説明

複数のCTP付加を有するホルモンアナログ

【課題】本発明は延長された半減期を有するペプチド及びタンパク質医薬用化合物を提供する。
【解決手段】本発明の修飾ペプチド及びタンパク質はC端にヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのカルボキシル端部位を含む、少なくとも2つの直列付加を含む。これらの”CTPユニット”は本質的に、HCG−β配列の112−118位から145位に本来存在するアミノ酸配列またはそれらの保存的修飾から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術の分野
本発明はin vivoにおける安定性が向上するように修飾を受けた医薬用化合物に関する。より具体的には本発明はヒト絨毛性血清性性腺刺激ホルモンのカルボキシル端ペプチドを直列に付加すること(tandem extension)による、薬学的に重要なペプチドの修飾に関する。
【背景技術】
【0002】
技術背景
1990年9月7日に公開され、本明細書中に参考文献として取り込まれるPCT出願第WO90/09800号は、生殖ホルモンの様々な修飾について記載している。更に、この公開は、タンパク薬剤及び一般のホルモンのin vivoにおける生物学的半減期を延長するために、HCG−βサブユニットまたはその変異体のカルボキシル端部位を、該タンパク薬剤等のカルボキシル端に結合するという修飾を行うことができることを開示する。PCT出願の開示は多数のHCG−β鎖カルボキシル端部位(CTB)を直列に付加することを特異的に記載するものではない。本発明はそのような直列の付加を記載する。
【0003】
ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(Human chorionic gonadotropin)(HCG)は少なくとも4つの生殖ホルモンからなるファミリーの1つであり、このファミリーには濾胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン及び甲状腺刺激ホルモンを含む。これらのホルモンはすべて、グループ間で同一であるαサブユニット及びファミリーのメンバーごとに異なるβサブユニットから成る。HCGのβサブユニットは残りの3つのホルモンのβサブユニットよりもかなり大きく、本明細書中にはカルボキシル端部位(CTP)と記載するおよそ34の余分なアミノ酸をC端に含んでおり、それが他の性腺刺激ホルモンに比べてhCGが血清中で比較的長い半減期をもつ原因と考えられている(Matzuk,M.et al.,Endocrinol (1989)126:376)。天然のホルモンではこのCTP付加は4つのムチン様O−結合オリゴ糖鎖を含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は延長された半減期を有するペプチド及びタンパク質医薬用化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明はカルボキシル端に少なくとも2つのCTP配列の直列付加を含むことにより生物学的半減期が延長した、修飾ペプチド及びタンパク質を提供する。これらの付加タンパク質は未修飾のものと同等の生物学的機能を有するが、生物学的半減期の延長により投与量を減らすことができるなどの利点を有する。
【0006】
このように、1つの側面において、本発明はC端に少なくとも2つのCTP配列の直列付加という修飾を受け、動物体内において生物学的機能を有するペプチドあるいはタンパク質を目的とする。別の側面において、本発明はこのような付加を与えることにより、ペプチドあるいはタンパク質の生物学的半減期を延長させる方法を目的とする。さらに別の側面において本発明は本発明の修飾タンパク質を構築するための組み換え材料及び組み換え方法、そしてこれらと特異的に免疫反応を起こす抗体を目的とする。
【0007】
発明の実施様式
生物学的に重要なペプチドまたはタンパク質はすべて本発明の方法に従った修飾を受け得る。従って、このような修飾の対象候補に含まれるのは上記の4つのヒト”生殖”ホルモン、特にそれらのβ鎖;インスリン;ヒト成長ホルモン;エンケファリン;ACTH;グルカゴン;等のようなペプチドホルモンである。また本発明の修飾を受けるものとして有用なものにはインスリン様成長因子;表皮成長因子;酸性及び塩基性繊維芽細胞成長因子;血小板由来成長因子などの様々な成長因子、顆粒球CSF;大食細胞CSF等のような様々なコロニー刺激因子、並びにIL−2,IL−3及びそのほか非常に多くのインターロイキンタンパク質;様々なインターフェロン;腫瘍壊死因子;等のような様々なサイトカインがある。また本発明の方法を用いる候補として、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH);ソマトスタチン;成長ホルモン放出因子(GHRF);及びエンドルフィンのような短いペプチド配列がある。肺胞界面活性タンパク質;ナトリウム利尿性因子;アドヘシン;受容体ペプチド;一般の受容体結合リガンド;抗体及びその断片;並びに、所望の生物学的機能を有するその他の有用なペプチドまたはタンパク質、等のタンパク質薬剤もまた本明細書中に記載された方法に従って修飾を受け得る。
【0008】
本明細書中に使用されている”CTPユニット”はヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのカルボキシル端のアミノ酸112−118から145残基目に存在するアミノ酸配列に関する。このようにペプチドまたはタンパク質のカルボキシル端の修飾に用いる各CTPユニットはCTPのN端に応じてそれぞれ独立に28−34アミノ酸を含んでいてよい。”CTPユニット”は天然のCTP配列に正確に一致していてもよく、配列中に含まれる1−5のアミノ酸がその位置で保存的なアナログに置換されていても良く、この場合置換は累積的に起こり、CTPユニットの特性である安定性には大きな変化は生じない。”保存的なアナログ”は慣用された意味において、置換後の残基が置換されたアミノ酸残基と同じ一般的アミノ酸範疇に入るようなアナログを意味する。当該技術分野において理解されているように、アミノ酸は例えばDayhoff,M.et al.,Atlas of Protein Sequences and Structure (1972) :89−99 に記載されているようにこのようなグループに分類されている。一般に酸性アミノ酸が1つのグループをつくり、塩基性アミノ酸がまた1つのグループをつくり、中性疎水性アミノ酸がまた別のグループをつくる、というようになっている。
【0009】
より具体的には、アミノ酸残基は一般に下記のような主に4つのサブクラスに亜分類される:
酸性:生理的pHにおいて残基はHイオンを失って負の電荷をもち、水性溶液に誘引される。このため、この残基を含むペプチドが生理的pHの水性環境中に存在する場合、残基はペプチドの構造中、表面に位置しようとする。
【0010】
塩基性:生理的pHにおいて残基はHイオンの結合によって正の電荷をもち、水性溶液に誘引される。このため、この残基を含むペプチドが生理的pHの水性環境中に存在する場合、残基はペプチドの構造中、表面に位置しようとする。
【0011】
中性/無極性:生理的pHにおいて残基は電荷をもたず、水性溶液に反発される。このため、この残基を含むペプチドが生理的pHの水性環境中に存在する場合、残基はペプチドの構造中、内部に位置しようとする。これらの残基は本明細書中、”疎水性”とも定義される。
【0012】
中性/極性:生理的pHにおいて残基は電荷をもたないが、水性溶液に誘引される。このため、この残基を含むペプチドが生理的pHの水性環境中に存在する場合、残基はペプチドの構造中、外側に位置しようとする。
【0013】
個々の残基分子の統計的な集合においてはある分子は電荷をもち、他の分子は電荷をもたず、多かれ少なかれ水性溶液に誘引または反発されるであろうことはもちろん理解されるであろう。”電荷をもつ”という定義に適合するには個々の分子の有意の割合(少なくともおよそ25%)が生理的pHにおいて電荷をもつ。極性または無極性に分類するために必要な誘引または反発の度合いは独断的なものであり、従って、本発明において特に意図されるアミノ酸はそのどちらかに分類される。特に定義されていないアミノ酸の多くは、それらの知られている行動に基づき分類できる。
【0014】
アミノ酸残基はさらに、環式または非環式及び、芳香族または非芳香族という残基の側鎖の置換基による自明のクラス分け及び、小型または大型という亜分類ができる。カルボキシル基の炭素を含め合計4つ若しくはそれ以下の炭素原子を含む場合その残基は小型と考える。小型残基はもちろん常に非芳香族である。
【0015】
自然界に存在するタンパク質アミノ酸の上記の提案にしたがった亜分類は以下のようになる。

酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸
塩基性/非環式:アルギニン、リジン
塩基性/環式:ヒスチジン
中性/極性/小型:グリシン、セリン、システイン
中性/無極性/小型:アラニン
中性/極性/大型/非芳香族:スレオニン、アスパラギン、グルタミン
中性/極性/大型/芳香族:チロシン
中性/無極性/大型/非芳香族:バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニ ン
中性/無極性/大型/芳香族:フェニルアラニン、及びトリプトファン

遺伝子にコードされている第2アミノ酸のプロリンは専門的には中性/無極性/大型/環式及び非芳香族のグループに入るが、ペプチド鎖の2次構造への既知の効果のため特別なケースとなり、従って、この定義グループには含まれない。 もし本発明の修飾ペプチドが遺伝子の修飾によって構築される場合、CTPユニットは遺伝子にコードされるアミノ酸による置換のみ含むことになるが、CTPユニットが標準的なペプチド合成法、例えば固相ペプチド合成法によって合成され、そして受け手のペプチドまたはタンパク質のC端に、例えば酵素的に結合される場合、アミノイソブチル酸(Aib)、フェニルグリシン(Phg)等のような遺伝子にコードされないアミノ酸も類似の相似物と置換され得る。
【0016】
これらのコードされないアミノ酸は例えば、ベータアラニン(beta−ala)、または3−アミノプロピオン酸、4−アミノブチル酸のようなオメガアミノ酸、及びサルコシン(Sar)、オルニチン(Orn)、シトルリン(Cit)、t−ブチルアラニン(t−BuA)、t−ブチルグリシン(t−BuG)、N−メチルイソロイシン(N−MeIle)、及びシクロヘキシルアラニン(Cha)、ノルロイシン(Nle)、システイン酸(Cya)、2−ナフチルアラニン(2−Nal);1、2、3、4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボキシル酸(Tic)、メルカプト吉草酸(Mvl);β−2−チエニルアラニン(Thi);並びにメチオニンンスルフォキシド(MSO)を含む。これらもまた、好都合にもある特定の範疇にはいる。
【0017】
上記の定義に基づき、
Sar及びbeta−Ala及びAibは中性/無極性/小型;
t−BuA、t−BuG、N−MeIle、Nle、Mvl及びChaは中性/無極性/大型/非芳香族;
Ornは塩基性/非環式;
Cyaは酸性;
Cit、アセチルLys及びMSOは中性/極性/大型/非芳香族、そして
Phg、Nal、Thi及びTicは中性/無極性/大型/芳香族。
【0018】
さまざまなオメガアミノ酸は大きさによって、中性/無極性/小型(beta−Ala、すなわち3−アミノプロピオン酸、4−アミノブチル酸)または大型(その他もすべて)に分類される。
【0019】
その他の、遺伝子にコードされるアミノによるアミノ酸置換も本発明の範囲内のペプチド化合物に含まれ、かつそれらの構造に従ってこの一般的なスキーム(scheme)により分類され得る。
【0020】
直列CTP残基が結合するペプチドまたはタンパク質はまた、生物学的活性が失われない限り通常生物学的に存在する型から、修飾され得ることはもちろん特筆すべきことである。
【0021】
本発明の修飾ペプチド及びタンパク質はリン酸化、グリコシル化、通常の糖鎖結合型の脱グリコシル化、アミノ酸側鎖の修飾(例えばプロリンのヒドロキシルプロリンへの転換)及び一般に起こることが知られている転写後の修飾に類似した同様の修飾のような、一般に理解されている方法によって派生アミノ酸配列へとさらに修飾され得る。
【0022】
本発明の生物学的に活性な化合物である修飾ペプチド及びタンパク質を構築する方法は当該技術分野ではよく知られている。上記のように、遺伝子にコードされるアミノ酸のみが含まれる場合、現在最も実際的なアプローチは目的のペプチドをコードするDNAを修飾することによってこれらの物質を組み換え合成することである。部位特異的突然変異誘発、付加配列の結合及び適切な発現システムの構築のための技術はすべて、現在では当該技術分野においてよく知られていることである。目的のペプチドまたはタンパク質をコードするDNAに付加されるCTPユニットをコードするDNAは最も好都合には、標準的な固相技術を用いて合成的に構築され、その際、好ましくは結合を簡単にするため制限酵素認識部位を含むように合成され、候補のペプチドまたはタンパク質をコードする配列に結合される。候補のペプチドまたはタンパク質をコードするDNA配列がそこに含まれているコーディング配列の転写及び翻訳を制御する適切な要素を含む発現システムの一部にまだなっていない場合、修飾されたDNAコーディング配列がこれらの特徴をもって提供される。よく知られているように、現在、発現システムはバクテリアのような原核宿主、及び酵母、植物細胞、昆虫細胞、ホニュウ類細胞、鳥類細胞等のような真核宿主を含む、広く多様な宿主に適合するものが利用可能である。
【0023】
また、候補となる生化学的薬剤が短いペプチドである場合、または酵素によるサブユニットの転移が効果的である場合には、本発明のCTPユニットはin vitro固相ペプチド合成技術を用いて直接合成されてもよく、これらの条件下で、もし望むならば、CTPユニットは遺伝子にコードされないアミノ酸アナログによって修飾されてもよい。
【0024】
得られた修飾生化学的薬剤は少なくとも2つのCTPユニットをC端に直列に含む。3つ若しくはそれ以上のCTPユニットを含む複数CTPユニットもまた考えられ、本発明の範囲に含まれる。上記のように、C末端に直列に結合されたCTPユニットは互いに同一である必要はない。N端の初めのアミノ酸(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンβサブユニットの112−118位)に応じて、長さが異なっていてもよいし、天然の残基に対するアミノ酸置換がもしある場合には、含まれている直列配列の中で、その置換がユニットごとに異なっていてもよい。
【0025】
本発明タンパク質の結合型
当該技術分野において一般に知られているように、本発明の修飾ペプチド及びタンパク質は目的の応用に従って、ラベル、薬剤、標的因子、担体、固相支持体等に結合していてもよい。ラベルされた型の修飾生化学薬剤は代謝の結果を追跡するために使用されても良いし;この目的に適したラベルには特にヨウ素131、テクネチウム99、インジウム111等のようなラジオアイソトープラベルが含まれる。ラベルはまた、分析系において修飾タンパク質またはペプチドの検出を媒介するのに使用されてもよい;この場合には、酵素ラベル、蛍光ラベル、色原体ラベル等と同様に、ラジオアイソトープを使用することもできる。このようなラベルの使用はペプチドまたはタンパク質がそれ自身、抗体または受容体リガンドのような標的因子である場合、特に有用である。
【0026】
反対に、特に修飾ペプチドまたはタンパク質が標的因子であり、比較的代謝による活性の変化がない場合、本発明の修飾された化合物は抗炎症剤、抗生物質、毒素等のような適切な薬剤と結合してもよい。本発明の修飾化合物はまた、これらの新たな修飾された型に特異的に免疫反応を起こす抗体の調製において、免疫原性を増幅するために担体と結合してもよい。この目的に適切な担体は、キーホール リンペット ヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin)(KLH)、牛血清アルブミン(BSA)、及びジフテリアトキソイド等を含む。本発明の修飾ペプチドを担体へ結合するために、2官能性リンカーの使用を含む標準的な結合技術が使用され得る。
【0027】
他の方法に加えて、同様の結合技術が本発明の修飾ペプチド及びタンパク質を固相支持体に結合させるのに使用され得る。結合すると、次にこれらの修飾ペプチド及びタンパク質は目的の化合物を分離するための特異的反応を引き起こす親和性試薬として使用され得る。
【0028】
最後に、本発明の修飾ペプチド及びタンパク質はこれらの新たな化合物と特異的に免疫反応をおこす抗体を作成するために使用されてもよい。これらの抗体は未修飾のペプチド及びタンパク質の生物学的活性の性質に応じて、様々な診断及び治療への応用に有用である。
【0029】
本発明の修飾ペプチド及びタンパク質はこれらに対応する未修飾のペプチド及びタンパク質と同様の方法によって調製され、投与される。このように、調製及び投与方法は候補の未修飾型に従って変わる。しかし、修飾ペプチドまたはタンパク質の生物学的半減期の延長を考慮すれば投与の量及び頻度は未修飾型にくらべて減少してもよい。
【0030】
本発明の好ましい態様
本発明は、好ましい態様として以下のものを含む。
1.2つ若しくはそれ以上の直列CTPユニットをC端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含む、修飾ペプチドまたはタンパク質。
【0031】
2.CTPユニットが、本質的に、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に天然に存在するアミノ酸配列からなる態様1に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質。
【0032】
3.少なくとも1つのCTPユニットがヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に存在する天然のアミノ酸配列に関して、少なくとも1つの保存的なアミノ酸置換を含む、態様1に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質。
【0033】
4.態様1の修飾ペプチドまたはタンパク質をコードするDNA配列。
5.修飾ペプチドまたはタンパク質をコードし、発現をもたらすための制御配列に機能的に結合されているDNAを含み;
組み換え宿主細胞内に含まれる場合に該修飾ペプチドまたはタンパク質を生産できる、組み換え発現システムであって、
該修飾ペプチドまたはタンパク質は、2つ若しくはそれ以上の直列CTPユニットをC端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含む、
組み換え発現系システム。
【0034】
6.態様5の発現システムで形質導入または形質転換された、組み換え宿主細胞。
7.2つ若しくはそれ以上の直列CTPユニットをC端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含む修飾ペプチドまたはタンパク質の製造方法であって、
該コーディングDNAが発現される条件下で態様6の請求の細胞を培養し;そして
該修飾ペプチドまたはタンパク質を回収する、
ことからなる方法。
【0035】
8.生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質の生物学的半減期を延長する方法であって、該ペプチドまたはタンパク質のアミノ酸配列に少なくとも2つの直列CTPユニットを付加することからなる方法。
【0036】
9.さらにアミノ酸配列は変化させない追加の置換体と結合している、態様1に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質。
10.追加の置換体が固相支持体、ラベル、薬剤、糖質、及び免疫原性を与える担体から選ばれる、態様9に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質。
11.態様1に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質と特異的に免疫反応性をもつ抗体。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、制限するためのものではない。
実施例1
2つのCTPユニット直列付加を有するヒトβサブユニットの分離
図1A及び1BはヒトFSHのβ鎖が2つのCTPユニットを含むように修飾されている発現ベクターのコンストラクションを示す。図1Bに示されるように、より付加されたβサブユニットを得るために、1つのCTPユニットが付加したヒトFSHβ鎖の3’端のHindIII部位をヒトHCG−β遺伝子の3’端由来のCTPユニットを結合するのに用いる。次に付加された型のFSH−β鎖の、ホニュウ類の細胞内での生産を可能にする発現システムを得るため、hFSH−β(CTP)遺伝子を発現ベクターpMへ結合する。宿主発現ベクターのコンストラクションはMatzuk,M.M.et al.,Proc Natl Acad Sci USA (1987) 84:6354−6358;Matzuk,M.M.et al.,J Cell Biol(1988) 106:1049−1059に記載されている。
【0038】
より詳細には、hCGβサブユニット(hFSHβ(CTP))のO−結合末端部位を1ユニットもつhFSHβキメラを作成するために、hFSHβ遺伝子のコドン111の停止コドン及びhCGH遺伝子のコドン118にHindIII部位を作成した(図1A)。hFSHβ遺伝子由来のHindIII−HindIIIフラグメントをCGβ由来のBamHI−HindIIIフラグメントに結合した。このキメラ(hFSHβ(CTP))は結合部位にSer118からAla118への変化を含むが、これはオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発によって訂正された。2つの直列CTP反復を含むキメラ(hFSHβ(CTP))はhFSHβ(CTP)キメラの停止コドンに新たなHindIII部位を作成することによって構築した(図1B)。HindIII−HindIIIフラグメントをhCGβ由来のBamHI−HindIIIフラグメントに結合した。つくられたalaコドンは上記の方法によってserコドンへ再転換され得る。
【0039】
hFSHβ(CTP)またはhFSHβ(CTP)遺伝子を真核発現ベクターpMに挿入するために、クレノー酵素及びBamHIオリゴヌクレオチドリンカーを用いて5’端のHindIII部位をBamHI部位へ転換し(図1C)、そしてhFSHβCTPまたはhFSHβ(CTP)遺伝子を含むBamHI−BamHIフラグメントをpMのBamHI部位に挿入した。正しい方向で挿入されたことを制限酵素解析によって確認し、そして突然変異誘発の特異性を確かめるためにエクソンIII全体の配列を塩基配列決定した。

実施例2
CTP直列付加の効果
上記の実施例1で示したように作成した、2つのCTPユニットを付加したβサブユニットを含むヒトFSHをラットに投与した。24匹のSprague−Dawleyメスのラットをこの実験に使用した。12のラットにはそれぞれ、MEM培地中で作成された10 IUの未修飾FSHを投与し、残りの12のラットにはそれぞれ、MEM培地中で作成された10 IUのhFSHβ(CTP)付加FSHを投与した。血清を、投与直後、及び1時間以内に数回、そして2、4、及び8時間後に採取した。FSHホルモンに対する標準的なラジオイムノアッセイを用いて血清を解析した。結果を図2に示す。
【0040】
図2に示されるように、血清中の未修飾FSHの量は8時間の間に0.5 IU/mlから0.05 IU/ml未満に減少したが、2つのCTPユニットを含む本発明の修飾FSH量はこの時間を経ても殆ど変化せず、約0.8 IU/mlから約0.5 IU/mlに減少するだけである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1A】図1A−1Cは1つまたは2つのCTPユニットをカルボキシル端付加として含むヒト濾胞刺激ホルモン(FSH)のβサブユニット組み換え体の製造のためのベクターのコンストラクションを示す。
【図1B】図1A−1Cは1つまたは2つのCTPユニットをカルボキシル端付加として含むヒト濾胞刺激ホルモン(FSH)のβサブユニット組み換え体の製造のためのベクターのコンストラクションを示す。
【図1C】図1A−1Cは1つまたは2つのCTPユニットをカルボキシル端付加として含むヒト濾胞刺激ホルモン(FSH)のβサブユニット組み換え体の製造のためのベクターのコンストラクションを示す。
【図2】図2は野生型FSHと比較してβサブユニットに2つのCTPユニットC端付加を含むFSHの生物学的安定性の増強を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ若しくはそれより多くの直列CTPユニットをC末端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含む、修飾ペプチドまたはタンパク質であって、
前記CTPユニットは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に天然に存在するアミノ酸配列、
非修飾型の生物学的活性を保持している、前記修飾ペプチドまたはタンパク質。
【請求項2】
請求項1の修飾ペプチドまたはタンパク質をコードするDNA。
【請求項3】
修飾ペプチドまたはタンパク質をコードし、発現をもたらすための制御配列に機能的に結合されているDNAを含み;
組換え宿主細胞内含まれる場合に該修飾ペプチドまたはタンパク質を生産できる、組換え発現システムであって、
該修飾ペプチドまたはタンパク質は、2つ若しくはそれより多くの直列CTPユニットをC末端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含み、非修飾型の生物学的活性を保持している、
ここにおいて、前記CTPユニットは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に天然に存在するアミノ酸配列からなる、
前記組換え発現システム。
【請求項4】
請求項3の発現システムで形質導入または形質転換された、組換え宿主細胞。
【請求項5】
2つ若しくはそれより多くの直列CTPユニットをC末端に付加された、生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質を含む、修飾ペプチドまたはタンパク質であって、
前記CTPユニットは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に天然に存在するアミノ酸配列からなる、
非修飾型の生物学的活性を保持している、前記修飾ペプチドまたはタンパク質、の製造方法であって、
前記修飾ペプチドまたはタンパク質が発現される条件下で請求項4記載の細胞を培養し;そして
前記修飾ペプチドまたはタンパク質を回収する
ことを含む、前記方法。
【請求項6】
生物学的活性を有するペプチドまたはタンパク質の生物学的半減期を延長する方法であって、該ペプチドまたはタンパク質に少なくとも2つの直列CTPユニットを付加する
ここにおいて、前記CTPユニットは、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンのβサブユニットの112−118位から145位に天然に存在するアミノ酸配列からなる、
ことを含む、前記方法。
【請求項7】
さらに、固相支持体、ラベル、薬剤、糖質、免疫原性を与える単体、及びリン酸化残基からなるグループから選択される追加の置換体と結合している、請求項1に記載の修飾ペプチドまたはタンパク質。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−73057(P2008−73057A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306928(P2007−306928)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【分割の表示】特願平5−507093の分割
【原出願日】平成4年10月2日(1992.10.2)
【出願人】(592105745)ワシントン ユニバーシティ (4)
【氏名又は名称原語表記】WASHINGTON UNIVERSITY
【Fターム(参考)】