説明

複雑な組成を有する生物学的起源のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の測定方法およびその使用

本発明は、複雑な組成を有する生物学的起源の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の検出方法に関する。本発明はまた、マイクロアレイの測定範囲に固定されている、複雑な組成を有する生物学的起源のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の定量的測定のためのマイクロアレイ、およびまたそれに基づく定量的検出方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の応用分野は、例えば、診断過程で個体の健康状態若しくは治療的処置の効果を決定するため、または、製薬学的研究および開発で、例えば生物体のような生物学的系の影響、および例えば生物学的有効成分を供給することによるような外的作用によるその複雑な作用様式を決定するため、複雑なサンプル中の多数の生物学的に関連する被検体を測定することを必要とする。
【0003】
既知の分析的分離方法は、通常、例えば分子量若しくは分子電荷および質量の商のような予め定義された物理化学的パラメータに従って、所定のサンプル中に存在する非常に多数の化合物を可能な限り短時間で分画するために至適化される一方、生物親和性アッセイは、複雑な組成のサンプル中の対応する(個別の)被検体を高度に選択的な様式で認識かつ結合するために、非常に高い特異性の1種の生物学的若しくは生化学的若しくは合成の認識要素を各場合に使用することに基づく。多数の異なる化合物の検出は、従って、対応する数の多様な異なる認識要素の使用を必要とする。
【0004】
生物親和性反応に基づくアッセイは均質な溶液中および固体支持体の表面上の双方で実施しうる。方法の特定の設計に基づき、対応する認識要素への被検体および適切な場合はさらなる検出物質の結合後、ならびにまた適切な場合は多様な工程段階の間に、前記認識要素および検出されるべき被検体の産生される複合体、ならびにまた、適切な場合はサンプルおよび場合によっては使用される付加的な試薬の残部からのさらなる検出物質を分離するために、各場合に洗浄段階を必要とする。
【0005】
固体支持体上で認識要素としての個別の空間的に分離された測定領域に固定された対応する相補核酸の助けを借りてのサンプル中の多数の異なる核酸の同時検出方法は、今や比較的広まっている。例えば、単純なガラス若しくは顕微鏡スライドガラスに基づきかつ非常に高い特徴密度(共有される固体支持体上の測定領域の密度)を有する認識要素としてのオリゴヌクレオチドのアレイが開示された。例えば特許文献1は、平方センチメートルあたり1000以上の特徴密度を有するオリゴヌクレオチドのアレイを記述かつ特許請求する。
【0006】
最近、とりわけ、検出されるべき被検体の認識要素として固定された抗体のアレイを使用する、例えば特許文献2の、多数のタンパク質を同時に測定するためのアレイおよびそれで実施される類似の種類のアッセイの記述が、より頻繁になった。
【0007】
核酸、および例えばタンパク質のような他の生体高分子双方を検出するためのこうした「マイクロアレイ」に関する特許文書は、被検体認識のためのアレイを生成するために多数の異なる特異的認識要素を個別の測定領域に固定し、そして(適切な場合は複雑な混合物中に)被検体を含有する研究されるべきサンプルをその後この「捕捉アレイ」と接触させることを各場合に記述する。開示される記述によれば、多様な特異的認識要素が、各場合に多様な個別の測定領域に最高の可能な純度の形態でここに存在し、そして、結果として、通常、サンプルの多様な被検体が多様な認識要素を含む測定領域に結合する。
【0008】
この型の既知のアッセイは、部分的に非常に複雑な段階によって最高の可能な純度の形態で固定されるために前記特異的認識要素を精製かつ濃縮することを必要とする。多様な認識要素はそれらの物理化学特性(例えばそれらの極性)がある程度大きく異なるため、例えば、共有される固体支持体上、適切な場合はそれに塗布された付着促進層上の個別の測定領域中での吸着若しくは共有結合による前記認識要素の至適の固定のための条件の対応する差違もまた存在する。結果、(例えば付着促進層の型のような)多数の異なる認識要素を固定するために選ばれる固定条件は、同時に全部の認識要素にとってほとんど至適であり得ないが、しかし単に多様な認識要素の固定特性の間の歩み寄りとなり得る。別の欠点は、各場合で、アレイあたりただ1種の供給されたサンプルを、この種類の捕捉アレイでその中に存在する被検体について研究し得るという事実である。
【0009】
従って、1アレイ若しくは共有される支持体上の複数のアレイで同時に、または複数の支持体上の複数のアレイで連続してのいずれかで、多数のサンプルが前記サンプル中に存在する被検体について研究されることを可能にする改変アッセイ設計に対する必要性が存在する。この目的上、多様な特異的認識要素よりはむしろ試験されるべきサンプルそれら自身を、1個若しくはそれ以上の支持体上の1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域に、直接すなわち未処理の形態で、若しくは可能な限り少ない調製段階後にのいずれかで塗布することが便宜的であるとみられる。こうしたアッセイ設計は、下で「逆アッセイ構成」と称されるであろう。
【0010】
この必要性を満たすため、例えば非特許文献1のPaweletzらは、最近、「逆相タンパク質マイクロアレイ」という名称の下に、逆アッセイ構成に基づくタンパク質検出のためのこうしたアッセイを提案した。
【0011】
マイクロアレイの助けを借りての被検体検出のためのこうした方法、ならびに、なおより一般的な形態で、表面上で実施されかつ検出されるべき被検体に対する特異的結合パートナーとしての結合試薬の特異的結合に基づくアッセイの共通の問題は、被検体および結合試薬、ならびに適切な場合はそれらの検出に使用されるさらなる検出試薬の間の特異的相互作用に基づかない非特異的結合事象の発生である。
【0012】
特許文献3は、観察されるアッセイシグナルを損ない得る、とりわけ非特異的結合事象および温度若しくはpHの変化により引き起こされうる例えばバックグラウンド蛍光のようなバックグラウンドシグナルによるアッセイシグナルの妨害の多様な補償方法を記述する。これらの方法は、共有される固体支持体上のアッセイシグナルを生成するために指定される領域は別にして、こうした補償の目的に指定される付加的な領域を提供することに本質的に基づく。
【0013】
特許文献4は、非特異的結合を最低限にするように多様な物質で処理した捕捉アレイを調製するための多様な表面への特異的および非特異的結合の程度を記述する。この情況で、静電作用をもつコーティングが非特異的結合を低下させるために有利であると言われる。
【0014】
特許文献5もまた、非特異的結合を最低限にするための多様な表面コーティング、とりわけポリエチレングリコールを含んでなるもの、ならびに非特異的結合の、しかし再度捕捉アレイに対応する(センサー)形式での絶対および相対比率の測定を記述する。
【0015】
アッセイ結果に対する非特異的結合の影響を最低限にするためのこうした方法は、それらが、被検体特異的認識要素がそこに固定された測定領域の外側での被検体若しくはアッセイに使用される他の結合および検出試薬の結合をそれにより予防若しくは最低限にするために、支持体の表面の性質を変えることに基づくという事実を共有する。同時に、非特
異的結合は前記測定領域それら自身では起こらないことが暗黙のうちに想定される。こうした影響は記述される方法の助けを借りれば考慮に入れられ得ないからである。捕捉アレイの場合には、測定領域に塗布された化合物の十分に定義された組成、すなわち通常は測定領域内の標準的形態の認識要素で、前述の要件は、とりわけ、アッセイで使用される前記認識要素ならびに結合および検出試薬を慎重に選択することにより、実質的に満たされ得る。
【0016】
逆アッセイ構成、すなわち測定領域に固定される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを用いるアッセイのためのアレイの場合、上の要件を満たすことは困難かつほとんど信頼性がない。塗布されたサンプルは、生物学的サンプルマトリックスの多数の多様な化合物を含む未知の組成を有するからである。従って、結合試薬および場合によっては使用される検出試薬の非特異的結合が、測定領域内でさえ有意の程度まで発生し得ることが期待されることとなる。
【0017】
こうしたアッセイに、検出されるべき被検体を含有する生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルが固定されている測定領域のアレイ、添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である測定領域から発するシグナルの部分が測定されることを可能にする方法を提供することが、本発明の目的である。
【0018】
さらに、本発明は、生物学的起源かつ複雑な組成の固定されたサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の絶対量を測定する、および検出されるべき被検体への結合試薬の結合により生じられているシグナルを較正するというなおより一般的な目的を達成する。適する濃度の対応する被検体を含有する適する数の較正溶液を添加することによって、捕捉アレイに固定されたそれらの認識要素に結合する、供給されたサンプル中に存在する被検体から生じられているシグナルの較正曲線を生成することは公知である。不利なことに、この方法は、相互に非常に類似である測定領域の対応する多数のアレイへの多数の溶液の添加を必要とする。特許文献6および特許文献7は、1個若しくはそれ以上のアレイで、各場合に、生物学的若しくは生化学的若しくは合成の認識要素が多様な制御された密度でそこに固定された複数の測定領域が、前記測定領域に共通の被検体の検出に提供されることを提案する。ここで、アレイの多様な測定領域に多様な制御された密度で固定された前記認識要素の濃度および十分に大きな「変動」の関数であることが知られている、被検体とその生物学的若しくは生化学的若しくは合成の認識要素の間の結合シグナルを用いて、前記アレイに単一の較正溶液を添加することによってさえ前記被検体の較正曲線を生成しうるという事実がとりわけ好ましい。しかしながら、捕捉アレイについてのこれらの多様な較正方法は、常に、溶液中に未知濃度で存在する被検体の、アレイの固定された認識要素への結合によるシグナルを較正するようはたらく。対照的に、個別の測定領域に固定される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを含むアレイについて、問題は、固定マトリックス中に未知濃度で存在する被検体を較正することのものである。この問題は、測定領域の本発明のアレイおよびそれに基づく本発明の定量的アッセイにより解決される。特異的および非特異的結合により生成されるシグナルの部分を識別するための本発明の前述の方法との組合せによって、これは、被検体の絶対量および濃度が信頼できる様式で測定されることを可能にする。
【0019】
驚くべきことに、本発明は、本明細書で使用される種類のアレイについてもまた、複雑な組成の固定されたサンプル中に存在する被検体の相対および/若しくは絶対量または相対および/若しくは絶対濃度が、高い正確性を伴い測定されることを可能にする。
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,445,934号(Affymax Technologies)
【特許文献2】米国特許第6,365,418 B1号
【特許文献3】米国特許第5,726,064号
【特許文献4】米国特許出願第2004/0043508 A1号
【特許文献5】米国特許第5,677,196号
【特許文献6】国際出願第WO 01/092870号
【特許文献7】国際出願第WO 02/40998号
【非特許文献1】Oncogene 2001、Vol.20、1981−1989
【発明の開示】
【0021】
[発明の要約]
[発明の詳細な記述]
本発明により、固体支持体上の空間的に分離されたすなわち個別の測定領域は、そこに塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル若しくは塗布された照合試薬(例えば蛍光標識アルブミンのような)若しくは較正試薬またはそれらの塗布された混合物により占有される閉鎖された領域により定義する。前記領域はいかなる幾何学的外形も有しうる(例えば、円形、長方形、三角形、楕円形などでありうる)。
【0022】
本発明は、第一に、以下の段階:
(1)生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプルを提供する段階、(2)最低1種の固体支持体を提供する段階、
(3)希釈若しくは未希釈の形態の、生物学的起源かつ複雑な組成の少量の前記サンプルを、前記固体支持体上に直接、若しくは付着促進層の前塗布後に該固体支持体上の前記付着促進層にのいずれかで、個別の部位に塗布して、それにより該最低1種の固体支持体上の個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイを生成する段階、
(4)個別の測定領域の最低1個のアレイを、生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、および、場合によっては、必要とされる場合は1種若しくはそれ以上の検出試薬を含んでなる第一の溶液と接触させる段階(結合試薬および検出試薬は同時に若しくは連続して塗布されることが可能であり)、
(5)段階(4)で第一の溶液と接触された1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発する第一の光信号を空間分解様式で測定する段階、
(6)前記第一の光信号を記録する段階
を含んでなり、
添加される結合試薬、および、場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である測定される第一の光信号の部分が、以下のさらなる段階:(7a)1種若しくはそれ以上の結合試薬および場合によっては段階(4)で添加される第一の溶液の1種若しくはそれ以上の検出試薬に加えて、前記結合試薬および場合によっては付加的に添加される検出試薬の特異的結合についての、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する前記被検体に対する競合体としての、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する被検体と同一の種類のものである既知の高濃度の化合物を含んでなる第二の溶液を、段階(3)で生成される個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイに塗布する段階、ならびに/または
(7b)前記1種若しくはそれ以上の結合試薬および場合によっては段階(4)で添加される第一の溶液の1種若しくはそれ以上の検出試薬に加えて、前記結合試薬および場合によっては付加的に添加される検出試薬の非特異的結合について、個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中に存在するサンプルマトリックスの物質と競合することの目的上、段階(3)で塗布されたサンプルのサンプルマトリックス中に存
在する物質と類似の種類のものである既知の高濃度の物質を含んでなる第三の溶液を、段階(3)で生成される個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイに塗布する段階、(8)段階(7a)で第二の溶液および/若しくは段階(7b)で第三の溶液と接触された1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発する第二および/若しくは第三の光信号を空間分解様式で測定する段階、
(9)前記第二および/若しくは第三の光信号を記録する段階、ならびに
前記第一ならびに第二および/若しくは第三の光信号を比較する段階
を実施することにより測定されることを特徴とする、
生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の検出方法に関する。
【0023】
段階(7a)および(7b)において、結合試薬および競合のため添加される物質、ならびにまた光学的検出試薬は、各場合に、これら3群の成分の単一溶液の添加の形態で添加しうる。しかしながら、検出試薬の付加的な添加の場合には、最初に結合試薬および競合のため使用される物質の混合物の第二若しくは第三の溶液を塗布すること、場合によっては次いで1回若しくはそれ以上の洗浄段階、および前記検出試薬の添加のその後の別個の下位段階が好ましい。
【0024】
「該固体支持体の」若しくは「ある固体支持体の」という用語は、下で、「該最低1個の固体支持体の」若しくは「最低1個の固体支持体の」という意味もまた包含することを意図している。
【0025】
「第一の溶液」、「第二の溶液」、「第三の溶液」という用語は、それぞれ「多数の第一の溶液」、「多数の第二の溶液」および「多数の第三の溶液」という意味もまた包含することを意図しており、こうした多数の溶液内の溶液が各場合に同一若しくは異なる組成を有することが可能である。
【0026】
「サンプル」という用語は、別の方法で述べられない限り、下で「生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル」ともまた同義に使用される。単数形での「サンプル」という用語は、別の方法で述べられない限り「複数のサンプル」という用語もまた包含する。
【0027】
生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルは、細胞集団のライセート、細胞抽出物、例えば血液、血清、血漿、滑液、涙液、尿、唾液、組織液およびリンパのような体液および体液の成分より形成されるサンプルの群から選択されることができ、前記サンプルは分画若しくは非分画サンプルである。
【0028】
前記サンプルは、ヒト、動物、細菌および植物細胞を含んでなる群からの健全および/または罹病のおよび/または刺激されたおよび/または未処理の細胞から得ることができる。より具体的には、生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルは、例えば器官、皮膚、毛髪、筋、脂肪若しくは骨組織のような動物若しくはヒト組織から得ることができる。
【0029】
多様なサンプルは、同一の生物体若しくは同一の細胞培養物から得られたかもしれない。その場合、同一(若しくは非常に類似の)生物体または同一細胞培養物(若しくは非常に類似の細胞培養物)からの物質を含有する複数の測定領域を分析することにより、例えば、前記測定領域で測定される、塗布されたサンプルの相対分子組成の再現性に関する統計学的情報を得ることが可能である。
【0030】
多様なサンプルはとりわけ同一生物体の多様な位置から得ることができる。その場合、対応する個別の測定領域上の被検体から、例えば、前記サンプルが得られた前記生物体中の検出されるべき被検体の相対分子組成の不均一性に関する情報を得ることが可能である
。こうした手順は、例えば癌に冒されている生物体を検査するために非常に重要である。
【0031】
しかしながら、多様なサンプルは、多様な生物体若しくは多様な細胞培養物からもまた得ることができる。それらは、例えば未処置の生物体若しくは製薬学的薬物で処置した生物体からのサンプルでありうる。その場合、核酸分析での発現分析に類似の様式で、サンプルの相対分子組成、すなわち、とりわけそれらが発する細胞集団により発現される多数の化合物の組成に対する特定の薬物の影響を研究することが可能である。
【0032】
細胞がサンプルの出発原料である場合、それらは典型的に第一の調製段階で溶解される。ライセートは適する溶媒、例えば緩衝溶液に溶解することができ、そして、既知の添加された混合状態、例えば存在する生体高分子が分解することを予防するためのプロテアーゼ阻害剤のような安定化剤を包含しうる。本発明の方法の好ましい一態様により、ライセートは、それから得られるサンプル(すなわち生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル)が細胞株、細胞培養物若しくは細胞組織の全プロテオームを含んでなるような方法で調製かつ処理される。
【0033】
本発明の方法の応用の重要な一領域は、多様な条件下での被検体の細胞発現(すなわちとりわけタンパク質発現)のための、細胞ライセートを含んでなるか若しくは細胞ライセートから調製したサンプルの研究である。特定の研究の目的に依存して、測定領域に塗布されるべきサンプルを多様な方法で選択し得る。
【0034】
可能な一変形は、相互に独立である細胞集団(すなわち細胞株若しくは細胞培養物の混合物)からのライセートの使用に基づく。この情況で、相互に独立に増殖されたか若しくは相互に独立に培養された細胞集団(例えば「in vitro細胞培養物」のような)を「相互に独立の」と称する。結果、本用語は、例えば、一般に多様なヒト、動物、植物若しくは生物体、および多様な器官から発する細胞集団、さらに、例えば1種および同一の器官からの癌性および健全な組織のような、生物体若しくは器官内の多様な部位に由来する細胞集団を包含する。該用語は、多様な時点で同一の生物体若しくは器官から得られかつ/または取り出し後にin vitro培養過程で多様な処理、刺激若しくは別の種類の他の多様な影響にさらされた細胞集団もまた含んでなる。その場合、本発明の方法の助けを借りて、および相互に独立であるこうした細胞集団から得られるサンプルの助けを借りて、例えば異なる生物体、同一種類なの健康および罹病の生物体、多様な器官などの間の細胞発現および/若しくは細胞シグナル伝達カスケードの活性化の差違を検出するために、例えば差別的発現プロファイルを生成することが可能である。細胞発現に対する前記細胞集団の処理若しくは刺激の影響がここでとりわけ興味深い。この情況で、「処理」若しくは「刺激」という用語は、化学的若しくは生物学的化合物(試薬若しくは薬物)の問題の細胞集団への添加、ならびに、例えば紫外ないし赤外スペクトルの光での照射の形態の多様な外的物理的条件の影響、熱の影響、電磁場の影響などを意味している。
【0035】
本発明の方法は、細胞発現および/若しくは活性化に対するストレス、疾患、加齢、栄養の型などのようなより少なく正確に定義可能な内的若しくは外的影響因子の影響を研究するのにもまた適する(下を参照されたい)。
【0036】
本発明の方法により達成可能な測定結果の高い正確性のおかげで、それは、例えば分、時間、日、週、月若しくは年の期間にわたる前述の条件下での細胞発現および/若しくは活性化(下を参照されたい)の発生を研究するのにもまたとりわけ適する。
【0037】
別の可能な変形は、順に一般的細胞集団から得られた多様な細胞下位集団により生成される多様な細胞ライセートの使用に基づく。多様な細胞下位集団は例えば多様な時点での一般的細胞集団からの取り出しにより生成しうる。多様な細胞集団は、一般的細胞集団か
らの取り出し、ならびに多様な試薬によるその後の処理若しくは刺激および/または多様な外的条件下で培養すること(例えばUV光による照射、熱ショックなどの影響を研究するため)によってもまた生成しうる。
【0038】
本発明の方法の応用のための上および他の可能な変形のための細胞集団の処理に使用される典型的な試薬は、製薬学的有効成分、サイトカイン、細胞刺激のための抗原、細胞死を誘導する刺激物質、ホルモンなどを含んでなる。
【0039】
可能な限り均一な条件下で、存在する検出されるべき被検体について前記サンプルをその後研究することが可能であるために、本発明の方法の助けを借りて、発現が比較されるはずである細胞集団から得られた複雑な組成のサンプルを、各場合に測定領域の共有されるアレイに塗布することが好ましい。
【0040】
サンプルは、クロマトグラフィーでのサンプルの「スパイクキング(spiking)」に匹敵する、検出されるべき被検体と同一の種類の既知濃度の(標準としての)化合物の添加を含みうる。こうした添加は例えば較正の目的上使用しうる。さらに、サンプルは、例えばアルブミン(例えばウシ血清アルブミン(BSA))、免疫グロブリン若しくは希釈血清のような、サンプルマトリックスに類似であるがしかし検出されるべき被検体と異なる化合物の添加も含むことができ、それらの化合物は、例えば、測定領域内の固定された被検体分子の表面密度を制御された様式で調節するようはたらきうる。サンプル若しくはそれらの画分、または前記サンプル若しくは画分の希釈中に存在する被検体、すなわちとりわけ例えば核酸若しくはタンパク質のような生体高分子は、天然の形態、または例えば尿素若しくは界面活性剤(例えばSDS)での処理後の変性された形態で存在しうる。必要な場合は、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを提供することの前の複数の調製段階の場合に、適する手段、例えば中間材料としてのライセートの場合での遠心分離により、供給源材料若しくは中間材料のとりわけ不溶性成分を除去することが可能である。好ましくは、「生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル」を調製するための出発原料は、濾過および/若しくは分画および/若しくは希釈以外のいかなる前処理段階にもかけられない。
【0041】
サンプル若しくはそれらの画分、または前記サンプル若しくは画分の希釈中に存在する被検体、すなわちとりわけ例えばタンパク質のような生体高分子は、好ましくは、例えば尿素での処理後に変性された形態で存在し、前記被検体のエピトープはそれらの特定の検出物質、例えば抗体の結合のため可能な限り自由に接近可能である。これは、例えば尿素での処理の結果として三次若しくは四次構造を破壊することにより可能にされる。さらに、変性されたサンプルは、それから生成されるアレイが非常に安定でありかつ後に実施されるべき分析のため比較的長期間(数年まで)にわたり保存かつ保管し得るという利点を有する。
【0042】
分画されたサンプルは、例えば、沈殿、濾過、遠心分離、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、イオン交換体クロマトグラフィーおよび疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、サイズ排除クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィーの方法によるHPLCおよびマイクロHPLC(「高速液体クロマトグラフィー」)、電気泳動、キャピラリー電気泳動、電気クロマトグラフィーならびにフリーフロー電気泳動を含んでなる分離方法の群からの分離方法を使用して得ることができる。
【0043】
より具体的には、生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルは除去血清(depleted serum)を含みうる。「除去血清」は、アルブミン、免疫グロブリンおよびアポリポタンパク質のような成分が例えばアフィニティークロマトグラフィーによって高程度まで除去された、血清から得られるサンプルを指す。
【0044】
生物学的起源かつ複雑な組成の分析されるべきサンプルの材料は、例えば、組織切片、生検およびレーザー捕捉顕微解剖を含んでなる取り出し法の群の方法によって得られたかもしれない。
【0045】
本発明の方法は、使用される少容量および量のみのサンプルでさえ高い正確性を伴い分析されることを可能にする。サンプルの量はここで個別の測定領域に塗布される総量を意味している。例えば、測定領域に塗布されるべきサンプルの物質は100細胞未満の物質に対応しうる。それは10細胞未満の物質に対応さえしうる。生物学的起源かつ複雑な組成の分析されるべきサンプルの物質(その物質が測定領域に塗布される)が100nl未満、好ましくは1nl未満の容量を有することがさらに可能である。
【0046】
個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の検出されるべきである被検体は、タンパク質、ならびに例えばリン酸化、グリコシル化、メチル化およびアセチル化された形態のタンパク質のようなそれらの翻訳後修飾されたタンパク質の形態、とりわけ、例えばキナーゼ、キナーゼ基質、ペプチドの受容体および結合タンパク質、ホルモン、補助因子、膜受容体、チャンネル受容体、T細胞受容体のような細胞のシグナル伝達経路に関与しかつ相互作用するタンパク質、ならびに酵素、ならびにまた例えば細胞質タンパク質、核タンパク質、膜タンパク質、ミトコンドリアタンパク質のような多様な細胞区画由来であるタンパク質およびそれらの翻訳後修飾されたタンパク質の形態、ならびに例えば体液中に分泌されたタンパク質のような細胞外タンパク質、ならびにとりわけまた細胞処理若しくは刺激の影響下で過剰若しくは過小発現されるタンパク質、ならびにまた、例えば付加的な結合部位をもつ官能性化されたタンパク質(例えばヒスチジン標識タンパク質のような標識タンパク質)、モノ若しくはポリクローナル抗体および抗体フラグメント、ペプチド、無傷のタンパク質から生成されるペプチドフラグメント、糖ペプチド、レクチン、蛍光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、GFPなどのような)、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ビオチニル化タンパク質および多様に複合されたタンパク質のような人工的に修飾若しくは発現されたタンパク質、オリゴ糖ならびに核酸(例えばDNA、RNA)を含んでなる群からの化合物でありうる。
【0047】
「被検体」は、本発明の範囲内で、分析されるべきサンプル中に存在する他の化合物と識別され、そして特異的結合パートナーとしてこれのために使用される結合試薬および適切な場合は付加的に使用される検出試薬の助けを借りて結合されるこうした分子種を意味している。例えば、適切な結合試薬が、検出されるべき化合物若しくは種のリン酸化された形態のみに結合するがしかしリン酸化されていない形態に結合しない場合には、前記化合物若しくは種の双方の形態は本定義により2種の異なる被検体を表す。適切な結合試薬が、それらがリン酸化されている場合にいかなる化合物若しくは種も認識かつ結合する場合には、従って、対応するリン酸化された化合物若しくは種はこの条件下で一緒に単一被験体を表す。前記定義による被検体の特異的結合パートナーとしての結合試薬は、例えば、それらが検出されるべき化合物のリン酸化された形態若しくはグリコシル化された形態(または相応してリン酸化されない若しくはグリコシル化されない形態)のみを認識しかつそれらに結合するような方法で選択しうる。細胞若しくは生物体中の生物学的シグナル経路の活性は、前記シグナル経路を制御するリン酸化、メチル化、アセチル化若しくはグリコシル化された化合物(シグナル経路の性質に依存する)の比率に相関しうる。サンプル中の総量のリン酸化、メチル化、アセチル化若しくはグリコシル化された形態の相対比率、すなわちそのリン酸化、メチル化、アセチル化若しくはグリコシル化された形態の化合物の量、ならびにリン酸化されたおよびリン酸化されていない形態若しくはメチル化されたおよびメチル化されていない形態若しくはアセチル化されたおよびアセチル化されていない形態若しくはグリコシル化されたおよびグリコシル化されていない形態中の前記化合物の総量の商は、下で、前記サンプル中の前記化合物のリン酸化若しくはメチル化若し
くはアセチル化若しくはグリコシル化の程度と称する。リン酸化の程度、メチル化の程度、アセチル化の程度およびグリコシル化の程度は、化合物の活性化の程度という包括的用語の下で合わせうる。しかしながら、化合物の活性化の程度は化合物の他の化学修飾された形態もまた指すことがある。本発明の方法は、発現されるタンパク質の活性化の程度を測定するためにもまたとりわけ適する。
【0048】
特異的結合パートナーとしての結合試薬は、検出されるべき化合物が特定の三次元構造を有する場合のみそれらにそれらが結合するような方法でもまた選択しうる。例えば、多くの抗体は、特殊な三次元構造を有する検出されるべき物質の特殊な下位領域(エピトープ)のみを認識しかつそれらに結合する。検出されるべき対応する化合物のコンホメーション状態に依存して、前記下位領域(エピトープ)は対応する結合試薬の結合に接近可能でありうるか若しくは隠れうる。しかしながら、結合試薬は、接近可能性が前記化合物の三次元構造に依存しない、検出されるべき化合物の領域にそれらが結合するような方法でもまた選択しうる。適切に選択された結合試薬を使用することは、従って、特定のコンホメーション状態を有する、サンプル中の検出されるべき化合物の総量の相対比率が決定されることを可能にする。
【0049】
使用される結合試薬、および適切な場合は付加的な検出試薬の適する選択で、本発明の方法は、個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の被検体として検出されるべきであるタンパク質が、特異的結合パートナーとしてそれと接触された結合試薬、および場合によっては付加的な検出試薬の結合後に、請求項1に記載の段階(4)の経過において、生物学的起源かつ複雑な組成の前記塗布されたサンプル中のリン酸化および/若しくはグリコシル化ならびに/またはメチル化および/若しくはアセチル化された形態でのそれらの存在により識別され、そして請求項1に記載の検出段階(5)で、上の定義に従って異なる被検体として個別に検出されることを可能にする。
【0050】
個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の被検体として検出されるべきであるタンパク質が、特異的結合パートナーとしてそれと接触された結合試薬、および場合によっては付加的な検出試薬の結合後に、請求項1に記載の段階(4)の経過において、生物学的起源かつ複雑な組成の前記塗布されたサンプル中のリン酸化および/若しくはグリコシル化ならびに/またはメチル化および/若しくはアセチル化された形態でのそれらの存在により識別されず、そして請求項1に記載の検出段階(5)で、異なる被検体として個別にでなくしかし一緒に単一被検体として検出されることもまた可能である。
【0051】
本発明の方法は、生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中に存在する1種若しくはそれ以上の被検体(すなわちとりわけ存在するタンパク質)の(上の定義による)活性化の程度が測定されることを可能にする。より具体的には、前記方法は、塗布されたサンプル中に存在する1種若しくはそれ以上の被検体(とりわけタンパク質)のリン酸化の程度および/若しくはメチル化の程度および/若しくはアセチル化の程度および/若しくはグリコシル化の程度を測定するのに使用し得る。
【0052】
生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとして使用される結合試薬は、例えば、タンパク質、例えばモノ若しくはポリクローナル抗体および抗体フラグメント、ペプチド、酵素、酵素阻害剤、キナーゼ基質、アプタマー、合成ペプチド構造、糖タンパク質、ホルモン、補助因子、オリゴ糖、レクチン、抗体若しくはT細胞受容体に対する抗原、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、付加的な結合部位で官能性化されたタンパク質(例えばヒスチジン標識タンパク質のような標識タンパク質)ならびにそれらの複合体形成パートナー、ならびに核酸(例えばDNA、RNA、オリゴヌクレオチド)および核酸ア
ナログ(例えばPNA)ならびに人工的塩基を有するそれらの誘導体を含んでなる化合物の群から選択されうる。
【0053】
使用される検出試薬は、ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体および抗体フラグメント、核酸および核酸誘導体、ならびに人工的塩基、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンを有するそれらの誘導体を含んでなる第一群から選択しうる。検出試薬は、例えばナノ粒子、ビーズ若しくはコロイドの形態の質量標識、ならびに、例えば200nmと1000nmの間の励起および放出波長をもつ量子ドットのような発光色素若しくは発光ナノ粒子の形態の発光標識を含んでなる第二群からもまた選択することができ、前記質量若しくは発光標識は、結合試薬に結合されているかまたはそれに付加若しくは結合しているか、あるいは、検出試薬の前述の第一群の検出試薬に結合されているか、または検出試薬の第一群の前記検出試薬に特異的方法で結合若しくは付加しているか、あるいは、個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中に存在する検出されるべき被検体と、特異的結合パートナーとしてそれに結合された結合試薬の間の複合体上で形成されるか、それに結合若しくは付加している。結合試薬は検出試薬の機能もまた含みうる。
【0054】
本出願中の「発光」という用語は、光学的、または例えば電子若しくは化学的若しくは生化学的若しくは熱的のような非光学的励起後の紫外ないし赤外範囲の光量子の自発的放出を指す。「発光」という用語の下に包含される用語の例は、化学発光、生物発光、電子発光ならびにとりわけ蛍光およびリン光である。
【0055】
本発明の方法の好ましい一変形において、第一の溶液の特異的結合パートナーとしての前記結合試薬および任意の検出試薬、ならびに/若しくは
第二の溶液の、特異的結合パートナーとしての結合試薬、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する被検体と同一の種類の化合物、および任意の検出試薬、ならびに/若しくは
第三の溶液の、特異的結合パートナーとしての結合試薬、個別の測定領域に段階(3)で塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質、および任意の検出試薬を、各場合に相互と前インキュベートし、ならびに、前記第一、第二若しくは第三の溶液をその後、単一添加段階にて測定領域の前記アレイと接触する。
【0056】
本発明の方法の可能な一変形は、多様な被検体が、識別可能な検出試薬を測定領域の共有されるアレイに添加することにより前記アレイ中で検出されることを特徴とする。使用される識別可能な検出試薬の数に等しい検出されるべき多様な被検体の数がここで好ましい。発光の励起波長および/若しくは放出波長が異なる識別可能な検出試薬がとりわけ好ましい。
【0057】
本発明の方法の別の変形は、個別の測定領域の多数のアレイ中の多数の異なる被検体が、個別の測定領域の多様なアレイ上の多様な被検体を測定するための特異的結合パートナーとして多様な結合試薬を添加すること、および/若しくは測定領域の前記アレイに識別可能な検出試薬を添加することにより検出されるという事実を特徴とする。
【0058】
さらなる可能な一変形は、多様な結合試薬が、多様な被検体に対する特異的結合パートナーとして、検出されるべき各異なる被検体の多様なアレイに塗布されることを特徴とする。
【0059】
それに塗布される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを含有する測定領域のアレイが、検出されるべき被検体と同一の種類のものである既知濃度の化合物が、塗布される物
質に標準として添加されている測定領域を含んでなる場合が有利である。測定領域のアレイが、検出されるべき被検体と同一の種類のものである多様な既知濃度の化合物が、塗布される物質に標準として添加されている、多数の測定領域を含んでなり、こうした測定領域の数および前記多様な既知濃度のレベルが、本発明の方法の請求項1に記載の段階(4)による特異的結合パートナーとしての結合試薬および場合によっては同様の検出試薬を含有する第一の溶液を添加することの単一段階、ならびに請求項1に記載のその後の段階(5)および(6)によって、アレイ中の検出されるべき前記被検体の未知濃度を測定するための較正曲線を生成するために十分であるという事実がここでとりわけ好ましい。再度、結合試薬および任意の検出試薬が、本発明の方法の段階(4)により、単一の添加段階若しくは適切な場合は間に実施される洗浄段階を伴う別個の下位段階で添加されることがここで可能である。ここで被検体測定のための標準が添加されている材料は、例えば、使用される緩衝溶液の成分、アルブミン(とりわけウシ血清アルブミン)、免疫グロブリン若しくは希釈血清のようなサンプルマトリックスに類似の添加された化合物のみを含みうる。
【0060】
測定領域の複数の同一種類のアレイが固体支持体上に配置され、行および列の配置に関して多様なアレイの測定領域の同一の位置が、同一種類のサンプルがそこに塗布されていることを意味するという事実が好ましい。
【0061】
多様な溶液、すなわち、結合試薬および適切な場合は付加的に検出試薬を含有する第一の溶液、競合体としての検出されるべき被検体と同一の種類の化合物を付加的に含有する第二の溶液、ならびに測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する添加された化合物を含有する第三の溶液を、共有される固体支持体上に配置される測定領域のアレイに塗布することの多様な可能な態様が存在する。
【0062】
第一の好ましい可能な一態様は、段階(4)による第一の溶液が添加され、かつ、このアレイの測定領域からの第一の光信号が請求項1に記載の段階(5)および(6)により測定かつ記録され、ならびに、段階(7a)および(7b)による第二および/若しくは第三の溶液が添加され、かつ、問題のアレイの測定領域から発せられるシグナルが、該同一種類の多様な測定領域アレイ上で請求項1に記載の段階(8)および(9)によりその後測定かつ記録され、行および列の配置に関して多様なアレイの測定領域の同一の位置が、同一種類のサンプルがそこに塗布されていることを意味することを特徴とする。
【0063】
しかしながら、該第一、第二および第三の溶液が、各場合で十分な数の再生および洗浄段階が実施された後に測定領域の同一のアレイ(若しくは同一の複数の測定領域)に連続して塗布されることもまた可能である。「再生」は、ここで、第一の溶液または第二若しくは第三の溶液の添加後に被検体ならびにそれらの結合試薬および適切な場合には付加的に添加された検出試薬の間で形成される複合体が、例えば、抗原−抗体複合体を解離させるための高塩濃度/高イオン強度および/若しくは強く酸性の特徴をもつ「カオトロピック」試薬、またはハイブリダイズした核酸鎖を解離させるための尿素溶液のような、適する複合体破壊試薬を添加することにより解離され、その結果、固定された被検体分子が、第二若しくは第三の溶液の添加前に、各場合に結合試薬および適切な場合はさらなる検出試薬の結合に再度接近可能となる、こうした中間段階を意味している。本発明の方法の本変形は、しかしながら、好ましくは高程度(例えば80%以上、好ましくは90%以上)の再生可能性が保証される場合にのみ実施する。
【0064】
個別の測定領域に塗布される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の検出されるべきかつ存在する被検体と同一の種類のものであり、かつ、前記結合試薬および適切な場合は付加的に添加された検出試薬の特異的結合のため個別の測定領域に塗布される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の検出されるべきかつ存在する被検体に対する競合体と
して使用される化合物の濃度(その濃度は、好ましくは塗布されるべき第二の溶液中で使用されるべきである)は、測定領域で期待されるべき前記被検体の表面濃度、ならびに前記被検体とそれぞれそれらの結合および検出試薬の間の結合反応の平衡定数に依存する。結合試薬は、典型的には供給元から得られるストック溶液の100倍しないし1000倍希釈である。抗体の場合、こうしたストック溶液は、1〜10μMからの範囲の濃度に対応する典型的に0.5〜1mg/mlの含量で入手可能である。検出試薬は、結合試薬がそうであるところの匹敵する濃度範囲すなわち典型的に1〜10nMで使用する。競合実験の場合、競合体(例えばリン酸化ペプチドエピトープ)は、結合試薬の濃度の最低10倍、より良好には100倍過剰で使用する。生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである、非特異的結合の競合体として使用される物質(例えばアルブミン、免疫グロブリン若しくは希釈血清)は、典型的にはこれらの(本発明の方法の段階(7b)による)第三の溶液の10μg/mlから500μg/mlまでの総タンパク質含量を伴い使用する。
【0065】
本発明の方法は、測定領域中で測定され、かつ、特異的結合、および非特異的相互作用若しくは非特異的結合により引き起こされる付加的な非特異的結合により生成される全シグナルの部分が2方法で決定されることを可能にする。
【0066】
第一の選択肢において、添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である請求項1に記載の測定された第一の光信号の部分は、段階(7a)による第二の溶液の添加後に段階(8)により測定される光信号および段階(4)による第一の溶液の添加後に段階(5)により測定される光信号の差違から決定する。
【0067】
第二の選択肢は、添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である請求項1に記載の測定された第一の光信号の部分が、段階(7b)による第三の溶液の添加後に段階(8)により測定される光信号および段階(4)による第一の溶液の添加後に段階(5)により測定される光信号の差違から決定されることを特徴とする。
【0068】
本発明の方法の前述の好ましい態様とともに、検出されるべき被検体と同一の種類のものである多様な既知濃度の化合物が、塗布される物質に標準として添加される多数のこうした測定領域を含んでなる測定領域のこれらのアレイにより(こうした測定領域の数および前記多様な既知濃度のレベルは、請求項1に記載の段階(4)による特異的結合パートナーとしての結合試薬および場合によっては同様の検出試薬を含有する第一の溶液を添加することの単一段階、ならびに請求項1に記載のその後の段階(5)および(6)によって、アレイ中の検出されるべき前記被検体の未知濃度を測定するための較正曲線を生成するために十分である)、本発明の方法は、前記測定領域について測定された光信号(すなわち測定された第一の光信号)と、添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号の部分の間の差違から、ならびに問題の被検体の較正曲線と前記差違を比較することにより、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(そのサンプルは測定領域に塗布されている)中の被検体の(相対および/若しくは絶対)濃度または(相対および/若しくは絶対)量が測定されることを可能にする。
【0069】
前記方法の段階は例示的態様により詳細に説明されるであろう。
【0070】
その高感度ならびに高い正確性および再現性のおかげで、とりわけ、相互に独立でありかつ同時に若しくは交互に使用し得る多数の照合および較正方法により、本発明の方法はさらに、多様な測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成の多様なサンプル中の
被検体の(相対および/若しくは絶対)濃度または(相対および/若しくは絶対)量の好ましくは20%未満、とりわけ好ましくは10%未満の差違が測定され得るという事実を特徴とする。
【0071】
わずかにのみ変動して得られる測定結果のおかげで、本発明の方法は、生物有機体若しくは細胞培養物の疾病の影響、および/あるいは、例えば生物学的有効成分(薬物)での処置若しくは刺激、または例えば紫外ないし赤外スペクトルの波長の光での照射、放射活性の影響のような外的物理的作用、または熱の影響による生物体若しくは細胞培養物に対する外的影響下での(生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の検出されるべき)被検体の量若しくは濃度の時間経過(すなわちその変化)を研究するのにもまた適する。
【0072】
本発明の方法の別の可能な態様は、従って、サンプルおよび1種若しくはそれ以上の比較サンプルが多様な時点で同一発生部位から得られたこと、ならびに前記サンプル中に存在する1種若しくはそれ以上の被検体の量若しくは濃度の時間とともにの変化が測定されることを特徴とする。「同一発生部位」は、ここで(各場合で、同一の種類かつ異なる長さの疾患若しくは影響後の)同一の生物体若しくは同一の種類の生物体または同一の細胞培養物若しくは同一の種類の細胞培養物を意味している。好ましくは、本発明の方法は、20%未満、好ましくは10%未満の時間で前記被検体の濃度若しくは量の変化が検出されることを可能にする。
【0073】
固体支持体上の研究されるべき生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを固定することの最も単純な形態は、例えば前記固体支持体の表面との疎水性相互作用による物理的吸着である。しかしながら、これらの相互作用の程度は、該過程のさらなる経過の間に塗布されるべき溶液の組成、ならびに、例えば極性およびイオン強度のようなそれらの物理化学特性により大きく変えられ得る。とりわけ、多段階アッセイでの多様な試薬の連続添加の場合、複雑な組成のサンプル若しくはそれらの成分の表面への吸着は、純粋に吸着的な固定後に不十分でありうる。従って、個別の測定領域に塗布されるべきサンプルの吸着を改良するために固体支持体に塗布されている付着促進層が好ましく、その付着促進層にサンプルをその後塗布する。
【0074】
前記付着促進層の厚さは好ましくは200nm未満、とりわけ好ましくは20nm未満である。
【0075】
多数の物質が付着促進層を製造するのに適する。例えば、付着促進層は、シラン、官能性化シラン、エポキシド、官能性化、荷電若しくは極性ポリマーならびに「自己組織化不動態若しくは官能性化単および多層」、チオール、アルキルホスフェートおよびアルキルホスホネート、ならびに例えばポリ(L)リシン/ポリエチレングリコールのような多官能性ブロックコポリマーを含んでなる群の化合物を含みうる。
【0076】
有利には、個別の測定領域間の領域は、結合若しくは検出試薬の非特異的結合を最低限にするために「不動態化される」、すなわち、前記結合試薬および/若しくは検出試薬に対し「化学的に中性」である、すなわちそれらを結合しない成分を、空間的に分離された測定領域の間に塗布する。
【0077】
結合試薬および/若しくは検出試薬に対し「化学的に中性」である、すなわちそれらを結合しない前記化合物は、アルブミン、とりわけウシ血清アルブミンおよびヒト血清アルブミン、カゼイン、非特異的、ポリクローナルおよびモノクローナルの外因性抗体、ならびに検出されるべき被検体(1種若しくは複数)に経験的に非特異的である抗体(とりわけイムノアッセイについて)、洗剤(例えばTween 20のような)、例えばニシン若しくはサケ精子の抽出物のような、分析されるべきポリヌクレオチドとハイブリダイズ
しない断片化された天然および合成のDNA(とりわけポリヌクレオチドハイブリダイゼーションアッセイのため)、ならびにまた例えばポリエチレングリコール若しくはデキストランのような荷電していないがしかし親水性のポリマーの群から選択しうる。
【0078】
多数の既知の方法が、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを、固体支持体若しくは前記支持体に以前に塗布された付着促進層に直接塗布するために適し、その方法は、圧力差または電位若しくは電磁ポテンシャルへの曝露を伴う、例えばインクジェットスポッティング、ピン、ペン若しくは毛細管による機械的スポッティング、ミクロ接触印刷、それらを平行若しくは交差マイクロチャンネルに供給することにより測定領域を前記サンプルと流動的に接触させることを含んでなる方法、ならびに光化学的および写真平版固定法の群から選択し得る。
【0079】
測定領域のアレイは好ましくは個別の測定領域の一若しくは二次元配置である。一般的な固体支持体上の測定領域のアレイ内の測定領域の達成可能な密度および測定領域の数は、使用される塗布方法の空間分解により実質的に決定される。アレイは、典型的には50以上、好ましくは500以上、とりわけ好ましくは5000以上の測定領域を含んでなる。各測定領域はここで、他の測定領域に同一であるか若しくはそれらと異なる固定されたサンプルを含有しうる。アレイの測定領域は、1平方センチメートルあたり10以上、好ましくは100以上、とりわけ好ましくは1000以上の測定領域の密度で配置される。
【0080】
本発明の方法の有利な一態様は、測定領域の多数のアレイが固体支持体上に配置されることを特徴とする。より具体的には、最低5、好ましくは最低50アレイの測定領域を前記支持体上に配置しうる。測定領域の異なるアレイが異なるサンプル容器中に配置される場合がとりわけ有利である。例えば、国際特許出願第WO 01/13096号および同第WO 01/43875号明細書は、底板のようなエバネッセント場センサープラットフォームとして設計された固体支持体を、各場合に測定領域のアレイを受領するためにサンプル容器の適するアレイを生成するための適する上部分と組合せ得る方法を記述する。
【0081】
一般的な連続的固体支持体上に配置されている2〜2000、好ましくは2〜400、とりわけ好ましくは2〜100個のサンプル容器が好ましい。
【0082】
標準的マイクロタイタープレートの格子と適合性である格子すなわち行および/若しくは列の連続に配置されているサンプル容器がとりわけ好ましい。ここで確立された工業標準は、中心がおよそ9mmで間隔を空けられる8×12個のウェルの配置である。同一の間隔を伴う例えば3、6、12、24および48個のサンプル容器を含有するより小さいアレイがこれと適合性である。それらを組合せた後におよそ9mmの前記間隔の整数倍でそれらが間隔を空けられるような方法で、サンプル容器の複数のこうしたより小さいアレイを組合せることもまた可能である。
【0083】
しばらくの間、同様に標準的マイクロタイタープレートと称される、相応して減少されたウェル間隔(それぞれおよそ4.5mmおよび2.25mm)をもつ、同一の基本領域上の96ウェルの整数倍として384および1536ウェルを有するプレートもまた使用されている。本発明のキットの一部としてのサンプル容器の配置もまた前記幾何学的配置に適合しうる。
【0084】
サンプル容器の格子をこれらの標準に適合させることにより、第一、第二若しくは第三の溶液を添加するための多数の商業的に導入されかつ入手可能な実験室ピペッターおよび実験室ロボットを使用することが可能である。
【0085】
本発明の方法のための固体支持体のこうした態様は、「多次元」と称されうる実験概念
を可能にする。すなわち、例えば、例えば異なる生物体からの多様なサンプル(例えば列に対応する)を、多様な希釈(例えば行に対応する)でアレイの行および列に塗布しうる。異なるサンプル容器中の固定されたサンプルを含有する測定領域の多様なアレイをその後、多様なアレイ中の多様な固定された被検体を測定するための結合試薬および適切な場合は検出試薬を含有する、多様な第一および/または第二若しくは第三の溶液と接触させうる。事実上制限されない数の多様な実験を実施するために支持体のこうした変形を使用し得ることが明らかである。
【0086】
固体支持体の多数の態様が本発明の方法に適する。本質的に平面である、個別の測定領域のアレイがその上に生成される固体支持体が好ましい。「本質的に平面」は、例えば、サンプル容器のための装置を生成するための例えばくぼみ若しくは隆起のような、測定領域に面する表面上におそらく生成される構造を別にして、前記表面が、その表面の面のいかなる軸に沿っても1センチメートル伸長あたり100マイクロメートル未満の微視的凹凸を有することを意味している。
【0087】
固体支持体が非多孔質である場合もまた多くの応用に有利である。「非多孔質」は、ここで、前記支持体がいかなる連続的多孔質構造も有さずかつその(微視的)表面粗さが1μm未満であることを意味している。固体支持体の表面粗さは好ましくは20nm未満、とりわけ好ましくは2nm未満である。
【0088】
光学的支持体が、少なくとも、本発明の方法の検出段階の間に測定領域の方向に誘導される励起光若しくは測定光の波長で、本質的に光透過性であることもまた、多くの応用に望ましい。
【0089】
入射「励起光」は、ここで、前記光が、適する検出器を使用して測定し得る、例えば蛍光若しくは一般的発光若しくはラマン放射のような二次放出(包括的に「放出光」と称される)、または例えば金属層中の表面プラズモンの励起のエネルギー源として使用されることを意味している。入射「測定光」は、この光が、被検体検出の目的上、支持体および/またはその上の検出されるべき被検体若しくはそれらの結合パートナーとの相互作用に同様に使用されること、しかし、例えば前記測定光若しくは二次放出のスペクトルの変化は検討されるはずではないが、しかし例えば調節パラメータ(例えばグレーティング構造によっての薄膜導波路へのカップリングのための共鳴角でのような、下を参照されたい)、若しくは前記光の伝達パラメータ(例えば、サンプルを妨害することなく、干渉計の測定路および参照路のような異なる光経路を通って走る光部分間の位相差のような)の変化が測定されることを意味している。
【0090】
特定の波長での物質、層若しくは固体支持体の「本質的に光透過性」は、前記物質若しくは前記層若しくは前記支持体若しくは光導波路として設計された支持体の(高屈折率)導波層中の誘導される光の移動距離が、前記移動距離が前記光の伝達の方向を変えるための構造により制限されない場合に問題の波長で2mm以上であることを意味している。例えば、例えば光学的可視光の移動距離、すなわち、前記光が前記物質に進入した場合の元の強度の1/eの値に光強度が低下されるまでの対応する物質中の前記光の経路の距離は、数センチメートル(例えば薄膜導波路中で)からメートル若しくはキロメートル(光信号伝達のための光導波路の場合)の桁でありうる。薄膜導波路に基づくグレーティング導波路構造の場合、導波層内を誘導される光の伝達ベクトルの長さは、アウトカップリング回折格子(導波層中に設計される、下を参照されたい)により数マイクロメートルに制限されうる。しかしながら、移動距離のこの制限はその場合、構造の物質特性よりむしろ構造体化(structuring)による。本発明により、こうしたグレーティング導波路構造は、グレーティング構造の領域の外側の光の移動距離が2mm以上である場合に「本質的に光透過性」と称する。
【0091】
好ましくは、固体支持体に場合によっては塗布される付着促進層の素材もまた、少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性である。
【0092】
固体支持体の素材は、好ましくは、例えばガラス若しくは石英のようなケイ酸塩、セラミック、金属酸化物、プラスチック、とりわけ例えばポリカーボネート、アクリレート、ポリアクリレート、とりわけポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマーのような熱可塑性物質、ならびにそれらの組合せ(混合物および/若しくは層状構造)を含んでなる群の素材を含んでなる。成型可能、型押可能、射出成型可能および/または混練可能であり、および、発光検出を使用する応用については非常に低い固有の蛍光を有する前記プラスチックが好ましい。少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性という要件を満たす前記素材が好ましい。
【0093】
本発明の方法の多様な応用は、前記支持体が多様な光学特性をもつ複数の層を含んでなることを特徴とする固体支持体の態様を所望する。
【0094】
特定の一態様は、固体支持体が、好ましくは金、銀若しくはアルミニウムを含んでなる薄い金属層を有することを特徴とする。頻繁に、前記金属層と接触している例えば二酸化ケイ素若しくはフッ化マグネシウムの<1.5の屈折率を有するさらなる中間層を含んでなる固体支持体がここで付加的に好ましい。支持体の態様のこの群について、表面プラズモンが入射励起光の波長および/若しくは生成される発光の波長で励起され得るような方法で選択される金属層および可能な中間層の厚さがさらに好ましい。金属層の厚さは、好ましくは10nmと1000nmの間、とりわけ好ましくは30nmと200nmの間である。
【0095】
本発明の方法の大部分の応用は、少なくとも、直接若しくは付着促進層を介してのいずれかで測定領域と接触している固体支持体の層が、少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性であることを所望する。
【0096】
固体支持体は、顕微鏡スライドガラス、マイクロタイタープレート、ナノタイタープレート、フィルター(例えば紙を含んでなる)、メンブレン(例えばニトロセルロースメンブレン)および微小構造化支持体(例えばシリコンから作成されるハネカム構造若しくは多孔構造)を含んでなる群からの構成部品を含みうる。確立されたマイクロタイタープレート(典型的に96、384若しくは1536個のサンプル容器を含有する)に類似の様式で、開放サンプル容器の、しかしより小さい寸法(典型的にミリメートルの代わりにマイクロメートルの桁の)をもつ同様に構成された配置をここでナノタイタープレートと称する。
【0097】
本発明の方法に適する固体支持体のとりわけ好ましい一態様は、固体支持体が、連続的であるか若しくは個別の導波路領域に分割されるかのいずれかでありかつ1個若しくはそれ以上の層を含んでなる光導波路を含んでなることを特徴とする。
【0098】
本発明の方法の1個若しくはそれ以上の検出段階について、励起光若しくは測定光が、1個若しくはそれ以上の多色若しくは単色光源から測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイの1個若しくはそれ以上の測定領域に誘導され、かつ、前記測定領域からの光信号、および/または前記測定領域から発する光信号の変化若しくは差違が、空間分解様式で測定かつ記録されることが好ましい。
【0099】
励起光若しくは測定光は、好ましくは200nmと1200nmの間の波長を有する。
【0100】
狭い放出スペクトルをもつ光源を使用することが好ましい。とりわけ好ましい光源はレーザーダイオードおよびレーザーである。
【0101】
空間分解シグナル検出のため、例えば、CCDカメラ、CCDチップ、フォトダイオードアレイ、アバランシェダイオードアレイ、多チャンネルプレートおよび多チャンネル光電子増倍管を含んでなる群から選択しうる空間分解型検出器を使用することが好ましい。本発明の方法の検出段階に適する光学系およびそれらの構成部品、ならびに光学的検出方法は、例えば、国際特許出願第WO 95/33197号、同第WO 95/33198号および同第WO 96/35940号明細書(それらの内容は本発明の一部としてそっくりそのままここに組込まれる)に記述される。
【0102】
固体支持体の物理的設計に依存して、被検体検出のための測定のためのシグナルを生成することの多様な選択肢が存在する。可能な一変形は、空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、測定領域に面する固体支持体の表面での、若しくは前記固体支持体の前記表面から1μm未満の距離以内の有効屈折率の局所的差違に基づき、その局所的差違は、そこに塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の個別の測定領域に存在する被検体への結合試薬および/若しくは検出試薬の結合により引き起こされることを特徴とする。
【0103】
本発明の方法の本態様の一下位変形(subvariant)は、空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、前記固体支持体の一部としての薄い金属層で表面プラズモンを生成するための共鳴状態の局所的差違に基づくことを特徴とする。
【0104】
表面プラズモン共鳴を生成するため、ならびに発光測定およびまた導波路構造との組合せのための条件は、文献に何度も、例えば米国特許第US 5,478,755号、同第US 5,841,143号、同第US 5,006,716号、および同第US 4,649,280号明細書に記述されている。
【0105】
共鳴角(一定波長の入射光での入射角の変動を伴う)および共鳴波長(一定の入射角および入射励起光の変動を伴う)が、共鳴状態の変化を測定するための測定のため取扱い可能である。従って、一定波長の入射光で、共鳴状態の前記変化は、固体支持体の薄い金属層で表面プラズモンを生成するための入射励起光の共鳴角の測定可能な変化であり得る。対応して、共鳴状態の前記変化はまた、固体支持体の一部としての薄い金属層で表面プラズモンを生成させるための入射励起光の共鳴波長の変化でもあることができ、この場合の入射角(少なくとも、該支持体に向けられたスペクトル可変の入射光の波長で共鳴角に等しくあるべきである)は好ましくは一定に保たれる。
【0106】
固体支持体が、第二の本質的に光透過性の層(b)上に第一の本質的に光透過性の層(a)を有する光薄膜導波路を含んでなり、層(a)が層(b)より高い屈折率を有しかつ直接か若しくは付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで測定領域と接触することを特徴とする本発明の方法の変形がとりわけ好ましい。
【0107】
第二の光透過性の層(b)は、ここで、例えばガラス若しくは石英のようなケイ酸塩、セラミック、金属酸化物、プラスチック、とりわけ例えばポリカーボネート、アクリレート、ポリアクリレート、とりわけポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シクロオレフィンポリマーおよびシクロオレフィンコポリマーのような熱可塑性物質、ならびにそれらの組合せ(混合物および/若しくは層状構造)を含んでなる群の素材を含みうる。成型可能、型押可能、射出成型可能および/または混練可能であり、および発光検出を使用する応用については非常に低い固有の蛍光を有する前記プラスチックがここで再度好ましい
。さらに、少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性という要件を満たす前記素材が好ましい。
【0108】
1.8以上である第一の光透過性の層(a)の屈折率が好ましい。窒化ケイ素、TiO、ZnO、Nb、Ta、HfOおよびZrO、とりわけ好ましくはTiO、Ta若しくはNbの群の素材を含んでなる第一の光透過性の層(a)もまた好ましい。
【0109】
本発明の方法の固体支持体として適する(薄)膜導波路の態様は、例えば国際特許出願第WO 95/33197号、同第WO 95/33198号および同第WO96/35940号明細書に記述される。
【0110】
光導波路を含んでなる固体支持体を有する本発明の方法の態様について、1個若しくはそれ以上の光源からの励起光若しくは測定光が、プリズムカプラ、相互と接触にもたらされた光導波路をもちかつ重なるエバネッセント場を有するエバネッセントカプラ、導波層の一端側の前に配置された集束レンズ、好ましくは筒状レンズを伴う端面カプラ、およびグレーティングカプラの群から選択される1個若しくはそれ以上の光カップリング要素により固体支持体の導波層にカップリングされることが好ましい。
【0111】
あるグレーティング周期およびグレーティング深さを有する表面レリーフグレーティングとして前記導波層中に刻印される1個若しくはそれ以上のグレーティング構造(c)の助けを借りて該固体支持体の導波層にカップリングされる、前記励起光若しくは測定光がとりわけ好ましい。
【0112】
固体支持体の導波層で誘導される光が、前記導波層中に設計されかつグレーティング構造(c)と同一若しくは異なる周期およびグレーティング深さを有する1個若しくはそれ以上のグレーティング構造(c’)の助けを借りてカップリングされる場合もまた有利である。
【0113】
屈折率測定法に基づく本発明の方法の別の変形は、空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、該固体支持体の導波層中に刻印されたグレーティング構造によって前記導波層に1個若しくはそれ以上の光源の励起光若しくは測定光をカップリングするための共鳴状態の局所的差違に基づくことを特徴とする。
【0114】
表面プラズモン共鳴を生成するための共鳴状態の変化を測定することに類似の様式で、共鳴角(一定波長の入射光での入射角の変動を伴う)および共鳴波長(一定の入射角および入射励起光の変動を伴う)が、その中に設計されたグレーティングを介して導波層に光をカップリングするための共鳴状態の変化を測定するための測定のため取扱い可能である。従って、一定波長の入射光で、共鳴状態の前記変化は、固体支持体の導波層に光をカップリングするための共鳴角の測定可能な変化でありうる。対応して、共鳴状態の前記変化は、固体支持体の導波層に光をカップリングするための入射励起光の共鳴波長の変化でもまたあることができ、この場合の入射角(少なくとも、支持体に向けられたスペクトル可変の入射光の波長で共鳴角に等しくあるべきである)は好ましくは一定に保たれる。
【0115】
国際特許出願第WO 01/88511号明細書は、本発明の方法と組合せのための固体支持体としての使用に適するグレーティング導波路構造の多様な態様を詳細に記述する。その中に記述される検出方法は、屈折測定法を使用することの上述された変形のための本発明の方法の検出段階での使用にもまた適する。従って、第WO 01/88511号明細書は本明細の一部としてそっくりそのままここに組込まれる。
【0116】
シグナルの生成技術に関して、本発明の方法の好ましい変形は、空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、そこに塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の個別の測定領域に存在する被検体への結合試薬および/若しくは検出試薬の結合により引き起こされる1個若しくはそれ以上の発光事象の局所的差違若しくは変化に基づくことを特徴とするものである。
【0117】
被検体検出のための多様な放出波長および/若しくは多様な励起スペクトルを有する、好ましくは多様な放出波長および同一の励起波長を有する2種若しくはそれ以上の発光標識の使用がとりわけ有利である。多様なスペクトル特性、とりわけ多様な放出波長をもつ複数の発光標識を、特定領域と接触される多様な結合および/若しくは検出試薬に結合する場合、例えば、単一測定領域内の多様な被検体を単一の検出段階で測定すること(すなわち前記測定領域を前記結合および/若しくは検出試薬と接触させかつ生成される発光事象を同時に若しくはその後検出すること)が可能である。
【0118】
例えば、本発明の方法のこうした一変形は、特異的結合パートナーとしての2種の相応して異なる、例えば(例えば緑色若しくは赤色を発する発光標識で)直接標識された結合試薬の助けを借りて、例えばリン酸化されたおよびリン酸化されない形態の化合物を、とりわけまた単一(共通の)測定領域内で同時に検出するのにとりわけ適する。
【0119】
類似の様式で、異なる放出減衰時間をもつ2種若しくはそれ以上の発光標識を前記被検体検出に使用し、かつ、適する励起時間(すなわちパルス若しくは変調光励起)で、生じる発光事象が、異なる速度で減衰する前記発光事象が識別されることを可能にする時間分解様式で検出される場合に、2種若しくはそれ以上の異なる被検体を単一測定領域内で同時に検出することもまた可能である。
【0120】
有利には、励起光での発光は1fsecと10分の間続くパルスで実施し、また、測定領域から発する光を時間分解様式で測定する。
【0121】
本発明の方法の非常にとりわけ好ましい一態様は、
−固体支持体が、少なくとも入射励起光の波長で本質的に光透過性でありかつ層(a)より低い屈折率を有する第二の層(b)上に、少なくとも入射励起光の波長で本質的に光透過性である第一の層(a)をもつ光薄膜導波路を含んでなり、
−光源の励起光が前記層(a)に刻印されたグレーティング構造(c)によって層(a)にカップリングされ、
−前記励起光が、前記層(a)上で直接か若しくは前記層(a)上の付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで配置される測定領域への誘導波として誘導され、および
発光が可能でありかつ前記層(a)に誘導される光のエバネッセント場で励起されて発光を生じる化合物の発光事象が空間分解様式で測定される
ことを特徴とする。
【0122】
特定の一変形は、ここで、1個若しくはそれ以上の発光事象を測定することに加え、測定領域上の有効屈折率の変化を測定することを含んでなる。
【0123】
感度をさらに向上させるため、該励起波長での1個若しくはそれ以上の発光事象および/若しくは光信号の測定を偏光選択的様式で実施する場合がここで有利でありうる。励起光の偏光と異なる偏光で該1個若しくはそれ以上の発光事象を測定することがここで好ましい。
【0124】
本発明は、さらに、生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の定量的測定のためのマイクロアレイに関し、このマイ
クロアレイは、
−固体支持体、
−各場合で、希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプルが直接か若しくは付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで固定されている、第一の多数の個別の測定領域
を含んでなり、
少なくとも第二の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、その測定領域で、検出されるべき被検体と同一の種類の物質が、生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の第一の多数の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体、および前記第二の多数の個別の測定領域中に存在する検出されるべき前記被検体と同一の種類の物質の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、ならびに場合によっては、必要とされる場合は1種若しくはそれ以上の検出試薬(結合試薬および検出試薬は同時に若しくは連続して塗布されることが可能である)を含んでなる第一の溶液と、前記マイクロアレイを接触することによって適する異なる濃度で固定され、ならびに第一の溶液と接触されている1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発している第一の光信号のその後の空間分解測定、ならびに複雑な組成の固定されたサンプル中の定量的に検出されるべきかつ存在する前記被検体の較正曲線を生成するために前記第一の光信号を記録すること、
ことを特徴とする。
【0125】
第三の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、ここで各場合に希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプル、および、加えて、それに添加される既知の量の、検出されるべき被検体と同一の種類の物質が固定されることが有利でありうる。前記第三の多数は、下の例示的態様でもまた真実であるように、例えば、「回収」の程度を決定することの制御機能に利用しうる。
【0126】
本発明のマイクロアレイのさらなる一開発において、第四の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、ここに、第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質が固定される。
【0127】
第二の多数の測定領域の測定領域が、第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質もまた含んでなることが好ましい。
【0128】
第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質は、アルブミン、とりわけウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、トランスフェリンおよびフィブリノーゲンを含んでなる群に由来し得る。
【0129】
照合目的上使用される、第五の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供されることがさらに好ましい。第五の多数の測定領域の測定領域が、例えばナノ粒子、ビーズ若しくはコロイドの形態の質量標識、ならびに、例えば200nmと1000nmの間の励起および放出波長を伴う量子ドットのような発光色素若しくは発光ナノ粒子の形態の発光標識を含んでなる群から選択される物質を含んでなることがさらに好ましい。
【0130】
本発明の上述の方法(観察されるシグナルの特異的および非特異的結合部分を識別するための)について記述されたとおり、固体支持体およびそれらの改変(例えば付着促進層を塗布することによる)のいかなる態様も本発明のマイクロアレイに適する。本発明のマイクロアレイとともに、本発明の前記方法に記述された、複雑な組成のサンプル、結合試薬、検出試薬および測定領域のアレイのいずれも使用することが同様に可能である。
【0131】
本発明はさらに、以下の段階:
−生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプルを提供する段階、
−複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体と同一の種類の多様な濃度の物質の多数の溶液を提供する段階、
−最低1個の固体支持体を提供する段階、
−希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプルを、固体支持体上に直接、若しくは付着促進層の前塗布後に前記固体支持体上の前記付着促進層にのいずれかで個別の部位に塗布することにより、マイクロアレイの一部として第一の多数の個別の測定領域を生成する段階、
−各場合で、複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体と同一の種類の物質の多様な濃度の少量の多数の溶液を塗布することにより、前記マイクロアレイの一部として第二の多数の個別の測定領域を生成する段階、
−生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の第一の多数の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、および検出されるべき前記被検体と同一の種類の物質(この物質は第二の多数の個別の測定領域に存在し)、ならびに場合によっては、必要とされる場合は1種若しくはそれ以上の検出試薬(結合試薬および検出試薬が同時に若しくは連続して塗布されることが可能である)を含んでなる第一の溶液と、該マイクロアレイを接触する段階、−該マイクロアレイの前記第一および第二の多数の個別の測定領域から発する第一の光信号を空間分解様式で測定する段階、前記第一の多数の個別の測定領域からの前記第一の光信号を、該第一の溶液をその接触することに特徴的なシグナルとして記録する段階、該第二の多数の個別の測定領域からの第一の光信号を、第一の溶液をその接触することに特徴的なシグナルとして、複雑な組成のサンプル中に存在する被検体と同一の種類の物質(その物質は前記測定領域中に存在する)の濃度の関数として記録する段階、
−必要とされる場合はバックグラウンドシグナルの前減算および適する照合後に、第二の多数の個別の測定領域からの記録された光信号から、複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体の較正曲線を生成する段階、
第一の多数の個別の測定領域からの記録された第一の光信号を、必要とされる場合はバックグラウンドシグナルの前減算および適する照合後に、特定の被検体の較正曲線と比較することにより、複雑な組成のサンプル中の検出されるべきかつ存在する被検体を定量的に測定する段階
を含んでなる、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の定量的測定方法に関する。
【0132】
生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の本発明の本定量的測定方法は、請求項1およびその下位請求項に記載の本発明の前述の方法の態様と組合せうる。前記組合せは同様に本発明の一部である。
【0133】
本発明はさらに、製薬学的研究、コンビナトリアル化学、臨床および前臨床開発における有効性決定のための薬物ライブラリーのスクリーニングの過程で化学的、生化学的若しくは生物学的被検体を測定するため、生物学的若しくは化学的マーカー物質(「バイオマーカー」)を同定、検証およびモニターするため、プロテオミクス研究およびシステム生物学においてシグナル伝達経路を同定かつ検証するため、アフィニティースクリーニングおよびとりわけ抗体スクリーニングのため、リアルタイム結合研究、ならびにアフィニティースクリーニングおよび研究における反応速度論的パラメータを決定するため、とりわけDNAおよびRNA分析ならびに例えば一塩基多形のようなゲノム若しくはプロテオーム中のゲノム若しくはプロテオームの差違の決定のための定性的および定量的被検体測定のため、タンパク質−DNAの相互作用を測定するため、mRNA発現およびタンパク質(生)合成の制御機構を決定するため、毒性研究を産み出すため、および発現プロファイルを決定するため、とりわけ外的刺激を伴うおよび伴わない罹病のおよび健全な細胞集団
の細胞発現プロファイルを生じさせることならびにそれらの比較のため、分、時間、日、週、月若しくは年の期間にわたるこうした発現プロファイルの発生を研究するため、mRNA、タンパク質、ペプチド若しくは低分子量有機(メッセンジャー)物質のような生物学的および化学的マーカー物質を測定するため、ならびにまた、製薬学的製品研究および開発、ヒトおよび家畜の診断、農薬製品研究および開発、症候性および前駆症状性植物診断、製薬学的製品開発における患者の層別において抗体、抗原、病原体若しくは細菌を検出するため、ならびに、治療的医薬品の選択のため、とりわけ食品分析および環境分析において病原体、有害物質および病原生物、とりわけサルモネラ、プリオン、ウイルスおよび細菌を検出するための定量および/若しくは定性分析のための、本発明のマイクロアレイおよび/若しくは生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の本発明の定量的測定方法の使用を含んでなる。
【0134】
同一条件下で共通の支持体上で同時に実施し得る研究の多数により、本発明の方法は、共通の特異的結合パートナーについての多様な結合パートナーの、とりわけ共通抗原に対する多様な抗体のアフィニティースクリーニングのため、すなわちアフィニティーを比較するのにとりわけ適する。
【0135】
細胞発現プロファイルを生成することおよびそれらの比較のための本発明の方法の使用もまたとりわけ好ましい。これは、それらの刺激を伴う若しくは伴わない罹病のおよび健全な細胞集団の細胞発現プロファイルの比較にとりわけ関する。「刺激」は、ここで、前記細胞集団への化学的若しくは生化学的化合物の添加、および例えば照射、熱の影響などのような多様な物理的条件でのそれらの処理の双方を意味している。本発明の方法により達成可能な測定結果の高い正確性のおかげで、それは、例えば分、時間、日、週、月若しくは年の期間にわたる前述の条件下での細胞発現の発生を研究するのにもまたとりわけ適する。
【0136】
本発明の方法は、さらに、健全な細胞集団と比較した罹病の細胞集団、野生型細胞集団と比較した変異若しくは改変された細胞集団、またはそれらの刺激若しくは処理により細胞集団に影響することについての情報を提供するのに適する前述の種類の「生物学的若しくは生化学的マーカー物質」を見出すのにとりわけ適する。
【0137】
本発明のマイクロアレイおよび本発明の方法は下に例示的に具体的に説明する。
【実施例】
【0138】
1.被検体およびサンプル
以下の例示的態様において、検出されるべき被検体は、細胞内Aktシグナル経路のマーカータンパク質「Akt」、およびこのタンパク質の2種の異なって活性化された(リン酸化)形態である。Aktはタンパク質キナーゼであり、そして例えばグルコース代謝、細胞の成長、細胞分化およびプログラムされた細胞死(アポトーシス)のような多数の生理学的過程で重要な役割を演じている。Aktは多様なアミノ酸側鎖、とりわけセリン473およびトレオニン308のリン酸化を介して活性化される。前記Aktシグナル経路の誤調節およびそれから生じるプログラムされた細胞死の阻害は癌の発症において決定的役割を演じており、その結果としてこのマーカータンパク質は治療上非常に興味深い。
【0139】
Aktおよびそのリン酸化された形態、P−Akt(Ser473)およびP−Akt(Thr308)の分析的検出は、リン酸化のその程度に依存せずに該タンパク質に、または特定のリン酸化された形態にのみ、例えばP−Akt(Ser473)にのみ若しくはP−Akt(Thr308)にのみのいずれかに結合する多様な特異的抗体によって実施する。従って、3種の異なる抗体を塗布することによってサンプルを測定することにより、全Akt含量およびその修飾された形態の特定の含量を検出することが可能である。
【0140】
Aktおよびそのリン酸化された形態の検出は、本例示的態様で、尿素および洗剤を含有する高度に変性する溶解緩衝液中で調製されかつその中に存在する細胞のプロテオーム全体を含有したラット心組織の未濾過ライセートで実施する。さらに、Aktを含有しないラット血清を溶解緩衝液中で調製した。
【0141】
2.本発明の方法で使用される支持体
各場合で幅14mm×長さ57mm×厚さ0.7mmの寸法を有する、本発明の方法に使用される固体支持体は、各場合で、本質的に光透過性の層(b)としてガラス支持体(AF45)および本質的に光透過性の層(a)としてそれに塗布された厚さ150nmの五酸化タンタルの高度に屈折性の層を含んでなる薄膜導波路として設計されている。前記ガラス支持体中で、その長さに平行に、9mmで間隔を空けられた2個の表面レリーフグレーティング(グレーティング周期:318nm、グレーティング深さ:(12±2)nm)を変調する。前記高度に屈折性の層の後塗布の間に、高度に屈折性の層(a)に光をカップリングするための回折格子として使用されるはずであるこれらの構造を、五酸化タンタル層の表面に移す。
【0142】
こうした薄膜導波路は、表面に接近した結合事象がバックグラウンドシグナルに対する測定シグナルの高い比で検出されることをそれらが可能にして、深い検出限界を達成することを可能にするため、とりわけ本発明の方法に十分に適する。しかしながら、原則として、例えば顕微鏡スライドガラス若しくは他のマイクロタイタープレートのような上で挙げられたところの固体支持体のいかなる他の態様もまた本発明の方法に適する。
【0143】
支持体を慎重に精製した後、モノドデシルリン酸(DDP)の単層を、水性溶液(0.5mM DDP)からの堆積によって、付着促進層として、自発的自己集合により金属酸化物層の表面上で生成する。前は親水性の金属酸化物表面の前記表面改変は、特異的結合パートナーとしての被検体を含有する生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルが特異的結合反応での被検体検出のためその上に塗布されることになる疎水性表面(水に関して約100°の接触角をもつ)をもたらす。
【0144】
3.測定領域のアレイの試薬および生成
被検体への非特異的結合により引き起こされるシグナル部分を測定するための競合実験(下を参照されたい)のため、被検体としての生物学的起源かつ複雑な組成の固定したサンプル中の検出されるべきかつ存在するAkt(「内因性Akt」)の溶液中の競合体として、精製Akt(Pharmacia Italia Spa、イタリア・ミラノ)を使用する。前記精製Aktは、塗布されるべき多様な組成の異なる固定溶液中の添加によって較正曲線を生成するのにもまた使用する。
【0145】
固体支持体に塗布されるべき生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルをそれから調製するサンプルのストック溶液(溶解緩衝液中のラット心組織のライセート)、およびラット心組織ライセートから調製されるサンプルのサンプルマトリックスに匹敵する組成をもつ媒体としてのラット血清の総タンパク質濃度を、改変ブラッドフォードアッセイ(PIERCE Coomassie Plusキット(PIERCE #23238)の助けを借りて測定し、そしてそれぞれ17.3mg/mlおよび54.0mg/mlである。
【0146】
同様に尿素を含有するがしかし洗剤を含まない第二の緩衝液(「スポッティング緩衝液」)でのさらなる希釈は、ストック溶液に比較して希釈した溶液のタンパク質組成を変えることなく、個別の測定領域への塗布のための多様な総タンパク質含量(0.025mg/ml、0.050mg/ml、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml)をもつラット心組織ライセートの溶液を生じ
る。多様な総タンパク質濃度の得られる溶液は、研究されるべき生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(他の添加された補助物質を含まない)を表す。
【0147】
さらに、同一の総タンパク質濃度(0.025mg/ml、0.050mg/ml、0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml)を有するがしかし付加的に各場合で1000ng/ml Aktを含有するラット心組織ライセートの溶液を調製する。これらの溶液から生成されるはずである測定領域は、(Akt若しくはそのリン酸化された形態の)被検体検出が特定の測定領域中の総タンパク質濃度に独立であるかどうかを試験するために使用されることになる。
【0148】
さらに、Aktおよびそのリン酸化された形態の較正曲線を生成するために、スポッティング緩衝液中の精製Aktの溶液(0ng/ml、1ng/nl、3ng/ml、10ng/ml、30ng/ml、100ng/ml、300ng/ml、1000ng/ml、3000ng/ml)を、各場合で0.1mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)の添加を伴い調製する。BSAはここで、Aktが固定溶液の前記多様な濃度に従い支持体上で個別の測定領域に固定されるはずである、均質かつAktを含まないサンプルマトリックスとしてはたらく。
【0149】
Aktおよび挙げられるリン酸化された形態の較正曲線を同様に生成するために、異なるサンプルマトリックス中であるが、同一の精製Akt含量(0ng/ml、1ng/nl、3ng/ml、10ng/ml、30ng/ml、100ng/ml、300ng/ml、1000ng/ml、3000ng/ml)を伴う溶液を、スポッティング緩衝液中で、しかし0.1mg/ml BSAの代わりに0.1mg/mlラット血清の添加を伴い調製する。ラット血清は、ここで、ラット心組織に類似であるがしかしAktを含まずかつAktが固定溶液の前記多様な濃度に従い支持体上の個別の測定領域に固定されるはずである、不均質なサンプルマトリックスとして使用される。
【0150】
各場合で、順に各場合で14行および16列の配置にあるそれぞれ224個の測定領域(スポット)の6個の同一のマイクロアレイを、インクジェットスポッター(GeSIM、独国グロースエルクマンズドルフ)を使用して、疎水性の付着促進層を提供された支持体に塗布する。各スポットは、容量が約400plの単一液滴を支持体の表面に塗布することにより生成する。各場合で、2個の同一の測定領域(2個の複製スポット)を溶液あたりに生成する。さらに、陰性対照のため、スポッティング緩衝液を含有するがしかし成分としていかなるタンパク質も含まない測定領域もまた生成する。
【0151】
前述の「サンプルスポット」は別にして、該マイクロアレイは各場合に「参照スポット」もまた含んでなる。すなわち、各マイクロアレイ内で、Cy5で蛍光標識したウシ血清アルブミン(Amersham)(Cy5−BSA、標識率:BSA1分子あたり3個のCy5分子)を224個の測定領域それぞれの一部に固定する。これらの測定領域は、個々のアレイ内およびまた異なるアレイ間の励起光強度の局所的差違を照合するために使用する(「参照スポット」)。Cy5−BSAは、各場合に、尿素を含有するスポッティング緩衝液中0.5nMの濃度で前記測定領域に塗布する。
【0152】
各場合で同一のアレイの測定領域の幾何学的配置を図1に描きかつ表1に具体的に説明する。
【0153】
測定領域のアレイの調製が完了した後、支持体の自由な(タンパク質で覆われない)疎水性表面領域を、該表面をウシ血清アルブミン(BSA)含有緩衝溶液と30分間インキュベートすることにより、使用されるべき結合試薬および/若しくは検出試薬に対し「化学的に中性」である、すなわちそれらを結合しない成分としてのBSAでそれらを飽和す
ることにより不動態化する。測定領域がその上に生成された支持体を水(18MΩ・cm)で洗浄し、そして最後に窒素流中で乾燥し、そして本発明の検出方法を実施するまで4℃で保存する。
【0154】
4.本発明の方法を実施するためのアッセイの設計
本発明の方法をさらに実施するため、測定領域のアレイを提供された支持体を、各場合で、測定領域のアレイがその中に配置された6個のサンプル容器(各場合の内容量:15μl)の直線的配置を生成するために上部分と結合する。サンプル容器のこうした配置は、国際特許出願第WO 01/43875号および同第WO 02/103331号明細書(それらの内容は本発明の一部としてそっくりそのままここに組込まれる)に記述される。
【0155】
被検体検出段階(本発明の方法の段階(4)による)を、2個の下位段階(そのそれぞれで測定領域のアレイあたり1種の被検体を検出する)で実施する。
【0156】
4.1.競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
第一の下位段階で、測定領域のアレイを、(リン酸化されたおよびリン酸化されない形態の間を識別することなく)全Aktを検出するための結合試薬としての一次抗体(「抗Akt」(#9272))、リン酸化P−Akt(Ser473)を検出するための「抗P−Akt(Ser473)」(#9271)、リン酸化P−Akt(Thr308)を検出するための「抗P−Akt(Thr308)」(#9275)(全部の抗体はCell Signaling Technologies、米国ビバリーから)の溶液と、各場合に、アッセイ緩衝液中ストック溶液の500倍希釈(およそ5nMに対応する)中で、サンプル容器中室温で一夜インキュベートする。
【0157】
結合されない結合試薬を除去するための各場合で200μlのアッセイ緩衝液での洗浄段階後に、測定領域のアレイを、第二の下位段階で、各場合で検出試薬すなわち蛍光標識Alexa Fluor 647抗ウサギFabフラグメント(Molecular Probes;米国ユージーン)と、同様にアッセイ緩衝液中ストック溶液の500倍希釈中、室温で暗所で60分間インキュベートする。測定領域のアレイをその後、結合されない検出試薬を除去するために各場合で200μlのアッセイ緩衝液で再度洗浄する。上部分およびこうして生成された緩衝液で満たされたサンプル容器と接続した、これらの工程段階にかけた支持体をその後、励起およびZeptoREADERTMでの生じる蛍光シグナルの検出による検出段階(下を参照されたい)まで保存する。
【0158】
4.2.競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
対応して、被検体検出は、同様にその上に存在する測定領域のアレイを伴う固体支持体への添加の2個の下位段階で、使用される結合試薬、および適切な場合は付加的な検出試薬への特異的結合に対する被検体と同一の種類の競合体の存在下で実施する。すなわち、第一に、結合試薬の溶液(「抗Akt」、「抗P−Akt(Ser473)」若しくは「抗P−Akt(Thr308)」、各場合でおよそ5nM)を、各場合で約20倍過剰のAkt(100nMに対応する5μg/ml)と前インキュベートする。被検体特異的抗体の全部の抗原結合部位は、ここで、対応する競合体により占有されることが期待され、その結果として、結合試薬の特異的結合部位は測定領域中の被検体分子との反応にもはや利用可能でない。こうして調製したAkt含有溶液をその後、4.1.の第一の下位段階に類似の様式で、各場合に、4.1.で使用した測定領域のアレイのような測定領域の別のしかし同一のアレイをもつ別のサンプル容器に導入し、そしてそれと一夜インキュベートし、次いで洗浄段階、検出試薬を添加することのその後の下位段階、および4.1.に記述されるところのさらなる下位段階が後に続く。本節4.2.による手順は本発明の方法の下位段階(7a)に対応する。
【0159】
4.3.競合体としてのサンプルマトリックス様物質の添加を伴う結合試薬の使用
4.1.および4.2.に類似の様式で、被検体検出を、サンプルマトリックス中に存在する物質に同一若しくは可能な限り類似でありかつ結合試薬の非特異的結合について測定領域中に固定されたサンプルマトリックス成分の競合体として使用する、結合試薬に付加的に添加される物質の存在下で実施する。この目的上、結合試薬の溶液(「抗Akt」、「抗P−Akt(Ser473)」若しくは「抗P−Akt(Thr308)」、各場合でおよそ5nM)を、各場合で0.1mg/mlラット血清と前インキュベートする。こうして調製した血清含有溶液をその後、4.1.の第一の下位段階に類似の様式で、各場合に、4.1.で使用した測定領域のアレイのような測定領域の別のしかし同一のアレイをもつ別のサンプル容器に導入し、そしてそれと一夜インキュベートし、次いで洗浄段階、検出試薬を添加することのその後の下位段階、および4.1.に記述されるところのさらなる下位段階が後に続く。本節4.3.による手順は本発明の方法の下位段階(7b)に対応する。
【0160】
5.測定領域のアレイからの蛍光シグナルの励起および検出
測定領域の多様なアレイからの蛍光シグナルは、ZeptoREADERTM(Zeptosens AG、CH−4108 スイス・ヴィッテルスヴィル)を使用して連続してかつ自動で測定する。この光学系は、国際特許出願第PCT/EP 01/10012号明細書(本出願の一部としてそっくりそのままここに組込まれる)により詳細に記述されている。
【0161】
6.画像解析および照合
測定領域(スポット)からの蛍光シグナルは画像解析ソフトウェア(ZeptoVIEWTM、Pro 2.0 リリース2.0、Zeptosens AG、CH−4108
ヴィッテルスヴィル)の助けを借りて測定し、これによりその隣接環境での各スポットの平均シグナル強度および平均局所バックグラウンドシグナル強度を決定する。バックグラウンド補正した平均の正味のシグナル強度を、問題のスポットの平均測定総シグナル強度から平均局所バックグラウンドシグナルを減算することにより、各スポットについて決定する。
【0162】
全スポット正味のシグナル強度の照合は、各場合でCy5−BSA参照スポットの助けを借りて実施する。この目的上、「サンプルスポット」の正味のシグナル強度を、1行内の2個の最も近い隣接する「参照スポット」の平均シグナル強度により除算し、このシグナル強度を特定の「サンプルスポット」の位置に外挿する。前記照合は、測定領域の各アレイ内および異なるアレイ間の利用可能な励起光強度の局所的差違を相殺する。
【0163】
(各場合に2個の同一の測定領域の)スポット複製物の照合した正味シグナル強度を最後に平均し、そして、対応する図に「RFI」データ点(参照蛍光強度)として描き、示されるエラーバーは特定の標準偏差に対応する。
【0164】
7.本発明の方法の実施および結果
7.1.全Akt含量の測定
7.1.1.Aktを検出するための較正曲線
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
各場合で、測定領域の2区分を、キナーゼAktの較正曲線を生成するために測定領域の同一アレイに提供する(図1を参照されたい)。すなわち、
区分1:0.1mg/ml BSAを付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号1〜9をもつアレイ行IおよびII、
区分2:0.1mg/mlラット血清を付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号13〜21をもつアレイ行IIIおよびIV。
【0165】
抗Aktの溶液(5nM)を、測定領域の第一のアレイを含有する第一のサンプル容器に添加する。さらなる工程下位段階は以前に4.1.に記述した。測定領域の区分1(スポッティング緩衝液に添加した多様な濃度のAktおよび0.1mg/ml BSAを含有する溶液で生成される)(■により表される)および測定領域の区分2(スポッティング緩衝液に添加した多様な濃度のAktおよび0.1mg/mlラット血清を含有する溶液で生成される)(●により表される)の較正曲線を図2に描く。
【0166】
30ng/ml Aktより上の濃度で、共固定したBSAおよび共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は同一であり;30ng/mlより下の濃度で、共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は、共固定したBSAを含むものより高いシグナル値を有する。シグナルの差違は、固定されたラット血清の成分への結合試薬の非特異的結合の寄与に帰される。なおより高濃度のラット血清を固定溶液に添加する場合、生成する固定溶液にBSAのみを添加した測定領域でのシグナルの差違はなおより顕著である。
【0167】
ラット心組織から調製したサンプル中の未知のAkt濃度を測定するため、BSAのみを添加した固定溶液の助けを借りて生成した較正曲線を利用する。前記曲線は、30ng/mlより下の低Akt濃度でさえ濃度が測定されることを可能にするからである。
【0168】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
異なるサンプルマトリックスをもつ固定溶液を使用して確立した較正曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を試験するため、結合試薬としての「抗Akt」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMの濃度に対応する5μg/ml)との混合物を、最初に研究したアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第二のサンプル容器に導入し、そして4.2.で記述されたとおり前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたAktへの抗体の特異的結合による引き起こされるシグナルの部分が完全に消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0169】
期待されるとおり、測定の正確性内の(特異的結合により引き起こされる)シグナルの完全な抑制が、内因性Aktを測定するための適切な濃度範囲内すなわち100ng/mlより下(図2の白記号により表される)で観察される。固定溶液がラット血清を含有した測定領域からのシグナル(○により表される)は、サンプルマトリックス成分への非特異的結合の期待される異なる比率により、規定されるAkt濃度は別にしてその固定溶液がBSAのみを含有した測定領域のシグナル(□により表される)より高い。最高のAkt濃度(固定溶液中1000ng/mlおよび3000ng/ml)で観察されたシグナルの増大は、これらの条件下での溶液中の競合体濃度が、固定されたAktへの結合試薬の特異的結合を完全に予防するために見かけ上十分でないという事実に帰される。
【0170】
c)競合体としてのサンプルマトリックス様物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる非特異的結合の部分を確認するため、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3.の手順により、前述の第一および第二のアレイと再度同一の測定領域の配置の第三のアレイをもつ第三のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたAktへの特異的結合により生成されるシグナルの部分が保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0171】
図3は、結合試薬の競合体の添加を伴わない第一のアレイを使用して生成された、節7.1.1.a)で記述された較正曲線を再度黒記号により描く。これらの較正曲線からの、結合試薬としての抗体のラット血清含有溶液の添加により第三のアレイを使用して得られるシグナル(□により表される)の逸脱は、測定し得ない。
【0172】
これは、「抗全Akt」抗体の場合には、生成される較正曲線が高い正確性で特異的結合事象に対応し、そしてサンプルマトリックスへの非特異的結合が非常に小さな程度までのみ起こることを示唆する。
【0173】
7.1.2.ラット心組織から調製したサンプル中での全Akt含量の測定
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
ラット心組織から調製した生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の全Akt含量の検出を、測定領域内容番号25ないし31により示される測定領域のセグメントで実施する。前記測定領域を生成するために生成した固定溶液は同一ストック溶液からであり、そして、希釈(節3.を参照されたい)により多様な総タンパク質濃度(0.025mg/mlと0.5mg/mlの間)に調節した。
【0174】
測定領域内容番号37ないし43をもつ測定領域の区分は、ラット心組織ライセートからのストック溶液の同一の連続希釈からの、しかし各場合で固定サンプルに添加されている1000ng/mlの濃度の精製Aktを含む固定サンプルを塗布することにより生成した。この区分の助けを借りて測定されるべきシグナルは、使用されるこの高Akt濃度(期待される天然の内因性Akt含量より実質的により高い)が、再度、測定されるべき蛍光シグナルを、同一総タンパク質濃度(0.1mg/ml)をもつ較正曲線(共固定したBSAを含む測定領域を使用して確立した)と比較することにより見出されるかどうかを制御するために使用されるはずである。
【0175】
該測定は、測定領域の第一のアレイを含有する第一のサンプル容器に「抗Akt」の溶液(5nM)を添加することによって、7.1.1.aで記述される本発明の方法の一部とともに実施する。さらなる工程の下位段階は以前に4.1.に記述した。
【0176】
図4は該結果(参照蛍光強度)を描く。ラット心組織から調製した固定溶液を塗布した測定領域からの蛍光シグナルを総タンパク質濃度の関数として描き(図4、上座標軸)、また、共固定したBSA(タンパク質濃度:0.1mg/ml)での較正測定の参照蛍光シグナルを、これらの測定領域に利用した固定溶液のAkt濃度の関数として描く(図4、下座標軸)。
【0177】
添加されたAktを伴わない(すなわち、固定されたサンプル中に天然に存在する内因性Aktを含む)測定領域からのシグナルは、期待されたとおり、増大するタンパク質濃度とともに当初は増大し、そして0.2mg/mlのタンパク質濃度から上で最大値に達する。飽和効果と同様、タンパク質濃度をさらに増大させることでさらなるシグナル増大は観察されない。
【0178】
1000ng/mlの添加されたAktを含有する(すなわち、固定されたサンプル中に天然に存在する内因性Aktおよび付加的に1000ng/ml精製Aktを含む)測定領域からのシグナルは、対応して非常に高い値に達する。サンプルに添加された1000ng/mlのAkt濃度は回収され得、そして、比較可能な総タンパク質濃度(0.1mg/ml、0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、1000ng/mlの添加されたAktを含む測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)で同時に生成される較正曲線と該
シグナル値を比較することにより、(840±70)ng/mlに決定し得る。84%という達成される回収率若しくは8%という精度は、アッセイでの80〜120%の回収率若しくは20%以上の精度という一般に耐えられる限界の範囲内にある。本実施例は、従って、被検体の測定が良好なアッセイの正確性および精度を伴い実施し得ることを示す。高い回収値は、同様に、(タンパク質マトリックスとしての)固定溶液に添加した0.1mg/ml BSAを含む測定領域で生成される測定曲線が、ラット心組織ライセートを含有する溶液から調製したスポットのデータを較正するのに十分に適することを確認する。
【0179】
(20±2)ng/mlの内因性Aktの含量が、0.1mg/mlのタンパク質含量を伴うラット心組織から調製したサンプルについて、較正曲線(0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、内因性Aktのみを含有する測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)との比較により決定される。
【0180】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスとしてのラット心組織に基づく固定溶液を使用して生成された測定領域からの測定曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を決定するため、結合試薬としての「抗Akt」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMの濃度に対応する5μg/ml)との混合物を、当初研究したアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第二のサンプル容器に導入し、そして4.2.で記述されたとおり前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたAktへの抗体の特異的結合により引き起こされるシグナルの部分は完全に消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0181】
図5は、競合実験の結果を、上で7.1.2.a)で記述された結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない対応する測定の結果と一緒に描く。黒記号は各場合で競合体の存在を伴わない結果(第一のアレイで測定される)を示し、そして白記号は競合体の存在下で測定されたシグナル(第二のアレイで測定される)を示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加された精製Aktを含む(測定領域内容参照番号37ないし43)測定領域双方の天然に存在する内因性Aktを測定することから、図1による)を、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図5、上座標軸)。Akt(固定溶液中に0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.1.1.で記述された較正曲線を、Akt濃度の関数としてプロットする(図5、下座標軸)。
【0182】
競合体の存在下で、内因性Aktを測定するための測定領域からのシグナルが明瞭に低下される。競合体の非存在および存在下での測定曲線間の差違は、特異的結合により引き起こされるシグナルの部分を表す。
【0183】
参照蛍光シグナルのなおより明瞭な低下が、固定溶液が過剰のAkt(1000ng/ml)を付加的に含有した測定領域について観察される。測定領域の2区分(内因性Aktを測定するため、および固定溶液中に1000ng/ml Aktを含む対照測定のため)からの、溶液中の競合体としての100nM Aktの存在下で生成した測定曲線は正確に一致する。0.3mg/mlのタンパク質濃度まで増大しかつその後一定のまま留まる残存するシグナル(白記号)は、(サンプルマトリックスのタンパク質への)非特異的結合によるシグナルの寄与に対応し、この寄与は、測定領域の表面が完全に覆われるまで、タンパク質の増大する表面濃度に伴い自然に増大する。
【0184】
図6は、溶液中の競合体の非存在および存在下でのデータを比較することからの、0.1mg/mlのタンパク質濃度で特異的結合により引き起こされるシグナル部分の決定(図6a)、ならびに特異的結合(「SB」)により引き起こされるシグナル部分を較正曲線と比較することからの内因性Aktの含量の決定(図6b)を具体的に説明する。非特異的結合(「NSB」)により引き起こされるシグナル部分(0.20RFI)は、測定の正確性内で、内因性Aktのみを含有する測定領域からのシグナル(0.373RFI)および付加的に添加された1000ng/ml精製Aktを含有するもの(およそ20RFI)について同一の大きさのものである。(8.8±1.3)ng/mlの内因性Aktの含量が、総シグナルと非特異的に引き起こされたシグナルの間の差違を較正曲線と比較することにより決定される(図6b)。非特異的結合により生成されるシグナル部分が識別されなかった、節7.1.2.a)でのAktの測定との比較は、そこで暫定的に測定されたAkt含量の約56%が非特異的結合の寄与に帰されなければならないことを示す。
【0185】
c)競合体としてのサンプルマトリックスに類似の物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる非特異的結合の部分を確認するために、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3の手順に従い、再度、前述の第一および第二のアレイと同一の測定領域の配置の第三のアレイをもつ第三のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたAktへの特異的結合により生成されるシグナルの部分が保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0186】
溶液中にラット血清を含む競合実験の結果を、結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない、7.1.2.a)で上述された対応する測定の結果と一緒に図7に描く。黒記号は、各場合で、(第一のアレイで測定された)競合体の存在を伴わない結果を示し、また、白記号は(第三のアレイで測定された)競合体の存在下で測定されたシグナルを示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した測定領域からの蛍光シグナル(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加されたAktを含む(測定領域内容参照番号37ないし43)双方の天然に存在する内因性Aktを測定するため、図1による)を、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図7、上座標軸)。Akt(固定溶液中に0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.1.1.に記述された較正曲線を、Akt濃度の関数としてプロットする(図7、下座標軸)。
【0187】
非特異的結合に対する競合体としての溶液中のラット血清の存在は、測定曲線のいかなる有意の移動ももたらさず;ラット血清の存在および非存在下で測定される参照蛍光シグナルは、各場合に測定の正確性内で同一である。
【0188】
これは、「抗全Akt」抗体の場合に、サンプルマトリックスへの有意の非特異的結合が存在しないことを示唆する。
【0189】
7.2.P−Akt(Ser473)含量の測定
7.2.1.P−Akt(Ser473)を検出するための較正曲線
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
リン酸化された形態P−Akt(Ser473)を測定するための較正曲線は、Aktの上述された測定の様式で同一測定領域の区分を使用することにより確立する。
区分1:0.1mg/ml BSAを付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号1〜9をもつアレイ行IおよびII、
区分2:0.1mg/mlラット血清を付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号13〜21をもつアレイ行IIIおよびIV。
【0190】
精製Aktは、完全にリン酸化されている、すなわちSer473およびThr308でリン酸化されていると想定する。
【0191】
抗P−Akt(Ser473)の溶液(5nM)を、測定領域の第四のアレイを含有する第四のサンプル容器に添加する。他の工程の下位段階は以前に4.1.で記述した。測定領域の区分1(スポッティング緩衝液に添加した多様な濃度のAktおよび0.1mg/ml BSAを含有する溶液を使用して生成される)、ならびに測定領域の区分2(スポッティング緩衝液に添加した多様なAkt濃度および0.1mg/mlラット血清を含有する溶液を使用して生成される)の較正曲線を図8に描く(黒記号)。
【0192】
10ng/ml Aktより上の濃度で、共固定したBSAおよび共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は同一であり;10ng/mlより下の濃度で、共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は、共固定したBSAを含むものより高いシグナル値を有する。シグナルの差違は、固定されたラット血清の成分への結合試薬の非特異的結合の寄与に帰される。なおより高濃度のラット血清を固定溶液に添加する場合、生成する固定溶液にBSAのみが添加された測定領域でのシグナルの差違はなおより顕著である。
【0193】
ラット心組織から調製したサンプル中の未知のP−Akt(Ser473)濃度を測定するため、BSAのみを添加した固定溶液の助けを借りて生成した較正曲線を利用する。前記曲線は、10ng/mlより下の低Akt濃度ででさえ濃度が測定されることを可能にするからである。
【0194】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
異なるサンプルマトリックスをもつ固定溶液を使用して確立された較正曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を試験するために、結合試薬としての「抗P−Akt(Ser473)」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMに対応する5μg/ml)との混合物を、以前に研究されたアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第五のサンプル容器に導入し、そして4.2.に記述されたとおり、前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Ser473)への抗体の特異的結合により引き起こされるシグナルの部分は消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0195】
期待されるとおり、測定の正確性内の(特異的結合により引き起こされる)シグナルの完全な抑制が、内因性P−Akt(Ser473)を測定するための適切な濃度範囲内すなわち100ng/mlより下(図8の白記号)で観察される。固定溶液がラット血清を含有した測定領域からのシグナルは、サンプルマトリックス成分への非特異的結合の期待される異なる部分により、その固定溶液が規定されるAkt濃度は別にしてBSAのみを含有した測定領域のシグナルより高い。
【0196】
最高のP−Akt(Ser473)濃度(固定溶液中1000ng/mlおよび3000ng/ml)で観察されたシグナルの増大は、これらの条件下での溶液中の競合体濃度が、固定されたP−Akt(Ser473)への結合試薬の特異的結合を完全に予防するために見かけ上十分でないという事実に帰される。
【0197】
c)競合体としてのサンプルマトリックス様物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる非特異的結合の
部分を確認するため、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3の手順に従い、再度前述のアレイと同一の測定領域の配置の第六のアレイをもつ第六のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Ser473)への特異的結合により生成されるシグナルの部分は保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0198】
図9は、結合試薬の競合体の添加を伴わない第四のアレイを使用して生成された、節7.2.1.a)で記述された較正曲線を再度黒記号により描く。これらの較正曲線からの、結合試薬としての抗体のラット血清含有溶液の添加により第六のアレイを使用して得られたシグナルの逸脱は、測定され得ない。
【0199】
これは、「抗P−Akt(Ser473)」抗体の場合に、生成される較正曲線が高い正確性を伴い特異的結合事象にもまた対応し、また、サンプルマトリックスへの非特異的結合が非常に小さな程度までのみ起こることを示唆する。
【0200】
7.2.2.ラット心組織から調製したサンプル中のP−Akt(Ser473)含量の測定
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
ラット心組織から調製した生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中のP−Akt(Ser473)含量の検出を、測定領域内容番号25ないし31により示される測定領域の区分で実施する。前記測定領域を生成するために生成した固定溶液は同一ストック溶液からであり、そして多様な総タンパク質濃度(0.025mg/mlと0.5mg/mlの間)への希釈(節3.を参照されたい)により調節した。
【0201】
測定領域内容番号37ないし43をもつ測定領域の区分を、ラット心組織ライセートからのストック溶液の同一の連続希釈からの、しかし各場合に固定サンプルに添加されている1000ng/mlの濃度の精製Aktを含む固定サンプルを塗布することにより生成した。この区分の助けを借りて測定されるべきシグナルは、使用される高「全Atk」濃度(期待される天然の内因性Akt含量より実質的により高い)に対応する高P−Akt(Ser473)含量が、同一の総タンパク質濃度(0.1mg/ml)をもつP−Akt(Ser473)の較正曲線(共固定したBSAを含有する測定領域を使用して確立した)と測定されるべき蛍光シグナルを比較することにより回収されるかどうかを制御するために使用されるはずである。
【0202】
該測定は、測定領域の第四のアレイを含有する第四のサンプル容器に「抗P−Akt(Ser473)」の溶液(5nM)を添加することによって、7.2.1.aで記述される本発明の方法の一部とともに実施する。さらなる工程の下位段階は以前に4.1.で記述した。
【0203】
図10は該結果(参照蛍光強度)を描く。ラット心組織から調製した固定溶液を塗布した測定領域からの蛍光シグナルを総タンパク質濃度の関数として描き(図10、上座標軸)、また、共固定したBSA(タンパク質濃度:0.1mg/ml)での較正測定の参照蛍光シグナルの値を、これらの測定領域に利用した固定溶液のP−Akt(Ser473)濃度の関数として描く(図10、下座標軸)。
【0204】
添加されたAktを伴わない(すなわち、固定されたサンプル中に天然に存在する内因性P−Akt(Ser473)を含む)測定領域からのP−Akt(Ser473)のシグナルは、期待されたとおり、増大するタンパク質濃度とともに当初は増大し、そして0.2mg/mlのタンパク質濃度から上で最大値に達する。飽和効果と同様、タンパク質
濃度をさらに増大させることでさらなるシグナル増大は観察されない。
【0205】
1000ng/mlの添加されたP−Akt(Ser473)を含有する(すなわち、固定されたサンプル中に天然に存在する内因性P−Akt(Ser473))および付加的に1000ng/ml精製P−Akt(Ser473)を含む)測定領域からのシグナルは、対応して非常に高い値に達する。これは、較正曲線を生成するのに利用される精製Aktが完全にリン酸化される、すなわちSer473およびThr308でリン酸化されることを必要とする。サンプルに添加された1000ng/mlのP−Akt(Ser473)濃度は回収され得、そして、比較可能な総タンパク質濃度(0.1mg/ml、0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、1000ng/mlの添加されたP−Akt(Ser473)を含む測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)で同時に生成される較正曲線と該シグナル値を比較することにより、(870±100)ng/mlに決定し得る(点線を参照されたい)。92%という達成される回収率。該高い回収値は、同様に、(タンパク質マトリックスとしての)固定溶液に添加された0.1mg/ml BSAを含む測定領域で生成される測定曲線が、ラット心組織ライセートを含有する溶液から調製したスポットのデータを較正するのに十分に適することを確認する。
【0206】
(12±2)ng/mlの内因性P−Akt(Ser473)の含量が、較正曲線(0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、内因性P−Akt(Ser473)のみを含有する測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)との比較により、ラット心組織から調製したサンプルについて測定される。これは、較正曲線を生成するのに利用される精製Aktが完全にリン酸化される、すなわちSer473およびThr308でリン酸化されることを必要とする。精製AktのP−Akt(Ser473)部分が100%未満である場合、ラット心組織から調製したサンプル中のこの測定の値は従って低下される。
【0207】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスとしてのラット心組織に基づく固定溶液を使用して生成された測定領域からの測定曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を決定するため、結合試薬としての「抗P−Akt(Ser473)」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMの濃度に対応する5μg/ml)との混合物を、当初研究したアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第五のサンプル容器に導入し、そして4.2.で記述されたとおり前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Ser473)への抗体の特異的結合により引き起こされるシグナルの部分は完全に消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0208】
図11は、競合実験の結果を、上で7.2.2.a)で記述された結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない対応する測定の結果と一緒に描く。黒記号は各場合で競合体の存在を伴わない結果(第四のアレイで測定される)を示し、そして白記号は競合体の存在下で測定されたシグナル(第二のアレイで測定される)を示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した測定領域(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加された精製Aktを含む(測定領域内容参照番号37ないし43)双方の天然に存在する内因性P−Akt(Ser473)を測定するため、図1による)を、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図11、上座標軸)。P−Akt(Ser473)(固定溶液中0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.2.1.で記述された較正曲線を、P−Akt(Ser473)濃度の関数としてプロットする(図11、下座標軸)。
【0209】
競合体の存在下で、内因性p473−Aktを測定するための測定領域からのシグナルが明瞭に低下される。競合体の非存在および存在下での測定曲線間の差違は、特異的結合により引き起こされるシグナルの部分を表す。
【0210】
固定溶液が過剰のAkt(1000ng/ml)を付加的に含有した測定領域について、参照蛍光シグナルのなおより明瞭な低下が観察される。測定領域の2区分(内因性Aktを測定するため、および固定溶液中に1000ng/ml Aktを含む対照測定のため)からの、溶液中の競合体としての100nM Aktの存在下で生成した測定曲線は、再度、事実上一致する。0.3mg/mlのタンパク質濃度まで明瞭に増大しかつそれを超えてわずかにのみ増大する残存するシグナルは、(サンプルマトリックスのタンパク質への)非特異的結合によるシグナルの寄与に対応し、この寄与は、測定領域の表面が完全に覆われるまで、タンパク質の増大する表面濃度に伴い自然に増大する。
【0211】
図12は、溶液中の競合体の非存在および存在下でのデータを比較することからの、0.1mg/mlのタンパク質濃度で特異的結合により引き起こされるシグナル部分の測定(図12a)、および、特異的結合(「SB」)により引き起こされるシグナル部分を較正曲線と比較することからの内因性Aktの含量の測定(図12b)を具体的に説明する。非特異的結合(「NSB」)により引き起こされるシグナル部分(0.037RFI)は、測定の正確性内で、内因性Aktのみを含有する測定領域からのシグナル(0.073RFI)および付加的に添加された1000ng/ml精製Aktを含有するもの(およそ10RFI)について同一の大きさのものである。(5.3±0.5)ng/mlの内因性P−Akt(Ser473)の含量が、総シグナルと非特異的に引き起こされたシグナルの間の差違を較正曲線(図12b)と比較することにより決定される。非特異的結合により生成されるシグナル部分が識別されなかった、節7.1.2.a)でのAktの測定との比較は、そこで暫定的に測定されたP−Akt(Ser473)含量の約57%が非特異的結合の寄与に帰されなければならないことを示す。
【0212】
c)競合体としてのサンプルマトリックスに類似の物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる非特異的結合の部分を確認するために、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3の手順に従い、再度、前述の第一および第二のアレイと同一の測定領域の配置の第六のアレイをもつ第六のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Ser473)への特異的結合により生成されるシグナルの部分は保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0213】
溶液中にラット血清を含む競合実験の結果を、結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない、上の7.2.2.a)で記述された対応する測定の結果と一緒に図13に描く。黒記号は各場合で(第四のアレイで測定された)競合体の存在を伴わない結果を示し、また、白記号は(第六のアレイで測定された)競合体の存在下で測定されたシグナルを示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した測定領域からの蛍光シグナル(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加されたAktを含む(測定領域内容参照番号37ないし43)双方の天然に存在する内因性P−Akt(Ser473)を測定するため、図1による)を、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図13、上座標軸)。P−Akt(Ser473)(固定溶液中に0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.2.1.a)に記述された較正曲線を、P−Akt(Ser473)濃度の関数としてプロットする(図13、下座標軸)。
【0214】
溶液中の非特異的結合に対する競合体としての溶液中のラット血清の存在は、測定曲線
のいかなる有意の移動ももたらさず;ラット血清の存在および非存在下で測定される参照蛍光シグナルは、各場合に測定の正確性内で同一である。
【0215】
これは、「抗P−Akt(Ser473)」抗体の場合に、サンプルマトリックスへの有意の非特異的結合が存在しないことを示唆する。
【0216】
7.3.P−Akt(Thr308)含量の測定
7.3.1.P−Akt(Thr308)を検出するための較正曲線
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
リン酸化された形態P−Akt(Thr308)を測定するための較正曲線は、AktおよびP−Akt(Ser473)の上述された測定の様式で同一の測定領域の区分を使用することにより確立する。
区分1:0.1mg/ml BSAを付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号1〜9をもつアレイ行IおよびII、
区分2:0.1mg/mlラット血清を付加的に含有するスポッティング緩衝液中に、塗布される異なる濃度(0ng/mlと3000ng/mlの間)の精製Aktを含む、測定領域内容番号13〜21をもつアレイ行IIIおよびIV。精製Aktは完全にリン酸化されている、すなわちSer473およびThr308でリン酸化されていると想定する。
【0217】
抗P−Akt(Thr308)の溶液(5nM)を、測定領域の第七のアレイを含有する第七のサンプル容器に添加する。他の工程の下位段階は以前に4.1.で記述した。測定領域の区分1(スポッティング緩衝液に添加した多様な濃度のAktおよび0.1mg/ml BSAを含有する溶液を使用して生成される)、ならびに測定領域の区分2(スポッティング緩衝液に添加した多様なAkt濃度および0.1mg/mlラット血清を含有する溶液を使用して生成される)の較正曲線を図14に描く(黒記号)。
【0218】
100ng/ml Aktより上の濃度で、共固定したBSAおよび共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は同一であり;100ng/mlより下の濃度で、共固定したラット血清を含む測定領域の較正曲線は、共固定したBSAを含むものより高いシグナル値を有し;シグナルの差違は、固定されたラット血清の成分への結合試薬の非特異的結合の寄与に帰される。双方の種類の測定領域からの測定されたシグナル値は、しかしながら、AktおよびP−Akt(Ser473)の較正曲線を確立する場合に測定された蛍光シグナルに比較して相対的に低い。
【0219】
ラット心組織から調製したサンプル中の未知のP−Akt(Thr308)濃度を測定するため、BSAのみを添加した固定溶液の助けを借りて生成した較正曲線を利用する。
【0220】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
異なるサンプルマトリックスをもつ固定溶液を使用して確立された較正曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を試験するために、結合試薬としての「抗P−Akt(Thr308)」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMに対応する5μg/ml)との混合物を、以前に研究されたアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第八のサンプル容器に導入し、そして4.2.に記述されたとおり前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Thr308)への抗体の特異的結合により引き起こされるシグナルの部分は消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0221】
固定溶液の高濃度(30ng/mlより上)でのみシグナルの低下が測定され(図14
中の白記号、固定溶液がラット血清を含有した測定領域からのシグナルは、その固定溶液が規定されるAkt濃度を別にしてBSAのみを含有した測定領域のシグナルより高い。約30ng/ml以上の濃度範囲でのみ、シグナルの低下が、結合試薬の溶液中の競合体としてのP−Akt(Thr308)の存在により、実験的に引き起こされるシグナル変動を超える。
【0222】
これは、共固定したBSAおよび共固定した血清成分双方を含む測定領域への抗P−Akt(Thr308)抗体の非特異的結合がかなりの程度まで起こるという結論に至る。
【0223】
c)競合体としてのサンプルマトリックス様物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる蛍光シグナルに対する非特異的結合の比率を確認するため、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体の溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3の手順に従い、再度前述のアレイと同一の測定領域の配置の第九のアレイをもつ第九のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Thr308)への特異的結合により生成されるシグナルの部分は保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0224】
図15は、再度、結合試薬の競合体の添加を伴わない第七のアレイを使用して生成された、節7.3.1.a)で記述された較正曲線を黒記号により描く。これらの較正曲線からの、結合試薬としての抗体のラット血清含有溶液の添加により第九のアレイを使用して得られたシグナルの逸脱は、測定され得ない。固定溶液中のP−Akt(Thr308)の想定される濃度への有意の依存性は、30ng/mlより上の濃度でのみ見出される。これは、より低濃度で測定される蛍光シグナルが非特異的結合に帰され得るという事実と矛盾しない。
【0225】
7.3.2.ラット心組織から調製したサンプル中のP−Akt(Thr308)含量の測定
a)競合体の添加を伴わない結合試薬の使用
ラット心組織から調製した生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中のP−Akt(Thr308)含量の検出を、測定領域内容番号25ないし31により示される測定領域の区分で実施する。前記測定領域を生成するために生成した固定溶液は同一ストック溶液からであり、そして多様な総タンパク質濃度(0.025mg/mlと0.5mg/mlの間)への希釈(節3.を参照されたい)により調節した。
【0226】
測定領域内容番号37ないし43をもつ測定領域の区分を、ラット心組織ライセートからのストック溶液の同一の連続希釈からの、しかし各場合に固定サンプルに添加されている1000ng/mlの濃度の精製Aktを含む固定サンプルを塗布することにより生成した。この区分の助けを借りて測定されるべきシグナルは、(期待される天然の内因性Akt含量より実質的により高い)使用される高「全Akt」濃度に対応する高いP−Akt(Thr308)含量が、測定されるべき蛍光シグナルを、同一の総タンパク質濃度(0.1mg/ml)をもつP−Akt(Thr308)の較正曲線(共固定したBSAを含有する測定領域を使用して確立した)と比較することにより回収されるかどうかを制御するために使用されるはずである。
【0227】
測定は、測定領域の第七のアレイを含有する第七のサンプル容器に「抗P−Akt(Thr308)」の溶液(5nM)を添加することによって、7.3.1.aで記述される本発明の方法の一部とともに実施する。さらなる工程の下位段階は以前に4.1.で記述した。
【0228】
図16は該結果(参照蛍光強度)を描く。ラット心組織から調製した固定溶液を塗布した測定領域からの蛍光シグナルを総タンパク質濃度の関数として描き(図16、上座標軸)、また、共固定したBSA(タンパク質濃度:0.1mg/ml)での較正測定の参照蛍光シグナルの値を、これらの測定領域に利用した固定溶液の推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として描く(図16、下座標軸)。
【0229】
添加されたAktを伴わない(すなわち、固定されたサンプル中に天然に存在する内因性P−Akt(Thr308)を含む)測定領域からのP−Akt(Thr308)のシグナルは、増大するタンパク質濃度とともに0.4mg/mlまで増大し、そして0.5mg/mlのタンパク質濃度で実質的に変化しない最大値に達する。
【0230】
(130±15)ng/mlの内因性P−Akt(Thr308)の含量が、較正曲線(0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、内因性P−Akt(Thr308)のみを含有する測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)との比較により、0.1mg/mlのタンパク質含量を伴うラット心組織から調製したサンプルについて(暫定的に)決定される。しかしながら、この値は、同一の総タンパク質濃度で、以前に同一条件下で(非特異的結合の影響を考慮に入れずに)決定された20ng/mlの「全Akt」濃度を鑑みれば、開始から非現実的とみなされるはずである。固定溶液に1000ng/ml精製Aktが添加された測定領域からのシグナルとの測定曲線の比較(0.1mg/mlのタンパク質濃度の破線、ならびに、1000ng/mlの添加されたAktを含む測定領域からのシグナルの測定曲線とのこの線の交差の点から較正曲線の方向に走る破線により具体的に説明される)が、(510±10)ng/mlの回収値を決定する。
【0231】
b)競合体としてのAktの添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスとしてのラット心組織に基づく固定溶液を使用して生成された測定領域からの測定曲線に対する非特異的結合によるシグナルの比率を決定するため、結合試薬としての「抗P−Akt(Thr308)」抗体の溶液の、過剰のAkt(100nMの濃度に対応する5μg/ml)との混合物を、当初研究したアレイと同一の測定領域の配置をもつ別のアレイ上の第八のサンプル容器に導入し、そして4.3.で記述されたとおり前記測定領域と一夜インキュベートする。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Thr308)への抗体の特異的結合により引き起こされるシグナルの部分は完全に消失することが期待される一方、非特異的結合により引き起こされるシグナルの部分はそのままである。
【0232】
図17は、競合実験の結果を上で7.3.2.a)で記述された結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない対応する測定の結果と一緒に描く。黒記号は、各場合で競合体の存在を伴わない結果(第一のアレイで測定される)を示し、そして白記号は競合体の存在下で測定されたシグナルを示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した測定領域(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加された精製Aktを含む(測定領域内容参照番号37ないし43)双方の天然に存在する内因性P−Akt(Thr308)を測定するため、図1による)の蛍光シグナルを、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図15、上座標軸)。P−Akt(Thr308)(固定溶液中に0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.3.1.で記述された較正曲線を、推定P−Akt(Thr308)濃度の関数としてプロットする(図17、下座標軸)。
【0233】
競合体の存在下で、内因性P−Akt(Thr308)を測定するための測定領域からのシグナルは全く低下を示さない。特異的結合により引き起こされるシグナルの部分を表すとみられる、競合体の非存在および存在下での測定曲線間の差違は、測定の正確性内で
ゼロである。
【0234】
参照蛍光シグナルの比較的弱い低下が、固定溶液が過剰のAkt(1000ng/ml)を付加的に含有した測定領域について、とりわけ低タンパク質濃度範囲で観察される。
【0235】
図18は、溶液中の競合体の存在および非存在下でのデータを比較することによる、0.1mg/mlのタンパク質濃度での特異的結合により引き起こされるシグナル部分の測定を具体的に説明する。競合体を伴わない測定からの0.068RFI、および100nM競合体を伴う測定からの0.073RFIというシグナルが、内因性P−Akt(Thr308)の存在がせいぜい期待されるラット心組織ライセートの溶液から生成される測定領域について測定される。これら2つの値の間の差違は実験的に引き起こされるシグナル変動にほぼ対応する。これは、特異的結合により生成されるシグナルが本条件下で測定されず、P−Akt(Thr308)含量がゼロであるという可能な結論に至ることを確認する。
【0236】
c)競合体としてのサンプルマトリックスに類似の物質の添加を伴う結合試薬の使用
サンプルマトリックスの成分への結合試薬の結合により引き起こされる非特異的結合の部分を確認するために、0.1mg/mlの総タンパク質濃度をもつラット血清を抗体溶液に添加する。この溶液をその後、節4.3の手順に従い、再度、前述のアレイと同一の測定領域の配置の第九のアレイをもつ第九のサンプル容器に導入する。これらの条件下で、固定されたP−Akt(Thr308)への特異的結合により生成されるシグナルの部分は保持されることが期待される一方、サンプルマトリックスへの非特異的結合により生成されるシグナルの部分はほぼ消失することが期待される。
【0237】
溶液中にラット血清を含む競合実験の結果を、結合試薬の溶液中の競合体の存在を伴わない、上で7.3.2.a)で記述された対応する測定の結果と一緒に図19に描く。黒記号は、各場合で(第七のアレイで測定された)競合体の存在を伴わない結果を示し、また、白記号は競合体の存在下で測定されたシグナルを示す。固定溶液をラット心組織ライセートから調製した測定領域からの蛍光シグナル(付加的に添加されたAktを含まない(測定領域内容参照番号25ないし31)、および1000ng/mlの付加的に添加された精製Aktを含む、双方の天然に存在する内因性P−Akt(Thr308)を測定するため、図1による)を、固定溶液のタンパク質濃度の関数として描く(図19、上座標軸)。P−Akt(Thr308)(固定溶液中に0.1mg/ml BSAを含む)を検出するための7.3.1.a)に記述された較正曲線を、推定P−Akt(Thr308)濃度の関数としてプロットする(図19、下座標軸)。
【0238】
溶液中の非特異的結合に対する競合体としての溶液中のラット血清の存在は、蛍光シグナルの測定可能な低下をもたらし、非特異的結合の起源をもう一度確認する。
【0239】
【表1】

【0240】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】本発明の方法のための6アレイの測定領域をもつ支持体。入および出射光をカップリングするためのグレーティング構造がアレイの左および右に示される。拡大された詳細は単一アレイ中の測定領域の幾何学的配置を描く。測定領域内容参照番号の意味については表1を参照されたい。
【図2】固定溶液のAkt濃度の関数としての、固定溶液中のそれに塗布された精製Aktおよび0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まずに生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した測定曲線。
【図3】固定溶液のAkt濃度の関数としての、固定溶液中のそれに塗布された精製Aktおよび0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まずに生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含み生成した測定曲線。
【図4】固定溶液の総タンパク質濃度の関数としての、付加的に添加した精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性Aktを検出するための参照蛍光強度。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、Aktを検出するための図2の較正曲線(Akt濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図5】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加した精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性Aktを検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中に競合体として100nM精製Aktを含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、Aktを検出するための図2の較正曲線(黒記号;Akt濃度の関数として、下座標軸)、および結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した対応する較正曲線(白記号;Akt濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図6】溶液中の競合体の存在および非存在下のデータを比較することからの0.1mg/mlのタンパク質濃度での特異的結合により引き起こされる図5のシグナルの部分の決定(図6a)、および、特異的結合(「SB」)により引き起こされるシグナルの部分を較正曲線と比較することからの内因性Aktの含量の決定(図6b)。
【図7】固定溶液中の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加した精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性Aktを検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中に競合試薬を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗Akt」抗体、5nM)の溶液中の非特異的結合の競合体としての0.1mg/mlラット血清を含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、Aktを検出するための図2の較正曲線(黒記号;Akt濃度の関数として、下座標軸)、および結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含み生成した対応する較正曲線(白記号;Akt濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図8】固定溶液のP−Akt(Ser473)濃度の関数としての、それに塗布された精製Aktを含みかつ固定溶液中の0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まず生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した測定曲線。
【図9】固定溶液のP−Akt(Ser473)濃度の関数としての、それに塗布された精製Aktを含みかつ固定溶液中の0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まず生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含み生成した測定曲線。
【図10】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Ser473)を検出するための参照蛍光強度。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Ser473)を検出するための図7の較正曲線(P−Akt(Ser473)濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図11】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Ser473)を検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中に競合体として100nM精製Aktを含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Ser473)を検出するための図7の較正曲線(黒記号;P−Akt(Ser473)濃度の関数として、下座標軸)、および、結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した対応する較正曲線(白記号;Akt濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図12】溶液中の競合体の存在および非存在下のデータを比較することからの、0.1mg/mlのタンパク質の濃度での特異的結合により引き起こされる図11のシグナルの部分の決定(図12a)、ならびに特異的結合(「SB」)により引き起こされるシグナルの部分を較正曲線と比較することからの内因性Aktの含量の決定(図12b)。
【図13】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Ser473)を検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗P−Akt(Ser473)」抗体、5nM)の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Ser473)を検出するための図8の較正曲線(黒記号;P−Akt(Ser473)濃度の関数として、下座標軸)、および、結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を用いて生成した対応する較正曲線(白記号;P−Akt(Ser473)濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図14】固定溶液の推定P−Akt(Thr308)濃度の関数としての、それに塗布された精製Aktを含みかつ固定溶液中の0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まず生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した測定曲線。
【図15】固定溶液中の推定P−Akt(Thr308)濃度の関数としての、それに塗布された精製Aktを含みかつ固定溶液中の0.1mg/ml BSA若しくは0.1mg/mlラット血清の付加的な存在を伴う測定領域からの参照蛍光強度(RFI)。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まず生成した較正曲線、白記号:結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含み生成した測定曲線。
【図16】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Thr308)を検出するための参照蛍光強度。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Thr308)を検出するための図12の較正曲線(推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図17】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Thr308)を検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中に競合体として100nM精製Aktを含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Thr308)を検出するための図14の較正曲線(黒記号;推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として、下座標軸)、および、結合試薬の溶液中に競合体として100nM Aktを含み生成した対応する較正曲線(白記号;推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。
【図18】溶液中の競合体の存在および非存在下のデータを比較することからの、0.1mg/mlのタンパク質濃度での特異的結合により引き起こされる図17のシグナルの部分の決定。
【図19】固定溶液の総タンパク質濃度(上座標軸)の関数としての、付加的に添加された精製Akt(1000ng/ml)を含む(上の曲線)および含まない(中の曲線)、ラット心組織から調製したサンプル中の内因性P−Akt(Thr308)を検出するための参照蛍光強度。黒記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中に競合体を含まない測定から得たデータ;白記号:結合試薬(「抗P−Akt(Thr308)」抗体、5nM)の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含む測定から得たデータ。0.1mg/ml BSAを付加的に含有する測定領域で生成した、P−Akt(Thr308)を検出するための図12の較正曲線(黒記号;推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として、下座標軸)、および、結合試薬の溶液中の非特異的結合の競合体として0.1mg/mlラット血清を含み生成した対応する較正曲線(白記号;推定P−Akt(Thr308)濃度の関数として、下座標軸)もまたプロットする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階:
(1)生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプルを提供する段階、(2)最低1種の固体支持体を提供する段階、
(3)希釈若しくは未希釈の形態の、生物学的起源かつ複雑な組成の少量の前記サンプルを、前記固体支持体上に直接、若しくは付着促進層の前塗布後に該固体支持体上の前記付着促進層にのいずれかで、個別の部位に塗布して、それにより該最低1種の固体支持体上に個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイを生成する段階、
(4)個別の測定領域の最低1個のアレイを、生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、および、必要とされる場合には、1種若しくはそれ以上の検出試薬を含んでなる第一の溶液と接触させる段階(結合試薬および検出試薬は同時に若しくは連続して塗布されることが可能である)、
(5)段階(4)で第一の溶液と接触された1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発する第一の光信号を空間分解様式で測定する段階、
(6)前記第一の光信号を記録する段階
を含んでなり、
添加される結合試薬、および、場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である測定される第一の光信号の部分が、以下のさらなる段階:(7a)1種若しくはそれ以上の結合試薬および場合によっては段階(4)で添加される第一の溶液の1種若しくはそれ以上の検出試薬に加えて、前記結合試薬および場合によっては付加的に添加される検出試薬の特異的結合についての、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する前記被検体に対する競合体としての、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する被検体と同一の種類のものである既知の高濃度の化合物を含んでなる第二の溶液を、段階(3)で生成される個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイに塗布する段階、ならびに/または
(7b)前記1種若しくはそれ以上の結合試薬および場合によっては段階(4)で添加される第一の溶液の1種若しくはそれ以上の検出試薬に加えて、前記結合試薬および場合によっては付加的に添加される検出試薬の非特異的結合について、個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中に存在するサンプルマトリックスの物質と競合することの目的上、段階(3)で塗布されたサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである既知の高濃度の物質を含んでなる第三の溶液を、段階(3)で生成される個別の測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイに塗布する段階、(8)段階(7a)の第二の溶液および/若しくは段階(7b)の第三の溶液と接触された1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発する第二および/若しくは第三の光信号を空間分解様式で測定する段階、
(9)前記第二および/若しくは第三の光信号を記録する段階、ならびに
(10)前記第一ならびに第二および/若しくは第三の光信号を比較する段階
を実施することにより測定されることを特徴とする、
生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の検出方法。
【請求項2】
生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルが、細胞集団のライセート、細胞抽出液、体液および体液の成分により形成されるサンプルの群から選択され、
(1)前記サンプルが分画若しくは非分画サンプルであり、
(2)生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルが、ヒト、動物、細菌および植物細胞を含んでなる群からの健全および/または罹病のおよび/または刺激されたおよび/また
は未処理の細胞から得られ、
(3)生物学的起源かつ複雑な組成の前記サンプルが、例えば器官、皮膚、毛髪、筋、脂肪若しくは骨組織のような動物若しくはヒト組織から得られた
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
単一の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成の分析されるべきサンプルの物質が、100細胞未満、好ましくは10細胞未満の物質に対応し、および/または100nl未満、好ましくは1nl未満の容量を構成することを特徴とする、請求項1および2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の検出されるべきである被検体が、タンパク質およびそれらの翻訳後修飾されたタンパク質の形態、ならびにまた人工的に修飾若しくは発現されたタンパク質、モノ若しくはポリクローナル抗体および抗体フラグメント、ペプチド、無傷のタンパク質から生成されたペプチドフラグメント、糖ペプチド、レクチン、蛍光タンパク質、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、ビオチニル化タンパク質、ならびに/または多様に複合されたタンパク質、オリゴ糖ならびに核酸であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の被検体として検出されるべきであるタンパク質が、特異的結合パートナーとしてそれと接触される結合試薬、および場合によっては付加的な検出試薬の結合後に、請求項1に記載の段階(4)の経過において、生物学的起源かつ複雑な組成の前記塗布されたサンプル中のリン酸化および/若しくはグリコシル化、ならびに/またはメチル化および/若しくはアセチル化された形態でのそれらの存在により識別され、そして請求項1に記載の検出段階(5)で別個に検出されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の被検体として検出されるべきであるタンパク質が、特異的結合パートナーとしてそれと接触される結合試薬、および場合によっては付加的な検出試薬の結合後に、請求項1に記載の段階(4)の経過において、生物学的起源かつ複雑な組成の前記塗布されたサンプル中のリン酸化および/若しくはグリコシル化、ならびに/またはメチル化および/若しくはアセチル化された形態でのそれらの存在により識別されず、そして請求項1に記載の検出段階(5)で別個に検出されないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとしての前記結合試薬が、タンパク質、ペプチド、酵素、酵素阻害剤、キナーゼ基質、アプタマー、合成ペプチド構造、糖ペプチド、ホルモン、補助因子、オリゴ糖、レクチン、抗体若しくはT細胞受容体に対する抗原、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、付加的な結合部位で官能性化されたタンパク質および/若しくはそれらの複合体形成パートナー、ならびに核酸アナログおよび人工的塩基を有するそれらの誘導体を含んでなる化合物の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記検出試薬が:
(1)ポリクローナル若しくはモノクローナル抗体および抗体フラグメント、核酸および核酸誘導体、ならびに人工的塩基、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンを有するそれらの誘導体を含んでなる第一群、または
(2)質量標識および/若しくは発光標識を含んでなる第二群であって、前記質量若しくは発光標識は、結合試薬に結合されているかまたはそれに付加若しくは結合しているか、あるいは、(1)による検出試薬の第一群の検出試薬に結合されているか、または(1)
による検出試薬の第一群の前記検出試薬に特異的方法で結合若しくは付加しているか、あるいは、個別の測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中に存在する検出されるべき被検体と、特異的結合パートナーとしてそれに結合された結合試薬の間の複合体上で形成されるか、それに結合若しくは付加している、
から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第一の溶液の特異的結合パートナーとしての前記結合試薬および任意の検出試薬、ならびに/若しくは
第二の溶液の、特異的結合パートナーとしての結合試薬、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(このサンプルは個別の測定領域に塗布されている)中の検出されるべきかつ存在する被検体と同一の種類の化合物、および任意の検出試薬、ならびに/若しくは
第三の溶液の、特異的結合パートナーとしての結合試薬、請求項1に記載の段階(3)で塗布されたサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質、および任意の検出試薬
が、各場合に相互と前インキュベートされ、ならびに、前記第一、第二若しくは第三の溶液がその後、単一添加段階にて測定領域の前記アレイと接触される
ことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
多様な被検体が、識別可能な検出試薬を測定領域の共有されるアレイに添加することにより前記アレイ中で検出されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
検出されるべき多様な被検体の数が識別可能な検出試薬の数に等しいことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
識別可能な検出試薬が、発光の励起波長および/若しくは放出波長が異なることを特徴とする、請求項10〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
個別の測定領域の多数のアレイ中の多数の異なる被検体が、個別の測定領域の多様なアレイ上の多様な被検体を測定するために特異的結合パートナーとして多様な結合試薬を添加すること、および/または測定領域の前記アレイに識別可能な検出試薬を添加することにより検出されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
多様な結合試薬が、多様な被検体に対する特異的結合パートナーとして、検出されるべき各異なる被検体の多様なアレイに塗布されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
それに塗布される生物学的起源かつ複雑な組成のサンプルを含有する測定領域のアレイが、検出されるべき被検体と同一の種類のものである既知濃度の化合物が、塗布される物質に標準として添加されている、測定領域を含んでなることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
測定領域のアレイが、検出されるべき被検体と同一の種類のものである多様な既知濃度の化合物が、塗布される物質に標準として添加されている、多数の測定領域を含んでなり、こうした測定領域の数および前記多様な既知濃度のレベルが、請求項1に記載の段階(4)による特異的結合パートナーとしての結合試薬および場合によっては同様に検出試薬を含有する第一の溶液を添加することの単一段階、ならびに請求項1に記載のその後の段階(5)および(6)によって、アレイ中の検出されるべき未知濃度の前記被検体を測定するための較正曲線を生成するために十分であることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
測定領域の複数の同一種類のアレイが固体支持体上に配置され、行および列の配置に関しての多様なアレイの測定領域の同一の位置が、同一種類のサンプルがそこに塗布されていることを意味することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
段階(4)による第一の溶液が添加され、かつ、このアレイの測定領域からの第一の光信号が請求項1に記載の段階(5)および(6)により測定かつ記録され、ならびに、段階(7a)および(7b)による第二および/若しくは第三の溶液が添加され、かつ、問題のアレイの測定領域から発せられるシグナルが、該同一種類の多様な測定領域アレイ上で請求項1に記載の段階(8)および(9)によりその後測定かつ記録され、行および列の配置に関して多様なアレイの測定領域の同一の位置が、同一種類のサンプルがそこに塗布されていることを意味することを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である請求項1に記載の測定された第一の光信号の部分が、段階(7a)による第二の溶液の添加後に段階(8)により測定される光信号および段階(4)による第一の溶液の添加後に段階(5)により測定される光信号の差違から決定されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号である請求項1に記載の測定された第一の光信号の部分が、段階(7b)による第三の溶液の添加後に段階(8)により測定される光信号および段階(4)による第一の溶液の添加後に段階(5)により測定される光信号の差違から決定されることを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル(そのサンプルは測定領域に塗布されている)中の被検体の濃度若しくは量が、前記測定領域について測定された光信号と、添加される結合試薬および場合によっては添加される検出試薬との非特異的相互作用により生成される光信号の部分の間の差違から、ならびに問題の被検体の較正曲線と前記差違を比較することにより決定されることを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
多様な測定領域に塗布された生物学的起源かつ複雑な組成の多様なサンプル中の被検体の濃度若しくは量の好ましくは20%未満、とりわけ好ましくは10%未満の差違が測定されることを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイに請求項1に記載の段階(7b)により塗布される第三の領域が、アルブミン、とりわけウシ血清アルブミン(BSA)、免疫グロブリンおよび希釈血清を含んでなる群からの物質を含んでなることを特徴とする、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
固体支持体に塗布される付着促進層が、シラン、官能性化シラン、エポキシド、官能性化、荷電若しくは極性ポリマー、ならびに「自己組織化不動態若しくは官能性化単および多層」、チオール、アルキルホスフェートおよびアルキルホスホネート、ならびに例えばポリ(L)リシン/ポリエチレングリコールのような多官能性ブロックコポリマーを含んでなる群の化合物を含んでなることを特徴とする、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
個別の測定領域間の領域が、結合若しくは検出試薬の非特異的結合を最小限にするために「不動態化される」、すなわち、前記結合試薬および/若しくは検出試薬に対し「化学
的に中性」であるすなわちそれらを結合しない成分が、空間的に分離された測定領域の間に塗布されることを特徴とする、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
固体支持体が、本質的に平面および/または非多孔質かつ/または少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性であることを特徴とする、請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
固体支持体が、異なる光学特性をもつ複数の層を含んでなることを特徴とする、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
固体支持体が、好ましくは金、銀若しくはアルミニウムを含んでなる金属層を含んでなることを特徴とする、請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
少なくとも、直接若しくは付着促進層を介して測定領域と接触している固体支持体の層が、少なくとも入射励起光若しくは測定光の波長で本質的に光透過性であることを特徴とする、請求項1〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
固体支持体が、顕微鏡スライドガラス、マイクロタイタープレート、ナノタイタープレート、フィルター、メンブレンおよび微小構造化支持体を含んでなる群からの構成部品を含んでなることを特徴とする、請求項1〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
固体支持体が、連続的であるか若しくは個別の導波路領域に分割されるかのいずれかでありかつ1個若しくはそれ以上の層を含んでなる光導波路を含んでなることを特徴とする、請求項1〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
励起光若しくは測定光が、1個若しくはそれ以上の多色若しくは単色光源から測定領域の1個若しくはそれ以上のアレイの1個若しくはそれ以上の測定領域に誘導され、かつ、前記測定領域からの光信号、および/または前記測定領域から発する光信号の変化若しくは差違が、空間分解様式で測定かつ記録されることを特徴とする、請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、測定領域に面する固体支持体の表面での若しくは前記固体支持体の前記表面から1μm未満の距離以内の有効屈折率の局所的差違に基づき、その局所的差違は、それに塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の個別の測定領域に存在する被検体への結合試薬および/若しくは検出試薬の結合により引き起こされることを特徴とする、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、前記固体支持体の一部としての薄い金属層の表面プラズモンを生成するための共鳴状態の局所的差違に基づくことを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
固体支持体が、第二の本質的に光透過性の層(b)上に第一の本質的に光透過性の層(a)を有する光薄膜導波路を含んでなり、層(a)が層(b)より高い屈折率を有しかつ直接か若しくは付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで測定領域と接触することを特徴とする、請求項31〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
1個若しくはそれ以上の光源からの励起光若しくは測定光が、プリズムカプラ、相互と接触にもたらされた光導波路をもちかつ重なるエバネッセント場を有するエバネッセントカプラ、導波層の一端側の前に配置された集束レンズ、好ましくは筒状レンズを伴う端面カプラ、およびグレーティングカプラの群から選択される1個若しくはそれ以上の光カッ
プリング要素により固体支持体の導波層にカップリングされ、前記励起光若しくは測定光が、好ましくは、あるグレーティング周期およびグレーティング深さを有する表面レリーフグレーティングとして前記導波層中に刻印される1個若しくはそれ以上のグレーティング構造(c)の助けを借りて該固体支持体の導波層にカップリングされることを特徴とする、請求項31〜34のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、固体支持体の導波層中に刻印されたグレーティング構造によって前記導波層に1個若しくはそれ以上の光源の励起光若しくは測定光をカップリングするための共鳴状態の局所的差違に基づくことを特徴とする、請求項34〜36のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
空間分解様式で測定されるべき光信号の変化若しくは差違が、そこに塗布された生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の個別の測定領域に存在する被検体への結合試薬および/若しくは検出試薬の結合により引き起こされる1個若しくはそれ以上の発光事象の局所的差違若しくは変化に基づくことを特徴とする、請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
−固体支持体が、少なくとも入射励起光の波長で本質的に光透過性でありかつ層(a)より低い屈折率を有する第二の層(b)上に、少なくとも入射励起光の波長で本質的に光透過性である第一の層(a)をもつ光薄膜導波路を含んでなり、
−光源の励起光が前記層(a)に刻印されたグレーティング構造(c)によって層(a)にカップリングされ、
−前記励起光が、前記層(a)上で直接か若しくは前記層(a)上の付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで配置される測定領域へ誘導波として誘導され、および
発光が可能でありかつ前記層(a)に誘導される光のエバネッセント場で励起されて発光を生じる化合物の発光事象が空間分解様式で測定される
ことを特徴とする、請求項32〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の定量的測定のためのマイクロアレイであって、そのマイクロアレイは、
−固体支持体、
−各場合で、希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプルが、直接か若しくは付着促進層を介する仲介によるかのいずれかで固定されている、第一の多数の個別の測定領域
を含んでなり、
少なくとも第二の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、その測定領域で、検出されるべき被検体と同一の種類の物質が、生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の第一の多数の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体、および前記第二の多数の個別の測定領域中に存在する検出されるべき前記被検体と同一の種類の物質の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、ならびに場合によっては、必要とされる場合は1種若しくはそれ以上の検出試薬(結合試薬および検出試薬は同時に若しくは連続して塗布されることが可能である)を含んでなる第一の溶液と、前記マイクロアレイを接触することによって適する異なる濃度で固定され、ならびに、第一の溶液と接触されている1個若しくはそれ以上のアレイの個別の測定領域から発している第一の光信号のその後の空間分解測定、ならびに複雑な組成の固定されたサンプル中の定量的に検出されるべきかつ存在する前記被検体の較正曲線を生成するために前記第一の光信号を記録すること、
ことを特徴とする、
上記マイクロアレイ。
【請求項41】
第三の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、ここに、各場合に、希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプル、および、加えて、それに添加される既知の量の、検出されるべき被検体と同一の種類の物質が固定されることを特徴とする、請求項40に記載のマイクロアレイ。
【請求項42】
第四の多数の測定領域が固体支持体上の前記アレイに提供され、ここに、第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質が固定されることを特徴とする、請求項40〜41のいずれかに記載のマイクロアレイ。
【請求項43】
第二の多数の測定領域の測定領域が、第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質を含んでなることを特徴とする、請求項40〜42のいずれかに記載のマイクロアレイ。
【請求項44】
第一の多数の測定領域に塗布されるサンプルのサンプルマトリックス中に存在する物質と類似の種類のものである物質が、アルブミン、とりわけウシ血清アルブミン、免疫グロブリン若しくは希釈血清を含んでなる群由来であることを特徴とする、請求項42〜43のいずれかに記載のマイクロアレイ。
【請求項45】
照合目的上使用される、第五の多数の測定領域が、固体支持体上の前記アレイに提供されることを特徴とする、請求項40〜44のいずれかに記載のマイクロアレイ。
【請求項46】
第五の多数の測定領域の測定領域が、質量標識および発光標識を含んでなる群から選択される物質を含んでなることを特徴とする、請求項45に記載のマイクロアレイ。
【請求項47】
以下の段階:
−生物学的起源かつ複雑な組成の1種若しくはそれ以上のサンプルを提供する段階、
−複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体と同一の種類の多様な濃度の物質の多数の溶液を提供する段階、
−最低1個の固体支持体を提供する段階、
−希釈若しくは未希釈の形態の生物学的起源かつ複雑な組成の少量のサンプルを、固体支持体上に直接、若しくは付着促進層の前塗布後に前記固体支持体上の前記付着促進層にのいずれかで個別の部位に塗布することにより、マイクロアレイの一部として第一の多数の個別の測定領域を生成する段階、
−各場合で、複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体と同一の種類の物質の多様な濃度の少量の多数の溶液を塗布することにより、前記マイクロアレイの一部として第二の多数の個別の測定領域を生成する段階、
−生物学的起源かつ複雑な組成の塗布されたサンプル中の第一の多数の個別の測定領域中の検出されるべきかつ存在する被検体の特異的結合パートナーとしての1種若しくはそれ以上の結合試薬、および検出されるべき前記被検体と同一の種類の物質(この物質は第二の多数の個別の測定領域に存在し)、ならびに場合によっては、必要とされる場合は1種若しくはそれ以上の検出試薬(結合試薬および検出試薬が同時に若しくは連続して塗布されることが可能である)を含んでなる第一の溶液と、該マイクロアレイを接触する段階、−該マイクロアレイの前記第一および第二の多数の個別の測定領域から発する第一の光信号を空間分解様式で測定する段階、前記第一の多数の個別の測定領域からの前記第一の光信号を、該第一の溶液をその接触することに特徴的なシグナルとして記録する段階、該第二の多数の個別の測定領域からの第一の光信号を、第一の溶液をその接触することに特徴的なシグナルとして、複雑な組成のサンプル中に存在する被検体と同一の種類の物質(その物質は前記測定領域中に存在する)の濃度の関数として記録する段階、
−必要とされる場合はバックグラウンドシグナルの前減算および適する照合後に、第二の
多数の個別の測定領域からの記録された光信号から、複雑な組成のサンプル中の検出されるべき被検体の較正曲線を生成する段階、
−第一の多数の個別の測定領域からの記録された第一の光信号を、必要とされる場合はバックグラウンドシグナルの前減算および適する照合後に、特定の被検体の較正曲線と比較することにより、複雑な組成のサンプル中の検出されるべきかつ存在する被検体を定量的に測定する段階
を含んでなる、生物学的起源かつ複雑な組成のサンプル中の1種若しくはそれ以上の被検体の定量的測定方法。
【請求項48】
製薬学的研究、コンビナトリアル化学、臨床および前臨床開発における有効性決定のための薬物ライブラリーのスクリーニングの過程で化学的、生化学的若しくは生物学的被検体を測定するため、生物学的若しくは化学的マーカー物質(「バイオマーカー」)を同定、検証およびモニターするため、プロテオミクス研究およびシステム生物学においてシグナル伝達経路を同定かつ検証するため、アフィニティースクリーニングおよびとりわけ抗体スクリーニングのため、リアルタイム結合研究、ならびにアフィニティースクリーニングおよび研究における反応速度論パラメータを決定するため、定性的および定量的被検体測定のため、とりわけDNAおよびRNA分析ならびに例えば一塩基多形のようなゲノム若しくはプロテオーム中のゲノム若しくはプロテオームの差違の決定のため、タンパク質−DNAの相互作用を測定するため、mRNA発現およびタンパク質(生)合成の制御機構を決定するため、毒性研究を産み出すため、および発現プロファイルを決定するため、とりわけ外的刺激を伴うおよび伴わない罹病のおよび健全な細胞集団の細胞発現プロファイルを生じさせることならびにそれらの比較のため、分、時間、日、週、月若しくは年の期間にわたるこうした発現プロファイルの発生を研究するため、mRNA、タンパク質、ペプチド若しくは低分子量有機(メッセンジャー)物質のような生物学的および化学的マーカー物質を測定するため、ならびにまた、製薬学的製品研究および開発、ヒトおよび家畜の診断、農薬製品研究および開発、症候性および前駆症状性植物診断、製薬学的製品開発における患者の層別において抗体、抗原、病原体若しくは細菌を検出するため、ならびに、治療的医薬品の選択のため、とりわけ食品分析および環境分析において病原体、有害物質および病原生物、とりわけサルモネラ、プリオン、ウイルスおよび細菌を検出するための定量および/若しくは定性分析のための、請求項1〜39のいずれかに記載の方法、および/若しくは請求項40〜46のいずれかに記載のマイクロアレイ、および/若しくは請求項47に記載の方法の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図19】
image rotate

【図6】
image rotate

【図12】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2009−513958(P2009−513958A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536938(P2008−536938)
【出願日】平成17年10月29日(2005.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011607
【国際公開番号】WO2007/048436
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(507212506)バイエル・テクノロジー・サービシズ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (18)
【Fターム(参考)】