説明

視聴確率算出方法及び装置及びプログラム及び視聴プラン推薦方法及び装置及びプログラム

【課題】 視聴履歴情報から最近見た映像とユーザの興味に応じた映像を推薦し、視聴プランも提供可能とする。
【解決手段】 本発明は、マルコフモデル生成手段が、視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出し、トピックモデル生成手段が、視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出する。視聴者行動モデル生成手段が、ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、マルコフモデル生成手段とトピックモデル生成手段で算出された確率の二項演算で求め処理を繰り返し実行させ、ある視聴履歴を持つ視聴者がある視聴プランを選択する確率を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視聴確率算出方法及び装置及びプログラム及び視聴プラン推薦方法及び装置及びプログラムに係り、特に、複数人の視聴履歴に基づいて映像を推薦するための視聴確率を算出し、視聴プランを推薦するための、視聴確率算出方法及び装置及びプログラム及び視聴プラン推薦方法及び装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の第一の技術として、ユーザベースの協調フィルタリング技術がある。これは、ユーザと似た振る舞いをしている集団をもとにアイテムを自動推薦する技術である(例えば、非特許文献1,2参照)。人と人との類似性は、過去に視聴したアイテム集合の類似性をもとに測定する。あるユーザにアイテムを推薦したいときには、そのユーザと類似している人が視聴したアイテムのリストを作成し推薦する。
【0003】
上記の技術のうち、非特許文献1は、ニュース記事を面白い/面白くない、の二値で評価させ、この評価情報を、文書をフィルタする際に利用した。非特許文献1は、ユーザが自身と同じ関心を持つ他のユーザを指定する必要がある。
【0004】
また、非特許文献2は、人々にニュース記事を5段階で評価させ、システムは記事と各ユーザの得点を収集し、収集した得点の集計結果をもとに、個々のユーザの得点を計算する。非特許文献1と異なる点は、事前に同じ関心を持つユーザを指定する必要がないことである。
【0005】
また、従来の第二の技術として、アイテムベースの協調フィルタリングがある。前記、第一の技術が、人と人との類似性をもとに情報を推薦するのに対して、第二の技術はアイテム間の類似性をもとに、推薦を行うという特徴がある。アイテム間の類似性は、そのアイテムを購入した人がどれくらい一致しているかによって決まる。あるユーザに商品を推薦したいときには、そのユーザが購入したアイテムリストを作成し、それらに対して類似している順に重みづけされたアイテムリストを作成し推薦する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. Goldberg, D. Nichols, B.M. OKi, D. Terry: Using collaborative filtering to weave an inforMation tapestry. CoMMunications of the ACM, 35, 12, pp.61-70 (1992).
【非特許文献2】P. ResnicK, N.Lacovou, M.SuchaK, P.BergstorM, J.Riedl: GroupLens: an open architecture for collaborative filtering of netnews. Proc. of 1994 ACM conference on CoMputer supported cooperative worK, pp. 175-186 (1994).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ユーザの嗜好情報に基づく既存の協調フィルタリング技術は、時系列的に表れる視聴傾向を汲み取り、ユーザの現在の状況に応じた推薦をすることができなかった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、視聴履歴情報から最近見た映像とユーザの興味に応じた映像を推薦することを可能とし、さらに、視聴プランも提供可能な視聴確率算出方法及び装置及びプログラム及び視聴プラン推薦方法及び装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明(請求項1)は、複数人の映像視聴履歴に基づいて、ある視聴者が次に各映像を視聴する確率を算出するための視聴確率算出方法であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、マルコフモデル生成手段、トピックモデル生成手段、視聴者行動モデル生成手段を有する装置において、
前記マルコフモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成ステップと
前記トピックモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成ステップと、
前記視聴者行動モデル生成手段が、ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成ステップと前記トピックモデル生成ステップで算出された確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成ステップと、を行う。
【0010】
また、本発明(請求項2)は、複数人の映像視聴履歴に基づいて、ある視聴者が次に各映像を視聴する確率を算出するための視聴確率算出装置であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、
前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成手段と、
前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成手段と、
ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成手段と前記トピックモデル生成手段が算出した確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成手段と、を有する。
【0011】
また、本発明(請求項3)は、請求項2記載の視聴確率算出装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための視聴確立算出プログラムである。
【0012】
また、本発明(請求項4)は、複数人の映像視聴履歴に基づいて複数の映像の系列である視聴プランを推薦するための視聴プラン推薦方法であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、マルコフモデル生成手段、トピックモデル生成手段、視聴者行動モデル生成手段、視聴プラン生成手段とを有する装置において、
前記マルコフモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成ステップと、
前記トピックモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成ステップと、
前記視聴者行動モデル生成手段が、ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成ステップと前記トピックモデル生成ステップで算出された確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成ステップと、
前記視聴プラン生成手段が、前記視聴者行動モデル生成ステップを繰り返し実行させ、ある視聴履歴を持つ視聴者がある視聴プランを選択する確率を求める視聴プラン生成ステップと、を行う。
【0013】
また、本発明(請求項5)は、複数人の映像視聴履歴に基づいて複数の映像の系列である視聴プランを推薦する装置であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、
前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成手段と、
前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成手段と、
ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成手段と前記トピックモデル生成手段が算出した確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成手段と、
前記視聴者行動モデル生成手段を繰り返し適用し、ある視聴履歴を持つ視聴者がある視聴プランを選択する確率を求める視聴プラン生成手段と、を有する。
【0014】
また、本発明(請求項6)は、請求項5記載の視聴プラン推薦装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための視聴プラン推薦プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ユーザが自らの嗜好情報を明示的に入力せず、過去にどのような映像を見たかという視聴履歴情報のみから、複数人の映像視聴履歴から導き出される映像間の遷移のしやすさを捉えるマルコフモデル、個人の映像視聴履歴に反映された個人の嗜好を捉えるトピックモデルの二項演算による視聴行動モデルに基づき、最近見た映像と、個人の興味に応じたパーソナライズド推薦を実現可能である。また、最近見た映像と興味情報に加え、個人が映像視聴に費やすことができる時間や、映像視聴プランに費やすことができる金額などを考慮した視聴プラン推薦を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における視聴プラン推薦装置の構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態における視聴プラン生成部の処理のフローチャート(その1)である。
【図3】本発明の一実施の形態における視聴プラン生成部の処理のフローチャート(その2)である。
【図4】本発明の一実施の形態における視聴情報格納装置に格納されている視聴情報の一例である。
【図5】本発明の一実施の形態における映像情報格納装置に格納されている映像情報の一例である。
【図6】本発明の一実施の形態における視聴履歴格納部に格納されている映像情報の一例である。
【図7】本発明の一実施の形態における出力部の出力の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、視聴プラン推薦装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態における視聴プラン推薦装置のブロック図を示す。
【0019】
同図に示す視聴プラン推薦装置10は、視聴履歴生成部3、視聴履歴格納部4、操作部5、検索部6、モデル生成部7、視聴プラン生成部8、出力部9から構成される。このうち、操作部5、視聴履歴生成部3は、外部の視聴情報格納装置1と接続されている。また、操作部5、視聴プラン生成部8は外部の映像情報格納装置2と接続されている。
【0020】
視聴情報格納装置1は、視聴プラン推薦装置10から解析され得る視聴情報を格納しており、視聴プラン推薦装置10からの要求に従って、視聴情報を読み出し、当該情報を視聴プラン推薦装置10に送信する。視聴情報は、例えば、視聴した映像を一意に識別する映像ID、映像を視聴した時間である視聴時間情報、視聴者を一意に識別する視聴者情報とからなる情報である。いま、視聴者をuで表すと、各視聴情報は、
【0021】
【数1】

で表される。このうち、視聴時間情報
【0022】
【数2】

は、例えば、映像を視聴した時間区間、映像を見始めた時間であるが、視聴者が映像を視聴した順序が保存できる形式であればよい。映像ID
【0023】
【数3】

は、視聴した映像を一意に識別するための識別子である。視聴情報格納装置1は、Webページを保持するWebサーバや、データベースを具備するデータベースサーバ等である。
【0024】
映像情報格納装置2は、視聴プラン推薦装置10から解析され得る映像情報を格納しており、視聴プラン推薦装置10からの要求に従って、映像情報を読み出し、当該情報を視聴プラン推薦装置10に送信する。例えば、映像を一意に識別する映像ID、タイトル、出演者、放映時間の長さ、料金情報などから成る情報である。映像情報格納装置2は、Webページを保持するWebサーバや、データベースを具備するデータベースサーバ等である。
【0025】
視聴履歴生成部3は、視聴情報格納装置1に格納されている視聴情報に基づき、各視聴者uに関する視聴履歴を生成する。視聴履歴は、視聴した映像IDのシーケンスであり、
【0026】
【数4】

で表すことができる。τ―1は、視聴者uの全視聴情報数であり、視聴履歴中の各映像IDは視聴時間情報に基づいてソートされているものとする。
【0027】
視聴履歴格納部4は、視聴履歴生成部3で得られた視聴履歴を格納する。具体的には、視聴履歴と、視聴者を一意に識別するIDを対応付けて格納する。視聴履歴格納部4は、視聴履歴、及び、視聴者を一意に識別するIDが保存され、復元可能なものであればなんでもよい。例えば、データベースや、予め備えられた汎用的な記憶装置(メモリやハードディスク装置)の特定領域に記憶される。
【0028】
操作部5は、視聴情報格納装置1、映像情報格納装置2、視聴履歴格納部4のデータに対するユーザからの各種操作を受け付ける。各種操作とは、格納された情報を登録、修正、削除する操作等である。また、操作部5は、映像情報格納装置2に格納された映像情報を装置のユーザに提示することも可能である。ユーザは、提示された情報の中から単一、もしくは、複数の映像情報を選択することで、推薦を行う対象となる視聴者に関する視聴情報、及び、視聴履歴情報として登録することが可能である。なお、複数の映像情報を選択する場合は、それらを訪れた順序情報も判別可能な形式で入力する。操作部5の入力部は、キーボードやマウスやメニュー画面やタッチパネルによるもの等、何でもよい。操作部5は、マウス等の入力手段のデバイスドライバや、メニュー画面の制御ソフトウェアで実現され得る。
【0029】
検索部6は、推薦を行う対象となる視聴者情報と、プラン制約条件を受け付ける。視聴者情報は、視聴者uを特定する情報である。例えば、視聴履歴格納部4に格納されている視聴者を一意に識別するIDがこれに該当するが、視聴履歴格納部4に格納された視聴履歴と同形式の視聴履歴そのものを入力として受け付けてもよい。本装置は、同一の視聴履歴を持つ複数の視聴者に同様の結果を提示する。そのため、視聴履歴そのものが入力された場合は、視聴履歴格納部4に格納されたデータの中で、受け付けた視聴履歴と同じ視聴履歴を持ついずれかの視聴者が指定されたものとして扱う。もし、同じ視聴履歴が存在しない場合は、視聴履歴格納部4の視聴履歴の系列の中から、受け付けた視聴履歴と類似性の高いものを選択する。類似性を測る指標としては、例えば、編集距離がある。編集距離は2つのシーケンスが与えられた場合に、一方のシーケンスをもう一方のシーケンスに変換する操作(追加、削除、置換)の最小ステップで定義されるシーケンス間の類似性を測るための指標である。「プラン制約条件」とは、推薦して欲しいプランの個数、単一のプランに含まる映像情報の個数、プランの総視聴時間、プランの合計金額などである。なお、映像情報の個数、総視聴時間、プランの合計金額は、3個以上10個以下というように範囲を指定してもよい。なお、検索部6の入力手段は、キーボードやマウスやメニュー画面やタッチパネルによるもの等、何でもよい。検索部6は、マウス等の入力手段のデバイスドライバや、メニュー画面の制御ソフトウェアで実現され得る。
【0030】
モデル生成部7は、マルコフモデル生成部71と、トピックモデル生成部72と、視聴者視聴者行動モデル生成部73とを具備する。モデル生成部7は、視聴履歴格納部4の視聴履歴に基づき、時間t−1に映像rt-1を見ている視聴者uが、時間tに映像rを見る確率
【0031】
【数5】

を算出する。モデル生成部7は、検索部6によって指定された視聴履歴huの(ユーザu)のある映像を視聴する確率
【0032】
【数6】

を算出する。
【0033】
マルコフモデル生成部71は、視聴履歴格納部4の視聴履歴に基づいて、マルコフモデルを生成する。マルコフモデルは、時系列データを扱う確率モデルとして広く用いられている。N次マルコフモデルは、視聴者が次に見る映像はN個前に見た映像に依存する。以後、説明の簡略化のため、1次マルコフモデルを用いて説明をするが、他の次数のマルコフモデルを用いてもよい。1次マルコフモデルの場合、視聴者が次に見る映像は一つ前に見た映像に依存し、以下の式で計算することができる。
【0034】
【数7】

【0035】
【数8】

は、最尤推定によって以下の式で計算することができる。
【0036】
【数9】

【0037】
【数10】

は、全視聴履歴中で、位置rt-1の後に位置r訪れたことを示す視聴履歴数である。また、n(rt-1)は、全視聴履歴中で、rt-1を訪れたことを示す視聴履歴数である。
【0038】
トピックモデル生成部72は、視聴履歴格納部4の視聴履歴に基づいて、トピックモデルを生成する。トピックモデルにおいては、ある視聴者が見る各映像は、ユーザ固有のトピック比率に従ってあるトピックを選択した後、そのトピックに固有の映像出現確率分布に従って生成されると仮定して、視聴者の行動を確率モデルで表現する。トピックモデルにおいては、潜在トピックz∈Z={z1,…,zK}が与えられ、hとrが独立であると(仮定)したときに、視聴履歴hの視聴者が映像rを見る確率を以下の式で計算することができる。
【0039】
【数11】

ここで、P(z|h)は、視聴者の興味を示しており、視聴者uがトピックzに興味を持つ確率である。例えば、変数zは、「アクション」や「ホラー」などの興味トピックを表すために用意された変数である。また、P(rt│z)はトピックzにおけるトレンドを表現しており、トピックzにおいて映像rが選択される確率である。例えば、「ホラー」というトピックからは、ホラー映画などが高い確率で選択される。
【0040】
つまり、トピックモデルは、視聴履歴hの視聴者uが映像rを見た情報を学習データとし、これらの学習データが、"ある視聴者が見る各映像は、ユーザ固有のトピック比率に従ってあるトピックzを選択した後、そのトピックzに固有の映像出現確率分布に従って生成された"と仮定した上で、潜在トピックzに関するp(z│h)、P(r│z)を学習する手法である。なお、トピックzは典型的には「アクション」や「ホラー」などのトピックを表すために用意された変数であるが、その変数が実際にどのようなトピックかを表すかは不明でよい。つまり、トピックモデルは、変数zに関する確率p(z│h)、P(r│z)を学習するものである。
【0041】
トピックモデルの代表例として、Probabilistic Latent SeMantic Analysis(T. HofMann. Probabilistic Latent SeMantic Analysis , in Proc. Conf. on Uncertainty in Artificial Intelligence (UAI), pp. 289-296 (1999))やLatent Dirichlet Allocation(D.M. Baei, A.Y. Ng, and M.I. Jordan. Latent Dirichlet Allocation, in Journal of Machine Learning Research (JMLR), vol. 3, pp. 993-1022 (2003).)などがあるが、どのモデルを用いて求めてもよい。
【0042】
視聴者行動モデル生成部73は、時間t−1に映像rt-1を見ている視聴者uが、時間tに映像rtを見る確率P(r|rt-1,h)を、マルコフモデル生成部71によって得られた結果と、トピックモデル生成部72によって得られた結果の二項演算によって導出する。例えば、マルコフモデルとトピックモデルを組み合わせる方法としてユニグラムリスケーリング法(D. Gildea and T. HofMann. Topic-based Language Models Using EM, in Proc. EUROSPEECH, pp. 2167-2170 (1999))がある。ユニグラムリスケーリング法は、以下の式で計算できる。
【0043】
【数12】

P(r)は、映像rtを見る確率で、以下の式で計算することができる。
【0044】
【数13】

Nは、全視聴履歴数である。C(rt-1,h)は正規化項である。P(r|rt-1)とP(r|h)は、それぞれ、マルコフモデル生成部71とトピックモデル生成部72によって導出した確率モデルである。求められた確率P(rt)を視聴プラン生成部8に出力する。
【0045】
視聴プラン生成部8は、検索部6で指定したプラン制約条件を満たす中で、視聴者uが選択する確率の高い、視聴者uの視聴プランを求める。プラン制約条件とは、例えば、推薦して欲しいプランの個数Kや、単一のプランに含まれる映像情報の個数Mまたは個数Mの範囲である。また、プランに含まれるすべての映像を視聴するのに要する総視聴時間や、プランに含まれるすべての映像を視聴するのに要する合計金額など、映像情報格納装置2における各属性値の合計を制約条件としても良い。
【0046】
例えば、推薦して欲しいプランの個数Kと、単一のプランに含まれる映像情報の個数Mまたは個数Mの範囲が制約条件として与えられた場合、視聴プラン生成部8は、図2に示すフローチャートによって実現できる。入力は、視聴者uに関する視聴履歴h、一つのプランに含まれる映像情報の個数M、推薦して欲しいプランの個数Kである。ここで、一つのプランに含まれる映像情報の個数Mを、「シーケンス長」と呼ぶこととする。
【0047】
視聴プラン生成部8の出力は、K個の視聴プランを格納とした配列Aである。また、sは視聴した映像からなるシーケンス、MsはMに含まれる映像の個数、psはsが選択される確率、slastはs中で最後に見た映像、s+rは映像rを見た場合に更新されたシーケンスである。以下、図2のフローチャートに従って説明する。
【0048】
視聴履歴h、視聴プラン数K、シーケンス長Mが入力されると、まず、以下の各値
配列A←Φ;
一時変数K←1;
優先度付きキューQ←Φ;
を初期化し(ステップ101)、視聴者が最後に見た(最近見た)映像
【0049】
【数14】

を優先度付きキューQに追加する(ステップ102)。優先度付きキューQは、取り出し操作(ポップ)によって最も優先度の高い一つの要素を返すデータ構造である。本装置においては、優先度が確率値psで与えられる優先度付きキューを用いる。つまり、最も確率値の高い要素を優先度付きキューQに返す。キューQから最も高い確率値のプランsを取り出し(ステップ104)、そのプランsが制約条件(シーケンス長MがM)を満たすかどうかを調べる(ステップ105,107)。満たす場合は(ステップ105、Yes)、プランsを配列Aに追加する(ステップ106)。もしプランsが条件を満たさない場合は、最後に見た(見ている)映像(プランsにおける最後の映像)から他の映像へのサブプランsを追加した新たなプランを生成する(ステップ108、109)。同時に、モデル生成部7で求められた視聴者行動モデルを用いて、生成したプランの確率値
【0050】
【数15】

を計算する(ステップ108)。上記のプロセスをK個のプランが配列Aに追加させるまで繰り返す(ステップ103、Yes)。
【0051】
また、例えば、推薦して欲しいプランの個数Kと、プランに含まれるすべての映像を視聴するのに要する合計金額が制約条件として与えられた場合、視聴プラン生成部8は、最良優先探索アルゴリズムによって、図3に示すフローチャートによって求めることができる。
【0052】
入力は、視聴者uに関する視聴履歴hu、金額に関する制約条件(下限tlowerと上限tupperで表される視聴者が許容する金額の範囲)、推薦して欲しいプランの個数Kである。出力は、K個のプランを格納した配列Aである。また、sは視聴した映像のシーケンス、tはsを視聴するのに要する金額、psはsが選択される確率、slastはs中で最後に視聴した映像、s+1は映像rを視聴した場合に更新されたシーケンスである。
【0053】
以下、図3のフローチャートに従って説明する。
【0054】
視聴履歴hu、視聴プラン数K、金額範囲の下限tlower、上限tupperが入力されると、まず、以下の値
配列の初期化:A←Φ;
一時変数の初期化:K←1;
優先度付きキューの初期化:Q←Φ;
を初期化し(ステップ201)、視聴者が最後に見た(最近見た)映像
【0055】
【数16】

を優先度付きキューQに追加する(ステップ202)。優先度付きキューQは、取り出し操作(ポップ)によって最も優先度の高い一つの要素を返すメモリ(図示せず)内のデータ構造である。本装置においては、優先度画確率値psで与えられる優先度付きキューを用いる。つまり、最も確率値の高い要素を優先度付きキューQは返す。キューQから最も高い確率値のプランsを取り出し(ステップ204)、それが金額制約条件を満たすか動かを調べる(ステップ205)。もし、プランsが条件を満たす場合(ステップ205、Yes)は、プランsを配列Aに追加する。次に、プランsが金額範囲の上限tupper未満
かを調べる(ステップ207)。もし、プランsが上限tupper未満の場合(ステップ207、Yes)、最後に見た(見ている)映像(プランsにおける最後の映像)から他の映像へのサブプランsを追加した新たなプランを生成する。具体的には、生成したプランの確率値と合計金額を計算する(ステップ208,209)。「getValue」関数は、映像を視聴するのに要する金額を返す関数であり、この関数は、映像情報格納装置2のデータを利用することで実現し得る。上記のプロセスをK個のプランが配列Aに追加されるまで繰り返す(ステップ210,203)。合計金額ではなく、総視聴時間の場合は、「getValue」関数を、映像を視聴するのに要する時間を返す関数とすることで実現し得る。
【0056】
出力部9は、視聴プラン生成部8で得られたモデルに基づき、訪れる確率の高いプランから順に出力する。ここで、出力とは、ディスプレイへの表示、プリンタへの印字、音出力、外部装置への送信等を含む概念である。出力部9は、ディスプレイやスピーカ等の出力デバイスを含むと考えても含まないと考えてもよい。出力部9は、出力デバイスのドライバソフトまたは、出力デバイスのドライバソフトと出力デバイス等で実現され得る。
【0057】
以下、具体的な例を用いて実施の形態の処理について説明する。
【0058】
図4は、本発明の一実施の形態における視聴情報格納装置に格納されている視聴情報の一例を示す。図5は、本発明の一実施の形態における映像情報格納装置に格納されている映像情報の一例である。図6は、本発明の一実施の形態における視聴履歴格納部に格納される視聴履歴の一例であり、図4に示すデータから生成される視聴履歴である。
【0059】
視聴履歴生成部3は、視聴情報格納装置1に格納される視聴履歴を取得して、各映像情報(映像ID)を視聴時間に基づき、古→新という順にソートする。以上のように、視聴履歴生成部3により、局所的な情報である視聴情報を人ごとに集約し、視聴履歴を生成し、視聴履歴格納部4に格納する。
【0060】
図7は、本発明の一実施の形態における出力部の出力の一例である。出力部9は、視聴する確率の高いプランから順に出力する。指定されたプラン制約条件は、プランの個数と合計金額である。装置は検索部6で指定されたプラン制約条件を考慮してプランの到達確率を計算し、また、プラン自身に加えてプランを購入するための金額も同時に出力する特徴がある。
【0061】
本実施の形態のように、制約条件を受け付けて、当該制約条件を満たすプランを推薦することにより、視聴に利用できる空き時間を大幅に上回る、もしくは下回る非現実的なプランや、許容範囲を大きく超えた金額のプランが推薦されることがなくなる。
【0062】
なお、上記の実施の形態では、視聴プラン生成部8、出力部9を含めた視聴プラン推薦装置として説明したが、この例に限定されることなく、視聴プラン生成部8、出力部9を含まない、視聴者が次に各映像を視聴する確率を算出するための視聴確率算出装置として構成することも可能である。
【0063】
また、上記の実施の形態における図1に示す装置の構成要素の動作をプログラムとして構築し、視聴プラン推薦装置として利用されるコンピュータにインストールして実行させる、または、ネットワークを介して流通させることが可能である。
【0064】
また、構築されたプログラムをハードディスクや、フレキシブルディスク・CD−ROM等の可搬記憶媒体に格納し、コンピュータにインストールする、または、配布することが可能である。
【0065】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 視聴情報格納装置
2 映像情報格納装置
3 視聴履歴生成部
4 視聴履歴格納部
5 操作部
6 検索部
7 モデル生成部
8 視聴プラン生成部
9 出力部
10 視聴プラン推薦装置
72 トピックモデル生成部
73 マルコフモデル生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数人の映像視聴履歴に基づいて、ある視聴者が次に各映像を視聴する確率を算出するための視聴確率算出方法であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、マルコフモデル生成手段、トピックモデル生成手段、視聴者行動モデル生成手段を有する装置において、
前記マルコフモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成ステップと
前記トピックモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成ステップと、
前記視聴者行動モデル生成手段が、ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成ステップと前記トピックモデル生成ステップで算出された確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成ステップと、
を行うことを特徴とする視聴確率算出方法。
【請求項2】
複数人の映像視聴履歴に基づいて、ある視聴者が次に各映像を視聴する確率を算出するための視聴確率算出装置であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、
前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成手段と、
前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成手段と、
ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成手段と前記トピックモデル生成手段が算出した確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成手段と、
を有することを特徴とする視聴確率算出装置。
【請求項3】
請求項2記載の視聴確率算出装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための視聴確立算出プログラム。
【請求項4】
複数人の映像視聴履歴に基づいて複数の映像の系列である視聴プランを推薦するための視聴プラン推薦方法であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、マルコフモデル生成手段、トピックモデル生成手段、視聴者行動モデル生成手段、視聴プラン生成手段とを有する装置において、
前記マルコフモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成ステップと、
前記トピックモデル生成手段が、前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成ステップと、
前記視聴者行動モデル生成手段が、ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成ステップと前記トピックモデル生成ステップで算出された確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成ステップと、
前記視聴プラン生成手段が、前記視聴者行動モデル生成ステップを繰り返し実行させ、ある視聴履歴を持つ視聴者がある視聴プランを選択する確率を求める視聴プラン生成ステップと、
を行うことを特徴とする視聴プラン推薦方法。
【請求項5】
複数人の映像視聴履歴に基づいて複数の映像の系列である視聴プランを推薦する装置であって、
視聴者が視聴した映像のシーケンスである視聴履歴を格納した視聴履歴記憶手段と、
前記視聴履歴記憶手段から視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をマルコフモデルに基づいて算出するマルコフモデル生成手段と、
前記視聴履歴記憶手段から前記視聴者の視聴履歴を取得して、ある映像を視聴する確率をトピックモデルに基づいて算出するトピックモデル生成手段と、
ある視聴履歴を持つ視聴者がある映像を視聴する確率を、前記マルコフモデル生成手段と前記トピックモデル生成手段が算出した確率の二項演算で求める視聴者行動モデル生成手段と、
前記視聴者行動モデル生成手段を繰り返し適用し、ある視聴履歴を持つ視聴者がある視聴プランを選択する確率を求める視聴プラン生成手段と、
を有することを特徴とする視聴プラン推薦装置。
【請求項6】
請求項5記載の視聴プラン推薦装置を構成する各手段としてコンピュータを機能させるための視聴プラン推薦プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59057(P2012−59057A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202230(P2010−202230)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】