説明

複数工場の生産スケジュール作成方法

【課題】サプライチェーン全体の見える化、サプライチェーン全体のリードタイム短縮、在庫削減、及び納期順守を実現する、複数工場の生産スケジュール作成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの供給者、複数の工場、及び少なくとも1つの顧客を含むサプライチェーンの生産計画を生成するために、MPRS110が実行する処理は、対象物及び原材料または部品の購買オーダ及び/または需要予測、並びに在庫実績の情報を入力するステップ、第1の購買オーダ割付けステップ、製造オーダ生成ステップ、製造オーダ割付けステップ、及び第2の購買オーダ生成ステップを含む。第1及び第2の購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の生産拠点の生産スケジュールを連携させることにより、サプライチェーン全体のスケジュールの見える化(Visualization)、サプライチェーン全体のリードタイム短縮、在庫削減、及び納期順守を実現する、複数工場の生産スケジュール作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上に実装して、生産工程をスケジュールする生産スケジューラは、これまで、短期間の生産スケジュールを作成するツールとして、多くの製造業において活用されてきた。その後、生産スケジューラは、受注と購買を含めてスケジュールし、また、短期のみならず、中期・長期のスケジュールも作成するツールへと発展しつつある。
【0003】
世界に複数の生産工場をもつ製造業において、
(a)サプライヤ(Supplier)から原材料/部品を購入(Purchasing)し、複数工場を経て製品を生産し(Production)、製品を顧客(Customer)に配送する(Distribution)までのサプライチェーン全体のスケジュールを見える化(Visualization)、すなわちコンピュータシステム上でグラフィカルに表示させたい、
(b)サプライチェーン全体のリードタイムを短縮したい、
(c)サプライチェーン全体の在庫を削減したい、
(d)サプライチェーン全体を高速にMRP(Material Requirements Planning:所要量計算)したい、
(e)各工場の負荷、配送時間、及びコストを考慮したうえで、複数工場間で生産配分したい、
という要望が高まっている。
【0004】
従来のシステムでは、まず、複数工場のうちどの工場で、何日に、何を、いくつ生産するかといった大雑把な生産計画を、固定リードタイムのMRPで計算し、大日程計画を立案する。そして、その大日程計画の結果を、各工場に配信する。
【0005】
各工場では、大日程計画の結果を受けて、詳細な生産スケジュールを作成する。すなわち、各工場における生産スケジューラは、各オーダの対象物を生産するために必要とされる各々の資源に対し、その生産工程に関連した複数のジョブを時間軸方向に割り付けることにより、オーダに対応した生産計画を生成する。本発明者は、かかる生産スケジュール方法に関し、特に、多品種、多工程の生産計画を高速かつ精度良く立案管理する目的に好適な、生産スケジュール方法を、すでに提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−373013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のとおり、従来のシステムは、固定リードタイムのMRPで得た大日程計画の結果を各工場に配信し、各工場で詳細スケジュールするという方法である。この方法によると、以下のような問題点がある。
【0008】
(1)大日程計画用の製造BOM(Bill of Material)と、各工場での詳細スケジュール用の製造BOMを統合管理できず、膨大な製造BOMを別々に管理することとなる。したがって、製造BOMを二重に入力するための手間や、入力時の不整合が発生するおそれがある。
(2)各工場での詳細スケジュールの結果を、大日程計画に反映させることができない。大日程計画では、複数工場のMRPを計算した結果として、各工場の製造オーダが決定され、各工場では、その製造オーダを元にして詳細スケジュールする。しかしながら、例えば、詳細スケジュール結果から、負荷オーバであることが判明しても、それを複数工場のMRPに返して再計算させることができない。かかる反映作業は、大日程計画の作成担当者と各工場の担当者とのコミュニケーションを通じて、手作業で行う必要がある。
(3)詳細スケジュール結果を、工場間で互いに連携させることができない。上記の通り、大日程計画では、複数工場のMRPを計算した結果として、各工場の製造オーダが決定され、各工場では、その製造オーダを元にして詳細スケジュールする。しかしながら、例えば、詳細スケジュール結果から、納期遅れであることが判明しても、それを他の工場に連絡し、その納期遅れを解消させるよう工場間で互いに連携させることができない。かかる作業も、各工場の担当者同士のコミュニケーションを通じて、手作業で行う必要がある。
(4)大日程計画を固定リードタイムで計算するため、サプライチェーン全体のリードタイムを短縮することができない。
【0009】
そこで、本発明は、製造業がグローバル化し、世界各地に生産拠点を持つ状況において、複数の生産拠点の生産スケジュールを連携させることにより、上記課題を解決し、サプライチェーン全体の見える化、サプライチェーン全体のリードタイム短縮、在庫削減、及び納期順守を実現する、複数工場の生産スケジュール作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数の工場(Fn)で生産する少なくとも1つの対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダを時間軸方向に割付けることにより、対象物(Xi)の原材料または部品(Yj)を供給する少なくとも1つの供給者(Sm)、複数の工場(Fn)、及び少なくとも1つの顧客(Cl)を含むサプライチェーンの生産計画を生成する、複数工場の生産スケジュール作成方法において、
前記対象物及び原材料または部品(Xi,Yj)の購買オーダ及び/または需要予測、並びに在庫実績の情報を、入力装置を介して入力するステップと、
前記対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測について、前記対象物(Xi)を顧客(Cl)に供給する供給元の第1の工場と配送資源を決定し、前記対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測を、前記配送資源に割付ける、第1の購買オーダ割付ステップと、
前記第1の購買オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記対象物(Xi)の在庫実績が不足するとき、前記対象物(Xi)の製造オーダを生成し、当該製造オーダを前記第1の工場の生産資源に割付ける、製造オーダ割付ステップと、
前記製造オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記原材料または部品(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第1の工場を顧客とする前記原材料または部品(Yj)の購買オーダを生成する、第1の購買オーダ生成ステップと、
前記第1の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Yj)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Yj)を前記第1の工場に供給する供給者及び配送資源を決定し、前記原材料または部品(Yj)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第2の購買オーダ割付ステップと、
記憶装置に互いに関係付けて格納した、前記配送資源に割付けた購買オーダ及び/または需要予測、及び前記生産資源に割付けた製造オーダの開始日時及び終了日時の情報を、前記記憶装置から読み出して、サプライチェーンのスケジュール結果を出力装置に出力するステップと
を含み、
前記第1及び第2の購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする。
【0011】
また、本発明は、複数の工場(Fn)のうちの下流側の第1の工場で生産する第1の対象物(Xi)、及び上流側の第2の工場で生産する第2の対象物(Yj)の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダを時間軸方向に割付けることにより、第2の対象物(Yj)の原材料または部品(Zk)を供給する少なくとも1つの供給者(Sm)、複数の工場(Fn)、及び少なくとも1つの顧客(Cl)を含むサプライチェーンの生産計画を生成する、複数工場の生産スケジュール作成方法において、
前記第1及び第2の対象物及び原材料または部品(Xi,Yj,Zk)の購買オーダ及び/または需要予測、並びに在庫実績の情報を、入力装置を介して入力するステップと、
前記第1の対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測について、前記第1の対象物(Xi)を顧客に配送する第1の工場と配送資源を決定し、前記第1の対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測を、前記配送資源に割付ける、第1の購買オーダ割付ステップと、
前記第1の購買オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記第1の対象物(Xi)の在庫実績が不足するとき、前記第1の対象物(Xi)の製造オーダを生成し、当該製造オーダを前記第1の工場の生産資源に割付ける、第1の製造オーダ割付ステップと、
前記第1の製造オーダ割付ステップの結果、前記第1の対象物(Xi)の原材料または部品であって、前記第1の工場が保有する第2の対象物(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第1の工場を顧客とする当該第2の対象物(Yj)の購買オーダを生成する、第1の購買オーダ生成ステップと、
前記第1の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記第2の対象物(Yj)の購買オーダについて、前記第2の対象物(Yj)を前記第1の工場に供給する第2の工場と配送資源を決定し、前記第2の対象物(Yj)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第2の購買オーダ割付ステップと、
前記第2の購買オーダ割付ステップの結果、前記第2の工場における第2の対象物(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第2の対象物(Yj)の製造オーダを生成し、前記第2の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第2の製造オーダ割付ステップと、
前記第2の製造オーダ割付ステップの結果、前記第2の対象物(Yj)の原材料または部品であって、前記第2の工場が保有する原材料または部品(Zk)の在庫実績が不足するとき、前記第2の工場を顧客とする当該原材料または部品(Zk)の購買オーダを生成する、第2の購買オーダ生成ステップと、
前記第2の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Zk)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Zk)を前記第2の工場に供給する供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(Zk)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第3の購買オーダ割付ステップと、
記憶装置に互いに関係付けて格納した、前記配送資源に割付けた購買オーダ及び/または需要予測、及び前記生産資源に割付けた製造オーダの開始日時及び終了日時の情報を、前記記憶装置から読み出して、サプライチェーンのスケジュール結果を出力装置に出力するステップと
を含み、
前記第1,第2,及び第3の購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記第3の購買オーダ割付ステップにより、前記第2の工場を顧客とする前記原材料または部品(Zk)の購買オーダを割付けた前記供給者を、第1の供給者としたとき、当該第1の供給者が、前記原材料または部品(Zk)を自ら生産する、前記第2の工場より上流側の第3の工場であり、かつ、前記第1の供給者を兼ねる第3の工場が生産する前記原材料又は部品(Zk)を第3の対象物としたとき、当該第3の対象物(Zk)の原材料または部品(At)を供給する少なくとも1つの第2の供給者がいる場合、
前記第3の購買オーダ割付ステップの結果、前記第3の工場における第3の対象物(Zk)の在庫実績が不足するとき、前記第3の対象物(Zk)の製造オーダを生成し、前記第3の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第3の製造オーダ割付ステップと、
前記第3の製造オーダ割付ステップの結果、前記第3の対象物(Zk)の原材料または部品であって、前記第3の工場が保有する原材料または部品(At)の在庫実績が不足するとき、前記第3の工場を顧客とする当該原材料または部品(At)の購買オーダを生成する、第3の購買オーダ生成ステップと、
前記第3の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(At)の購買オーダについて、前記原材料または部品(At)を前記第3の工場に供給する第2の供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(At)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第4の購買オーダ割付ステップと、
をさらに含み、
以下同様に、第(p+2)の購買オーダ割付ステップにより、第(p+1)の工場を顧客とする原材料または部品(At)の購買オーダを割付けた供給者を、第(p−1)の供給者としたとき、第pの供給者が、前記原材料または部品(At)を自ら生産する、前記第(p+1)の工場より上流側の第(p+2)の工場であり、かつ、前記第pの供給者を兼ねる第(p+2)の工場が生産する原材料又は部品(At)を第(p+2)の対象物としたとき、前記第(p+2)の対象物の原材料または部品(Bu)を供給する少なくとも1つの第(p+1)の供給者がいる場合(ここで、p=2,3,・・・)、
前記第(p+2)の購買オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の工場における第(p+2)の対象物(At)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の対象物(At)の製造オーダを生成し、前記第(p+2)の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第(p+2)の製造オーダ割付ステップと、
前記第(p+2)の製造オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の対象物(At)の原材料または部品であって、前記(p+2)の工場が保有する原材料または部品(Bu)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の工場を顧客とする当該原材料または部品(Bu)の購買オーダを生成する、第(p+2)の購買オーダ生成ステップと、
前記第(p+2)の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Bu)を前記第(p+2)の工場に供給する第(p+1)の供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第(p+3)の購買オーダ割付ステップと、
をさらに含み、
前記購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記製造オーダ割付けステップが、
前記生産資源に割付け可能な複数の製造オーダをバックワード及び/又はフォワードに割付けて山積みし、次いで山崩しする有限能力ラフスケジューリングにより、製造オーダを割付けるステップ
を含むことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記対象物及び原材料または部品の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダのうち、前記複数の工場(Fn)の各工場で対象物を生産する詳細スケジュールを作成するために必要なオーダの情報を入力し、工程ごとに設定された製造BOMの設定情報を用いて、有限能力スケジューリングにより、工場ごとに、詳細スケジュールを作成する、詳細スケジュール作成ステップと、
前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した、購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を、詳細スケジュール結果として、前記記憶装置に格納する、格納ステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記購買オーダにしたがった実際の配送開始日時及び配送終了日時の情報を、購買オーダごとに、配送実績として入力するステップと、
前記配送実績入力ステップにより入力された複数の配送実績の情報から、配送の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する購買BOMの設定情報を変更することの示唆を出力するステップと、
前記購買BOM変更示唆ステップにより示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、前記対応する購買BOMを変更するステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記詳細スケジュール作成に用いられる前記製造BOMの情報のうち、工場内の各工程に使用する資源の使用を指す情報を取り去る処理により、修正された製造BOMの情報を、工場ごとに生成するステップ
をさらに含み、
前記製造オーダ割付ステップ、または前記第1の製造オーダ割付ステップ及び第2の製造オーダ割付ステップにおいて、前記各工場の修正された製造BOMの設定情報を参照し、各工場の生産資源に製造オーダを割付けること
を特徴とする。
【0017】
また、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記製造オーダにしたがった実際の作業の実績開始日時及び実績終了日時の情報を、製造オーダごとに、作業実績として入力するステップと、
前記作業実績入力ステップにより入力された複数の作業実績の情報から、作業の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する製造BOMの設定情報を変更することの示唆を出力するステップと、
前記製造BOM変更示唆ステップにより示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、前記対応する製造BOMを変更するステップと
をさらに含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、
前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した詳細スケジュール結果のうち、各工場の工程の作業情報をもとに、オーダ同士の関係付けを表す情報を生成するステップと、
前記関係付け情報生成ステップにより生成した、オーダ同士の関係付けを表す情報を、前記記憶装置に格納する、格納ステップと、
をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の好ましい実施の形態によれば、前記複数工場の生産スケジュール作成方法は、前記詳細スケジュール格納ステップが、少なくとも、前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した、各工場における複数の工程の開始日時及び終了日時のうち、最先の開始日時及び最後の終了日時の情報を取得して、前記製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時に設定する処理を含み、
前記詳細スケジュール格納ステップにより前記記憶装置に格納した、購買オーダ及び/または需要予測、または製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を取得し、前記詳細スケジュール作成ステップより前に作成されたサプライチェーンのスケジュール結果を、前記取得した詳細開始日時及び詳細終了日時をもとに修正するステップをさらに含むこと
を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、記憶装置に互いに関係付けて格納した、配送資源に割付けた購買オーダ及び/または需要予測、及び生産資源に割付けた製造オーダの開始日時及び終了日時の情報を、記憶装置から読み出して、サプライチェーンのスケジュール結果を出力装置に出力する。したがって、サプライチェーン全体の見える化を実現することができる。
【0021】
また、購買オーダ割付けが、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けるので、顧客納期の遵守を優先し、しかも、サプライチェーン全体からみてリードタイムをより短縮したスケジュールを作成することができる。
【0022】
製造オーダ割付けが、生産資源に割付け可能な複数の製造オーダをバックワード及び/又はフォワードに割付けて山積みし、次いで山崩しする有限能力ラフスケジューリングによるときは、負荷超過をなくしながら、高精度の負荷調整をした、複数工場の生産スケジュールを作成することができる。
【0023】
また、購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を、詳細スケジュール結果として、記憶装置に格納すると、詳細スケジュール結果をもとにして、ラフスケジュール結果を、より正しい結果に更新することができる。
【0024】
配送実績として入力された、購買オーダにしたがった実際の配送開始日時及び配送終了日時の情報から、配送の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する購買BOMの設定情報を変更することの示唆を出力し、示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、対応する購買BOMを変更するときは、購買BOMの構築及びメンテナンスを、自動化または半自動化することができる。
【0025】
また、詳細スケジュール作成に用いられる製造BOMの情報のうち、工場内の各工程に使用する生産資源の使用を指す情報を取り去る処理により、修正された製造BOMの情報を、工場ごとに生成し、当該修正された製造BOMの設定情報を参照し、各工場の生産資源に製造オーダを割付けるときは、詳細スケジュール用の製造BOMとラフスケジュール用の“修正された”製造BOMとを統合化することができる。(工場の中の工程が複数存在する通常のケースにおいて、詳細スケジュール用の製造BOMは、少なくとも当該工程ごとに設定され得るのに対し、ラフスケジュール用の“修正された”製造BOMは、当該複数の工程を1つの工程とみなしたときの製造BOMに相当する)。また、詳細かつ膨大である各工場の製造BOMのデータに代えて、データ量が低減された修正された製造BOMの設定情報を複数工場の生産スケジュール作成に用いることができるので、処理の負荷を大幅に軽減することができる。
【0026】
作業実績として入力された、製造オーダにしたがった実際の作業の実績開始日時及び実績終了日時の情報から、作業の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する製造BOMの設定情報を変更することの示唆を出力し、示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、対応する製造BOMを変更するときは、製造BOMの構築及びメンテナンスを、自動化または半自動化することができる。
【0027】
また、作成した詳細スケジュール結果のうち、各工場の工程の作業情報をもとに、オーダ同士の関係付けを表す情報を生成し、当該オーダ同士の関係付けを表わす情報を、記憶装置に格納するときは、各工場において、お互いの最新の詳細スケジュール結果を参照しあうことができ、工場間での詳細スケジュールの連携が可能となる。
【0028】
さらに、作成した詳細スケジュール結果のうち、購買オーダ及び/または需要予測、または製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を取得し、詳細スケジュール作成より前に作成されたサプライチェーンのスケジュール結果を、取得した詳細開始日時及び詳細終了日時をもとに修正すると、サプライチェーン全体のリードタイムをより短縮したスケジュール結果を得ることができる。
【0029】
上記した本発明の目的および利点並びに他の目的および利点は、以下の実施の形態の説明を通じてより明確に理解される。もっとも、以下に記述する実施の形態は例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を適用する、複数工場を含むサプライチェーンの一例を示す概念図である。
【図2】本発明に係る複数工場生産計画スケジューリングシステムMPPSの入力と出力を示す図である。
【図3】本発明に係る複数工場生産計画スケジューリングシステムMPPSにおける処理とデータの流れを示す図である。
【図4】入力されたFOとPOから、FPAにより生成される、調整されたFOの例を示す図である。
【図5】MPRSによるラフスケジュール結果から、サプライチェーン全体のガントチャートを表示した例を示す図である。
【図6】本発明を適用する、図1のサプライチェーンについて、ラフスケジュールする一例を示す概念図である。
【図7】MPRSによる、ラフスケジュールの処理の全体フローを示す図である。
【図8】有限能力ラフスケジューリングによる、MO割付けのフローを示す図である。
【図9】有限能力ラフスケジューリングによる、MO割付けにおける、工場の負荷状態を示す図であり、図9(a)は、図8のステップS301においてバックワードに山積みした直後の負荷超過の状態を示す図、図9(b)は、図8のステップS303〜S306の処理により時間軸方向に連続的に山崩しして、負荷を平準化した状態を示す図である。
【図10】工場の詳細スケジュールの結果をもとに、ラフスケジュールを再計算させることによるリードタイム短縮の効果を説明する図である。
【図11】複数工場を含むサプライチェーンの別の例を示す概念図である。
【図12】複数工場を含むサプライチェーンの、さらに別の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0031】
100 複数工場生産計画スケジューリングシステム(MPPS)
110 複数工場ラフスケジューリング(MPRS)
130 データホスト(DH)
151〜154 詳細スケジューリング(DS)
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づき詳しく説明する。
【0033】
図1は、本発明を適用するサプライチェーンの一例を示す概念図である。図1において、S1,S2はサプライヤ、F1,F2,F3,F4は工場、C1,C2は顧客である。工場F3,F4は、サプライヤS1,S2から原材料Z1を購入し、これを加工等して、部品、半製品、または素材(以下、これらを総称して「部品」という。)Y1を製造する。工場F1,F2は、工場F3,F4から部品Y1を購入し(供給を受け)、製品X1を製造し、顧客C1,C2に配送する。本実施形態において、サプライヤ数、工場数(2以上)、顧客数、原材料数、部品数、製品数を、上記のとおりとするが、これは例示であり、一般的にはこれらの数は任意である(工場数は2以上とする)。すなわち、上記サプライチェーンは、工場Fn,サプライヤSm,顧客Cl,原材料Xi,部品Yj,製品Zkについて、n=2,3,・・・であり、m,l,i,j,k=1,2,3,・・・と一般化できる。
【0034】
図1のサプライチェーンの例示にかかわらず、一般的に、任意のサプライヤから任意の工場へ原材料を供給してよい。例えば、ある原材料を、サプライヤS1から工場F1へ供給する場合がある。また、一般的に、任意の工場から任意の顧客へ製品を供給してよい。例えば、ある製品を、工場F3から顧客C1へ製品を供給する場合がある。本発明は、このような任意のケースに対応する。
【0035】
図2は、複数工場生産計画スケジューリングシステムMPPS(Multi Plant Planning and Scheduling)100の入力と出力を示す図である。MPPS100は、CPU、メモリ、ハードディスク等の大容量記憶装置、及び通信制御部等のハードウェアを備えたコンピュータ上に、プログラムあるいはプログラムモジュール群として実装されていればよい。また、MPPS100を構成するコンピュータは、単独のコンピュータ、または通信回線を介して互いに接続された複数のコンピュータのいずれでもよい。
【0036】
MPPS100には、各工場、本社、営業所の各事業所に設置されている入力装置(例えば、上記コンピュータと、通信ネットワークを介して接続される、クライアントコンピュータ等の端末装置)を介して、需要予測(Forecast Order)、購買オーダ(Purchase Order)、在庫実績(Inventory)、配送実績(Transportation Results)、及び作業実績(Operation Results)のデータが、随時に(at any time)入力される。新しいデータが入力される(データが追加、変更、または削除される)と、MPPS100は、複数工場の生産計画(Multi Plant Planning)と生産スケジュール(Detail Schedule)を計算し、その時の入力に対する最適解として計算した、生産計画・生産スケジュール結果を出力する。当該出力は、複数工場を含むサプライチェーン全体に係るガントチャート(Gantt Chart)等のラフなスケジュール結果と、工場ごとの受注、生産、購買に係るガントチャート、及び生産に係る作業指示等の詳細なスケジュール結果とを含む。
【0037】
図3は、本実施形態に係る、複数工場生産計画スケジューリングシステムMPPS100における、処理とデータの流れを示す図である。MPPS100は、複数工場ラフスケジューリングのためのMPRS(Multi Plant Rough Scheduling)110、データホストDH(Data Host)130、及び工場別の詳細スケジューリング(Detail Scheduling)のためのDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154を含む。
MPRS110は、複数工場を含むサプライチェーン全体のラフスケジュールを作成する。このラフスケジュールは、受注と購買を含めた、生産計画(Planning)の作成を含む。DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154は、それぞれ、工場F1,F2,F3,F4の詳細スケジュールを作成する。MPRS110、DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154は、それぞれ、メモリ上で稼働するプログラムあるいはプログラムモジュールとして、コンピュータに実装されていればよい。
【0038】
DH130は、MPRS110での処理、及び/またはDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154での処理に用いられる、各種のデータ(後述するFO,PO,INV,MO,ROP,MBR,PB,OPR,TRR等)を、所定の記憶領域に格納する。DH130は、好適には、ハードディスク等の大容量記憶装置である。
【0039】
表1に、需要予測FO、購買オーダPO、在庫INV、製造オーダMOに共通して用いられる、プロパティ(データ項目)の例を示す。FO,PO,INV,MOの別は、プロパティ「オーダ種別」によって区別される。なお、表1は、FO,PO,INV,MOのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表1】

【0040】
以下、図3に示す処理とデータの流れに沿って、MPPS100が行う処理を、詳しく説明する。
【0041】
FOS:需要予測FOの分割(FO Split)
【0042】
FOS121は、外部からDH130に入力される、大タイムバケットの需要予測FOを、品目・顧客ごとに、指定された小タイムバケットに分割する。大タイムバケットで作成される需要予測を、時間方向に平準化するためである。具体的には、FOS121は、DH130からFOを読み出し、品目・顧客単位に大タイムバケットのFOの数量を、小タイムバケットの数量に分割した、「分割したFO」を生成する。例えば、月次の生産数量(例えば、200台)を、稼働日(例えば、20日)を考慮して日単位の生産数量に分割したFO(1日あたり10台)を生成する。小タイムバケットは、通常1日であるが、半日、あるいは1/3日等にすることでもよく、特に限定しない。
FOは、FOのプロパティ「開始日時」、「期間」によって表わされる期間の「予測数量」を表わす。
【0043】
FPA:分割したFOの購買オーダPOによる調整(FO-PO Adjustment)
【0044】
FPA123は、外部からDH130に入力される購買オーダPOを参照して、上記FOSの結果の「分割したFO」を調整する。POは、顧客からの確定したオーダであり、FOにおける「予測数量」を調整する必要があるからである。ここでの調整は、FOとPOの重複分を、FOから差し引くことにより行う。具体的には、FPA123は、FOの数量を、対応するタイムバケットのPOの数量から差し引く。また、POの数量のほうが多いタイムバケットに関しては、それより前の近いタイムバケットのFOから、POの数量を差し引く。
図4は、FPA123に入力されたFOとPOから、FPA123により生成される、調整されたFOの例を示す。調整されたFO,POの数量は、DH130の中の、オーダに関する記憶領域の、FO,POに書き込まれる。具体的には、FOのプロパティ「数量」が、調整されたFOの数量を表わす。また、POのプロパティ「数量」が、POの数量を表わす。
【0045】
MPRS:複数工場ラフスケジューリング(Multi Plant Rough Scheduling)
【0046】
MPRS110は、DH130の中の、オーダに関する記憶領域の、FO,POに書き込まれている、調整されたFOと、PO、及び在庫INVを用いて、下記に詳述する複数工場ラフスケジューリングを行う。MPRS110は、ラフスケジュール結果をもとに、サプライチェーン全体のガントチャート等を出力することができる。図5は、MPRS110によるラフスケジュール結果から、サプライチェーン全体のガントチャートを表示した例を示す。
【0047】
図7は、MPRS110によるラフスケジュールの処理の全体フローを示す。図7に示すとおり、MPRS110による処理は、PO割付け(ステップS10)、MO生成(ステップS20)、MO割付け(ステップS30)、及びPO生成(ステップS40)を含む。以下、図7を参照しつつ、MPRS110による処理の流れを詳しく説明する。
【0048】
ステップS10: PO割付け(購買BOMによる配送の配送資源への割付け)
MPRS110は、調整されたFO,POから、購買BOM(PB)を参照して、当該調整されたFO,POのオーダを配送する配送資源を選択し、オーダを割付ける。すなわち、MPRS110は、まず、サプライヤ(購買先)と顧客(購買元)の組み合わせごと、及び配送資源(例えば、トラック、船、航空機等)ごとに設定されたPBの設定情報(所要時間、優先度、またはコスト、あるいはこれらの組み合わせ)をもとに、所定の計算式により評価値を求める。この評価値をもとに、適切なサプライヤと配送資源を決定し、オーダをその配送資源に割付ける。
表2に、PBのプロパティの例を示す。なお、表2は、PBのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表2】

【0049】
PBのプロパティにおいて、「サプライヤ」から「顧客」に「品目」を配送するときに、使用可能な「配送資源」を指定する。配送可能日は「日指定」、配送のスタート時刻は「スタート」に設定する。
ステップS10のPO割付けによって、サプライヤ、配送開始日時、配送終了日時が決定されることにより、POのプロパティ「ラフサプライヤ」、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。なお、ここでのサプライヤとは、そのオーダの製品(部品)を製造する工場、または製品(部品、原材料)を顧客が購入するときの当該製品を供給するサプライヤに相当する。
【0050】
ステップS20: MO生成
次に、MPRS110は、FO,POを、サプライヤの製品在庫INVにひも付けする。INVが不足する場合、MPRS110は、あらかじめ設定された製造ロットサイズの指定に従い、製造オーダMOを自動生成する。INVが不足しない場合、MOを生成しない。
【0051】
ステップS30: MO割付け
MPRS110は、ステップS20において生成したMOを工場の生産資源に割付ける。この割付けのために、MPRS110は、後述するラフスケジュール用の製造BOM(MBR:MB for Rough Scheduling)を、DH130から読み出す。MBのラフ変換(MBRT:MB Rough Transformation)の結果であるMBRを用いると、各工場における詳細スケジュールが複数工程を含む場合でも、MPRS110での処理では工場全体を1工程として、MOを工場の生産資源に割付けることができる。このときの割り付け方は、無限能力スケジューリング(Infinite Capacity Scheduling 「無限山積み」ともいう。)、有限能力ラフスケジューリング(Finite Capacity Rough Scheduling)、または、有限能力スケジューリング(Finite Capacity Scheduling)のいずれかによることができるが、有限能力ラフスケジューリングによることが好ましい。
【0052】
MO割付けに用いることのできる、各スケジュール方法について、説明する。
無限能力スケジューリングは、複数のオーダによる工程の干渉を無視して、MRPの固定リードタイムによりスケジュールを立てる方法であり、一般に生産リードタイムの短縮につながらない。これに対し、有限能力スケジューリングは、資源の負荷を考慮して、オーダの納期から、さかのぼって工程の最適な投入タイミングを計算し、あるいは、オーダの着手日時から、工程の完了タイミングを計算する。かかる計算は、分・秒の単位で行われる。前者は、「有限能力バックワードスケジューリング」、後者は、「有限能力フォワードスケジューリング」とも呼ばれている。有限能力スケジューリングによると、複数のオーダによる工程の干渉を考慮した、現実的なスケジューリングが可能であり、しかも、無限能力スケジューリングに比べて、生産リードタイムを大幅に短縮することができる。
【0053】
他方、有限能力ラフスケジューリングは、MRPの固定リードタイムによる無限能力スケジューリングよりも精度の高い負荷調整が可能な方法として、本発明者が、特許文献1において提案した方法である。その詳細については、特許文献1の開示に譲るとして、ここでは、図8、図9を参照して、その概要を説明する。
【0054】
図8は、有限能力ラフスケジューリングによるMO割付けのフローを示す。有限能力ラフスケジューリングでは、工場に割り付け可能な複数のMOをバックワード及び/又はフォワードに割り付けて山積みし、次いで山崩しする。
図8を参照して、まず、各MOをバックワード及び/又はフォワードに山積みで割付ける(ステップS301)。次いで、負荷超過があるか調べる(ステップS302)。負荷超過となっている時間帯(超過時間帯)を特定する(ステップS303)。負荷超過がある場合、超過時間帯に関わる各MOに対して、そのMOが割り付いている時間帯における負荷超過の平均値を算出し(ステップS304)、その平均値に定数(定数は通常 1.0以上の値)を掛けることにより、Expansion Rate(引き延ばし率)を計算する(ステップS305)。次いで、そのMOの占有時間を、Expansion Rateを掛けて引き延ばす(ステップS306)。これにより、そのMOの負荷量をExpansion Rateで割って小さくする。次いで、ステップS101に戻り、もう一度山積みする。そして、資源毎に負荷超過があるか調べ、負荷超過があればステップS303〜S306、及びS301を繰り返す。負荷超過がなければ終了する(ステップS302)。以上の処理は、バックワード及び/又はフォワードに山積みされた状態から、割付け方向とは逆の時間軸方向に、連続的に山崩しする処理に相当する。
【0055】
図9は、有限能力ラフスケジューリングによるMO割付けにおける、工場の負荷状態を示す図であり、図9(a)は、図8のステップS301においてバックワードに山積みした直後の負荷超過の状態を示す図、図9(b)は、図8のステップS303〜S306の処理により時間軸方向に連続的に山崩しして、負荷を平準化した状態を示す図である。このように、有限能力ラフスケジューリングでは、負荷超過をなくしながら、MOの最早投入タイミング(ラフ開始日時)を計算することができる。
ステップS30のMO割付けにより、工場における、製造開始日時、製造終了日時が決定されることによって、MOのプロパティ「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。
【0056】
ステップS40: PO生成(MBRによる所要量計算)
MPRS110は、MBR(MB for Rough Scheduling)を用いて、MOに対する原材料の所要量を計算し、必要な原材料をINVにひも付けする。INVが不足する場合、MPRS110は、あらかじめ設定された購買ロットサイズの指定に従い、POを自動生成する。そして、ステップS10のPO割付けに戻る。
以上のステップS10からステップS40までの処理を、割付けるPOがなくなるまで繰り返す(ステップS50)。
そして、MPRS110は、ラフスケジュール結果を、DH130の中の、オーダに関する記憶領域のPO(及び/またはFO)、MOに書き込む。
【0057】
図5に示す、サプライチェーン全体のガントチャートの例において、図6に示す、サプライチェーンのラフスケジューリングが生成される処理を確認すると、以下のようになる。ここでは、顧客C1が製品X1を、ある数量購入するケースについて考える。なお、製品X1は、工場F1またはF2において、部品Y1を加工することにより製造され、当該部品Y1は、工場F3またはF4において原材料Z1をもとに製造されるものとする。
【0058】
まず、ステップS10のPO割付けにより、製品X1を顧客C1に供給できる工場F1、F2のうち、最適なサプライヤと配送資源を求め(この結果、サプライヤF2と配送資源1が決まる)、製品X1をサプライヤF2から顧客C1に配送する「配送資源1」に、製品X1のPO(及び/またはFO)を割付ける。このとき、製品X1に係るPOのプロパティ「ラフサプライヤ」(=F2)、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第1の購買オーダ割付ステップに相当する。
次のステップS20のMO生成において、「配送資源1」に割付けられた製品X1のPOを、工場F2における「F2:製品在庫」の製品X1のINVにひも付ける。ただし、工場F2において、製品X1のINVが不足するため、製品X1のMOを生成する。これは、本発明における第1の製造オーダ生成ステップに相当する。
次のステップS30のMO割付けにより、工場F2の生産資源「F2:製造工程」に、製品X1のMOを割付ける。このとき、工場F2の、製品X1に係るMOのプロパティ「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第1の製造オーダ割付ステップに相当する。
次のステップS40のPO生成において、生産資源「F2:製造工程」に割付けられた製品X1のMOを、「F2:原料在庫」の部品Y1のINVにひも付ける。ただし、部品Y1のINVが不足するため、部品Y1のPOを生成する。これは、本発明における第1の購買オーダ生成ステップに相当する。
【0059】
部品Y1のPOを、次の配送資源に割付けることが必要なため、ステップS10に戻って、PO割付けにより、部品Y1を顧客F2に供給できる工場F3、F4のうち、最適なサプライヤと配送資源を求め(この結果、サプライヤF4と配送資源2が決まる)、部品Y1をサプライヤF4から顧客F2に配送する「配送資源2」に、部品Y1のPOを割付ける。このとき、部品Y1に係るPOのプロパティ「ラフサプライヤ」(=F4)、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第2の購買オーダ割付ステップに相当する。
次のステップS20のMO生成において、「配送資源2」に割付けられた部品Y1のPOを、工場F4における「F4:製品在庫」の部品Y1のINVにひも付ける。ただし、工場F4において、部品Y1のINVが不足するため、部品Y1のMOを生成する。これは、本発明における第2の製造オーダ生成ステップに相当する。
次のステップS30のMO割付けにより、工場F4の生産資源「F4:製造工程」に、部品Y1のMOを割付ける。このとき、工場F4の、部品Y1に係るMOのプロパティ「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第2の製造オーダ割付ステップに相当する。
次のステップS40のPO生成において、生産資源「F4:製造工程」に割り付けられたMOを、「F4:原料在庫」の原材料Z1のINVにひも付ける。ただし、原材料Z1のINVが不足するため、原材料Z1のPOを生成する。これは、本発明における第2の購買オーダ生成ステップに相当する。
ステップS10に戻り、PO割付けにより、原材料Z1を顧客F4に供給できるサプライヤS1、S2のうち、最適なサプライヤと配送資源を求め(この結果、サプライヤS1と配送資源3が決まる)、原材料Z1を、サプライヤS1から顧客F4に配送する「配送資源3」に、原材料Z1のPOを割付ける。このとき、原材料Z1に係るPOのプロパティ「ラフサプライヤ」(=S1)、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第3の購買オーダ割付ステップに相当する。
【0060】
MPRS110は、DH130の中のオーダに関する記憶領域に書き込まれたFO,PO,MOのデータを読み出して、サプライチェーンのラフスケジュール結果を、ディスプレイ、プリンタ等の出力装置に出力する。これにより、サプライチェーン全体の見える化を実現することができる。
【0061】
従来技術において、製造完了した製品の配送を含めてスケジュールすることはしていなかった。すなわち、従来技術では、顧客納期に対してスケジュールするのではなく、製造完了納期に対してスケジュールし、配送は大雑把な期間の固定的なバッファ期間を取っているにすぎなかった。このため、納期に間に合うかどうかの判定が精密に行われていなかった。このような従来技術とは対照的に、本実施形態では、MPRS110によるラフスケジュールのPO割付けにおいて、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、PBの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、決定した配送資源に購買オーダを割付けている。したがって、本実施形態によると、MPRS110でのラフスケジュールの際に、PBを参照するようにして、顧客納期に対して、配送経路(どこから供給を受けるか)及び配送資源(如何なる手段で配送するか)を考慮したスケジュールを、自動で作成することができる。つまり、本実施形態によると、顧客納期の遵守を優先し、しかも、サプライチェーン全体からみてリードタイムをより短縮したスケジュールを作成することができるので、極めて有利である。
【0062】
DS(F1),DS(F2),DS(F3),DS(F4):各工場の詳細スケジューリング
【0063】
次に、DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154による、詳細スケジュールの作成について説明する。
【0064】
DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154に、FO,PO(全オーダのうち、詳細スケジュールする期間の納期のオーダ),及びMOを入力し、詳細スケジュールする。詳細スケジュールに必要なFO,PO,MOのデータは、DH130の中のオーダの領域から読み込むことができる。詳細スケジュールの処理の流れを概略で説明すると、以下のとおりである。
【0065】
(a)FO,POのうち必要なものを入力する。必要なものとは、FO,POのプロパティ「顧客」または「サプライヤ」が、自工場となっているオーダである。(例えば、DS(F1)151での処理のときは、プロパティ「顧客」または「サプライヤ」がF1のもの。DS(F2)152での処理のときは、同プロパティがF2のもの。以下、同様である。)なお、在庫実績があるときは、同様に、INVのうち必要なものを入力する。
(b)MOのうち必要なものを入力する。必要なものとは、MOのプロパティ「顧客」が、自工場となっているオーダ、つまり自工場で生産するオーダである。
(c)PBのうち必要なものを参照する。必要なものとは、PBのプロパティ「顧客」または「サプライヤ」が、自工場となっているPBである。
(d)入力したデータをもとに、詳細スケジュールする。この詳細スケジュールは、好ましくは有限能力スケジューリングによる。
【0066】
有限能力スケジューリングによる生産スケジューリングでは、各工場の生産スケジュールに複数工程が含まれるときはそれら複数工程を当然に考慮する。具体的には、MBを参照して、MOを工程展開し、作業OPのネットワークを作成し、各作業を、所定の計画パラメータで指定された順序で、MBをもとに、工場の各資源(機械、人員、工具等)に割付けることができる。この結果、すべてのOPが資源に有限能力で割付けられ、かつ生産リードタイムが短縮された、詳細な生産スケジュールを作成することができる。
【0067】
次に、各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154は、上記により作成した詳細な生産スケジュールの情報から、原材料または部品の必要量と必要タイミングを算出する。本実施形態によると、詳細スケジュールの際にも、DH130に格納されているPBを参照して、ラフスケジュールの際のPO割付け(ステップS10)と同様の処理を実行することにより、配送経路及び配送資源を考慮した、詳細スケジュールを、自動で作成することができる。
【0068】
以上により、DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154は、自工場での詳細スケジュール結果として、MO,PO,及び自工場の工程の作業情報であるOP(Operation)を出力する。
【0069】
詳細スケジュール結果は、DH130の中の、オーダに関する記憶領域の、MO,POに、それぞれ書き込まれる。すなわち、詳細スケジュール結果として、自工場のMOのプロパティ「詳細開始日時」、「詳細終了日時」が設定される。また、自工場が「顧客」となっているPOのプロパティ「詳細サプライヤ」、「詳細開始日時」、「詳細終了日時」が設定される。さらに、自工場が「サプライヤ」となっているPOのプロパティ「回答サプライヤ」、「回答開始日時」、「回答終了日時」が設定される。ここで、自工場の生産スケジュールに複数工程が含まれる通常のケースにおいて、詳細スケジュール結果としての複数の工程の開始日時及び終了日時のうち、最先の開始日時及び最後の終了日時の情報を取得して、MOの詳細開始日時及び詳細終了日時に設定する。
【0070】
他方、詳細スケジュール結果としてのOPは、作業・タスク・指図に係るプロパティ(例えば、作業品目、作業数量、タスク種別、開始日時、終了日時、指図種別、ひも付けするオーダ等)を有する。
【0071】
OPRT:詳細スケジュール結果のラフ変換(Operation Rough Transformation)
【0072】
各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154には、OPRT161が設けられている。OPRT161は、上記OPをラフ変換して、オーダ間のひも付け情報を表すROP(Rough OP)を生成する。
表3に、ROPのプロパティの例を示す。なお、表3は、ROPのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表3】

【0073】
上記の通り、OPRT161がOP(Operation)をもとに生成するROPは、オーダのひも付け情報を表す。OPのオーダコードにより特定される各オーダ(MO,PO及び/またはFO)は、詳細スケジュール結果として、複数の入力指図と複数の出力指図をもつことができる。ここで、入力指図は、そのオーダへの原材料の入力を指し、出力指図は、そのオーダからの生産物、副産物の出力を指す。OPRT161により生成されたROPは、DH130の中の、作業に関する記憶領域の、ROPに書き込まれる。
【0074】
本実施形態によれば、DS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154による各工場の詳細スケジュール結果としての、PO及び/またはFOの開始・終了情報と、オーダ間のひも付け情報は、随時に(at
any time)、DH130に格納される。そして、MPRS110は、DH130に格納されている当該情報を、随時に参照することができる。したがって、MPRS110では、詳細スケジュール結果をもとにして、ラフスケジュール結果を、より正しい結果に更新することができる。
【0075】
例えば、ある工場の詳細スケジュール結果から、負荷オーバであることが判明した場合、当該詳細スケジュールの処理の直前のラフスケジュールの処理において当該工場をサプライヤとしていたPOを分割して、他工場をサプライヤとする新たなPOを発生させ、当該工場の生産資源に割付けていたMOを減らすように、MPRS110に複数工場ラフスケジュールを再計算させる。これにより、詳細スケジュールにおける負荷オーバを、有効に解消することができる。
【0076】
逆に、例えば、ある工場の詳細スケジュール結果から、生産リードタイムの短縮が可能であることが判明した場合、各工場の詳細スケジュール結果をもとに、MPRS110に複数工場ラフスケジュールを再計算させる。これにより、サプライチェーン全体のリードタイムをより短縮したラフスケジュール結果を得ることができる。その理由を、図10を参照して具体的に説明する。
【0077】
図10(a)は、工場F1における最新の詳細スケジュールを算出し、反映する前の時点における、MPRS110によるラフスケジュール結果を示すガントチャートの一例を示す図である。同ガントチャートは、工場F1を供給元とするPOと、POにひも付けられ、工場F1の生産資源に割付けられているMOと、MOにひも付けられ、工場F1を供給先とするPOを示している。図10(b)は、DS(F1)151による工場F1の最新の詳細スケジュール結果を示すガントチャートの一例を示す図である。この例において、工場F1の生産スケジュールはMOを工程展開した、複数の工程A,B,C,及びDを含む。しかるに、詳細スケジュール結果における、複数の工程の開始日時及び終了日時のうち、最先の開始日時及び最後の終了日時を、図10(a)に示されたMOの詳細開始日時及び詳細終了日時と比較すると、前記最先の開始日時が、MOの詳細開始日時よりも遅くてもよいことがわかる。つまり、MOの生産リードタイムを短縮できることがわかる。図10(c)は、上記DH130から、少なくとも、DS(F1)151による工場F1の詳細スケジュール結果としての、PO,FO,MOの詳細開始日時及び詳細終了日時を取得し、これをもとにして、MPRS110に再計算させたときのラフスケジュール結果を示すガントチャートの一例を示す図である。図10(a)と比較して、生産リードタイムをより短縮することができることがわかる。また、上記生産リードタイムの短縮に応じて、工場F1が、原材料または部品の供給元に発注をするタイミング(原料発注タイミング)Pを、P’まで遅くすることができる。この結果として、工場F1の原材料または部品の在庫をより削減できることがわかる。
【0078】
本実施形態によれば、上記の利点に加えて、DH130には、各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154によるスケジュール結果(PO,MO,ROP)が、随時に格納されるので、各工場で、お互いの最新の詳細スケジュール結果を、参照しあうことができる。これにより、各工場において、例えば、サプライヤから原材料または部品を購買するためのPOの納期回答情報(POのプロパティ「回答開始日時」および「回答終了日時」)を得ることができる等、工場間での詳細スケジュールの連携が可能となる。
【0079】
MBRT:MBのラフ変換(MB Rough Transformation)
【0080】
各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154には、MBRT163が設けられている。MBRT163は、詳細スケジュール用のMBを、ラフスケジュール用の製造BOM(MBR:MB for Rough Scheduling)に変換して、DH130に出力する。
表4に、MBのプロパティの例を示す。なお、表4は、MBのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表4】

【0081】
MBRT163によるMBのラフ変換とは、具体的には、各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154が参照する、自工場のMBから、MBのプロパティ「指図種別」が使用指図であるものを取り去る処理により、MBRを生成することを意味する。使用指図は、そのオーダにおいて使用する各資源(機械、人員、工具等)を指す。
【0082】
MBRT163が、MBをもとに生成するMBRは、上述のとおり、MPRS110でのラフスケジュールに用いられる。すなわち、本実施形態によると、MBRTによる変換を通して、詳細スケジュール用のMBとラフスケジュール用のMBRとを統合化することができる。
【0083】
各工場のMBのデータは、詳細かつ膨大であるため、MPRS110が、MBを用いてラフスケジュールを実行することは、処理に膨大な時間を要するため現実的ではないのに対し、MBRT163によって生成されたMBRの使用は、MPRS110でのラフスケジュールの負荷を大幅に軽減するのに役立つ。
【0084】
ところで、MB,PBは、従来、作業者が作成し、入力し、保守している。しかしながら、これらBOMのデータは詳細でかつ膨大なため、これらの作業には多大な労力と時間を要する。本実施形態においては、次に述べるOPRE165が、作業実績をもとに、MBの構築及びメンテナンスを支援し、TRRE125が、配送実績をもとに、PBの構築及びメンテナンスを支援する。
【0085】
OPRE:作業実績評価(Operation Results Evaluation)
【0086】
各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154には、OPRE165が設けられている。OPRE165は、各工場の入力装置から随時に入力される、作業実績OPRを解析し、MBの変更を示唆する。
OPは、ある品目についての、ある作業工程において、どの資源を用いて、どのタスク(前段取り、製造、後段取り)を、いつ開始・終了するかの情報を含んでいる。OPの情報は、作業指示として作業者に提示され、作業者は、その作業指示にしたがって作業を行う。そして、作業者による作業開始時、作業完了時に、OPRが入力される。原材料/部品/製品にRFID(Radio Frequency Identification)、バーコード等の識別タグが付されている場合、製造工程においてこれを読み取ることにより、OPRを自動的に記録してもよい。DH130は、外部から入力されるOPRを、随時に格納する。
表5に、OPRのプロパティの例を示す。なお、表5は、OPRのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表5】

【0087】
上記のとおり、OPRは、終了した作業の、現実の所要時間(作業終了日時−作業開始日時)を表す情報である。
各工場のOPRE165は、DH130から読み出した複数のOPRと、自工場のMBを用いて、(a)統計処理により、複数のOPRから、工場・品目・工程・資源・タスクにおける所要時間の発生分布を求めて、所要時間の平均値、最小値、最大値、標準偏差、確率分布のグラフを出力し、そして、(b)現在のMBの設定値との偏差を出力するとともに、偏差が大きいランキングを出力する。また、各工場のOPRE165が、(c)いままで発生したことのない作業実績(例えば、現在のMBで指定されていない資源(例えば機械)を例外的に使用した場合等)をリストするよう構成することができる。これは、現在のMBに、新たな使用指図(作業員、機械の使用)や入力指図(原材料、部品の入力)、出力指図(生産物、副産物の出力)を追加しなければならない可能性を示す。
【0088】
例えば、自工場での、ある作業について、複数のOPRの所要時間を統計処理したところ、平均が10分となったが、現在のMBが指定する工程の所要時間が、15分に設定されている場合、OPRE165が、MBの変更を示唆するよう、構成することができる。
【0089】
OPRE165からのこれらの報告は、担当者によるチェックを経た後に、担当者により、MBの変更を指示する操作入力が、OPRE165に与えられたとき、OPRE165がMBを変更する。
【0090】
従来のシステムでは、詳細でかつ膨大なMBは、作業者が作成し、入力し、保守する必要があったが、本実施形態によれば、OPRE165により、複数のOPRをもとに、MBにデータを追加または変更することが可能であり、MBの構築及びメンテナンスを、自動化または半自動化することができる。
【0091】
TRRE:配送実績評価(Transportation Results Evaluation)
【0092】
MPRS110には、TRRE125が設けられている。TRRE125は、配送実績TRRを解析し、PBの変更を示唆する。
TRRは、あるサプライヤから、ある顧客に向けて、ある品目を、ある配送資源で配送したとき、いつ開始・終了し、その所要時間はどれだけかかったかの情報である。POの配送開始時、配送完了時に、TRRが入力される。原材料/部品/製品にRFID、バーコード等の識別タグが付されている場合、配送工程においてこれを読み取ることにより、TRRを自動的に記録してもよい。DH130は、外部から入力されるTRRを、随時に格納する。
表6に、TRRのプロパティの例を示す。なお、表6は、TRRのデータの主プロパティを例示する一例であって、本発明はこれに限定しない。
【表6】

【0093】
上記のとおり、TRRは、終了した配送の、現実の所要時間を表す情報である。
TRRE125は、DH130から読み出した複数のTRRと、PBを用いて、(a)統計処理により、複数のTRRから、サプライヤ・顧客・品目・配送資源における所要時間の発生分布を求めて、所要時間の平均値、最小値、最大値、標準偏差、確率分布のグラフを出力し、そして、(b)現在のPBの設定値との偏差を出力するとともに、偏差が大きいランキングを出力する。また、TRRE125が、(c)いままで発生したことのない配送実績もリストするよう構成することができる。これは、現在のPBに新たなPBを追加しなければならない可能性を示す。
【0094】
例えば、自工場が「顧客」となっている、ある配送について、複数のTRRの所要時間を統計処理したところ、平均が1時間となったが、現在のPBが指定する配送資源の所要時間が、1時間20分に設定されている場合、TRRE125が、PBの変更を示唆するよう、構成することができる。
【0095】
TRRE125からのこれらの報告は、担当者によるチェックを経た後に、担当者により、PBの変更を指示する操作入力が、TRRE125に与えられたとき、TRRE125がPBを変更する。これにより、例えば、PBの変更が、それ後のラフスケジュール、または詳細スケジュールに反映されることで、POの原料発注タイミングを遅くして在庫を減らすようなスケジュールができる。
【0096】
従来のシステムでは、詳細でかつ膨大なPBもまた、作業者が作成し、入力し、保守する必要があったが、本実施形態によれば、TRRE125により、複数のTRRをもとに、PBにデータを追加または変更することが可能であり、PBの構築及びメンテナンスを、自動化または半自動化することができる。
【0097】
なお、本実施形態において、MPRS110とDH130との間の通信、及び、DH130と各工場のDS(F1)151,DS(F2)152,DS(F3)153,DS(F4)154との間の通信における、通信方式や伝送路は、特に限定しない。例えば、専用線、公衆電話回線、衛星通信回線等の各種通信回線や、各種サーバ等を含んで構成される、通信ネットワークを介してもよい。また、通信ネットワークに、ISP(Internet Service Provider)やNSP(Network Service Provider)が介在する構成としても良い。
【0098】
上記の実施形態において、図1及び図6に示すサプライチェーン、図5に示すガントチャートに示す例は、(外部)供給者から第2の工場に原材料または部品(原材料Z1)が供給され、第2の工場において第2の対象物(部品Y1)が生産されて第1の工場に供給され、第1の工場において第1の対象物(製品X1)が生産されて需要者に供給される具体例を示している。すなわち、上記の実施の形態は、複数工場のサプライチェーンが、顧客に第1の対象物を供給する下流側の第1の工場と、当該第1の工場に原材料または部品を供給する上流側の第2の工場を含む例であった。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、サプライチェーンが、第2の工場に供給する原材料または部品を自ら生産する、第2の工場より上流側の第3の工場を含んでもよい。
【0099】
図11は、複数工場を含むサプライチェーンの別の例を示す概念図であり、第2の工場に部品Z1を供給する第3の工場を含んでいる。そして、第3の工場は、(外部)供給者から、部品A1の供給を受けるものとする。
第3の工場、その下流側の第2の工場、さらに下流側の第1の工場、及び需要者のサプライチェーンのラフスケジューリングが生成される処理は、第3の工場を、原材料Z1を自ら生産してその下流側の第2の工場に供給する「(第1の)供給者」とみなしたときの、図6に示すサプライチェーンのラフスケジューリングが生成される処理(第1の購買オーダ割付ステップから第3の購買オーダ割付ステップまで)と同様であるので、ここでの詳しい説明を省略する。なお、第3の購買オーダ割付ステップに相当するステップS10のPO割付けの結果、原材料Z1に係るPOのプロパティ「ラフサプライヤ」(=F5)、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定されているものとする。
【0100】
第3の購買オーダ割付ステップに相当するステップS10のPO割付けに続いて、ステップS20のMO生成において、「配送資源3」に割付けられた原材料Z1(以下の説明において、これを「部品Z1」と読み替えるものとする。)のPOを、第3の工場(F5)における「F5:製品在庫」の部品Z1のINVにひも付ける。ただし、工場F5において、部品Z1のINVが不足するため、部品Z1のMOを生成する。これは、本発明における第3の製造オーダ生成ステップに相当する。
次のステップS30のMO割付けにより、工場F5の生産資源「F5:製造工程」に、部品Z1のMOを割付ける。このとき、工場F5の、部品Z1に係るMOのプロパティ「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第3の製造オーダ割付ステップに相当する。
次のステップS40のPO生成において、生産資源「F5:製造工程」に割り付けられたMOを、「F5:原料在庫」の原材料A1のINVにひも付ける。ただし、原材料A1のINVが不足するため、原材料A1のPOを生成する。これは、本発明における第3の購買オーダ生成ステップに相当する。
ステップS10に戻り、PO割付けにより、原材料A1を顧客F5に供給できるサプライヤS1、S2のうち、最適なサプライヤと配送資源を求め(この結果、サプライヤS1と配送資源4が決まる)、原材料A1を、サプライヤS1から顧客F5に配送する「配送資源4」に、原材料A1のPOを割付ける。このとき、原材料A1に係るPOのプロパティ「ラフサプライヤ」(=S1、本発明における第2の供給者に相当する)、「ラフ開始日時」、「ラフ終了日時」が設定される。これは、本発明における第4の購買オーダ割付ステップに相当する。
【0101】
本発明は、図11を参照して説明した、第1の工場、その上流側の第2の工場、及びさらにその上流側の第3の工場を含むサプライチェーンの例を、さらに、図12に示すような、原材料または部品Atを自ら生産し下流側の第(p+1)の工場に供給する、第(p+2)の工場と、第(p+2)の工場に原材料または部品Buを提供する供給者を含むサプライチェーンの場合に一般化して適用することができる。すなわち、本発明は、以下の構成をさらに含むことができる。ここで、第(p+1)の工場、第(p+2)の工場について、p=2,3,・・・であり、原材料または部品At,Buについて、t,n=1,2,3,・・・である。
【0102】
第(p+2)の購買オーダ割付ステップにより、第(p+1)の工場を顧客とする原材料または部品(At)の購買オーダを割付けた供給者を、第(p−1)の供給者としたとき、第pの供給者が、前記原材料または部品(At)を自ら生産する、前記第(p+1)の工場より上流側の第(p+2)の工場であり、かつ、前記第pの供給者を兼ねる第(p+2)の工場が生産する原材料又は部品(At)を第(p+2)の対象物としたとき、前記第(p+2)の対象物の原材料または部品(Bu)を供給する少なくとも1つの第(p+1)の供給者がいる場合(ここで、p=2,3,・・・)、前記第(p+2)の購買オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の工場における第(p+2)の対象物(At)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の対象物(At)の製造オーダを生成し、前記第(p+2)の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第(p+2)の製造オーダ割付ステップと、前記第(p+2)の製造オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の対象物(At)の原材料または部品であって、前記(p+2)の工場が保有する原材料または部品(Bu)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の工場を顧客とする当該原材料または部品(Bu)の購買オーダを生成する、第(p+2)の購買オーダ生成ステップと、前記第(p+2)の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Bu)を前記第(p+2)の工場に供給する第(p+1)の供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第(p+3)の購買オーダ割付ステップとをさらに含み、前記購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付ける。
【0103】
なお、図1、図6、図11、及び図12に示すサプライチェーンにおいて、同一の対象物、原材料または部品を生産する工場、及び同一の原材料または部品を供給する供給者が、2つずつある例を示しているが、同一の対象物等を3つまたはそれ以上の工場で生産することができる場合、供給者が3つ以上ある場合、さらには、第1の工場から第(p+2)の工場までのうち、ある対象物、原材料または部品を生産する第qの工場(q=2,3・・・またはp+1)が1つしかない場合にも、本発明を適用して、上記実施形態における効果と同様の効果が得られるできることは勿論である。
【0104】
以上、複数の実施の形態において図面を引用しつつ例示したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なうことのない範囲において適宜変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、製造業がグローバル化し、世界各地に生産拠点を持ち、複数工場の生産スケジュールを連携させたい企業の、生産スケジュールシステムに適用して、サプライチェーン全体の見える化、サプライチェーン全体のリードタイム短縮、在庫削減、及び納期順守を実現するのに役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工場(Fn)で生産する少なくとも1つの対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダを時間軸方向に割付けることにより、対象物(Xi)の原材料または部品(Yj)を供給する少なくとも1つの供給者(Sm)、複数の工場(Fn)、及び少なくとも1つの顧客(Cl)を含むサプライチェーンの生産計画を生成する、複数工場の生産スケジュール作成方法において、
前記対象物及び原材料または部品(Xi,Yj)の購買オーダ及び/または需要予測、並びに在庫実績の情報を、入力装置を介して入力するステップと、
前記対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測について、前記対象物(Xi)を顧客(Cl)に供給する供給元の第1の工場と配送資源を決定し、前記対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測を、前記配送資源に割付ける、第1の購買オーダ割付ステップと、
前記第1の購買オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記対象物(Xi)の在庫実績が不足するとき、前記対象物(Xi)の製造オーダを生成し、当該製造オーダを前記第1の工場の生産資源に割付ける、製造オーダ割付ステップと、
前記製造オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記原材料または部品(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第1の工場を顧客とする前記原材料または部品(Yj)の購買オーダを生成する、第1の購買オーダ生成ステップと、
前記第1の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Yj)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Yj)を前記第1の工場に供給する供給者及び配送資源を決定し、前記原材料または部品(Yj)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第2の購買オーダ割付ステップと、
記憶装置に互いに関係付けて格納した、前記配送資源に割付けた購買オーダ及び/または需要予測、及び前記生産資源に割付けた製造オーダの開始日時及び終了日時の情報を、前記記憶装置から読み出して、サプライチェーンのスケジュール結果を出力装置に出力するステップと
を含み、
前記第1及び第2の購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項2】
複数の工場(Fn)のうちの下流側の第1の工場で生産する第1の対象物(Xi)、及び上流側の第2の工場で生産する第2の対象物(Yj)の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダを時間軸方向に割付けることにより、第2の対象物(Yj)の原材料または部品(Zk)を供給する少なくとも1つの供給者(Sm)、複数の工場(Fn)、及び少なくとも1つの顧客(Cl)を含むサプライチェーンの生産計画を生成する、複数工場の生産スケジュール作成方法において、
前記第1及び第2の対象物及び原材料または部品(Xi,Yj,Zk)の購買オーダ及び/または需要予測、並びに在庫実績の情報を、入力装置を介して入力するステップと、
前記第1の対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測について、前記第1の対象物(Xi)を顧客に配送する第1の工場と配送資源を決定し、前記第1の対象物(Xi)の購買オーダ及び/または需要予測を、前記配送資源に割付ける、第1の購買オーダ割付ステップと、
前記第1の購買オーダ割付ステップの結果、前記第1の工場における前記第1の対象物(Xi)の在庫実績が不足するとき、前記第1の対象物(Xi)の製造オーダを生成し、当該製造オーダを前記第1の工場の生産資源に割付ける、第1の製造オーダ割付ステップと、
前記第1の製造オーダ割付ステップの結果、前記第1の対象物(Xi)の原材料または部品であって、前記第1の工場が保有する第2の対象物(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第1の工場を顧客とする当該第2の対象物(Yj)の購買オーダを生成する、第1の購買オーダ生成ステップと、
前記第1の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記第2の対象物(Yj)の購買オーダについて、前記第2の対象物(Yj)を前記第1の工場に供給する第2の工場と配送資源を決定し、前記第2の対象物(Yj)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第2の購買オーダ割付ステップと、
前記第2の購買オーダ割付ステップの結果、前記第2の工場における第2の対象物(Yj)の在庫実績が不足するとき、前記第2の対象物(Yj)の製造オーダを生成し、前記第2の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第2の製造オーダ割付ステップと、
前記第2の製造オーダ割付ステップの結果、前記第2の対象物(Yj)の原材料または部品であって、前記第2の工場が保有する原材料または部品(Zk)の在庫実績が不足するとき、前記第2の工場を顧客とする当該原材料または部品(Zk)の購買オーダを生成する、第2の購買オーダ生成ステップと、
前記第2の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Zk)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Zk)を前記第2の工場に供給する供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(Zk)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第3の購買オーダ割付ステップと、
記憶装置に互いに関係付けて格納した、前記配送資源に割付けた購買オーダ及び/または需要予測、及び前記生産資源に割付けた製造オーダの開始日時及び終了日時の情報を、前記記憶装置から読み出して、サプライチェーンのスケジュール結果を出力装置に出力するステップと
を含み、
前記第1,第2,及び第3の購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項3】
前記第3の購買オーダ割付ステップにより、前記第2の工場を顧客とする前記原材料または部品(Zk)の購買オーダを割付けた前記供給者を、第1の供給者としたとき、当該第1の供給者が、前記原材料または部品(Zk)を自ら生産する、前記第2の工場より上流側の第3の工場であり、かつ、前記第1の供給者を兼ねる第3の工場が生産する前記原材料又は部品(Zk)を第3の対象物としたとき、当該第3の対象物(Zk)の原材料または部品(At)を供給する少なくとも1つの第2の供給者がいる場合、
前記第3の購買オーダ割付ステップの結果、前記第3の工場における第3の対象物(Zk)の在庫実績が不足するとき、前記第3の対象物(Zk)の製造オーダを生成し、前記第3の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第3の製造オーダ割付ステップと、
前記第3の製造オーダ割付ステップの結果、前記第3の対象物(Zk)の原材料または部品であって、前記第3の工場が保有する原材料または部品(At)の在庫実績が不足するとき、前記第3の工場を顧客とする当該原材料または部品(At)の購買オーダを生成する、第3の購買オーダ生成ステップと、
前記第3の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(At)の購買オーダについて、前記原材料または部品(At)を前記第3の工場に供給する第2の供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(At)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第4の購買オーダ割付ステップと、
をさらに含み、
以下同様に、第(p+2)の購買オーダ割付ステップにより、第(p+1)の工場を顧客とする原材料または部品(At)の購買オーダを割付けた供給者を、第(p−1)の供給者としたとき、第pの供給者が、前記原材料または部品(At)を自ら生産する、前記第(p+1)の工場より上流側の第(p+2)の工場であり、かつ、前記第pの供給者を兼ねる第(p+2)の工場が生産する原材料又は部品(At)を第(p+2)の対象物としたとき、前記第(p+2)の対象物の原材料または部品(Bu)を供給する少なくとも1つの第(p+1)の供給者がいる場合(ここで、p=2,3,・・・)、
前記第(p+2)の購買オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の工場における第(p+2)の対象物(At)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の対象物(At)の製造オーダを生成し、前記第(p+2)の工場の生産資源に、当該製造オーダを割付ける、第(p+2)の製造オーダ割付ステップと、
前記第(p+2)の製造オーダ割付ステップの結果、前記第(p+2)の対象物(At)の原材料または部品であって、前記(p+2)の工場が保有する原材料または部品(Bu)の在庫実績が不足するとき、前記第(p+2)の工場を顧客とする当該原材料または部品(Bu)の購買オーダを生成する、第(p+2)の購買オーダ生成ステップと、
前記第(p+2)の購買オーダ生成ステップの結果生成された、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダについて、前記原材料または部品(Bu)を前記第(p+2)の工場に供給する第(p+1)の供給者と配送資源を決定し、前記原材料または部品(Bu)の購買オーダを、前記配送資源に割付ける、第(p+3)の購買オーダ割付ステップと、
をさらに含み、
前記購買オーダ割付けステップは、それぞれ、供給先と供給元との組み合わせごと、及び選択可能な配送資源ごとに設定された、購買BOMの設定情報を用いる演算処理により、対象物の供給元と配送資源を決定し、当該決定した配送資源に購買オーダを割付けること
を特徴とする、請求項2に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項4】
前記製造オーダ割付けステップは、
前記生産資源に割付け可能な複数の製造オーダをバックワード及び/又はフォワードに割付けて山積みし、次いで山崩しする有限能力ラフスケジューリングにより、製造オーダを割付けるステップ
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項5】
前記対象物及び原材料または部品の購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダのうち、前記複数の工場(Fn)の各工場で対象物を生産する詳細スケジュールを作成するために必要なオーダの情報を入力し、工程ごとに設定された製造BOMの設定情報を用いて、有限能力スケジューリングにより、工場ごとに、詳細スケジュールを作成する、詳細スケジュール作成ステップと、
前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した、購買オーダ及び/または需要予測、及び製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を、詳細スケジュール結果として、前記記憶装置に格納する、詳細スケジュール格納ステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項6】
前記購買オーダにしたがった実際の配送開始日時及び配送終了日時の情報を、購買オーダごとに、配送実績として入力するステップと、
前記配送実績入力ステップにより入力された複数の配送実績の情報から、配送の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する購買BOMの設定情報を変更することの示唆を出力するステップと、
前記購買BOM変更示唆ステップにより示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、前記対応する購買BOMを変更するステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項7】
前記詳細スケジュール作成に用いられる前記製造BOMの情報のうち、工場内の各工程に使用する資源の使用を指す情報を取り去る処理により、修正された製造BOMの情報を、工場ごとに生成するステップ
をさらに含み、
前記製造オーダ割付ステップ、または前記第1の製造オーダ割付ステップ及び第2の製造オーダ割付ステップにおいて、前記各工場の修正された製造BOMの設定情報を参照し、各工場の生産資源に製造オーダを割付けること
を特徴とする、請求項5に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項8】
前記製造オーダにしたがった実際の作業の実績開始日時及び実績終了日時の情報を、製造オーダごとに、作業実績として入力するステップと、
前記作業実績入力ステップにより入力された複数の作業実績の情報から、作業の所要時間を解析し、解析結果に応じて対応する製造BOMの設定情報を変更することの示唆を出力するステップと、
前記製造BOM変更示唆ステップにより示唆された変更を承認する信号の入力に応じて、前記対応する製造BOMを変更するステップと
をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項9】
前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した詳細スケジュール結果のうち、各工場の工程の作業情報をもとに、オーダ同士の関係付けを表す情報を生成するステップと、
前記関係付け情報生成ステップにより生成した、オーダ同士の関係付けを表す情報を、前記記憶装置に格納する、格納ステップと、
をさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。
【請求項10】
前記詳細スケジュール格納ステップは、少なくとも、前記詳細スケジュール作成ステップにより作成した、各工場における複数の工程の開始日時及び終了日時のうち、最先の開始日時及び最後の終了日時の情報を取得して、前記製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時に設定する処理を含み、
前記詳細スケジュール格納ステップにより前記記憶装置に格納した、購買オーダ及び/または需要予測、または製造オーダの詳細開始日時及び詳細終了日時を取得し、前記詳細スケジュール作成ステップより前に作成されたサプライチェーンのスケジュール結果を、前記取得した詳細開始日時及び詳細終了日時をもとに修正するステップをさらに含むこと
を特徴とする、請求項5に記載の複数工場の生産スケジュール作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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