説明

視感色彩評価装置

【課題】幅広い角度から光を照射したときの微妙な視感評価の変化を的確に評価することができる視感評価装置を提供することである。
【解決手段】視感色彩評価装置は、サンプルを覆う筐体、サンプルに観察光を照射するためのLED光源、サンプルに対する光源の相対位置を連続的に変化させることでサンプルに対する観察光の照射角度を連続的に変化させる駆動機構、および筐体内のサンプルを目視観察するための窓を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目視観察によってサンプルを視感評価する装置に関するものであり、簡便な装置で精密に視感評価できるものであって、産業上の利用価値が大きい。
【背景技術】
【0002】
塗装色の評価において、アルミ顔料やパール顔料などの光輝剤が入ったサンプルでは観察する角度で色が異なることは良く知られている。これらのサンプルは多角度で観測することが必須である。
【0003】
例えば車輌内装部品は部品ごとに使用される材質が異なり、それらが組み合わさっている。これらの部品は標準色に調色されているが、光の拡散反射の状況が異なっているため、観察する角度によって色が異なる場合が多い。これらのサンプルは多角度で観測することが必須である。例えば、インスツルパネルの上部にある表皮材は主に上方から照明され水平に近い角度で見る場合が多い。ダッシュボードの場合は、横から照明された場合、運転者は水平よりやや垂直に近い角度から見る場合が多く、助手席側は垂直に近い角度で見る場合が多い。ドアトリムの場合は、上方から照明され、上方から見る場合が多い。このように、あらゆる角度から見られるので、全ての角度で色が合っていることが理想である。
そこで、調色する際には多角度で合致度を観察することが必須となる。
【0004】
多角度分光光度を使用した評価方法は多く公開されている(例えば特許文献1:特開2003−34762)。しかし、分光器によって分光分布を測定しているものであり、目視による視感評価装置ではなく、視感評価には役に立たない。
【0005】
多角度分光光度計で測定する方法は価格が高い。X−rite社製MA-68IIは約300万円であり、ミノルタ製CM-512m3の価格は約200万円と高価である。
【0006】
X−rite社製MA-68 IIの照明と受光の幾何学的配置を図1に示す。図1に示されるように、光源の照射角度はサンプル面に対して45度に固定されている。
また、ミノルタ製CM-512m3の照明と受光の幾何学的配置を図2に示す。図2に示されるようにサンプル面に対する受光角度は90度に固定されている。
【0007】
また,従来の多角度による視感評価装置はマクベス社からスカイライトという製品名で販売されていたが、販売中止となった。この装置はタングステンランプを使い大型である。スカイライトの照明と受光の幾何学的配置を図3に示す。図3に示されるように、ランプはL−1、L−2、L−3の3個がそれぞれ所定位置に固定されており、点灯を選択する。サンプル置き台の角度を手動で変えて評価角度を変えることができるが、その範囲は狭く、ノッチがあって連続的に変更することはできない。
【0008】
なお、本分野においては、観察者の奥側を0度、手前側を180度と定義する。スカイライトの場合には、覗き窓の角度は135度に固定されている。表1にランプの選択とサンプル置き台の傾斜角度の組み合わせによる照明角度と観察角度を示す。表1から明らかなように、ハイライトでの照射角度は67.5度〜80度であり、より水平に近い角度の照射によるハイライトの観察ができない。また、シェードにおいても照射角度は142.5度〜155度とその変化巾は狭く、それに相応する観察角度も変わってしまうという欠点がある。また、サンプル面の照度も1000から1500ルックスと低い。車輌内・外装色の評価は実際の使用条件に近い直射日光下で行われることが多く、晴天時の直射日光の照度は50000ルックスを超えることも珍しくはない。よって、これらのサンプルを評価するには高い照度が必須となり、照度が1000から1500ではこれらのサンプルの評価には適さない。
【0009】
【表1】

【0010】
また、特許文献2(実登3110576)に記載の視感判定用器具(スガ試験機株式会社)では、箱の下部にサンプル台を接地し、箱の上部に設置した光源から光をサンプル台へと照射する。そして、サンプル台の角度を変化させることによって、サンプル面に対する観察角度を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−34762
【特許文献2】実登3110576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
MAー68IIは、照明光の角度が45度に固定化されているため、より水平に近い角度での照射によるハイライトやシェードの測定ができない。また、照射と受光との開き角度が少ない再帰反射的な測定もできない。
【0013】
CM-512m3では、受光角度が垂直に固定されているため、より水平に近い角度での照射によるハイライトやシェードの測定ができない。また、照射と受光との開き角度が少ない再帰反射的な測定もできない。このような測定器は存在しているが照射角度や観察角度が固定化している。
【0014】
特許文献2(実登3110576)では、サンプル台を傾斜させることで、観察角度を変えて視感評価している。しかし、この装置では、サンプル台を駆動して傾斜させるので、装置が大型になり、コストも高い。また、箱の上部にランプを設置して下方のサンプル台を照明しており、サンプル台の傾斜角度を少し大きくすると、サンプルがサンプル台から滑り落ちるので、観察角度を大きく変えることができず、またランプも固定されている。サンプル面に垂直に近い方向から観察したり、サンプルの傾斜角度を平面(90度)から更に大きくして光を照射し、観察することは無理である。このため、上記した塗装の視感評価のような、幅広い方向からの微妙な視感評価が必要な技術分野では、性能が劣るものである。
【0015】
本発明の課題は、幅広い角度から光を照射したときの微妙な視感評価の変化を的確に評価することができる視感評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る視感色彩評価装置は、サンプルを覆う筐体、サンプルに観察光を照射するための一個以上のLED光源、サンプルに対するLED光源の相対位置を連続的に変化させることでサンプルに対する観察光の照射角度を連続的に変化させる駆動機構、および筐体内のサンプルを目視観察するための窓を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、サンプルに対するLED光源の相対位置を連続的に変化させることでサンプルに対する観察光の照射角度を連続的に変化させる駆動機構を有しており、この観察光を、筐体内のサンプルを目視観察するための窓から観察して視感評価する。このように、筐体内の光源のサンプルに対する相対位置を連続的に変化させながら視感評価を行えるので、幅広い光源からの照射角度について、サンプルの呈色状態の異状を見逃すことがなく、所望の色彩を呈していることを、短時間で確実に視感評価ないし合致度の評価をすることができる。
更に、観察窓を可動とすることにより、観察角度を連続的または段階的に変化させて視感評価すると、上記の作用効果が一層顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】X−rite社製MA-68IIの照明と受光の幾何学的配置を示す。
【図2】ミノルタ製CM-512m3の照明と受光の幾何学的配置を示す。
【図3】「スカイライト」の照明と受光の幾何学的配置を示す。
【図4】本発明の視感評価装置の一例を示す外観斜視図である。
【図5】図4の視感評価装置の裏面斜視図である。
【図6】図4の装置において照明角度を変化させるための機構図である。
【図7】図4の装置の筐体から窓部材を取り外した状態を示す外観斜視図である。
【図8】図4の装置の窓部材を示す斜視図である。
【図9】図8の窓部材を使用したときの、観察角度および照射角度の位置の変化を例示する図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係る装置から窓部材を外した状態を示す外観斜視図である。
【図11】図10の装置における窓部材を示す斜視図である。
【図12】図10の装置における観察角度および照射角度の変化の一例を示す図である。
【図13】更に他の実施形態に係る装置の外観斜視図である。
【図14】図13の装置の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で評価されるサンプルは、角度で見え方が変わるサンプル全般に適用可能である。例えば、シルバーやパールなどの光輝剤が入ったサンプル、絞加工された表面状態の異なるサンプル、樹脂や着色成分が異なるサンプルなどを例示できる。更に具体的には、自動車部品などの塗装色において強く要望されているものである。
【0020】
図4は、据え置き型の視感評価装置の外観斜視図である。本評価装置では、筐体の前面下部からサンプルを差し込むか、またはサンプルの上に筐体1を設置してサンプルを覆うことにより、筐体1内のLED光源を一定の角度で照射した条件での色彩を観察できる。なお、装置の置き方は、適当な支えを使用すれば任意であるが、以下は、サンプルが底面にあるケースを代表例として説明する。
【0021】
携帯型とする場合には、取り扱いの利便性より、筐体1の大きさは小さく、全重量もなるべく軽い方が好ましい。筐体1の大きさと全重量の下限は、目視で見るという制限から、高さ等の長さが10mm以上が好ましいが、しかし作成上は限定はされない。一例として大きさと全重量の桁を示すと、筐体の大きさの縦、横、高さはそれぞれ約400mm、約500mm、約200mmで100mm〜1000mmのもの、調光機能付きの電源部分を含めた全重量約4.5kg、すなわち1kg〜10kgのものが使用上好適である。
【0022】
筐体は、装置全体の構造を支えると共に、影響が出ない程度に外光を遮断する。ただし、筐体によってサンプルを覆うだけで視感評価ができるように、筐体1の底は開いていてもよい。図示しない台の上にサンプルを配置し、その上に筐体1を配置することで、筐体1の内部にサンプルを被覆する。30は、筐体1内にサンプルを入れるための切り込みである。図4〜図6に示すように、LED光源8が取り付けてあるスライドバー(例えばアルミニウム等の金属からなる)2の右端が筐体1より外に突き出している。図6に示す機構により、スライドバー2を手に持って回転させると、サンプルを窓から観察しながら、LED光源の照射角度を連続的に変更することが可能である。
【0023】
筐体1の中央にアパーチャーガイド11が設けられており、これに窓部材10が取り付けられている。窓部材10には、サンプルを観察するための窓が、たとえはスリット状に1個以上形成されている。窓は、片目で覗く構造であってもよく、両目で覗く構造であってもよい。図4の例では、両眼用のそれぞれ長方形の2個の窓20A、20Bが設けられており、窓20Aと20Bとの観察角度は互いに例えば15度違っている。
【0024】
こうした窓間の観察角度の相違は、色彩視感評価およびその精度の観点から、角度10〜45度の規格に対応した値にし、眼の位置の切り換えで連続評価ができるようにすることが好ましい。
【0025】
筐体1の左右、後部の底部分は切り込みを入れ、筐体の4隅で筐体を保持できるようにする事が出来る。これにより車輌ボディーのように膨らみがあっても、筐体1を容易にセットする事ができる。
【0026】
本発明では、これを更に複数個並べ、複数個のLED光源とすることもできる。
図5の裏面図に示すように、LED光源8を用いる事により、サンプルへの光の照射角度を正確に定める。LED光源8は、スライドバー2に設置するとき、直射光が眼に入らないような位置に設置することが好ましい。ここで、観察窓の中心面(スライドバー2の長手方向に対して垂直な横断面)Pを考え、スライドバー2が観察窓の中心面Pと交差する点を、スライドバーの中心点Oとする。この場合、LED光源の設置位置を、スライドバー2の中心点Oから任意に少しずらしてもよい。言い換えると、LED光源のスライドバーへの設置位置が、スライドバーの中心点Oと重ならないようにすることができる。
【0027】
図5では、スライドバー2にLED光源を2個取り付けており、これらのLED光源8は、直射光が眼に入らないように、開口部14をまたいで設置されている。各LED光源は複数取り付けることもできる。光源8の側面側にはリフレクター9を取り付け、両サイドへの無駄な照射を跳ね返し、筐体1による乱反射光が無いようにし、照射角度を一定にするとともに、照度を稼ぐとよい。LED光源は市販のものを用いることができ、たとえば日亜化学製NS6W183シリーズ、シチズン電子製CL−L251シリーズ、CL−L233シリーズ、シャープGW5Bシリーズ等が使用できる。LEDの選択には、高照度を得るために全光束が高いこと、色の自然さを得るために平均演色指数が高いことが好ましい。また、筐体内側は黒のつや消し塗料が塗装されていることが好ましい。
【0028】
LED光源には調光装置18を取りつけることもできる。上面から照射した場合のサンプル面の最高照度を0から20000ルクス程度に変えることも出来る。また、調光装置を左右のLEDごとに取り付け、一方のLEDだけから強調照明することも可能である。こうすることにより、横方向からの照明での観察に対応できる。また、調光装置を左右のLEDごとに取り付けることによって、一つの光源から照明して観察することと、複数の光源から照明して観察することとの両方に対応できる。スライドバー2は、筐体1に対して直角に結合されたアーム3に取り付けられた軸5によって、固定されている。4はアーム固定具である。図6に示すように、スライドバー2にはバネで磁石7を取り付け、バネに取り付けられたレバーが開放された状態では筐体1の側面に固定され、光源角度がある特定な値に固定されるようになっている。
【0029】
図6に示すように、筐体1の右側側面には側板部1bが取り付けられている。側板部1bも、適当な金属、例えば鉄や磁性プラスチックによって形成できる。スライドバー2のハンドル部分には、磁石7を付けたグリップが取り付けられており、この磁石7でスライドバーが動かないように固定されている。通常は、磁石7は側板部6に付いた状態であるが、グリップすると磁石7が側板6から外れ、スライドバー2が自由に回転できるようになる。このようにして、LED光源の照射角度を、サンプルを観察しながら連続的に変更できる機構となっている。
【0030】
なお、本例では、照射角度を15度から165度まで変えられる装置を示している。また、観察するときに手でスライドバーを保持して固定しても良い。照射角度の表示は観察者から遠い方向を0度方向とし手前側を180度方向と表示し、本明細書での角度の表示はこれによる。
【0031】
図7は、観察する開口部の本体部分を示し、窓部材(アパーチャー)を外した状態を示している。図8は窓部材10を示す。図9は、筐体1に窓部材をセットした時の観察角度の変化を示す。窓部材10は筐体1から取り外せるようになっている。筐体1の上面にはベルト状の板12が取り付けられている。窓部材10の裏面にはマグネット13が取り付けられており、窓部材10が筐体1に軽く固定されている。窓部材10を持ち上げて移動するか、スライドさせることにより、観察角度を連続的に変更できる機構となっている。
【0032】
なお、窓を複数、たとえば2個つけることにより、異なる観察角度から、窓部材10を動かさずに観察できる。窓部材10は、窓部材の長さが一定のため、窓部材をスライドさせると底辺ではみ出すケースが考えられる。曲げの可能な材料を使用し、はみ出した部分を底面内に広げても良い。また、本例のように、窓部材の長さが筐体1の半円の1/2倍であるケースでは、窓が一つだけだと、筐体1の開口部14を窓部材で塞ぎきれないが、窓が例えば15度間隔で2つあると、必ず開口部14を全部塞ぐ事が可能になる。すなわち、二つの窓は15度の開き角度になっているので、上部窓20Bを観察角度150度にセットすると、下部の窓20Aは観察角度165度にセットされる。窓部材10をそのままスライドさせることにより観察角度を連続的に変化できる。120度以上の観察角度で観察する場合は、開口部14からの光が眼に入るので、窓部材10を上下反転させて使用すると都合が良い。下部の窓20Aを観察角度90度にセットすると、上部窓は角度105度にセットされ、開口部14は窓部材でふさがれる。中間の観察角度は、窓部材をスライドすることによって連続的に変更が可能な機構になっている。
【0033】
なお、前記二つの窓のうちの下の窓20Aの更に下に例えば15度置いて更に窓20Cを設け、観察窓を3個以上にする事もできる(図10、図11)。観察窓の個数を3個とした場合、観察窓の角度の開きを大きくすることができる。例えば、図12に示す例のように、観察窓の角度の開きを30度にできる。この例では、最も下の観察窓の観察角度を165度に設定すると、一番上の観察窓の角度は135度となる。また、この窓部材をいったん取り外し、窓部材の上下を反転させて再び取り付けることができる。この場合には、最も下の観察窓を120度に設定すると、最も上の観察窓の角度は90度とできる。
【0034】
更に、筐体1が、横断面が円弧形状の上板部と、この上板部の両側にそれぞれ設けられている側板部とを備えている場合には、スライドバーを回動させたときに光源を円弧形状の上板部に沿って滑らかに駆動させることができ、極めてコンパクトな装置で滑らかに視感評価可能であって、ユーザーにとって極めて便利なものである。
【0035】
車輌の補修塗装や車輌内装などを観察するための持ち運びが容易な小型視感評価装置の外観図を図13、図14に示す。本装置は持ち運びが容易で携帯も可能であり、車内・外装色を部品を取り外すことなくそのまま観察できる。図13は窓が3個の場合である。小型装置の大きさは、例えば縦、横、高さが200mm,250mm,100mmであり、調光機能付きの電源部分を含めた全重量は1.5kgである。
【0036】
本光源は外部コンセントでなくバッテリーでも使用可能である。LEDを取り付けたアルミバーを前後に動かすことによって、照射角度を変更することができる。筐体左右、前後の底部は切り込みを入れ、筐体の4隅で筐体を保持できるようにした。これにより車輌ボディーの膨らみがあっても筐体をセットできるようにした。装置全体が持ち運びしやすいように、調光装置18を筐体1で背負うように取り付けてある。
【0037】

図14に当該装置を裏側から見た外観図を示す。スライドバーにLEDを2個設置した。当該装置に用いたLEDはシチズン電子製CL-L233 シリーズである。LEDの背面にはアルミ板によるリフレクターを取り付け両サイドへの無駄な照射を跳ね返して照度を稼いだ。上面から照射した場合のサンプル面の最高照度を0から40000ルックスまで変えられるようになっている。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
下記に示す配合を持つ2枚のメタリック塗板A、Bを用意した。使用した塗料はアクリルメラミン系樹脂塗料である。アクリルメラミンクリヤーを使用し、各原色はカラーベースとして大日精化製NXカラー(溶剤系共通ベース)を使用して作成した。また、アルミペーストは粒子径が細い〜中間に位置するものを使用した。作成した塗料をスプレーガンで塗装後、室温で約30分セッティングを行い、150℃にて30分焼付けた。両者ともにスプレーガンで塗装したがAサンプルをほぼ垂直に立てた状態で塗装し、サンプルBは60度に傾けた状態で塗装した。
塗板Aの配合
アルミニウムペースト 8.00
黒原色 7.52
赤原色 3.34
黄原色 1.36
クリア 79.78
塗板Bの配合
アルミニウムペースト 8.00
黒原色 13.56
赤原色 3.23
黄原色 0.89
クリア 74.32
【0039】
図4〜図9を参照しつつ説明した据え置き型の装置を使用して視感評価した。塗板Aを筐体内の中央部の左側に、間隙がないように塗板Bを右側に置き、塗板Aに対する塗板Bを評価した。観察角度は90度、105度、120度、135度、150度、165度の6角度で行った。観察者は評価に先立ちLEDの調光ボリュームを調整して見やすい照度に調整した。観察者はそれぞれの観察角度において照明角度を連続的に動かして評価した。評価方法は合格範囲に入っていると判断された部分でバーを止め、バーの角度を5度刻みで読み取った。観察角度と照射角度が同じになるとアルミバーが視野に入るがバー越しで観察した。合格範囲に入っているものは○、合格と不合格の中間のグレーゾーンは△、不合格は×と評価した。観察者は男性2名、女性1名で色彩判定の経験が10年以上の熟練者である。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示されるように、90度から165度の全ての観察角度において照射角度を変えることにより合格、グレーゾーン、不合格の評価が変化している。例えば観察者Aの観察角度90度での合格範囲は照射角度は95〜110度であるが、観察角度が105度になると合格範囲は90〜105度となっている。観察角度が90〜165度と大きくなるに従い合格範囲となる照射角度は小さい方へシフトしている。この傾向は観察者B、Cでも同様である。不合格の理由は明度の変化であり、照射角度が小さい方向が黒く、照射角度が大きい方向では白い方向に変化した。合格範囲の角度範囲は大よそ20度であった。照射角度が35度以下は全て黒く×であり、135度以上は全て白く×であり、表への表示は割愛した。
【0042】
このように、照射角度を変えて評価することにより、照射角度の影響による合格、不合格をより正確に判定できる。また、観察角度を変えて評価することにより、観察角度の影響による合格、不合格をより正確に判定できる。照射角度、観察角度を変えても、合格範囲がシフトせず、かつ合格範囲が広いことが好ましいのは当然である。
【0043】
(実施例2)
下記に示す配合を持つ2枚のプラスチック板A、Bを用意した。観察方法はサンプル以外は実施例1と同じである。
【0044】
プラスチック板A配合:
ブロックポリプロピレン樹脂に顔料総計1%と分散剤0.5%をブレンドし単軸押出機でペレットを作成した。そのペレットを型締め圧50トンの射出成型機で成型温度200℃で成型した。金型には梨地の紋加工がされており、成型板の60度表面グロスは2.5であった。
A配合を下記に示す。
樹脂(PP) 98.50
酸化チタン 0.07
カーボンブラック 0.24
群青 0.57
銅フタロシアニンブルー 0.10
キナクリドンレッド 0.02
分散剤 0.50
【0045】
プラスチック板B配合:
ブロックポリプロピレン樹脂にタルク20%と顔料総計2%と分散剤1%をブレンドし、2軸押出機でペレットを作成した。そのペレットを型締め圧50トンの射出成型機で成型温度200℃で成型した。金型には梨地の紋加工がされており、成型板の60度表面グロスは2.4であった。
B配合を下記に示す。
樹脂(PP) 77.00
タルク 20.00
カーボンブラック 0.64
群青 1.11
銅フタロシアニンブルー 0.22
キナクリドンレッド 0.03
分散剤
1.00
【0046】
評価方法は実施例1と同じである。結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示されるように観察角度90度では色相が青く全て不合格であり、合格範囲が得られる観察角度は120度から165度だけであった。合格範囲の照射角度の範囲も5〜15度と狭いことが分かる。不合格の理由は照射角度の変化による色相の変化であり、照射角度が小さい方向が青く、照射角度が大きい方向では赤い方向に変化した。照射角度が100度以下は全て色相が青く、不合格であり、表への表示は割愛した。
【0049】
このように、照射角度を連続的に変えて評価することにより、照射角度の影響による合格、不合格をより正確に判定できる。また、観察角度を連続的に変えて評価することにより、観察角度の影響による合格、不合格をより正確に判定できる。この例では、合格範囲が狭いので、使用する顔料を変更しなければならないことがわかる。照射角度、観察角度を変えても合格範囲はシフトせず、かつ合格範囲が広いことが好ましいことは当然である。
【0050】
(実施例3)
図13、図14に示される携帯用の視感評価装置を使い、実施例1で使用したサンプルを実施例1と同様な方法で視感評価した結果を表4に示す。結果は表2とほとんど変わらなかった。
【0051】
【表4】

【0052】
(実施例4)
図13、14に示される装置を使い、実施例2で使用したサンプルを実施例2と同様な方法で視感評価した結果を表5に示す。結果は表3とほとんど変わらなかった。
【0053】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを覆う筐体、前記サンプルに観察光を照射するためのLED光源、前記サンプルに対する前記光源の相対位置を連続的に変化させることで前記サンプルに対する前記観察光の照射角度を連続的に変化させる駆動機構、および前記筐体内の前記サンプルを目視観察するための窓を備えていることを特徴とする、視感色彩評価装置。
【請求項2】
前記光源が取り付けられているスライドバー、およびこのスライドバーを回動させる回動機構を備えており、前記スライドバーを回動させることによって前記光源を移動させ、前記サンプルに対する観察光の照射角度を変化させることを特徴とする、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記筐体が、横断面が円弧形状の上板部と、この上板部の両側にそれぞれ設けられている側板部とを備えており、前記サンプルが前記上板部の下に設置されることを特徴とする、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記筐体に開口部が設けられており、前記筐体に対して前記開口部を被覆するように窓部材が取り付けられており、この窓部材に前記窓が設けられていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一つの請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記窓部材を前記筐体上でスライド可能とするスライド機構を備えており、前記窓部材をスライドさせることで前記観察角度を連続的に変化させることを特徴とする、請求項4記載の装置。
【請求項6】
一個または複数の前記光源と、前記観察光の照射方向に対して側方に取り付けられたリフレクターとを備えていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記窓部材に前記観察角度が変化する方向に向かって前記窓が複数設けられており、隣接する前記窓からの前記観察角度が10度〜45度相違していることを特徴とする、請求項4〜7のいずれか一つの請求項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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