説明

複数周波アンテナ

【課題】単一のアンテナ素子を用いた複数周波アンテナを提供する。
【解決手段】複数周波アンテナ1は、誘電体の基板100と、アンテナ素子110と、シャントインダクタ120と、コンデンサ用導体130と、シリーズインダクタ140と、接地部150と、給電点160から構成される。アンテナ素子110は基板100上に配置してされており、シャントインダクタ120を介して接地部150に電気的に接続されている。また、アンテナ素子110は、アンテナ素子110とコンデンサ用導体130との対向部分と、その間の基板100とから形成されたシリーズキャパシタとシリーズインダクタ140を介して給電点160に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波の無線信号を送受信する機能を有するアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANやブルートゥース(登録商標)等の様々な無線通信システムが普及している。これらの無線通信システムには、各々、長所と短所がある。このため、1つの無線通信システムのみを利用するのではなく、複数の無線通信システムを複合的に利用するのが一般的である。
しかし、無線通信システムによって使用する周波数帯域に違いがある。このため、複数の通信システムを利用するには、複数の周波数帯域の無線信号を送受信する必要がある。複数周波数の無線信号を送受信するためには、単周波用アンテナを複数個使用するか、複数の周波数に対応する複数周波アンテナを使用する必要がある。ただし、単周波用のアンテナを複数個用いるより複数周波アンテナを用いる方が、アンテナの小型化、簡易化、低コスト化という点において有利である。
【0003】
複数周波アンテナの一例が引用文献1に開示されている。この複数波アンテナは、導体板と、該導体板上に設けられた誘電体と、該誘電体に接し、異なる特性を有する複数のアンテナ素子と、から構成されている。複数のアンテナ素子は、互いに異なる周波数帯域で動作するので、一つのアンテナで複数の周波数帯域に対して動作することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−068037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、引用文献1に開示されている複数周波アンテナは、複数のアンテナ素子から構成されているため、複数のアンテナ素子を設置するための大きなスペースが必要であり、アンテナが大型化してしまう。また、構成も複雑になってしまう。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、小型で構成が簡単な複数周波アンテナを提供することを目的とする。
また、この発明は、単一のアンテナ素子を用い、複数の周波数帯域で利用できる複数周波アンテナを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る複数周波アンテナは、
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子と接地部とを接続する第1のインダクタと、
給電点と、
前記給電点と前記アンテナ素子とを接続する、第2のインダクタとキャパシタとの直列回路と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
例えば、前記第1と第2のインダクタのインダクタンス及び前記キャパシタのキャパシタンスは、複数の共振周波数を生成する値を有する。
【0009】
例えば、前記アンテナ素子は、長方形又は開放端側の幅が給電点側の幅より広くなっている構成を有する。
【0010】
例えば、前記複数周波アンテナは、
誘電体板をさらに備え、
前記アンテナ素子は前記誘電体板の一面に形成され、
前記第1のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して前記アンテナ素子に接続され、
前記キャパシタは、前記アンテナ素子の一部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記アンテナ素子の一部に対向する導電体と、間の誘電体板とから構成され、
前記第2のインダクタは、前記誘電体板の一面に配置され、前記キャパシタと前記給電点との間に接続されている、
ことを特徴とする。
【0011】
例えば、前記第2のインダクタは、ビア又は容量結合により前記導電体に接続されている。
【0012】
例えば、前記第1のインダクタと、前記第2のインダクタと、前記キャパシタとの少なくとも1つは、回路部品から構成される。
【0013】
例えば、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの少なくとも1つは、線路から構成される。
【0014】
例えば、前記複数周波アンテナは、前記第1のインダクタと前記第2のインダクタと前記キャパシタの少なくとも1つの素子定数を調整する調整手段をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型で構成が簡単な複数周波アンテナを提供することができる。また、本発明によれば、単一のアンテナ素子を用い、複数の周波数帯域で利用できる複数周波アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナの斜視図である。
【図2】図1に示す複数周波アンテナの平面図である。
【図3】図1に示す複数周波アンテナの底面図である。
【図4】図1に示す複数周波アンテナの断面図である。
【図5】図1に示す複数周波アンテナの等価回路図である。
【図6】図1のアンテナ素子の寸法と、アンテナ素子のインダクタンスとの関係を示す図である。
【図7】図1のアンテナ素子の寸法と、アンテナ素子のインダクタンスとの関係を示す図である。
【図8】図1のアンテナ素子の寸法と、アンテナ素子のキャパシタンスとの関係を示す図である。
【図9】アンテナ素子の寸法と、複数周波アンテナと空間との結合における基準インピーダンスとの関係を示す図である。
【図10】図1〜図5に示す複数周波アンテナの反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【図11】本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図12】本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナの底面図である。
【図13】扇型のアンテナ素子の中心角と、アンテナ素子のインダクタンス及びキャパシタンス、アンテナ素子と空間との結合における基準インピーダンスの関係を示すグラフである。
【図14】図11及び図12に示す複数周波アンテナの反射損失の周波数特性を示すグラフである。
【図15】3つ以上の周波数帯に十分な利得を有する複数周波アンテナの等価回路の例を示す図である。
【図16】3つ以上の周波数帯に十分な利得を有する複数周波アンテナの反射損失の周波数特性の例を示すグラフである。
【図17】アンテナを構成する回路素子をチップ部品で構成した例を示す図である。
【図18】オートチューニング機能を備える複数周波アンテナの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナ1を説明する。
【0018】
まず、図1〜4を参照して、実施形態1に係る複数周波アンテナ1の構成を説明する。
図1は複数周波アンテナ1の斜視図、図2は複数周波アンテナ1の平面図、図3は複数周波アンテナ1の底面図、図4は、複数周波アンテナ1の図2及び図3のA−A’線での断面を示す断面図である。
【0019】
図示するように、複数周波アンテナ1は、基板100と、アンテナ素子110と、ビア115と、シャントインダクタ120と、コンデンサ用導体130と、ビア135と、シリーズインダクタ140と、接地部150と、給電点160と、から構成されている。
【0020】
基板100は、板状の誘電体から構成される。本実施形態では、基板100は、比誘電率が4.6で、縦横の長さがそれぞれ12mm,厚さが1mmの板状のガラスエポキシ基盤(FR4)から構成される。
【0021】
アンテナ素子110は、長方形状の導体板から構成され、基板100の一方の主面に配置されている。本実施形態では、アンテナ素子110は、幅W1が3.0mmで、奥行D1が8.0mmの長方形状の銅箔から形成されている。
【0022】
ビア115は、アンテナ素子110のほぼ中央部に、基板100の一方の主面から他方の主面に貫通して形成され、内部に一端部がアンテナ素子110に接続された導体が充填されている。
【0023】
シャントインダクタ120は、線路導体から構成され、基板100の他方の主面上に延在し、一端がビア115の他端部に接続されている。本実施形態では、シャントインダクタ120のインダクタンスは、5.1nHに設定されている。
【0024】
コンデンサ用導体130は、基板100の他方の主面に、アンテナ素子110の一部に対向して配置されている。アンテナ素子110の一部とコンデンサ用導体130の対向部分と、基板100のそれらの間に位置している部分により、アンテナ素子110に直列に接続されたシリーズキャパシタC1が形成される。本実施形態では、シリーズキャパシタC1のキャパシタンスは0.16pFである。
【0025】
ビア135は、基板100の一方の主面から他方の主面に貫通して形成され、内部に、一端部がコンデンサ用導体130の一端部に接続された導体が充填されている。
【0026】
シリーズインダクタ140は、基板100の一方の主面に形成されており、その一端は、ビア135の他端部に接続され、その他端部が、給電点160として機能する。本実施形態では、シリーズインダクタ140のインダクタンスは、5.7nHである。
【0027】
接地部150は、基板100の一辺部の一方の主面に配置されたグランド導体151と、基板100の一辺部の他方の主面に配置されたグランド導体152と、グランド導体151とグランド導体152とを接続する複数のビア153と、から構成され、接地されている。
【0028】
給電点160は、シリーズインダクタ140の他端部から構成され、図示せぬ給電線が接続される。複数周波アンテナ1は、接地部150と給電点160との間に供給された送信信号を電波として空間に放射し、受信した電波を電気信号に変換して給電点160から給電線に伝送する。
【0029】
上記構成の複数周波アンテナ1は、例えば、基板100にビア115,135,153を開口し、この開口をメッキ等で充填し、続いて、基板100の両面に銅箔を貼り付け、銅箔をPEP(光エッチング法)等によりパターニングすることにより製造される。
【0030】
上述した物理的構成を有する複数周波アンテナ1の電気的構成は、図5に示す等価回路で表される。
図示するように、複数周波アンテナ1は、電気的には、シリーズインダクタL1と、シリーズキャパシタC1と、アンテナ素子の等価回路111と、シャントインダクタL2と、空間との結合の等価回路112と、給電点160と、接地部150と、から構成される。
なお、シリーズインダクタL1はシリーズインダクタ140から構成され、シャントインダクタL2はシャントインダクタ120から構成される。また、シリーズキャパシタC1は、アンテナ素子110とコンデンサ用導体130との対向部分と、その間の基板100とから形成されたシリーズキャパシタC1から構成される。
【0031】
アンテナ素子の等価回路111は、アンテナ素子110の入力インピーダンスを右手系の線路で表現した回路であり、インダクタLR1とインダクタLR2とキャパシタCRから構成される。
【0032】
空間との結合の等価回路112は、アンテナ素子110のサイズと形状に依存し、アンテナ素子110と空間との結合によるインピーダンスを表現する回路であり、キャパシタC0と、基準インピーダンスR0と、インダクタL0から構成され、インダクタンスL2に並列に接続される回路である。
【0033】
図5に示すように、給電点160には、シリーズインダクタL1とシリーズキャパシタC1との直列回路の一端が接続される。
【0034】
シリーズインダクタL1とシリーズキャパシタC1との直列回路の他端には、アンテナ素子の等価回路111を構成するインダクタLR1の一端が接続される。インダクタLR1の他端には、キャパシタCRの一端とインダクタLR2の一端が接続される。キャパシタCRの他端は、接地部150に接続される。
【0035】
シャントインダクタL2の一端は、アンテナ素子の等価回路111のインダクタLR2の他端に接続される。シャントインダクタL2の他端は、接地部150に接続される。
【0036】
空間との結合の等価回路112のキャパシタC0の一端が、インダクタLR2の他端とシャントインダクタL2の一端との接続点に接続される。キャパシタC0の他端には、インダクタL0の一端と基準インピーダンスR0の一端が接続される。インダクタL0の他端と基準インピーダンスR0の他端は、接地部150に接続される。
【0037】
アンテナ素子の等価回路111におけるインダクタLR1のインダクタンス、インダクタLR2のインダクタンス、キャパシタCRのキャパシタンスは、アンテナ素子110のサイズと形状にほぼ依存し、アンテナ素子110の形状とサイズが定まるとほぼ定まる。アンテナ素子110のサイズ(D1,W1)と各インダクタLR1,LR2のインダクタンス、キャパシタCRのキャパシタンスの例を図6乃至図8に示す。
【0038】
また、空間との結合の等価回路112における基準インピーダンスR0の値は、アンテナ素子110のサイズと形状に依存する。この基準インピーダンスR0の値は、給電点160に目的の周波数の電圧を印加したときの、印加した電圧と流れる電流の比を表すインピーダンスの実成分に相当する。
なお、本実施例で目的の周波数は、2.5GHzと5.5GHzとしている。
アンテナ素子110のサイズ(D1,W1)と基準インピーダンスR0の関係を図9に示す。
【0039】
また、空間との結合の等価回路112におけるキャパシタC0のキャパシタンスとインダクタL0のインダクタンスは、アンテナ素子110を内包する球の半径aと基準インピーダンスR0に依存し、式(1)と(2)で表される。
C0=a/(c×R0) ・・・(1)
L0=(a×R0)/c ・・・(2)
ここで、C0:キャパシタC0のキャパシタンス[F]
L0:インダクタL0のインダクタンス[H]
R0:基準インピーダンスR0の抵抗値[Ω]
a:アンテナ素子を内包する球の半径[m]
c:光速[m/s]
【0040】
このように、アンテナ素子の等価回路111と、空間との結合の等価回路112とは共にアンテナ素子110の形状とサイズに依存する。従って、アンテナ素子110の形状とサイズとを決定することにより、アンテナ素子の等価回路111と、空間との結合の等価回路112がほぼ定まる。
【0041】
次に、上記物理的構成及び電気的構成を有する複数周波アンテナ1の反射損失の周波数特性について説明する。
【0042】
複数周波アンテナ1の反射損失の周波数特性を図10に示す。この特性は、アンテナ素子110の幅W1を3.0mmで奥行D1を8.0mmに、シャントインダクタL2(120)のインダクタンスを5.1nH、シリーズキャパシタC1のキャパシタンスを0.16pF、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンスを5.7nHに、設定したときの反射損失の周波数特性である。
【0043】
なお、アンテナ素子110の幅W1が3.0mm、奥行D1が8.0mmであるときのアンテナ素子の等価回路111および空間との結合の等価回路112の各インダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスは、上述した図6〜図9及び式(1)、(2)により求められる。
また、図10の横軸は周波数(GHz)、縦軸は反射損失S11(dB)を示す。
【0044】
図10に示すように、この特性では、2.5GHz付近と、5.5GHz付近の2つの周波数帯で、S11が−10dB以下になっている。2.5GHz付近ではおよそ100MHzの帯域幅で−10dBを下回り、5.5GHz付近ではおよそ800MHzの帯域幅で−10dBを下回っている。従って、複数周波アンテナ1は、2.5GHzと5.5GHzの2つの周波数において、十分な利得を得ることができる複数周波アンテナとして機能する。
【0045】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、単一のアンテナ素子110を用いて、所望の複数の周波数に対して通信を行うことができる複数周波アンテナを提供できる。
【0046】
以上で説明をした構成例では、2.5GHzと5.5GHzの2つの周波数帯に利得が得られる構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
任意の2つの周波数帯の組み合わせに対応可能である。
【0047】
ここで、前述のように、アンテナ素子110の等価回路111及び空間との結合の等価回路112の素子定数は、アンテナ素子110のサイズよって自動的に定まる。このため、アンテナ素子110のサイズにより定まる各素子定数を考慮し、目的とする複数の周波数近傍に共振点が発生するように、シャントインダクタL2(120)のインダクタンス、シリーズキャパシタC1のキャパシタンス、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンス、を適宜設定することにより、任意の複数の周波数帯で十分な利得を得ることができる。
【0048】
また、アンテナ素子110のサイズを変更可能な場合には、目的とする複数の周波数の近傍に共振点が発生するように、アンテナ素子110のサイズにより定まる各素子定数と、シャントインダクタL2(120)のインダクタンス、シリーズキャパシタC1のキャパシタンス、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンス、とを適宜設定すればよい。
【0049】
(実施形態2)
上記実施形態1では、アンテナ素子110の形状は長方形であった。長方形のアンテナ素子110は、製造が容易である反面、アンテナ素子110のインピーダンス並びに空間との結合によるインピーダンスの値の調整が難しいという問題点がある。
【0050】
以下、この問題を解決しうる実施形態2に係る複数周波アンテナ2を説明する。
実施形態2に係る複数周波アンテナ2は、図11に正面、図12に背面図を示すように、アンテナ素子210が、開放端側の幅が給電点側の幅より広い扇形に形成されている。その他の構成は、第1実施形態の複数周波アンテナ1と同一である。
複数周波アンテナ2の等価回路は、図5に示す等価回路と同一である。
ただし、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンスは3.70nHで、シリーズキャパシタC1のキャパシタンスは0.169pF、シャントインダクタL2(120)のインダクタンスは4.78nHに設定されている。
【0051】
扇形のアンテナ素子210の中心角θと、基準インピーダンスR0、インダクタLR1,LR2のインダクタンス、キャパシタCRのキャパシタンスとの関係を図13に示す。ここで、扇形のアンテナ素子210は、長さD2を8mm、給電点側の幅W2を2mmとする。
【0052】
図13から明らかなように、基準インピーダンスR0は、中心角θが小さい場合は同一サイズの長方形のアンテナ素子110の基準インピーダンスR0と同等であるが、中心角θを大きくするに従って小さくなる。また、基準インピーダンスR0が小さくなるとともに、アンテナ素子の等価回路111におけるインダクタLR1とLR2のインダクタンスも小さくなる。また、空間との結合の等価回路112におけるインダクタL0のインダクタンスは基準インピーダンスR0に比例し、一方、キャパシタC0のキャパシタンスは基準インピーダンスR0に反比例する。
【0053】
一般に、キャパシタに比べ、インダクタの方が電力の損失がはるかに大きい。このため、基準インピーダンスR0が低くなることによって、空間との結合の等価回路112全体の電力損失が低下する。つまり、中心角θを調整することで、損失を小さくできる。そこで、複数周波アンテナ2のサイズから許容される範囲内で、中心角θを大きくすることが望ましい。
【0054】
上記の様に調整された複数周波アンテナ2の反射損失の周波数特性を図14に示す。
この特性は、アンテナ素子210の給電点側の幅W2を2.0mm、奥行D2を8.0mm、中心角θを60°、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンスを3.70nH、シリーズキャパシタC1のキャパシタンスを0.169pF、シャントインダクタL2(120)のインダクタンスを4.78nHに設定したときの反射損失の周波数特性である。
図14の横軸は周波数(GHz)で、縦軸は反射損失を示すS11(dB)である。
【0055】
図14に示す周波数特性では、反射損失S11は、2.5GHz付近ではおよそ100MHzの帯域幅で−10dBを下回り、5.5GHz付近ではおよそ800MHzの帯域幅で−10dBを下回っている。従って、複数周波アンテナ2は、2.5GHzと5.5GHzの2つの周波数において、十分な利得を得ることができる。
【0056】
以上説明したとおり、本発明の第2の実施形態によれば、単一のアンテナ素子を用いて低損失で複数の周波数帯域の無線信号を送受信する複数周波アンテナ2を提供することができる。
しかも、扇型の中心角θを調整することで、損失を調整することができる。
【0057】
以上で説明をした構成例では、2.5GHzと5.5GHzの2つの周波数帯に利得が得られる構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
任意の2つの周波数帯の組み合わせに対応可能である。
【0058】
即ち、アンテナ素子の等価回路111及び空間との結合の等価回路112の素子定数は、アンテナ素子210のサイズと中心角θよって自動的に定まる。このため、アンテナ素子210のサイズと中心角θにより定まる各素子定数を考慮し、目的とする複数の周波数近傍に共振点が発生するように、シャントインダクタL2(120)のインダクタンス、シリーズキャパシタC1のキャパシタンス、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンス、を適宜設定することにより、任意の複数の周波数帯で十分な利得を得ることができる。
【0059】
また、アンテナ素子210のサイズと中心角θを変更可能な場合には、損失と許容最大サイズを考慮してアンテナ素子210のサイズと中心角とを設定し、目的とする複数の周波数の近傍に共振点が発生するように、アンテナ素子210のサイズにより定まる各素子定数を考慮しつつ、シャントインダクタL2(120)のインダクタンス、シリーズキャパシタC1のキャパシタンス、シリーズインダクタL1(140)のインダクタンス、とを適宜設定すればよい。
【0060】
また、例えば、上記実施の形態では、アンテナ素子210は扇形であったが、給電点側に対して開放端側の幅が広がっていれば良く、三角形や台形等であってもよい。
【0061】
本発明は、上記実施形態1及び2に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
例えば、本発明の複数周波アンテナの構成は、図1〜4、図11,12に示す構成に限定されない。
例えば、実施形態1と2では、コンデンサ用導体130とシリーズインダクタ140の一端とをビア135により接続したが、ビア135を取り除き、コンデンサ用導体130とシリーズインダクタ140とを、それらの間の容量で結合してもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、2つの周波数帯に共振点(動作点)を有する複数周波アンテナの構成例を示したが、本願発明は、3つ以上の周波数帯に共振点を有する複数周波アンテナにも適用可能である。例えば、図15に示すように、元の回路に任意のLC共振回路を構成する素子(図では、Cn1、Ln1,Ln2)を追加することで、3つ以上の共振点を有し、図16に示すように、3つ以上の周波数帯に十分な利得を有する複数周波アンテナを実現することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、線路(回路パターン)によってインダクタおよびコンダクタなどを構成したが、例えば、チップ部品などによって一部又は全てのインダクタおよびコンダクタなどを構成しても良い。図15に示す回路の各回路要素を、例えば、図17に示すように、複数のチップ部品C1,L1,L2,Cn1,Ln1,Ln2を基板100上に配置し、これらを低インピーダンスの線路で接続することにより、回路を構成してもよい。
【0064】
また、実施の形態1と2では、回路を基板100の一方の主面と他方の主面に配置したが、図17に例示したように、一方の主面のみに配置するようにしてもよい。回路をパターンで構成する場合も同様である。
【0065】
また、上記実施形態では、回路素子は、所定の物理的特性値(インダクタンス、キャパシタンス)を有したが、回路素子を、物理特性値を調整する機能をもったアクティブなものに変更し、アンテナ素子からの反射信号をフィードバックすることによりチューニングするように構成してもよい。
【0066】
この場、例えば、図18に示すように、給電点160に接続された可変周波数発信器(O.S.C)311と、目的周波数に通過帯域を有する複数のバンドパスフィルタ(B.P.F)312と、コンパレータ313、制御部(CON)314を、追加する。また、シリーズキャパシタC1とCn1をバリキャップ(バラクタ)から構成する。この場合、制御部314は、発信周波数をスキャンさせるよう可変周波数発信器311を制御し、このときの反射波のレベルをバンドパスフィルタ312の通過信号と基準電圧とをコンパレータ313に比較させることにより判別する。そして、目的周波数で十分な特性が得られない場合に、例えば、バリキャップC1,Cn1の容量を制御することにより、共振点の位置を調整する処理を、適宜繰り返す。なお、各インダクタのインダクタンスを制御部314の制御で変更できるように構成してもよい。
この構成によれば、自動的に所望の周波数に対して適切な利得を有することができるようにアンテナを調整できる。
【0067】
上記実施の形態では、誘電体の基板上に回路素子を配置する構成例を示したが、各回路素子を保持できるならば、基板は配置しなくてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1,2・・・複数周波アンテナ、100・・・基板、110・・・アンテナ素子、115・・・ビア、120・・・シャントインダクタ、130・・・コンデンサ用導体、135・・・ビア、140・・・シリーズインダクタ、150・・・接地部、151,152・・・グランド導体、153・・・ビア、160・・・給電点、210・・・アンテナ素子、311・・・可変周波数発信器、312・・・バンドパスフィルタ、313・・・コンパレータ、314・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子と、
前記アンテナ素子と接地部とを接続する第1のインダクタと、
給電点と、
前記給電点と前記アンテナ素子とを接続する、第2のインダクタとキャパシタとの直列回路と、
を備えることを特徴とする複数周波アンテナ。
【請求項2】
前記第1と第2のインダクタのインダクタンス及び前記キャパシタのキャパシタンスは、複数の共振周波数を生成する値を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の複数周波アンテナ。
【請求項3】
前記アンテナ素子は、長方形又は開放端側の幅が給電点側の幅より広くなっている構成を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の複数周波アンテナ。
【請求項4】
誘電体板をさらに備え、
前記アンテナ素子は、前記誘電体板の一面に形成され、
前記第1のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して前記アンテナ素子に接続され、
前記キャパシタは、前記アンテナ素子の一部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記アンテナ素子の一部に対向する導電体と、間の誘電体板とから構成され、
前記第2のインダクタは、前記誘電体板の一面に配置され、前記キャパシタと前記給電点との間に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項5】
前記第2のインダクタは、ビア又は容量結合により前記導電体に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項6】
前記第1のインダクタと、前記第2のインダクタと、前記キャパシタとの少なくとも1つは、回路部品から構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項7】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタとの少なくとも1つは、線路から構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項8】
前記第1のインダクタと前記第2のインダクタと前記キャパシタの少なくとも1つの素子定数を調整する調整手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複数周波アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−35672(P2011−35672A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180009(P2009−180009)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 木暮 賢司(発行人)、社団法人 電子情報通信学会(発行所)、2009年 電子情報通信学会総合大会 講演論文集 DVD−ROM、平成21年3月4日発行
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】