説明

複数の発泡ガラス粒体を結合材により一体化せしめた透水性成形物製造方法。

【課題】 使用済み廃ガラスを発泡させて得た軽量発泡ガラス粒体を結合材により成型物とし、高透水性、軽量の性能を持ち、かつ使用済み廃ガラスリサイクルを可能とする製品の提供。
【解決の手段】 発泡ガラス粒体製造時に表面に生じるつぼ状空隙部を結合材にて充填し、硬化時にアンカー硬化を発現せしめることにより、発泡ガラス粒体或いはその一部を他の材で置換した材料を型内で硬化せしめる成型方法を手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡ガラス粒体製造時の破砕過程で生じる発泡粒体表面のつぼ状空隙部が、結合材との混練時に発泡ガラス体表面のつぼ状空隙部に結合材が充填され、その固化によるアンカー効果により、粒体相互結合が強固になり複数の発泡ガラス粒体集合体となりことを知見し、発泡ガラス粒体の一部を他の粒体に置換しても同様に結合一体化が可能であり、さらに、その内部に補強材を分散すれば強度が向上することも知見した。このアンカー状結合、接着の事実から結合材を以って複数粒体を結合し透水性成型物の成型方法に関する。
【技術の背景】
【0002】
従来、土木分野で使用されている透水性成型物には、石を骨材としセメントを以って固化し、空隙を残すように成型したものがポーラスコンクリートとして代表的である。しかし、この最も身近なポーラスコンクリートにおいては、単なる表面の平滑な石材粒を使用し、セメントによって固化している。そのために、粒体相互の結合力が弱く、結合材を大量に使用する必要があった。その結果、これらの技術による製品は、空隙率が低く、製品重量が大きな欠点を持っており、そのために、施工性、性能面で大きな問題点があり、空隙率を上げることによる透水性向上、軽量化を求められていた。発泡ガラス粒体、或いは他の粒体を混合した材料と結合材を組み合わせて複数粒体をその表面状態に配慮し、アンカー効果による強固な結合を行ない、高空隙率、軽量、不燃の成型物を成型する技術はなかった。本発明は、これらの問題点を発泡ガラス粒体製造に際し生じる表面のつぼ状空隙を結合に最大限利用したものであってこのような製造方法は無かった。
【0003】
本発明に関係する資料は次の通りである。
【特許文献1】「特願 2003−178778
【特許文献1】「特願 2004−212320
【非特許文献1】「日本実業出版社 接着剤の知識
【非特許文献1】「日本材料科学会 接着剤と材料
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、発泡ガラス粒体単独、或いは、その一部を他の粒体に置換して結合材により強固な結合を行い、高透水性、軽量の特性を最大限に発揮した成型物製造の技術を提供すること。
【課題を解決する手段】
【0005】
発泡ガラス粒体の表面には、発泡と破砕工程で生じたつぼ状空隙部が多数残っている。その大きさは、0.1〜2ミリ程度の気泡跡である。ミキサーにおいて、当該発泡ガラス粒体と結合材、たとえば、ポルトランドセメントおよび水混合物を混練した場合、この気泡跡に結合材が容易に入り込み、型へ充填後の結合材硬化結合により複数の発泡ガラス粒体相互を一体化し、成型物とすることが出来る。その際の結合形態は、アンカー効果による結合であって、ブロック化ができる。このように、成型物は発泡ガラス粒体の集合体となり、その結合空間部は、気体或いは液体を通過せしめ得る空洞部を持つ構成となる。発泡ガラス粒体の一部を他の粒体に置換しても同様の効果を上げることが出来る。この原理を問題解決の手段とした。
【作用】
【0006】
本発明で使用する発泡ガラス粒体(1)は、使用済みビン或いは生産残材として生じるガラス端材を微細に破砕し、この破砕粉に炭酸カルシュウムを加えて焼成すると、炭酸カルシュウムが高温により分解して酸化カルシュウムと炭酸ガスとなり、その発生炭酸ガスが熔融状態のガラス流動体内部に分散し、気泡部を生じせしめる事は良く知られている。この発泡体を冷却しても気泡部(6)は破損せず残存することから発泡ガラス体が生産できることも良く知られている、この気泡を持つ発泡ガラス体を破砕機にて破砕し、粒体を製造すると表面に軽石を割った状態と同様の気泡破損後のつぼ状空隙部(5)を表面に持つ発泡ガラス粒体化すると出来る。本発明者は、そのつぼ状空隙部(5)形状が結合に有効であり、結合材が浸入、充填可能な大きさであり、容易にアンカー結合効果を上げうる構造をもつことを知見した。従って、本発明の結合原理からすれば、発泡ガラス粒体(1)は発泡ガラス体を破砕して製造されるか、製造時に表面につぼ状空隙部(5)が生じる製造方法で製造されなければならない。発泡ガラス体破砕前の内部に於いては、独立気泡が無数に分散した状態になっている。それは一般的に球形に近いものである。この発泡ガラス体を破砕すると内部から表面に出た気泡は、外面に球形気泡部が破損したつぼ状空隙部を出現せしめることが出来る。その形状は、球をカットした状態であり、本発明に係る文面では、総称して述べている。
【0007】
本発明は、上記発泡ガラス粒体(1)と結合材(2)を混練することによりつぼ状空隙部(5)に結合材を充填し、その後、成型機或いは型に充填固化することにより、発泡ガラス粒体(1)を連結したブロック或いは板状等の成型物を製造することが出来る。
【0008】
発泡ガラス粒体(1)は、その製造条件により内部に生じる気泡の大きさが異なり、更にその破砕によって製造した発泡ガラス粒体表面状態も異なる。本発明で使用する発泡ガラス粒体は、比重1.6〜0.7の範囲の使用が好ましい。比重の大きなものは、粒化に際して発泡ガラス粒体表面の破砕気泡部が少なく、接着にかかわるつぼ状空隙部(5)が少なくなる。そのために、接着不良を起こし易く、成形物の強度不足となることがある。叉、成型品の比重も大きくなり他の類似製品との競合において好ましくない。一方、発泡ガラス粒体比重が低い場合は、発泡ガラス粒体強度が急激に低下し、そのために成型品の耐圧強度が低下し、成型品の用途が限定されることから、比重1.6〜0.7の範囲の発泡ガラス粒体使用が好ましい。一般的には、5〜30ミリ径の発泡ガラス粒体ものが成型原料として好ましい。
【0009】
本発明で使用できる結合材(2)とは、無機系結合材であって、ポルトランドセメント、急結型セメント、珪酸系固化可能物である。有機系結合材、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂なども使用出来るが、不燃性の面から無機系の方が好ましい。無機系増量材、有機系増量材を同時使用することも出来る。無機系増量材としては、石炭灰、研摩粉、炭酸カルシュウム等がその一例としてあげられる。叉、有機系増量材としては、プラスチックス粉体、粒体の使用が可能である。結合材として最も安価であるポルトランドセメントを使用できることは、製品を安価に製造できることから極めて好ましい。
【0010】
次に具体的に発泡ガラス粒体を使用しての成型する方法に関し説明する。
発泡ガラス粒体(1)は、発泡条件により泡状気体を巻き込む量、泡径が違い、そのため発泡倍率が異なる。発泡ガラス粒体比重は、1.3〜0.8程度に分布した粒体混合物として生産されるのが一般的である。その形状は表面に発泡跡のつぼ状空隙部(2)を持つ粒体である。図3にその形状を示した。このつぼ状空隙部(5)に結合材(2)、例えば、セメント、水を加えてミキサー内で混合するとその混合物がつぼ状空隙部(5)内に入り込んだ状態となる。本状況を図4に示した。この混合物を、型内に充填し固化することによって各種形状の製品を製造することが可能である。型は、充填に際しての填圧に耐えうるものであれば良く、金型、木型、プラスチック製型でも何らかまわない。結合材(2)の種類は、特に特定することもないが、安価であって、かつ扱いやすいものが好ましい。強度を上げるために、製品の強度付与効果が期待できる添加剤を併用することも出来る。その例として、アクリル樹脂、石油樹脂、合成ゴムなどの樹脂エマルジョンを添加することも出来る。発泡ガラス粒体(1)は、原料として単独使用することを基本とし、これに成型物の使用目的にあわせて別途粒体(以下置換材という)(4)を発泡ガラス粒体(1)と置換して配合することが出来る。例えば、置換材としてはパーライト、砕石、焼却滓、鉱滓等の無機質粒体或いは熱可塑性樹脂熔融固化破砕物(インゴット)など粒状物が一例としてあげられる。その例を図2に示した。
【0011】
このようにして製造した成型物は、型の形状により各種のものを製造することが可能である。例えば、平板状、ブロック状、円柱状、箱型容器など極めて多用の形状物を製造することが出来る。更に、内部に補強材、各種目的材、金具等を同時成型することも可能である。このようにして成型した成型物は、高透水性、高耐圧性を持つものであり、軽量、リサイクル等も可能であり、極めて有効な成形物製造法であることが認められた。図5,6に実施例を示した。
【実施例1】
【0012】
実施例1として、発泡ガラス粒体、ポルトランドセメント、金型を使用して板状品製造に関する成型法を記載する。
使用済みビンを破砕し、炭酸カルシュウム成分からなるホタテ貝殻を混合し高温で焼成することにより発泡ガラス体を製造した。発泡ガラス体は、焼成段階での貝殻の熱分解により発生する炭酸ガスによりガラス内部に無数の細かな気泡部(6)を形成する事は良く知られている。この発泡ガラス体を破砕するとその界面に発泡部分が現れ、同時にその発泡部が破砕しつぼ状空隙部(5)となり、その痕跡が破砕物表面を覆う。使用した発泡ガラス粒体は、10〜15mm径のものであることはすでに述べた。
次に、本実施例では、無機系結合材(2)として日鉄セメント製ポルトランドセメントを使用したが、効果を早めるためには、急結セメントを使用することも出来る。
次に、本実施例における配合、硬化について記載する。
▲1▼配合1:10〜15mm径の発泡ガラス粒体を10kg、ポルトランドセメント8kg、水8リットル
▲2▼配合2:5〜10mm径の発泡ガラス粒体を10kg、ポルトランドセメント8キログラム、水8リットル
▲3▼配合3:10〜15mm径の発泡ガラスガラス粒体をkg、5〜10mm径のガラス発泡粒体を5kg、ポルトランドセメント8kg、水8リットル
▲1▼、▲2▼、▲3▼配合物をそれぞれミキサーに入れ、常温にて15分間混合した。この混合物を前もって製作した平板製品製造用金型に充填し振動と圧締を加えることにより余分な空隙を除き24時間放置し固化せしめた。その後、蒸気養生により強固な平板成型物、図5を得て試験に供した。その結果を表1に示す。本成型法による製品が、極めて性能が高く、用途により廃ガラス発泡粒体(1)の粒度を選択することによって目的とする製品を容易に製造することが可能であることを実証することが出来た。
【実施例2】
実施例2として、発泡ガラス粒体、発泡スチロール(以下EPSという)、ポルトラルセメント、金型を使用して板状品製造に関する成型例を記載する。本方法は、廃棄物である発泡スチロール再資源化に係わるものであり、製品の軽量化を目的としたものである。
実施例1の配合中、発泡ガラス粒体の一部を発泡スチロールに代替するもので、使用するEPSの発泡倍率は、混合中の比重差による他の材料との分離の危険性からすれば20倍以下のものが好ましい。
▲4▼.配合4:10〜15mm径の発泡ガラス粒体を50kg、10〜15mm径のEPS(10倍発泡)破砕物25kg、ポルトランドセメント15kg、水10リットル
▲5▼.配合5:10〜15mm径の発泡ガラス粒体を50キログラム、20〜30mm径のEPS(10倍発泡)破砕物25kg、ポルトランドセメント15kg、水10リットル
▲4▼、▲5▼配合物をそれぞれミキサーに入れ、常温にて15分間混合した。この混合物を前もって製作した平板状品製品製造用金型に充填し振動と圧締を加えることにより余分な空隙を除き24時間放置し固化せしめた。その後、蒸気養生により強固な平板成型物を得て試験に供した。その結果を表1に示す。
この方法によって軽量な製品を製造することが可能である事を証明することが出来た。
【実施例3】
実施例3として、発泡ガラス粒体、ポルトラルセメント、金型を使用して透水枡製造に関する実施例を記載する。
配合:10〜15mm径のガラス発泡ガラス粒体を100kg、ポルトランドセメント30kg、水20リットル。
上記配合物をそれぞれミキサーに入れ、常温にて20分間混合した。この混合物を前もって製作した外型と内型で構成した浸透枡製造用金型に充填し振動と圧締を加えることにより余分な空隙を除き24時間放置し固化せしめた。その後、蒸気養生により強固な平板成型物を得た。その成型物を図7に示した。
【0013】
上記実施例に於ける特性を表1に纏めた。
【表1】

【発明の効果】
【0014】
本発明は、発泡ガラス体製造時にその内部に出来る微細な発泡部を破砕することにより、発泡ガラス粒体表面に多数のつぼ状空隙部が生じること、及びその凹凸内に結合材を充填固化することにより複数の発泡ガラス粒体相互をアンカー効果により強固に結合した成型物を創生できることにより、高透水性、軽量、廃棄物である廃ガラスのリサイクルを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 発泡ガラス粒体結合断面図
【図2】 発泡ガラス粒体及び置換材配合結合断面図
【図3】 発泡ガラス粒体断面図
【図4】 発泡ガラス粒体結合部結合材充填拡大断面図
【図5】 平板成型物斜視図
【図6】 箱状中空成型物斜視図
【符号の説明】
【0016】
1 発泡ガラス粒体
2 結合材
3 成形物空隙部
4 置換材
5 つぼ状空隙部
6 発泡ガラス粒体内部発泡部
7 板状成形物表面
8 板状成形物側面
9 箱状中空成型物側面
10 箱状中空成型物中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個以上の発泡ガラス粒体表面のツボ状空隙に結合材を充填し、その硬化により発泡ガラス粒体を集合結合させて製造する高透水性成形物製造方法。
【請求項2】
請求項1の発泡ガラス粒体の一部を他の粒体状材料に置換し、同様の方法で結合させて製造する高透水性成形物製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−19151(P2008−19151A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−217528(P2006−217528)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【出願人】(598094252)ライフステージ企業組合 (4)
【Fターム(参考)】