説明

覆蓋、及び、覆蓋の設置構造

【課題】 車輪が設けられたアーチ状の覆蓋であって、構造を複雑とすることなく車輪の脱輪がしにくいものを提供することを目的とする。
【解決手段】 上方に突出するように湾曲する本体部10と、本体部10の両端に設けられて水平軸心回りに回転可能な第1車輪31と、本体部10の両端部11,11に設けられて鉛直軸心回りに回転可能な第2車輪32とを備える。本体部10は、水路又は水槽の上方を覆うように水平状に設けられる。水路又は水槽の上縁部92には、第2車輪32が接触して走行可能な起立状の起立板部82が設けられる。本体部10の移動は、水路又は水槽の上縁部92に沿って第1車輪31が回転することで走行可能であり、本体部10が、その曲率半径が大きくなるように撓んで側方へ広がる場合には、第2車輪32が起立板部82に接触しながら回転して走行可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路や水槽などの上に配置される覆蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水路や水槽などの上に配置される覆蓋は、外部から水路や水槽などへ物などが落下することを防止したり、内側からのにおいが外部に漏れないようにするものである。また、覆蓋は、人が上に乗った場合など、覆蓋に荷重がかかった場合に破損しないように強度を有するものが用いられている。
【0003】
このような覆蓋は、水路や水槽の上側に載せるので、水路や水槽の幅が長い場合などには、長い覆蓋が用いられる。このような覆蓋は、自重や上からかかる荷重を端部で支える必要があるので、高強度で軽量の素材を用い、上方に突出するような形状であるアーチ状のものが用いられている。このような覆蓋は特許文献1などに記載されている。
【特許文献1】特開2002−88739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
覆蓋は水路や水槽の上側に配置されるが、必要に応じて覆蓋を開けたり閉めたりする場合がある。かかる場合には、アーチ状の覆蓋のスライド移動の作業しやすいように、アーチの両端に車輪を設けて、その車輪をレール上に配置して、車輪を回転させて走行可能とする方法がある。
そして、覆蓋をスライド移動させる場合には、車輪を回転させてレール上を走行させることができるので、容易に行うことができる。
【0005】
しかしながら、アーチ状の覆蓋では、自重や覆蓋上に作用する荷重などによりアーチの湾曲の程度が小さくなるように変形するおそれがある。この場合、アーチの端部同士の距離が長くなって、車輪が走行するレールやガイドとの位置関係が外側にはみ出すようにずれて、脱輪するおそれがあった。
【0006】
アーチの湾曲部分が変形しにくくするように、湾曲の内側に補強部分を設けて、アーチの剛性を高めることが考えられるが、覆蓋の構造が複雑になって製作しにくくなり、また全体が重くなってしまう。さらに、湾曲の内側に補強部分を設けると、複数の覆蓋を湾曲の内外で重ねるような配置をして、開閉しやすい構造とすることが困難となる。
そして、脱輪防止のため、脱輪防止のための新たな部材を設けるのは、構造が複雑になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、車輪が設けられたアーチ状の覆蓋であって、構造を複雑とすることなく車輪の脱輪がしにくいものを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る覆蓋は、上方に突出するように湾曲する本体部と、本体部の両端に設けられて水平軸心回りに回転可能な第1車輪と、本体部の両端部に設けられて鉛直軸心回りに回転可能な第2車輪とを備え、上記本体部は、水路又は水槽の上方を覆うように水平状に設けられ、該水路又は水槽の上縁部には、上記第2車輪が接触して走行可能な起立状の起立板部が設けられ、本体部の移動は、上記水路又は水槽の上縁部に沿って第1車輪が回転することで走行可能であり、本体部が撓んで側方へ広がる場合には、第2車輪が上記起立板部に接触しながら回転して走行可能である。
なお、第1車輪が回転する水平軸心の向きは、水平方向と、水平方向から5°以内に傾斜した方向も含むものとし、第2車輪が回転する鉛直軸心の向きは、鉛直方向と、鉛直方向から5°以内に傾斜した方向も含むものとする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、上方に突出するように湾曲する本体部の湾曲が小さくなるような力が加わって、側方へ拡がっても、脱輪することなくスムーズに走行させることができる。
【0010】
また、本発明に係る覆蓋の設置構造は、覆蓋の湾曲面が上下方向となるようにして覆蓋が複数用いられており、上下の覆蓋が独立して移動可能である。
【0011】
この発明によれば、覆蓋の湾曲面が内外となるようにして覆蓋が複数用いられており、レールは内外に2組以上のものが用いられて、内外の覆蓋が独立して移動可能であるので、覆蓋を重ねないでずらす位置関係にすることも、覆蓋を重ねて同じ位置にすることもでき、開閉操作を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アーチ状の覆蓋上に、例えば、人が載ったり積雪した場合や、あるいは自重によって、側方へ拡がるようなことがあっても、車輪の脱輪が発生しにくくなり、スムーズに走行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。本発明の第1の実施形態における覆蓋1は、図1〜4に示されており、水路(又は水槽)90上に設置されるものであり、上方に突出するように湾曲する本体部10と、本体部10の両端部11、11に設けられて水平軸心回りに回転可能な第1車輪31と、本体部10の両端に設けられて鉛直軸心回りに回転可能な第2車輪32とを備えるものである。そして、覆蓋1は長さ方向が湾曲しており、幅方向は湾曲していないものである。また、覆蓋1の長さ方向の両側が、水路90の両側の縁92に配置されている。
【0014】
本体部10は、水路又は水槽の上方を覆うように水平状に設けられ、水路又は水槽の上縁部92には、第2車輪32が接触して走行可能な起立状の起立板部82が設けられている。
【0015】
水路90には水91が流れており、水路90の上縁部92付近には、上記の第1、第2車輪31,32が走行可能なレール80が設けられている。レール80は、第2車輪32が接触して走行可能な起立状の起立板部82と、起立板部82の一端縁から水平方向に連続形成され第1車輪31が走行可能な水平板部81とを有する。レール80は、例えば、横断面L字状の鋼材などから形成される。
なお、以下において、水路90の流れる方向を前後方向とし、それに直交する水平方向を左右方向とする。
【0016】
また、レール80は、各上縁部92に1つずつ、対向するように(各起立板部82が、水路90を挟んで反対側に位置するように)設けられ、内側に配置されるレール80aは、湾曲の内側に配置される覆蓋1a用のものであり、外側に配置されるレール80bは、湾曲の外側に配置される覆蓋1b用のものである。
レール80の方向は、覆蓋1のスライドする方向に合わせられるように、水平方向に設置されるものであり、水路90の縁92に沿っており、また覆蓋1の幅方向でもある。
【0017】
本体部10は、上方に突出するように湾曲する板状体である。そして、本体部10の端部20同士の距離は、水路90の幅よりも長く、使用時には水路90を覆うことができる。また、本実施形態の覆蓋1は湾曲の内外となるように複数設けられており、湾曲の内側に配置される覆蓋1aが、湾曲の外側に配置される覆蓋1bの内側に配置される。
【0018】
本体部10は、図3に示されるように、板部材22と骨部材23とを有しており、板部材22と骨部材23とを固定して製作される。
【0019】
板部材22は長方形状の平板状であり、湾曲させることが可能な板である。また、板部材22の長さは、骨部材23の湾曲棒25に合わせられ、板部材22の幅は、骨部材23の接続棒26の長さに合わせられている。
【0020】
骨部材23は、2本の湾曲棒25と、湾曲棒25同士を接続するように配置される複数の接続棒26とを有している。また、2本の湾曲棒25の湾曲の程度は同じであり、2本の湾曲棒25の湾曲の向きを同じ向きにし、接続棒26の向きが互いに平行となるように配置されている。
湾曲棒25の湾曲の外側には切り欠き部25aが設けられており、接続棒26は切り欠き部25aに挿入している。
【0021】
湾曲棒25は具体的には平板を重ねて形成された積層板であり、積層方向を湾曲の内外となるようにしたものである。そして、各積層板が湾曲した状態で積層面を接着しており、湾曲棒25の湾曲状態を維持している。骨部材23の形状は湾曲した梯子状となっている。
【0022】
そして、図3に示されるように、板部材22を、骨部材23の湾曲に合わせるように湾曲させて、骨部材23の上に重ね合わせ、骨部材23と板部材22を接着剤で固定して、本体部10が完成する。
【0023】
板部材22や、骨部材23の湾曲棒25及び接続棒26は同じ材質であり、具体的にはガラス長繊維で補強されたウレタン樹脂発泡体が用いられている。そして、これらの部材はそれぞれの部材の長さ方向にガラス繊維が配向しており、具体的には、板部材22や湾曲棒25は、覆蓋1の長さ方向にガラス繊維が配向してガラス繊維は円弧状となっており、また、接続棒26は覆蓋1の幅方向にガラス繊維が配向している。
【0024】
図4、図5、図6に示したように、第1車輪31を、水平板部81上で回転させて、本体部10を支えながら走行することにより、覆蓋1をスムーズに移動させることができるものである。
覆蓋1が撓んでいない状態では、左右両端に設けられた第2車輪32,32の左右方向外端同士の間隔は、左右両側の起立板部82,82の間隔よりも小さく設定されている。
よって、第2車輪32,32と起立板部82との間には隙間を有するように走行するか、あるいは、左右一方の第2車輪32と一方の起立板部82が当接しかつ左右他方の第2車輪32と他方の起立板部82とが離間した状態となる。
具体的には、本体部10の移動は、水路又は水槽の上縁部92に沿って第1車輪31が回転することで走行可能であり、通常、本体部10が撓んでいない場合には、第1車輪31が水平板部81上に接触して走行しており、第2車輪32は、起立板部82から離間している(図5(a)、図7参照)。そして、本体部10が、自重や積雪などでその曲率半径が大きくなるように撓んで側方へ広がる場合には、第2車輪32が起立板部82に接触しながら回転して走行可能である(図8参照)。
【0025】
第1車輪31と第2車輪32は、1枚の本体部10に対して各端部11に2個ずつ設けられている(図4参照)。具体的には、本体部10の各端部11には、水路90の流れと同方向に、帯板状の取付板12が設けられており、各取付板12に、前後方向に離間して、2個の第1車輪31が取り付けられ、また、2個の第2車輪32が取り付けられている。なお、水路90の流れの方向を前後方向とする。
【0026】
覆蓋1を設置する場合、図1、図2などに示されるように、車輪30をレール80上に載せて、車輪30の下側にレール80が配置されるようにしながら、本体部10の湾曲が上方に突出するように設置する。そうすると、覆蓋1の自重などは、車輪部31で支えられる状態となり、レール80方向に覆蓋1を押したり引いたりすることにより、車輪部31が回転して覆蓋1が走行し、容易に移動させることができる。
なお、覆蓋1を移動させる場合の動力は、手動でも良く、また、空圧や油圧のシリンダーなどの公知の動力源を用いることもできる。
【0027】
また、覆蓋1には、湾曲の内側に配置される覆蓋1aと、湾曲の外側に配置される覆蓋1bとが設けられる。上下一対の覆蓋1a、1bは独立して移動可能であり、覆蓋1a、1bの位置を相対移動させることにより、図4に示されるように、覆蓋1a、1bを重ねないでずらす位置関係にすることもでき、また、覆蓋1a、1bを重ねて同じ位置にすることもできる(図示省略)。したがって、水路90の内部を確認する場合などには簡単に開けることができる。
【0028】
図5(b)、図6に示したように、第1車輪部31が、レール80の水平板部81上に乗っているので、覆蓋1の前後方向の移動を安定して行うことができる。
また、本体部10の湾曲が小さくなるように変形し、本体部10の端部20が外側に移動する方向に力がかかった場合には、第1車輪部31は水平板部81上に乗った状態でありながら、第2車輪32が起立板部82に接して(図8参照)走行するので、本体部10の湾曲が小さくなるように変形するのを阻止することが可能であり、第1車輪31が脱輪することがなく、前後方向にスムーズに走行可能である。
【0029】
また、図4、図5(a)、図5(b)、図9に示したように、本体部10の端部11には、前後方向にスライド可動な覆蓋1aをレール80に対しロック離脱自在とするロック手段16が設けられている。
ロック手段16は、本体部10の端部11に取り付けられて孔部18を有する固定板部17と、レール80の起立板部82に形成された孔部83と、固定板部17、起立板部82の両孔部18、83に通される固定ボルト19と、を備える。起立板部82の外面側(水槽90に対し反対側)に、孔部83と同軸心状となるようにナット84を設けることで、固定ボルト19を螺進退できるので、固定ボルト19によるロック及び解除がスムーズになる。
【0030】
以上のように、本発明に係る覆蓋は、上方に突出するように湾曲する本体部10と、本体部10の両端に設けられて水平軸心回りに回転可能な第1車輪31と、本体部10の両端部11,11に設けられて鉛直軸心回りに回転可能な第2車輪32とを備え、本体部10は、水路又は水槽の上方を覆うように水平状に設けられ、水路又は水槽の上縁部92には、第2車輪32が接触して走行可能な起立状の起立板部82が設けられ、本体部10の移動は、水路又は水槽の上縁部92に沿って第1車輪31が回転することで走行可能であり、本体部10が、その曲率半径が大きくなるように撓んで側方へ広がる場合には、第2車輪32が起立板部82に接触しながら回転して走行可能であるので、本体部10が、自重や積雪などでその曲率半径が大きくなるように撓んで側方へ広がる場合であっても、第2車輪32が起立板部82に接触しながら回転して走行可能であり、脱線や脱輪することなく、スムーズに走行させて覆蓋を開閉させることができる。
【0031】
また、覆蓋1の湾曲面が上下方向となるようにして覆蓋1が複数用いられており、上下の覆蓋1が独立して移動可能であるので、覆蓋1を重ねないでずらす位置関係にすることも、覆蓋を重ねて同じ位置にすることもでき、開閉操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る覆蓋の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す覆蓋の設置構造を示す斜視図である。
【図3】覆蓋の本体部を示す分解斜視図である。
【図4】覆蓋の設置状態を示す平面図である。
【図5(a)】覆蓋の端部とレールを示す要部説明用平面図である。
【図5(b)】覆蓋の端部とレールを示す要部説明用側面図である。
【図6】第1車輪とレールの位置関係を示す要部拡大正面図である。
【図7】第2車輪がレールから離間した状態を示す説明用の要部正面図である。
【図8】第2車輪がレールに接した状態を示す説明用の要部正面図である。
【図9】ロック手段を示す要部正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1、1a、1b 覆蓋
10 本体部
11 端部
31 第1車輪
32 第2車輪
82 起立板部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に突出するように湾曲する本体部と、本体部の両端に設けられて水平軸心回りに回転可能な第1車輪と、本体部の両端部に設けられて鉛直軸心回りに回転可能な第2車輪とを備え、
上記本体部は、水路又は水槽の上方を覆うように水平状に設けられ、該水路又は水槽の上縁部には、上記第2車輪が接触して走行可能な起立状の起立板部が設けられ、
本体部の移動は、上記水路又は水槽の上縁部に沿って第1車輪が回転することで走行可能であり、本体部が撓んで側方へ広がる場合には、第2車輪が上記起立板部に接触しながら回転して走行可能であることを特徴とする覆蓋。
【請求項2】
請求項1の覆蓋と起立板部が用いられる覆蓋の設置構造であって、覆蓋の湾曲面が上下方向となるようにして覆蓋が複数用いられており、上下の覆蓋が独立して移動可能であることを特徴とする覆蓋の設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−24716(P2010−24716A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187380(P2008−187380)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】