすべてのペプチド分子は、無傷であり、該基板表面上の所定のサイトに付着される、ペプチドアレイ。
(項目87) 上記ペプチド分子の上記基板表面への付着は、共有結合性である、項目86に記載のペプチドアレイ。
(項目88) 上記ペプチド分子の上記基板表面への付着は、非共有結合性である、項目86に記載のペプチドアレイ。
(項目89) 上記ペプチド分子は、複数のペプチド分子の群から構成され、(a)任意の一つの群内のすべてのペプチド分子、および(b)各ペプチド分子の群は、相互のペプチド分子の群に対して同一である、項目86に記載のペプチドアレイ。
(項目90) 各ペプチド分子は、異なっている、項目86に記載のペプチドアレイ。
(項目91) 上記基板表面上の少なくとも一つの指定されたサイトは、脂質物質を含む、項目86に記載のペプチドアレイ。
(項目92) 上記脂質物質は、リン脂質である、項目91に記載のペプチドアレイ。
(項目93) 上記アレイ内の上記ペプチド分子の少なくとも一つは、脂質物質内にあり、上記アレイ内の上記ペプチド分子の少なくとも一つの他のものは、水性流体内にある、項目91に記載のペプチドアレイ。
(項目94) 任意の結合部分を介して多孔性基板表面上の所定のサイトに、該基板表面の平方センチメータあたり62,500のペプチド分子より大きい密度でそれぞれ付着される複数のペプチド分子から構成されるペプチドアレイ。
(項目95) 上記密度は、上記基板表面の平方センチメータあたり250,000のペプチド分子より大きい、項目94に記載のペプチドアレイ。
(項目96) 上記密度は、上記基板表面の平方センチメータあたり1,000,000のペプチド分子より大きい、項目95に記載のペプチドアレイ。
(項目97) 上記密度は、上記基板表面の平方センチメータあたり1,500,000のペプチド分子より大きい、項目96に記載のペプチドアレイ。
(項目98) 上記多孔性基板表面は、透過性表面である、項目94に記載のペプチドアレイ。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】図1Aは、第1のリザブワーから基板表面上のサイトに向かって流体小滴を出射するために第1のリザブワーに音響的に結合されそして活性化された音響イジェクタを示す。
【図1B】図1Bは、第2のリザブワーに音響的に結合された音響イジェクタを示す。
【図2A】図2Aは、2つのウエルプレート(すなわち、リザブワーウエルプレートおよび基板ウエルプレート)の概略的上面図である。
【図2B】図2Bは、小滴がリザブワーウエルプレートの第1のウエルから基板ウエルプレートの第1のウエルプレートに出射される、音響イジェクタに音響的に結合された図2Aのリザブワーウエルプレートを含むデバイスデバイスを断面図で示す。
【図2C】図2Cは、音響イジェクタがリザブワーウエルプレートの第2のウエルに音響的に結合され、そしてさらに音響イジェクタがリザブワーウエルプレートの第2のウエルから基板ウエルプレートの第2のウエルに小滴を出射することを可能にするように位置調製される、図2Bに示されたデバイスを断面図で示す。
【図3A】図3Aは、基板表面のサイトへの表面改変流体の小滴の出射を示す。
【図3B】図3Bは、基板の改変された表面に結合するように適応された第1の分子部分を含む第1の流体の小滴の出射を示す。
【図3C】図3Cは、第1の分子に結合するように適応された第2の分子部分を含む第2の流体の小滴の出射を示す。
【図3D】図3Dは、図3A、図3B、および図3Cに示されたプロセスによってインサイチュ合成された基板およびダイマーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(発明の詳細な説明)
本発明を詳細に説明する前に、本発明が、特定の流体、生体分子、またはデバイス構造に限定されないこと(これらが変動し得ても)が理解される。本明細書中で使用された技術用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定を意図しないことも理解される。
【0035】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの」、ならびに「該」および「前記」は、明確に他のものを示さない限り複数の指示物を含むことが留意される必要がある。従って例えば、「一つのリザブワー」への言及は、複数のリザブワーを含み、「一つの流体」への言及は、複数の流体を含み、「一つの生体分子」への言及は、生体分子の組み合わせ等を含む。
【0036】
本発明を説明および主張する際、以下に列挙された定義に従って以下の技術用語が使用される。
【0037】
本明細書中で使用された用語「音響結合」および「音響的に結合された」は、物体が音響放射が音響エネルギーの実質的な損失なしで物体間で移動されることを可能にするように別の物体と直接または間接的な接触で配置される状態を指す。2つの構成要素が間接的に音響的に結合される場合、「音響結合媒体」は、音響放射が伝達され得る中間体を提供することが必要とされる。従って、イジェクタは、流体に音響的に結合され得る(例えば、イジェクタを流体中に沈めることによって、またはイジェクタと流体との間に音響結合媒体を挿入することによって、音響結合媒体を介しておよびその流体にイジェクタによって生成された音響放射を伝達する)。
【0038】
本明細書中で使用された用語「吸着」は、基板表面による分子の非共有結合的な保持を指す。すなわち、吸着は、基板表面と吸着される分子上に存在する吸着部分との間の非共有結合的な相互作用の結果として発生する。水素結合、van der Waal’s力、極性引力、または静電力(すなわち、イオン結合を介して)を介して吸着が発生し得る。吸着部分の例は、以下に限定されないが、アミン基、カルボン酸部分、ヒドロキシル基、ニトロソ基、スルホン等を含む。しばしば基板は、表面がアミノ基を用いて機能化され、その表面をpH中性水性環境において正に帯電させる場合のように吸着部分を用いて機能化され得、所定の態様で相互作用する。同様に、吸着部分は、塩基性タンパク質が、酸性のペプチド配列と融合され、正に帯電された吸着部分と静電的に相互作用し得る吸着部分を与える場合のように、吸着に影響を与えるためのいくつかの場合において追加され得る。
【0039】
例えば、基板に「付着された」部分を有する基板表面等の場合、用語「付着された」は、共有結合、吸着、および物理的な固定化を含む。用語「結合」および「結合された」は、用語「付着された」の意味と同じである。
【0040】
本明細書中で使用された用語「アレイ」は、リザブワーの構成(例えば、ウエルプレートにおけるウエル)または異なる物質の構成等の2次元の形状構成を指す。この異なる物質は、イオン性、金属性、または共有結合性結晶を含み、この異なる物質は、複合体またはセラミック、ガラス、アモルファス、基板表面上の流体または分子性物質(オリゴヌクレオチドまたはペプチドアレイ)を含む。分子性物質の意味での異なる物質は、構造異性体、幾何異性体、および立体異性体を含む化学異性体を含み、ポリマー分子構造異性体の意味では、異なるモノマー配列を有する。アレイは、一般的に規則的な、秩序化された形態(例えば、直線格子状、平行ストライプ状、らせん状等)で構成されるが、秩序化されていないアレイは同様に有利に使用され得る。アレイは、より一般的な用語「パターン」とは、パターンが必ずしも規則的および秩序化された形態を含むとは限らない点で区別される。本発明のデバイスおよび方法を用いて形成されたアレイまたはパターンは、支援されていない人間の目に対して光学的な意味を有さない。例えば、本発明は、文字、数字、バーコード、図、または支援されていない人間の目に対して光学的な意味を有する他の印(inscription)を形成するために紙または他の基板上にインクプリントすることを含まない。さらに、本明細書中で提供されるような表面上の出射された小滴の沈着によって形成されたアレイおよびパターンは、好適には、支援されていない人間の目に対して実質的に見えない。本発明の方法を用いて調製されたアレイは、一般的に約4〜約10,000,000の形態、より典型的には約4〜約1,000,000の形態を含む。
【0041】
用語「生体分子」および「生物学的分子」は、本明細書中で相互交換可能に使用され、天然に存在し、組換えられて生成され、または全体または部分的に化学的に合成された(すなわち生体の一部であったかまたは一部であり得る)ものであろうとも任意の有機分子を指す。これらの用語は、例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、および単糖類、ならびに、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチド等のオリゴマーおよびポリマー種、オリゴペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質等のペプチド分子、二糖類、寡糖類、多糖類、ムコ多糖類またはペプチドグリカン(ペプチド−多糖類)等の糖類を含む。この用語はまた、リボゾーム、酵素、補因子、薬理学活性剤等を含む。
【0042】
用語「ライブラリ」および「コンビナトリアルライブラリ」は、本明細書中で交換可能に使用され、基板の表面上に存在する複数の化学的部分または生物学的部分を指し、各部分は、各他の部分とは異なる。この部分は、例えばペプチド分子および/またはオリゴヌクレオチドであり得る。
【0043】
用語「部分」は、物質の任意の特定の組成(例えば、分子フラグメント、未処理の分子(モノマー分子、オリゴマー分子、およびポリマー)、または物質の混合物(例えば合金または積層体)を指す。
【0044】
本明細書中で使用されるように、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、従来のプリンおよびピリミジン塩基(すなわち、アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)、およびウラシル(U)ばかりでなく、これらの保護された形態(例えば、塩基は、アセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチル、またはベンゾイル、ならびにプリンおよびピリミジン類似物等の保護基で保護される)を含むヌクレオシドおよびヌクレオチドを指すことが理解される。適切な類似物は当業者に公知であり、適切な書物および文献で説明される。共通の類似物は、以下に限定されないが、1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N−メチルアデニン、N−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2、2−ジメチルグアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシルメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチルアミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキソ酢酸、ウラシル−5−オキソ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル(pseudouracil)、1−メチルプソイドウラシル、クエオシン(queosine)、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、および2,6−ジアミノプリンを含む。さらに用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、従来のリボースおよびデオキシリボース糖ならびに同様に他の糖も含む部分を含む。改変されたヌクレオシドまたはヌクレオチドはまた、糖部分に関する改変を含む。例えば、一つ以上のヒドロキシル基は、ハロゲン原子または脂肪族基で置換され、あるいはエステル、アミン等として官能基化される。
【0045】
本明細書中で説明されたように、用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリマーがDNAおよびRNAにおいて見られるような塩基対および塩基スタッキングを可能にする構成の核酸塩基を含む場合には、ポリデオキシヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含む)、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるポリヌクレオチドの任意の他のタイプ、および非ヌクレオチドバックボーンを含む他のポリマー(例えばPNA)に属する。従って、これらの用語は、既知の種類のオリゴヌクレオチド改変体を含む。オリゴヌクレオチドの改変体は、例えば、一以上の天然に存在するヌクレオチドの、類似物である、例えば、帯電されていない結合(例えば、燐酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート(phosphoramidate)、カルバメート等))を有するもの、負に帯電した結合を有するもの(例えば、ホスホロチオエート(phosphorothioate)、ホスホロジチオエート等)、および正に帯電した結合を有するもの(例えば、アミノアルキルホスホルアミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)等の内部ヌクレオチド改変体、例えば、タンパク質(ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナル(signal)ペプチド、ポリ−L−リシン等を含む)等のペンダント部分を含む改変体、例えば、アクリジン、ソラレン等のインターカレータをを有する改変体、例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属等)等のキレート剤を含む改変体との置換を含む。用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」との間には、長さについて意図された区別はなく、これらの用語は、相互交換可能に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを参照する。本明細書中で使用されたように、ヌクレオチドおよびポリヌクレオシドに対するシンボルは、IUPAC−IUB Commission of Biochemical Nomenclature recommendations(Biochemistry 9:4022,1970)に従う。
【0046】
明細書および特許請求の範囲にわたって使用されたような用語「ペプチド」、「ペプチジル」、および「ペプチドの」は、2つ以上のアミノ酸から構成された任意の構造を含むように意図される。大部分に対して、本発明のアレイのペプチドは、約5〜10,000のアミノ酸、好適には約5〜1000のアミノ酸を含む。ペプチドの全てまたは一部を形成するアミノ酸は、20個の従来の天然に存在する任意のアミノ酸であり得る。すなわち、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)である。本発明のアレイを形成するペプチド分子のアミノ酸の内のいずれかは、従来的ではないアミノ酸によって置換され得る。一般的に、保存的な置換が好まれる。保存的な置換は、元のアミノ酸を、1つ以上の特徴性質(例えば、電荷、疎水性、ステアリックバルク(stearic bulk)、例えばValをNvalと置換し得る)の点において元のアミノ酸と似ている従来的ではないアミノ酸とを置換する。用語「従来的ではないアミノ酸」は、従来のアミノ酸以外のアミノ酸を示し、例えば、従来のアミノ酸の異性体および改変体(例えば、D−アミノ酸)、非プロテインアミノ酸、変形的に改変されたアミノ酸、酵素的に改変されたアミノ酸、擬態(mimic)アミノ酸に対して設計された構成物または構造(例えば、α,α−二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、酪酸、β−アラニン、ナフチルアラニン、3−ピリジルアラニン、4−ヒドロキシプロリン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシルリジン、およびノルロイシン(nor−leucine)、ならびにN−置換アミド、エステル、チオアミド、レトトペプチド(−NHCO−)、レトロチオアミド(−NHCS−)、スルホンアミド(−SONH−)、および/またはペプトイド(peptoid)(N−置換グリシン)結合等の従来的ではない結合を有するペプチドバックボーン内部の1つ以上のサイトで置換された天然に存在するアミド−CONH−結合を有するペプチドを含む。従って、アレイのペプチド分子は、擬似ペプチド(pseudopeptide)およびペプチド擬症(petidomimetics)を含む。本発明のペプチドは、(a)天然に存在する、(b)化学合成によって生成される、(c)組換えDNA技術によって生成される、(d)生化学的またはより大きい分子の生化学的または酵素的切断によって生成される、(e)上記(a)〜(d)の方法の組み合わせから生じる方法によって生成される、または(f)ペプチドを生成するための任意の他の手段によって生成され得る。
【0047】
当業者によって理解されるように、ペプチド分子は、所定のレベルの構造を有する。ペプチド分子の一次構造は、一般的にアミノ酸配列自体である一方で、ペプチド分子の二次構造は、螺旋、拡張された鎖、またはβ−ひだ状のシート等の規則的な、ポリペプチド鎖の直線状セグメントの規則的な局所構造を指す。ペプチドの三次構造は、分子の全体のトポロジーを指し、例えば、ポリペプチド鎖内に折りたたみを生じる。Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties,第2版(W.H.Freeman and Company,New York,1993)を参照のこと。各構造レベルはペプチド分子の性質および生物学的活性に対して重要であるが、二次構造および三次構造がせん断力に対して特に敏感である。せん断力にさらされた場合、ペプチド分子の二次および/または三次構造は不可逆的に変更され、潜在的に生物学的活性の損失を生じ得る。もちろん、一次構造(すなわちアミノ酸配列)は、ペプチド分子が十分なせん断力の影響を受ける場合、破壊または遮断され得る。
【0048】
本明細書中で使用される用語「流体」は、非固体または少なくとも部分的にガス状および/または流体である物質を指す。流体は、最小的に、部分的に、または十分に溶媒和され、分散され、あるいは懸濁化された固体を含み得る。流体の例は、制限なしで、水性液体(水自体および塩水を含む)、および有機溶媒などの非水性液体を含む。本明細書中で使用されるように、用語「流体」は、インクは着色剤を含まなければならず、気体ではあり得ないという点で用語「インク」同じ意味ではない。
【0049】
用語「近い」は、集束された音響放射の焦点から小滴が出射されるべき流体の表面までの距離を指すために使用される。距離は、流体に向けられた集束された音響照射が流体表面からの小滴出射を生じるようになっているべきである。当業者は、簡単かつ日常的な実験を用いて任意の所与の流体のための適切な距離を選択することが可能であるようになっているべきである。しかし、一般的には、音響放射の焦点と液体表面との間の適切な距離は、流体内の音速の波長の約1〜約15倍の範囲、より典型的には、その波長の約1〜約10倍の範囲、好ましくは、その波長の約1〜約5倍の範囲にある。
【0050】
用語「集束手段」および「音響集束手段」は、光学レンズのように動作する音響エネルギー源とは別のデバイスまたは音響エネルギー源の空間構成のいずれかによって、音波を焦点位置において集束させ、構成的および破壊的界面によって焦点における音響エネルギーの集束に影響を与えるための手段である。集束手段は、曲がった表面を有する固体部材と同様に簡単であり得るか、またはフレネルレンズにおいて見られるような複雑な構造を含み得、フレネルレンズは、音響放射を向けるために回折を利用する。さらに適切な集束手段は、当業者に公知であり、例えば、Nakayasuらへの米国特許第5,798,779号およびAmemiyaら(1997)による、Proceedings of the 1997 IS&T NIP13 International Conference on Digital Printing Technologies Proceedings 698〜702頁において説明されたような位相化された(phased)アレイの方法を含む。
【0051】
本明細書中で使用されたような用語「リザブワー」は、流体を保持または含むためのレセプタクルまたはチャンバを指す。従って、リザブワー内の流体は、自由表面(すなわち小滴が表面から出射することを可能にする表面)を必然的に有する。リザブワーは、流体が束縛される基板表面上のサイトにもあり得る。
【0052】
本明細書中で使用されたような用語「基板」は、1以上の流体が沈着され得る表面を有する任意の物質を指す。基板は、例えばウエハ、スライド、ウエルプレート、膜等の任意の複数の形態で構成され得る。さらに、基板は、特定の流体の沈着に対して必要とされ得るように、多孔質であってもよいし、非多孔質であってもよい。適切な基板物質は、例えば、以下に限定されないが、典型的には固相化学合成に使用する支持体を含む。例えば、適切な基板物質は、ポリマー物質(例えば、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロライド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ化ポリビニリデン、ポリカーボネート、ジビニルベンゼンスチレンベースのポリマー等)、アガロース(例えば、Sepharose(R))、デキストラン(例えばSephadex(R))、セルロースポリマーおよび他の多糖類、シリカおよびシリカベースの物質、ガラス(特に制御されたポアガラス、すなわち(「CPG」))および機能化されたガラス、セラミックス、ならびに、表面コーティングで処理されたこのような基板、例えば、マイクロポーラスポリマー(特にニトロセルロース等のセルロースポリマー)、マイクロポーラス金属化合物(特にマイクロポーラスアルミニウム)、抗体結合タンパク(Pierce Chemical Co.,Rockford ILから入手可能である)、ビスフェノールAポリカーボネート等が挙げられる。
【0053】
特に関心のある基板は多孔質であり、上記に暗示したように、CPGスライドを含むコーティングされていない多孔質ガラススライドと、例えば、アミノシランまたはポリ−L−リシンコーティング等のポリマーコーティングを用いてコーティングされることにより、多孔質ポリマー表面を有する多孔質ガラススライドと、多孔質コーティングを用いてコーティングされた非多孔質ガラススライドとを含む。この多孔質コーティングは、セルロースポリマー(例えばニトロセルロース)またはポリアクリルアミドから構成され得るような多孔質ポリマーコーティング、または、多孔質金属コーティング(例えばマイクロポーラスアルミニウムから構成される)であり得る。多孔質表面を有する商業的に入手可能な基板の例は、Schleicher&Schuell,Inc(Keene NH)から入手可能なFluorescent Array Surface Technology(FASTTM)スライドを含む。この基板は、10〜30μmの厚さの、単位表面積当たりの利用可能な結合面積を実質的に増加させる流体浸透可能なニトロセルロースを用いてコーティングされる。他の商業的に入手可能な多孔質基板は、Eppendorf AG(Hamburg、Germany)から現在入手可能なCREATIVECHIP(R)浸透可能なスライドと、試薬が全体の構造の細孔およびチャンネルに流れ、それらを貫通することを可能にする秩序化された高度多孔質構造によって「三次元」ジオメトリを有する基板とを含む。このような基板は、商標名「Flow−Thru Chip」としてGene Logic Inc.から入手可能であり、Steelらによる、Microarray Biochip Technology(BioTechniques Books,Natick,MA,2000)5章に説明される。
【0054】
「多孔質基板」または「多孔質表面を有する基板」の場合のような用語「多孔質」は、約1%〜約99%の範囲の空隙率(空孔百分率)、好適には、約5%〜約99%、より好適には、約15%〜約95%の範囲であり、そして約100Å〜約1mm、典型的には約500Å〜約0.5nmの平均細孔サイズをそれぞれ有する基板または表面を指す。
【0055】
用語「浸透不可能な」は、水または他の流体が貫通できないことを意味する従来の意味で使用される。本明細書中で使用された用語「浸透可能な」は、「浸透不可能」ではないことを意味する。従って、「浸透可能な基板」および「浸透可能な表面を有する基板」は、それぞれ水または他の流体を用いて浸透することができる基板または表面を指す。
【0056】
上述の支持物質は、従来使用された基板を代表とするが、基板が任意の生物学的、非生物学的、有機、および/または無機物質を実際に含み得、種々の任意の物理形態(例えば、粒子、鎖、沈殿、ゲル、シート、チューブ、球状、コンテナ、キャピラリ、パッド、スライス、フィルム、プレート等)であり得、さらに任意の所望の形状(例えば、ディスク、矩形、球形、円形等)を有し得ることが理解されるべきである。基板表面は、平坦であってもよいし、平坦でなくてもよい(例えば、表面は、隆起または圧縮された領域を含み得る)。基板は、化合物を基板表面に共有結合的にリンクさせる反応性機能性をさらに含むかまたはこの機能性を含むように誘導され得る。これらは、広く公知であり、例えば、反応性Si−OH基を含む二酸化ケイ素支持、ポリアクリルアミド支持、ポリスチレン支持、ポリエチレングリコール支持等を含む。
【0057】
本明細書中で使用されるように用語「表面改変」は、基板表面の1つ以上の化学および/または物理的特性、あるいは基板表面の選択されたサイトまたは領域を変更させる、添加プロセスまたは除去プロセスによる表面の化学的および/または物理的変更を指す。例えば、表面改変は、(1)表面の濡れ特性を変更させる、(2)表面を官能基化させる(すなわち、表面の官能基を提供、改変、または置換する)、(3)表面を脱官能基化する(すなわち、表面の官能基を除去する)(4)他の方法で、表面の化学組成を変更する(例えば、エッチングによって)、(5)表面粗さを増大または低減させる、(6)基板上にコーティングを提供する(例えば、表面の濡れ特性とは異なる濡れ特性を示すコーティング)、および/または(7)基板上に粒子を沈着させることを含み得る。
【0058】
「選択」または「選択的に」は、以後説明される環境が発生してもよいし、発生しなくてもよく、それにより、説明は、その環境が発生する例およびその環境が発生しない例を含むことを意味する。
【0059】
用語「実質的には」は、例えば、「アレイの実質的に全ての分子」というフレーズでは、アレイの分子の少なくとも90%、好適には少なくとも95%、より好適には少なくとも99%、および最も好適には少なくとも99.9%を指す。用語「実質的に」の他の使用は、類似の定義を含む。
【0060】
従って、本発明は複数の個々のリザブワーからの流体小滴を音響的に生成するための方法およびデバイスを提供する。すなわち、集束された音響エネルギーは、流体の自由表面(例えば、リザブワーまたはウェルプレートにおいて)から、一般に基板表面上の離散サイトに向けて単一の流体小滴を出射するために用いられ、非常に正確で反復可能な小滴サイズおよび速度を可能にする。このデバイスは、流体を含むようにそれぞれが適応された複数のリザブワーと、音響放射を生成するための音響放射発生器および各リザブワーにおける流体表面内部および十分近くの焦点において生成された音響放射を集束して、流体表面からの小滴の出射を生じるための集束手段とを含むイジェクタと、および各リザブワーのそれぞれに音響結合関係でイジェクタを配置させるための手段とを含む。
【0061】
このような集束音響出射システムの使用は、一般的に基板表面の1cm当たり約10〜約250,000アレイの要素(例えば表面に結合されたオリゴマー)の範囲の密度、典型的には基板表面の1cm当たり約400〜約100,000アレイの要素の範囲の密度を有するアレイの調製を可能にする。
【0062】
しかし、本発明の方法は、はるかに高密度アレイ(すなわち、基板表面の1cm当たり少なくとも約100,000アレイ要素から構成されたアレイまたは基板表面の1cm当たり約1,500,000〜4,000,000要素の範囲を有するアレイ)の調製を同様に可能にすることが強調されなければならない。これらの高密度アレイは、非多孔性表面上で調製され得るが、組み合わせられたアレイの製造における集束された音響エネルギー技術を用いる重要な利点は多孔性表面を有する基板および浸透可能な基板が使用され得ることである。従来のアレイ製造方法は、多孔性または浸透可能な表面上の高密度アレイの調製を可能にしなかった。なぜなら、従来のスポッティングプロセスは本発明の音響沈着方法と比べてほとんど正確ではなく、従来のプロセスはまた、より大きな小滴容量を必要とするためである。従って、従来のアレイ製造方法は、多孔性表面上の低密度アレイ、または非多孔性表面上の高密度アレイの調製に制限されてきた。例えば、Southernらへの米国特許第6,054,270号を参照のこと。次いで、アレイを製造する従来の方法とは対照的に、本発明の音響出射プロセスは、非常に小さい小滴の非常に正確な沈着、ならびに、小滴サイズおよび小滴速度の一貫性を可能にする。非常に高いアレイ密度が高多孔度で浸透可能な表面を用いて達成され得る。より詳細には、本発明の音響出射方法が、1pLのオーダーの量を有する小滴を沈着させることによって、2μmの解像度を可能にする高精細度デジタルスキャナを用いて読み込むことができる高密度アレイを製造するために使用されて、直径約18μmの沈着されたスポットを生じ得る。超高密度アレイに対して、典型的には、約0.03pL未満より小さい小滴量が必要である(0.025pLのオーダーの量を有する小滴の沈着が直径約4.5μmの沈着されたスポットを生じる)。270’特許に説明されたような化学的または物理的手段を用いて沈着された小滴の局在化は不必要である。なぜなら、音響出射は、正確に配向された微小な小滴が特定のサイトに正確に沈着されることが可能となるためである。
【0063】
図1は、本発明のデバイスの実施形態を簡略化された断面図で示す。本明細書で参照された全図面に関して、同様の部分は同様の参照符号によって参照されるが、図1は縮尺通りではなく、所定の寸法が表示の明瞭性のために誇張され得る。デバイス11は、複数のリザブワー(すなわち13で示される第1のリザブワーおよび15で示された第2のリザブワーを有する少なくとも2つのリザブワー)を含む。各リザブワーは流体表面を有する流体を含むように適応される。例えば、第1の流体14および第2の流体16は、17および19で示された流体表面をそれぞれ有する。流体14および16は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。示されたように、リザブワーは、実質的に音響的に区別不可能であるように実質的に同一の構成であるが、同一の構成が必要であるわけではない。リザブワーは別個の取り外し可能な構成要素として示されるが、所望ならば、プレートまたは他の基板内に固定され得る。例えば、複数のリザブワーは、ウエルプレート内の個々のウエルを含み得るが、必ずしもアレイ内に配置される必要はない。示されるように、リザブワー13および15のそれぞれは、好ましくは軸対称であり、円形リザブワーベース25および27から上方に延びて開口部29および31それぞれで終端する垂直壁21および23を有するが、他のリザブワー形状が使用され得る。各リザブワーベースの物質および厚さは、音響放射がリザブワーベースを貫通してリザブワー内に含まれた流体に伝達され得るようにするべきである。
【0064】
デバイスはまた、音響放射を生成するための音響放射発生器35と、小滴が流体表面の近くで出射されるべき流体内の焦点において音響放射を集束するための集束手段37から構成された音響イジェクタ33とを含む。図1に示されるように、集束手段37は、音響放射を集束するための凹面表面39を有する単一の固体部含み得るが、集束手段は以下に説明されたように他の態様で構成され得る。従って、音響イジェクタ33がリザブワー13および15に(それにより流体14および16に)それぞれ音響的に結合した場合、音響イジェクタ33は、流体表面17および19のそれぞれから流体の小滴を出射するように音響放射を生成および集束するように適応される。音響放射発生器35および集束手段37は、単一のコントローラによって制御された単一のユニットとして機能し得るか、またはこれらは、デバイスの所望の性能に依存して独立して制御され得る。典型的には、単一のイジェクタ設計は、複数のイジェクタ設計よりも好ましい。なぜなら、小滴配置の精度、ならびに小滴の大きさおよび速度の一貫性が単一のイジェクタを用いてより容易に達成されるからである。
【0065】
当業者に理解されるように、任意の種々の集束手段は、本発明と共に使用され得る。例えば、1つ以上の曲がった表面が使用されて、音響放射を流体表面の近くの焦点に配向し得る。1つのこのような技術は、Loveladyらへの米国特許第4,308,547号に説明される。曲がった表面を有する集束手段は、Panametrics Inc.(Waltham,MA)によって製造されたような商業的に入手可能な音響トランスデューサの構成に組み込まれてきた。さらに、フレネルレンズは、物体面から所定の焦点距離における音響エネルギーを向けるために当業者に公知である。例えば、Quateらによる米国特許第5,041,849号を参照のこと。フレネルレンズは、レンズに関して放射状に変動する回折角度において所定の回折次数に音響エネルギーの実質的な部分を回折する放射状位相プロフィールを有し得る。回折角は、所望の物体面上の回折次数内部にある音響エネルギーを集束するように選択されるべきである。
【0066】
イジェクタ33を各個々のリザブワーに従って、リザブワー内の流体に音響的に結合させる複数の方法もまた存在する。一つのこのようなアプローチは、例えば、Loveladyらへの米国特許第4,308,547号に説明されたような直接接触を介して行われる。セグメント化された電極を有する半球状の結晶から構成された集束手段は、出射されるべき液体に沈められる。上述の特許は、集束手段が液体の表面においてまたは液体の表面の下に位置決めされ得る。しかし、集束手段を流体に音響的に結合するこのアプローチは、複数のコンテナまたはリザブワにおいてイジェクターが異なる流体を出射するために用いられる場合に望ましくない。相互汚染を避けるために集束手段の反復洗浄が要求されるからである。この洗浄プロセスは、必然的に各小滴出射イベントの間の移行時間を長くする。さらにこのような方法では、流体が各コンテナから除去されるにつれて、流体がイジェクタに付着し、それにより高価なまたは貴重であり得る物質を浪費する。
【0067】
従って、好適なアプローチは、イジェクタの任意の部分(例えば、集束手段)と接触することなく、出射されるべき任意の流体を用いて、イジェクタをリザブワーおよびリザブワー流体に音響的に結合させることである。この目的のために、本発明は、制御され、そしてリザブワーにおける流体のそれぞれと結合する繰り返し可能な音響結合によってイジェクタを位置決めして、イジェクタを流体に沈めることなくリザブワーから小滴を出射するイジェクタ位置決め手段を提供する。これは、典型的には、イジェクタと各リザブワーの外部表面との間の直接または間接接触を含む。イジェクタを各リザブワーに音響的に結合させるために直接接触が使用される場合、直接接触が効率的な音響エネルギー伝達を確実にするように全体的に適することが好ましい。すなわち、イジェクタおよびリザブワーは、接触を係合させるために適応された対応する表面を有するべきである。従って、音響結合がイジェクタとリザブワーとの間で集束手段を介して達成される場合、リザブワーが集束手段の表面形状に対応する外表面を有することが望ましい。適応接触がないと、音響エネルギー伝達の効率および精度が妥協され得る。さらに、多くの集束手段が曲がった表面を有するため、直接接触アプローチは、特別に形成された逆表面を有するリザブワーの使用を必要とし得る。
【0068】
最適には、音響結合は、図1Aに示されるようにイジェクタとリザブワーのそれぞれとの間で間接接触を介して達成される。この図では、音響結合媒体41は、イジェクタ33とリザブワー13のベース25との間に配置され、イジェクタおよびリザブワーは互いに所定の距離で配置される。音響結合媒体は音響結合流体であり、好適には、音響集束手段37および各リザブワーの両方に適合接触する音響的な均一物質であり得る。さらに、流体媒体が、流体媒体自体ではなく異なる音響特性を有する物質が実質的にないことを確実にすることが重要である。示されるように、第1のリザブワー13は、音響集束手段37に音響的に結合され、それにより音響波が音響放射発生器によって生成され、集束手段37によって音響結合媒体41に配向され、それにより音響放射をリザブワー13に伝達する。
【0069】
動作時にデバイスのリザブワー13および15は、図1に示されるようにそれぞれ第1および第2の流体14および16で満たされる。イジェクタとリザブワーとの間で音響結合媒体41を介して音響結合を達成するために、音響イジェクタ33は、リザブワー13の下方に示されたイジェクタ位置決め手段43によって位置決め可能である。基板45は上記のように位置決めされ、第1のリザブワー13に隣接し、図1に示された下側の表面51として基板の一表面がリザブワーと対向し、リザブワー内の流体14の表面17に実質的に平行である。一旦、イジェクタ、リザブワーおよび基板が適切な位置調製されていると、音響放射発生器35が、第1のリザブワーの流体表面17の近くの焦点47に集束手段37によって配向される音響放射を生成するように活性化される。結果として、小滴49は、基板の下側表面51上の設計されたサイト上に流体表面17から出射される。出射された小滴は、接触の後に基板上で固化することによって基板表面上に保持され得る。このような実施形態において、低い温度(すなわち接触の後に小滴固化を生じる温度)に基板を維持することが必要である。あるいは、またはさらに小滴内の分子部分は、接触の後に吸着、物理固定化、または共有結合によって基板表面に結合する。
【0070】
次いで、図1Bを参照すると、基板位置決め手段50は、第2の設計されたサイトにおいてリザブワーからの小滴を受け取るためにリザブワー15を介して基板45に再位置決めする。また図1Bは、イジェクタ33がリザブワー15の下にあるイジェクタ位置決め手段43によって再位置決めされたことを示し、音響結合媒体41によってリザブワーに音響的に結合される。図1Bに示されるように、一旦適切に位置調製されると、イジェクタ33の音響放射発生器35は、次いで集束手段37によって流体表面19の近くの流体16内部の焦点に配向される音響放射を生成し、それにより、小滴53を基板上に出射するように活性化される。このような動作は、パターン(例えば、アレイ)を基板表面51に形成するために、リザブワーからの複数の流体を出射するためにどのようにして本発明のデバイスが使用され得ることを示すことが明らかであるべきである。デバイスが基板表面の同じサイト上の1つ以上のリザブワーから複数の小滴を出射するように適応され得ることが同様に明らかであるべきである。
【0071】
別の実施形態では、デバイスがウエルプレート間の流体の転送を可能にするように構成され、この場合、基板は、基板ウエルプレートを含み、流体を含むリザブワーは、リザブワーのウエルプレートにおける個々のウエルである。図2は、このようなデバイスを示し、リザブワーウエルプレート12における4つの個々のウエル13、15、73、および75は、出射されるべき流体を含むための流体リザブワーとして機能し、基板は、55、56、57、および58で示された4つの個々のウエルのより小さなウエルプレート45を含む。図2Aは、リザブワーウエルプレートおよび基板ウエルプレートを上面図で示す。示されるように、各ウエルプレートは、ツーバイツーアレイに配置された4つのウエルを含む。図2Bは、本発明のデバイスを示し、リザブワーウエルプレートおよび基板ウエルプレートがウエル13、15および55、57それぞれに沿った断面図を示す。図1に示されるように、リザブワーウエル13および15のそれぞれは、17および19でそれぞれ示された流体表面を有する流体14および16を含む。リザブワーウエルプレートのウエルの物質および設計は、図1に示されたリザブワーと同様である。例えば、図2Bに示されたリザブワーウエルは、実質的に音響的に区別不可能であるように実質的に同一の構成である。同様に本実施形態では、リザブワーのベースは、リザブワー内に含まれた流体にリザブワーを通る音響放射の効率的な伝達を可能にするような物質および厚さである。
【0072】
図2のデバイスはまた、図1に示されたイジェクタと同様の構成を有する音響イジェクタ33を含む。イジェクタは、音響生成手段35および集束手段37から構成される。図2Bは、間接的な接触を介してリザブワーウエルに音響的に接続されたイジェクタを示し、音響結合媒体41は、イジェクタ33とリザブワーウエルプレート12との間(すなわち、音響集束手段37の曲がった表面39と第1のリザブワーウエル13のベース25との間)に配置される。示されたように、第1のリザブワーウエル13は、音響集束手段37に音響的に結合され、一般的に上方向に生成された音響放射は、集束手段37によって音響結合媒体41に向けられ、次いで、音響放射をリザブワーウエル13に伝達する。
【0073】
動作時では、各リザブワーウエルは、好適には異なる流体で満たされる。示されたように、デバイスのリザブワーウエル13および15は、図1のように第1の流体14および第2の流体16でそれぞれ満たされ、流体表面17および19をそれぞれ形成する。図2Aは、音響結合媒体41を介してリザブワーウエルとの音響結合を達成するために、イジェクタ33がイジェクタ位置決め手段43によってリザブワーウエル13よりも下に位置決めされることを示す。基板ウエルプレート45の第1の基板ウエル55は、第1のリザブワーウエルから出射された小滴を受け取るために第1のリザブワーウエル13の上に位置決めされる。一旦、イジェクタ、リザブワー、および基板が適切に位置調製されると、音響放射発生器は、集束手段によって流体表面17近くの焦点47に集束された音響波を生成するように活性化される。結果として、小滴49は、流体表面17から基板ウエルプレート45の第1の基板ウエル55に出射される。小滴が、接触の後、基板ウエルプレートが維持される低温で基板ウエルプレート上で固化されることによって、基板ウエルプレート内で保持される。すなわち、好ましくは、基板ウエルプレートは、冷却手段(図示せず)に関連付けられ、接触の後の小滴固化を生じる温度において基板表面を維持する。
【0074】
次いで、図2Cに示されるように、基板ウエルプレート45は、基板位置決め手段50によって再位置決めされ、それにより基板ウエル57が、基板ウエルから小滴を受け取るためにリザブワーウエル15を介して直接的に配置される。図2Cはまた、イジェクタ33が音響結合媒体41を介してイジェクタおよびリサーバを音響的に結合させるようにリザブワーウエル15より下のイジェクタ位置決め手段によって再位置決めされている。基板ウエルプレートおよびリザブワーウエルプレートが異なる大きさであるため、イジェクタ位置決め手段の移動と基板ウエルプレートの移動との間で識別されず、対応があるのみである。図2Cに示されたように、一旦適切に位置調製されたとすると、イジェクタ33の音響放射発生器35は、次いで焦点手段37によって流体表面19近くの焦点に向けられる音響波を生成するように活性化され、小滴53は、基板ウエルプレートの第2のウエル上に出射される。このような動作は、使用されたデバイスが1つのウエルプレートから別の異なるサイズのプレートに複数の流体を伝達するために使用されたデバイスがどのようにして使用されかを示すことが明らかであるべきである。伝達のこのタイプは、イジェクタおよび基板の両方が連続した運動であっても実行され得ることを当業者が認識する。リザブワー、ウエルプレート、および/または基板の種々の組み合わせが、流体伝達において係合する利用されたデバイスを用いて使用され得ることがさらに明らかであるべきである。さらなる流体伝達(例えば、アレイ沈着)のためにリザブワーを配置する前に音響出射を介して流体で満たされ得ることがなおさらに明らかであるべきである。さらに、リザブワー内の流体がリザブワー内で合成され得、この合成は、少なくとも1つの合成工程における音響出射流体伝達の使用を含む。
【0075】
上述のように、個々の(例えば除去可能な)リザブワーまたはウエルプレートは、出射されるべき流体を含むように使用され得る。ウエルプレートのリザブワーまたはウエルは、好適には、互いに実質的に音響的に区別不可能である。あるいは、イジェクタが出射されるべき流体に沈められることを意図しない場合、リザブワーまたはウエルプレートは、イジェクタからの音響放射が出射されるべき流体の表面に伝達されることを可能にするのに十分な音響伝達特性を有しなければならない。典型的には、これは、音響放射が受理不可能な消失なしで伝えることを可能にするのに十分薄いリザブワーまたはウエルベースを提供することを含む。さらに、リザブワーの構成において使用された物質は、リザブワーに含まれた流体と互換可能でなければならない。従って、リザブワーまたはウエルがアセトニトリル等の有機溶媒を含むことを意図する場合、アセトニトリル中で溶解または膨張するポリマーは、リザブワーまたはウエルプレートを形成する際に使用するため適さない。水ベースの流体に対して、複数の物質は、リザブワーの構成のために適し、この複数の物質は、以下に限定されないが、二酸化ケイ素および酸化アルミニウム等のセラミックス、ステンレス鋼およびプラチナ等の金属、ポリエステルおよびポリテトラフルオロエチレン等のポリマーを含む。使用されたデバイスとの使用に適する多くのウエルプレートが入手可能であり、例えば、ウエルプレート当たり96、384、または1536ウエルを含み得る。使用されたデバイスにおける使用のための適切なウエルプレートの製造は、Corning Inc.(Corning,New York)およびGreiner America,Inc.(Lake Mary,Florida)を含む。しかし、このような入手可能なウエルプレートの利用可能性は、少なくとも約10,000のウエル、100,000以上のウエルを含むカスタムメイドウエルプレートの製造および使用を除外しない。アレイ形成用途に対して、約100,000〜約4,000,000のリザブワーが使用され得ることが期待される。さらに、イジェクタとリザブワーまたはリザブワーウエルのそれぞれとを位置調製するために必要な移動および時間の量を低減するために、各リザブワーの中心が約1cm以下、好ましくは約1mm以下、そして最適には、隣接するリザブワーの中心から約0.5mm以下に配置されることが好ましい。
【0076】
さらに、デバイスが、実質的に任意のタイプおよび所望された量の流体を出射するように適応され得る。この流体は、水性および/または非水性であり得る。流体の例は、以下に限定されないが、水自体、水和されたイオンおよび非イオン性溶液を含む水性流体と、有機溶媒と、脂質液体と、混合できない流体の懸濁液と、液体内の固体の懸濁液またはスラリーとを含む。本発明は、高温で使用するために容易に適応されるために、液体金属のような流体、セラミック物質、およびガラスが使用され得る。Oefteringらによる米国特許第5,520,715号および米国特許第5,722,429号は、単一のリザブワーを使用し、集束を維持するために追加して構造を形成するための液体金属のための音響出射の使用を説明する。Horineらによる米国特許第6,007,183号は、液体金属の小滴を出射する音響エネルギーの使用に関する別の特許である。このような物質の微細な小滴を生成する能力は、圧電性システムが高温で部分最適的に実行する限り、圧電技術に対して著しく対照的である。さらに、本発明の技術の使用による可能な精度のために、デバイスは、約100ナノリットル以下の流体、好適には、10ナノリットル以下の流体を含むように適応された小滴をリザブワーから出射するために使用され得る。所定の場合、イジェクタは、約1〜約100ナノリットルの流体を含むように適応されたリザブワーから小滴を出射するように適応され得る。これは、出射されるべき流体が貴重なまたは高価な生体分子を含む場合、特に有用である。約1ピコリットル以下の体積(例えば、約0.025pL〜約1pLの体積を有する)を有する小滴を出射することが望ましくあり得る。
【0077】
デバイスの種々の構成要素が基板上にアレイを形成するために個々の制御または同期化を必要とし得ることが理解される。例えば、イジェクタ位置決め手段は、基板表面上に調製されるべきアレイに関連付けられた所定の配列の各リザブワーから小滴を出射するように適応されている。同様に、イジェクタに関して基板表面を位置決めするための基板位置決め手段は、基板表面を位置決めするように適応され、基板上のパターンまたはアレイにおいて小滴を受け取り得る。位置決め手段(すなわち、イジェクタ位置決め手段および基板位置決め手段)のいずれか一方あるいは両方は、例えば、モータ、レバー、滑車、ギア、これらの組み合わせ、あるいは当業者に公知の他の電気機械または機械的手段から構成され得る。適切なアレイ形成を確実にするために基板の移動、イジェクタの移動、およびイジェクタの活性化との間の対応があることを確実にすることが好ましい。
【0078】
本発明のデバイスは、1分当たり少なくとも約1,000,000の小滴の速度で同じリザブワーから小滴の出射を可能にし、1分当たり少なくとも約100,000の小滴の速度で異なるリザブワーから小滴の出射を可能にする。さらに、現在の位置決め技術は、一つのリザブワーから別のリザブワーへ速やかにそして制御された態様で移動するためのイジェクタ位置決め手段を可能にし、それにより、異なる流体の高速かつ制御された出射を可能にする。すなわち、現在の商業的に入手可能な技術は、イジェクタを一つのリザブワーから別のリザブワーに移動させることを可能にする。この技術は、高性能位置決め手段に対して約0.1秒未満および通常の位置決め手段に対して約1秒未満で各リザブワーにおいて繰り返し可能で制御可能な音響結合を可能にする。カスタム設計されたシステムは、約0.001秒未満で繰り返し可能な制御された音響結合をともなって、イジェクタを一つのリザブワーから別のリザブワーに移動させることを可能にする。カスタム設計されたシステムを提供するために、2つの基本的な運動の種類(パルスおよび連続)があることに留意することが重要である。パルス運動は、音響エネルギーを放出する位置にイジェクタを移動させる離散工程と、音響エネルギーを放出する工程と、0.1秒未満で各リザブワーにおいて繰り返し可能で制御された音響結合を可能にする方法と共に高性能位置決め手段を用いて、そのイジェクタを次の位置に再度移動させる工程とを含む。一方で連続運動設計は、イジェクタおよびリザブワーを連続的に移動させるが、同一の速度ではなく、運動の間の出射を提供する。パルス幅は非常に短いので、このタイプのプロセスは、10Hzを超えるリザブワー遷移、および1000Hzをも超えるリザブワー遷移が可能である。
【0079】
デバイスはまた、所定の性能向上特性を含み得る。例えばデバイスは、例えば出射された小滴が基板に付着することを確実にするために基板表面の温度を低下させるための冷却手段を含み得る。冷却手段は、流体が基板表面に接触した後で流体が部分的にまたは好適に実質的に固化することを可能にする温度で基板表面を維持するように適応され得る。水性流体の場合、冷却手段は、基板表面を約0℃に維持する能力を有するべきである。さらに、音響エネルギーの流体のリザブワーへの繰り返された適用は、流体の加熱を生じ得る。もちろん加熱は、粘度、表面張力、および密度等の流体特性の望ましくない変化を生じ得る。従って、デバイスは、一定の温度でリザブワー内の流体を維持するための手段をさらに含み得る。このような温度を維持する手段の設計および構成は、当業者に公知であり、例えば、加熱素子、冷却素子、またはこれらの組み合わせ等の構成要素を含み得る。多くの生体分子沈着用途に対して、生体分子を含む流体が、一定の温度から約1℃または2℃よりも高く逸脱することなく一定の温度で維持されることが一般的に望ましい。さらに、特に熱に敏感な生体分子に対して、流体は、流体の融点よりも約10℃を超えない温度(好ましくは、流体の融点よりも約5℃を超えない温度)に維持されることが好ましい。従って、例えば、生体分子を含む流体が水性である場合、出射の間、約4℃に流体を維持することが最適であり得る。
【0080】
いくつかの用途に対して、特に溶融金属または他の物質の音響沈着を含む用途に対して、加熱素子は、溶融物質の融点よりも低い温度であるが、周囲の温度よりも高い温度で基板を維持するために提供され、それにより冷却の急速さの制御に影響を与え得る。従って、冷却の急速さが制御され得、異なる温度で冷却された溶融物析出合金等のコンビナトリアル組成の性質に関する実験を可能にする。例えば、一般的に準安定物質が急速冷却および他の強い不可逆条件を用いて形成される可能性があることが公知である。異なる冷却またはクエンチ速度によって物質を生成するこのアプローチは、コンビナトリアルクエンチと呼ばれ、溶融物質の音響出射の間で基板の温度を変更することによって影響され得る。異なる速度で溶融状態から固化されたコンビナトリアル組成を評価するより簡便な方法は、異なる温度で維持された基板上に溶融状態で音響的に出射された公称組成の同一のパターンを有する複数のアレイを生成することによるものである。
【0081】
いくつかの場合、基板表面は、基板上のアレイの形成の前に改変され得る。表面改変は、官能基化または脱官能基化、平滑化または粗面化、表面伝導性の変更、コーティング、デグラデーション、パッシベーション(passivation)、または表面化学組成または物理特性の他の変更を含み得る。好適な表面改変方法は、表面の濡れ特性を変更することを含み、例えば、指定された領域内部の表面上に出射された小滴の制限、または出射された小滴に含まれた分子部分の表面付着のための動力学の向上を容易にする。基板表面の濡れ特性を変更するための好適な方法は、基板表面にアレイを形成するために、流体の音響出射の前に基板表面の指定された各サイトに適切な表面改変流体の小滴の沈着を含む。このように、音響的に出射された小滴の「拡散」が最適化され、保証されたスポットサイズ(すなわち、直径、高さ、全体の形状)が一貫性を有し得る。本方法を実現する一つの方法は、イジェクタを、表面改変流体を含むモディファイアーリザブワーに音響的に接続し、次いで上記で詳細に示されたようにイジェクタを活性化し、基板表面上の指定されたサイトに表面改変流体の小滴を生成および出射することを含む。本方法は、さらに指定されたサイトで表面改変流体を沈着することが望ましい場合に繰り返される。本方法は、複数の用途に有用である。本方法は、以下に限定されないが、オリゴマーをスポッティングして、基板表面上にアレイを形成するか、またはインサイチュでアレイオリゴマーを合成することを含む。上述のように、修正され得る表面の他の物理特性は、熱特性および電気伝導性を含む。
【0082】
図3は、図1に示されたデバイスと同様であるが、流体表面61を有する表面改変流体60を含むモディファイアーリザブワー59を含むデバイスを用いて、ダイマーが基板上に合成される上述の方法の特定の実施形態を簡略化された断面図で概略的に示す。図3Aは、ダイマーが合成されるべき基板45の表面51上の指定されたサイトの濡れ特性を変更するように選択された表面改変流体60の小滴63の出射を示す。イジェクタ33は、イジェクタ位置決め手段43によって、音響結合媒体41を介してリザブワーに音響接続を達成するためにモディファイアーリザブワー59の下に位置決めされる。基板45は、指定されたサイトにおいて表面改変流体60の小滴の音響沈着を可能にする位置においてモディファイアーリザブワー59の上方に位置決めされる。一旦、イジェクタ33、モディファイアーリザブワー59、および基板45が適切に位置決定されると、音響放射発生器35は、流体表面61から基板の下側表面51上の指定されたサイトに表面改変流体60の小滴63の出射を可能にする態様で、集束手段37によって配向される音響放射を生成するように活性化される。一旦、小滴63が基板表面51に接触すると、小滴は、基板表面の領域を改変し、沈着された流体に関する領域の表面エネルギーの増加または減少を生じる。
【0083】
次いで、図3Bに示されるように、基板45は基板位置決め手段50によって再位置決めされ、それにより、小滴63によって改変された基板表面の領域がリザブワー13の上に直接配置される。図3Bはまた、イジェクター33がリザブワー13より下のイジェクタ位置決め手段によって位置決めされ、音響結合媒体41を介してイジェクタおよびリザブワーを音響的に結合させることを示す。一旦適切に位置決定されると、イジェクタ33は、小滴49を基板上に出射するように再度活性化される。小滴49は、第1のモノマー部分65(好ましくはヌクレオシドまたはアミノ酸等のような生体分子)を含み、これにより、基板表面との接触の後、生体分子が共有結合または吸着によって基板表面に結合する。
【0084】
次いで、図3Cに示されるように、基板に付着された第1のモノマー部分65を有するサイトがリザブワーからの小滴を受け取るためにリザブワー15の上に直接配置されるように、基板45が基板位置決め手段50によって再位置決めされる。図3Bはまた、音響結合媒体41を介してイジェクタおよびリザブワーを音響的に結合させるように、リザブワー15の下方にイジェクタ位置決め手段によって位置決めされることを示す。一旦適切に位置決定されると、イジェクタ33は、小滴53を基板上に出射するように再度活性化される。小滴53は、第1のモノマー部分65への結合に適応された第2のモノマー部分67を含み、典型的には、図3Dに示されたようにダイマーを生成するように共有結合の形成を含む。上述の工程は、所望の長さのオリゴマー(例えばオリゴヌクレオチド)を生成するように繰り返され得る。
【0085】
このように基板結合オリゴヌクレオチドを合成する際に使用された化学反応は、一般的に、核酸化学反応の分野で当業者に公知であり、および/または適切な文献および書物において説明された従来(now−conventional)技術を含む。例えば、DNA Microarrays:A Practical Approach,M.Schena,Ed.(Oxford University Press,1999)を参照のこと。すなわち、個々の結合反応は、オリゴヌクレオチドの合成および自動化されたオリゴヌクレオチド合成体(synthesizer)を用いて従来使用された標準条件で処理される。このような方法論は、例えば、D.M.Matteuciら(1980)へのTet.Lett.521:719、Caruthersらへの米国特許第4,500,707号、およびSouthernらへの米国特許第5,700,637号に説明される。
【0086】
あるいは、基板表面に付着させる前に、オリゴマーが合成され、上記で詳細に説明された集束された音響出射方法論を用いて表面上の特定のサイト上に「スポッティング」され得る。この場合もオリゴマーは、オリゴヌクレオチド、オリゴペプチド、または任意の他の生体分子(または非生体分子)オリゴマー部分であり得る。
【0087】
集束された音響エネルギーが著しい高精度を有する流体の極度に小さい量の使用および操作を可能にする限り、本発明は、種々の合成、半合成、または天然に存在する分子部分を含む高密度コンビナトリアルライブラリの調製に有用であることが当業者によって理解される。これは、効率的なスポット−スポット結合が保証されない点において、コンビナトリアルライブラリを調製する従来技術に対して著しく対照的である。さらに、圧電性ジェット技術が、高温が必要とされるために使用され得る流体に関して制限されるが、本発明は高温を必要とせず(加熱がいくつかの場合(すなわち高融点を有する流体)に必要であり得るが)、それにより、熱に敏感であるか、または可燃性であり得る流体を使用する可能性を考慮する。
【0088】
次いで、本発明の多くの改変が可能であることが明らかであるべきである。例えば、出射された小滴のそれぞれが分離されそして「最終的な」形態(例えば、上述のオリゴヌクレオチドをスポッティングする際)として沈着され得る。あるいは、またはさらに複数の出射された小滴が、上述のようにインサイチュで生体分子アレイを合成するために基板表面上に沈着され得る。アレイ合成に対して、種々の洗浄工程が小滴出射工程の間で使用され得ることが期待される。このような洗浄工程は、例えば、形態が洗浄流体に沈着された基板表面全体を沈める工程を含み得る。このプロセスの改変では、基板表面が実質的に同時に全形態を化学的に変更させる試薬を含む流体上に沈着され、例えば、さらなる結合反応が発生し得るサイトを提供するための基板表面上に既に沈着される生体分子形態を活性化および/または脱保護し得る。
【0089】
(ペプチドアレイ)
本発明の一実施形態は、オリゴペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質等のペプチド分子から構成されたペプチドアレイの製造に関する。第1のペプチド分子を含む第1の流体含有リザブワーは、音響イジェクタに音響的に結合される。以後、イジェクタは、リザブワー流体の表面に十分に近い焦点を有する音響放射を生成するように活性化され、それにより、リザブワーから基板表面上の指定されたサイトに向かって流体小滴の出射を生じる。次に、第2のペプチド分子を含む第2の流体含有リザブワーは、イジェクタに音響的に結合される。再度、イジェクタは、第2のリザブワーから基板表面上の第2の指定されたサイトに流体の小滴を出射するように活性化される。このプロセスは、小滴が複数のリザブワーのそれぞれから出射されるまで繰り返される。典型的には各小滴は、約1ピコリットル未満(例えば、0.02〜1pL)の体積を有し、非常に高密度でスポッティングを可能にする。もちろん、いくつかの場合、実質的により大きな体積の小滴をスポッティングすることが望ましくあり得る。
【0090】
一旦出射されると、各ペプチド分子は、基板表面上の特定の位置に付着される。付着は共有結合であってもよいし、非共有結合(例えば、イオン結合、水素結合、吸着または物理的な固定化)であってもよく、ペプチド分子と基板表面との間にリンカーを含んでもよいし、含まなくてもよい。例えば、ペプチドのカルボキシル末端は、アミン誘導基板表面上の遊離アミノ基に結合し、それによりアミド結合を生じる。逆に、ペプチド部分の内の一次アミノ基は、スクシンイミジルエステル基を介して表面に共有結合的に付着され得る。別の例として、抗体(商業的に入手可能なまたは抗体生成の標準的な技術を用いて)は、ペプチド分子に結合され、抗体結合タンパク質(例えば、IgGおよび/またはIgM抗体のFc部分に結合するタンパク質A、あるいは抗体の全てのクラスに結合されたタンパク質L、例えば、カッパ軽鎖を含む免疫グロブリン)によって官能基化された基板表面に付着され得るリンカーを提供し得る。ビオチン−ストレプトアビジン結合もまた企図される。
【0091】
もしあれば、リンカーは別の分子エンティティ(例えば、潜在的なリガンド)がペプチド分子に結合することを可能にするのに十分な長さを有するべきである。リンカーは、使用後(例えば、結合またはスクリーニングアッセイの終了後)に基板表面からペプチド分子の放出を可能にする開裂可能な可能サイトを含み得る。例えば、米国特許第4,775,619号、第5,118,605号、第5,258,506号、第5,367,066号、第5,380,833号、第5,580,731号、および第5,591,584号に説明されたように、選択可能に開裂可能なサイトは、酵素的に、化学的に、熱的に、または光分解的に開裂可能であり得る。上記特許に説明されたように、複数の試薬および方法が使用されて、化学試薬、制限酵素、または光分解を用いて開裂可能であるサイトを作成し得る。
【0092】
当業者に理解されるように、ペプチド分子の結合を容易にするために、いくつかの基板表面は、上記で暗示したように活性化処置を必要とし得る。任意の公知の処置が利用され得る。基板表面を活性化するための好適な処置方法の例は、臭化シアン、塩化トレシル(tresyl chloride)、またはN−ヒドキシロスクシンイミド等の活性化剤を用いる処置を含む。基板表面を活性化するための他の方法が使用され得る。
【0093】
当業者に理解されるように、ペプチド分子を含む流体が幾分粘性であり得る。有利にも、本方法は、ノズルを要求しないし、比較的粘性のある流体によって詰まるようになり得る部分を含まない。従って、本発明は、複数の流体の音響出射を可能にし、少なくとも1つの流体は、少なくとも約40センチポイズ(cP)の粘度を有する。さらに、少なくとも1つの流体が粘度100cP(1000cPでさえも)(絶対粘度)と同じくらい高い粘性を有する場合であっても、本方法は有効なままである。
【0094】
ペプチド分子の三次元構造(すなわち、二次構造および三次構造)が流体内で保存されることが好適である。ペプチド構造を保存するための好適な流体は、pHを維持することが可能な溶媒および試薬を含む。安定剤(例えばウシ血清アルブミン)等のさらなる成分も、必要であれば流体内に存在し得る。タンパク質含有流体のための適切な溶媒は当業者に周知であり、典型的には溶媒としての水およびpHを維持するための酸−塩基の共役対を含む。有機溶媒もまた利用され得る。pHを維持することが可能な適切な試薬は、例えば、N−2−アセトアミド−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、酢酸アンモニウムと、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−グリシン、N,N−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸(BES)、[ビス]−(2−ヒドロキシエチル)−イミノ]−トリス−(ヒドロキシメチル)メタン(BIS−トリス)、1,3−ビス−[トリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]−プロパン(BIS−トリス−プロパン)、3−(シクロヘキシルアミノ)−プロパンスルホン酸(CAPS)、2−(N−シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸)(CHES)と、グリシン、グリシンアミド、2−(N−モルフォリノ)エタンスルホン酸(MES)、3−(モルフォリノ)エタンスルホン酸(MOPS)、ピペラジン−N,N’−ビス−2−エタンスルホン酸(PIPES)、(N−[2−ヒドロキシエチル]−ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸])(HEPES)、3−{[トリス−(ヒドロキシメチル)−メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPS)、2−{[トリス−(ヒドロキシ−メチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)、N−{トリス−(ヒドロキシメチル−メチル]グリシン}(トリシン)、トリエタノールアミン、トリス−(ヒドロキシルメチル)−アミノメタン(TRIS)、ホウ酸、カコジル酸、燐酸カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせを含む。溶媒および/または安定剤の溶液はまた、表面の前処理の一部として利用され得るか、またはペプチド分子の構造を保存するためにペプチド分子の沈着後に適用され得る。
【0095】
別の実施形態では、ペプチドアレイは、複数のペプチド分子から構成されるペプチドアレイが提供される。各ペプチド分子は、選択可能な結合部分によって基板表面に付着される。せん断応力の徴候を示すペプチド分子は実質的に存在せず、ペプチド分子の実質的に全てが純粋であり(すなわち無傷)、基板表面の所定のサイトに結合される。代替の実施形態では、複数のペプチド分子から構成され、それぞれが選択可能な結合部分を介して基板表面に付着されたペプチドアレイが提供される。せん断応力の徴候を示すペプチド分子は実質的に存在せず、基板上の少なくとも一つの設計されたサイトが脂質物質を含む。ペプチドアレイは、ペプチド分子のコンビナトリアルライブラリであり得る(すなわち、各ペプチド分子が全ての他のペプチド分子とは異なるアレイ)。
【0096】
ペプチド化合物は、例えば、以下に限定されないが、酵素、モノクロナール抗体およびポリクロナール抗体、抗原、凝固モジュレータ、サイトカイン、エンドロフィン、ペプチジルホルモン、キニン、およびこれらの等価な構造的に同様の生物活性を有する等価物等の任意の薬理活性ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を含む。「構造的に等価な生物活性を有する等化物」は、同定された生物活性を有するペプチジル化合物と十分に同様の構造を有するペプチジル化合物を意味し、実質的に等価な治療効果を生成する。本明細書および添付された特許請求の範囲中で使用される場合、用語「タンパク質」、「ペプチド」、および「ポリペプチド」は、一つ以上の同定された特定のペプチド化合物およびこれらの構造的に同様の生物活性を有する等価物の両方を指す。
【0097】
種々のペプチド化合物の例が以下に示される。
【0098】
凝固モジュレータは、α−抗トリプシン、α−マクログロブリン、抗トロンビンIII、第I因子(フィブリノゲン)、第II因子(プロトロンビン)、第III因子(組織プロトロンビン)、第V因子(プロアクセレリン)、第VII因子(プロコンベルチン)、第VIII因子(抗血友病グロブリンすなわちAHG)、第IX因子(クリスマス因子、血漿トロンボプラスチン成分すなわちPTC)、第X因子(スチュアート−プラウアー因子)、第XI因子(血漿トロンボプラスチン前駆体すなわちPTA)、第XII因子(ハーゲマン因子)、ヘパリン補因子II、カリクレイン、プラスミン、プラスミノゲン、プリカリクレン、プロテインC、プロテインS、トロンボモジュリン、およびこれらの組み合わせを含む。
【0099】
サイトカインは、以下に限定されないが、TGFβ1、TGFβ2、およびTGFβ3等のトランスフォーミング成長因子(TGF)、骨形成タンパク質(例えば、BMP−1、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7、BMP−8、BMP−9)、ヘパリン成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、ヘパリン結合神経栄養因子(HBNF)、インシュリン様成長因子(IGF))、結合組織活性ペプチド(CTAP)、骨形成因子、コロニー刺激因子、インターフェロン−α、インターフェロン−α2a、インターフェロン−α2b、インターフェロン−αn3、インターフェロン−β、およびインターフェロン−γを含むインターフェロン、インターロイキン−1、インターロイキン−2、インターロイキン−3、インターロイキン−4、インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−7、インターロイキン−8、インターロイキン−9、インターロイキン−10、インターロイキン−11、インターロイキン−12、インターロイキン−13、インターロイキン−14、インターロイキン−15、インターロイキン−16、およびインターロイキン−17を含むインターロイキン、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子−α、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子、インヒビン(インヒビンAおよびインヒビンB)、成長分化因子(例えばGDF−1)、アクティビン(例えば、アクティビンA、アクティビンB、アクティビンAB)、ミッドカイン(MD)、およびサイモポエチンを含む。
【0100】
エンドルフィンは、オピエートレセプターを活性化するペプチドである。自然に発生するエンドルフィンのアゴストおよアンタゴニスト誘導体も企図される。エンドルフィンおよび薬理学的に活性なエンドルフィン誘導体の代表例は、デルモルフィン、ダイノルフィン、α−エンドルフィン、β−エンドルフィン、γ−エンドルフィン、σ−エンドルフィン、[Leu]エンケファリン、[Met]エンケファリン、サブスタンスP、およびこれらの組み合わせを含む。
【0101】
ペプチジルホルモンは、アクチビン、アミリン、アンジオテンシン、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、カルシトニン(ニワトリ、ウナギ(eel)、ヒト、ブタ、ラット、サケ等由来)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、カルシトニンN末端フランキングペプチド、コレシストキニン(CCK)、毛様体神経栄養性因子(ciliary nerrotropic factor)(CNTF)、コルチコトロピン(副腎皮質刺激ホルモン、ACTH)、コルチコトロピン出射因子(CRFまたはCRH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、ガストリン、ガストリン阻害性ペプチド(GIP)、ガストリン出射ペプチド、グルカゴン、ゴナドトロピン放出因子(GnRFまたはGNRH)、成長ホルモン出射因子(GRF、GRH)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCH)、インヒビンA、インヒビンB、インシュリン(ウシ、ヒト、ブタ等由来)、レプチン、リポトロピン(LPH)、黄体形成ホルモン(LH)、黄体形成ホルモン出射ホルモン(LHRH)、α−メラニン細胞刺激ホルモン、β−メラニン細胞刺激ホルモン、γ−メラニン細胞刺激ホルモン、メラトニン、モチリン、オキシトシン(ピトシン)、膵臓のポリペプチド、副甲状腺ホルモン(PTH)、胎盤のラクトゲン、プロラクチン(PRL)、プロラクチン放出抑制因子(PIF)、プロラクチン出射因子(PRF)、セクレチン、ソマトスタチン、ソマトトロピン(成長ホルモン、GH)、ソマトスタチン(SIF、成長ホルモン出射阻害因子、GIF)、チロトロピン(甲状腺刺激ホルモン、TSH)、甲状腺刺激ホルモン出射因子(TRHまたはTRF)、チロキシン、トリヨードチロニン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、およびバソプレッシン(抗利尿ホルモン、ADH)を含む(しかし、これらに限定されない)。
【0102】
LHRHの特に好適な類縁体は、ブセレリン、デスロレリン(deslorelin)、ファーチレリン(fertirelin)、ゴセレリン、ヒストレリン(histrelin)、ロイプロライド(leuprolide)(ロイプレリン(leuprorelin))、ルトレリン(lutrelin)、ナファレリン(nafarelin)、トリプトレリン(tryptorelin)およびこれらの組み合わせを含む。
【0103】
キニンは、ブラジキニン、増強剤B、ブラジキニン増強剤C、およびカリジンおよびこれらの組み合わせを含む。
【0104】
酵素は、エステラーゼ、フォスファターゼ、グリコシダーゼおよびペプチダーゼ等のトランスフェラーゼ、加水分解酵素、イソメラーゼ、プロテアーゼ、リガーゼ、およびオキシドリダクターゼを含む。酵素の特定の例は、スーパーオキシドジムスターゼ(SOD)、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、レニン、アデノシンデミナーゼ、β−グルコセレブロシダーゼ、ドルナーゼ−α、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、トリプシン、チミジンキナーゼ(TK)、トリプトファン・ヒドロキシラーゼ、ウロキナーゼおよびカリクレインを含む。酵素阻害剤は、ロイペプチン、キモスタチン(chymostatin)、ペプスラチン(pepslatin)、レニン阻害剤、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤その他を含む。
【0105】
抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の両方、並びに、モノクロ−ナル抗体のF(ab’)、Fab、FvおよびFcフラグメント等の抗体フラグメントを含む。
【0106】
他のペプチジル薬物:所望の薬理学的活性を提供するさらに他のペプチジル薬物が、本発明の組成物およびデリバリーシステムに組み込まれ得る。例は、アバレリックス(abarelix)、アナキンラ(anakinra)、アンセスチン(ancestim)、ビバリルジン(bivalirudin)、ブレオマイシン、ボンベシン、デモプレシンアセテート、des−Q14−ghrelin、エンテロスタチン(enterostatin)、エリスロポエチン、エクセンジン−4(exendin−4)、フィルグラスチム、ゴナドレリン、インシュリノトロピン(insulinotropin)、レピルジン(lepirudin)、マガイニンI、マガイニンII、神経成長因子、ペンチゲチド(pentigetide)、トロンボポエチン、チモシンα−1、およびウロテンシンIIおよびこれらの組み合わせを含む。
【0107】
ペプチドアレイの調整における集束された音響エネルギーの使用は、ペプチド分子の高レベルのせん断応力への露出を実質的に防止する。すなわち、音響出射技術は、(例えばノズルを必要とする技術と対照的に)ペプチド分子の構造を分解し得る高いせん断応力を流体内に生成しない。せん断応力の証拠は、ペプチド分子の本来または天然の三次元構造からの任意の逸脱、例えば、タンパク質折り畳みの消失を含む。せん断応力の徴候を示すペプチド分子が本発明の方法論を用いて調整されたアレイ内には、実質的には存在しない。すなわち、10%未満、好適には、5%未満、より好適には、1%未満、最も好適には、0.1%未満である。
【0108】
さらに、集束された音響エネルギーを用いて生成されたアレイ内のペプチド分子は、損なわれることがなく、かつ、基質表面上の所定のサイトに付着される。これは、先端が切り取られた形態のペプチド分子(例えば、一以上のアミノ酸残基がないペプチド分子)がしばしば存在する、フォトリソグラフィー技術を用いて調整されたアレイと対照的である。先端が切り取られたペプチド分子は、例えば、光保護基がインサイチュ合成の間に分離し損なう場合の結果として生じ得る。さらに、フォトリソグラフィのアレイ調整技術を用いるマスク配置の不正確さは、基質表面上の意図しないサイトに個々のペプチドを付着する結果となり得る。最後に、フォトリソグラフィーの技術は、予め精製されたタンパク質の正確な配置に従順でなく、25未満のアミノ酸を有する小さいペプチドのインサイチュ合成に主に制限される。集束された音響エネルギーがアレイを調整するために用いられる場合にはこれらの問題に遭遇しない。
【0109】
本発明のペプチドアレイは、好適には、基質表面上の少なくとも一つの指定されたサイトに付着された脂質物質を含む。脂質物質は、ペプチド分子の堆積に先行して指定されたサイトに付着され得るか、または、例えば、リン脂質包膜内のペプチド分子等の特定のペプチド分子に結合され得る。後者の場合、ペプチド分子を含む流体も、脂質物質を含む。多くのアレイ形成技術が脂質物質に適合しないが、脂質化合物は、粘稠性である傾向があるので、本発明の音響出射技術は、個々のペプチドとともに、基質上に脂質物質を効率的に出射し得る。
【0110】
適切な脂質物質の例は、以下のものを含むが、これに限定されない。:リン酸化されたジアシルグリセリド等のリン脂質、およびジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファジン酸およびこれらのこれらの混合からなる群から選択された特定のリン脂質。ここで、各アシル基は、約10〜約22の炭素原子を含み、飽和または不飽和である。イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキディック酸、ビヘニック酸、リグノセリック酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、およびアラキドン酸等の脂肪酸;上記脂肪酸のエステルを含む低級脂肪酸エステル。ここで、脂肪酸のカルボン酸基は、エステル部分−(CO)−ORで置き換えられる。ここで、Rは、随意に1または2のヒドロキシル基で置換されるC−Cのアルキル部分である。;上述の脂肪酸に対応する脂肪族アルコール。ここで、脂肪酸のカルボン酸基が−CHOH基によって置き換えられる。;セレブロシドおよびガングリオシド等の糖脂質;油(肝油等の動物油、メンハーデン油、ババス油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、あまに油、カラシ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ケシ実油、菜種油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、キリ油または小麦の胚種油等の植物油を含む);蝋(wax)、すなわち、高級脂肪酸エステル(蜜蝋およびセラック等の動物蝋、モンタン蝋等の鉱蝋、微結晶性の蝋およびパラフィルム等の石油蝋、およびカルナルバ蝋等の植物蝋を含む)。
【0111】
ペプチド分子は、さらに、水性の流体に堆積され得る。水性の流体は、水自体および水溶液、種々の非流体物質の分散および懸濁、および水と他の液体との混合を含む。
【0112】
ペプチドアレイは、均質のペプチドアレイ(すなわち、同一のペプチド分子を含むアレイ)または不均質のペプチドアレイ(すなわち、異なるペプチド分子を含むアレイ)であり得る。均質なペプチドアレイでは、各ペプチド分子は、基質上に実質的に同一の配向で結合される。基質上に実質的に同一の配向でペプチド分子を結合するための任意の技術が採用され得る。当業者に理解されるように、このアプローチを用いるペプチド分子の配向は、化学結合の周りの回転が予測されるが、実質的に維持される。それにもかかわらず、ペプチドの「露出された」部分が実質的に変化されないままである。この方法では、均質なアレイが同一のペプチド分子を実質的に同一の配向に陳列する。非制限の例により、モノクローナル抗体は、最初に、ペプチド分子上の特定のエピトープに結合される。ペプチド分子−抗体の複合体は、流体内に配置され、抗体−結合部分で覆われた基質表面上の所望の位置上に音響が出射される。ペプチド分子が実質的に同一の配向になっているのは、抗体−結合タンパク質が抗体−ペプチド分子複合体における抗体のFc部分のみに結合するからである。別の例では、露出された末端カルボキシル側鎖を一つのみ有するペプチド分子が、アミド結合が生じるようにアミン官能基で誘導体化された基質上に音響出射される。ペプチドの単一のカルボキシル部分は、基質表面上の反応性のアミンに結合されるので、基質表面上のペプチド化合物が実質的に均一な配列になっている。あるいは、付着されたモノクローナル抗体を有する基質表面は、音響出射されたペプチド分子を結合し得る。
【0113】
流体出射の精密度を保証するために、調整されるアレイの種類にかかわらず、イジェクターに関して小滴が出射される流体表面の位置および配向を決定することが重要である。さもなければ、出射された小滴は、不適当な大きさになるか不適当な軌道に移動し得る。このため、本発明の別の実施形態は、出射イベント間のリザブワー(reservoir)における流体表面の高さを決定するための方法に関する。本方法は、音響によって流体含有リサブワーを音響放射ジェネレータに結合する工程と、流体表面に移動し、この流体表面で反射音波として反射される検出音波を生成するようにジェネレータを活性化する工程とを包含する。その後、反射音響放射のパラメータが、音響出射ジェネレータと流体表面との間の空間的な関係を評価するために、分析される。このような分析は、音響放射ジェネレータと流体表面との間の距離および/または音響放射ジェネレータとの関係における流体表面の配向の決定を含む。
【0114】
より詳細には、音響放射ジェネレータは、流体表面から小滴を出射するために不十分なエネルギー性の低エネルギーの音響放射を発生するように活性化され得る。これは、典型的には、小滴放射のために通常要求されるパルス(マイクロ秒のオーダー)に比較して極端に短いパルス(十ナノ秒オーダー)を用いることによってなされる。音響放射が流体表面によって反射されて音響放射ジェネレータに戻るために要する時間を決定し、次いで、その時間を流体内での音の速度と相関させることによって、距離--およびこの結果、流体の高さ--が計算され得る。当然、リサブワーベースと流体との間の界面によって反射された音響放射が減少されることを保証するために注意が払われなければならない。このような方法が従来のまたは改変されたソナー技術を採用することが当業者によって理解される。
【0115】
一旦分析が行われると、流体表面近くに集束点を有する放射音波が、少なくとも一つの流体小滴を放射するために発生される。ここで、放射音波の最適な強度および方向性が上述の分析を用いて、さらなるデータと随意に組み合わせて決定される。「最適な」強度および方向性は、一般に、一定のサイズおよび速度の小滴を生成するように選択される。例えば、放射音波の所望の強度および方向性が上記のように評価された空間的な関係だけではなく、リサブワーに結び付けられた幾何学的データ、放射される流体に結び付けられた流体特性データも用いること、および/または、出射順序に結び付けられたヒストリカルな小滴放射データを用いることによって決定され得る。さらに、データは、放射音波の集束点が流体表面近くの所望の位置であることを保証するために、流体表面に関して音響放射ジェネレータを再配置するためにイジェクタを再配置する必要性を示し得る。例えば、放射音波が流体表面近くに集束されることができないように音響放射ジェネレータが配置されていることを分析が示す場合、音響放射ジェネレータは、放射音波の適切な集束を可能にするために垂直移動、水平移動、および/または回転移動を用いて再配置される。
【0116】
一般に、アレイ構成の特性についてのスクリーニングは、発生されたアレイの種類にとって適切な方法で行われる。リガンド結合またはハイブリダイゼーション等の生物学的な特性のためのスクリーニングは、一般に、Fodorらへの米国特許第5,744,305号および第5,445,934号、およびPirrungらへの第5,405,783号、およびSouthernらへの第5,700,637号および第6,054,270号に記載された方法で行われ得る。物質の特性のために基質をスクリーニングすることは、マイクロアレイに容易に適合させ得るルーチンの方法により物理的および化学的特性を測定することによって実施され得る。大部分の物質特徴または特性に加えて、表面特有の特性が、表面特有の物理的技術および表面特色付けに適合される物理的技術によって測定され得る。吸着、触媒作用、酸化を含む表面反応、硬度、潤滑および摩擦を含む顕微鏡表面の現象は、このような特色付け技術を用いて分子スケールで試験され得る。種々の物理的な表面特色付け技術は、回折技術、分光法技術、顕微鏡表面イメージング技術、表面イオン化マス分光法技術、熱脱離技術および偏光解析法を制限なく含む。これらの分類は、詳細な説明の目的のために任意になされ、いくつかのオーバラップが存在し得ることが理解される。
【0117】
本発明が好適な特定の実施形態に関連して記載されているが、前述の記載は、例示することが意図され、本発明の範囲を制限しないことが理解されるべきである。他の局面、利点および改変は、本発明に関係がある当業者に明らかである。
【0118】
前述の例は、本発明を実現する方法についての完全な開示および説明を当業者に提供するために提案され、発明者が本発明とみなすものの範囲を制限することは意図されない。
【0119】
(実施例1)
本実施例は、ライブラリの形態でのオリゴヌクレオチドのアレイの調整を記載し、オリゴヌクレオチドの固層合成での集束された音響エネルギーの使用を実証する。
【0120】
微孔性ガラス、好適には、制御された細孔サイズガラス(CPG)が、ガラスプレートの表面上に焼結されて、流体の下方向の流れおよび側方のウィッキング(wicking)の両方への浸透を可能にするために十分な厚さを有するCPG層を形成する。一般に、十分な厚さは、約10μmより大きい。
【0121】
したがって、CPGは、約20μmの厚さでガラス表面に付与され、粉末化されたCPGレジデントを有するガラスが約20分間、750℃に加熱され、その後、冷却される。市販の顕微鏡スライド(BDH Super Premium 76×26×1mm)が補助として用いられる。用いられた特定のガラス基板およびCPG物質に依存して、焼結温度および時間は、流体に対する透過性および微孔性ガラス層の厚さを実質的に維持しながら下方のガラスに適切に付着された透過性かつ多孔性層を得るために調節され得る。約20μmのプレ・ヒーティング厚さに適用された1cm四方の微孔性ガラスのパッチと共に、20分間加熱されたスライドは、プレヒーティング、すなわち20μmと実質的に同一の深さの焼結層を産生する。
【0122】
微孔性ガラス層は、芳香族複素環基塩基を脱保護するために要求される条件、すなわち、55℃で10時間の30%NHに耐え得る長い脂肪族リンカーを用いて誘導体化される。ヒドロキシ部分を有し、ヌクレオチド前駆体からオリゴヌクレオチドの配列形成のための開始点となるリンカーは、二段階で合成される。まず、焼結された微孔性ガラス層が、乾燥管に適合された染色ジャー内において、触媒として数滴のHunig塩基を含むキシレン中の3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランの25%溶液で、20時間90℃で処理される。次いで、スライドはMeOH、EtOで洗浄され、空気乾燥される。次に、ニートのヘキサエチレングリコールおよび痕跡量の濃硫酸が、次いで加えられ、その混合物は、80℃で20時間維持される。スライドは、MeOH、EtOで洗浄され、空気乾燥され、使用されるまで乾燥された状態で−20℃にて格納される。(分離用の技術が、一般に、1988年9月21日に出願された英国特許出願第8822228.6号に記載されている)
次いで、微孔質基質上への蛍光マーカーを含む約0.24pLの無水アセトニトリル(主要な結合溶媒)の集束された音響出射が、透過性の燒結された微孔質ガラス基板上に直径約5.6μmの円状のパッチを取得するように示される。流体表面に適用される音響エネルギーの量は、所望のサイト密度に対する化学合成の適切な直径を保証するように調節され得る。直径5.6μmの円状パッチは、10サイト/cmのサイト密度を有し、円状の合成パッチが中心から中心に10μmの間隔が空けられたアレイを調整するために適しており、合成パッチは、したがって、最も近接した領域で端から端に少なくとも4μm離間して間隔が空けられている。すべての引き続く空間的に方向を持った音響出射された、本実施例における容積は、約0.24pLである。出射容積は、基質上に伝播した後に適切な大きさにされた小滴の送達に必要なだけ音響エネルギーを調節することによって、純粋なアセトニトリル以外の溶液のために調節され得る(ここでは、約半径5μm)ことが容易に理解される。
【0123】
オリゴヌクレオチドの合成サイクルは、無水アセトニトリル中の0.5Mのテトラゾールの等容積を、要求されるβ−シアノエチルホスホラミダイト(例えば、A−β−シアノエチル−ホスホラミダイト、C−β−シアノエチルホスホラミダイト、G−β−シアノエチルホスホラミダイト、T(またはU)−β−シアノエチルホスホラミダイト)の0.2M溶液に混合することによって調整されるカップリング溶液を用いて実行される。カップリングタイムは3分である。THF/ピリジン/HO中のIの0.1M溶液による酸化は、安定なホスホトリエステル結合を産生する。ジクロロメタン中の3%トリクロロ酢酸(TCA)による5’末端の脱トリチル化は、オリゴヌクレオチド鎖のさらなる伸長を可能にする。キャッピング工程が要求されないのは、基質上の反応サイトを超えて用いられた過剰のホスホラミダイドがカップリングを完了させるために十分大量であるからである。スライドをカップリングした後、続く化学反応(Iを用いた酸化、およびTCAによる脱トリチル化)がスライドを汚染ジャー(staining jar)に浸漬することによって行われる。あるいは、合成パッチの端部が外方向および隣接の合成パッチにより近接するように移動しないように前工程からの実質的に全ての溶媒の蒸発が可能にするため、そして、さらに、THF/ピリジン/HO中のIが反応チャンバ内に送達される場合に続くカップリング工程のために無水の環境を提供するために十分な時間が発生する場合に、選択されたサイトでの酸化およびトリチル化工程を実施するためのTHF/ピリジン/HO中のIおよび/またはジクロロメタン中の3%TCAの集束された音響送達が行われ得る。
【0124】
合成が完了した後、オリゴヌクレオチドは、30%NH内で10時間55℃で脱保護される。カップリング剤は水分に感応性であるので、カップリング工程は、密閉されたチャンバまたはコンテナ内で無水条件下で行われなければならない。これは、音響出射デバイスおよび合成基質を含むチャンバを排気し、ルーチンの方法により排気された大気ガスを乾燥Nに置き換えることによって得られる乾燥ガスのチャンバ内に音響のスポッティングを行うことによって達成され得る。;洗浄工程がチャンバ内か、または、スライドを取り除き、そしてそれを適切な環境内で洗浄することによって、例えば、乾燥管が取り付けられた汚染ジャーにより行われ得る。洗浄工程および脱トリチル化等の他の工程は、チャンバの外側でより都合良く実行され得るため、合成も、スポッティングが行われる制御された大気チャンバを含む制御された湿度室で行われ、他の工程がチャンバの外側の室で達成され得る。あるいは、制御された湿度室は、例えば、乾燥管が取り付けられた汚染ジャーの使用によってそれほど制御されない環境で実行される他の工程でスポッティングのために用いられ得る。
【0125】
(実施例2)
本実施例は、コンビナトリアルライブラリの形態でのペプチドアレイの調整を記載し、20の天然に発生するアミノ酸(全部で20すなわち=160,000のアミノ酸配列)から4通りアレイフォーマットで形成され得る全四量体のコンビナトリアル固相合成における集束された音響エネルギーの使用を実証する。調整されるコンビナトリアルアレイの4つの同一の複製が、名目上4つの象限に分割される1cm×1cmのエリアに含まれ、各象限は、250,000の合成された10μm×10μmサイズのサイトを含み、500行および500列に配列されている。400行および列のみが各象限に用いられ、最初および最後の50行および列は、合成のために用いられず、互いおよびエリアのコーナーから4つの同一のアレイに空間を空けるために機能するが、4つの同一のアレイの代わりの構成は、各アレイを配列エリアのコーナーにより近接するように移動させることによってアレイ間により大きい距離を取得し得る。コンビナトリアルな配列を系統的に形成することに加えて、モノマーの沈着は、類似のアミノ酸配列が空間的に近接する可能性がないことを保証する系統的な方法を採用する。多くのこのような方法が存在し、いくつかは、精巧な演算を必要とし、同一性に加えて側鎖の類似性(例えば、疎水性のVal、Leu、Ile)を考慮に入れ得るが、用いられるスキーム(scheme)は、行番号の増加にしたがって位相変化された基本的な一連のリストに依存する。例えば、20の天然アミノ酸が、それらの一文字省略のアルファベット順(この場合、Ala(A)は、「1」、Cys(C)は、「2」、Asp(D)は3;...Val(V)は、「19」;Trp(W)は、「20」)に基づいて連続して列挙され得る。
【0126】
沈着される第一のモノマーのために、ペプチドが合成される所与の象限における第一の行(これは、その象限における51番目の名目上の行である)が第一の合成列(51番目の列)のアミノ酸(以下により詳細に記載されるように合成のために活性化される)で開始し、一文字省略のアルファベット順での1〜20の基本的な一連のリストにしたがって沈着される。第二の合成行(52番目の名目上の行)を着手すると、順序は、「2」で開始し、「20」の後「1」に戻る(2、3、4、5...19、20、1)ように1つの位置だけシフトされる。このため、空間が空けられた4通りのアレイの配列が形成され、所与の象限の52番目の名目上の行(第二の合成行)では、52番目の名目上の行の51番目および431番目の名目上の列に沈着された第一のアミノ酸は、「2」すなわちCysであり、この行の68番目および448番目、69番目および449番目、および70番目および450番目の名目上の行に沈着されたアミノ酸は、それぞれ、19、20および1(V、W、A)である。
【0127】
さらなるモノマーが以下のようにこの象限に追加されるが、多数の代替が存在する。第一の合成行(51番目の名目上の行)内の第二のモノマーのために、第二のモノマーのためのモノマーの沈着順序は、この行の第一の20の合成列(名目上の51−70)での第一のモノマーに対するのと同一であり、順序は、20の合成行の各連続する群に対して一つだけシフトされ、このため、順序は、名目上の列71−90に対して2、3...19、20、1となり(以下、[71−90]−{2、3...19、20、1}と表記する)、この表示にしたがい、[91−110]−{3、4...20、1、2};[111−130]−{4、5...1、2、3}...[431−450]−{20,1...17、18、19}となる。第二の合成行(52番目の名目上の行)での第二および第三のモノマーに対して、モノマーの沈着順序は、この行の第一の20の合成列(名目上の51−70)において下にあるモノマーの順序に対して1だけシフトされ、そして、順序は、各連続する20の合成列の群に対して1だけシフトされ、このため、第二のモノマーのために、順序は、名目上の列51−70に対して3、4...20、1、2となり、[71−90]−{4、5...1、2、3}、[91−110]−{5、6...2、3、4};[111−130]−{6、7...3、4、5}...[431−450]−{2、3...19、20、1}となる。第二の合成行の第二のモノマーについて、第一の行の第一の20列内の第一のモノマーにおける第一のモノマーの順序({1、2...18、19、20})に対するシフトは、2であることに留意されたい。1が、続くモノマー(1番目⇒2番目、2番目⇒3番目)間のシフトであり、これは、第二の合成行の第一のモノマーが第一の合成行の第一のモノマーに対して1だけシフトされるからである。第三の合成行(53番目の名目上の行)における第二および第三のモノマーに対して、モノマー沈着順序は、この行の第一の20の合成行(名目上51−70)での下にあるモノマーの順序に対して2だけシフトされ、順序は、20の合成列の各連続する群に対して1だけシフトされ、このため、第二のモノマーの順序は、名目上の列51−70に対して5...20、1、2、3、4であり、[71−90]−{6...1、2、3、4、5}、[91−110]−{7、...2、3、4、5、6}、[111−130]−{8、...4、5、6、7}...[431−450]−{4、...19、20、1、2、3}である。N番目の合成行(名目上の行=50+N)の第二のモノマーについて、第二のモノマーに対するモノマーの沈着順序は、この行の第一の20の合成列(名目上51−70)での第一のモノマーの順序に対して(N−1)だけシフトされ、順序は、各連続する20の合成列の群について1だけシフトされ、このため、((kN+a)>20に対して、(kN+a)が、N+a−20Iを開始するときにシフトされる(ここで、Iは(kN+a)の商の整数被除数であり、20は、シフトされないことを表わす20の各整数倍についてのサイクルの数を表わし)、第二のモノマーの順序は、名目上の列51−70に対して(2N−1)、2N、...(2N−3),(2N−2)であり、[71−90]−{(2N...(2N−2)、(2N−1)}、[91−110]−{(2N+1)、(2N+2)...(2N−1)、2N}、[111−130]−{(2N+2)、(2N+3)...2N、(2N+1)}...[431−450]−{(2N−2)、(2N−2)、(2N−1)...(2N−4)、(2N−3)}である。このため、400番目の合成行(450番目の名目上の行)における第二のモノマーに対して、19(799−780)で開始する第二のモノマーのモノマー沈着順序は、第一の行の第一の20の合成列(名目上の51−70)における第一のモノマーの順序に対して18だけ循環的にシフトされ、順序は、各連続する20の合成列の群について1だけシフトされ、このため、順序は、名目上の列51−70に対して19、20...(17)、(18)であり、[71−90]−{20、1...17、18、19}、[91−110]−{1、2...18、19、20}、[111−130]−{2、3...19、20、1}...[431−450]−{20、1...17、18、19}である。N番目の合成行の第二のモノマーに対して、第一の行({1、2...18、19、20})の第一の20の合成列における第一のモノマーの順序に対するシフトは、2*(N−1)であることに留意されたい。これは、(N−1)は、続くモノマー(1番目⇒2番目、2番目⇒3番目)間のシフトであり、合成行Nの第一のモノマーは、第一の合成行の第一のモノマーに対して(N−1)だけシフトされるからである。
【0128】
合成の化学工程は、公知の固相合成技術(例えば、Geysenらの国際特許出願PCT/AU84/00039(WO84/83564として出版)に記載されるような)から改変される。この技術は、Merrifieldら((1965)Nature207:(996):522−23;(1965)Science150(693)178−85;(1966)Anal.Chem,38(13):1905−14(1967);Recent.Prog.Horm.Res.23:451−82)の先駆的固相ペプチド合成から適応される。これらの独創的な論文に教示されるような固相ペプチド合成の従来の方法は、Ericksen,B.W.およびMerrifield,R.B.(1973)The Proteins2:255−57Academic Press,New
YorkおよびMeinhofer,J(1976)The Proteins2:45−267 Academic Press,New Yorkに詳細に記載される。簡単に、全てのこれらの方法は、アミノ基(α位アミノ基(Nα)を含む)へのtert−ブトキシカルボニル(t−ブトキシカルボニル、t−Boc)によって保護されたアミノ酸モノマーを、カルボニル末端(C−末端)で基質に付着された新生のペプチドに加える。ペプチドに加えられたNα−t−Bocアミノ酸のカルボニル部分は、カルボキシ基のヒドロキシル基を効率的な脱離基(反応性で酸無水物に類似している)に変換するために活性化される、この活性化では、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を用いて、新生ペプチドの末端Nにより求核置換してペプチド結合(このペプチド結合は、モノマーを形成中のペプチドに加える)を形成することを可能にする。新しく加えられたモノマーは、t−Bocによってさらなる反応から保護されたN末端を有する。これは、トリフルオロ酢酸(TFA)を用いて除去され、末端アミノ基がプロトン付加され、続いて、トリエチルアミン(TEA)を用いた末端アミノ基の脱保護により、別のモノマーを加えるのに適した反応性のフリーなアミノ基を産生する。
【0129】
採用された基板は、ポリエチレンであるが、固相ペプチド合成のための古典的な基板である、架橋されたジビニルベンゼンが架橋され、ポリスチレン樹脂のFriedel−Crafts反応により4つの芳香環のほぼ一つについてクロロメチル化されたポリスチレンも採用され得る。Geysenらの国際特許出願PCT/AU/00039(WO84/83564として公開)に記載されるポリエチレン基板の調整は、反応性のポリエチレンポリアクリル酸(PPA)を産生するために、Muller−Schulteらの(1982)Polymer Bulletin7:77−81の方法にしたがって、水性のアクリル酸(6%v/v)に浸漬されたポリエチレンのγ線照射(1mrad 線量)を含む。Nα−t−Boc−リジンのメチルエステルが、次いで、リジンのεーアミノ側鎖によってPPAに結合される。TFAの次にTEAを用いたt−Bocの除去によるNαの脱保護の後、DCC/Nα−t−Boc−アラニンが、t−Boc−AlaをLysのNαに結合するために加えられ、これにより、ペプチド様のNα−t−Boc−Ala−Lys−ε−N−PPAリンカーを形成する。このリンカーには、DCCにより活性化されたNα−t−Boc−アミノ酸モノマーが連続して加えられて、Nα−t−Boc−AlaのNα基を脱保護すると所望のポリマーを形成し得る。
【0130】
アレイフォーマットのために、およびポリマー形成のための実効表面エリアを増加させ、音響出射された試薬小滴の合成基板への失粘を増大させるために、約25μmの厚さのポリエチレンファイバーシート物質(市販により入手可能で、従来の方法によって調整される)が、ルーチンの方法にしたがって、滑らかなポリエチレン背面(約0.15cm厚)に加熱または溶融結合され、ポリエチレンファイバーコーティングされた粗面透過性基板を形成する。ファイバーコーティングされたシートは、市販スライドの概略寸法を有するストリップに切断され、6%v/v水性アクリル酸内でγ線照射され(1mrad)、PPAで活性化された基板を形成する。t−Bocで保護され、かつ、DCCで活性化された試薬が水に感応性であるため、基板は十分に乾燥されていなければならず、TFA適用等の合成サイトに適用される酸の水による汚染は、ペプチド結合を加水分解し得る。このため、無水の合成条件が全体にわたって要求される。基板の従来の乾燥工程は、ルーチンの方法で大気圧または大気圧より低い圧力での暖かい乾燥エアを用いてもたらされ、特に、スライドは、MeOH、EtOで洗浄され、乾燥され、そして使用まで−20℃で乾燥した状態で格納される。
【0131】
モノマーの連続した組み合わせの付加は、適切なDCC/Nα−t−Boc−アミノ酸でスポットされた全サイトを用いて上記のように行われる。音響出射に対する適切な容量は、上記の通りである。これは、擬似並列合成を産生する。なぜなら、異なるサイトをスポットすることは同時ではく、それは、所望のペプチドのみをあるサイトにおいて合成し、他のサイトで後に合成するように改変され得るからである。実際の合成は、モノマー付加ごとの全11工程に対して、未反応の活性化されたアミノ酸またはTFAまたはTEAを除去する洗浄工程で、無水の有機溶媒を要求する。このため、完全に連続した合成は、アレイを合成するために行われる工程数を増加する。このため、完全な連続する合成は、アレイを合成するために行われる工程数を抜本的に増加するが、しかし、例えば、一回目の合成ラウンドで一つおきのサイトのみを合成し、次いで、二回目のセッションで合成すれば、アレイの質を向上し、工程数が2倍になるだけである。ペプチドが選択されたサイトでのみ形成されることを保証するために、Nα−t−Boc−Ala−Lys−ε−N−PPAリンカーは、選択的に脱保護されて、選択されたサイトでのみAlaのNαを露出し得る。これは、選択的な音響エネルギーを所望のサイト上に向け、続いて、洗浄し、そして、選択的にTEAを用いて、続いて、洗浄して、例えば、一つおきのサイトの選択的な脱保護を実施することによる。
【0132】
天然に発生するアミノ酸から形成され得るすべてのテトラ・ペプチドの基本的な擬似並列コンビナトリアル合成は、基板の調整を除いて44工程で行われ得る。選択的なリンカーの脱保護が要求されないので、基板は、乾燥管が取り付けられた染色ジャー内のTEAに浸漬され、次いで、洗浄され、そして、TEAに浸漬され、再度、洗浄されるが、これら全ては、無水条件の下で行われる。合成は、流体小滴の出射が、最小限に乾燥され、用いられる試薬に不活性な制御された雰囲気で発生するように実行されなければならない。これは、音響出射デバイスおよび合成基板を含むチャンバーを排気し、排気された雰囲気ガスを乾燥Nにルーチンの方法で置き換えることによって取得された乾燥されたガスのチャンバー内で音響スポッティングを行うことによって取得され得る。洗浄工程は、チャンバー内で、または、スライドを除去し、それを適切な環境(例えば、乾燥管が取り付けられた染色ジャーにより)で洗浄することによって行われ得る。洗浄工程および脱トリチル化等の他の工程は、チャンバーの外側でより都合の良く実行され得るので、合成は、さらに、スポッティングがなされる制御された雰囲気のチャンバーを含む制御された湿度室で行われ、他の工程は、チャンバの外側の室で行われ得る。あるいは、制御された湿度室は、例えば、乾燥管が取り付けられた染色ジャーを使用することにより、ほとんど制御されることがない環境で実行される他の工程でスポッティングのために用いられ得る。
【0133】
予め合成された短いオリゴペプチドの使用は、さらに、アミノ酸モノマーの代わりに用いられ得る。集束された音響出射は、一つの流体の出射から別のものへの迅速な移行を可能にするので、多くのオリゴペプチドは、アミノ酸鎖のより速いアセンブリを可能にするために単一の基板(マイクロタイタープレート等)上に小量で提供され得る。例えば、全ての可能なペプチドダイマーが合成され、そして、400を超えるウェルを有するウェルプレートに格納され得る。四量体の構築は、サイトごとに二つのみのダイマーを沈着する工程と、単一の連結工程とにより達成され得る。これをさらに拡張すれば、少なくとも8000のウェルを有するウェルプレートが三量体を用いてペプチドを構築するために用いられ得る。
【0134】
(実施例3)
先行する実施例1および2のコンビナトリアル法は、本発明によるポリサッカライドのコンビナトリアルアレイを形成するために適応され得る。オリゴサッカライドでは、モノサッカライドのグループが通常、オキシ−エーテル結合を介して連結される。ポリサッカライドのエーテル結合は、化学的に構築することが困難である。なぜなら、結合方法が採用される各糖に対して特殊であるからである。エーテル酸素結合基は、また、非酵素の化学的加水分解によって加水分解され易く。このため、エーテル結合された炭水化物のための自動化された合成の公知の方法はなく、コンビナトリアルアレイを作製する従来の方法は、ポリサッカライドのコンビナトリアルアレイを可能にするために十分に柔軟性があるわけではない。音響スポッティングの柔軟性は、実施例1および2のアレイを形成するために採用され得る選択的脱ブロッキングの代替の方法を類推して、コンビナトリアルアレイに基づいてオキシ−エーテル結合を形成するために適応され得る。すなわち、糖の任意の対間の結合を形成するための特定の化学的方法が、グルコースを、フルクトース等の形成するポリサッカライドの特定の末端のグルコースに付加するために、フォトリソグラフィの合成を用いる場合、および従来のマルチノズルインクジェットタイプのプリンターを介する複数の試薬の並列印刷を用いる場合に含まれる工程数を増加させることなく、異なる末端の糖(リボース等)にグルコースを付加するために出射されるのではなく異なる溶液が出射されるように都合良く選択され得る。結果として得られるポリサッカライドは、加水分解しやすいままである。
【0135】
ポリサッカライドは、生物分子が先行する実施例で形成され得るように、固相よりもむしろ溶液中で合成され得、小滴の音響出射が、異なるサイトへの脱ブロッキング試薬の選択的な適用によるポリマー形成の間に任意の付着がなく、アレイ状のポリサッカライドの溶液合成を高密度で基板上にもたらし得る。インサイチュの固相合成は、ポリサッカライドに基づくオキシ−エーテル結合の自動化により容易に適応可能である。なぜなら、少なくとも脱ブロッキング工程は、異なるモノマー配列の全体の収量に異なるように影響し得るけれども、異なる結合の加水分解に対する感応性が、全サイトに対して同時になされ得るからである。最近、オキシ−エーテルをチオ−エーテル結合に置き換える方法(米国特許第5,780,603号および第5,965,719号)および糖のアノマーのCに結合されたN原子を有するアミド結合に置き換える方法(米国特許第5,756,712号)が導入されている。チオエーテル結合の固相合成法は、Merrifieldのペプチド合成のための技術と類似の方法で高密度のコンビナトリアルアレイを形成するために直接的に適応され得る。同様に、ポリサッカライドに基づくアミド結合は、例えば、米国特許第5,780,603号および第5,965,719号に教示される基質結合に基づくチオエーテルを採用することによって固相の高密度アレイ形成に適応され得、または、米国特許第5,756,712の結合を類推して、機能的にされた表面の適切な部分へのアミド結合が適用され得る。
【0136】
基板の結合に基づくチオエーテルのみが、詳細に例示され、この結合が、オリゴサッカライドのコンビナトリアルアレイに基づくチオエーテルを形成するために用いられる(オリゴサッカライドに基づくアミドは、米国特許第5,756,712号を参照して、同様にチオエーテル、または、他の基板結合を用いて形成され得る)。固相ペプチド合成のための古典的な基板である、ジビニルベンゼンが架橋され、ポリスチレン樹脂のFriedel−Crafts反応によって4つの芳香環の適切な一つに関してクロロメチル化されたポリスチレンが採用されるが、ポリエチレン基板が置き換えられ得る。
【0137】
従来の方法によって形成された、または、商業的に取得された紡いだポリスチレンシートは、ポリスチレンの背面に加熱または溶融結合されて、約25μm厚の紡いだポリスチレンの多孔性の浸透性層を産生する。架橋およびクロロメチル化の適切な範囲は、必要に応じて従来の化学合成法によって実施される。透過性層の厚さは、実際の化学合成のエリアの寸法に影響を及ぼすように理解され、垂直方向のウィッキング(wicking)室が大きくなれば、結果として、音響による沈着された試薬の横方向の広がりは小さくなる。また、架橋する範囲は、有機溶媒を適用する際の膨張する、および軟化する(softening)程度を制御するように調整され得ること、紡いだポリスチレンの多孔性、透過性層の繊維質の性質が、ビード(bead)により提供されるよりも比較的より合成的な表面を基板の名目上の表面エリアごとに提供し、これにより、より少ない膨張が繊維の内側のポリマーサイトに対する合成エリアを拡張するために要求されることが理解される。基板は、従来の化学合成法によってアミノ化され、洗浄され、そして、使用まで乾燥された状態で−20℃に格納される。
【0138】
糖のこの基板への結合がまず実施される。コハク酸無水物(1.2当量)がピリジン中の1,2:3,4−ジ−O−イソプロピリデン−D−ガラクトピラノース(1当量)の溶液に室温にて加えられる。反応は、終夜撹拌され、減圧中で濃縮され、1,2:3,4−ジ−O−イソプロピリデン−6−O−(3−カルボニル)プロパノイル−D−ガラクトピラノースを産生する。イソプロピリデン基を除去するために、80%の水性の酢酸が残渣に加えられる。この反応が完了すると、反応混合物は、減圧中で濃縮される。過剰の1:1無水酢酸/ピリジンが、次いで、残渣に加えられ、1,2,3,4−O−アセチル−6−O−(3−カルボニル)プロパノイル−D−ガラクトピラノースを形成し、これに、アルゴン下0℃で乾燥ジクロロメタン中の過剰のチオール酢酸およびBFエーテレートが加えられる。10分後に冷却バスが除去される。24時間後、混合物がジクロロメタンで希釈され、飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄され、硫酸ナトリウムで乾燥され、濃縮され、1−S−アセチル−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−(3−カルボニル)プロパノイル−1−チオ−α−D−ガラクトピラノースを産生する。アミノ化されたポリスチレン(Merrifield樹脂)基板が1−S−アセチル−2,3,4−トリ−O−アセチル−6−O−(3−カルボニル)プロパノイル−1−チオ−α−D−ガラクトピラノースおよび6−O−(3−カルボニル)プロパノイル基を介して基板に結合されたO,S−保護ガラクトピラノースを与えるためのカルボジイミドカップリング試薬と接触される。
【0139】
先行する基板が、チオガラクトース誘導体に基づくチオエーテル結合されたポリサッカライドのコンビナトリアル合成のために用いられる。4つのモノマーの1−チオガラクトース誘導体(全部で4=64)のすべての可能な三量体のコンビナトリアルアレイの9個の複製が、1000サイト/cmのサイト密度に対応する四角形の合成サイトである333μm×333μmに分割された1cmの全基板表面エリア上で合成される。この配列は、アレイ平面の各軸におけるアレイの各複製間に3個のサイトすなわち、999μmの空間を可能にする。ポリスチレン基板上の記載された多孔性透過性の紡いだポリスチレン上に沈着される蛍光溶媒の25pLの小滴は、直径約56μmのスポットを産生し、100pLの小滴は、直径約112μmのスポット(個体のポリスチレンによって占められ少し膨張した多孔性層の約1/2を有する多孔性基板の深さに運ばれた円柱状のスポット)を産生する。
【0140】
工程A--1−ジチオエチル−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−ガラクトピラノシドの合成:1−チオ−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−ガラクトピラノシド(500mg、1.37mmol)およびジエチル−N−エチル−スルフェニルヒドラジドジカルボキシレート(360mg、2.0mmol)(Mukaiyamaら(1968)Tetrahedron Letters56:5907−9によって記載されるように公知の方法によって調整される)がジクロロメタン(14mL)に溶解され、室温にて撹拌される。10分後、溶液は、濃縮され、カラムクロマトグラフィーで精製され(SiO、ヘキサン/酢酸エチル2:1)、1−ジチオエチル−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−ガラクトピラノシド(580mg、定量)を白色固体として産生する(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)中でR0.27)。H−NMR(360MHZ、CHCl):δ1.30(dd,3H,J=7.4Hz,CH)、1.96,2.02,2.03,2.13(4s,12H,4CHCO)、2.79(ddd,2H,J=7.4Hz,J=7.4Hz、J=1.3Hz,CH)、3.94(ddd,1H,J,5=1.0Hz,J,6a=6.6Hz,J,6b=7.6Hz,5−H)、4.10(ddd,2H,61−H,6b−H)、4.51(d,1H,J,2=10.0Hz,1−H)、5.05(dd,1H,J,3=10.0Hz,J,4=3.3Hz,3−H)、5.38(dd,1H,J,2=10.0Hz,J,3=10.0Hz,2−H)、5.40(dd,1H,J,4=3.3Hz,J,5=1.0Hz,4−H);m/zC1624(M+Na)に対する計算値447.1、実測値447.0。
【0141】
工程B--1−ジチオエチル−β−D−ガラクトピラノシドの合成:
工程Aからの1−ジチオエチル−2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−ガラクトピラノシド(500mg、1.18mmol)が乾燥メタノール(10mL)に溶解され、メタノール性のナトリウムメトキシド(1M、150μL)で処理される。2時間後、溶液は、Amberlite 1R−120(H+)樹脂で中和され、ろ過され、濃縮されて、1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシドを白色固体(300mg、定量)として与える。
【0142】
工程C--1−ジチオエチル−β−D−ガラクトピラノシドの基板へのカップリング:
1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシド(200mg、780μmol)が乾燥ピリジン(8mL)に溶解され、DMAP(5mg)が混合物に加えられる。これは、全体にわたって60℃に維持される。
【0143】
9個の重複アレイを形成するために用いられる全(9×64=576)サイトのうち、および、実際の合成の64サイトの各重複アレイでは、アレイサイトの1/4(アレイごとに16、全体で144)が、乾燥ピリジン中の1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシド/DMAPでパターニングされる。この溶液は、所望の位置で基板上に音響出射される。乾燥した制御された雰囲気条件、すなわち、乾燥した不活性ガス環境が、さらに、このオリゴサッカライド合成のために用いられる。各サイトに沈着された適切な容量は、合成エリアは合成サイトに全体に含まれるべきであり、余りに多いデッドスペースは、好適には避けられることを考慮にいれながら、アレイサイトのいくつかでの試験沈着によって決定される。約10〜100pLの小滴容量が適切なように形成され、100pLが第一のモノマーが1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシドであることが望ましいサイト上にスポッティングされる。基板は、記載されるように、ポリスチレン背面(活性な塩素0.95mmol/gを装填するトリチルクロライド樹脂、ポリマーマトリックス:コポリスチレン−1%DVB)上の紡いだプリスチレン樹脂が24時間60℃で加熱される。樹脂は、ろ過され、メタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル(それぞれ10mL)で連続して洗浄され、所望のサイトでの6位のヒドロキシル基を介してトリチル樹脂に共有結合で結合された1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシドを与える。
【0144】
工程D--さらなる1−ジチオエチル−6−ピラノシドのパターニング:この工程が他の1−ジチオエチル−6−ピラノシドで基板に所望に結合されるように実行され得ることがすぐに理解される。重複アレイのそれぞれのサイトの1/4が、工程Cで沈着されたのとほぼ同一の容量で1−ジチオエチル−6−β−D−グルコピラノシドを結合するための溶液を用いてスポッティングされ、1/4がスポッティングされると1−ジチオエチル−6−β−D−マンノピラノシドを産生し、残りの1/4は、スポッティングされて、1−ジチオエチル−6−β−D−アロピラノシドを産生する。
【0145】
工程E--基板上のフリーなチオールの発生:工程Cからの基板サイトは、1−ジチオエチル−6−ピラノシド沈着(工程C沈着されたpLごとに約4pL)のエリア内で乾燥テトラヒドロフラン(THF)でスポッティングされる。乾燥メタノール(工程Cで沈着されたpLごとに約3/4pL)、ジチオトレイトール(約185ピコグラム)およびトリエチルアミン(工程Cで沈着されたpLごとに約1/2pL)が、音響沈着によってコンビナトリアルサイトの所望の合成エリアで沈着され、そのサイトは、特定の制御された雰囲気条件下で約10分〜1時間の間に室温で反応すること許容される。基板全体が、メタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンおよびジエチルエーテルの連続した適切な容量内で浸漬することによって洗浄される。マイクロ−FTIR(基板沈着サイトの):2565cm−1(SH伸縮)。あるいは、フリーなチオールを選択的に発生することが所望でない場合、基板は、以下のように表面の全体上で処理され得る。:8mLの乾燥THFが、基板を含めるために十分大きい浅いコンテナに配置された基板の表面に適用され、1.2mlの乾燥エタノール、256mgのジチオトレイトール、および0.8mlのトリエチルアミンがTHFに加えられ、そして、コンテナーは、記載された条件下で約10時間、室温で振盪される。
【0146】
工程F--マイケル付加反応:工程Eからの基板が、再度、工程Eの浅いコンテナに配置され、乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(4mL)に膨張され、次いで、シクロヘプト−2−エン−1−オン(280μl、252μmol)が加えられ、コンテナが、室温にて振盪される。2時間後、液体が除去され、メタノール、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンおよびジエチルエーテル(それぞれ40mL)を用いて連続して基板が洗浄される。あるいは、選択的なマイケル付加が望まれる場合、所望のサイトが、合成のエリア内に選択的にスポッティングされ得る。:N,N−ジメチルホルムアミド(工程Cで沈着されたpLごとに約2.5pL);シクトヘプト−2−エン−1−オン(工程Cで沈着されたpLごとに約0.2pL、0.2ピコモル)。選択的にスポッティングされたサイトは、特定の洗浄工程に先行して、特定の制御された雰囲気条件下で約10分〜1時間の間、室温にて反応することが許容される。
【0147】
工程G--アミノ酸を用いる還元的アミノ化:工程Fからの基板が、再度、先行する工程の浅いコンテナに配置され、ジクロロメタン(4mL)に膨張される。グリシンのtert−ブチルエステル塩酸塩(150mg、1,788μmol)、硫酸ナトリウム(400mg)、ソディウム・トリアセトキシボロハイドライド(252mg、1188μmol)および酢酸(40μL)がアルゴン雰囲気下室温にて加えられ、コンテナは、24時間振盪される。液体が除去され、基板は水、メタノール、テトラヒドロフランおよびジクロロメタンで連続して洗浄される。
【0148】
さらなるモノマーが、所望の1−ジチオエチル−6−ピラノシドを用いた先行する工程の繰り返しにより加えられ得る。この工程は、基板に結合するために1−ジチオエチル−6−β−D−ガラクトピラノシド/DMAPおよび他の1−ジチオエチル−6−ピラノシド/DMAPを用いて実施され得ることがすぐに理解される。重複アレイのそれぞれの所望のサイトは、工程C(1−ジチオエチル−6−β−D−マンノピラノシド/DMAP、1−ジチオエチル−6−β−D−アロピラノシド/DMAP、および1−ジチオエチル−6−β−D−グルコピラノシド/DMAP)で沈着されたと約同一の容量で結合するために適切な1−ジチオエチル−6−ピラノシド/DMAP溶液を用いて選択的にスポッティングされる
(実施例4)
アロイのコンビナトリアルアレイは、本発明の方法論を用いてすぐに調整され得る。溶融した金属は、基板上のアレイサイト上に音響出射される。金属にはモノマー配列が存在しないが、アロイの組成が、ポリマー伸長に結び付けられた問題がなく、所定サイトでの所与のメタルの多くの沈着によって変更され得る。異なる組成を形成するためのより多くの同一容量の金属小滴の沈着に伴う問題は、アレイ密度が形成される大抵のかさの高い組成に適応させるために減少されなければならないことである。これは、小滴のサイズが広範囲の小滴容量を超えて都合良く調整されないからである。 アロイ形成におけるアレイ密度を低減するさらなる理由は、アロイにより、表面を有するが容積を有さない膜よりもむしろ、容量および表面を有する物質を形成することがしばしば好適であり、したがって、薄膜「表面」の特性が容量物質の表面と同一でないことである(概して、Somorjai,Surface Chemistry and Catalysis,supraを参照)。
【0149】
すぐに理解され得るように、任意の二つの金属には無限数の組成が存在する。流体の音響出射によるアロイアレイのコンビナトリアル合成の点から見ると組成は、異なる密度および原子間相互作用を有する異なる溶融金属に対して異なる容量測定の音響出射により複雑であるが、金属の異なる組合わせおよび沈着された小滴の数に対応して発生された異なる化学量論の組成は、再生可能である。例えば、エネルギーE1で出射されたSnの5つの小滴およびEまたはEで出射されたCuの5つの小滴のアロイは、同一の条件下で複製された場合に同一の組成を有し、関心のあるアロイの化学量論の組成は、常に、SIMSによって決定され得る。均質なアロイ形成を促進するために、別の場所に沈着する前に小滴が固体化するのを待つよりもむしろ迅速に連続してサイト上に沈着される溶融金属のすべての小滴をスポットすることが好適であるが、このようなコンビナトリアル「堆積(stack)」も、潜在的な関心である。小滴の沈着間の音響エネルギーを変更しないことが最も都合が良いので、同一のエネルギーが、異なる金属を出射するために最も都合よく用いられ、化学量論、および発生された物質の表面特性を含む他のものが、後に決定され、合成プロセスの正確な複製によって再生され得る。溶融金属は、基板に到達したときに小滴が依然として溶融されていることを保証するためにその溶融点より上の、適切な温度(T)でなければならない。不活性ガス環境(酸化された金属塩の堆積よりむしろアロイを作製することが望まれる場合に重要であることが理解され得る)に加えて、特に小滴の表面での金属の酸化を防止するために、低熱容量を有するガスが高熱容量ガスより好ましい。さらに、基板の温度および基板と流体メニスカスとの間の距離は、溶融金属が基板に達し、かつ、続いて沈着される小滴と合金になることが可能にするために十分な時間溶融されたままであることを保証するように調節され得る。さらに、所与のアロイ組成が所与のアレイサイトに形成された後、出射エネルギーおよび基板間隔に対するメニスカスの両方は、すぐに理解されるように、上述の考察の光で調節を要求し得る。
【0150】
都合の良い合成のコンビナトリアルアプローチは、出射のための複数の溶融組成および各サイトに沈着される小滴の総数を選択することを含む。各サイトが都合よく100μm平方のエリア(これは、10個(ほぼ1ピコリッタ(pL)の大きさ)の小滴に適応されることが容易に理解され得る)のとき105サイト/cmのアレイ密度が、都合がよい。なぜなら、サイトのエリア上の均質な10pLの広がりは、1μmの深さにすぎず、かつ、重力がこのような完全な広がりおよび低い表面角度を防止するからである。
【0151】
出射に利用可能な4つの異なる溶融金属組成および10個の小滴に対して、342の可能な組成が存在することが容易に実証され得、同様に、15の小滴に対して、小滴数に関して820の可能な組成が存在する。m個の出射金属を有するd個の小滴組成に対して(ただし、溶融出射容器の中身は、純粋な物質である必要はなく、それら自体アロイであり得る):
【0152】
【数1】

は、d=#の小滴、m=出射されるために利用可能な溶融組成の#に対して#の金属組成として規定される。;S(m)nは、mの利用可能な溶融組成のn個のメンバーを有する固有のセットの#;Z(n,d)nは、S(m)nに対応して、沈着に利用可能なm個のうち用いられるn個のd種の小滴組み合わせの#。さらに、
【0153】
【数2】

CS(n,d),iは、d個の小滴に加えるn個の成分に対する係数のi番目のセット示し、C(n,d)は、この要件を満足する係数セットの総数を表す。;O(n,d)は、CS(n,d)に対応するd個の小滴に対するn個の係数のi番目のセットの可能な順序の数である。
【0154】
例えば、d=10、m=4に対して、4つの容器に、それぞれ、Sn、In、Cd、およびZnを含ませる。
【0155】
1つの金属組成(n=1):
Z(4,10)i=1→C(1,10)ΣO(1,10)=1*1である。なぜならば、唯一の可能な係数が10であり、それは、一方向のみに順序付けられ得る。対応するS(4)は、1つの金属の4つの固有のセットが出射のために選択され得るので、4である。
【0156】
2つの金属組成(n=2):
対応するS(4)は、〔4!/2!〕/2!の固有の2つの金属セットが出射のために選択され得るので、6である。(9,1)等の10に加える2つの負でない、0でない係数のC(2,10)の固有のセットおよび対応するO(2,10)は、[表記法{CS(2,10):O(2,10),CS(2,10),1:O(2,10)...CS(2,10)C(n,d):O(2,10)C(n,d)}によって表示される]である。:
{(9,1):2,(8,2):2,(7,3):2,(6,4):2,(5,5):1};⇒
Z(4,10)i=1→C(2,10)ΣO(2,10)=2+2+2+2+1=9
3つの金属組成:
対応するS(4)は、4([4!/1!]/3!)であり、3つの金属の4つの固有のセットが出射のために選択され得る。10に加える3つの負ではない、0でない係数C(3,10)の固有のセットは、{(8,1,1):3、(7,2,1):6,(6,3,1):6,(6,2,2):3、(5,4,1):6,(5,3,2):6,(4,4,2):3,(4,3,3):3};⇒
Z(4,10)i=1→C(3,10)ΣO(3,10)=3+6+6+3+6+6+3+3=36
4つの金属組成:
対応するS(4)は、4つの金属の1つの固有のセットが出射のために選択され得るので、1(4!/4!)である。10に加える4つの負ではない、0でない係数のC(4,10)の固有のセットは、{(7,1,1,1):4,(6,2,1,1):12,(5,3,1,1):12,(5,2,2,1):12、(4,4,1,1):6,(4,3,2,1):24,(4,4,2,2):6,(3,3,3,1):4,(3,3,2,2):6};⇒
Z(4,10)i=1→C(4,10)ΣO(4,10)=4+12+12+12+6+24+6+4+6=86
上記より、
10n=1→4ΣS(4))*(Z(4,10))=4*1+6*9*+4*36+1*86=288
音響により沈着された溶融金属組成のアロイアレイのために適切な基板は、従来の方法によるかまたは商業的に取得された焼結アルミニウムから形成される。Sn(mp=281.8℃)、In(mp=156.6℃)、Cd(mp=320.9℃)およびZn(mp=419.6℃)成分(例えば、純粋に出射された溶融金属組成)のアレイが染色されたアルミナ基板上の15小滴/アレイサイトの音響沈着によって形成される。基板の厚さは、熱に耐えるために、約0.25cmである。サイト密度は、例えば、15の小滴(820の可能な組成を含む)、例えば、(小滴中に)14(Sn)、1*(In);12Sn、1In、1Cd、1Zn、1Sn、12In、1Cd、1Zn、を有する4つの金属から形成され得るすべての可能な小滴組成が可能になるように選択される。これらの組成および901の残りの組成は、4成分の10小滴組成に対して上記に立証されたように取得され得る。選択された密度は、1000サイト/cmであり、これは、333×333μmの名目上のサイトサイズに対応し、1cmのエリア上に形成される組成の完全な収集を可能にする。アレイの重複の複製が、基板ストリップのサイズにされた商用の顕微鏡スライド上に形成され、二つの同一のアレイの都合のよい分離を可能にするように1/2cmだけ分離される。
【0157】
音響エネルギーは、約1pLの平均的な小滴容量を産生するように調整され、333×333μm平方のエリアを超えない15の小滴出射が、大気圧力および組成、小滴飛行の長さ、基板温度を含む所望の条件下でサイトに提供される。平均小滴サイズが約1pLに調整された後、各金属の15の小滴は、サイト上に音響出射され、出射エネルギーは、これら純粋なサイトの任意がサイトのマージンを超える場合に下方調整される。利用可能な1000の較正用サイトのうち96まで用いた後、各1cm平方のアレイ上に出射される全820の可能な組成に対して十分なサイトが存在するが、そのように作製された単一の出射された成分のサイトは、寸法が冷却に影響して、実質的に異なるジオメトリが精密に同一の物質にならないので、アロイが寸法において他のサイトと同様に属する局所化された領域が十分にある場合に単一の組成サイトとして機能し得る。
【0158】
異なる溶融組成の実際の出射された容量は、放出の異なる音響出射エネルギーを用いることによって等しくなるように調整され得、出射エネルギーが一定に保持される場合により迅速な出射が可能である。各成分に出射された小滴容量と間に余りに広い不一致が存在する場合、冷却組成の全体のジオメトリがその仕上げに応じて広く変化し得るが、これは、それらの密度および溶融状態における原子間相互作用を決定する要因(分極性等)の両方が十分に類似するため、ここに沈着された金属についての場合ではないことがすぐに理解される。すべての場合において、所与のサイトでのアロイの形成のための条件は、常に、再生可能であり、実際の組成およびその組成の他の物理的特性は、すべての記載された表面物理的特徴付け方法を含む物理的方法によって確かめられ得る。
【0159】
Cdの毒性のため、溶融金属の音響沈着は、望ましくない反応および冷却を低減するために分離した雰囲気に制御された低湿度のチャンバー内でアルゴンガス下で実行される。より高い熱容量の不活性ガスおよびより反応性が高いガス(O、およびO/炭化水素等)が、異なる条件下での実験のために用いられ得るが、小滴が溶融状態の基板に到達することを保証するために流体メニスカスと基板と間の距離または出射される溶融試薬の温度またはその両方の調節を要求し得る。
【0160】
較正の後、第一の重複アレイが、記載されたような音響出射によって125℃の温度に維持された基板上にスポッティングされる。15小滴の可能な820の組成のそれぞれは、各サイトに15の小滴を連続して沈着し、15の小滴は、上記の異なる係数構成にしたがって沈着されることによって形成される。金属は、出射された小滴が、飛行距離および圧力、雰囲気の温度および熱容量を含む条件下で溶融された基板表面に到着する金属の融点より十分に大きい既知の温度に維持される。小滴は、最も低い温度で溶融する金属が最初に各サイトに沈着され、溶融温度が増加する順序で、最も高い溶融温度の金属が最後に沈着され(例えば、In、Sn、Cd、Zn)、その結果、より高い溶融温度の金属の連続した小滴は、任意の固体化された物質を溶融する。この手順は、40℃〜425℃の基板温度の範囲で形成されたアレイが形成されるまで5度の間隔での異なる基板温度で繰り返される。
【0161】
(実施例5)
この実施例は、混合することができない流体の小滴を発生する際の集束された音響出射技術の使用を実証する。色素を含む水性の流体は、鉱油の混合することができない層を介して出射され、出射は、6mmの開口および水中で名目18mmの焦点長を有するF=3のレンズで行われた。水は、レンズから水性溶液36μLを含む多数のウェルを有するGreiner387ポリスチレンウェルプレートの底に音響エネルギーを伝導するカップリング流体として用いられた。
【0162】
したがって、水性溶液は、5μg/mlのシアニン−5色素(Pharmacia)および4倍濃度のクエン酸ナトリウムバッファ(4XSOC)、pH=7.0を含むように調整された。青色着色料が、さらに、出射された滴を視覚化することを助けるために加えられた。水性溶液の調整後、1μL、2μL、および4μLの白色鉱油(Rite−Aid)が、ウェルプレート内の3つの別個のウェルに含まれる水性流体上にピペットで取られて、水性溶液上に脂質層を提供する。脂質層の範囲は、全体のウェル深さの約2.7%〜11%であった。
【0163】
トランスデューサに送達されるRFエネルギーは、30MHzであり、150Vのピークツーピークの振幅で65マイクロ秒間送達された。ウェルプレートへのトランスデューサの距離は、出射を達成するために音響エネルギーの焦点を水性層内であるが水性/油性の界面に十分近くに維持するように調節された。安定な小滴出射がすべての3つの場合において観察された。すなわち、すべての出射された小滴の大きさ、速度、および方向が一定であった。比較の目的のために、水および鉱油の小滴は、同一の条件下で出射された。油で覆われた水性流体に対する小滴の大きさは、油で覆われない水性流体に対する小滴の大きさに類似した。沈着された水のみのスポットの平均の大きさは、多孔性表面上、すなわち、ニトロセルロースでコーティングされたガラススライド(Schleicher and Schuell,Inc.,Keene,NH)からのFAST(登録商標)スライド)上に出射された場合に直径でほぼ120ミクロンであった。水/油リザブワーから形成された小滴は、類似のサイズであり、形成されたスポットは、同様に類似のサイズであった。
【0164】
実験は、4XSSCの代わりにジメチルスルホキシド(DMSO)を用いて繰り返された。再度、小滴出射は安定であり、生成された小滴の大きさは、油を含まないDMSO小滴の大きさに類似する(油およびDMSOは、わずかに混和できるが、何時間もの間層に残ったままであり、このため、本発明の目的のために「混合することができない」)。DMSOのみのスポットの走査は、水性スポットより極めて大きい直径を有する。DMSOは、FAST(R)スライド上のニトロセルロースの上層を溶解する傾向があるからである。同一の基板上に形成されるDMSO/油のスポットの大きさはは、より一層一定であり、油は、DMSOと基板との間の保護層として機能することを示している。
【0165】
(実施例6)
本実施例は、ペプチドアレイを発生する際の集束された音響出射技術の使用を実証する。抗ビオチンポリクローナル抗体(Sigma,St Louis,MOから取得される)、緑色蛍光タンパク質(GFP)(Roche Biochemical,Palo Alto,CAから取得される)、抗GFPモノクローナル抗体(Roch Biochemicals,Palo Alto,CAから取得される)、およびリゾチーム(Sigma,St Louis,MOから取得される)の音響出射は、6mmの開口およびリザブワーの流体(40%グリセロール、60%リン酸緩衝化生理食塩水[PBS],pH=7.5)において名目18mmの焦点長を有するF=3レンズを用いて実行される。
【0166】
ペプチド溶液は、ペプチド分子-抗ビオチン、GFP、抗GFPおよびリゾチーム(抗GFP、GFPおよびリゾチームに対して100μg/mLの濃度で(ネガティブコントロールとして))を有する上述のリザブワーの流体中で調製される。溶液は、NOAB Diagnostics(Mississauga,Ontario,Canada)から取得されるアルデヒドコーティングされたスライドおよびEppendorf AG(Hamburg,Germany)から取得されるエポキシコーティングされたスライド上にプリントされた。小滴の大きさは、60ピコリッタであり、120μmのスポットが生成された。スポットは、500μm離れて配置された。プリントされたアレイは、次いで、湿度の高いチャンバ内で15時間室温でインキュベートされ、続いて、PBSリゾチーム(1%重量/容積)内で1分間洗浄され、最後に、1XPBSによって洗浄された。ラベル--(1)100μg/mLのビオチン、および(2)0.5μg/mLのGFP--が0.1%Tween−20(v/v)および1%のリゾチーム(PBS−T−L)を含むPBS溶液に希釈され、プリントされたアレイは、ラベル溶液で90分間室温にてインキュベートされた。スライドは、1XPBSにおいて洗浄され、100μg/mLのCy3−ストレプトアビジンがPBS−T−Lバッファに加えられた。30分の室温でのさらなるインキュベーションの後、アレイは、PBSを用いて一回次いで、3分間0.1%Tween−20(v/v)を含むPBSを用いて3回リンスされ、続いて、PBSを用いて2回リンスした。リンスされたアレイは、窒素ガスのストリームで乾燥され、Axon
4000B(Union City,CA)スキャナー上に走査された。
【0167】
すべてのペプチド物質が、抗体に対するバインディング活性の存在によって、およびGFPの場合蛍光によって確認されるように、アレイ形成した後に活性を維持することが見出された。GFPおよび蛍光性にらばるされた抗体は、ラベルされていないリゾチームより高いシグナルを示し、ここでは、ネガティブコントロールとして用いられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出射イベント間のリザブワーにおける流体表面の位置または向きを決定する方法であって、
(a)流体を含有するリザブワーを音響放射ジェネレータに音響結合するステップと、
(b)該音響放射ジェネレータを活性化することにより、検出音波を生成するステップであって、該検出音波は、該流体表面に移動することが可能であり、かつ、反射された音響放射として反射されることが可能である、ステップと、
(c)該反射された音響放射を解析することにより、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の空間的関係を評価するステップと
を含み、
該ステップ(c)は、
(i)該位置が決定された場合に、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の距離を決定することと、
(ii)該向きが決定された場合に、該音響放射ジェネレータに対する関係における該流体表面の向きを決定することと
のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項2】
リザブワーから流体の少なくとも1つの小滴を出射する方法であって、
(a)流体を含有するリザブワーを音響放射ジェネレータに音響結合するステップと、
(b)該音響放射ジェネレータを活性化することにより、検出音波を生成するステップであって、該検出音波は、流体表面に移動することが可能であり、かつ、反射された音響放射として反射されることが可能である、ステップと、
(c)該反射された音響放射を解析することにより、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の空間的関係を評価するステップと、
(d)流体の少なくとも1つの小滴を出射するために、該流体表面の近くに焦点を有する出射音波を生成するステップであって、該出射音波の強度および方向は、該解析から決定される、ステップと
を含み、
該ステップ(c)は、
(i)該流体表面の位置が決定された場合に、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の距離を決定することと、
(ii)該流体表面の向きが決定された場合に、該音響放射ジェネレータに対する関係における該流体表面の向きを決定することと
のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項3】
前記解析が、前記流体表面の近くに焦点を有する出射音波が生成されることが可能ではないことを示す場合に、前記音響放射イジェクタは、該流体表面に対して再配置されることにより、出射音波が生成されることが可能であることを保証する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記音響放射ジェネレータは、
(i)垂直の運動、
(ii)水平の運動、または
(iii)回転運動
を用いて再配置される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記検出音波は、前記流体表面から小滴を出射するためには不十分なエネルギー性の低エネルギー音響放射波である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記解析は、
(i)前記流体を含有するリザブワーに関連付けられた幾何学データ、
(ii)出射されるべき流体に関連付けられた流体特性データ、または
(iii)いずれかの以前の出射順序に関連付けられたヒストリカルな小滴出射データを用いること
をさらに含む、請求項5が請求項2〜4のいずれか一項のみにしたがうことを条件として、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数の出射イベント間のリザブワーにおける流体表面の高さを決定する方法であって、
(a)流体を含有するリザブワーを音響放射ジェネレータに音響結合するステップと、
(b)該音響放射ジェネレータを活性化することにより、検出音波を生成するステップであって、該検出音波は、該流体表面に移動することが可能であり、かつ、反射された音響放射として反射されることが可能である、ステップと、
(c)該反射された音響放射を解析することにより、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の空間的関係を評価するステップと
を含み、
該ステップ(c)は、
(i)該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の距離を決定することと、
(ii)該音響放射ジェネレータに対する関係における該流体表面の向きを決定することと
のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項8】
リザブワーから流体の少なくとも1つの小滴を出射する方法であって、
(a)流体を含有するリザブワーを音響放射ジェネレータに音響結合するステップと、
(b)該音響放射ジェネレータを活性化することにより、検出音波を生成するステップであって、該検出音波は、流体表面に移動することが可能であり、かつ、反射された音響放射として反射されることが可能である、ステップと、
(c)該反射された音響放射を解析することにより、該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の空間的関係を評価するステップと、
(d)流体の少なくとも1つの小滴を出射するために、該流体表面の近くに焦点を有する出射音波を生成するステップであって、該出射音波の強度および方向は、該解析から決定される、ステップと
を含み、
該ステップ(c)は、
(i)該音響放射ジェネレータと該流体表面との間の距離を決定することと、
(ii)該音響放射ジェネレータに対する関係における該流体表面の向きを決定することと
のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項9】
前記解析が、前記流体表面の近くに焦点を有する出射音波が生成されることが可能ではないことを示す場合に、前記音響放射イジェクタは、該流体表面に対して再配置されることにより、出射音波が生成されることが可能であることを保証する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記音響放射ジェネレータは、
(i)垂直の運動、
(ii)水平の運動、または
(iii)回転運動
を用いて再配置される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記検出音波は、前記流体表面から小滴を出射するためには不十分なエネルギー性の低エネルギー音響放射波である、請求項7〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記解析は、
(i)前記流体を含有するリザブワーに関連付けられた幾何学データ、
(ii)出射されるべき流体に関連付けられた流体特性データ、または
(iii)いずれかの以前の出射順序に関連付けられたヒストリカルな小滴出射を用いること
をさらに含む、請求項11が請求項8〜10のいずれか一項のみにしたがうことを条件として、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【公開番号】特開2010−281834(P2010−281834A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199377(P2010−199377)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【分割の表示】特願2002−528387(P2002−528387)の分割
【原出願日】平成13年9月25日(2001.9.25)
【出願人】(501369248)ピコリター インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】