覆工板
【課題】土木建設分野等で用いられる、H形鋼を連結して構成された覆工板を提供する。
【解決手段】断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向を揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成され、必要に応じて、長手方向に縞状突起が形成されているもののみで構成したり、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼が交互に連結して構成し、H形鋼のフランジ外面における縞状突起は、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔の比が0.07以上、0.2以下とする。
【解決手段】断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向を揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成され、必要に応じて、長手方向に縞状突起が形成されているもののみで構成したり、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼が交互に連結して構成し、H形鋼のフランジ外面における縞状突起は、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔の比が0.07以上、0.2以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木建設分野で用いられる、H形鋼を連結して構成された覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
覆工板は、市街地等の地下工事の際、工事空間上方での交通を確保するための架設地盤、架設床等を構築する際に用いられる。図10はその一例を示し、図示した覆工板は、H形鋼1を複数本並列に配置してフランジ端部4を溶接し、側板3を付けて、厚みを備えた平面長方形に構成され、横リブ13により補強されている。
【0003】
一般的に覆工板の機能として、(1)車両通行に対する耐荷力、耐久性、(2)車両のタイヤを通じて推進力を生むための表面摩擦抵抗、(3)車両通行時の騒音・振動の低減が要求され、上記(1)の機能を満足させるため、鋼性覆工板では、部材として使用するH形鋼のサイズや溶接部の仕様、側板や横リブのサイズが決定されている。
【0004】
特許文献1には、覆工板を構成するH形鋼のフランジ部外面に突起形状を設けて、その裏面には内部に気泡を有するゴム材などの防振機能および吸音機能をもたせた裏面材を取り付けた、上記(2)、(3)の機能を満足させる覆工板が記載されている。H形鋼のフランジ部外面の突起21は、図9に示すように、H形鋼長手方向およびH形鋼長手直角方向の格子状の形状となっている。突起形状は、軌道のある鉄道などと異なり、自動車はあらゆる方向に進むことを想定しなくてはいけないため、全方向にすべり摩擦抵抗が効くように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−247506号公報
【特許文献2】特開昭62−107802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、降雨時のすべり摩擦抵抗性能向上や騒音・振動対策の要求レベルの高まりから、表面突起の上に、樹脂系材やアスファルト材などにより表面コーティングを行うことが多くなっている。
【0007】
図9に示した格子状の突起形状は、表面コーティングの定着にも重要な役割を果たしていると思われるが、元来、直接露出を前提として設定されたものであり、表面コーティングを適用することを想定して決定されたものではない。従来の格子状の突起形状は、2方向に突起が形成されるため、少なくとも2種類の圧延ロールが必要であり、従って圧延パス数も2回以上が必要であった。(図8)
そこで、本発明は、表面コーティングの定着性が向上し、かつ加工コストが従来よりも低減された外面突起形状を有する覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、以下の手段で達成可能である。
1.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成されていることを特徴とする覆工板。
2.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されていることを特徴とする覆工板。
3.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
4.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
5.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
6.H形鋼のフランジ外面における縞状突起が、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔の比が0.07以上、0.2以下であることを特徴とする1乃至5のいずれか一つに記載の覆工板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、H形鋼のフランジ外面に格子状の突起を加工する場合に比べて、突起形成に要する加工コストが削減できるので、表面コーティングの定着性が格子状の突起形状の場合と同等以上で安価な覆工板が得られ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図2】図1に示した覆工板に使用するH形鋼を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図3】縞状突起を説明する図。
【図4】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図5】実施例に用いた試験体を説明する図。
【図6】水平せん断荷重と押し抜きすべり量の関係を示す図。
【図7】突起高さhと突起間隔Pの比h/Pと最大水平せん断荷重との関係を示す図。
【図8】格子状の突起形状の加工方法を説明する図。
【図9】格子状の突起形状を説明する図。
【図10】覆工板を説明する図。
【図11】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図12】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る覆工板は、フランジ外面に縞状突起が一方向に形成されているH形鋼を用いることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る覆工板を説明する図、図2は図1に示した覆工板に使用するH形鋼を説明する図で、いずれも斜め上方から俯瞰した外観図を示す。
【0013】
覆工板は断面形状が同じ複数本のH形鋼1をフランジ外面11の高さと長手方向を揃えて、隣接するフランジの端部4同士を突き合わせ溶接して構成されている。覆工板の端部となるH形鋼1は覆工板の側面となる側の上下のフランジ間に側板(板状部材)3を取り付けている。H形鋼1は長手方向を圧延方向とし、H形鋼1のフランジ外面11は、長手方向に、複数本の突起21が等間隔に加工された、縞状突起を有している。
【0014】
図3は縞状突起を説明する図で、縞状の突起21は、表面コーティングの定着性を確保し、車両の走行のために必要な作用摩擦力が得られるように、突起高さhと突起間隔Pの比h/Pを規定する。
【0015】
道路橋示方書で用いられるT活荷重(大型車両輪荷重)から算定される作用摩擦力(せん断荷重)は、以下の如く、試験体幅換算で45kN(T活荷重による発生摩擦力水準(45kN)と言う場合がある。)である。本発明では、上記の作用摩擦力水準に対して、長期供用時の安全率2倍程度を考慮した90kN程度以上のせん断荷重に対して、覆工板表面コーティングの定着性が確保できることを、性能目標としている。
【0016】
・輪荷重(T活荷重) 100kN(一輪あたり)
・衝撃時荷重 1.4×100kN=140kN
乾燥路面(アスファルト)における摩擦係数
μ=0.8程度
・作用摩擦力=140kN×0.8=112kN (一輪あたり)
・試験体幅換算では45kN
試験体幅(200mm)/タイヤ幅(500mm)×112kN=45kN
表1に突起高さhおよび突起間隔Pが表面コーティングの定着強度に及ぼす影響を調査した結果を示す。試験体は、縞状突起付きH形鋼(突起の高さは0〜2.5mm、突起間隔は10mm、0≦h/P≦0.25)から長さ200mmを切り出し、表面部分をコーティングした。
【0017】
各試験体に載荷冶具を反応アクリル系の強力な接着剤(引張りせん断強度24N/mm2以上)で取り付けた後、鉛直方向を拘束した状態で、表面コーティング定着部を水平に押し抜き、最大水平せん断荷重を求めた。
【0018】
【表1】
【0019】
図7に突起高さhと突起間隔Pの比h/P、最大水平せん断荷重の関係を示す。h/Pが0.07より小さいと突起による支圧効果が十分でなく、表面コーティングが滑って十分な定着が得られない。その結果、目標性能となる90kN程度以上のせん断耐力に到達していない。
【0020】
一方、h/Pが0.2を超えると、表面コーティング自体のせん断破壊が生じ、定着強度は高まらないため、0.07≦h/P≦0.2とした。表面コーティングの定着性を確保するため、なお、突起高さhは、表面コーティング取付け作業時に塵埃等が表面付着しても性能が著しく低下しないように、1.0mm以上とする。
【0021】
H形鋼において縞状突起を加工するフランジ外面は、覆工板で表面コーティングを必要とする板面に応じて両面または片面とする。H形鋼1のフランジ外面11に、長手方向に、複数本の突起21を等間隔に配置した縞状突起は、熱間圧延においてロール円周方向に等間隔に溝を設けた竪ロール(例えば、図8のU2竪ロール)を用いて加工する。
【0022】
本発明に係る覆工板は、H形鋼のフランジ外面における突起形状をH形鋼長手方向に縞状の一方向突起としたもので、従来の格子状の突起形状に比べて、突起形成に要する加工コストを削減することが可能である。
【0023】
現在最も安価な突起形成方法は、H形鋼の圧延成形時に、同時に突起を形成する方法である(特許文献2)。本発明では、突起形状を一方向突起としたことで、1種類の圧延ロールと1回の圧延パスで突起形成が可能となり、H形鋼の製造加工コストとしては10%程度削減可能となる。
【0024】
また、突起形状を縞状の一方向突起としたことで、従来突起形状(格子状)に比べて突起の欠損部分が少なく、突起(鋼材)と表面コーティング材の接触面が増し、表面コーティングの定着性が向上する。
【0025】
本発明に係る覆工板は、車両の通行する方向と縞状突起の方向が平行となるように設置しても優れた水平せん断荷重が得られるが、悪条件下にあっては直交するように設置することがより好ましい。
【0026】
図4に、フランジ外面にH形鋼長手方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面にH形鋼長手直角方向の縞状突起を有するH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。各H形鋼における突起高さhは1.0mm以上、0.07≦h/P≦0.2とする。
【0027】
図示した覆工板は車両の通行する方向がどのようであっても優れた水平せん断荷重が得られるので、交差点などに好適である。2種類のH形鋼を必要とするが、上述したように各H形鋼の加工コストが従来突起形状(格子状)に比べて安いため、覆工板としては従来突起形状(格子状)のものと略同等のコストで製造可能である。
【0028】
図11に、フランジ外面にH形鋼長手方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。突起を有するH形鋼における突起高さhは1.0mm以上、突起高さhと突起間隔Pの比h/Pを、0.07≦h/P≦0.2とする。突起のないH形鋼を部分的に使用することで、さらにコスト低減が可能である。樹脂系材やアスファルト材などの表面コーティングは、弾性に富む材料であるため、覆工板表面に部分的に突起があれば、ひび割れや破断を生じることなく定着力が伝達することから、このような構造も可能である。
【0029】
図12に、フランジ外面にH形鋼長手直角方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。突起を有するH形鋼における突起高さhは1.0mm以上、0.07≦h/P≦0.2とする。突起のないH形鋼を部分的に使用することで、さらにコスト低減が可能である。樹脂系材やアスファルト材などの表面コーティングは、弾性に富む材料であるため、覆工板表面に部分的に突起があれば、ひび割れや破断を生じることなく定着力が伝達することから、このような構造も可能である。
【0030】
なお、これまでの図には覆工板の上下両面ともに突起を有する構造を示したが、車両通行面となる覆工板の上面のみに突起を有する構造としてもよい。
【実施例】
【0031】
フランジ外面の加工状況が異なるH形鋼を用いて、表面コーティングの定着強度を確認する試験を行った。図5に試験体を示す。従来からの突起形状(格子状突起)の試験体、本発明による形状(縞状突起)の試験体、および参考として突起なしの試験体を用いた。
【0032】
各試験体は、各形状の突起付きH形鋼から長さ200mmを切り出し、表面部分をコーティングした。各試験体に載荷冶具を反応アクリル系の強力な接着剤(引張りせん断強度24N/mm2以上)で取り付けた後、鉛直方向を拘束した状態で、表面コーティング定着部を水平に押し抜く方法で試験を実施した。突起の高さは格子状突起、縞状突起共に1.0mmとし、突起間隔は格子状突起、縞状突起共に10mmとした。
【0033】
図6に水平せん断荷重と押し抜きすべり量の関係を示す。表面コーティング部の最大せん断荷重は本発明による形状(縞状突起)と従来からの突起形状(格子状突起)は同程度であったが、初期せん断剛性(最大せん断荷重が得られるすべり量で表す)は、本発明による形状(縞状突起)が従来からの突起形状(格子状突起)を大きく上回り、本発明による形状は、従来からの突起形状に比べて表面コーティング部とH形鋼との間に大きなすべりが発生せず、表面コーティングの定着性が高まることが確認できた。
【0034】
なお、突起を有する試験体(本発明による形状(縞状突起)および従来からの突起形状(格子状突起))の場合、いずれもT活荷重による発生摩擦力水準(45kN)を2.5倍程度上回っているのに対し、突起なしの試験体ではT活荷重による発生摩擦力水準(45kN)を下回っており、定着強度不足であった。
【符号の説明】
【0035】
1 H形鋼
2 格子状突起
3 側板
4 フランジ端部
5 突起なしH形鋼
11 フランジ外面
13 横リブ
21 突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、土木建設分野で用いられる、H形鋼を連結して構成された覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
覆工板は、市街地等の地下工事の際、工事空間上方での交通を確保するための架設地盤、架設床等を構築する際に用いられる。図10はその一例を示し、図示した覆工板は、H形鋼1を複数本並列に配置してフランジ端部4を溶接し、側板3を付けて、厚みを備えた平面長方形に構成され、横リブ13により補強されている。
【0003】
一般的に覆工板の機能として、(1)車両通行に対する耐荷力、耐久性、(2)車両のタイヤを通じて推進力を生むための表面摩擦抵抗、(3)車両通行時の騒音・振動の低減が要求され、上記(1)の機能を満足させるため、鋼性覆工板では、部材として使用するH形鋼のサイズや溶接部の仕様、側板や横リブのサイズが決定されている。
【0004】
特許文献1には、覆工板を構成するH形鋼のフランジ部外面に突起形状を設けて、その裏面には内部に気泡を有するゴム材などの防振機能および吸音機能をもたせた裏面材を取り付けた、上記(2)、(3)の機能を満足させる覆工板が記載されている。H形鋼のフランジ部外面の突起21は、図9に示すように、H形鋼長手方向およびH形鋼長手直角方向の格子状の形状となっている。突起形状は、軌道のある鉄道などと異なり、自動車はあらゆる方向に進むことを想定しなくてはいけないため、全方向にすべり摩擦抵抗が効くように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−247506号公報
【特許文献2】特開昭62−107802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、降雨時のすべり摩擦抵抗性能向上や騒音・振動対策の要求レベルの高まりから、表面突起の上に、樹脂系材やアスファルト材などにより表面コーティングを行うことが多くなっている。
【0007】
図9に示した格子状の突起形状は、表面コーティングの定着にも重要な役割を果たしていると思われるが、元来、直接露出を前提として設定されたものであり、表面コーティングを適用することを想定して決定されたものではない。従来の格子状の突起形状は、2方向に突起が形成されるため、少なくとも2種類の圧延ロールが必要であり、従って圧延パス数も2回以上が必要であった。(図8)
そこで、本発明は、表面コーティングの定着性が向上し、かつ加工コストが従来よりも低減された外面突起形状を有する覆工板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題は、以下の手段で達成可能である。
1.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成されていることを特徴とする覆工板。
2.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されていることを特徴とする覆工板。
3.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
4.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
5.断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
6.H形鋼のフランジ外面における縞状突起が、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔の比が0.07以上、0.2以下であることを特徴とする1乃至5のいずれか一つに記載の覆工板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、H形鋼のフランジ外面に格子状の突起を加工する場合に比べて、突起形成に要する加工コストが削減できるので、表面コーティングの定着性が格子状の突起形状の場合と同等以上で安価な覆工板が得られ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図2】図1に示した覆工板に使用するH形鋼を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図3】縞状突起を説明する図。
【図4】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図5】実施例に用いた試験体を説明する図。
【図6】水平せん断荷重と押し抜きすべり量の関係を示す図。
【図7】突起高さhと突起間隔Pの比h/Pと最大水平せん断荷重との関係を示す図。
【図8】格子状の突起形状の加工方法を説明する図。
【図9】格子状の突起形状を説明する図。
【図10】覆工板を説明する図。
【図11】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【図12】本発明の他の実施例に係る覆工板を説明する斜め上方俯瞰外観図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る覆工板は、フランジ外面に縞状突起が一方向に形成されているH形鋼を用いることを特徴とする。以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例に係る覆工板を説明する図、図2は図1に示した覆工板に使用するH形鋼を説明する図で、いずれも斜め上方から俯瞰した外観図を示す。
【0013】
覆工板は断面形状が同じ複数本のH形鋼1をフランジ外面11の高さと長手方向を揃えて、隣接するフランジの端部4同士を突き合わせ溶接して構成されている。覆工板の端部となるH形鋼1は覆工板の側面となる側の上下のフランジ間に側板(板状部材)3を取り付けている。H形鋼1は長手方向を圧延方向とし、H形鋼1のフランジ外面11は、長手方向に、複数本の突起21が等間隔に加工された、縞状突起を有している。
【0014】
図3は縞状突起を説明する図で、縞状の突起21は、表面コーティングの定着性を確保し、車両の走行のために必要な作用摩擦力が得られるように、突起高さhと突起間隔Pの比h/Pを規定する。
【0015】
道路橋示方書で用いられるT活荷重(大型車両輪荷重)から算定される作用摩擦力(せん断荷重)は、以下の如く、試験体幅換算で45kN(T活荷重による発生摩擦力水準(45kN)と言う場合がある。)である。本発明では、上記の作用摩擦力水準に対して、長期供用時の安全率2倍程度を考慮した90kN程度以上のせん断荷重に対して、覆工板表面コーティングの定着性が確保できることを、性能目標としている。
【0016】
・輪荷重(T活荷重) 100kN(一輪あたり)
・衝撃時荷重 1.4×100kN=140kN
乾燥路面(アスファルト)における摩擦係数
μ=0.8程度
・作用摩擦力=140kN×0.8=112kN (一輪あたり)
・試験体幅換算では45kN
試験体幅(200mm)/タイヤ幅(500mm)×112kN=45kN
表1に突起高さhおよび突起間隔Pが表面コーティングの定着強度に及ぼす影響を調査した結果を示す。試験体は、縞状突起付きH形鋼(突起の高さは0〜2.5mm、突起間隔は10mm、0≦h/P≦0.25)から長さ200mmを切り出し、表面部分をコーティングした。
【0017】
各試験体に載荷冶具を反応アクリル系の強力な接着剤(引張りせん断強度24N/mm2以上)で取り付けた後、鉛直方向を拘束した状態で、表面コーティング定着部を水平に押し抜き、最大水平せん断荷重を求めた。
【0018】
【表1】
【0019】
図7に突起高さhと突起間隔Pの比h/P、最大水平せん断荷重の関係を示す。h/Pが0.07より小さいと突起による支圧効果が十分でなく、表面コーティングが滑って十分な定着が得られない。その結果、目標性能となる90kN程度以上のせん断耐力に到達していない。
【0020】
一方、h/Pが0.2を超えると、表面コーティング自体のせん断破壊が生じ、定着強度は高まらないため、0.07≦h/P≦0.2とした。表面コーティングの定着性を確保するため、なお、突起高さhは、表面コーティング取付け作業時に塵埃等が表面付着しても性能が著しく低下しないように、1.0mm以上とする。
【0021】
H形鋼において縞状突起を加工するフランジ外面は、覆工板で表面コーティングを必要とする板面に応じて両面または片面とする。H形鋼1のフランジ外面11に、長手方向に、複数本の突起21を等間隔に配置した縞状突起は、熱間圧延においてロール円周方向に等間隔に溝を設けた竪ロール(例えば、図8のU2竪ロール)を用いて加工する。
【0022】
本発明に係る覆工板は、H形鋼のフランジ外面における突起形状をH形鋼長手方向に縞状の一方向突起としたもので、従来の格子状の突起形状に比べて、突起形成に要する加工コストを削減することが可能である。
【0023】
現在最も安価な突起形成方法は、H形鋼の圧延成形時に、同時に突起を形成する方法である(特許文献2)。本発明では、突起形状を一方向突起としたことで、1種類の圧延ロールと1回の圧延パスで突起形成が可能となり、H形鋼の製造加工コストとしては10%程度削減可能となる。
【0024】
また、突起形状を縞状の一方向突起としたことで、従来突起形状(格子状)に比べて突起の欠損部分が少なく、突起(鋼材)と表面コーティング材の接触面が増し、表面コーティングの定着性が向上する。
【0025】
本発明に係る覆工板は、車両の通行する方向と縞状突起の方向が平行となるように設置しても優れた水平せん断荷重が得られるが、悪条件下にあっては直交するように設置することがより好ましい。
【0026】
図4に、フランジ外面にH形鋼長手方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面にH形鋼長手直角方向の縞状突起を有するH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。各H形鋼における突起高さhは1.0mm以上、0.07≦h/P≦0.2とする。
【0027】
図示した覆工板は車両の通行する方向がどのようであっても優れた水平せん断荷重が得られるので、交差点などに好適である。2種類のH形鋼を必要とするが、上述したように各H形鋼の加工コストが従来突起形状(格子状)に比べて安いため、覆工板としては従来突起形状(格子状)のものと略同等のコストで製造可能である。
【0028】
図11に、フランジ外面にH形鋼長手方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。突起を有するH形鋼における突起高さhは1.0mm以上、突起高さhと突起間隔Pの比h/Pを、0.07≦h/P≦0.2とする。突起のないH形鋼を部分的に使用することで、さらにコスト低減が可能である。樹脂系材やアスファルト材などの表面コーティングは、弾性に富む材料であるため、覆工板表面に部分的に突起があれば、ひび割れや破断を生じることなく定着力が伝達することから、このような構造も可能である。
【0029】
図12に、フランジ外面にH形鋼長手直角方向の縞状突起を有するH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼を交互に並べた覆工板の斜め上方外観図を示す。突起を有するH形鋼における突起高さhは1.0mm以上、0.07≦h/P≦0.2とする。突起のないH形鋼を部分的に使用することで、さらにコスト低減が可能である。樹脂系材やアスファルト材などの表面コーティングは、弾性に富む材料であるため、覆工板表面に部分的に突起があれば、ひび割れや破断を生じることなく定着力が伝達することから、このような構造も可能である。
【0030】
なお、これまでの図には覆工板の上下両面ともに突起を有する構造を示したが、車両通行面となる覆工板の上面のみに突起を有する構造としてもよい。
【実施例】
【0031】
フランジ外面の加工状況が異なるH形鋼を用いて、表面コーティングの定着強度を確認する試験を行った。図5に試験体を示す。従来からの突起形状(格子状突起)の試験体、本発明による形状(縞状突起)の試験体、および参考として突起なしの試験体を用いた。
【0032】
各試験体は、各形状の突起付きH形鋼から長さ200mmを切り出し、表面部分をコーティングした。各試験体に載荷冶具を反応アクリル系の強力な接着剤(引張りせん断強度24N/mm2以上)で取り付けた後、鉛直方向を拘束した状態で、表面コーティング定着部を水平に押し抜く方法で試験を実施した。突起の高さは格子状突起、縞状突起共に1.0mmとし、突起間隔は格子状突起、縞状突起共に10mmとした。
【0033】
図6に水平せん断荷重と押し抜きすべり量の関係を示す。表面コーティング部の最大せん断荷重は本発明による形状(縞状突起)と従来からの突起形状(格子状突起)は同程度であったが、初期せん断剛性(最大せん断荷重が得られるすべり量で表す)は、本発明による形状(縞状突起)が従来からの突起形状(格子状突起)を大きく上回り、本発明による形状は、従来からの突起形状に比べて表面コーティング部とH形鋼との間に大きなすべりが発生せず、表面コーティングの定着性が高まることが確認できた。
【0034】
なお、突起を有する試験体(本発明による形状(縞状突起)および従来からの突起形状(格子状突起))の場合、いずれもT活荷重による発生摩擦力水準(45kN)を2.5倍程度上回っているのに対し、突起なしの試験体ではT活荷重による発生摩擦力水準(45kN)を下回っており、定着強度不足であった。
【符号の説明】
【0035】
1 H形鋼
2 格子状突起
3 側板
4 フランジ端部
5 突起なしH形鋼
11 フランジ外面
13 横リブ
21 突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成されていることを特徴とする覆工板。
【請求項2】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されていることを特徴とする覆工板。
【請求項3】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項4】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項5】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項6】
H形鋼のフランジ外面における縞状突起が、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔との比が0.07以上、0.2以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の覆工板。
【請求項1】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に縞状突起が一方向に形成されていることを特徴とする覆工板。
【請求項2】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、前記H形鋼はフランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されていることを特徴とする覆工板。
【請求項3】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項4】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項5】
断面形状が同じ複数本のH形鋼をフランジ外面の高さと長手方向とを揃えて連結した覆工板であって、フランジ外面に長手方向と直角方向に縞状突起が形成されたH形鋼とフランジ外面に突起のないH形鋼とが交互に連結されていることを特徴とする覆工板。
【請求項6】
H形鋼のフランジ外面における縞状突起が、突起高さ1.0mm以上で、突起高さと突起間隔との比が0.07以上、0.2以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の覆工板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−36320(P2013−36320A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143588(P2012−143588)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]