説明

複数の注入ポンプを制御する方法及び装置

【課題】本発明の目的は、複数の注入ポンプを制御するための方法及び装置を提供することである。
【解決手段】本発明では、各注入ポンプ(2〜10)は、それぞれ割り当てられた注入剤を有し、その注入剤は、注入として、注入ポンプに割り当てられた予め決定できる期間内で、予め決定できる注入速度で生体に投与されるものであり、注入ポンプ(2〜10)は、種々の注入を時系列で活性化及び非活性化するための制御データを自発的に交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の注入ポンプを制御する方法及び装置に関する。各注入ポンプは、請求項1及び請求項14の前文のように、それぞれ割り当てられた注入物質("infusion substance")を有し、その注入物質は、注入("infusion")として、それぞれの注入ポンプに割り当てられた予め決定できる期間内で、予め決定できる注入速度で生体に供給される。
【背景技術】
【0002】
病院及び他の医療施設において、薬物("medication")及び/又は調合薬("pharmaceutical")、ビタミン、栄養薬、麻薬("drugs")、酵素、代謝産物などを、注入ポンプとして知られている物によって、重病の患者の静脈内に("intraveneously")、すなわち、血液中に直接、生体組織に、消化管、呼吸器系、粘膜、又は皮膚に投与することが通常行われている。本質的に2つの設計の注入ポンプが、市場で利用できる。第1の設計は、注射ピストンを制御された進行速度で動かして、注射の中身を静脈内に供給する注射ポンプである。第2の設計は、より高い高さにある注入ボトル又は注入袋から、制御された速度で注入液を患者に供給する普通のポンプである。
【0003】
現在の確立された臨床診療では、薬物及び調合薬が、もはや手動注入によって供給されるのではなく、予測できる薬の投与("drug administrations")が注入ポンプのために準備され、注入ポンプによって患者に投与されるため、このような注入ポンプは、治療が成功するように高精密に及び高信頼性で作動しなければならない。薬物は、しばしば一定の流速で又は間欠的に、又は流速プロファイルを用いて可変の速度で、多数の注入ポンプを備えたシステム又は装置を使用して投与される。システム又は装置が備える注入ポンプの数は、典型的な集中治療ベッドでは、一般的に10個以上である。心臓病の患者を治療するときのように重病の患者の集中治療においては、20個以上の注入ポンプが使用される場合がある。
【0004】
今まで、このような注入ポンプは、制御され及び予めプログラムされて、個々のユニットとして動作している。すなわち、各注入ポンプは、個々にプログラムされて、例えば、その注入ポンプに含まれる所定の注入物("infusion substance")の注入を活性化("activate")又は非活性化("deactivate")している。これは、個々の注入ポンプを別々に起動して動かすことを意味する。また、これは、これが担当の医者又は看護スタッフ自身により行われないかぎりでは、異なる薬物が患者に与えられるときに互いにどのように作用するかを考慮する術がないことを意味する。
【0005】
所定時間にわたって供給される、所定の注入速度での注入の効能を自動("Automatic or self-acting")で考慮することは、個々の注入ポンプとその注入ポンプに割り当てられた注入剤("infusate")によって、伝統的にのみもたらされうる。例えば、注入剤が患者に対してどのような効能を持っているかを監視するのに必要な患者の生理学的なデータは、受信され及び/又は各注入ポンプに個々に入力されて、注入を活性化、非活性化、又は中断する新しい時間の長さが、その注入剤専用のデータを監視してそれに応じて患者にその注入剤を投与することに基づいて、再計算される。治療に含まれる他の注入ポンプの注入剤の効能は、考慮に入れない。
【0006】
今まで、例えば、患者に麻酔をかけるために、プロポフォール("propofol")が時間の2つの区分にわたって投与されている。第1の時間区分では、より低い濃度を投与することにより、薬物("medication")により生じる注入の痛みを低減する。第2の時間区分では、できるだけ薬物("drug")の濃度を高くして投与することにより、注射又は袋を変更する必要なしに、できるだけ長く患者を麻酔がかかった状態に維持する。一般的に、これは、プロポフォールが、第1の時間区分内で1%の液剤("solution")として投与されるようにプロポフォールを希釈して、その時間区間内での注入の痛みを和らげることを含む。患者が意識を失うとすぐに、第2の時間区分で2%のプロポフォール液剤が投与される。このような1%から2%へのプロポフォール液剤の切り換えは、手術("operating")スタッフ又は注入ポンプのオペレータにより実行される。人間によりこの切り換えを行うと、危険が生じる。特に、非常に忙しい臨床の日常生活においては、この切り換えが正確に又は適切な時点で行われず、患者に健康上のリスクを与えてしまう。これは、注射戦略の基準として薬物動態モデルを使用するときに、特に真実である。なぜなら、薬物動態モデルが基にしているアルゴリズムは、もし間違いが起こると実際に投与されるプロポフォールの量と異なる濃度を指示するからである。これは、上述した注入剤("infusate")及び薬物("drug")の少なくとも1つが非常に遅く又は非常に速く投与されることを必然的に意味する。これは、1%のプロポフォール液剤を備えた1つの袋又は注射器から、注入ポンプに2%のプロポフォール液剤を備えた第2の袋又は注射器を用いて、一方のプロポフォール液剤から他方のプロポフォール液剤に切り換えることが、患者に安全性のリスクを与えてしまうことを意味する。なぜなら、手術スタッフが1%のプロポフォール液剤を十分長く投与しない危険があり、麻酔が十分に患者にかからない場合、患者が注入の痛みを受けるからである。1%のプロポフォール液剤が十分長く投与されない場合、言い換えると、これは、2%のプロポフォール液剤があまりに長く投与されることを意味する。すわなち、患者は、過量摂取となり、関連する全ての危険を伴う。
【0007】
2つの異なった希釈をされたプロポフォール液剤を備えた、2つの独立して機能する注入ポンプを使用すると、一方のプロポフォール液剤から他方のプロポフォール液剤に切り換えるときに安全性のリスクを患者に与えてしまう。例えば、低濃度のプロポフォール液剤が十分に長く投与されない場合、患者は、まず最初に注入の痛みを受け、それから薬物を過剰に与えられる。又は、高濃度のプロポフォール液剤が十分長く投与されないと、患者は十分に麻酔されない。
【0008】
集中して、連続的に、同時に多数の注入液剤を投与するための装置が、DE3817411C2により知られている。これにより、搬送線は、共通の患者線を経由して、アダプタによって注入液剤を投与する。これは、注入液剤を同時に運び、それらを投与する前に混合する。中央制御装置に保存されたプログラムが、個々の注入ポンプの搬送速度を予め決定するけれども、注入ポンプは、注入速度、又は注入が実効値に応じて与えられる時に関して、互いに調整されていない。
【特許文献1】独国特許発明第3817411号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の課題は、正しくない投入による危険を最小限にし、作業を少なくし、使い勝手を良くする、複数の("a number of")注入ポンプを制御するための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、方法においては請求項1の特徴により解決され、装置においては請求項14の特徴により解決される。
【0011】
本発明の要点の一つは、複数の注入ポンプを制御するための方法及び装置であって、各注入ポンプは、それぞれ割り当てられた1つの注入剤を有し、その注入剤は、注入の予め決定できる速度でその注入ポンプに割り当てられた期間内で生体に投与されるものであり、注入ポンプは、制御データを交換して、自発的に互いに連携して異なる注入を活性化及び非活性化するという事実にある。本発明のような方法によれば、注入ポンプ装置内で個々の注入ポンプを活性化及び非活性化することが可能になる。これは、行われる治療の最中に正しい時間で個々の注入ポンプをそれぞれ動作する必要がないことを意味する。これは、人為的ミスの結果である正しくない投入の危険を除去して、できる限り治療の健康のもとで患者に対する危険を除去する。その代わりに、注入ポンプから第1の注入を行っている期間が終了して、他の注入ポンプを活性化することにより、他の注入ポンプから患者に第2の注入が投与されるとすぐに、制御データは、個々の注入ポンプを接続するデータ線を介して、1以上の予め選択された注入ポンプに自動的に送信される。
【0012】
複数の注入剤("infusate")の同時に時系列に部分的に重複する複数の注入("infusion")が、異なる注入ポンプから投与されうることが考えられる。異なる注入が患者に投与される時間の長さの開始及び終了時間が、自発的にそれらの間で制御データを交換する個々の注入ポンプにより、手術する("operating")人員を必要とせず、プリセットプログラム又は薬理学モデルに基づく制御処理の事前の入力を用いて、決定される。
【0013】
同様に、2つの異なる薬物又は調合薬の活性剤が、代わるがわる、しかし互いに時間を調整されて、2つの異なる注入ポンプから患者に投与されうる。このような制御処理に基づく治療は、注入ポンプの動作に介入する必要がある診療所のスタッフがいなくても、長期間、これらの2つの薬物を投与することを可能にする。
【0014】
注入ポンプを通信させることにより、化学的影響、又は場合によっては患者モデルに従って、種々の注入ポンプに分離された薬物の効能の影響を考慮に入れることを可能にする。注入ポンプの一つは、選択されることを拒み、又は他の注入ポンプが選択されることを拒否することができる。注入ポンプのようなこれらの注入ポンプに割り当てられた薬物を注入剤として投与することは、全混合薬を沈殿させるなどの不都合な化学反応を引き起こしたり、又は患者に副作用を与えたりすることに気付くべきである。同様に、効能と化学反応の両方に関して最大のプラス効果が得られるなら、注入ポンプが、他の注入ポンプ又はそれらに割り当てられた薬物("medication")と併用されること、又は手術スタッフの一員がそれ又はそれらを選択できるようにすることを提案しても良い。
【0015】
注入により与えられる治療と同様に、又はその治療に代えて、調合薬は注入されずに、他の注入ポンプが、例えば、より低い速度のKVO速度に合うようにするために、食塩水を投与するのに用いられることができる。KVO速度は、液体が処理を通して注射されない場合に、静脈と患者への進入路が閉鎖しないようにすることを保証しようとする。
【0016】
制御データは、各注入ポンプに割り当てられた、好ましくは注入ポンプに組み込まれた制御モジュールによって、直接注入ポンプ間で交換されて、各個々の注入ポンプ内で処理されるか、又は中央制御装置によって交換されて、中央制御装置により、必要に応じて、通信及び/又は個々の注入ポンプ間で交換されるデータが送信され、転送され、及び操られる。この点を考慮して、個々の制御ユニット又は中央制御装置は、少なくとも制御処理に入るための制御を備え、2つ以上の注入ポンプの種々の注入を活性化及び非活性化する制御を行う。好ましくは、制御処理は、これらの2以上の注入ポンプの注入を同時に活性化、非活性化、及び中断の少なくとも1つを行う。
【0017】
好ましい態様において、この方法の注入の活性化及び/又は非活性化は、共通の始動制御を通じて開始され、共通の停止制御を通じて終了されうる。これに代えて、1回以上の開始制御を実行することにより、異なる注入ポンプを順々に活性化することができる。逆に、停止制御を実行することにより、予め決定できる順序で、個々の注入ポンプを非活性化することができる。
【0018】
この制御処理は、手術スタッフにより選択される治療方法("treatment regime")に割り当てられ、その治療方法は、バーコードの処理により決定される。例えば、これにより、制御ユニット又は中央制御装置が、注入ポンプが自動的に含む注入剤のために、治療方法に割り当てられうる注入ポンプを自発的に選択するか、又はオペレータに対して選択させるために注入ポンプを表示する。これは、治療方法に要求される注入剤を既に含む注入ポンプを自動で指定する。これは、所望の注入速度と、注入ポンプが含む注入剤の容量と、個々の注入ポンプの他のパラメータ、例えば、最大可能な流速とに応じて、行われうる。
【0019】
注入ポンプの一つは、好ましくは、他の注入ポンプによって投与される薬学的活性剤に対する希釈剤("dilutant")を生体に投与する。ここで交換される制御データは、希釈剤の注入の非活性化を引き起こし、薬学的活性剤を活性化し続けることができる。これは、プロポフォールのような麻酔薬に対する希釈剤を患者に投与する注入ポンプによって、手術スタッフ側の行為を必要とせずに、自発的にスイッチを切り、濃度を増加させ、麻酔を引き起こすことを可能にする。これに代えて、患者が既に意識を失ったことをいったん確立すると、手術スタッフが、ボタンを簡単に押すことにより、希釈剤を含む注入ポンプのスイッチを切ることができる。その結果、患者はもはや注入の痛みを受けないため、麻酔薬の濃度を増加できる。これは、薬物動態モデルを用いたときの2つの異なる期間の麻酔薬の濃度を混同することを避ける。
【0020】
患者の測定された又は推定された生理学的なデータは、制御ユニット又は中央制御装置に入力され、又は治療中に継続的に受信されて、注入速度と、個々の注入("infusion")が行われる時間の長さと、活性化及び非活性化の時間と、他の注入パラメータとを調整する。場合によっては、制御データを必要な注入ポンプに送信することを含む所定のプログラムステップを通じて自発的に調整する。
【0021】
個々の注入ポンプ内の制御ユニット及び/又は中央制御装置と、場合によっては制御機器("controls")と同様に、このような方法を行う注入装置は、好ましくは、各注入ポンプに又は中央表示装置として、制御データ、生体の測定された生理学的なデータ、注入ポンプの活性化及び非活性化の時間、注入の期間、及び注入速度のうち少なくとも1つを表示するための表示装置を有する。これにより、手術スタッフは、患者の治療の状態をいつでも継続的に監視して、時期尚早に治療を中止し、又は治療を延長し、又は治療のパラメータを変更することができる。
【0022】
特に、中央制御装置を使用する場合、注入装置内にある注入ポンプを表示するための表示装置は、好ましくは、中央ユニットに連結されるか、又は中央ユニットと一体化される。その結果、治療方法に必要とされる複数の注入ポンプの流速を、例えば共通の図表として、同時に表示することができる。また、制御ユニットは、表示装置を使用して、個々の注入ポンプの流速に加えて又は代えて、患者の測定された及び/又は推測された生理学的なデータを再生することもでき、流速よりも治療方法が持っている何らかの効果により関連する複合の抽象的な表示を提供する。
【0023】
個々の注入ポンプのための警報器は、注入ポンプが空になろうとしているときに警報器が作動されるように、中央制御装置に作られうる。好ましくは、本発明のように注入ポンプにデータを交換させることにより、不必要な警報器の数を減らす結果をもたらす。例えば、一つの注入ポンプが現在の流速で空になろうとしていても、システムの他の注入ポンプの注入パターンが既に知られているため、これは起こらない。
【0024】
さらに有利な態様が、下位の請求項から明らかであろう。
【0025】
利点と適合は、図と関連した明細書から得られうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の実施形態の注入ポンプ装置の配置を示す概略図である。注入ポンプ装置1は、注入ポンプ2〜10を有する。注入ポンプ5〜10は、注射ポンプである。
【0027】
注入ポンプは、注入ポンプホルダーの共通の支柱11に配置される。個々の注入ポンプ2〜10は、このようなホルダー、又は多かれ少なかれ任意の他のデザインのホルダーに空間的に配置されうる。設けられた個々の注入ポンプは、データ線により接続される。データ線は、支柱11の内部に配置されうる。このような接続は、連続的に且つ星形に作られて、いずれの場合にも制御データを他の注入ポンプに送信することができる。
【0028】
データは、ケーブル接続に代えて、有利に無線で送信されても良い。これは、例えば、変調された超音波、変調された光波(例えば、IrDa)、又は電波(例えば、Bluetooth)によって行うことができる。
【0029】
表示装置を備えた中央制御装置13は、個々の注入ポンプ内に設けられた個々の制御ユニットに代えて又は加えて、一つのホルダー部14に配置されうる。個々の注入ポンプ内に設けられた個々の制御ユニットは、ここではさらに詳細に示されない。この制御及び表示装置は、全ての注入ポンプを、特にこれらの注入ポンプ2〜10の個々の注入を活性化及び/又は非活性化するために交換する制御データに関して、中央で、プログラムし、作動し、及び監視するのに使用されうる。
【0030】
注入ポンプ間の支柱部15内で行われるデータ接続は、注入ポンプの注射器16の摺動動作(作動/停止)の相互依存性を制御するのに必要な制御データを搬送する。
【0031】
各注入ポンプは、患者の生理学的なパラメータ又は注入ポンプ内の制御ユニットをプログラミングするための付加的なパラメータを入力するためのキーボード17を備えている。
【0032】
また、流体タンク18,19,20がある。共通の注入線12は、患者に共通の注入混合薬を供給する。
【0033】
集中治療中の患者が必要とする薬物("medication")は、集中治療が行われている間、変化するため、多数の注入ポンプを備えた注入装置は、動的なシステムとみなされるべきである。システムの部品がその場で("on the run")動的なシステムに追加され、又は動的なシステムから取り除かれうる。動的なシステムは、動作中のパラメータ、例えば、投与される薬物("drugs")、投薬される用量("dosages")、投与時間などを、その場で調整するのに用いられうる。これは、継続的に測定される患者の生理学的なデータが自動的に検出されなければならないことを意味する。これは、患者から個々の制御ユニット又は中央制御装置への測定データ線により行われうる。この測定データ線は、ここでは詳細に示されていない。
【0034】
さらに又はこれに代えて、薬物動態モデルは、注入装置に保存されうる。これにより、薬物動態モデルは、適当なモデル化を用いて、一度与えられた薬物("drug")が、どのように患者の身体に行きわたるかをシミュレートする。これらのモデルは、薬物に特有であり、患者の体重や年齢のような他の入力パラメータを含む。目標の変量は、患者の血液の所望の血漿中濃度、すなわち、血液内の薬物の所望の濃度のようなものである。この目標の濃度は、時間がたっても一定でありうる。これは、身体が時間とともに吸収する薬物の量を単に取り替えることを意味する。又は、この目標の濃度は、時間とともに変えられる。
【0035】
薬物動態モデルを用いると、制御アルゴリズムを用いて、血液中の薬物の濃度が目標濃度と等しくなるように、個々の注入ポンプの流速を制御することが可能である。このような薬物動態モデルは、個々の注入ポンプ自身の制御ユニット又は中央制御装置13内の両方で実行されうる。
【0036】
交換可能な制御データを通じて互いに接続された注入ポンプは、処方箋("prescription sheet"、今までは、通常、医者が手で完成させ、薬の処方を含み、介護スタッフは1日の中で薬物を投与する。)を注入ポンプの制御ユニットに自動的に送信できる。注入ポンプは、それらのデータ接続ネットワーク内に1以上のインターフェースを有し、総括的なデータ処理装置への接続を確立する。処方のスケジュールは、手動で記入される処方箋の代わりに、書き込まれる。これに代えて、処方のスケジュールは、中央制御及び/又は表示装置に、又はデータ用途のために互いに連結された注入ポンプの制御ユニットの一つに直接入力されうる。
【0037】
図2は、本発明の実施形態の手順を示す概略のフローチャートである。ステップ21で、注入装置は、手術スタッフに、個々の治療方法に割り当てられたバーコードを読むために外部から注入ポンプに接続されたバーコードスキャナを用いて、バーコードを走査して所定の治療を選択するように、中央表示装置又は注入ポンプの一つに設けられたディスプレイにより指図する。
【0038】
この場合、選択された治療方法は、プロポフォールと希釈剤を用いて、患者に麻酔をかける。プロポフォールと希釈剤を用いた治療方法がいったん選択されると、注入装置又は個々の注入ポンプは、決定される注入ポンプについて関連付けられたOTCIアルゴリズムを自動的に確立する(ステップ22)。
【0039】
ステップ23で、選択された治療方法が、その治療方法に割り当てられた、注入装置及び/又はシステムのポンプを既に有しているかどうかが自動的に確立される。これは、例えば、一方の注入ポンプがすでにプロポフォールで満たされ、もう一方の注入ポンプが対応する注入剤で満たされているかどうかによって、行われうる。
【0040】
このようなポンプがすでに手元にある場合、ステップ24でこの割り当てられたポンプの選択を確認するよう手術スタッフに指示する。
【0041】
ステップ23で注入ポンプが自動で割り当てられていなければ、ステップ25で、代わりに必要な注入剤を割り当てられた個々の注入ポンプの制御ユニットに、それらの注入剤がその治療方法で必要とされるべきかどうかを問い合わせる。ステップ26で、手術スタッフが提示されたポンプを選択した場合、ステップ27でタイムテーブルが起動される。
【0042】
このようなタイムテーブルにより、例えば、注入剤としてプロポフォールを備えた第1の注入ポンプと、脂肪を主成分とする("fat-based")ような希釈剤を備えた第2の注入ポンプとを、同時に始動させる。2つの注入剤は混合されて、共に患者に投与される。これにより、プロポフォール液剤は、1%未満の濃度で投与される。希釈されたプロポフォールは、注入の痛みをほとんど与えずに投与されうる。
【0043】
患者が意識を失うとすぐに、予め決定できるタイムテーブルを用いて、制御データは第1の注入ポンプから希釈剤を含む第2の注入ポンプに送信されうる。これにより、第2の注入ポンプをオフに切り換えて、プロポフォールをより高い濃度で投与し、患者の麻酔状態を維持する。
【0044】
統括している医者又は手術スタッフが、麻酔をかける処理を時期尚早に中断することを望むと、2つの注入ポンプのうち1つに設けられたボタンを押すことにより、そのようにできる。このボタンは、2つの注入ポンプの間で制御データを送信することにより、同時に両方の注入ポンプをオフに切り換える。
【0045】
タイムテーブルがいったん活性化されると、注入装置又は個々の注入ポンプは、ステップ28で「治療開始」を表示する。それから、ステップ29で治療が開始する。
【0046】
図3は、注入装置を提示することにより、本発明の方法がどのように働くかを示す概略の図である。矢印30で示すように、データを中央制御装置31に入力して、この場合のプロポフォールを備えた治療で望まれる手順の順序を予めプログラムする。プロポフォールを含む注入ポンプ35及び麻酔薬のプロポフォールのための希釈剤("dilutant")を含む注入ポンプとデータを対話形式で交換する制御装置31により、特に矢印32,33,及び34で示されるように、注入ポンプ35及び36と中央制御装置31とが通信し、注入ポンプ35と注入ポンプ36とが通信する。これは、両方向を向く矢印("double arrow")34が示すように、注入ポンプ間でプログラムし及びデータを交換することを可能にする。これにより、患者41が十分に麻酔をかけられたら場合に、希釈剤、すなわち注入ポンプ36をオフに切り換えることができる。
【0047】
その時がくるまで、プロポフォールと希釈剤の両方が、線37及び38を通って、ミキサー39内で混合され、共通の線40を通って患者41に投与される。
【0048】
図4は、他の注入装置を用いた、本発明の方法の概略図である。再度、矢印42で示されるように、制御装置43をプログラムするためのデータが入力される。中央制御装置43と個々の注入ポンプ46,47及び48との間でデータ交換線44及び45を通じてデータを交換することにより、入力されたデータは注入ポンプに移動する。注入ポンプ46,47,48は、このデータを中央制御装置43と交換し、例えば、線44と線45を通じて及び特に線49,50によって注入ポンプ間で適切な注入ポンプを選択し、それらの注入ポンプの適切な組み合わせを調べる。
【0049】
注入ポンプ46,47からの注入剤は、線51,52を通ってミキサー54に運ばれる。ここで、注入剤は互いに混合されて、線55を通って患者56に移される。また、注入ポンプ48からの注入剤は、線53を通って患者に移される。それから、患者の生理学的なデータは、測定装置58と線57を通って、測定される。
【0050】
患者の測定されたデータは、接続部60を通って直接的に、又は接続部59,62を通って患者モデル61を介して間接的に、制御装置43にフィードバックされる。測定された生理学的なデータは、患者モデル61により特定されたデータと比較される。
【0051】
この出願の文書で開示された全ての特徴は、それらが従来と比べて、個々に又は組み合せで新しい範囲において、本発明に不可欠なものとして請求される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態の複数の注入ポンプを備えた注入装置の模範の配置を示す概略図
【図2】本発明の方法に含まれる処理を示すフローチャートの概略図
【図3】本発明の実施形態において、本発明の装置を用いた本発明の方法を示す概略図
【図4】本発明の他の実施形態の装置を用いた方法の概略図
【符号の説明】
【0053】
1 注入装置
2〜10 注入ポンプ
11 支柱
12 注入線
13 中央制御装置
14,15 支柱部
16 注射器
17 入力要素
18,19,20 液体容器
21 バーコードを走査するステップ
22 OTCIアルゴリズムを選択するステップ
23 ポンプを割り当てるステップ
24 選択されたポンプの確認を命令するステップ
25 割り当てることができる注入ポンプを問い合わせるステップ
26 割り当てることができる注入ポンプを選択するステップ
27 時間のスケジュールを有効にするステップ
28 「治療開始」を表示するステップ
29 利用開始のステップ
30,42 データ入力
31,43 中央制御装置
32,33,34,44,45,49,50 データ交換線
35,36,46,47,48 注入ポンプ
37,38,40,51,52,53,55 注入線
39,54 ミキサー
41,56 患者
57,59,60 測定されたデータの送信線
58 測定装置
61 患者モデル
62 患者モデルのデータと測定データとの比較

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の注入ポンプ(2〜10)を制御するための方法であって、
各注入ポンプ(2〜10)は、それぞれ割り当てられた注入剤を有し、その注入剤は、注入として、前記注入ポンプに割り当てられた予め決定できる期間に、予め決定できる注入速度で生体に投与されるものであり、
前記注入ポンプ(2〜10)は、種々の注入を時系列で活性化及び非活性化することを調整するための制御データを自発的にそれら自身の間で交換することを特徴とする方法。
【請求項2】
各注入ポンプ(2〜10)は、各注入ポンプに割り当てられた制御ユニットによって制御データを処理し、その制御データを少なくとも1つの他の注入ポンプ(2〜10)に送信することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各注入ポンプ(2〜10)は、中央制御装置(13)に接続され、前記中央制御装置(13)によって制御データを処理し、その制御データを少なくとも1つの他の注入ポンプ(2〜10)に送信することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中央制御装置(13)は、複数の個別の制御ユニットからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの注入ポンプ(2〜10)からの注入が、常に活性化していることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
全ての注入ポンプ(2〜10)からの注入が、同時に活性化及び/又は非活性化されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御ユニット又は前記中央制御装置の制御は、少なくとも2つの注入ポンプについての異なる注入の活性化及び非活性化を制御する少なくとも1つの制御処理を入力するために使用されることを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記制御処理は、2以上の注入ポンプ(2〜10)による注入に対して活性化、非活性化、及び中断のうちの少なくとも1つを行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
制御処理が割り当てられた治療方法を選択するステップは、その治療方法に割り当て可能な注入ポンプ(2〜10)を自発的に選択し、又はオペレータに対して選択させるためにその注入ポンプ(2〜10)を表示する、ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの注入ポンプ(2〜10)は、他の注入ポンプによって投与される薬学的活性剤に加えて、希釈剤を生体に投与することを特徴とする、請求項1から請求項9のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記制御データは、前記薬学的活性剤を活性化し続けている間、希釈剤の注入を非活性化することを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
生体の測定された又は推測された生理学的なデータが、注入速度、期間、及び活性化及び非活性化時間のうち少なくとも1つを変更するために用いられることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
表示装置は、前記注入ポンプの注入速度、生体の測定された又は推測された生理学的なデータ、制御データ、前記注入ポンプの活性化及び非活性化時間、及び注入期間のうちの少なくとも1つを表示することを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項14】
複数の注入ポンプ(2〜10)を制御する装置であって、
各注入ポンプ(2〜10)は、それぞれ割り当てられた注入剤を有し、その注入剤は、注入として、注入ポンプに割り当てられた予め決定できる期間内に、予め決定できる注入速度で生体に投与されうるものであり、
種々の注入を時系列で活性化及び非活性化するための制御データが、複数の制御ユニット又は中央制御装置によって、注入ポンプ(2〜10)間で自発的に交換されうることを特徴とする装置。
【請求項15】
各注入ポンプ(2〜10)の1つの制御ユニットは、制御データを処理し、その制御データを他の注入ポンプ(2〜10)の制御ユニットに直接送信することを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記中央制御装置(13)、前記注入ポンプ(2〜10)及び前記注入ポンプ間で送信される前記制御データは、互いに依存して時系列で制御されることを特徴とする、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記注入ポンプ(2〜10)及び/又は前記中央制御装置(13)は、制御コマンドを入力し、制御処理を選択し、前記制御処理に必要な注入ポンプを選択し、及び生体からの生理学的なデータを入力することのうちの少なくとも1つの制御を行うことを特徴とする、請求項14から請求項16のいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項18】
制御データ、生体の測定された又は推定された生理学的なデータ、注入ポンプが活性化及び非活性化される時間、注入期間、及び注入速度のうちの少なくとも1つを表示する、各注入ポンプに設けられた表示装置及び/又は中央表示装置を備えることを特徴とする、請求項14から請求項17のいずれかの請求項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−206571(P2011−206571A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−138800(P2011−138800)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【分割の表示】特願2008−511680(P2008−511680)の分割
【原出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(591002131)ベー・ブラウン・メルズンゲン・アクチエンゲゼルシャフト (12)
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】