説明

複素インピーダンスの4点測定による生きている指の検出

構造の状態を決定するための、特に、該構造の表面に近接した特性を測定することにより、測定された指紋が生きた指の上のものであるか否かを確認するためのセンサ・アセンブリにおいて、該センサは、電流源に結合され、皮膚に電流を提供する第1の対の電流供給電極と、該電流供給電極とは異なった選択された位置にある少なくとも2つのピックアップ電極と、を備え、前記ピックアップ電極の少なくとも第1のものが、該第1のピックアップ電極と、ピックアップまたは電流供給電極のすくなくとも1つとの間の電圧を測定するための機器に結合されており、センサ・アセンブリは、構造の表面の或る状態を特性付ける値の所定の組のための記憶手段と、構造の表面の状態を決定するために、各ピックアップ電極からの特性を、他のピックアップ電極の測定値と、並びに特性の所定の組と、比較するための手段と、を備えたセンサ・アセンブリ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造の状態を決定するための、特に、構造の表面に近い特徴を測定することにより、測定された指紋が生きている指上にあるものか否かを確認するための、センサ・アセンブリ及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導入部
容量またはインピーダンスをベースにした指紋センサは、生体計測による識別のための低価格で小型化された装置を提供する最も有望な方法の幾つかである。従って、このようなセンサは、移動電話等に一体化するための可能な候補である。
【0003】
指紋センサの信頼性を高めるために、偽造の指を用いることによりシステムをだますための幾つかの試みが検出されかつ排斥され得ることが非常に重要である。偽造の指は、代表的には指のものと類似した電気特性を有し、かつその表面に刻まれたまたはモールドされた指紋を有する厚板材料から成る。一層極端な場合においては、死んでいる切断された指を使用し得るということも想像され得る。
【0004】
生きている指の検出システムにとっては、偽りの指を受け入れる確率(偽造受入れ比−FAR)及び本当の指を排斥する確率(偽り排斥比−FRR)の双方が極端に低いことが重要である。このことは、生きている指の非常に特徴的かつ独特の特性、すなわち、合成材料または生きている組織以外の生物学的物質のいずれによっても容易に複製されることができない特性、及び集団における大多数の指の典型である特性、を識別するための方法を開発することを重要にする。
【0005】
低価格の容量性をベースにした指紋センサにとって、指の特性のインピーダンス測定の幾つかの種類が理想的である。その理由は、それが、最もしばしば、現存の測定構造を用いることにより、または幾つかの余分の電極を加えることにより、装置上に直接一体化され得るからである。
【0006】
従来技術
US5,953,441に記載されているような二次元マトリクス・センサから、US6,289,114における半重複部分画像の列から指紋画像を再構成するセンサ・アレイを経て、EP0988614に記載されているような、指の表面を走査して指画像を再構成するよう測定された指速度を用いる線形センサまでの、幾つかの異なった種類の指紋センサが最近開発されてきている。
【0007】
生きている指を検出する試みは、血液の酸化作用及び脈拍(血液のパルス)の双方の測定を含む。しかしながら、指内における血液の循環は、非常に冷えた指内では実質的に存在し得ないので、これらの方法は、水からの保護ができない。これらの原理は、また、低価格の装置で履行することが容易でもない。
【0008】
US特許第6,175,641号、第5,953,441号及び米国出願US2001/0005424A1はすべて、指紋センサ上におかれた物体が生きている指に対応するか否かを調査する、異なったインピーダンスをベースにした方法を示している。
【0009】
光マトリクス・センサ上のインピーダンス感知に関するUS特許第6,175,641号は、指の電気特性を測定するための2つの異なった方法を示している。第1に、センサ表面上の2つの接近して離間した電極コム(くし型)構造間にAC信号を印加することにより誘電定数が局部的に測定される。この測定方法は、商業的なプラスチック(低い誘電定数)から生きた組織(高い誘電定数)を分離し得るということが主張されている。
【0010】
第2に、該センサは、指のインピーダンスを決定するために、いわゆる二重ドット電極を有しており、それは、おそらく、偽造の指から本当の指を識別するために用いられ得る追加の情報を与えるであろう。該特許は、また、測定の安全性を増すために、幾つかの周波数を使用することをも述べている。
【0011】
しかしながら、この特許に記載された方法は、幾つかの弱点を有している。誘電測定は、おそらく、乾いた指に対しては良く働くけれども、汗または湿った指に対しては、接近して離間されたコム(くし型)構造は、塩類の汗によってほとんど恐らく短絡してしまい、有用な情報が得られないであろう。
【0012】
さらに、二重ドット・システムによって測定される生きた指のインピーダンスは、指の湿度に依存して大きさの少なくとも一次数でもって変わり得る。従って、指を識別するためにこれを規準として用いることは困難であり、双方のインイーダンスの大きさ、周波数とのその位相及びその変動は、剥かれたポテトのような毎日の生活から単に良く知られている材料によっておそらく偽造され得る。
【0013】
特許第5,953,441号は、容量性感知素子のマトリクスを含むAC容量性指紋センサのためのいんちきな検出を記載している。ここでは、生きた指の検出に対する主なアイデアは、センサ領域の縁の周りに電極を通してAC信号を送り、センサ素子上の信号の位相を検出することであり、この位相は、生きた指の特性である。
【0014】
しかしながら、この方法は、幾つかの異なった偽造の指の材料を許さないけれども、指とほぼ同じ位相を与える材料を見つけて、それによりシステムをだますことは比較的容易であろう。
【0015】
特許出願US2001/0005424A1は、6,175,641号に記載された方法と似た方法を示している。指のインイーダンス(2つの電極の間、または1つの電極と“無限遠”との間のいずれかの)は、周波数の関数として測定される。曲線を基準曲線と比較することにより、指の生きた特性が、次に、検出され得る。しかしながら、この方法は、上述した方法とほとんど何も変らない。異なった指間の、及び同じ指の異なった状態(例えば、湿度に対して)間の絶対インピーダンス及び周波数応答は、非常に異なるので、“生きている指の判定規準”は、非常に広いに違いないであろうし、それ故、その原理は、だますのが容易であろう。
【0016】
参照によりここに含まれる国際特許出願PCT/NO03/00157(WO03094724)は、複素インピーダンスの4点測定に基づくもう1つの生きている指の検出原理を示している。ここで、AC電流または電圧が2つの電極間に印加され、その間、他の2つの電極間の電圧降下が測定され、すべての電極は、指の表面と接触している。指のインピーダンス測定に与えられる4点原理は、図1に可視化されている。AC電流が外部電極を通して指に送られ、その間、差動増幅器を用いて2つの内部電極間で電圧降下が測定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、変化する角質層の厚さのような集団の中での指の特性における差を補償するために用いられ得る、生きている指の検出のための4点測定システムを確実にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的を達成するために、提案された本発明は、少なくとも4つの電極のアレイを有するインピーダンス測定システムから成る。電極は、指と直接接触していても良く、または絶縁層を介して指に容量的に結合されても良い。電極は、電流及び電圧感知電極間の異なった相対配置に対応する、少なくとも2つの異なった4点電極構成で用いられ得るように配列される。本発明の目的は、特許請求の範囲に記載されるように得られる。
【0019】
4点技術の使用は、ホーニー層もしくは角質層の直列インピーダンスを相殺し、従って、指の内部のインピーダンスを直接測定することを可能とする。角質層のインピーダンスは、皮膚の湿度に及び温度のような周囲条件に極端に依存する。このことは、偽造の指から本当の指を分離するために用いられ得る“狭い”判定規準を識別することを困難にする。対照的に、指の内部の湿度は、変化する周囲条件の下で殆ど一定のままである。従って、指の内部(生きている皮膚及び組織)のインピーダンスは、さらに一定であり、人から人に一層再現可能である。
【0020】
従って、4点原理は、指が本当の生きている指であるか否かを識別するために用いられ得る“狭い”判定規準を得ることを一層容易にするであろう。
【0021】
皮膚の層を成された構造のために、4点原理は、また、固有の“深さの選択性”をも与える。周波数を高めることにより、測定値は、生きている皮膚のさらに一層深い部分によって影響を受ける。このことは、単に周波数掃引を行なうことによって電気特性における深さ特有の変動を測定することを可能とする。
【0022】
指の内部の生きている組織は、また、高い安全性の程度を有して本当の指を識別するために用いられ得る大変な特性的分散度(周波数に対する電気特性の変化)をも有している。これらの特性は、死後または指が手から切断されたときに変化し、指が生きているか否かを決定することをも可能とする。
【0023】
PCT/NO03/00157(WO03094724)で提案された原理の1つの弱点は、4点インピーダンスが、一定の距離をすべての電極が有する場合の一組の電極だけでインピーダンスが測定されるというようなものであるということである。
【0024】
しかしながら、4点構造の電極の相対位置に依存して、インピーダンス測定は、多かれ少なかれ、角質層(角層またはホーニー層)によって影響を受けるであろう。
【0025】
電流電極間の非常に短い距離の制限において、電流は、指の内部の生きている皮膚内に入り込まず、従って、角質層だけの測定が与えられるであろう。
【0026】
他の制限において、大きい電極距離の場合、測定は、指の内部の生きている組織の特性によって大いに決定されるであろう。
【0027】
異なった人は、異なった角質層の厚さを有するので、一定の電極距離は、異なった人に対して異なった結果を与え、従って、非常に広い判定規準を用いずに、生きている指を識別することを困難にするであろう。判定規準が充分に狭くなければ、原理は、だますのが一層容易であろう。
【0028】
電極が異なった相対配置を有する異なった電極構成は、電極に隣接する対象物の異なった部分の測定に対応するということが熟練したエンジニアには知られているであろう。しかしながら、4点原理によって測定される指の部分は、2つの電流感知電極間距離及び2つの電圧感知電極間距離によって決定されるだけでなく、電極の幾何学的配列及び電流電極に対する電圧感知電極の相対的配列に基づいても決定される。
【0029】
従って、アレイ内の異なった電極を付勢することによって、または既に使用中の電極の役割(電圧感知または電流)を交換することによって、それは、異なった4点電極構成間で切換えられ得る。
【0030】
アレイ内の幾つかの異なった電極構成間で切換えることによって、例えば異なった測定深さに対応する指の部分を測定することがこのように可能となり、従って、例えば角質層の厚さにおける変化を補償することが可能となる。
【0031】
例示するために、1つの電極配列を用いて一人の人に対して観察される特性分散度(周波数に対する複素インピーダンスのシフト)が、もう1つの配列を用いてもう一人の人のために検出され得る。
【0032】
同じ分散度を示すために、例えば、非常に厚い角質層を有する人は、薄い角質層を有する人よりも、電流注入または電圧感知電極間の距離が大きいことが必要であり得る。
【0033】
対象物を生きている指として受け入れるための最小の判定規準は、電極配列の少なくとも1つに対して、少なくとも1つの特定のインピーダンス関連の現象が検出されるということであり得る。
【0034】
“角質層の厚さにおける差”への関心は、単に例示であるということを強調しておく。本原理は、電極の幾何学的配列におけるシフトが、与えられた周波数範囲内のインピーダンス関連の或る現象を示すのを助け得るすべての指の特性に適用される。
【0035】
好ましくは、相当数の大人数に渡って生きている指を検出することの保証を高めるために、可能な電極構成の数は、2よりも大きく、例えば3−5であり得る。もちろん、最小の切換えが必要とされるように別のアレイの形態で種々の構成が配置され得る。
【0036】
以下、例としてのみ本発明を示す添付図面を参照して本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
実際の履行
図1において、指の表面11は、幾つかのセンサ10上に位置付けられる。指の構造は、2つの層、すなわち、生きている指の角質層12及び生きている組織13を含む。角質層(ホーニー層もしくは角層)12は、4つの示された電極10の各々において、それぞれ、インピーダンスZ1、Z2、Z3及びZ4を構成し、生きている組織は、インピーダンスZ0を表す。
【0038】
実際の装置において、4点測定は、例えば、薄膜、厚膜または印刷回路基板技術において区画されるセンサ表面上の電極のアレイによって履行され得る。電極は、指との直流電気による接触を与え得るか、または電極から指への純粋な容量性結合を与えるように薄い誘電体で不導態化され得るかのいずれかである。
【0039】
個々の電極(電流電極及び電圧電極の双方)の代表的な寸法は、0.5−5mmであり、そして代表的な最小電極間隔は、0.3−2mmである。
【0040】
図2は、幾つかの異なった電流電極距離における測定を可能とするために8つの電極のアレイが如何に配列され得るかの例を示す。この構造において電圧測定は、常に、電極4及び5間で行われ、2つのスイッチS1及びS2は、電極1、2、3(AC源)と電極6、7及び8(ACドレインもしくは接地)との異なった組み合わせを為すように用いられ、それにより、電流電極距離を変化させる。代替的には、電流及び電圧感知電極の役割は、交換されることができ、それにより、電流は、常に最奥の電極間に送られ、電圧測定は、残りの電極の種々の組み合わせの間で切換えられる。電圧感知の対の役割が電流電極対と交換されるならば、測定されるインピーダンスは、本質的に同じままであるということが従来技術から知られている。
【0041】
集団における角質層の厚さ変化(または湿度における差のような対応の影響を与える他の変化)に対応する電極間距離の範囲を選択することによって、一層直接的に比較され得る情報、従って、本当の指に対する規準を“狭める”ように用いられ得る情報を得ることが可能である。このことは、上述した方法の幾つかよりも高い確かさの程度で生きている指識別を可能とする。
【0042】
読み出しシステムを設計する際、電圧感知分岐における入力インピーダンスを最大にすることが重要であり、その理由は、低すぎるインイーダンスは、測定原理に影響を与える寄生入力電流を生じるからである。入力インピーダンスの影響を最小にするために、US4,956,729に記載されたような増幅結合が用いられ得る。電圧パッドに対する入力電流も、入力パッドそれ自体(“能動遮蔽もしくはシールド”)と同じ電圧を有する電極により入力パッド(及びそれを増幅器に接続するトラック)を遮蔽することにより最小にされ得る。このような電圧は、入力電圧が遮蔽電極にフィードバックされる単純な電圧フォロア段によって得られる。
【0043】
増幅器の入力インピーダンスが充分に高いならば(もしくは等価的に、入力電流が充分に低いならば)、検出された電圧は、ホニー層もしくは角質層を通るインイーダンスZ2、Z3、Z1及びZ4によって影響されないが、指の内部の特性であるZ0によってのみ影響される。
【0044】
指における開示されたシステムは、電極が配列され得るただ1つの可能な方法であるということが強調されるべきである。原理的には、2つまたは3つ以上の異なった電極構成をもたらすすべての電極配列が用いられ得る。電圧またはインピーダンス感知に対して、指紋センサ素子それ自体が用いられ得る。
【0045】
生きている指の検出時に、4点複素インピーダンス測定が、単一周波数に対して、もしくは周波数の範囲を横切って電極配列の各々ごとに得られる。例えば、特性は、周波数で連続的に、もしくは幾つかの異なった離散的な周波数において測定されることができる。周波数スパンは、好ましくは、1−3程度の大きさである。
【0046】
単一のサイクル中の少なくとも2つの異なった時間的瞬間における差電圧及び指を通る電流の振幅を測定することにより、複素インピーダンスZ0=R0+jX0のリアクタンスX0及び抵抗R0が、各周波数ごとに決定され得る。複素インピーダンスの成分を検出するための他の技術も用いられ得る。
【0047】
生きている指のデータは、指紋画像の取得のすぐ前に、またはすぐ後に、もしくは取得している間に記録されるのが好ましい。このことは、最初に本当の指を適用し、次に、正しい指紋パターンを有する偽造の指を適用することにより、システムをだますのを困難にする。幾つかのシステムにおいては、生きている指の検出及び指紋画像化は、競合する信号に起因して同時には行われないかもしれない。この場合においては、短時間間隔の間、指紋の画像化を中断して、この時間フレーム内で、生きている指の検出を行うことが可能である。次に、生きている指の検出のための時間は、画像品質に相当の影響を与えるのを回避するために充分に短いということが重要である。
【0048】
EP0988614に記載された型の掃引センサに対しては、これは、例えば、画像データの1または2ラインをスキップすることにより達成されることができ、そしてこの時間中に生きている指の検出を行う。上述したように、この解決法は、模擬電極とセンサ素子との間のインピーダンスを測定するための幾つかのセンサ素子を含む。本発明によれば、センサ素子の役割は、指の状態を測定するための1つまたは2、3の測定周期の間変更され得る。上述の出願に記載された解決法は、不必要なデータの過剰サンプリング及び排斥を許容するので、生きている指の検出モードは、結果の指紋画像において注目すべきものではない。
【0049】
この場合において、生きている指の検出のために用いられる幾何学的領域が、指紋画像化のために用いられる領域と重複するということも重要であり、それにより、検出された生きている指と画像化された物体とが実際同じであるということを確かめることができる。
【0050】
前述したように、物体を生きている指として受け入れるための判定規準は、電極構成の少なくとも1つからの少なくとも1つのインピーダンス関連パラメータの測定に基づかれ得る。
【0051】
このパラメータは、例えば、位相、大きさ、抵抗またはリアクタンスのような測定されたインピーダンスに関連する値またはそれらの値の組み合わせであって良く、もしくは周波数に関する幾つかの値の変化であっても良い。パラメータは、また、幾つかの導出された値であっても良く、例えば、幾つかのパラメータが或る値に達する周波数であって良い。
【0052】
好適な実施形態において、これらのパラメータの少なくとも1つは、約10kHz及び1MHz間の周波数範囲内で生じる測定された4点指インピーダンスの観察された位相変化に関係している。この周波数範囲において、指インピーダンスの位相は、インピーダンスの支配部分が容量性から抵抗性に変化するよう、50−90度のシフトを受けることが分かってきた。
【0053】
支配的な容量性から抵抗性インピーダンスへの変化は、また、周波数が典型的な周波数を通過するときに負からゼロ近辺に変化する、インピーダンスの大きさの周波数微分における変化としても見られる。
【0054】
図4−7は、2つの異なった電極構成に対し、異なった人からの幾つかの生きている指のためのインピーダンスの測定された位相及び大きさを示す。図4及び5は、一方の電極構成に言及しており、図6及び7は、もう一方の電極構成に言及している。
【0055】
位相における強い正のシフトは、双方の構成に対して観察される。インピーダンス曲線は、位相遷移の周波数より上で実質的に平らであるということも観察される。
【0056】
同様の現象は、我々が検査した任意の他の物質に対しては観察されない。そのように強い位相シフトは、指が単に2点インピーダンス測定を用いて測定される場合には、観察されない。従って、これは、指の正当性を決定するための可能な判定規準である。
【0057】
その大きさ及びその遷移周波数のようなこの周波数シフトの特性は、幾つかの異なった方法で特徴付けることができる。例えば、測定された複素インピーダンスは、周波数に対して位相及び大きさをプロットすることにより、または図8に示すようにパラメータとしての周波数で実数部に対して虚数部をプロットすることにより、周波数の関数としてプロットされることができる。この図において、測定されたインピーダンスZ及びZの虚数部及び実数部を示して、生きている指を識別するための可能な分析が示されている。勾配の上に述べられているように、これらの曲線の長さまたは重心は、生きている指を識別するための幾つかの可能なパラメータである。好適な実施形態においては、勾配は、生きている指の確認のためのベースとして用いられる。
【0058】
後者の方法の利点は、たとえ遷移点が全く異なった周波数に対して生じる場合でさえ、異なった指に対して曲線が同様に見えるということである。
【0059】
曲線の微分、長さ、“質量の中心”、特定の遷移周波数、もしくは曲線が或る値に接近するときの周波数のようなこれらの曲線の或る特性は、次に、自動計算ユニットによって導出され得、そして生きている指の識別パラメータとして用いられ得る。熟練したエンジニアは、その多くが数学的に等価である幾つかの異なった方法で同じ測定された特性が提起され得ることに精通しているであろう。
【0060】
電極間の距離が増加するときに、代表的なシフト周波数が変化するということも観察されてきた。これは、概して大きい距離が指における一層高い測定深さを与えるからであり、そして指の電気的特性が深さと共に変るということである。これは、短い電極距離に対応する図4及び5における曲線を、図6及び7(より長い電極距離)の曲線と比較することによって視覚化される。図4及び5において、代表的な遷移周波数は、図6及び7におけるよりも大いに低い。
【0061】
生きている指に対して重要な特性である、電極距離に対する遷移周波数における測定されたシフトは、パラメータ的に表されることができ、そして、これまたはこれらのパラメータは、生きている指の識別モデルを改善するために用いられ得る。
【0062】
実際の遷移周波数は、人によって変るということが図4−7から分かる。これは、湿度レベルまたは角質層の厚さにおける変動に起因し得、そして周波数の一層大きい間隔を横切って測定することにより、または幾つかの異なった電極距離において測定することにより、修正され得る。曲線によって見られるように、周波数を増加することは、電極距離を増加することとほぼ同じ位相への影響を有する。遷移周波数の回りでは、周波数または電極距離における増加は、概して、生きている指に対する位相を増加する。電極距離と位相との間のこの非常に特定的な関係は、数学的にモデル化されることができ、そして、生きている指を識別するためのさらにもう1つの判定規準として用いられることができる。
【0063】
好ましくは、生きている指を受け入れるための判定規準は、1つより多いパラメータの測定に基づいている。関連のパラメータまたは変数の組は、例えば、得られたインピーダンス・データを、図3に示されるように、多変数モデルに供給することによって発見され得る。好適な実施形態によるパラメータの組は、図8に示されたインピーダンス・データである。
【0064】
生きている指及び偽造の指からの測定されたデータの統計的分析を通して、かかるモデルは、偽造の指から本当の指を識別するために最適化される重み付けされ結合された変数(代表的には2または3)の組を出力する。選択された偏差限界をデータ・セット内にこのように含む該モデルは、本当の、死人の及び偽造の指を区別するために充分である。
【0065】
好ましくは、変数は、変化するセンサ特性等からの影響を回避するように任意の利用可能な方法を用いて正規化されるべきであり、かつ統計的に独立しているべきである。
【0066】
所望の変数を得るために用いられるべき電極構成は、該電極構成の幾つか上での測定に基づいて信号処理システムによって決定されるのが好ましい。これは、例えば、指紋スキャナで上述したような幾つかの異なった電極を用いて得ることが可能であり得るが、また、皮膚上の測定を行うための幾つかの電極を備えた関連の他のシステムを用いても得ることが可能であり得る。
【0067】
上述したセンサの組み合わせの変形に対する代替的に可能な解決法は、与えられた判定規準に測定が整合するまで、及びこれが終了したまたは第2の構成に切換わった後に、1つの構成が一度に測定されるということである。異なった電極構成から得られた測定は、組み合わせられても良い。
【0068】
指上の2点インピーダンス・データまたは他の測定(例えば温度)が、偽造のまたは死んだ指に対する選択性を高めるために4点データとの組み合わせて用いられても良い。特定化された変数のすべてが或る限界内にある場合の対象物だけが、生きている指と見なされるであろう。他の対象物は排斥される。
【0069】
このことは、2つの変数を有するモデルに対して図3に概略的に示されており、その場合、示された楕円形の領域(三角形として示された得られたデータ)内にある対象物だけがライブもしくは生きていると見なされる。楕円形の外側の丸は、拒絶されたもしくは排斥された対象物に対するデータに対応する。
【0070】
要約すれば、1つの特定の値だけでなく、或る限界内にあるべき変数の組をも必要とする好適な方法は、“偽造の指”の材料を構成することを極端に困難にする。その一方で、死んだ指は、電気パラメータを変化させる、死後の指に生じる生物学的プロセスに起因して拒絶もしくは排斥されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるセンサ・アセンブリによって調べられている2層構造の電気的に等価な回路を示す図である。
【図2】本発明による幾つかの電極の役割を切換えるための1つの可能な構成を示す図である。
【図3】生きている指と他の対象物とを区別するための多変数モデルを示す図である。(注:1つの変数だけ(v1またはv2のいずれか)が用いられる場合には、偽造の指(黒でマークされている)の幾つかは本当の指と間違えられるおそれがある。)
【図4】第1の電極構成に対する周波数の関数としての測定されたインピーダンスの絶対値を示す図である。
【図5】第1の電極構成に対する周波数の関数としての測定されたインピーダンスの位相を示す図である。
【図6】第2の電極構成に対する周波数の関数としての測定されたインピーダンスの絶対値を示す図である。
【図7】第2の電極構成に対する周波数の関数としての測定されたインピーダンスの位相を示す図である。
【図8】パラメータとして周波数に対する幾つかの生きている指のための測定された4点インピーダンスの実数部及び虚数部のプロットを示す図である。
【符号の説明】
【0072】
10 センサ
11 指の表面
12 指の角質層
13 指の生きている組織
S1 スイッチ
S2 スイッチ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の状態を決定するための、特に、該構造の表面に近接した特性を測定することにより、測定された指紋が生きた指の上のものであるか否かを確認するためのセンサ・アセンブリにおいて、
該センサは、
電流源に結合され、皮膚に電流を提供する少なくとも2つの電流供給電極と、
該電流供給電極とは異なった選択された位置にある少なくとも2つのピックアップ電極と、
を備え、前記ピックアップ電極の少なくとも第1のものが、該第1のピックアップ電極と、ピックアップまたは電流供給電極のすくなくとも1つとの間の電圧を測定するための機器に結合されており、
センサ・アセンブリは、
構造の表面の或る状態を特性付ける値の所定の組を記憶するための記憶手段と、
構造の表面が或る状態にあるか否かを決定するために、各ピックアップ電極からの特性を、他のピックアップ電極の測定値と、並びに特性の所定の組と、比較するための計算手段と、
を備えたセンサ・アセンブリ。
【請求項2】
供給された電流は、選択された周波数範囲内で振動している請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項3】
センサ・アセンブリは、各ピックアップ電極におけるインピーダンスを測定するための測定手段を備え、前記計算手段は、結果の曲線の勾配を決定することにより、印加された周波数の関数として、インピーダンス信号の虚数部と実数部とを比較し、かつこの勾配を、生きている指を示す勾配の所定の組と比較するための比較手段を含む請求項2に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項4】
前記供給電極の第1のものと前記第1のピックアップ電極との間の距離は、1mmより小さい請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項5】
センサ間の相対位置を変えるように、従って、測定された表面の特性を変えるように、ピックアップ及び供給電極の役割が順次に変化し得るように、電極の役割を交換するための制御手段を備えた請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項6】
センサ・アセンブリは、各ピックアップ電極における信号の位相を測定するための測定手段を備え、前記計算手段は、選択された周波数においてピックアップ及び供給電極間の距離を信号の対応の位相と比較し、これらのパラメータを生きている指を示す所定の組と比較する比較手段を備えている請求項5に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項7】
ピックアップ電極は、指紋センサ・アレイにおけるセンサ素子によって構成される請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項8】
構造の表面に近接した構造の状態、例えば、角質層と生皮膚との皮膚の2つの外部の部分の電気特性を特性付けるための方法であって、
少なくとも2つの電極間で皮膚に電流または電圧を印加する段階と、
前記電流供給電極の1つと前記電流供給電極から選択された距離に位置付けられた少なくとも2つのピックアップ電極との間のインピーダンスを測定する段階と、
該測定されたインピーダンスを、構造の少なくとも1つの状態を特性付ける値の所定の組と比較する段階と、
測定された値と値の所定の組との間の比較に基づいて構造の状態を決定する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
2つの電極間に電流または電圧を印加する段階は、変化する周波数信号を印加する段階を含んで、前記電流供給電極の1つと前記電流供給電極から選択された距離に位置付けられた少なくとも2つのピックアップ電極との間のインピーダンスを測定する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
測定されたインピーダンスを比較することは、印加された周波数の関数として、測定されたインピーダンス信号の虚数部及び実数部間の関係を記述する曲線の勾配を決定し、決定された勾配を、生きている指を特性付ける値の所定の組と比較することにより行なわれる請求項9に記載の方法。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の状態を決定するための、特に、該構造の表面に近接した特性を測定することにより、測定された指紋が生きた指の上のものであるか否かを確認するためのセンサ・アセンブリにおいて、
該センサは、
電流源と、
互いに対して相対的な選択された位置にある少なくとも4つの電極であって、前記位置は、電極間の少なくとも2つの相対距離を提供し、前記少なくとも4つの電極の選択された第1の対は電流供給電極を構成し、前記少なくとも4つの電極の選択された第2の対はピックアップ電極を構成し、前記第2の対のうちの少なくとも1つの電極は電流供給電極を構成しない、前記少なくとも4つの電極と、
前記少なくとも4つの電極に結合され、前記構造を特性付ける値を提供するよう前記選択された対のピックアップ電極間のインピーダンスを測定するための測定機器と、
前記構造に対する選択された状態を特性付ける値の所定の組を記憶するための記憶手段と、
前記造が或る状態にあるか否かを検出するために、前記少なくとも1つの対のピックアップ電極の各々からの前記特性を、前記組の所定の値と比較するための計算手段と、
を備え、前記構造内の異なった深さにおける特性値を測定するために、少なくとも1つの電流供給及び測定機器を、電極間の異なった距離を有する異なった電極対に交互に結合するよう適合されたセンサ・アセンブリ。
【請求項2】
供給された電流は、選択された周波数範囲内で振動している請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項3】
センサ・アセンブリは、各ピックアップ電極におけるインピーダンスを測定するための測定手段を備え、前記計算手段は、結果の曲線の勾配を決定することにより、印加された周波数の関数として、インピーダンス信号の虚数部と実数部とを比較し、かつこの勾配を、生きている指を示す勾配の所定の組と比較するための比較手段を含む請求項2に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項4】
前記供給電極の第1のものと前記第1のピックアップ電極との間の距離は、1mmより小さい請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項5】
センサ間の相対位置を変えるように、従って、測定された表面の特性を変えるように、ピックアップ及び供給電極の役割が順次に変化し得るように、電極の役割を交換するための制御手段を備えた請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項6】
センサ・アセンブリは、各ピックアップ電極における信号の位相を測定するための測定手段を備え、前記計算手段は、選択された周波数においてピックアップ及び供給電極間の距離を信号の対応の位相と比較し、これらのパラメータを生きている指を示す所定の組と比較する比較手段を備えている請求項5に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項7】
ピックアップ電極は、指紋センサ・アレイにおけるセンサ素子によって構成される請求項1に記載のセンサ・アセンブリ。
【請求項8】
電極間で少なくとも2つの異なった距離を有する少なくとも4つの電極を構造の表面に結合して用いることにより、構造の表面に近接した構造の状態、例えば、角質層と生皮膚との皮膚の2つの外部の部分の電気特性を特性付けるための方法であって、
第1の対の電流供給電極間で皮膚に電流または電圧を印加する段階と、
少なくとも1つが電流供給電極ではない第2の対のピックアップ電極間のインピーダンスを測定し、これに関連する電気特性を計算する段階と、
第2の対の電流供給電極間に電流を印加して、ピックアップ電極間及び/または電流供給電極間の少なくとも2つの異なった距離でそれぞれ測定を行なうように、電極の役割を順次に変化させる段階と、
測定されたインピーダンスを、構造の少なくとも1つの状態を特性付ける値の所定の組と比較する段階と、
測定された値と値の所定の組との間の比較に基づいて構造の状態を決定する段階と、
を含む方法。
【請求項9】
2つの電極間に電流または電圧を印加する段階は、変化する周波数信号を印加する段階を含んで、前記電流供給電極の1つと前記電流供給電極から選択された距離に位置付けられた少なくとも2つのピックアップ電極との間のインピーダンスを測定する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
測定されたインピーダンスを比較することは、印加された周波数の関数として、測定されたインピーダンス信号の虚数部及び実数部間の関係を記述する曲線の勾配を決定し、決定された勾配を、生きている指を特性付ける値の所定の組と比較することにより行なわれる請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−508734(P2006−508734A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557000(P2004−557000)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/NO2003/000405
【国際公開番号】WO2004/049942
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(502442681)アイデックス・エーエスエー (3)
【Fターム(参考)】