説明

視覚検査装置

【課題】比較的簡易な装置により立体的な検査対象物の視覚検査を死角なしに行うこと。
【解決手段】視覚検査装置1が、検査対象物を撮影するカメラ3と、カメラ3と検査対象物との間に配置されるフレネルレンズ5にして、検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域5aを有するフレネルレンズ5と、検査対象物を載置するテーブル4とを具備し、フレネルレンズ5に向き合う検査対象物の外表面がカメラ3によって死角なしに撮影される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを用いて検査対象物の外観を検査する視覚検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車用部品などのワークにおいて、部品の組み付けが正しく行われているか等を検査するための視覚検査装置として、図4の斜視図に示されるような、固定されたカメラを用いるものが従来用いられていた。図4の従来の視覚検査装置100はフレーム102に固定されたカメラ103によって、テーブル104に載置された検査対象物であるワークW1を上方から撮影し、その撮影画像を画像処理装置(不図示)によって処理することによりワークの外観を検査するものである。しかしながら、側面に部品W2a、W2bを有する立体的なワークW2を検査しようとする場合、図5に示すようにそれら部品の位置によっては部品W2a、W2bがカメラ103の視野における、図中ハッチングを施した死角Dに入ってしまい検査ができないことがあった。このためこのようなカメラ固定式の視覚検査装置100を適用できるワークは、例えばワークの最上面の検査だけでよいものあるいは厚さの薄い平面的なものに限られていた。
【0003】
これに対して、カメラを移動させて検査をする外観検査装置が例えば特許文献1で知られている。この外観検査装置は、ロボットに取り付けられたカメラを用いて複数の方向からワークを撮影するものである。これにより、立体的なワークの例えば上述したような側面に取り付けられた部品に対する検査も可能になる。但し、ロボットを使うことから設備費用が高額になること及び複数の検査点に応じたロボットの位置及び姿勢をあらかじめティーチングしておく必要があることにより稼動させるまでに多くの労力を要することが課題としてあった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−52926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的簡易な装置により立体的な検査対象物の視覚検査を死角なしに行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明によれば、視覚検査装置(1)が、検査対象物を撮影するカメラ(3)と、カメラ(3)と検査対象物との間に配置されるフレネルレンズ(5)にして、検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域(5a)を有するフレネルレンズ(5)と、検査対象物を載置するテーブル(4)とを具備することにより、フレネルレンズ(5)に向き合う検査対象物の外表面がカメラ(3)によって死角なしに撮影される。このようにフレネルレンズを追加するだけの比較的簡易な構成により、立体的な検査対象物に対しても死角なしに視覚検査を行うことが可能になる。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、検査対象物を撮影する第1のカメラ(13)と、第1のカメラ(13)と検査対象物との間に配置される第1のフレネルレンズ(15)にして、検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域を有する第1のフレネルレンズ(15)と、第1のカメラ(13)とは異なる方向から検査対象物を撮影する第2のカメラ(17)と、第2のカメラ(17)と検査対象物との間に配置される第2のフレネルレンズ(18)にして、検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域を有する第2のフレネルレンズ(18)と、検査対象物を載置して所定の軸線周りに回転するように構成された回転テーブル(14)とを視覚検査装置(10)が具備し、該視覚検査装置(10)は、回転テーブル(14)が所定の基準角度位置にあるとき、第1及び第2のフレネルレンズ(15,18)にそれぞれ向き合う検査対象物の各外表面が第1及び第2のカメラ(13,17)によって死角なしに撮影され、さらに回転テーブル(14)が回転されることにより基準角度位置の場合とは異なる、第2のフレネルレンズ(18)に向き合う検査対象物の外表面が第2のカメラ(17)によって死角なしに撮影されることを特徴としている。
【0008】
これにより、立体的な検査対象物を複数の方向から死角なしに順次撮影することが可能になる。また、死角が無いことにより検査対象物における不良の早期の検出が可能になり、検査工程のスループットが高まるという効果が得られる。
【0009】
請求項2に記載された視覚検査装置(10)は、好適には、前記第2のフレネルレンズ(18)の光軸(LH)が前記第1のフレネルレンズ(15)の光軸(LV)に直交する。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施例に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施例による視覚検査装置を図1及び2を参照して説明する。図1は、第1の実施例による視覚検査装置1の概略的斜視図であって、視覚検査装置1は、門型のフレーム2の上部横フレーム2aに固定されて鉛直の光軸AVを有するカメラ3と、ワークW1を載置するテーブル4と、載置されたワークW1とカメラ3との間に配置されたフレネルレンズ5と、フレーム2の左右の柱2bの間に固定された監視及び操作表示用モニタ6と、図示されない画像処理ユニットとを具備している。また、本実施例の視覚検査装置1が検査をする検査対象物であるワークW1は車載空調装置に含まれるユニットである。また、ワークW1は量産品であって、図示しない搬送ロボット又は検査担当者によって順次テーブル4に載置されて検査終了後に撤去される。
【0012】
本実施例による視覚検査装置1のフレネルレンズ5は、プラスチック製の板状のレンズであって、レンズとして機能する円形のレンズ領域5aを有するがその周辺に非レンズ領域5bを有するため全体として矩形の外形を有している。本実施例における前記レンズ領域5aの有効径5cは400mmである。またフレネルレンズ5は、そのレンズ光軸LVが鉛直になるように、図示されない取付手段を介して門型フレーム2の二本の柱2bに取り付けられている。図1に示されるフレネルレンズ5は、その上側の面が平坦な面で下側の面がフレネルレンズ特有の鋸状の凹凸面である。また、フレネルレンズ5の焦点面(不図示)の位置が、カメラ3の結像レンズの入射瞳(不図示)の位置に一致するようにフレネルレンズ5及びカメラ3が配置されている。
【0013】
図2は、カメラ3とフレネルレンズ5とワークW2との関係を示す模式的な側面図である。図2に示されるワークW2は、分かりやすくするために、図1のワークW1とは異なる略直方体の外形を有する車載電子ユニットであり、対向する側面に取り付けられたコネクタW2a及びヒンジW2bを有している。本発明では、図2に示されるように、有効径5cにより区画形成されるレンズ領域5aは、ワークW2を充分にカバーできる大きさを有している。換言すると、レンズ領域5aは、ワークW2の検査時の姿勢におけるワークW2の平行光による投影像を充分に含み得る大きさを有している。一方、カメラ3はその視野角θがフレネルレンズ5のレンズ領域5aを含むように構成されており、従って、フレネルレンズ5に向き合っているワークW2の外表面をカメラ3によって死角のない状態で撮影することが可能になる。その結果、ワークW2の側面に取り付けられたコネクタW2a及びヒンジW2bも含めたワークW2の上面画像が得られ、この画像を基に画像処理ユニット(不図示)で画像処理が行われて、不良の有無が判定される。
【0014】
図3は、本発明の第2の実施例による視覚検査装置10の概略斜視図であり、この視覚検査装置10は、ワークW1の側面をより詳しく検査するために、第1の実施例と同様のワークW1の上面を撮影するための鉛直の光軸AVを有する上面カメラ13及び鉛直のレンズ光軸LVを有する上面フレネルレンズ15に加えてワークW1の側面を撮影するための水平の光軸AHを有する側面カメラ17及び前記側面カメラ17の光軸AHに一致する水平のレンズ光軸LHを有する側面フレネルレンズ18を具備している。側面フレネルレンズ18は上面フレネルレンズ15より幅がやや狭いものであるが、有効径は同じく400mmである等レンズの特性は同一である。側面フレネルレンズ18は門型のフレーム12の二本の柱12bの間に固定され、側面カメラ17は側面フレネルレンズ18から所定の距離だけ離されて、図示されないブラケットを介してフレーム12に取り付けられている。
【0015】
さらに、第2の実施例の視覚検査装置10は、そのテーブルが回転テーブル14であることが第1の実施例とは異なり、前記回転テーブル14は、上面フレネルレンズ15のレンズ光軸AVに一致する鉛直の回転軸線ARを中心にして図3の矢印Rのように回転すると共に、設定された例えば90度のような角度毎に停止できるように構成されている。
【0016】
第2の実施例の視覚検査装置10を使ってワークW1を検査するとき、まず、第1の段階として、回転テーブル14を0度の基準角度位置に配置し、上面カメラ13によりワークW1の上面を死角なしに撮影すると共に、ワークW1の前記基準角度位置に対応した第1の側面を側面カメラ17により死角なしに撮影して、各カメラの画像データを画像処理ユニットに送って画像処理をする。この段階で、もし部品の組み付け不良等が発見された場合は、不良品発生のアラームを発すると共に、当該の不良ワークW1については視覚検査装置10を使った検査を中止し、別の後続するワークW1を投入して検査を開始するようにしている。
【0017】
第1の段階で不良が発見されなかった場合、第2の段階として、回転テーブル14を回転させて90度の角度位置に位置決めし、側面カメラ17によりワークW1の前記90度の角度位置に対応した第2の側面を撮影し、その画像データを画像処理ユニットに送って画像処理をする。この段階で、もし部品の組み付け不良が発見された場合は、前述の第1の段階と同様に検査中止の処置をする。以下同様に、回転テーブル14を180度及び270度の角度位置に位置決めしてワークW1の第3及び第4の側面を同様に撮影して画像処理を行うことにより、一つのワークW1に対する視覚検査が終了する。
【0018】
この第2の実施例の視覚検査装置10において上面及び側面フレネルレンズ15、18を設けることの効果は、死角を除くことにより、早い段階で不良を発見できることにある。つまり、フレネルレンズを設けない場合に、死角に含まれることにより例えば第3段階にならないと発見されない不良をこの実施例の視覚検査装置10は第1段階で発見できることがある。その結果不良ワークW1に対して無駄な検査時間費やすことがなくなり、検査工程におけるスループットが高められる。
【0019】
また、第2の実施例の視覚検査装置10は、上面カメラ13の画像情報によりワークW1の設置角度位置を判定し、その角度位置を基にして、ワークW1が基準角度位置に配置されるように回転テーブル14を回転調整することができる。この結果、ワークW1を回転テーブル14に載置するときは、上面フレネルレンズ15のレンズ領域がワークW1をカバーできるようにワークW1の水平方向の位置決めを行いさえすればよく、ワークW1の鉛直軸周りの回転角度に関しての位置決めは必要とされない。
【0020】
なお、前記第1及び第2の実施例において、各カメラの光軸と対応する各レンズ光軸は一致していたが、本発明はそれら光軸が一致しない場合においても成立し得る。前記各光軸が一致しない場合とは、カメラ光軸とレンズ光軸が互いに平行であるが位置が一致しない場合、あるいは鈍角で交わる場合がある。また、第2の実施例において、側面フレネルレンズ18のレンズ光軸LHは上面フレネルレンズのレンズ光軸LVに直交していたが、本発明においては、各フレネルレンズのレンズ光軸の交差角度は、ワークの形状又は検査の必要な部位に応じて任意の角度で選択されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例による視覚検査装置の概略的斜視図である。
【図2】前記視覚検査装置のカメラとフレネルレンズとワークとの関係を示す模式的側面図である。
【図3】本発明の第2の実施例による視覚検査装置の概略的斜視図である。
【図4】従来の視覚検査装置の概略的斜視図である。
【図5】従来の視覚検査装置のカメラのワークに対する死角を示す模式的側面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 視覚検査装置
2 フレーム
3 カメラ
4 テーブル
5 フレネルレンズ
5a レンズ領域
W1 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物を撮影するカメラ(3)と、
前記カメラ(3)と前記検査対象物との間に配置されるフレネルレンズ(5)にして、前記検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域(5a)を有するフレネルレンズ(5)と、
前記検査対象物を載置するテーブル(4)と、を具備し、
前記フレネルレンズ(5)に向き合う前記検査対象物の外表面が前記カメラ(3)によって死角なしに撮影されることを特徴とする視覚検査装置(1)。
【請求項2】
検査対象物を撮影する第1のカメラ(13)と、
前記第1のカメラ(13)と前記検査対象物との間に配置される第1のフレネルレンズ(15)にして、前記検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域を有する第1のフレネルレンズ(15)と、
前記第1のカメラ(13)とは異なる方向から前記検査対象物を撮影する第2のカメラ(17)と、
前記第2のカメラ(17)と前記検査対象物との間に配置される第2のフレネルレンズ(18)にして、前記検査対象物をカバーする大きさのレンズ領域を有する第2のフレネルレンズ(18)と、
前記検査対象物を載置して所定の軸線周りに回転するように構成された回転テーブル(14)と、を具備し、
前記回転テーブル(14)が所定の基準角度位置にあるとき、前記第1及び第2のフレネルレンズ(15,18)にそれぞれ向き合う前記検査対象物の各外表面が前記第1及び第2のカメラ(13,17)によって死角なしに撮影され、さらに前記回転テーブル(14)が回転されることにより前記基準角度位置の場合とは異なる、前記第2のフレネルレンズ(18)に向き合う前記検査対象物の外表面が前記第2のカメラ(17)によって死角なしに撮影されることを特徴とする視覚検査装置(10)。
【請求項3】
前記第2のフレネルレンズ(18)の光軸(LH)が前記第1のフレネルレンズ(15)の光軸(LV)に直交することを特徴とする、請求項2に記載の視覚検査装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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