規則性メソ多孔質の独立炭素フィルムおよび形状因子
水溶性炭素前駆体、非イオン性の界面活性剤、および油を含む、水性の前駆体混合物を基板またはスキャホールド上に堆積させ、前記前駆体混合物を乾燥し、その後、前記炭素前駆体を架橋結合および熱処理(炭化)することによって、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を調製する。炭化後、前記規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、中規模の細孔の規則性離散領域を含む。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「規則性メソ多孔質の独立炭素フィルムおよび形状因子(Ordered Mesoporous Free-Standing Carbon Films and Form Factors)」という発明の名称で2008年8月13日に出願した米国特許出願番号第12/190,937号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法に関する。本発明はまた、本方法に従って製造した炭素フィルムおよび形状因子に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法に関する。本方法は、炭素前駆体、少なくとも1種類の界面活性剤、油、および水を含む前駆体混合物を形成し、前記前駆体混合物を基板上に堆積し、その後、前記炭素前駆体を乾燥、架橋結合および熱処理(炭化)して炭素フィルムまたは形状因子を形成する、各工程を有してなる。本発明はまた、本方法に従って製造した炭素フィルムおよび形状因子に関する。フィルムおよび形状因子の大規模かつメソ多孔質の形態は、前駆体混合物中の炭素前駆体:界面活性剤:油:水の比、基板の選択、ならびに乾燥および炭化条件などの工程条件を変えることによって調節できることが有利である。
【0004】
規則性メソ多孔質炭素材料は、約2〜50nmの大きさの細孔の3次元的に規則性かつ相互接続した配列を含む。規則性メソ多孔質炭素は、約2200m2/gの高さのBET比表面積を示し、典型的には、不活性雰囲気での優れた熱安定性、ならびに酸および塩基による孔隙に対する強い抵抗を示しうる。規則性メソ多孔質炭素の製造のための好ましい合成経路では、マクロ形状、細孔形状および、表面活性種の随意的な取り込みを含めた界面化学を、所望の用途にしたがって調整することができる。
【0005】
規則性メソ多孔質炭素は、水/空気浄化、気体分離、ろ過、触媒、吸着、クロマトグラフ分離、容量性脱イオン化、電気化学二重層コンデンサ、ウルトラキャパシタ、および水素吸蔵を含めたさまざまな用途に使用することができる。
【0006】
本発明に従い、出願人は、例えば、水溶性炭素前駆体、非イオン性の界面活性剤、油および水を含む水性の前駆体混合物を、基板またはスキャホールド上に堆積させ、前記前駆体混合物を乾燥および架橋結合し、前記コーティングした基板またはスキャホールドを熱処理することによって、規則性メソ多孔質炭素材料を含む独立炭素フィルムおよび形状因子を調製することができることを見出した。前駆体混合物の堆積後、かつ、炭素前駆体の架橋結合前に、界面活性剤の自己組織化により、炭素前駆体のテンプレートを形成する。炭化後、炭素フィルムおよび形状因子は、中規模の多孔質の規則性領域を含む。
【0007】
本発明の方法を用いて、約100〜500マイクロメートルの膜厚を有する独立炭素フィルムを形成することができる。独立炭素フィルムを形成する好ましい方法の1つによれば、前駆体混合物の薄層を第1の基板上に堆積し、堆積された状態のままの層を第1の基板と第2の基板の間に挟み込む。乾燥および架橋結合の後、加熱することにより、溶媒および界面活性剤系の有機テンプレートの熱誘起除去(例えば熱分解)を通じて、堆積層を独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムへと変換する。
【0008】
形状因子も、同様の方法を用いて調製することができ、ここで、前駆体混合物がスキャホールド上に堆積される。スキャホールドは有機または無機であって差し支えなく、例として、紙、布または発泡体が挙げられる。堆積されたままの層がスキャホールド上にコーティングされると、加熱することによって架橋および炭化される。スキャホールド材料は有機材料でありうることから、スキャホールドは、熱処理工程の間に揮発させる、および/または、形状因子に取り込ませることができる。前駆体混合物はスキャホールドの露出面をコーティングすることから、形状因子はスキャホールドに由来する陽画像を含む。
【0009】
このような方法を用いて、規則性メソ多孔質炭素発泡体ブロック、ハニカム、波板および他の網状構造など、複雑な形状を製造することができる。好ましい形状因子は、炭素フィルムでコーティングした網状スキャホールドを備え、ここで、炭素フィルムは規則性メソ多孔質炭素を含む。
【0010】
炭素フィルムと同様に、出願人は、炭化後でさえも、中規模の細孔の規則性領域がこれらの複雑な形状内に保持されることを発見した。よって、本発明に従った規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、ナノスケール、ならびに、例えば、基板またはスキャホールドに対応するマイクロスケールの規則化などのさらに大きいサイズにおいても、規則化された構造によって画成することができる。
【0011】
形成後、規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を活性化することができる。炭素材料の部分的に酸化した表面を含みうる、一般に表面積の同時増加を伴う、随意的な活性化には、熱的および/または化学的活性化が含まれうる。
【0012】
本発明のさらなる特性および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者には容易に明らかになり、または、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含めた本明細書に記載される本発明を実施することによって認識されよう。
【0013】
前述の概要および後述する詳細な説明は両方とも、本発明の実施の形態を提示し、特許請求の範囲に記載される本発明の本質および特性を理解するための外観または枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明のさまざまな実施の形態を例証し、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子の形成方法の概略的フローチャート。
【図2】(A)発泡体、(B)布、および(C)紙タオルの有機スキャホールドを用いて調製した規則性メソ多孔質炭素形状因子の走査電子顕微鏡写真。
【図3】規則性メソ多孔質炭素(a)粉末、(b)炭化発泡体、および(c)炭化した布のX線回折データのプロット。
【図4】発泡体スキャホールド(比較対照)を用いて調製した炭素材料の走査電子顕微鏡写真。
【図5】独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムにおける細孔の配向性を示す一連の走査電子顕微鏡写真。
【図6】アルミニウムおよびパイレックス(Pyrex(登録商標))銘柄の基板上の規則性メソ多孔質炭素フィルムの(a)断面図、(b)底部表面、および(c)上部表面を示す一連の走査電子顕微鏡写真。
【図7】(a)粉末、(b)フィルム上部表面、および(c)フィルム底部表面の反射を示す、規則性メソ多孔質炭素粉末および独立したフィルムのプロット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法の例を示す概略的フローチャートである。図1を参照すると、炭素前駆体、界面活性剤、および油の水性混合物を含む前駆体混合物100が基板120またはスキャホールド140上にコーティングされ、乾燥されて、メソ構造相を含む架橋結合したコーティング150を形成する。メソ構造相は、界面活性剤を含む有機テンプレートの自己組織化(例えば液晶相)によって画成される。有機テンプレートによって規則化された炭素前駆体は、炭化工程145において加熱によって炭化され、規則性の細孔190の領域180を有する規則性メソ多孔質炭素フィルム160または形状因子170を形成する。熱処理工程の間に、基板120またはスキャホールド140は、少なくともある程度揮発させることができる、および/または、フィルム160または形状因子170に取り込むことができる。
【0016】
特に、規則性メソ多孔質炭素材料は、i)水溶性の炭素前駆体/H2O溶液、ii)非イオン性の界面活性剤、およびiii)油を含む濃縮された前駆体混合物から形成され、これを乾燥して、界面活性剤が規定する界面活性剤系の自己組織化を形成し、架橋結合した炭素前駆体がメソ構造相を安定化させる。加熱の結果、メソ構造相は、溶媒および界面活性剤系のテンプレートの逐次除去を通じて、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子へと転換される。
【0017】
前駆体混合物の適切な組成および濃度を選択することによって、得られた規則性メソ多孔質炭素材料の、大規模形態、領域寸法、ならびに細孔径および細孔径分布などの物理的特性を調節することが可能である。炭素前駆体/H2O:界面活性剤:油の適切な比を選択する技法、およびこれらの比に基づいた規則性メソ多孔質炭素材料の物理的特性を調節する方法は、その全体を参照することによって内容全体が本明細書に明確に取り込まれる、共同所有の米国特許出願第11/899,002号明細書に開示されている。
【0018】
本発明に従って作られた規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、配向した、均一なメソ細孔直径(2〜50nm)の細孔、高い表面積、および良好な機械的強度を有することが好ましい。前駆体混合物の組成および濃度の調節に加えて、これらの物理的特性は、湿度、pH、乾燥条件、架橋結合条件、熱処理条件、および基板またはスキャホールドの選択などの他のプロセス変数を調整することによって制御することができる。
【0019】
本発明の他の態様および利点を以下に開示する:
材料
規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子の形成に用いられる前駆体混合物は、炭素前駆体/H2O、界面活性剤、および油を含む。炭素前駆体の一例は、510D50フェノール樹脂(Georgia Pacific社製)であり、これは、2つの異なる分子量種を含む(GPCデータ:Mn 〜2800および〜1060)。追加の適切な水溶性の炭素前駆体としては、熱硬化性の炭水化物、ポリビニルアルコール、レゾルシン・アルムアルデヒド重、ペプチド両親媒性物質、脂質、および他のフェノール樹脂が挙げられる。
【0020】
有用な界面活性剤は、BASF,Inc社から市販される、PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体である。特に、プルロニック(Pluronic(登録商標))F127(x=106、y=70)および「プルロニック」F108(x=127、y=50)を本発明の方法と併せて使用して、独立炭素フィルムと形状因子の両方を生成した。追加の非イオン性の界面活性剤としては、「プルロニック」P123(x=20、y=70)および「プルロニック」F88(x=104、y=39)が挙げられる。
【0021】
界面活性剤は、炭素前駆体のための除去可能な有機テンプレートとして機能する。前駆体混合物に取り込まれる水および油の量は、その液晶相を通じて界面活性剤の自己組織化を操作し、同様に、メソ多孔質構造および得られたメソ多孔質カーボン材料の特性を操作するのに使用することができる。特に、前駆体混合物の化学は、例えば、得られる細孔直径および細孔体積を調節するのに使用することができる。
【0022】
PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体を含む前駆体混合物では、油はPPOブロックの膨張剤として機能する。前駆体混合物における油の濃度は、ミセル構造の疎水性部分の拡張を制御するのに利用することができ、得られた規則性メソ多孔質炭素の細孔径および細孔メソ構造も調節することができる。油の添加により、二相系から三相系へと水性混合物が変化する。油はまた、特定のメソ構造が安定化する、水、界面活性剤および炭素前駆体組成の範囲を拡大する。
【0023】
油の一例はブタノールである。しかしながら、ブタノールの代わりに、またはブタノールに加えて、他の適切な油(水に不混和性の液体)としては、p−キシレン、オクタン、ヘキサデカン、ヘキサノール、ペンタノール、酢酸ブチルおよびメシチレンが挙げられる。
【0024】
前駆体混合物中の水の濃度は、架橋結合した材料および熱処理(炭化)した生成物の両方におけるメソ多孔質チャネルの組織化を調節するのに使用することができる。PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体を含む前駆体混合物では、水は、PEOブロックと相互作用し、炭素前駆体を含む相を膨張させることによって、界面活性剤テンプレートの自己組織化に影響を与えうる。炭素前駆体:水の比は、幅広い組成範囲にわたり変化しうる。例えば、前駆体混合物は、5:0〜1:4(例えば、5:0、4:1、3:2、2:3、および1:4)の範囲の炭素前駆体:水の比を有しうる。
【0025】
合成
典型的な合成では、PEOx−PPOy−PEOx3ブロック共重合体(例えば、3.7gの「プルロニック」F127)を無水エタノールに加え(20mlのエタノール中、18%のF127)、共重合体がエタノールに少なくともある程度溶解するまで、熱を加えつつ攪拌する。既知量の脱イオン水(例えば1.4ml)を混合物に加え、共重合体をさらに溶解させる。数分間攪拌した後、フェノール樹脂(3.0ml)を混合物にゆっくりと加えた後、強く攪拌する。次に、ブタノール(1.5ml)を混合物に加えて攪拌を続け、前駆体混合物Aを生成する。随意的に、5NのHCl(0.6ml)を前駆体混合物Aに加えて、共重合体を完全に溶解させることもできる。前駆体混合物は、使用前に、室温で20〜30分間攪拌することが好ましい。
【0026】
コーティング
基板またはスキャホールドを前駆体混合物でコーティングする好ましい方法は、浸漬コーティングである。浸漬コーティングを用いて、基板またはスキャホールドを前駆体混合物の浴に浸漬し、それにより、前駆体混合物が前記基板またはスキャホールドの露出面に層を形成する。スキャホールドの実施の形態では、コーティング表面には、可視的な表面とスキャホールドの内部表面の両方、すなわち、前駆体混合物のろ過および/または含浸を介してコーティングした表面が含まれる。浸漬コーティングの工程は、繰り返し行うことができ、これにより、より厚いコーティングを生じうる。個別の浸漬コーティングの工程は、連続して行うことができ、または、乾燥、架橋結合、および熱処理工程の1つ以上によって隔てられてもよい。
【0027】
浸漬コーティングに加えて、前駆体混合物は、スピンコーティング、噴霧コーティング、鋳造などによって、基板またはスキャホールド上にコーティングすることができ、その後、乾燥し、架橋結合し、熱処理して、炭素フィルムおよび形状因子を形成する。随意的に、乾燥の前に、さまざまな技法を用いて、過剰の前駆体混合物を基板またはスキャホールドから除去することができる。例えば、弾力性の発泡体基板を加圧して、過剰の前駆体を除去することができる。
【0028】
上述の通り、基板またはスキャホールドには有機または無機材料を含めることができ、多孔質または実質的に非多孔質の材料でありうる。適切な(多孔質または非多孔質)有機材料の例としては、ポリマー発泡体、ビーズ、ファイバ、シートおよびコーティング、紙、布、および他のセルロース系材料が挙げられる。適切な無機材料の例としては、炭素、ガラス、セラミック、半導体、および金属が挙げられる。加えて、さまざまな異なるスキャホールド構造または形状を使用することができる。例えば、適切なスキャホールドには、ハニカム、発泡体、ファイバ、波形シートまたはプレートなどが含まれうる。
【0029】
乾燥および架橋結合
乾燥は、規則性の予め炭化したメソ構造相を形成するための、水および他の揮発性の液体の蒸発を含む。好ましい乾燥工程では、コーティング基板またはスキャホールドは、室温で特定の時間(例えば、1、2、3またはそれ以上の時間)乾燥される。規則性の予め炭化したメソ構造相は、自己組織化界面活性剤(例えば3ブロック共重合体)および少なくともある程度架橋結合した炭素前駆体(例えばフェノール樹脂)によって規定される。自己組織化界面活性剤は、予め炭化したメソ構造相内の炭素前駆体の規則化を促進するテンプレートとして機能する。
【0030】
乾燥工程の後、炭素前駆体は架橋結合される。架橋結合を行うため、実施の形態では、サンプルはデシケーター内に置かれ、表1に開示される架橋結合サイクルに従って加熱される。
【表1】
【0031】
架橋結合は、予め炭化したメソ構造相を安定化する。熱処理の前に、架橋結合した膜は、約150〜700マイクロメートルの厚さを有していてもよく、これは、後述するように、炭化の際に、およそ20〜30%低下する。
【0032】
熱処理(炭化)
炭素前駆体を炭化するため、架橋結合した膜コーティング基板またはスキャホールドを、例えば、所定の加熱プロファイルに従って、窒素雰囲気下、オーブン内で加熱することができる。1つの実施の形態に従い、サンプルを、第1の加熱率で400℃まで3時間加熱して、界面活性剤を揮発させ、その後、第2の加熱率で800℃まで3時間加熱して、炭素前駆体を炭化する。熱重量分析データは、界面活性剤テンプレートが、300℃〜400℃の温度で分解および揮発することを示唆している。
【0033】
第1および第2の加熱率は、0.1〜5℃/分の範囲でありうる。例えば、第1の加熱率は約2℃/分であってよく、第2の加熱率は約1℃/分でありうる。好ましい熱処理工程は、最初に2℃/分で400℃まで3時間加熱し、その後、室温に冷却する前に、1℃/分で800℃まで3時間加熱する。
【0034】
有機スキャホールドが用いられる実施の形態では、有機スキャホールド(炭素材料)の大部分が、規則性メソ多孔質炭素生成物の網状構造に取り込まれうる。
【0035】
形成後、規則性メソ多孔質炭素材料は、高配向の中規模多孔質の領域を含む。基板またはスキャホールド上に炭素フィルムを形成する方法は、一般に、基板またはスキャホールド表面に対して垂直な、炭化後の細孔の位置合わせを生じうる。規則性メソ多孔質炭素フィルムを形成する方法は、さらに、基板からフィルムを除去して独立したフィルムを形成する工程を含む。
【0036】
細孔の配置の均一性に起因して、本発明の方法は、従来の方法で生成した炭素よりも高い有効係数を有する炭素材料を生成することができる。有効係数は、反応種または吸収種にアクセス可能であるか、または曝露される、表面積の一部に関する。
【0037】
本発明の規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、約75%を超える有効係数を有しうる。このような構造は、より高い利用可能な表面積、および相対的な容易さの理由から、従来の炭素粉末よりもフィルタまたは触媒基板として有効に機能することができ、フィルタ装置および反応装置にフィルムおよび形状因子を取り込むことに関連して、効率を高める。例えば、発泡体ブロック、波板、ハニカム、および織り合わせたファイバなどの網状の形状因子は、目詰まりおよびフローパターンの乱れを最小限に抑えることにより、柔軟な反応器設計、容易な材料の負荷および除荷、およびフロー条件のより良好な時間的制御を提供することができる。細孔の規則性の配置は、技術者が、フロー条件を適合し、規則性メソ多孔質炭素反応表面を活用する反応器形状を設計可能にする。このような構造はまた、反応物質への曝露を改善し、質量移動の制限を最小限に抑えることができる。規則性メソ多孔質炭素(炭化後)フィルムは、約100〜500マイクロメートルの厚さを有しうる。
【0038】
活性化/機能化(随意)
熱処理工程を介して生じる規則性メソ多孔質炭素材料は、その利用可能な表面積を増大させるため、または別の方法でその活性を強化するために、随意的に活性化することができる。活性化工程は、規則性メソ多孔質炭素内の細孔径分布を修正することもできる。例えば、活性化は、微細孔(<2nm)をメソ多孔質構造内に取り込むことができる。
【0039】
活性化工程は、熱的活性化工程または化学的活性化工程のうち1つ以上を含みうる。例えば、規則性メソ多孔質炭素材料は、CO2または蒸気(H2O)雰囲気内で、高温(例えば、500〜1000℃)に加熱することによって活性化することができる。さらなる例として、構造化した炭素は、酸化剤を使用して、溶液の酸化還元化学を介して活性化することができる。炭素材料の表面積の増大に加えて、酸化剤を使用して、細孔径および細孔径を調節することもできる。
【0040】
活性化は炭素材料の表面を部分的に酸化するが、炭素チャネルの構造配列をそのまま保持することが有利である。活性化の工程は、チャネル内の内部表面に沿って、活性種または触媒とイオン交換するための活性部位も提供する。炭化および活性化工程の結果、炭素材料は、能動フィルタ、膜、または触媒支持体として用いることができる。
【0041】
規則性メソ多孔質炭素材料の化学的または熱的活性化の代替として、またはそれに加えて、炭素表面は、必要に応じて、化学的に機能しうる、および/または、炭化後の工程における静電学を用いて変化しうる。以下に開示する1つの例では、規則性メソ多孔質炭素フィルムを活性化し、官能化した。
【0042】
独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムを形成する1つの方法によれば、前駆体混合物を、2つの異なる基板の少なくとも1つにコーティングし、炭化前に、基板を引き寄せて、基板の間に堆積層を挟む。その後、基板/堆積層/基板の積み重ね内の堆積層の乾燥、架橋結合、および熱処理により、独立した、規則性メソ多孔質炭素フィルムが生じうる。
【0043】
さらなる例によれば、前駆体混合物は、セラミックハニカム基板上に浸漬コーティングされ、乾燥され、架橋結合および熱処理される。炭素フィルムでコーティングしたハニカム基板は、CO2/N2流下、900℃で加熱することによって活性化される。その後、サンプルをpH<4でHAuCl4および尿素の室温溶液に浸漬し、一定の攪拌下で、溶液温度を〜80℃まで上昇させる。温度の上昇は、尿素の分解、pHの同時増加、および炭素上への細かい金粒子の沈殿および堆積を誘起する。
【0044】
規則性メソ多孔質炭素の露出面に触媒粒子を堆積する他の方法には、触媒(金属)ゾルのイオン交換および固定化が含まれる。
【0045】
前述のことに関連して、独立した、規則性メソ多孔質炭素(OMC)フィルムは、ナノスケール(メソスケール)の多孔質の規則性領域を形成する平行な細孔、またはチャネルを有する、非晶質炭素の網状構造を含む。個別の細孔直径は約2〜50nmの範囲でありうるが、個別の細孔の長さは、約50nm〜数マイクロメートルの範囲でありうる。隣接する細孔を隔離する炭素壁の厚さは、約2〜10nmの範囲でありうる。規則性メソ多孔質炭素フィルムは、イオン交換および表面吸着のための化学的活性化の能力があり、約300m2/gより広い表面積を有しうる。
【0046】
1つの実施の形態に従って、規則性メソ多孔質炭素形状因子は、無機スキャホールドの上に規則性メソ多孔質炭素のコーティングが形成された無機スキャホールドを含む。無機スキャホールドは、平らな、繊維質の、針状の、または管状の構造を有することができ、および/または、固形発泡体、ハニカム配列、波形シートなど、の網状構造を有しうる。
【0047】
無機スキャホールドは、ガラスまたは酸化物結晶、炭素(例えば、グラファイト)、窒化物、炭化物などのうち1つ以上を含みうる。好ましい無機スキャホールド材料は、OMC前駆体コーティングを付着し、コーティング、乾燥、架橋結合および1200℃を超える温度まで熱処理する工程に、機械的および化学的に耐えるように構成される。特に、好ましい無機スキャホールド材料は、化学分解および溶融を含む熱分解に対して不活性であり、形状因子の合成の間に制御されていない、または望ましくない化学反応を被らない。
【0048】
さらなる実施の形態に従って、規則性メソ多孔質炭素形状因子は、上述の通りであるが、有機スキャホールド、第1の炭素材料(有機スキャホールドに由来)、および第2の炭素材料(炭素前駆体に由来)を含む。無機スキャホールドと同様に、有機スキャホールドは、平らな、繊維質の、針状の、または管状の構造を有することができ、および/または、固形発泡体、ハニカム配列、波形シートなどの網状構造を有しうる。
【0049】
この実施の形態では、有機スキャホールドは、ポリアクリル酸、ポリスチレン、またはセルロース誘導体などのポリマーまたは他の有機材料で作ることができ、繊維織物、撚り糸、ポリマー(プラスチック)織物、ポリマー発泡体、スポンジなど、さまざまな形態に作られた合成ファイバを含めた、有機ファイバを含みうる。
【0050】
有機スキャホールドは、コーティング、乾燥、架橋結合および熱処理の工程を通じてOMC前駆体コーティングを付着することが好ましく、予め炭化された構造を保持すると同時に、規則性メソ多孔質炭素前駆体と同一の温度状況内で炭化するように構成される。
【0051】
無機または有機スキャホールドのいずれかを含む規則性メソ多孔質炭素形状因子では、スキャホールドは、規則性メソ多孔質炭素コーティングのための構造支持体として機能することが好ましい。
【実施例】
【0052】
本発明は、後述する実施例によってさらに明らかにされよう。
【0053】
実施例1−有機スキャホールド系の形状因子
図2は、(A)発泡体、(B)布、または(C)紙タオルなどの有機、網状スキャホールドを用いて調製した規則性メソ多孔質炭素形状因子の走査電子顕微鏡写真を示している。図2(A)および2(C)はそれぞれ、発泡体由来および紙由来の規則性メソ多孔質炭素の大規模画像、および中規模の構造の高解像度画像を示す。図2(B)は、布系の規則性メソ多孔質炭素形状因子の高解像度SEM画像を示す。形状因子はそれぞれ、材料中に、有機テンプレートから保持された規則性メソ多孔質構造、ならびに出発スキャホールドに対応するマクロ多孔性の構造を含む。図2では、顕微鏡写真は、ローマ数字(I)から(III)へと増大する倍率で示されている。
【0054】
前駆体混合物Aを用いた浸漬コーティング工程によって、各スキャホールドをコーティングした。過剰の前駆体混合物を除去し、その後、各サンプルを室温で一晩乾燥した。表1に開示されるスケジュールに従って加熱することにより乾燥コーティングを架橋結合し、その後、窒素流下、900℃で熱処理し、規則性メソ多孔質炭素形状因子を得た。
【0055】
炭化した発泡体および炭化した布のX線回折(XRD)データは、六角形に規則化された細孔構造を明確に示している。規則性メソ多孔質炭素材料の粉末サンプルについて、XRDデータを得た。図3は、それぞれ、2θが1.7および2.4において、d(110)〜52Åおよびd(210)〜37Åに対応する2つのより高い規則性ピークを有する、炭化した発泡体および炭素粉末の両方についての約90Åにおける十分に解像したd(100)ピークを示している。炭化した布のXRD強度は低下し、これは、材料の比較的低い多孔性に起因すると考えられるが、それによってコーティング量が低減される。図3では、データは、(a)粉末、(b)炭化した発泡体、および(c)炭化した布のサンプルについてのX線反射を示している。
【0056】
実施例1A−炭素コーティングした有機スキャホールド(比較対照)
図4は、発泡体スキャホールドを使用して調製した比較対照炭素材料の走査電子顕微鏡写真を示している(図1(A)参照)。しかしながら、前駆体混合物Aの代わりに、炭素前駆体のみを含む混合物を用いた。実施例1の規則性メソ多孔質炭素形状因子を使用したものと同一の合成プロトコルの後、比較対照サンプルでは、マクロ多孔性(発泡体スキャホールド由来)および一部のミクロ多孔性(250〜350マイクロメートル)のみが観察された。前駆体混合物Aを用いて生成された形状因子とは対照的に、メソ多孔性および規則性メソ多孔質構造は観察されなかった。図4では、ローマ数字(I)から(II)へと倍率が上がる顕微鏡写真を示している。
【0057】
実施例2−独立した規則性メソ多孔質炭素フィルム
前駆体混合物A(HClの有無による)を「パイレックス」またはアルミニウム基板上にコーティングし、溶媒を室温で一晩蒸発し、粘着性の黄色い層を生じた。表1に開示したスケジュールに従って加熱することによって、各層を架橋結合した。架橋結合したフィルムを特定の大きさに切断し、2枚の厚板の間に置き、室温まで冷却する前に、所定の温度に加熱することによって炭化した。
【0058】
表2のデータに示すように、架橋結合状態から炭化状態まで、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムは、約60%の側面の寸法変化(収縮)および、およそ75%の重量損失を示す。通常の厚さ変化(z次元)は20〜30%である。
【表2】
【0059】
走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて、細孔サイズおよび配向を含めたフィルム形状を評価および測定した。図5および6に示すように、「パイレックス」およびアルミニウムの両方に堆積したフィルムの厚さは、およそ125マイクロメートルであり、各独立したフィルムは、前記基板に実質的に平行に配向した細孔を有し、その厚さ全体にわたり規則性メソ多孔質構造を含んでいた。図5Aは、上端に沿った断面画像を示し、図5Bは下端に沿った断面画像を示す。図5Cは断面図である。
【0060】
「パイレックス」基板上のフィルムの底部表面テクスチャは、アルミニウム基板を用いて調製されたフィルムのものよりも実質的に滑らかであった。図6を参照すると、断面(A)、上部表面(B)および底部表面(C)の画像は、幾つかのテクスチャを示し、一部の例では、マクロ多孔性を示す。図6では、基板は、参照番号200(「パイレックス」)および300(アルミニウム)によって識別される。底部表面に見られるくぼみはNaCl結晶の痕跡であり、Georgia Pacific樹脂中のNaClに起因している。
【0061】
図7は、規則性メソ多孔質炭素粉末および、(a)粉末、(b)フィルム上部表面、および(c)フィルム底部表面の反射を示す独立したフィルムのX線回折プロットを示している。実施例1における形状因子と同様に、独立炭素フィルムのX線回折データは、各フィルムの上部および底部表面の細孔構造の六角形の規則化を明示している。六角形の規則化は、粉末サンプルでも観察される。上部および底部表面は、77Å(上部)および72Å(底部)における、十分に解像されたd(100)反射を有し、〜42Å(上部)および38Å(底部)において、より高規則性のd(200)ピークを有する。
【0062】
粉末サンプルは、〜50.2Åにおける、より高規則性のd(110)ピークを有する、86.5Åにおける、十分に解像したd(100)ピークを示す。粉末サンプルと比較して、独立したフィルムは、典型的には、ある程度の圧縮がフィルム形成の間に生じることを示唆する、より低いd−スペーシングにシフトした反射を示す。
【0063】
個別の独立したフィルムを、より小さい断片へと粉砕することにより、細孔体積分布(PVD)データを得た。細孔サイズは、比較的狭い分布を伴って、2〜7nmの範囲で変化する。非活性化サンプルの表面積は約450〜600m2/gの範囲であるのに対し、活性化サンプルの表面積は約1000〜1800m2/gの範囲である。水銀ポロシメータの結果は、非活性化フィルムが60〜70%の多孔性を含み、前駆体混合物にHClを含めることによって、多孔性を70%過剰の値まで上昇させることができることを示している。
【0064】
独立したフィルムの電気特性を評価するため、面内方向および膜厚方向の両方の抵抗率の測定を行った。抵抗率の測定は、銀の導電性ペイントを炭素フィルムに適用して電極を形成し、銀ワイヤを電極に取り付け、デジタルマルチメータ(4−ワイヤ配置)で抵抗を測定し、サンプルおよび電極の形状を用いて、測定した抵抗から抵抗率を計算することを含む。
【0065】
表3は、サンプル1〜9の面内方向および膜厚方向の両方の測定の抵抗率および伝導率データを示している。サンプル1〜9の前駆体混合物のpHは、用いた塩酸の量を調節することによって変化した。測定してはいないが、サンプル1〜5のpHは、約1〜2の範囲であると考えられた。サンプル6は、pH0.96および0.2の標準偏差を有していた。サンプル7はHClを用いずに調製し、pH8.5および0.2の標準偏差を有していた。サンプル8および9のpHは、それぞれ8.37および8.33であった。サンプル1〜4および6〜9は900℃で熱処理したが、サンプル5は1200℃で熱処理した。
【表3】
【0066】
一般に、抵抗は、膜厚の増加と共に増加する。しかしながら、面内方向の抵抗率は、熱処理温度を900℃から1200℃に上昇させることによって、実質的に低下する(サンプル5)。
【0067】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および変形を行うことができることは、当業者にとって明白であろう。当業者には、本発明の精神および実体を取り入れた、開示する実施の形態の変更、組合せ、サブコンビネーションおよび変形が想起されうることから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内のすべてを包含すると解釈されるべきである。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「規則性メソ多孔質の独立炭素フィルムおよび形状因子(Ordered Mesoporous Free-Standing Carbon Films and Form Factors)」という発明の名称で2008年8月13日に出願した米国特許出願番号第12/190,937号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法に関する。本発明はまた、本方法に従って製造した炭素フィルムおよび形状因子に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法に関する。本方法は、炭素前駆体、少なくとも1種類の界面活性剤、油、および水を含む前駆体混合物を形成し、前記前駆体混合物を基板上に堆積し、その後、前記炭素前駆体を乾燥、架橋結合および熱処理(炭化)して炭素フィルムまたは形状因子を形成する、各工程を有してなる。本発明はまた、本方法に従って製造した炭素フィルムおよび形状因子に関する。フィルムおよび形状因子の大規模かつメソ多孔質の形態は、前駆体混合物中の炭素前駆体:界面活性剤:油:水の比、基板の選択、ならびに乾燥および炭化条件などの工程条件を変えることによって調節できることが有利である。
【0004】
規則性メソ多孔質炭素材料は、約2〜50nmの大きさの細孔の3次元的に規則性かつ相互接続した配列を含む。規則性メソ多孔質炭素は、約2200m2/gの高さのBET比表面積を示し、典型的には、不活性雰囲気での優れた熱安定性、ならびに酸および塩基による孔隙に対する強い抵抗を示しうる。規則性メソ多孔質炭素の製造のための好ましい合成経路では、マクロ形状、細孔形状および、表面活性種の随意的な取り込みを含めた界面化学を、所望の用途にしたがって調整することができる。
【0005】
規則性メソ多孔質炭素は、水/空気浄化、気体分離、ろ過、触媒、吸着、クロマトグラフ分離、容量性脱イオン化、電気化学二重層コンデンサ、ウルトラキャパシタ、および水素吸蔵を含めたさまざまな用途に使用することができる。
【0006】
本発明に従い、出願人は、例えば、水溶性炭素前駆体、非イオン性の界面活性剤、油および水を含む水性の前駆体混合物を、基板またはスキャホールド上に堆積させ、前記前駆体混合物を乾燥および架橋結合し、前記コーティングした基板またはスキャホールドを熱処理することによって、規則性メソ多孔質炭素材料を含む独立炭素フィルムおよび形状因子を調製することができることを見出した。前駆体混合物の堆積後、かつ、炭素前駆体の架橋結合前に、界面活性剤の自己組織化により、炭素前駆体のテンプレートを形成する。炭化後、炭素フィルムおよび形状因子は、中規模の多孔質の規則性領域を含む。
【0007】
本発明の方法を用いて、約100〜500マイクロメートルの膜厚を有する独立炭素フィルムを形成することができる。独立炭素フィルムを形成する好ましい方法の1つによれば、前駆体混合物の薄層を第1の基板上に堆積し、堆積された状態のままの層を第1の基板と第2の基板の間に挟み込む。乾燥および架橋結合の後、加熱することにより、溶媒および界面活性剤系の有機テンプレートの熱誘起除去(例えば熱分解)を通じて、堆積層を独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムへと変換する。
【0008】
形状因子も、同様の方法を用いて調製することができ、ここで、前駆体混合物がスキャホールド上に堆積される。スキャホールドは有機または無機であって差し支えなく、例として、紙、布または発泡体が挙げられる。堆積されたままの層がスキャホールド上にコーティングされると、加熱することによって架橋および炭化される。スキャホールド材料は有機材料でありうることから、スキャホールドは、熱処理工程の間に揮発させる、および/または、形状因子に取り込ませることができる。前駆体混合物はスキャホールドの露出面をコーティングすることから、形状因子はスキャホールドに由来する陽画像を含む。
【0009】
このような方法を用いて、規則性メソ多孔質炭素発泡体ブロック、ハニカム、波板および他の網状構造など、複雑な形状を製造することができる。好ましい形状因子は、炭素フィルムでコーティングした網状スキャホールドを備え、ここで、炭素フィルムは規則性メソ多孔質炭素を含む。
【0010】
炭素フィルムと同様に、出願人は、炭化後でさえも、中規模の細孔の規則性領域がこれらの複雑な形状内に保持されることを発見した。よって、本発明に従った規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、ナノスケール、ならびに、例えば、基板またはスキャホールドに対応するマイクロスケールの規則化などのさらに大きいサイズにおいても、規則化された構造によって画成することができる。
【0011】
形成後、規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を活性化することができる。炭素材料の部分的に酸化した表面を含みうる、一般に表面積の同時増加を伴う、随意的な活性化には、熱的および/または化学的活性化が含まれうる。
【0012】
本発明のさらなる特性および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部には、その説明から当業者には容易に明らかになり、または、以下の詳細な説明、特許請求の範囲、および添付の図面を含めた本明細書に記載される本発明を実施することによって認識されよう。
【0013】
前述の概要および後述する詳細な説明は両方とも、本発明の実施の形態を提示し、特許請求の範囲に記載される本発明の本質および特性を理解するための外観または枠組みを提供することが意図されていることが理解されるべきである。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明のさまざまな実施の形態を例証し、説明と共に、本発明の原理および動作を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子の形成方法の概略的フローチャート。
【図2】(A)発泡体、(B)布、および(C)紙タオルの有機スキャホールドを用いて調製した規則性メソ多孔質炭素形状因子の走査電子顕微鏡写真。
【図3】規則性メソ多孔質炭素(a)粉末、(b)炭化発泡体、および(c)炭化した布のX線回折データのプロット。
【図4】発泡体スキャホールド(比較対照)を用いて調製した炭素材料の走査電子顕微鏡写真。
【図5】独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムにおける細孔の配向性を示す一連の走査電子顕微鏡写真。
【図6】アルミニウムおよびパイレックス(Pyrex(登録商標))銘柄の基板上の規則性メソ多孔質炭素フィルムの(a)断面図、(b)底部表面、および(c)上部表面を示す一連の走査電子顕微鏡写真。
【図7】(a)粉末、(b)フィルム上部表面、および(c)フィルム底部表面の反射を示す、規則性メソ多孔質炭素粉末および独立したフィルムのプロット。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子を形成する方法の例を示す概略的フローチャートである。図1を参照すると、炭素前駆体、界面活性剤、および油の水性混合物を含む前駆体混合物100が基板120またはスキャホールド140上にコーティングされ、乾燥されて、メソ構造相を含む架橋結合したコーティング150を形成する。メソ構造相は、界面活性剤を含む有機テンプレートの自己組織化(例えば液晶相)によって画成される。有機テンプレートによって規則化された炭素前駆体は、炭化工程145において加熱によって炭化され、規則性の細孔190の領域180を有する規則性メソ多孔質炭素フィルム160または形状因子170を形成する。熱処理工程の間に、基板120またはスキャホールド140は、少なくともある程度揮発させることができる、および/または、フィルム160または形状因子170に取り込むことができる。
【0016】
特に、規則性メソ多孔質炭素材料は、i)水溶性の炭素前駆体/H2O溶液、ii)非イオン性の界面活性剤、およびiii)油を含む濃縮された前駆体混合物から形成され、これを乾燥して、界面活性剤が規定する界面活性剤系の自己組織化を形成し、架橋結合した炭素前駆体がメソ構造相を安定化させる。加熱の結果、メソ構造相は、溶媒および界面活性剤系のテンプレートの逐次除去を通じて、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子へと転換される。
【0017】
前駆体混合物の適切な組成および濃度を選択することによって、得られた規則性メソ多孔質炭素材料の、大規模形態、領域寸法、ならびに細孔径および細孔径分布などの物理的特性を調節することが可能である。炭素前駆体/H2O:界面活性剤:油の適切な比を選択する技法、およびこれらの比に基づいた規則性メソ多孔質炭素材料の物理的特性を調節する方法は、その全体を参照することによって内容全体が本明細書に明確に取り込まれる、共同所有の米国特許出願第11/899,002号明細書に開示されている。
【0018】
本発明に従って作られた規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、配向した、均一なメソ細孔直径(2〜50nm)の細孔、高い表面積、および良好な機械的強度を有することが好ましい。前駆体混合物の組成および濃度の調節に加えて、これらの物理的特性は、湿度、pH、乾燥条件、架橋結合条件、熱処理条件、および基板またはスキャホールドの選択などの他のプロセス変数を調整することによって制御することができる。
【0019】
本発明の他の態様および利点を以下に開示する:
材料
規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子の形成に用いられる前駆体混合物は、炭素前駆体/H2O、界面活性剤、および油を含む。炭素前駆体の一例は、510D50フェノール樹脂(Georgia Pacific社製)であり、これは、2つの異なる分子量種を含む(GPCデータ:Mn 〜2800および〜1060)。追加の適切な水溶性の炭素前駆体としては、熱硬化性の炭水化物、ポリビニルアルコール、レゾルシン・アルムアルデヒド重、ペプチド両親媒性物質、脂質、および他のフェノール樹脂が挙げられる。
【0020】
有用な界面活性剤は、BASF,Inc社から市販される、PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体である。特に、プルロニック(Pluronic(登録商標))F127(x=106、y=70)および「プルロニック」F108(x=127、y=50)を本発明の方法と併せて使用して、独立炭素フィルムと形状因子の両方を生成した。追加の非イオン性の界面活性剤としては、「プルロニック」P123(x=20、y=70)および「プルロニック」F88(x=104、y=39)が挙げられる。
【0021】
界面活性剤は、炭素前駆体のための除去可能な有機テンプレートとして機能する。前駆体混合物に取り込まれる水および油の量は、その液晶相を通じて界面活性剤の自己組織化を操作し、同様に、メソ多孔質構造および得られたメソ多孔質カーボン材料の特性を操作するのに使用することができる。特に、前駆体混合物の化学は、例えば、得られる細孔直径および細孔体積を調節するのに使用することができる。
【0022】
PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体を含む前駆体混合物では、油はPPOブロックの膨張剤として機能する。前駆体混合物における油の濃度は、ミセル構造の疎水性部分の拡張を制御するのに利用することができ、得られた規則性メソ多孔質炭素の細孔径および細孔メソ構造も調節することができる。油の添加により、二相系から三相系へと水性混合物が変化する。油はまた、特定のメソ構造が安定化する、水、界面活性剤および炭素前駆体組成の範囲を拡大する。
【0023】
油の一例はブタノールである。しかしながら、ブタノールの代わりに、またはブタノールに加えて、他の適切な油(水に不混和性の液体)としては、p−キシレン、オクタン、ヘキサデカン、ヘキサノール、ペンタノール、酢酸ブチルおよびメシチレンが挙げられる。
【0024】
前駆体混合物中の水の濃度は、架橋結合した材料および熱処理(炭化)した生成物の両方におけるメソ多孔質チャネルの組織化を調節するのに使用することができる。PEOy−PPOx−PEOy3ブロック共重合体を含む前駆体混合物では、水は、PEOブロックと相互作用し、炭素前駆体を含む相を膨張させることによって、界面活性剤テンプレートの自己組織化に影響を与えうる。炭素前駆体:水の比は、幅広い組成範囲にわたり変化しうる。例えば、前駆体混合物は、5:0〜1:4(例えば、5:0、4:1、3:2、2:3、および1:4)の範囲の炭素前駆体:水の比を有しうる。
【0025】
合成
典型的な合成では、PEOx−PPOy−PEOx3ブロック共重合体(例えば、3.7gの「プルロニック」F127)を無水エタノールに加え(20mlのエタノール中、18%のF127)、共重合体がエタノールに少なくともある程度溶解するまで、熱を加えつつ攪拌する。既知量の脱イオン水(例えば1.4ml)を混合物に加え、共重合体をさらに溶解させる。数分間攪拌した後、フェノール樹脂(3.0ml)を混合物にゆっくりと加えた後、強く攪拌する。次に、ブタノール(1.5ml)を混合物に加えて攪拌を続け、前駆体混合物Aを生成する。随意的に、5NのHCl(0.6ml)を前駆体混合物Aに加えて、共重合体を完全に溶解させることもできる。前駆体混合物は、使用前に、室温で20〜30分間攪拌することが好ましい。
【0026】
コーティング
基板またはスキャホールドを前駆体混合物でコーティングする好ましい方法は、浸漬コーティングである。浸漬コーティングを用いて、基板またはスキャホールドを前駆体混合物の浴に浸漬し、それにより、前駆体混合物が前記基板またはスキャホールドの露出面に層を形成する。スキャホールドの実施の形態では、コーティング表面には、可視的な表面とスキャホールドの内部表面の両方、すなわち、前駆体混合物のろ過および/または含浸を介してコーティングした表面が含まれる。浸漬コーティングの工程は、繰り返し行うことができ、これにより、より厚いコーティングを生じうる。個別の浸漬コーティングの工程は、連続して行うことができ、または、乾燥、架橋結合、および熱処理工程の1つ以上によって隔てられてもよい。
【0027】
浸漬コーティングに加えて、前駆体混合物は、スピンコーティング、噴霧コーティング、鋳造などによって、基板またはスキャホールド上にコーティングすることができ、その後、乾燥し、架橋結合し、熱処理して、炭素フィルムおよび形状因子を形成する。随意的に、乾燥の前に、さまざまな技法を用いて、過剰の前駆体混合物を基板またはスキャホールドから除去することができる。例えば、弾力性の発泡体基板を加圧して、過剰の前駆体を除去することができる。
【0028】
上述の通り、基板またはスキャホールドには有機または無機材料を含めることができ、多孔質または実質的に非多孔質の材料でありうる。適切な(多孔質または非多孔質)有機材料の例としては、ポリマー発泡体、ビーズ、ファイバ、シートおよびコーティング、紙、布、および他のセルロース系材料が挙げられる。適切な無機材料の例としては、炭素、ガラス、セラミック、半導体、および金属が挙げられる。加えて、さまざまな異なるスキャホールド構造または形状を使用することができる。例えば、適切なスキャホールドには、ハニカム、発泡体、ファイバ、波形シートまたはプレートなどが含まれうる。
【0029】
乾燥および架橋結合
乾燥は、規則性の予め炭化したメソ構造相を形成するための、水および他の揮発性の液体の蒸発を含む。好ましい乾燥工程では、コーティング基板またはスキャホールドは、室温で特定の時間(例えば、1、2、3またはそれ以上の時間)乾燥される。規則性の予め炭化したメソ構造相は、自己組織化界面活性剤(例えば3ブロック共重合体)および少なくともある程度架橋結合した炭素前駆体(例えばフェノール樹脂)によって規定される。自己組織化界面活性剤は、予め炭化したメソ構造相内の炭素前駆体の規則化を促進するテンプレートとして機能する。
【0030】
乾燥工程の後、炭素前駆体は架橋結合される。架橋結合を行うため、実施の形態では、サンプルはデシケーター内に置かれ、表1に開示される架橋結合サイクルに従って加熱される。
【表1】
【0031】
架橋結合は、予め炭化したメソ構造相を安定化する。熱処理の前に、架橋結合した膜は、約150〜700マイクロメートルの厚さを有していてもよく、これは、後述するように、炭化の際に、およそ20〜30%低下する。
【0032】
熱処理(炭化)
炭素前駆体を炭化するため、架橋結合した膜コーティング基板またはスキャホールドを、例えば、所定の加熱プロファイルに従って、窒素雰囲気下、オーブン内で加熱することができる。1つの実施の形態に従い、サンプルを、第1の加熱率で400℃まで3時間加熱して、界面活性剤を揮発させ、その後、第2の加熱率で800℃まで3時間加熱して、炭素前駆体を炭化する。熱重量分析データは、界面活性剤テンプレートが、300℃〜400℃の温度で分解および揮発することを示唆している。
【0033】
第1および第2の加熱率は、0.1〜5℃/分の範囲でありうる。例えば、第1の加熱率は約2℃/分であってよく、第2の加熱率は約1℃/分でありうる。好ましい熱処理工程は、最初に2℃/分で400℃まで3時間加熱し、その後、室温に冷却する前に、1℃/分で800℃まで3時間加熱する。
【0034】
有機スキャホールドが用いられる実施の形態では、有機スキャホールド(炭素材料)の大部分が、規則性メソ多孔質炭素生成物の網状構造に取り込まれうる。
【0035】
形成後、規則性メソ多孔質炭素材料は、高配向の中規模多孔質の領域を含む。基板またはスキャホールド上に炭素フィルムを形成する方法は、一般に、基板またはスキャホールド表面に対して垂直な、炭化後の細孔の位置合わせを生じうる。規則性メソ多孔質炭素フィルムを形成する方法は、さらに、基板からフィルムを除去して独立したフィルムを形成する工程を含む。
【0036】
細孔の配置の均一性に起因して、本発明の方法は、従来の方法で生成した炭素よりも高い有効係数を有する炭素材料を生成することができる。有効係数は、反応種または吸収種にアクセス可能であるか、または曝露される、表面積の一部に関する。
【0037】
本発明の規則性メソ多孔質炭素フィルムおよび形状因子は、約75%を超える有効係数を有しうる。このような構造は、より高い利用可能な表面積、および相対的な容易さの理由から、従来の炭素粉末よりもフィルタまたは触媒基板として有効に機能することができ、フィルタ装置および反応装置にフィルムおよび形状因子を取り込むことに関連して、効率を高める。例えば、発泡体ブロック、波板、ハニカム、および織り合わせたファイバなどの網状の形状因子は、目詰まりおよびフローパターンの乱れを最小限に抑えることにより、柔軟な反応器設計、容易な材料の負荷および除荷、およびフロー条件のより良好な時間的制御を提供することができる。細孔の規則性の配置は、技術者が、フロー条件を適合し、規則性メソ多孔質炭素反応表面を活用する反応器形状を設計可能にする。このような構造はまた、反応物質への曝露を改善し、質量移動の制限を最小限に抑えることができる。規則性メソ多孔質炭素(炭化後)フィルムは、約100〜500マイクロメートルの厚さを有しうる。
【0038】
活性化/機能化(随意)
熱処理工程を介して生じる規則性メソ多孔質炭素材料は、その利用可能な表面積を増大させるため、または別の方法でその活性を強化するために、随意的に活性化することができる。活性化工程は、規則性メソ多孔質炭素内の細孔径分布を修正することもできる。例えば、活性化は、微細孔(<2nm)をメソ多孔質構造内に取り込むことができる。
【0039】
活性化工程は、熱的活性化工程または化学的活性化工程のうち1つ以上を含みうる。例えば、規則性メソ多孔質炭素材料は、CO2または蒸気(H2O)雰囲気内で、高温(例えば、500〜1000℃)に加熱することによって活性化することができる。さらなる例として、構造化した炭素は、酸化剤を使用して、溶液の酸化還元化学を介して活性化することができる。炭素材料の表面積の増大に加えて、酸化剤を使用して、細孔径および細孔径を調節することもできる。
【0040】
活性化は炭素材料の表面を部分的に酸化するが、炭素チャネルの構造配列をそのまま保持することが有利である。活性化の工程は、チャネル内の内部表面に沿って、活性種または触媒とイオン交換するための活性部位も提供する。炭化および活性化工程の結果、炭素材料は、能動フィルタ、膜、または触媒支持体として用いることができる。
【0041】
規則性メソ多孔質炭素材料の化学的または熱的活性化の代替として、またはそれに加えて、炭素表面は、必要に応じて、化学的に機能しうる、および/または、炭化後の工程における静電学を用いて変化しうる。以下に開示する1つの例では、規則性メソ多孔質炭素フィルムを活性化し、官能化した。
【0042】
独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムを形成する1つの方法によれば、前駆体混合物を、2つの異なる基板の少なくとも1つにコーティングし、炭化前に、基板を引き寄せて、基板の間に堆積層を挟む。その後、基板/堆積層/基板の積み重ね内の堆積層の乾燥、架橋結合、および熱処理により、独立した、規則性メソ多孔質炭素フィルムが生じうる。
【0043】
さらなる例によれば、前駆体混合物は、セラミックハニカム基板上に浸漬コーティングされ、乾燥され、架橋結合および熱処理される。炭素フィルムでコーティングしたハニカム基板は、CO2/N2流下、900℃で加熱することによって活性化される。その後、サンプルをpH<4でHAuCl4および尿素の室温溶液に浸漬し、一定の攪拌下で、溶液温度を〜80℃まで上昇させる。温度の上昇は、尿素の分解、pHの同時増加、および炭素上への細かい金粒子の沈殿および堆積を誘起する。
【0044】
規則性メソ多孔質炭素の露出面に触媒粒子を堆積する他の方法には、触媒(金属)ゾルのイオン交換および固定化が含まれる。
【0045】
前述のことに関連して、独立した、規則性メソ多孔質炭素(OMC)フィルムは、ナノスケール(メソスケール)の多孔質の規則性領域を形成する平行な細孔、またはチャネルを有する、非晶質炭素の網状構造を含む。個別の細孔直径は約2〜50nmの範囲でありうるが、個別の細孔の長さは、約50nm〜数マイクロメートルの範囲でありうる。隣接する細孔を隔離する炭素壁の厚さは、約2〜10nmの範囲でありうる。規則性メソ多孔質炭素フィルムは、イオン交換および表面吸着のための化学的活性化の能力があり、約300m2/gより広い表面積を有しうる。
【0046】
1つの実施の形態に従って、規則性メソ多孔質炭素形状因子は、無機スキャホールドの上に規則性メソ多孔質炭素のコーティングが形成された無機スキャホールドを含む。無機スキャホールドは、平らな、繊維質の、針状の、または管状の構造を有することができ、および/または、固形発泡体、ハニカム配列、波形シートなど、の網状構造を有しうる。
【0047】
無機スキャホールドは、ガラスまたは酸化物結晶、炭素(例えば、グラファイト)、窒化物、炭化物などのうち1つ以上を含みうる。好ましい無機スキャホールド材料は、OMC前駆体コーティングを付着し、コーティング、乾燥、架橋結合および1200℃を超える温度まで熱処理する工程に、機械的および化学的に耐えるように構成される。特に、好ましい無機スキャホールド材料は、化学分解および溶融を含む熱分解に対して不活性であり、形状因子の合成の間に制御されていない、または望ましくない化学反応を被らない。
【0048】
さらなる実施の形態に従って、規則性メソ多孔質炭素形状因子は、上述の通りであるが、有機スキャホールド、第1の炭素材料(有機スキャホールドに由来)、および第2の炭素材料(炭素前駆体に由来)を含む。無機スキャホールドと同様に、有機スキャホールドは、平らな、繊維質の、針状の、または管状の構造を有することができ、および/または、固形発泡体、ハニカム配列、波形シートなどの網状構造を有しうる。
【0049】
この実施の形態では、有機スキャホールドは、ポリアクリル酸、ポリスチレン、またはセルロース誘導体などのポリマーまたは他の有機材料で作ることができ、繊維織物、撚り糸、ポリマー(プラスチック)織物、ポリマー発泡体、スポンジなど、さまざまな形態に作られた合成ファイバを含めた、有機ファイバを含みうる。
【0050】
有機スキャホールドは、コーティング、乾燥、架橋結合および熱処理の工程を通じてOMC前駆体コーティングを付着することが好ましく、予め炭化された構造を保持すると同時に、規則性メソ多孔質炭素前駆体と同一の温度状況内で炭化するように構成される。
【0051】
無機または有機スキャホールドのいずれかを含む規則性メソ多孔質炭素形状因子では、スキャホールドは、規則性メソ多孔質炭素コーティングのための構造支持体として機能することが好ましい。
【実施例】
【0052】
本発明は、後述する実施例によってさらに明らかにされよう。
【0053】
実施例1−有機スキャホールド系の形状因子
図2は、(A)発泡体、(B)布、または(C)紙タオルなどの有機、網状スキャホールドを用いて調製した規則性メソ多孔質炭素形状因子の走査電子顕微鏡写真を示している。図2(A)および2(C)はそれぞれ、発泡体由来および紙由来の規則性メソ多孔質炭素の大規模画像、および中規模の構造の高解像度画像を示す。図2(B)は、布系の規則性メソ多孔質炭素形状因子の高解像度SEM画像を示す。形状因子はそれぞれ、材料中に、有機テンプレートから保持された規則性メソ多孔質構造、ならびに出発スキャホールドに対応するマクロ多孔性の構造を含む。図2では、顕微鏡写真は、ローマ数字(I)から(III)へと増大する倍率で示されている。
【0054】
前駆体混合物Aを用いた浸漬コーティング工程によって、各スキャホールドをコーティングした。過剰の前駆体混合物を除去し、その後、各サンプルを室温で一晩乾燥した。表1に開示されるスケジュールに従って加熱することにより乾燥コーティングを架橋結合し、その後、窒素流下、900℃で熱処理し、規則性メソ多孔質炭素形状因子を得た。
【0055】
炭化した発泡体および炭化した布のX線回折(XRD)データは、六角形に規則化された細孔構造を明確に示している。規則性メソ多孔質炭素材料の粉末サンプルについて、XRDデータを得た。図3は、それぞれ、2θが1.7および2.4において、d(110)〜52Åおよびd(210)〜37Åに対応する2つのより高い規則性ピークを有する、炭化した発泡体および炭素粉末の両方についての約90Åにおける十分に解像したd(100)ピークを示している。炭化した布のXRD強度は低下し、これは、材料の比較的低い多孔性に起因すると考えられるが、それによってコーティング量が低減される。図3では、データは、(a)粉末、(b)炭化した発泡体、および(c)炭化した布のサンプルについてのX線反射を示している。
【0056】
実施例1A−炭素コーティングした有機スキャホールド(比較対照)
図4は、発泡体スキャホールドを使用して調製した比較対照炭素材料の走査電子顕微鏡写真を示している(図1(A)参照)。しかしながら、前駆体混合物Aの代わりに、炭素前駆体のみを含む混合物を用いた。実施例1の規則性メソ多孔質炭素形状因子を使用したものと同一の合成プロトコルの後、比較対照サンプルでは、マクロ多孔性(発泡体スキャホールド由来)および一部のミクロ多孔性(250〜350マイクロメートル)のみが観察された。前駆体混合物Aを用いて生成された形状因子とは対照的に、メソ多孔性および規則性メソ多孔質構造は観察されなかった。図4では、ローマ数字(I)から(II)へと倍率が上がる顕微鏡写真を示している。
【0057】
実施例2−独立した規則性メソ多孔質炭素フィルム
前駆体混合物A(HClの有無による)を「パイレックス」またはアルミニウム基板上にコーティングし、溶媒を室温で一晩蒸発し、粘着性の黄色い層を生じた。表1に開示したスケジュールに従って加熱することによって、各層を架橋結合した。架橋結合したフィルムを特定の大きさに切断し、2枚の厚板の間に置き、室温まで冷却する前に、所定の温度に加熱することによって炭化した。
【0058】
表2のデータに示すように、架橋結合状態から炭化状態まで、独立した規則性メソ多孔質炭素フィルムは、約60%の側面の寸法変化(収縮)および、およそ75%の重量損失を示す。通常の厚さ変化(z次元)は20〜30%である。
【表2】
【0059】
走査電子顕微鏡法(SEM)を用いて、細孔サイズおよび配向を含めたフィルム形状を評価および測定した。図5および6に示すように、「パイレックス」およびアルミニウムの両方に堆積したフィルムの厚さは、およそ125マイクロメートルであり、各独立したフィルムは、前記基板に実質的に平行に配向した細孔を有し、その厚さ全体にわたり規則性メソ多孔質構造を含んでいた。図5Aは、上端に沿った断面画像を示し、図5Bは下端に沿った断面画像を示す。図5Cは断面図である。
【0060】
「パイレックス」基板上のフィルムの底部表面テクスチャは、アルミニウム基板を用いて調製されたフィルムのものよりも実質的に滑らかであった。図6を参照すると、断面(A)、上部表面(B)および底部表面(C)の画像は、幾つかのテクスチャを示し、一部の例では、マクロ多孔性を示す。図6では、基板は、参照番号200(「パイレックス」)および300(アルミニウム)によって識別される。底部表面に見られるくぼみはNaCl結晶の痕跡であり、Georgia Pacific樹脂中のNaClに起因している。
【0061】
図7は、規則性メソ多孔質炭素粉末および、(a)粉末、(b)フィルム上部表面、および(c)フィルム底部表面の反射を示す独立したフィルムのX線回折プロットを示している。実施例1における形状因子と同様に、独立炭素フィルムのX線回折データは、各フィルムの上部および底部表面の細孔構造の六角形の規則化を明示している。六角形の規則化は、粉末サンプルでも観察される。上部および底部表面は、77Å(上部)および72Å(底部)における、十分に解像されたd(100)反射を有し、〜42Å(上部)および38Å(底部)において、より高規則性のd(200)ピークを有する。
【0062】
粉末サンプルは、〜50.2Åにおける、より高規則性のd(110)ピークを有する、86.5Åにおける、十分に解像したd(100)ピークを示す。粉末サンプルと比較して、独立したフィルムは、典型的には、ある程度の圧縮がフィルム形成の間に生じることを示唆する、より低いd−スペーシングにシフトした反射を示す。
【0063】
個別の独立したフィルムを、より小さい断片へと粉砕することにより、細孔体積分布(PVD)データを得た。細孔サイズは、比較的狭い分布を伴って、2〜7nmの範囲で変化する。非活性化サンプルの表面積は約450〜600m2/gの範囲であるのに対し、活性化サンプルの表面積は約1000〜1800m2/gの範囲である。水銀ポロシメータの結果は、非活性化フィルムが60〜70%の多孔性を含み、前駆体混合物にHClを含めることによって、多孔性を70%過剰の値まで上昇させることができることを示している。
【0064】
独立したフィルムの電気特性を評価するため、面内方向および膜厚方向の両方の抵抗率の測定を行った。抵抗率の測定は、銀の導電性ペイントを炭素フィルムに適用して電極を形成し、銀ワイヤを電極に取り付け、デジタルマルチメータ(4−ワイヤ配置)で抵抗を測定し、サンプルおよび電極の形状を用いて、測定した抵抗から抵抗率を計算することを含む。
【0065】
表3は、サンプル1〜9の面内方向および膜厚方向の両方の測定の抵抗率および伝導率データを示している。サンプル1〜9の前駆体混合物のpHは、用いた塩酸の量を調節することによって変化した。測定してはいないが、サンプル1〜5のpHは、約1〜2の範囲であると考えられた。サンプル6は、pH0.96および0.2の標準偏差を有していた。サンプル7はHClを用いずに調製し、pH8.5および0.2の標準偏差を有していた。サンプル8および9のpHは、それぞれ8.37および8.33であった。サンプル1〜4および6〜9は900℃で熱処理したが、サンプル5は1200℃で熱処理した。
【表3】
【0066】
一般に、抵抗は、膜厚の増加と共に増加する。しかしながら、面内方向の抵抗率は、熱処理温度を900℃から1200℃に上昇させることによって、実質的に低下する(サンプル5)。
【0067】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明にさまざまな変更および変形を行うことができることは、当業者にとって明白であろう。当業者には、本発明の精神および実体を取り入れた、開示する実施の形態の変更、組合せ、サブコンビネーションおよび変形が想起されうることから、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内のすべてを包含すると解釈されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子を形成する方法であって、
炭素前駆体、界面活性剤、油および水を含む前駆体混合物を形成し、
前記前駆体混合物を基板またはスキャホールド上に堆積して、前記基板またはスキャホールドの露出面にコーティングを形成し、
前記コーティングを乾燥し、前記炭素前駆体を架橋結合して、界面活性剤系の自己組織化テンプレートおよび前記テンプレートによって規則化した炭素前駆体系のメソ構造相を形成し、
前記炭素前駆体を熱処理して、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
基板またはスキャホールドの上に形成された非晶質炭素層を含む、独立した、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子であって、
前記炭素が中規模の多孔質の規則性領域を含み、
前記基板が実質的に平らな表面を含み、
細孔が実質的に基板表面に平行に配向する、
規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項3】
前記基板またはスキャホールドが多孔質材料を含むことを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項4】
前記基板またはスキャホールドが、ポリマー発泡体、ビーズ、ファイバ、シートおよびコーティング、紙、布、およびセルロース系材料からなる群より選択される有機材料を含むことを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項5】
前記基板またはスキャホールドの少なくとも一部が、前記規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子に取り込まれることを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項1】
規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子を形成する方法であって、
炭素前駆体、界面活性剤、油および水を含む前駆体混合物を形成し、
前記前駆体混合物を基板またはスキャホールド上に堆積して、前記基板またはスキャホールドの露出面にコーティングを形成し、
前記コーティングを乾燥し、前記炭素前駆体を架橋結合して、界面活性剤系の自己組織化テンプレートおよび前記テンプレートによって規則化した炭素前駆体系のメソ構造相を形成し、
前記炭素前駆体を熱処理して、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子を形成する、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
基板またはスキャホールドの上に形成された非晶質炭素層を含む、独立した、規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子であって、
前記炭素が中規模の多孔質の規則性領域を含み、
前記基板が実質的に平らな表面を含み、
細孔が実質的に基板表面に平行に配向する、
規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項3】
前記基板またはスキャホールドが多孔質材料を含むことを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項4】
前記基板またはスキャホールドが、ポリマー発泡体、ビーズ、ファイバ、シートおよびコーティング、紙、布、およびセルロース系材料からなる群より選択される有機材料を含むことを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【請求項5】
前記基板またはスキャホールドの少なくとも一部が、前記規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子に取り込まれることを特徴とする請求項2記載の規則性メソ多孔質炭素フィルムまたは形状因子。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−530480(P2011−530480A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522985(P2011−522985)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/004597
【国際公開番号】WO2010/019221
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/004597
【国際公開番号】WO2010/019221
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】
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