説明

視準校正装置

【課題】少数の受光現示ユニットを用いただけの安価な構成により、模擬銃の照準の校正作業を効率良く正確に行えるようにする。
【解決手段】視準校正装置本体の中央部に受光部と現示部を有する標的板を固定すると共に、この標的板の周辺部に複数の受光現示ユニット51〜58を分散配置してこれらの受光現示ユニット51〜58をスライド板13a,13b及び14a,14bによりX方向及びY方向に移動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レーザ光を発射する模擬銃の照準を校正するために使用される視準校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ光を発射する模擬銃を使用した射撃訓練装置が開発されている。この種の装置は、例えば模擬銃と対向する位置に人型の標的板を設置する。そして、この標的板にレーザ光を受光する複数の受光素子を配置し、これらの受光素子から出力される受光信号を制御部に取り込んで、模擬被弾位置の特定や命中度などの模擬被弾状況を解析するものとなっている(例えば、特許文献1を参照)。このような装置を使用すれば射撃訓練を効率良く行うことが可能となる。
【0003】
【特許文献1】特開2006−250405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような射撃訓練を行う場合には模擬銃の照準を事前に合わせておく必要がある。しかしながら、前記従来の射撃訓練装置は単に模擬被弾状況を解析する機能を備えたものに過ぎず、模擬銃の照準を校正する用途には使用することができない。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、模擬銃の照準の校正作業を安価な構成により効率良く正確に行うことが可能な視準校正装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するためにこの発明の一観点は、レーザ光を発射する模擬銃の照準を校正するために用いられる視準校正装置にあって、上記模擬銃から発射されるレーザ光を受光する受光部と当該受光部による上記レーザ光の受光結果を表示する発光部とを備える標的部を設置すると共に、この標的部の周辺部に、上記レーザ光を受光する受光部と当該受光部によるレーザ光の受光結果を表示する発光部とを備える少なくとも1つの受光現示ユニットを配置する。そして、この受光現示ユニットを移動部により支持させることで、上記受光現示ユニットを上記レーザ光の光軸に対し直交する方向に移動可能に構成したものである。
【発明の効果】
【0006】
したがってこの発明の一観点によれば、模擬銃から発射されるレーザ光の光軸が標的部からずれている場合に、当該レーザ光が受光される位置まで受光現示ユニットを移動部により移動させることが可能となる。そして、このときの標的部に対する受光現示ユニットの移動方向と移動量とから、上記レーザ光の光軸のずれを把握してその校正作業を行うことが可能となる。
すなわちこの発明によれば、少数の受光現示ユニットを用いただけの安価な構成により、模擬銃の照準の校正作業を効率良く正確に行うことが可能な視準校正装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係わる視準校正装置の本体部分の構成を示すものである。この視準校正装置本体1は、正方形又は長方形に構成された枠型のフレーム11を備える。このフレーム11の上辺と下辺との間には、一対の固定板12a,12bが当該上辺と下辺との間を橋渡しする状態に固定されている。この固定板12a,12bの裏面側の中央部分には、制御器20が取り付けられている。
【0008】
また、上記固定板12a,12bの前面側となる部位には、図2に示すように標的板30が取り付けられる。標的板30には、照準用の十字マークが表示され、さらに標的用の受光部31及び現示部32が取着されている。受光部31は例えば複数の受光素子をマトリクス状に配置したもので、レーザ模擬銃2から発射されたレーザ光を受光し、その受光信号を制御器20へ出力する。制御器20は、上記受光部31から出力された受光信号をディジタル化して取り込み、その受光レベルをもとにレーザ光が受光部31の中央部に命中したか、或いは端部に命中したかを判定する。そして、中央部に命中した場合には点灯信号を、また端部に命中した場合には点滅信号を現示部32へそれぞれ出力する。現示部32は例えばLED(Light Emitting Diode)からなり、上記制御器20から出力された点灯信号又は点滅信号により点灯又は点滅する。
【0009】
ところで、上記固定板12a,12bの上辺と下辺との間には、2個のスライド板13a,13bが当該上辺と下辺との間を橋渡しする状態に配設され、また同様に固定板12a,12bの左辺と右辺との間には、2個のスライド板14a,14bが当該左辺と右辺との間を橋渡しする状態に配設されている。これらのスライド板13a,13b及び14a,14bはそれぞれ、フレーム11に設けられた案内溝15a,15b及び16a,16bに案内されて左右方向及び上下方向にスライド移動が可能となっている。
【0010】
そして、上記スライド板13a,13bにはそれぞれ、例えば図4に示すように任意の位置に3個の受光現示ユニット51〜53,54〜56が取着される。また、スライド板14a,14bにもそれぞれ1個の受光現示ユニット57,58が取着される。取着手段には、例えばマグネットが用いられる。なお、取着手段としては他に粘着テープ接着剤、ネジなどを用いてもよい。
【0011】
上記受光現示ユニット51〜58は上記レーザ模擬銃2から発射されるレーザ光の光軸ずれを検出するために用いられるもので、いずれも受光部61と現示部62とから構成される。受光部61は、先に述べた標的用の受光部31と同様に複数の受光素子をマトリクス状に配置したもので、レーザ模擬銃2から発射されたレーザ光を受光してその受光信号を制御器20へ出力する。
【0012】
制御器20は、上記受光部61から出力された受光信号をディジタル化して取り込み、その受光レベルをもとにレーザ光が受光部61の中央部に命中したか、或いは端部に命中したかを判定する。そして、中央部に命中した場合には点灯信号を、また端部に命中した場合には点滅信号を、上記受光部61と対をなす現示部62へそれぞれ出力する。現示部62も、先に述べた標的用の現示部32と同様にLEDからなり、制御器20から出力された点灯信号又は点滅信号により点灯又は点滅する。
【0013】
なお、上記固定板12a,12bにも、上記標的板30の四角及び左右に対応する位置にそれぞれ受光現示ユニット41〜46が取着される。これらの受光現示ユニット41〜46も受光部61と現示部62とからなり、上記スライド板13a,13b及び14a,14bに取着された受光現示ユニット51〜58と共に、レーザ模擬銃2のレーザ光軸のずれを検出するために用いられる。
【0014】
以上のように構成された視準校正装置本体1は、図3に示すようにレーザ模擬銃2に対し例えば20メートル又は30メートル離間した位置に設置される。なお、この離間距離はレーザ模擬銃2の種類により適宜設定される。
【0015】
次に、以上のように構成された装置の動作を校正手順に従い説明する。
先ず視準校正装置本体1の固定板12a,12bの裏面側に図1に示すように制御器20を取り付け、続いて固定板12a,12bの前面側に図2に示すように標的板30を取り付ける。そして、この視準校正装置本体1をレーザ模擬銃2から例えば20メートル又は30メートル離間した位置に設置する。
【0016】
この状態で、例えば図3に示すように、標的板30の十字マークに対しレーザ模擬銃2の照準眼鏡により照準を合わせ、レーザ模擬銃2のレーザ送信部よりレーザ光を発射する。このとき、上記照準眼鏡の照準線2Sに対しレーザ光の光軸2Lが完全に平行になっていれば、上記レーザ光は標的板30の受光部31に照射される。そうすると、受光部31から受光信号が出力され、この受光信号はディジタル化されたのち制御器20に取り込まれる。
【0017】
制御器20では、上記受光信号の受光レベルをもとに、レーザ光が受光部31の中央部に命中したか或いは端部に命中したかが判定される。そして、中央部に命中した場合には点灯信号が、また端部に命中した場合には点滅信号が現示部32へ出力される。この結果、現示部32は、上記制御器20から出力された点灯信号又は点滅信号により点灯又は点滅する。したがって、調整作業者は上記現示部32の点灯又は点滅により、照準の精度を確認することができる。
【0018】
一方、いま仮に、上記レーザ模擬銃2から発射されるレーザ光の光軸2Lが、照準眼鏡の照準線2Sに対し平行になっていなかったとする。この場合、上記レーザ模擬銃2から発射されるレーザ光は上記標的板30の受光部31で受光されず、この結果現示部32では点灯もまた点滅も行われない。
【0019】
そこで、先ず固定板12a,12bに固定的に取着された受光現示ユニット41〜46のいずれかでレーザ光が受光されているか否かを、現示部62の点灯状況をもとに判定する。この判定の結果、受光現示ユニット41〜46のいずれにおいてもレーザ光が受光されなかったとする。この場合には、続いて例えば図4及び図5に示すようにスライド板13a,13b及び14a,14bを図中Xa,Xb及びYa,Yb方向に選択的にスライド移動させ、これにより当該スライド板13a,13b及び14a,14bに取着された受光現示ユニット51〜58の位置を移動させる。このスライド板13a,13b及び14a,14bの移動は、例えば視準校正装置本体1の設置位置に配置された調整作業者の手動操作により行われる。なお、図4は移動開始前の状態を、図5は移動終了後の状態を示す。
【0020】
上記受光現示ユニット51〜58の移動操作の結果、いずれかの受光現示ユニット(例えば52)の受光部61にレーザ光が照射されると、その時点で当該受光部62から受光信号が出力される。そして、制御器20の制御の下で、上記レーザ光を受光した受光部61と対をなす現示部62が点灯又は点滅する。したがって、調整作業者はこのときの受光現示ユニット52の移動方向と移動量とから、照準線2Sに対するレーザ光軸2Lのずれの方向とずれ量を把握することが可能となり、この把握した光軸ずれの方向とずれ量をもとにレーザ模擬銃2の視準を校正することができる。
【0021】
なお、受光現示ユニット41〜46のいずれかでレーザ光が受光された場合にも、上記受光現示ユニット51〜58のいずれかでレーザ光が受光された場合と同様に受光部62から受光信号が出力される。そして、制御器20の制御の下で、上記レーザ光を受光した受光部61と対をなす現示部62が点灯又は点滅する。したがって、調整作業者はレーザ光が受光された受光現示ユニット41〜46の設置位置から、照準線2Sに対するレーザ光軸2Lのずれの方向とずれ量を把握することが可能となり、この把握した光軸ずれの方向とずれ量をもとにレーザ模擬銃2の視準を校正することができる。
【0022】
以上述べたようにこの実施形態の視準校正装置では、視準校正装置本体1の中央部に受光部31と現示部32を有する標的板30を固定すると共に、この標的板30の周辺部に複数の受光現示ユニット51〜58を分散配置してこれらの受光現示ユニット51〜58をスライド板13a,13b及び14a,14bによりX方向及びY方向に移動可能としている。
【0023】
したがって、レーザ模擬銃2から発射されるレーザ光の光軸2Lが照準眼鏡の照準線2Sに対し平行になっていない場合に、スライド板13a,13b及び14a,14bにより上記レーザ光の照射位置まで受光現示ユニット51〜58を移動させることが可能となる。この結果、このときの標的板30に対する受光現示ユニット51〜58の移動方向と移動量とから、上記レーザ光の光軸2Lのずれを把握することができ、このずれの検出情報をもとにレーザ模擬銃2の視準を効率良く校正することが可能となる。
【0024】
また、本実施形態では受光現示ユニット51〜58をスライド板13a,13b及び14a,14bにより移動可能としているので、例えば視準校正装置本体1の全域に多数の受光現示ユニットをマトリクス状に配設する場合に比べ、少数の受光現示ユニットを用いるだけで光軸のずれを検出することが可能となり、これにより装置を安価にすることができる。
【0025】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような種々変形が可能である。
すなわち、前記実施形態では、スライド板13a,13b及び14a,14bの移動を、調整作業者の手動操作により行う場合を例にとって説明した。しかしそれに限らず、調整作業者がレーザ模擬銃2の設置位置からリモートコントローラを用いてスライド板13a,13b及び14a,14bの移動を遠隔制御するようにしてもよい。これは、視準校正装置本体1に、遠隔制御信号の受信器と、スライド板13a,13b及び14a,14bの駆動機構を設け、上記受信器により受信された遠隔制御信号をもとに制御器20が上記駆動機構を駆動制御することにより実現できる。
【0026】
また、制御器20において、標的板30の照準位置に対する受光現示ユニット52の移動方向と移動量を検出し、この検出した移動方向と移動量とから、レーザ模擬銃2の照準線2Sに対するレーザ光軸2Lのずれの方向とずれ量を計算する。そして、この計算結果を調整作業者が所持する端末に無線回線を介して送信して表示するようにしてもよい。
【0027】
さらに、前記実施形態ではスライド板13a,13b及び14a,14bがそれぞれX方向及びY方向に独立して移動する場合を例にとって説明したが、スライド板13a,13b及び14a,14bを重ね合わせてXYテーブルを構成し、これによりスライド板13a,13b上に取着した受光現示ユニットを2次元方向の任意の位置に移動可能にしてもよい。このようにすると、例えば1個の受光現示ユニットを用いるだけで2次元平面上の全領域をカバーすることが可能となる。
【0028】
その他、受光現示ユニットの構成や数、移動部の構成等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態に係わる視準校正装置本体の標的板取り付け前の構成を示す図である。
【図2】図1に示した視準校正装置本体に標的板を取り付けた状態を示す図である。
【図3】図2に示した視準校正装置本体を使用して視準校正動作を行う場合の例を示す図である。
【図4】図2に示した視準校正装置本体に受光現示ユニットを取り付けた状態を示す図である。
【図5】図4に示した視準校正装置本体において受光現示ユニットをスライド移動させた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…視準校正装置本体、2…レーザ模擬銃、2S…照準線、2L…レーザ光軸、11…フレーム、12a,12b…固定板、13a,13b,14a,14b…スライド板、15a,15b,16a,16b…案内溝、20…制御器、30…標的板、31…標的用の受光部、32…標的用の現示部、41〜46…固定板に取着された光軸ずれ検出用の受光現示ユニット、51〜58…スライド板に取着された光軸ずれ検出用の受光現示ユニット、61…光軸ずれ検出用の受光部、62…光軸ずれ検出用の現示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発射する模擬銃の照準を校正するために用いられる視準校正装置であって、
前記模擬銃と対向する位置に設置される標的部と、
前記模擬銃から発射されるレーザ光を受光する受光部と当該受光部によるレーザ光の受光結果を表示する発光部とを備え、前記標的部の周辺部に配置される少なくとも1つの受光現示ユニットと、
前記受光現示ユニットを、前記レーザ光の光軸に対し直交する方向に移動可能に支持する移動部と
を具備することを特徴とする視準校正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−60218(P2010−60218A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227173(P2008−227173)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】