説明

複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法

【課題】均質な固化処理杭を施工時間を短縮して施工することができる複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法を提供すること。
【解決手段】回転軸の貫入工程は、吐出ノズルの固化材の吐出を停止し、回転軸の先端から水噴射を行いつつ貫入し、回転軸を回転させながら引き上げる際、回転軸から延出する水平翼の先端に付設された2以上の固化材吐出ノズルから固化材を、複流数ジェットを形成しながら吐出させ、原位置土と攪拌混合して固化処理杭を造成する方法であって、該固化材吐出ノズルで形成される軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定して行うことを特徴とする複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工速度を高めた複流線ジェットによる、特に固化処理杭を既設構造物に密着させて造成する密着施工に好適な固化処理杭の造成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤の改良工法のひとつに固化処理杭造成工法がある。この固化処理杭造成工法は、例えば、図7に示すように、機械式攪拌装置10の先端を、施工する柱体の芯に合わせて回転軸16を回転させ、回転軸16の下部に放射状に設けた1以上の攪拌翼12a、12bの回転域及びその周辺の地盤中に、回転軸16の所定の位置に付設された固化材吐出ノズル131又は141から固化材を吐出させ、原位置土と攪拌混合しながら貫入を行い、設計深度に達したところで吐出を停止し、回転軸16をそのまま回転又は逆転して、更に攪拌混合しながら地盤中に引き上げて柱状体を造成する工法である。図7中、符号121は掘削用ビットである。
【0003】
通常、固化材は貫入工程において吐出される場合、固化材吐出ノズル131から吐出され、引き上げ工程において吐出される場合、固化材吐出ノズル141から吐出される。また、地盤の土質によっては貫入工程においては翼又はプレジェットにより地盤を予め緩めておき、引き上げ工程において、固化材吐出ノズルから固化材をスパイラルジェット流を形成しつつ原位置土と攪拌混合しながら均質な固化杭を造成していた。
【特許文献1】特開平9−41357号(請求項1、図1)
【特許文献2】特開平6−49834号(請求項1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、引き上げ工程において、1つの固化材吐出ノズルから固化材をスパイラルジェット流を形成しつつ原位置土と攪拌混合しながら固化杭を造成する方法(1線流ジェット工法)においては、施工速度を高めるため、引き上げ速度を高めると固化材吐出ノズルのスパイラルの軌跡のピッチが粗くなり、均質な固化処理杭を造成することができなかった。また、回転数を高めるとジェットの到達距離が低下するため固化処理杭径が小さくなるという問題があった。また、反対方向に向けた2個の固化材吐出ノズルから固化材を複線流ジェットを形成しつつ原位置土と攪拌混合しながら固化杭を造成する方法も提案されてはいるものの、回転軸の回転数や引き上げ速度は固化材吐出ノズルのスパイラル軌跡との関係で厳密に決定されていたものではなかった。このため、施工速度が遅くなったり、無駄な施工を行ったりするという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、均質な固化処理杭を施工時間を短縮して施工することができる複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、過去の膨大なデータから、固化材吐出ノズルのスパイラルの軌跡のピッチは2.0〜5.0cmが好適であるという知見を得たこと、1線流ジェット工法を2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値のピッチで行う場合、施工速度を上げるには限界があること、先行ジェットの隙間を、後行ジェットで埋めていけば、施工速度を上げることができること、従って、2以上の固化材吐出ノズルから固化材を吐出する複流数ジェットを形成し、且つ固化材吐出ノズルの軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定して行えば、均質な固化処理杭を施工時間を短縮して施工することができ、特に固化処理杭を既設構造物に密着して造成する密着施工に好適な工法であること等を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、回転軸の貫入工程は、吐出ノズルの固化材の吐出を停止し、回転軸の先端から水噴射を行いつつ貫入し、回転軸を回転させながら引き上げる際、回転軸から延出する水平翼の先端に付設された2以上の固化材吐出ノズルから固化材を、複流数ジェットを形成しながら吐出させ、原位置土と攪拌混合して固化処理杭を造成する方法であって、該固化材吐出ノズルで形成される軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定して行うことを特徴とする複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法を提供するものである。
【0008】
また、本発明は、前記固化材吐出ノズルが、同一水平面内にある2個であり、回転方向において180度離間しているものであることを特徴とする前記複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、前記固化材吐出ノズルが、垂直方向に2P離間して設置される2個であり、回転方向において180度離間しているものであることを特徴とする前記複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記固化処理杭を既設構造物に密着させて造成する密着施工である固化処理杭の造成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法によれば、均質な固化処理杭を施工時間を短縮して施工することができる。また、回転軸の回転数と引き上げ速度は、固化材吐出ノズルの軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなる範囲で適宜決定できるため、既設構造物間に固化処理杭を密着して造成する密着施工など造成杭径に制限がある場合に柔軟に対応できる。また、複数の固化材吐出ノズルの設置位置は幾通りにも選べるため、施工機械の設計の自由度を高めることができる。また、回転方向において180度離間する2個の固化材吐出ノズルにより、既設構造物間に固化処理杭を密着して造成する際、軸振れの無い寸法安定性の高い固化処理杭を造成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法(以下、複流数ジェット工法とも言う)は、回転軸を回転させながら、引き上げる際、回転軸の所定の位置に付設された2以上の固化材吐出ノズル(以下、単に吐出ノズルとも言う)から固化材を、複流数ジェットを形成しながら吐出させ、原位置土と攪拌混合して固化処理杭を造成する方法であって、該吐出ノズルの軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定して行うものである。吐出ノズルの軌跡のピッチが2.0cm未満であると、固化材の供給が過剰となると共に、施工速度が遅くなり施工コストを上昇させてしまい、また、軌跡のピッチが5.0cmを超えると、均質な固化処理杭を造成できない。なお、固化材吐出ノズルの軌跡のピッチPの好ましい範囲は、2.0〜4.0cm、更に好ましくは2.5cmである。
【0013】
本発明の複流線ジェット工法で使用する施工装置としては、回転軸の所定の位置に2以上の吐出ノズルを備えるものであれば、特に制限されない。該吐出ノズルは、通常水平翼にジェット流が径方向の外側に吐出するように付設される。吐出ノズルの好ましい設置数は2〜4、特に好ましくは2〜3、更に好ましくは2である。吐出ノズルの鉛直方向の設置位置としては、全てが同一水平面内であってもよく、また異なった位置であってもよいが、後述するように回転方向における設置位置が特定される。
【0014】
本発明において、2個の吐出ノズルの形態としては、特に制限されないが、例えば固化材吐出ノズル及び圧縮空気包囲固化材吐出ノズルが挙げられる。このうち、圧縮空気包囲固化材吐出ノズルを用いれば、飛躍的に切削距離(造成径)を向上させることができる。圧縮空気包囲固化材吐出ノズルは、中心の固化材吐出ノズルの回りに環状の圧縮空気噴射部が形成された2重吐出ノズルである。また、固化材吐出ノズルは、供給源の切替により水吐出ノズルとしてもよい。2重吐出ノズルの施工方法の一例としては、例えば、貫入時に2個の吐出ノズルから水と圧縮空気を吐出しつつ地盤を切削し、引き抜き時に同じ2個の吐出ノズルから固化材を吐出すれば、効率的に固化処理杭を造成することができる。
【0015】
本発明において、2個の吐出ノズルを垂直方向に離間して設置される、いわゆる上下ノズルの場合、例えば上ノズルからは40MPaのような超高圧、小流量の固化材スラリーを吐出し、下ノズルからは4MPaのような低圧、大流量の固化材スラリーを吐出すれば、上ノズルで主に地盤を切削し、下ノズルで固化材を補い間詰めすることができ、施工速度を高めて高品質の固化処理杭を造成することができる。
【0016】
また、複数の吐出ノズルの場合、各吐出ノズルから吐出される流体の種類を変えることもできる。例えば3個の吐出ノズルを垂直方向に離間して設置される、いわゆる上中下ノズルを用いた場合、例えば、引き抜き時、上ノズルからは高圧の水と圧縮空気を吐出し、中ノズル及び下ノズルからは低圧の固化材スラリーを吐出すれば、効率的に固化処理杭を造成することができる。この場合、中ノズル及び下ノズルが本発明の2個の吐出ノズルに相当する。
【0017】
また、上下ノズルの場合、例えば、上ノズルから水ガラスを吐出し、下ノズルからセメントミルクを吐出すれば、施工速度を高めて高品質の固化処理杭を造成することができると共に、セメントと水ガラスの混合によりゲル化して、セメントが排出泥水に混入し難くなるため、排出泥水にセメントが混入して生じるフィルタプレスの目詰まりの問題を解決することができる。
【0018】
また、上下ノズルの場合、貫入時と引き抜き時で、吐出流体の種類を変えることもできる。例えば貫入時、上ノズル及び下ノズルからは、共に高圧の水と圧縮空気を吐出し、引き抜き時、上ノズル及び下ノズルからは、共に固化材スラリーを吐出すれば、硬質粘性土地盤などにおいても、施工速度を高めて高品質の固化処理杭を造成することができる。
【0019】
固化材としては、特に制限されず、セメントスラリー、水ガラス、シリカゾル及びこれらの混合物が挙げられる。これら液状固化材の供給手段は公知のものが使用できる。また、固化材として粉体を使用することもできる。この場合、粉体は圧縮空気と共に吐出される。
【0020】
本発明の複流線ジェット工法としては、回転軸の引き上げと共に、複流数ジェットを形成しながら吐出させ、原位置土と攪拌混合するものであれば特に制限されない。回転軸の貫入工程は、吐出ノズルの固化材の吐出を停止し、回転軸の先端から水噴射を行いつつ貫入させることが、固化杭の造成時に、水平翼周りに排泥が集まり易くなり、良質な固化杭が造成できる点で好ましい。
【0021】
本発明の複流線ジェット工法において、該吐出ノズルの軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値となるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定する。この回転軸の回転数と引き上げ速度の決定方法及び吐出ノズルの設置位置の一例を図1〜図5を参照して説明する。図1(A)は回転軸に付設された2個の吐出ノズルを備える水平翼を上から見た簡略図、図1(B)は回転軸の引き上げに伴う吐出ノズルから固化材が吐出する状況を説明する図、図2(B)は同一水平面内に2個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の概略平面図であり、図2(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図、図3(A)は回転軸に付設された3個の吐出ノズルを備える水平翼を上から見た簡略図、図3(B)は回転軸の引き上げに伴う吐出ノズルから固化材が吐出する状況を説明する図、図4(B)は同一水平面内に3個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の簡略図であり、図4(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図、図5(B)は同一水平面内に4個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の簡略平面図であり、図5(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図である。なお、回転角度は図中、右端aを起点とし左回り方向に対する角度である。また、図2(A)、図4(A)及び図5(A)は前面側180〜360度までを実線で示し、背面側0〜180度までを破線で示す。
【0022】
図1は回転軸3を中心に両側に延出する水平翼11、12の先端に吐出ノズル4a、4bを付設したもので、2個の吐出ノズル4a、4bは同一水平面内にあり、回転方向において180度離間している。図1(B)中、細い矢印2は水平翼12の先端4bから固化材が吐出し、太い矢印1は水平翼11の先端4aから固化材が吐出している。図1において、吐出ノズル4a、4bの軌跡のピッチ2.5cmは、引き抜き速度(X)÷回転数(Y)÷吐出ノズルの設置数で表されるから、回転軸の回転数を引き上げる速度は、例えば引き抜き速度0.5m/分、回転数10回/分(条件1)、引き抜き速度0.4m/分、回転数8回/分(条件2)又は引き抜き速度0.8m/分、回転数16回/分(条件3)と決定される。なお、吐出流量80リットル/分、吐出圧力20MPaの条件下、条件1、条件2、条件3下での良質な固化杭を造成できる径はそれぞれ1.50m、1.58m、1.38mである。従って、両側が既設構造物であり、この既設構造物の隙間1.55mに間詰め工事を行う場合、上記条件2が選択される。また、隙間が1.30mの間詰め工事を行う場合、上記条件3が選択される。条件1及び条件2では固化材が無駄となる点で好ましくない。なお、必要造成杭径と強度を共に満足させるためには、固化材の吐出流量と吐出圧力を予め適宜決定しておくことになる。
【0023】
上記条件1と対比するため、従来の1線流ジェット工法を図6を参照して説明する。図6(A)は回転軸に付設された1個の吐出ノズル4aを備える水平翼11を上から見た簡略図、(B)は回転軸3の引き上げに伴う吐出ノズル4aから固化材が吐出する状況を説明する図である。図6は回転軸3を中心に両側に延出する水平翼11、12中、水平翼11の先端に吐出ノズル4aを付設したものである。図6において、吐出ノズル4aの軌跡のピッチ(2.5cm)は引き抜き速度(X)÷回転数(Y)÷吐出ノズルの設置数で表されるから、例えば引き抜き速度0.25m/分、回転数10回/分(条件4)となる。本発明の条件1の場合、この条件4と対比すると、同じ品質の固化処理杭径のものを約2倍の速度で造成することができる。
【0024】
なお、図1の形態において、吐出ノズルは必ずしも、同一水平面内に設置する必要はなく、鉛直方向の特定位置に設置することができる。図2において、同一水平面内にある2個の吐出ノズル4a及び4bの中、吐出ノズル4aは回転軸の1回転毎にa、a及びaと引き上げられる。この場合、吐出ノズルの軌跡のピッチaからa、aからa及びaからaは5cmである。同様に、吐出ノズル4bは回転軸の1回転毎にb、b及びbと引き上げられる。吐出ノズル4bは軌跡のピッチがbからb、bからb及びbからbの5cmとなると共に、先行する吐出ノズル4aの軌跡の中間に位置することになる。2個の吐出ノズル4a及び吐出ノズル4bで形成される軌跡のピッチ、すなわち噴射密度が2.5cmとなるようにするには、2個の吐出ノズルがそれぞれa→a12→a→a23→a→a34→a・・・、及びb→b12→b→b23→b→b34→b・・・をトレースする位置に付設されればよい。従って、例えば吐出ノズル4bは図2中、三角マークで示すように、吐出ノズル4aの位置aより鉛直方向に5cm、10cm、15cm・・・上方に取り付ければよいこととなる。
【0025】
また、図2(B)では一文字の水平翼で示したが、吐出ノズル4bの翼を中心から90度折り曲げた平面視L字の水平翼とし、この先端に吐出ノズルを付設してもよい。この場合、屈曲された水平翼に付設された吐出ノズル(不図示)は、図2中、四角マークの符号cからb→b23→b→b34→b・・・と移動することになる。
【0026】
図3は回転軸3を中心に両側に延出する水平翼11、12、13の先端に吐出ノズル4a、4b、4cを付設したもので、3個の吐出ノズル4a、4b、4cは同一水平面内にあり、回転方向においてそれぞれ120度離間している。図3(B)中、細い矢印1は水平翼11の先端4aから固化材が吐出する状況を示し、太い矢印2は水平翼12の先端4bから固化材が吐出する状況を示し、破線矢印2aは水平翼13の先端4cから固化材が吐出する状況を示す。図3において、吐出ノズル4a、4b、4cの軌跡のピッチ(2.5cm)は引き抜き速度(X)÷回転数(Y)÷吐出ノズルの設置数で表されるから、回転軸の回転数と引き上げ速度は、例えば引き抜き速度0.75m/分、回転数10回/分(条件5)となる。この条件5によれば、従来の1流線工法の条件4と対比すると、同じ品質の固化処理杭径のものを約3倍の速度で造成することができる。
【0027】
なお、図3の形態において、吐出ノズルは必ずしも、同一水平面内に設置する必要はなく、鉛直方向の特定位置に設置することができる。図4において、同一水平面内にある3個の吐出ノズル4a、4b及び4cの中、吐出ノズル4a(基準吐出ノズル)は回転軸の1回転毎にa及びaと引き上げられる。この場合、吐出ノズルの軌跡のピッチaからa及びaからaは7.5cmである。同様に、吐出ノズル4bは軌跡のピッチがb12からb23の7.5cmとなると共に、先行する吐出ノズル4aの軌跡に対して、ピッチ2.5cm遅れた位置にあり、吐出ノズル4cは軌跡のピッチがc12からc23の7.5cmとなると共に、先行する吐出ノズル4bの軌跡に対して、ピッチ2.5cm遅れた位置にくる。3個の吐出ノズル4a、4b及び4cで形成される軌跡のピッチ、すなわち噴射密度が2.5cmとなるようにするには、3個の吐出ノズルはそれぞれa→a12→a→a23→a・・・、b→b12→b→b23→b・・・及びc→c12→c→c23→c・・・をトレースする位置に付設される。
【0028】
図5は回転軸を中心に四方に延出する水平翼11、12、13、14の先端に吐出ノズル4a、4b、4c、4dを付設したもので、4個の吐出ノズル4a、4b、4c、4dは同一水平面内にあり、回転方向においてそれぞれ90度離間している。この場合、吐出ノズルの軌跡のピッチaからaは10cmである。図5において、吐出ノズル4a、4b、4c、4dの軌跡のピッチ(2.5cm)は引き抜き速度(X)÷回転数(Y)÷吐出ノズルの設置数で表されるから、回転軸の回転数と引き上げ速度は、例えば引き抜き速度1.00m/分、回転数10回/分(条件6)となる。この条件6によれば、従来の1流線工法の条件4と対比すると、同じ品質の固化処理杭径のものを約4倍の速度で造成することができる。
【0029】
図5の形態において、吐出ノズルは必ずしも、同一水平面内に設置する必要はなく、鉛直方向の特定位置に設置することができる。図5において、同一水平面内にある4個の吐出ノズル4a、4b、4c及び4dの中、吐出ノズル4a(基準吐出ノズル)は回転軸の1回転毎にa、aと引き上げられる。この場合、吐出ノズルの軌跡のピッチaからaは10cmである。同様に、吐出ノズル4bは軌跡のピッチがb12からb23の10cmとなると共に、先行する吐出ノズル4aの軌跡に対して、ピッチ2.5cm遅れた位置にあり、吐出ノズル4cは軌跡のピッチがc12からc23の10cmとなると共に、先行する吐出ノズル4bの軌跡に対して、ピッチ2.5cm遅れた位置にあり、吐出ノズル4dは軌跡のピッチがd12からd23の10cmとなると共に、先行する吐出ノズル4cの軌跡に対して、ピッチ2.5cm遅れた位置にくる。3個の吐出ノズル4a、4b、4c及び4dで形成される軌跡のピッチ、すなわち噴射密度が2.5cmとなるようにするには、4個の吐出ノズルはそれぞれa→a12→a・・・、b→b12→b→b23・・・及びc→c12→c→c23・・・をトレースする位置に付設され
ればよい。
【0030】
本発明において、吐出ノズルの設置位置は上記に例示したとおりであるが、下記(1)
式からも求めることができる。すなわち、2以上の固化材吐出ノズルの垂直方向における設置位置が、基準固化材吐出ノズルから、次式(1);
P×A+(θ×n×P)/360±n×P×m (1)
(式中、Pは固化材吐出ノズルの軌跡のピッチを示し、Aはケース(設置形態)番号で1〜n−1までの数で各吐出口毎に重複しない任意の数をとり、θは基準固化材吐出ノズルからの回転方向における角度であって、該吐出ノズルの取り付け位置を示し、nは吐出ノズルの数を示し、mは吐出ノズルの軌跡のピッチ数で0又は任意の整数を示す。)で計算される値分(cm)、離間したものである。
【0031】
例えば、回転方向において180度離間する2個の吐出ノズルの場合、5.0±5.0cmであり、m=0、1とすれば、0、5.0又は10.0cmとなり、基準吐出ノズルに対してこの寸法分、鉛直方向に離れて設置すればよい。また、回転方向において120度離間する3個の吐出ノズルの場合、例えばA=1、θ=120度で5.0±7.5cmであり、A=2、θ=240度で10±7.5cmである。この場合、θ=0の吐出ノズルに対して、θ=120度の位置の吐出ノズルが、m=0、1とすれば、−2.5、5.0、12.5cmであり、θ=240度の位置の吐出ノズルが2.5、10.0、17.5cmである。従って、θ=0の吐出ノズルに対してこの寸法分、鉛直方向に離れて設置すればよい。また、A=2、θ=120度で7.5+7.5cmであり、A=1、θ=240度で7.5+7.5cmである。この場合、m=0、1とすれば、θ=0の吐出ノズルに対して、θ=120度の位置の吐出ノズルが、0、7.5、15.0cm鉛直方向に離して設置し、θ=240度の位置の吐出ノズルが同様に鉛直方向に対して0、7.5、15.0cm離して設置すればよい。
【0032】
本発明の固化処理杭の造成方法は、固化処理杭を既設構造物に密着させて造成する密着施工に適用することができる。当該密着施工の場合、固化処理杭を既設構造物に必ず密着させる必要があるため、例えば間詰め寸法より大きめの設計処理杭径を選定する必要があるが、本発明の造成方法の場合、適切な吐出流量、圧力を設定し、設計固化処理杭径と固化材配合比率とを満足させるような回転軸の回転数と引き上げ速度を適宜に選定することになる。また、間詰めの場合、従来の一流線工法では片方の既存壁が反力となり、軸が反対方向に傾くことがあり、最悪の場合、噴射方向と逆側の既存壁に接触し、既存壁を損傷させることがあったが、本発明の複流線、特に2流線工法の場合、対向噴射があるため、軸振れが少ない。また各水平翼から固化材を吐出しているため、吐出ノズルと既存壁とが近づくと、反力が大きくなり、離れるため、水平翼と既存壁が接触することはない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(A)は回転軸に付設された2個の吐出ノズルを備える水平翼を上から見た簡略図、(B)は回転軸の引き上げに伴う吐出ノズルから固化材が吐出する状況を説明する図である。
【図2】(B)は同一水平面内に2個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の概略平面図であり、(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図である。
【図3】(A)は回転軸に付設された3個の吐出ノズルを備える水平翼を上から見た簡略図、(B)は回転軸の引き上げに伴う吐出ノズルから固化材が吐出する状況を説明する図である。
【図4】(B)は同一水平面内に3個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の簡略図であり、(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図である。
【図5】(B)は同一水平面内に4個の吐出ノズルを有し、左回りに回転する水平翼の簡略平面図であり、(A)は水平翼の先端に付設された吐出ノズルの軌跡を正面から見た模式図である。
【図6】従来工法において、(A)は回転軸に付設された1個の吐出ノズルを備える水平翼を上から見た簡略図、(B)は回転軸の引き上げに伴う吐出ノズルからの固化材の吐出状況を説明する図である。
【図7】従来の水平翼に吐出ノズルを有する回転軸構造を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1、2、2a 吐出ジェット
3、16 回転軸
4a〜4d、131、141 吐出ノズル
11〜14、12a、12b 水平翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の貫入工程は、吐出ノズルの固化材の吐出を停止し、回転軸の先端から水噴射を行いつつ貫入し、回転軸を回転させながら引き上げる際、回転軸から延出する水平翼の先端に付設された2以上の固化材吐出ノズルから固化材を、複流数ジェットを形成しながら吐出させ、原位置土と攪拌混合して固化処理杭を造成する方法であって、該固化材吐出ノズルで形成される軌跡のピッチが2.0〜5.0cmの範囲から選ばれる一定値Pとなるよう回転軸の回転数と引き上げ速度を決定して行うことを特徴とする複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法。
【請求項2】
前記固化材吐出ノズルが、同一水平面内にある2個であり、回転方向において180度離間しているものであることを特徴とする請求項1記載の複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法。
【請求項3】
前記固化材吐出ノズルが、垂直方向に2P離間して設置される2個であり、回転方向において180度離間しているものであることを特徴とする前記複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法。
【請求項4】
前記固化処理杭を既設構造物に密着させて造成する密着施工であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複流線ジェットによる固化処理杭の造成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−90704(P2010−90704A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18013(P2010−18013)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【分割の表示】特願2004−310319(P2004−310319)の分割
【原出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【Fターム(参考)】