説明

覆工の構築方法及びこれに用いる固定装置

【課題】シールドを用いて掘削されたトンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工の構築方法であって自動連結式継手を用いることなくK型セグメントがB型セグメント間から抜け出るのを防止することにより、前記トンネルの施工費の低減を可能にする構築方法を提供すること。
【解決手段】覆工の構築方法は、シールドの後方及び前記シールド内に複数のリングを互いに隣接して形成すること、前記リングのうち切羽に最も近い1つのリングに隣接して新たなリングを形成すること、固定装置を用いて前記新たなリングのK型セグメントを前記1つのリングのA型セグメント又はB型セグメントに解除可能に固定することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドを用いて掘削されたトンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工の構築方法及びこれに用いる固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドを用いて掘削されたトンネルに、該トンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工が構築される。前記覆工には、各リングが、隣接する複数のA型セグメントと、それぞれが該A型セグメントに隣接する2つのB型セグメントと、該B型セグメント間のK型セグメントとからなるものがある。
【0003】
前記A型セグメントの前記トンネルの周方向における長さ寸法は一定であり、前記B型セグメントの前記長さ寸法は前記トンネルの切羽側から坑口側に向けて漸増し、前記K型セグメントの前記長さ寸法は前記切羽側から前記坑口側に向けて漸減する。前記A型セグメント、前記B型セグメント及び前記K型セグメントのそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0004】
前記覆工を構築するとき、まず、前記シールドの後方及び前記シールド内に複数のリングを互いに隣接して形成する。次に、既に形成された複数のリングのうち、前記トンネルの切羽に最も近い1つのリングに反力をとって前記シールドを推進させる。その後、前記シールド内に前記1つのリングに隣接して新たなリングを形成する。
【0005】
新たなリングを形成するとき、まず、複数のA型セグメントを隣接して配置する。次に、2つのB型セグメントのそれぞれを前記A型セグメントに隣接して配置する。その後、K型セグメントを前記トンネルの軸線方向に移動させて前記B型セグメント間に挿入する。前記K型セグメントの前記長さ寸法が前記切羽側から前記坑口側に向けて漸減するため、すなわち前記K型セグメントが楔状であるため、仮に、前記B型セグメント間の間隔が、据付上の誤差により、設計上必要とされる間隔より狭くなった場合においても前記K型セグメントを前記B型セグメント間に挿入することができる。
【0006】
前記新たなリングの形成後、該新たなリングに反力をとって前記シールドを推進させる。これにより、前記新たなリングは前記シールドにより保護されなくなり、前記新たなリングの外面に土圧及び水圧が作用する。このため、前記新たなリングにその周方向に圧縮力が作用する。前記K型セグメントの前記長さ寸法が前記切羽側から前記坑口側に向けて漸減するため、前記新たなリングに前記圧縮力が作用したとき、前記新たなリングの前記K型セグメントにこれを前記切羽側へ移動させようとする力が作用する。このため、前記K型セグメントが前記切羽側へ移動して前記B型セグメント間から抜け出る恐れがある。
【0007】
前記覆工の従来の構築方法では、前記新たなリングの前記K型セグメントの前記B型セグメント間への挿入時、前記新たなリングの前記K型セグメントを前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントと自動連結式継手を用いて連結する(特許文献1参照)。これにより、前記K型セグメントが前記切羽側へ移動して前記B型セグメント間から抜け出るのを防止する。
【特許文献1】特開2001−164890号公報
【0008】
前記自動連結式継手は、前記K型セグメントの前記坑口側の端面から突出する頭部を有する雄金具と、前記A型セグメント及び前記B型セグメントのそれぞれの前記切羽側の端面に開放された孔が形成された雌金具とからなる。前記雄金具の前記頭部は、くびれ部と、該くびれ部の先方に位置する膨大部とからなる。前記雌金具は、それぞれが前記孔の内面から突出する、相対する一対の爪と、各爪に前記孔の中心に向けて弾性力を加えるスプリングとを有する。
【0009】
前記新たなリングの前記K型セグメントの前記B型セグメント間への挿入時、前記K型セグメントの前記雄金具の前記頭部は、前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントの前記雌金具の前記孔に受け入れられる。このとき、前記雌金具の前記膨張部は、前記爪に接触し、前記スプリングの弾性力に抵抗して前記爪間の間隔を広げつつ、前記爪間を通過する。その後、前記爪は、前記スプリングの弾性力により前記爪間の間隔を狭め、前記雄金具の前記頭部の前記くびれ部を挟む。これにより、前記新たなリングの前記K型セグメントは前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントと連結される。
【0010】
前記雌金具の前記爪は、前記雄金具の前記頭部の前記膨大部が前記雌金具の前記孔から抜け出るのを阻止する。このため、前記新たなリングの前記K型セグメントが前記切羽側へ移動することはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記自動連結式継手は、構造が複雑であるため、高価である。一般に、シールドを用いたトンネルの施工において、セグメントの製造コストが前記トンネルの施工費全体の約3割を占め、前記自動連結式継手に要する費用が前記セグメントの製造コストのうち約2割ないし約3割を占める。このため、前記自動連結式継手が高価であることにより、前記トンネルの施工費の増大を招いている。
【0012】
本発明の目的は、シールドを用いて掘削されたトンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工の構築方法であって自動連結式継手を用いることなくK型セグメントがB型セグメント間から抜け出るのを防止することにより、前記トンネルの施工費の低減を可能にする構築方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、前記構築方法に適合する固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記目的を達成するため、前記シールドの後方及び前記シールド内に複数のリングを互いに隣接して形成し、前記リングのうち前記トンネルの切羽に最も近い1つのリングに隣接して新たなリングを形成した後、K型セグメントのエレクタ用ソケットと螺合可能な第1部材と、A型セグメント又はB型セグメントのエレクタ用ソケットと螺合可能な第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなる固定装置を用いて前記新たなリングの前記K型セグメントを前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに解除可能に固定する。
【0014】
本発明に係る構築方法は、シールドを用いて掘削されたトンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工に適用される。各リングは、隣接する複数のA型セグメントと、それぞれが該A型セグメントに隣接する2つのB型セグメントと、該B型セグメント間のK型セグメントとからなる。前記A型セグメントの前記トンネルの周方向における長さ寸法は一定であり、前記B型セグメントの前記長さ寸法は前記トンネルの切羽側から坑口側に向けて漸増し、前記K型セグメントの前記長さ寸法は前記トンネルの切羽側から坑口側に向けて漸減する。前記A型セグメント、前記B型セグメント及び前記K型セグメントのそれぞれは、鉄筋コンクリートからなり、前記リングの内面に開放された内ねじが形成されたエレクタ用ソケットを備える。
【0015】
前記構築方法は、前記シールドの後方及び前記シールド内に複数のリングを互いに隣接して形成する第1ステップと、既に形成された複数のリングのうち、前記トンネルの切羽に最も近い1つのリングに反力をとって前記シールドを推進させる第2ステップと、新たなリングを、該新たなリングの前記K型セグメントが前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに隣接し、かつ前記新たなリングの前記K型セグメントの前記エレクタ用ソケットが前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントの前記エレクタ用ソケットと前記トンネルの軸線方向に整列されるように、前記シールド内に前記1つのリングに隣接して形成する第3ステップと、前記K型セグメントの前記エレクタ用ソケットと螺合可能な第1部材と、前記A型セグメント又は前記B型セグメントの前記エレクタ用ソケットと螺合可能な第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなる固定装置を用いて前記新たなリングの前記K型セグメントをこれに隣接する前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに解除可能に固定する第4ステップと、前記第2ステップないし前記第4ステップを繰り返す第5ステップとを含む。前記第5ステップは、前記第2ステップないし前記第3ステップを少なくとも1回行った後、前記新たなリングの前記K型セグメントの前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントへの固定を解除することを含む。
【0016】
前記新たなリングを前記1つのリングに隣接して形成した後、前記固定装置を用いて前記新たなリングの前記K型セグメントを前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに解除可能に固定するため、前記新たなリングにその周方向に圧縮力が作用したときに前記K型セグメントが前記切羽側へ移動して前記B型セグメント間から抜け出ることはない。このため、自動連結式継手を用いることなく前記新たなリングの前記K型セグメントが前記B型セグメント間から抜け出るのを防止することができる。
【0017】
前記構築方法に用いる固定装置は、それぞれが本体部分と該本体部分から突出する雄ねじ部分とからなる第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなる。前記連結手段は、前記第1部材の前記雄ねじ部分が挿入される貫通孔が一端部に形成され、また前記第2部材の前記雄ねじ部分が挿入される貫通孔が他端部に形成された帯状部材からなる。
【0018】
前記構築方法に用いる他の固定装置は、それぞれが、貫通孔が形成された本体部分と該本体部分から突出する雄ねじ部分とからなる第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなる。前記連結手段は、一端部が前記第1部材の前記貫通孔に挿入され、また他端部が前記第2部材の前記貫通孔に挿入される棒状部材であって各端部にねじ溝が形成されている棒状部材と、該棒状部材の各端部の前記貫通孔への挿入後に前記棒状部材の各端部に螺合される、前記棒状部材の各端部が前記貫通孔から抜けるのを阻止するナットとからなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、既に形成された複数のリングのうち切羽に最も近い1つのリングに隣接して新たなリングを形成した後、固定装置を用いて前記新たなリングのK型セグメントを前記1つのリングのA型セグメント又はB型セグメントに解除可能に固定するため、前記新たなリングにその周方向に圧縮力が作用したときに前記新たなリングの前記K型セグメントが切羽側へ移動してB型セグメント間から抜け出ることはない。このため、自動連結式継手を用いることなく前記新たなリングの前記K型セグメントが前記B型セグメント間から抜け出るのを防止するすることができる。これにより、セグメントの製造コストを低減することができ、シールドを用いたトンネルの施工費を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1に示すように、シールド10を用いて掘削されたトンネル12のための覆工14が構築されている。覆工14は、トンネル12の軸線方向に隣接する複数のリング16からなる。
【0021】
図2に示すように、各リング16は、隣接する複数のA型セグメント18と、それぞれが該A型セグメントに隣接する2つのB型セグメント20と、該B型セグメント間のK型セグメント22とからなる。A型セグメント18、B型セグメント20及びK型セグメント22のそれぞれは鉄筋コンクリートからなる。
【0022】
図3に示すように、A型セグメント18は、トンネル12の周方向における長さ寸法が一定であり、B型セグメント20は、前記長さ寸法がトンネル12の切羽側(図面下方)から坑口側(図面上方)に向けて漸増し、K型セグメント22は、前記長さ寸法が切羽側から坑口側に向けて漸減する。
【0023】
A型セグメント18、B型セグメント20及びK型セグメント22のそれぞれは、リング16の内面24に開放された内ねじ26が形成されたエレクタ用ソケット28を有する。エレクタ用ソケット28は、A型セグメント18、B型セグメント20及びK型セグメント22を組み立ててリング16を形成するとき、A型セグメント18、B型セグメント20及びK型セグメント22のそれぞれをエレクタ(図示せず)で吊り上げるために用いられる。また、エレクタ用ソケット28はグラウト用の注入孔としても用いられる。
【0024】
A型セグメント18は、リング16の周方向における一方の側面から突出するピン30と、他方の側面に形成され、トンネル12の軸線方向に伸びる溝32とを有する。一方のB型セグメント20aは、一方の側面から突出するピン30と、他方の側面に形成され、トンネル12の軸線方向に伸びる、切羽側の端面で開放された溝34とを有する。他方のB型セグメント20bは、一方の側面に形成され、トンネル12の軸線方向に伸びる、切羽側の端面で開放された溝34と、他方の側面に形成され、トンネル12の軸線方向に伸びる溝32とを有する。K型セグメント22は、2つの側面のそれぞれから突出するピン30を有する。
【0025】
隣接する2つのA型セグメント18のうち、一方のA型セグメント18の前記他方の側面は他方のA型セグメント18の前記一方の側面に接している。他方のA型セグメント18の前記一方の側面から突出するピン30は、他方のA型セグメント18の前記他方の側面に形成された溝32に受け入れられている。これにより、隣接する2つのA型セグメント18が互いに他方のA型セグメント18に対してリング16の径方向に移動するのを防止する。
【0026】
一方のB型セグメント20aの前記一方の側面はA型セグメント18の前記他方の側面に接しており、一方のB型セグメント20aの前記一方の側面から突出するピン30は、A型セグメント18の前記他方の側面に形成された溝32に受け入れられている。また、他方のB型セグメント20bの前記他方の側面はA型セグメント18の前記一方の側面に接しており、該側面から突出するピン30は、他方のB型セグメント20bの前記他方の側面に形成された溝32に受け入れられている。これにより、一方のB型セグメント20a及び他方のB型セグメント20bのそれぞれがA型セグメント18に対してリング16の径方向に移動するのを防止する。
【0027】
K型セグメント22の一方の側面及び他方の側面は、それぞれ、一方のB型セグメント20aの前記他方の側面及び他方のB型セグメント20bの前記一方の側面に接している。K型セグメント22の前記一方の側面から突出するピン30は、一方のB型セグメント20aの前記他方の側面に形成された溝34に受け入れられ、K型セグメント22の前記他方の側面から突出するピン30は、他方のB型セグメント20bの前記一方の側面に形成された溝34に受け入れられている。これにより、K型セグメント22が一方のB型セグメント20a及び他方のB型セグメント20bに対してリング16の径方向に移動するのを防止する。
【0028】
複数のリング16のK型セグメント22は、図3に示したように、千鳥状に配置されている。すなわち、隣接する2つのリング16のうち、切羽側に位置するリング16のK型セグメント22と、坑口側に位置するリング16のK型セグメント22とは、互いに隣接していない。図示の例では、切羽側に位置するリング16のK型セグメント22は、坑口側に位置するリング16のB型セグメント20a、20bに隣接している。切羽側に位置するリング16のA型セグメント18及びB型セグメント20a、20bのそれぞれは、坑口側に位置するリング16のA型セグメント18、B型セグメント20a、20b及びK型セグメント22のうち少なくとも2つに隣接している。切羽側に位置するリング16のK型セグメント22は、坑口側に位置するリング16のB型セグメント20a、20bに隣接している図示の例に代え、坑口側に位置するリング16のA型セグメント18に隣接していてもよい。
【0029】
A型セグメント18、B型セグメント20a、20b及びK型セグメント22のそれぞれは、坑口側の端面から突出するピン36と、切羽側の端面に形成され、ピン36を受け入れる孔38とを有する。
【0030】
隣接する2つのリング16のうち、切羽側に位置するリング16のK型セグメント22の坑口側の端面から突出するピン36は、坑口側に位置するリング16のB型セグメント20a、20bの切羽側の端面に形成された孔38に受け入れられている。切羽側に位置するリング16のA型セグメント18及びB型セグメント20a、20bのそれぞれの坑口側の端面から突出するピン36は、坑口側に位置するリング16のA型セグメント18、B型セグメント20a、20b又はK型セグメント22の切羽側の端面に形成された孔38に受け入れられている。これにより、切羽側に位置するリング16が、坑口側に位置するリング16に対してリング16の軸線に垂直な方向に移動するのを防止する。
【0031】
ピン36は太さが一定であり、孔38は、その内面から突出する、相対する一対の爪と、各爪に前記孔の中心に向けて弾性力を加えるスプリングとが設けられていない。すなわち、ピン36及び孔38は、それぞれ、自動連結式継手の雄金具及び雌金具と異なり、切羽側に位置するリング16のK型セグメント22と、坑口側に位置するリング16のB型セグメント20a、20bとは、自動連結式継手を用いた連結がなされていない。また、切羽側に位置するリング16のA型セグメント18及びB型セグメント20a、20bのそれぞれと、坑口側に位置するリング16のA型セグメント18、B型セグメント20又はK型セグメント22とについても、自動連結式継手を用いた連結はなされていない。
【0032】
覆工14を構築するとき、まず、シールド10の後方及びシールド10内に複数のリング16を互いに隣接して形成する。次に、既に形成された複数のリング16のうち、トンネル12の切羽に最も近いリング16aに反力をとってシールド10を地盤40の中へ推進させる(図1)。シールド10内に複数のシールドジャッキ42が配置されており、シールド10の地盤40中へ推進は、シールドジャッキ42を用いて行う。シールド10の推進により、シールド10内に新たな空間が形成される。
【0033】
次に、図4に示すように、新たなリング16bを前記空間にリング16aに隣接して形成する。このとき、図5に示すように、新たなリング16bのK型セグメント22がリング16aのB型セグメント20に隣接し、かつ新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28がリング16aのB型セグメント20のエレクタ用ソケット28とトンネル12の軸線方向に整列されるようにする。
【0034】
新たなリング16bを形成するとき、まず、複数のA型セグメント18を隣接して配置する。このとき、隣接する2つのA型セグメント18のうち、一方のA型セグメント18の前記他方の側面に形成された溝32は、他方のA型セグメント18の前記一方の側面から突出するピン30を受け入れる(図3)。また、各A型セグメント18の坑口側の端面から突出するピン36は、リング16aのA型セグメント18又はB型セグメント20a、20bの切羽側の端面に形成された孔38に受け入れられる。
【0035】
次に、2つのB型セグメント20のそれぞれをA型セグメント18に隣接して配置する。このとき、一方のB型セグメント20aの前記一方の側面から突出するピン30は、A型セグメント18の前記他方の側面に形成された溝32に受け入れられ、他方のB型セグメント20bの前記他方の側面に形成された溝32に、A型セグメント18の前記一方の側面から突出するピン30が受け入れられる(図3)。また、各B型セグメント20a、20bの坑口側の端面から突出するピン36は、リング16aのA型セグメント18、B型セグメント20a、20b又はK型セグメント22の切羽側の端面に形成された孔38に受け入れられる。
【0036】
その後、K型セグメント22を切羽側から坑口側に向けてB型セグメント20間に挿入する。このとき、K型セグメント22の前記一方の側面から突出するピン30は、一方のB型セグメント20aの前記他方の側面に形成された溝34に受け入れられ、K型セグメント22の前記他方の側面から突出するピン30は、他方のB型セグメント20bの前記一方の側面に形成された溝34に受け入れられる。また、K型セグメント22の坑口側の端面から突出するピン36は、リング16aのB型セグメント20a、20bの切羽側の端面に形成された孔38に受け入れられる。なお、各B型セグメント20a、20bの溝34は、各B型セグメント20a、20bの切羽側の端面で開放されているため、両B型セグメント20a、20bの配置後であってもK型セグメント22のピン30を受け入れることができる。
【0037】
K型セグメント22のトンネル12の周方向における長さ寸法が切羽側から坑口側に向けて漸減するため、仮に、B型セグメント20間の間隔が、据付上の誤差により、設計上必要とされる間隔より狭くなった場合でもK型セグメント22をB型セグメント20間に挿入することができる。
【0038】
新たなリング16bの形成時、該新たなリングのK型セグメント22がリング16aのB型セグメント20に隣接するようにする図5に示した例に代え、新たなリング16bのK型セグメント22がリング16aのA型セグメント18に隣接するようにしてもよい。この場合、新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28がリング16aのA型セグメント18のエレクタ用ソケット28とトンネル12の軸線方向に整列されるようにする。
【0039】
その後、図6に示すように、固定装置44を用いて新たなリング16bのK型セグメント22をこれに隣接するリング16aのB型セグメント20に解除可能に固定する。固定装置44は、K型セグメント22のエレクタ用ソケット28と螺合可能な第1部材46と、A型セグメント18又はB型セグメント20のエレクタ用ソケット28と螺合可能な第2部材48と、第1部材46及び第2部材48を連結する連結手段50とからなる。
【0040】
図7に示す例では、固定装置44の第1部材46及び第2部材48のそれぞれは、本体部分52と、該本体部分から突出する雄ねじ部分54とからなる。固定装置44の連結手段50は、第1部材46の雄ねじ部分54が挿入される貫通孔56が一端部に形成され、また第2部材48の雄ねじ部分54が挿入される貫通孔58が他端部に形成された帯状部材60からなる。
【0041】
固定装置44を用いて新たなリング16bのK型セグメント22をリング16aのB型セグメント20に解除可能に固定するとき、まず、帯状部材60を新たなリング16b及びリング16aの内面に沿って配置する。このとき、帯状部材60の貫通孔56が新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28と整列され、また帯状部材60の貫通孔58がリング16aのB型セグメント20のエレクタ用ソケット28と整列されるようにする。
【0042】
次に、第1部材46の雄ねじ部分54を帯状部材60の貫通孔56に挿入し、新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28の内ねじ26と螺合する。また、第2部材48の雄ねじ部分54を帯状部材60の貫通孔58に挿入し、リング16aのB型セグメント20のエレクタ用ソケット28の内ねじ26と螺合する。このようにして固定装置44をリング16b及びリング16aに取り付ける。
【0043】
新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28と螺合された第1部材46と、リング16aのB型セグメント20と螺合された第2部材48とが帯状部材60により連結されているため、新たなリング16bのK型セグメント22がリング16aのB型セグメント20から離れて切羽側へ移動することはない。
【0044】
なお、新たなリング16bのK型セグメント22がリング16aのA型セグメント18に隣接する場合、新たなリング16bのK型セグメント22をリング16aのB型セグメント20に固定装置44を用いて解除可能に固定する図6に示した例に代え、新たなリング16bのK型セグメント22をリング16aのA型セグメント18に固定装置44を用いて解除可能に固定する。
【0045】
固定装置44を用いて新たなリング16bのK型セグメント22をリング16aのB型セグメント20に解除可能に固定した後、図8に示すように、既に形成された複数のリング16のうちトンネル12の切羽に最も近いリング、すなわちリング16bに反力をとってシールド10を地盤40中へ推進させる。このとき、シールドジャッキ42を伸長させて、該シールドジャッキにリング16bからの反力を担わせつつシールド10を地盤40に向けて押し出す。シールド10の推進後、シールドジャッキ42を縮める。
【0046】
シールド10の推進により、リング16bはシールド10により保護されなくなる。このため、リング16bの外面に土圧及び水圧が作用し、リング16bに該リングの周方向の圧縮力が作用する。K型セグメント22のトンネル12の周方向における長さ寸法が切羽側から坑口側に向けて漸減するため、リング16bに前記圧縮力が作用することにより、リング16bのK型セグメント22にこれを切羽側へ移動させようとする力が作用する。
【0047】
リング16bのK型セグメントがリング16aのB型セグメント20に固定装置44を用いて解除可能に固定されているため、リング16bに前記圧縮力が作用してリング16bのK型セグメント22が切羽側へ移動することはない。すなわち、リング16bのK型セグメント22がB型セグメント20間から抜け出ることはない。このため、自動連結式継手を用いることなくリング16bのK型セグメント22がB型セグメント20間から抜け出るのを防止するすることができる。これにより、セグメントの製造コストを低減することができ、シールドを用いたトンネルの施工費を低減することができる。
【0048】
その後、新たなリング(図示せず)を、リング16bを形成したときと同様に、シールド10内にリング16bに隣接して形成する。その後、固定装置44をリング16b及びリング16aから取り外してリング16bのK型セグメント22のリング16aのB型セグメント20への固定を解除する。リング16bに隣接して形成された前記新たなリングが、リング16bのK型セグメント22が切羽側へ移動することを阻止するため、前記固定の解除後においても、リング16bのK型セグメント22がB型セグメント20間から抜け出ることはない。
【0049】
その後、リング16b及びリング16aから取り外された固定装置44を用いて前記新たなリングのK型セグメントをこれに隣接するリング16bのA型セグメント18又はB型セグメント20に解除可能に固定する。このように固定装置44を流用することにより、覆工14の構築をより経済的に行うことができる。前記新たなリングのK型セグメントをリング16bのA型セグメント18又はB型セグメント20に解除可能に固定するために、リング16b及びリング16aから取り外された固定装置44を用いる上記の例に代え、新たに用意した固定装置44を用いてもよい。
【0050】
その後、シールド10を推進させること、既に形成された複数のリング16のうち切羽に最も近い1つのリングに隣接して新たなリングを形成すること、固定装置44を用いて前記新たなリングのK型セグメントをこれに隣接する前記1つのリングのA型セグメント18又はB型セグメント20に解除可能に固定することを繰り返す。
【0051】
リング16bのK型セグメント22のリング16aのB型セグメント20への固定の解除は、1つの新たなリングがリング16bに隣接して形成された後になされる上記の例に代え、複数の新たなリングがリング16bに隣接して形成された後になされてもよい。この場合、リング16b及びリング16aから取り外された固定装置44を、リング16bの形成後に形成された前記複数の新たなリングのうち切羽に最も近い2つのリングに取り付けることができる。
【0052】
図9に示す例では、固定装置44の連結手段50は、帯状部材60からなる図7に示した例に代え、棒状部材62と該棒状部材の各端部に螺合されるナット64とからなる。棒状部材62は各端部にねじ溝が形成されている。固定装置44の第1部材46及び第2部材48のそれぞれは、本体部分52に貫通孔66が形成されている。
【0053】
この場合、固定装置44を用いて新たなリング16bのK型セグメント22をリング16aのB型セグメント20に解除可能に固定するとき、まず、第1部材46の雄ねじ部分54を新たなリング16bのK型セグメント22のエレクタ用ソケット28の内ねじ26と螺合する。また、第2部材48の雄ねじ部分54をリング16aのB型セグメント20のエレクタ用ソケット28の内ねじ26と螺合する。
【0054】
次に、棒状部材62の一端部を第1部材46の貫通孔66に挿入し、また棒状部材62の他端部を第2部材48の貫通孔66に挿入する。その後、ナット64を棒状部材62の各端部に螺合し、第1部材46及び第2部材48のそれぞれに接するまで締め付ける。このようにして固定装置44をリング16b及びリング16aに取り付ける。ナット64は、棒状部材62の各端部が貫通孔66から抜けるのを阻止する。第1部材46と第2部材48とが、棒状部材62及びその各端部に螺合されたナット64により連結されているため、新たなリング16bのK型セグメント22がリング16aのB型セグメント20から離れて切羽側へ移動することはない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】シールドを用いて掘削されたトンネルの覆工の縦断面図。
【図2】図1の線2における覆工の横断面図。
【図3】覆工を構成するリングの展開図。
【図4】新たなリングの形成後における覆工の縦断面図。
【図5】新たなリングの形成後における覆工の斜視図。
【図6】新たなリングのK型セグメントを、既に形成された複数のリングのうち切羽に最も近いリングのB型セグメントに固定装置を用いて解除可能に固定した後における覆工の斜視図。
【図7】本発明に係る固定装置の側面図。
【図8】新たなリングに反力をとってシールドを推進させた後における覆工の縦断面図。
【図9】本発明に係る他の固定装置の側面図。
【符号の説明】
【0056】
10 シールド
12 トンネル
14 覆工
16 リング
18 A型セグメント
20 B型セグメント
22 K型セグメント
24 内面
26 内ねじ
28 エレクタ用ソケット
44 固定装置
46 第1部材
48 第2部材
50 連結手段
52 本体部分
54 雄ねじ部分
56、58、66 貫通孔
60 帯状部材
62 棒状部材
64 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドを用いて掘削されたトンネルの軸線方向に隣接する複数のリングからなる覆工の構築方法であって、
各リングが、隣接する複数のA型セグメントと、それぞれが該A型セグメントに隣接する2つのB型セグメントと、該B型セグメント間のK型セグメントとからなり、前記A型セグメントの前記トンネルの周方向における長さ寸法が一定であり、前記B型セグメントの前記長さ寸法が前記トンネルの切羽側から坑口側に向けて漸増し、前記K型セグメントの前記長さ寸法が前記トンネルの切羽側から坑口側に向けて漸減し、前記A型セグメント、前記B型セグメント及び前記K型セグメントのそれぞれが、鉄筋コンクリートからなり、前記リングの内面に開放された内ねじが形成されたエレクタ用ソケットを備え、
前記構築方法は、前記シールドの後方及び前記シールド内に複数のリングを互いに隣接して形成する第1ステップと、
既に形成された複数のリングのうち、前記トンネルの切羽に最も近い1つのリングに反力をとって前記シールドを推進させる第2ステップと、
新たなリングを、該新たなリングの前記K型セグメントが前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに隣接し、かつ前記新たなリングの前記K型セグメントの前記エレクタ用ソケットが前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントの前記エレクタ用ソケットと前記トンネルの軸線方向に整列されるように、前記シールド内に前記1つのリングに隣接して形成する第3ステップと、
前記K型セグメントの前記エレクタ用ソケットと螺合可能な第1部材と、前記A型セグメント又は前記B型セグメントの前記エレクタ用ソケットと螺合可能な第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなる固定装置を用いて前記新たなリングの前記K型セグメントをこれに隣接する前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントに解除可能に固定する第4ステップと、
前記第2ステップないし前記第4ステップを繰り返す第5ステップとを含み、
該第5ステップは、前記第2ステップないし前記第3ステップを少なくとも1回行った後、前記新たなリングの前記K型セグメントの前記1つのリングの前記A型セグメント又は前記B型セグメントへの固定を解除することを含む、覆工の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の覆工の構築方法に用いる固定装置であって、それぞれが本体部分と該本体部分から突出する雄ねじ部分とからなる第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなり、該連結手段は、前記第1部材の前記雄ねじ部分が挿入される貫通孔が一端部に形成され、また前記第2部材の前記雄ねじ部分が挿入される貫通孔が他端部に形成された帯状部材からなる、固定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の覆工の構築方法に用いる固定装置であって、それぞれが、貫通孔が形成された本体部分と該本体部分から突出する雄ねじ部分とからなる第1部材及び第2部材と、前記第1部材及び前記第2部材を連結する連結手段とからなり、該連結手段は、一端部が前記第1部材の前記貫通孔に挿入され、また他端部が前記第2部材の前記貫通孔に挿入される棒状部材であって各端部にねじ溝が形成されている棒状部材と、該棒状部材の各端部の前記貫通孔への挿入後に前記棒状部材の各端部に螺合される、前記棒状部材の各端部が前記貫通孔から抜けるのを阻止するナットとからなる、固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−7739(P2009−7739A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−167060(P2007−167060)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】