説明

視覚誘発電位信号検出システム

【課題】 点滅光の眩しさやちらつき感を抑制して観察者の負担を大幅に軽減し、長時間の使用に極めて適して優れた実用性を発揮することができる視覚誘発電位信号検出システムを提供する。
【解決手段】 視覚誘発電位信号検出システムは、複数の光源11CH1,11CH2,11CH3,11CH4,11CH5,11CH6が配設された観測対象物10と、光源11CHnを視認する観測者OBの脳波信号を処理する信号処理部20とを備える。観測対象物10は、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者OBにとって連続して点灯しているように視認される程度の点滅周波数で光源を点滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚刺激によって脳内に誘発される視覚誘発電位(Visual Evoked Potential;VEP)の信号を検出する視覚誘発電位信号検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
視覚刺激をヒトに与えると、脳内に視覚誘発電位が誘発されることが知られている。特に、5Hz〜60Hz程度の定常的な視覚刺激によって誘発される視覚誘発電位を定常型視覚誘発電位(Steady-State Visual Evoked Potential;SSVEP)という。かかる視覚誘発電位は、眼球、視神経、大脳皮質視覚野等の視覚伝導路に異常がない限り、脳の電気的な活動を表す脳波に含まれる信号成分として万人に観測されるものであり、主に大脳皮質視覚野付近に発生する。
【0003】
このような視覚誘発電位は、視覚刺激と略同様の時間周波数を有する信号として観察される。すなわち、視覚誘発電位の信号(以下、視覚誘発電位信号という。)は、図6に示すように、視覚刺激源が所定周波数で点滅するLED(Light Emitting Diode)等の光源101であった場合には、観測者OBの大脳皮質視覚野102の細胞応答を反映し、例えば図7に示すように、光源101の点滅駆動信号の周波数と略同調した律動的な波形となる。そして、所定の視覚刺激に注意を向けた場合に誘発される視覚誘発電位信号は、他の視覚刺激によって誘発される視覚誘発電位に比べ、その振幅値や、刺激に対する位相同期の度合いが増大することが知られている。
【0004】
従来から、このような視覚誘発電位に関する生理現象に着目し、測定した脳波から視覚誘発電位信号を検出することにより、例えばリハビリテーション装置やブレインコンピュータインターフェース等、様々な分野に応用することが試みられている。
【0005】
例えば、特許文献1には、複数の刺激光中の任意の1つを注視することによって発生する誘発脳波に含まれる当該刺激光信号に関する成分から注視刺激光を特定し、その特定結果に割り当てられた選択スイッチを機能させる技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、点滅光を目視したときに測定された脳波信号の周波数分布を解析し、この解析結果に基づいて点滅光方向へのポインタの移動情報を作成し、作成した移動情報に基づいてディスプレイに表示されたポインタの表示位置を変位させる技術が開示されている。
【0007】
ここで、視覚誘発電位は、上述したように、脳波に含まれる信号成分として観測されるが、視覚誘発電位を利用した応用形態を考えると、脳波測定は、非侵襲的に行うのが望ましい。この種の脳波測定方法としては、図6に示したように、脳の神経細胞の電気活動を、観測者OBの頭皮上に設置した電極103を用いて検出して記録する方法がある。しかしながら、かかる方法によって測定された脳波には様々な信号が含まれていることから、視覚誘発電位信号をブレインコンピュータインターフェース等に応用する場合には、微弱な視覚誘発電位信号を適切に検出し、正答率を高める必要がある。
【0008】
このような観点について行われた研究結果の1つとして、非特許文献1には、平均3.8秒のデータ長のデータを48チャンネル入力した場合に、87.5%の正答率が得られたブレインコンピュータインターフェースが開示されている。この非特許文献1に開示された実験は、光源の点滅周波数を、脳波信号の信号対雑音比(Signal to Noise Ratio;以下、SNRという。)が良好な低周波帯域(6Hz〜16Hz)において0.2Hz刻みで変化させて行われている。そして、この非特許文献1には、実験の結果、光源の点滅周波数が8Hz〜10Hzの帯域である場合にはα波の影響を受けやすく、10Hz〜12Hzの点滅周波数の場合に最も良好な結果が得られた旨が記載されている。なお、この実験において、高周波帯域(25Hz〜50Hz)については、低周波帯域の場合に比べて脳波信号の振幅が小さく導出できる部位が小さいという理由から行われていない。
【0009】
また、非特許文献2には、電話機のボタン入力を想定したブレインコンピュータインターフェースが開示されている。具体的には、この非特許文献2には、電話機を構成する0〜9の数字キー、エンターキー、バックスペースキー、及び、オン/オフキーに光源を割り当て、これら13チャンネルのデータについて正答率の検証を行った様子が開示されている。なお、この実験においては、光源の点滅周波数として、6Hz〜14Hzの低周波帯域のうち、α波の帯域と重複しない帯域を使用しており、平均転送率は、27.15ビット/分である。
【0010】
さらに、非特許文献3には、事象関連電位のP300を用いて、実際に筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis;ALS)患者に対して、文字入力インターフェースを適用する実験について開示されており、この実験の結果、オフラインでの正答率は81.51%であり、オンラインでの正答率は61.98%であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−97369号公報
【特許文献2】特開平11−73286号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Xiaorong Gao, DingfengXu, Ming Cheng, and Shangkai Gao、「A BCI-BasedEnvironmental Controller for the Motion-Disabled」、IEEETransactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering、2003年6月、第11巻、第2号、p.137−140
【非特許文献2】Ming Cheng, XiaorongGao, Shangkai Gao, and Dingfeng Xu、「Design andImplementation of a Brain-Computer Interface with High Transfer Rates」、IEEE Transactions on Biomedical Engineering、2002年10月、第49巻、第10号、p.1181−1186
【非特許文献3】F. Nijboer, E. W.Sellers, J. Mellinger, M. A. Jordan, T. Matuz, A. Furdea, S. Halder, U. Mochty,D. J. Krusienski, T. M. Vaughan, J. R. Wolpaw, N. Birbaumer, A. Kubler、「A P300-based brain-computer interface for people with amyotrophiclateral sclerosis」、Clinical Neurophysiology 119、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、視覚誘発電位信号は、一般に、光源の点滅強度が強いほど、そのSNRが良好となり、正答率が高くなる。そのため、上述した非特許文献1乃至非特許文献3に記載された実験をはじめとする従来の技術においては、できる限り点滅強度が強い光源を用いている。
【0014】
しかしながら、点滅強度が強いと、点滅光を目視する観測者にとっては、非常に眩しく感じることとなり、観測者に負担を強いることとなる。そのため、点滅強度が強い光源は、長時間の使用には適さず、実用化の妨げとなるという問題がある。一方、光源の点滅強度を低下させた場合には、視覚誘発電位の反応が落ちてしまい、その結果観測される視覚誘発電位信号のSNRが悪化するという問題がある。また、点滅光の光刺激に晒されることによって光過敏性発作が生じることもある。
【0015】
また、従来では、上述した非特許文献1乃至非特許文献3に記載された実験のように、比較的視覚誘発電位の反応が大きい低周波帯域(5Hz〜16Hz程度)の点滅周波数を有する光源を用いている。しかしながら、点滅周波数が異なる複数の光源を1枚のボード等の狭い領域に設置するブレインコンピュータインターフェース等の態様を想定すると、点滅周波数が低い複数の点滅光が観測者の視野に入ることとなり、観測者が点滅光のちらつきを過度に気にしてしまう事態を招来し、実用性に乏しいという問題がある。
【0016】
また、この低周波帯域は、安静時に全頭的に観測されるα波の帯域(8Hz〜13Hz程度)と重複してしまうことが多い。したがって、かかる帯域の点滅周波数を有する光源を用いた場合には、視覚誘発電位とα波とが混合した脳波信号が観測されることになり、フーリエ変換等の通常のパワースペクトル解析を行ったとしても、視覚誘発電位信号を適切に弁別することができず、正答率が低くなるという問題がある。さらに、この場合において、α波の帯域と重複しない帯域の点滅周波数を有する光源を使用した場合には、点滅周波数が極めて狭帯域となってしまい、実用化が困難となるという問題がある。
【0017】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、点滅光の眩しさやちらつき感を抑制して観察者の負担を大幅に軽減し、長時間の使用に極めて適して優れた実用性を発揮することができる視覚誘発電位信号検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明者は、視覚誘発電位信号のSNRの悪化の原因となる光源自体の点滅強度を低下させずに、且つ、観測者に眩しさやちらつきを感じさせない方法を鋭意模索した結果、点滅光が融合して視認されるとき、より具体的には、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者にとって連続して点灯しているように視認されるときの明るさは輝度の平均値である、というヒトの目の特性を表した法則、すなわち、いわゆるTalbot-Plateau則を利用することを考えた。
【0019】
すなわち、上述した目的を達成する本発明にかかる視覚誘発電位信号検出システムは、脳波に含まれる特定の視覚誘発電位信号を検出する視覚誘発電位信号検出システムであって、光源が配設された観測対象物と、光源を視認する観測者の脳波信号を処理する信号処理部とを備え、観測対象物は、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者にとって連続して点灯しているように視認される程度の点滅周波数で光源を点滅させることを特徴としている。
【0020】
このような本発明にかかる視覚誘発電位信号検出システムは、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者にとって連続して点灯しているように視認される程度の高い点滅周波数で光源を点滅させることから、観測者にとっては点滅光が融合して視認されることになり、Talbot-Plateau則に基づいて、点滅周波数が低周波帯域に属するものである場合に比べて、点滅光の眩しさやちらつき感を抑制することができ、観察者の負担を大幅に軽減することができる。
【0021】
また、本発明にかかる視覚誘発電位信号検出システムにおける信号処理部は、点滅周波数を高めたことによる視覚誘発電位信号のSNRの悪化を補完するために、光源の点滅駆動信号と脳波信号との周波数領域上での相関を算出するクロススペクトル解析を行い、その解析結果に基づいて視覚誘発電位信号を検出する。
【0022】
これにより、本発明にかかる視覚誘発電位信号検出システムは、フーリエ変換等の通常のパワースペクトル解析では解析精度の悪化が著しかった信号であっても、極めて高精度に視覚誘発電位信号を検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明においては、点滅光の眩しさやちらつき感を抑制して観察者の負担を大幅に軽減し、長時間の使用に極めて適して優れた実用性を発揮することができる視覚誘発電位信号検出システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態として示す視覚誘発電位信号検出システムの構成を示す図である。
【図2】光源の点滅周波数と、光源を注視したときの脳波信号を解析して得られるパワースペクトルとの関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態として示す視覚誘発電位信号検出システムにおける信号処理部の処理内容について説明するための図である。
【図4】取得した脳波信号に対して、本発明の実施の形態として示す視覚誘発電位信号検出システムが行うクロススペクトル解析と、従来と同様のパワースペクトル解析とをそれぞれ適用して得られた解析結果に基づいて、被験者が注視した光源を判定した実験結果を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態として示す視覚誘発電位信号検出システムを適用した応用例について示す図である。
【図6】視覚誘発電位信号を測定するための一般的な系について示す図である。
【図7】光源の点滅駆動信号と、その光源を注視したときの脳波信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
この実施の形態は、視覚刺激によって脳内に誘発される視覚誘発電位の信号を検出する視覚誘発電位信号検出システムである。特に、この視覚誘発電位信号検出システムは、従来では解析精度の悪化が著しかった高周波帯域の点滅周波数で点滅する点滅光を観測対象とするものである。
【0027】
視覚誘発電位信号検出システムは、図1に示すように、複数の光源11CHnが配設された観測対象物10と、光源11CHnを視認する観測者OBの脳波信号を処理する信号処理部20とを備える。
【0028】
観測対象物10は、観測者OBが視認する例えばボード状の対象物であり、その表面に、複数の光源11CHn(nは、チャンネル数)が配設されている。ここでは、6個の光源11CH1,11CH2,11CH3,11CH4,11CH5,11CH6が配設されている様子を示している。これら光源11CHnは、それぞれ、例えばLED(Light Emitting Diode)等からなる。
【0029】
このような観測対象物10は、所定の光源制御手段を介してチャンネル毎の光源11CHnに駆動信号を供給し、各光源11CHnを互いに異なる固有の点滅周波数で点滅させる。具体的には、観測対象物10は、チャンネル毎の各光源11CHnの点滅周波数を、例えば0.5Hz刻みで変化させる等、光源11CHn毎に均等周波数間隔又は不均等周波数間隔で任意に変化させて点滅させる。また、観測対象物10は、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者OBにとって連続して点灯しているように、融合して視認される程度の高い点滅周波数で各光源11CHnを点滅させるように設定及び制御する。なお、この点滅光が融合して視認される程度の高い点滅周波数の具体例については、後に詳述するものとする。
【0030】
信号処理部20は、脳波信号を増幅する増幅部21と、この増幅部21によって増幅されてA/D変換された脳波信号を蓄積する信号蓄積部22と、この信号蓄積部22に蓄積された脳波信号に対してクロススペクトル解析を行うクロススペクトル解析部23と、このクロススペクトル解析部23による解析結果に基づいて視覚誘発電位信号を検出する信号検出部24とを有する。
【0031】
なお、これら各部のうち、増幅部21は、ディジタル脳波計の一部として構成することができる。また、クロススペクトル解析部23及び信号検出部24は、例えば、コンピュータにおけるCPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアを用いて実行可能なプログラムとして実装したり、コンピュータに装着可能な拡張ボードに搭載されたDSP(Digital Processing Unit)等の専用プロセッサを用いて実装したりすることができる。さらに、信号蓄積部22は、クロススペクトル解析部23及び信号検出部24の機能を実現するコンピュータ等の装置に内蔵又は外付け可能なハードディスクやその他の各種記憶媒体を用いて構成することができる。
【0032】
増幅部21は、観測者OBの頭皮上に設置された電極30を介して取得した脳波信号を時系列に入力し、所定の利得で増幅する。この増幅部20によって増幅されたアナログの脳波信号は、図示しないA/Dコンバータによってディジタル信号に変換され、信号蓄積部22に書き込まれる。なお、電極30は、観測者OBの脳波信号を取得するために頭皮上に設置された脳波取得手段である。電極30は、例えば直径が約1cm程度の大きさからなる銀塩化銀電極等から構成され、通常は、観測者OBの頭皮上、特に大脳皮質視覚野がある後頭部頭皮上に所定のレイアウトで複数設置される。
【0033】
信号蓄積部22は、増幅部21から供給された脳波信号を時系列のディジタルデータとして蓄積する。この信号蓄積部22に蓄積された脳波信号は、クロススペクトル解析部23によって読み出される。
【0034】
クロススペクトル解析部23は、信号蓄積部22に蓄積されたディジタルデータとしての脳波信号を所定のサンプリング周期で所定時間分だけ読み出す。なお、サンプリング周期は、処理のリアルタイム性を確保し且つエイリアジングを生じないようにするために、20ミリ秒未満であるのが望ましい。そして、クロススペクトル解析部23は、各光源11CHnの駆動信号を基準信号として、信号蓄積部22から読み出した脳波信号との周波数領域上での相関、すなわち、クロススペクトルを周波数毎に算出する。このとき、クロススペクトル解析部23は、複数の光源11CHnの駆動信号のそれぞれと、信号蓄積部22から読み出した脳波信号との周波数領域上での相関を並列的に算出する。クロススペクトル解析部23は、算出した各光源11CHnの駆動信号毎の解析結果データを信号検出部24に供給する。なお、このクロススペクトル解析部23における処理については、後に詳述するものとする。
【0035】
信号検出部24は、クロススペクトル解析部23から供給された解析結果データを図示しないメモリ等に格納した上で、これら解析結果データに基づいて、脳波信号に含まれる視覚誘発電位信号を検出する。このとき、信号検出部24は、閾値等を利用した所定の規則にしたがって、視覚誘発電位信号を検出する。なお、この信号検出部24における処理は、クロススペクトル解析部23における処理とシームレスに行われるものであり、その詳細については、クロススペクトル解析部23における処理とともに後述するものとする。
【0036】
このような各部を有する信号処理部20は、電極30を介して取得した脳波に含まれる特定の視覚誘発電位信号を検出する。視覚誘発電位信号検出システムにおいては、このような信号処理部20による検出結果に基づいて、観測者OBがどの光源11CHnの点滅光を注視していたのかを同定することが可能となる。信号処理部20による検出結果を示す情報は、所定の後続処理を行う図示しない処理部や、外部装置に供給されることになる。なお、外部装置としては、例えば、検出結果を含む各種情報を表示する表示装置、リハビリテーション装置、さらには後述するブレインコンピュータインターフェース等が挙げられる。
【0037】
以上のような観測対象物10及び信号処理部20を備える視覚誘発電位信号検出システムにおいては、上述したように、各光源11CHnを、点滅光が融合して視認される程度の高い点滅周波数で点滅させる。これは、点滅光が融合して視認されるときの明るさは輝度の平均値である、といういわゆるTalbot-Plateau則を利用するためである。
【0038】
ここで、既存の映画やテレビジョン等のフレームレートと等しい周波数以上の点滅周波数であれば、その点滅光は、融合して視認されることになる。すなわち、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、光源11CHnを、それぞれ、映画のフレームレートと等しい24Hz以上の点滅周波数、より望ましくは、PAL(Phase Alternating Line)方式やSECAM(Sequentiel
couleur a memoire)方式のテレビジョンのフレームレートと等しい25Hz以上の点滅周波数、さらに望ましくは、NTSC(National Television System Committee)方式のテレビジョンのフレームレートと等しい30Hz以上の点滅周波数で点滅させる。
【0039】
また、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、ヒトが点滅光の点滅を認知できるか否かの臨界周波数である、いわゆる臨界融合周波数(Critical Fusion Frequency;CFF)以上の点滅周波数で各光源11CHnを点滅させるのも好適である。この臨界融合周波数は、各種文献によれば約37Hz程度といわれているが、光源の輝度、色、観測者の状態等に応じて変化する。実際に、本願発明者が実施した後述する実験における被験者について、実験前に臨界融合周波数を測定したところ、34.3±1.9Hzという結果が得られている。
【0040】
なお、これら映画やテレビジョンのフレームレートと等しい周波数や臨界融合周波数は、図2に示すように、視覚誘発電位に関する分野において、従来では、脳波信号に含まれる視覚誘発電位信号成分のSNRが悪すぎて解析が極めて困難であるか、若しくは、視覚誘発電位自体が発生していないといわれている高周波帯域に属するものである。
【0041】
視覚誘発電位信号検出システムにおいては、このような高周波帯域に属する点滅周波数であり且つチャンネル毎に互いに異なる固有の点滅周波数で各光源11CHnを点滅させることにより、観測者OBにとっては点滅光が融合して視認されることから、Talbot-Plateau則に基づいて、実際の各光源11CHnの点滅強度よりも低い輝度で発光しているように観測者OBによって観察される。
【0042】
したがって、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、視覚誘発電位信号のSNRの悪化の原因となる光源11CHn自体の点滅強度を低下させないながらも、観測者OBに点滅光の眩しさやちらつきを感じさせないようにすることができ、長時間の使用にも苦痛を強いることなく、優れた実用性を発揮することができる。また、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、高い点滅周波数で各光源11CHnを点滅させることにより、α波の帯域と重複してしまうことがなくなる。
【0043】
ここで、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、光源11CHnの点滅強度については低下させていないものの、点滅周波数を高くしていることから、視覚誘発電位信号のSNRが悪化し、解析が困難となる場合がある。
【0044】
そこで、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、かかるSNRの悪化を補完するために、上述したように、信号処理部20により、各光源11CHnの駆動信号と脳波信号との周波数領域上での相関を算出するクロススペクトル解析を行う。
【0045】
このクロススペクトル解析を適用することは、本願に先立つ予備実験として本願発明者が行った以下のような実験から得られた知見に基づくものである。
【0046】
すなわち、本願発明者は、取得した脳波信号に対して適用する解析処理の有効性を比較する実験を行った。実験は、7Hz〜12Hzの点滅周波数で点滅する6個の光源を6名の被験者にそれぞれ提示し、指定した光源を5秒間注視させたときの脳波を記録することによって行われた。このとき、光源の輝度は、強い状態と弱い状態との2つの状態に設定した。1つの光源について6回の脳波測定を行い、合計72回の脳波測定を行った。
【0047】
そして、このようにして取得した脳波信号に対して、従来と同様のパワースペクトル解析を適用した場合と、脳波信号と光源の駆動信号との周波数領域上での相関を算出するクロススペクトル解析を適用した場合とを比較した。具体的には、それぞれの解析結果に基づいて、被験者が注視した光源を判定し、その判定結果に基づいて正答率を求め、各解析方法による正答率の差異を比較した。
【0048】
その結果、従来と同様のパワースペクトル解析を適用した場合には、光源の明るさの違いによって正答率に有意な差が生じたのに対して、クロススペクトル解析を適用した場合には、光源の明るさの違いによって正答率に差がみられなかった。この結果は、クロススペクトル解析を適用することにより、光源の明るさを抑えても高い正答率を確保可能である旨を示唆するものであり、また、SNRが悪い信号に対する解析方法として、クロススペクトル解析が有効である旨を示唆するものである。
【0049】
ここで、この予備実験は、7Hz〜12Hzという低周波帯域の点滅周波数で点滅する光源を対象としているが、本願発明者は、高周波帯域の点滅周波数で点滅する光に由来する、SNRが悪い脳波信号であっても、クロススペクトル解析が有効であると考えた。そこで、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、信号処理部20により、以下のようなクロススペクトル解析を利用した処理を行う。
【0050】
具体的には、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、複数の光源11CNnのうち、どの光源が、どの点滅周波数で点滅しているのかについての情報が予めわかっている。したがって、クロススペクトル解析部23は、図3に示すように、各光源11CNnの駆動信号を基準信号y(t)とし、この基準信号y(t)に対して周波数毎に脳波信号x(t)がどの程度一致しているのかを示す周波数領域上での相関、すなわち、クロススペクトルX(f)・Y(f)を算出する。このとき、クロススペクトル解析部23は、複数の光源11CHnの駆動信号y(t)のそれぞれについてのクロススペクトルX(f)・Y(f)を並列的に算出する。
【0051】
なお、X(f)は、周波数fにおける脳波信号x(t)のオートスペクトルであり、Y(f)は、周波数fにおける基準信号x(t)のオートスペクトルである。また、Y(f)は、Y(f)の共役複素数であり、kは、解析窓番号であり、・は、内積である。そして、X(f),Y(f)は、それぞれ、次式(1)に示すように、脳波信号の振幅Akxと、脳波信号及び基準信号のそれぞれの位相θkx,θkxとによって表わされる。
【0052】
【数1】

【0053】
クロススペクトル解析部23は、信号蓄積部22から脳波信号を読み出すと、例えば1秒間といった所定時間の解析窓長で、全ての光源11CHnのそれぞれの駆動信号についてクロススペクトルを算出する。そして、クロススペクトル解析部23は、現在の解析窓に例えば90%オーバーラップさせるといったように、解析窓を僅かな所定時間分だけずらした上で、同様にして全ての光源11CHnのそれぞれの駆動信号についてクロススペクトルを算出する。クロススペクトル解析部23は、このような処理を繰り返し行い、各光源11CHnの駆動信号(基準信号)毎に、複数のクロススペクトルからなるスペクトル分布を生成し、これを信号検出部24のメモリに格納する。
【0054】
ここで、上式(1)からわかるように、クロススペクトルを求めることにより、脳波信号と基準信号との時間差、すなわち、周波数領域上での位相差θkx−θkyと、脳波信号の振幅Akxとが得られる。図3の右側には、クロススペクトルを複素平面上のベクトルとして表現した様子を示している。このベクトルの位相は、光源11CHnからの点滅光に対してどの程度脳波信号が遅延しているのかを示しており、ベクトルの長さが長いほど、脳波信号と基準信号との振幅の内積が大きいことを示している。
【0055】
したがって、脳波信号と基準信号との相関が常に高い状態であれば、解析窓をずらして求めた複数のクロススペクトルについて略同様の位相方向に略同様の長さのベクトルが求められることになる。すなわち、ある脳波信号に含まれる特定の視覚誘発電位信号と、それに対応する光源11CHnの駆動信号とは、同期していることから、その潜時における位相差は略一定となり、クロススペクトルを表すベクトルは、解析窓をずらしたとしても略一定の位相方向に加算されて伸長していくことになる。これに対して、ある脳波信号に含まれる他の成分は、光源11CHnの駆動信号と同期していないことから、その位相差が乱数様となり、クロススペクトルは、各解析窓で打ち消しあう。したがって、クロススペクトルを表すベクトルの加算結果は、光源11CHnの駆動信号と同期している特定の視覚誘発電位信号の方が大きくなり、これを検出することにより、観測者OBが注視している光源11CHnを特定することが可能となる。
【0056】
そこで、信号検出部24は、次式(2)に示すように、各光源11CHnの駆動信号(基準信号)毎に、クロススペクトルを表すベクトルを加算し、加算後のベクトルの位相及び振幅を算出する。そして、信号検出部24は、加算後のベクトルの位相が所定位相範囲内であり且つベクトル長が所定長に到達した場合に、脳波信号に特定の視覚誘発電位信号が含まれているものと判定し、そのベクトルを求めるために用いた基準信号に対応する光源11CHnが、観測者OBが注視していた光源であるものと判定する。
【0057】
【数2】

【0058】
具体的には、信号検出部24は、図3の右側に示した複素平面において破線で示したように、加算後のベクトルの位相について予め閾値を設定しておき、この閾値によって画定される位相範囲内に生じる加算後のベクトルのみを処理対象とする。これは、ヒトの目から視覚野までの長さと神経の伝送速度が、ヒトによって多少の個人差はあるものの、略同様に決まっていることから、ベクトルの位相、すなわち、基準信号と脳波信号に含まれる特定の視覚誘発電位信号との位相差がどの程度になるかが把握できるためである。なお、図3においては、第1象限内の所定位相に閾値を設けているが、この位相範囲は、基準信号の周波数に応じて変化する。すなわち、信号検出部24においては、例えば基準信号の周波数に応じて予め実験的に求められた位相差ヒストグラムに基づいて、その周波数における平均位相差及び標準偏差を算出し、これに基づいて閾値を設定するようにすればよい。これにより、信号検出部24は、ノイズ成分の位相差がそろってしまった場合や視覚誘発電位信号よりも大きい信号成分を適切にフィルタリングすることができる。
【0059】
そして、信号検出部24は、加算後のベクトルの長さが、図3の右側に示した複素平面における円の半径、すなわち、ベクトルの位相の閾値によって画定される扇形状の半径まで到達した場合に、特定の視覚誘発電位信号があるものと判定する。すなわち、信号検出部24は、加算後のベクトルの長さについても第2の閾値を設定しておき、この閾値に加算後のベクトルの長さが到達するまで処理を継続する。
【0060】
信号検出部24は、このような閾値処理を行うことにより、例えば、特定の脳波ではなく多方面から混入するノイズ成分が大きい場合には、各ノイズ成分を表すベクトルの長さも長くなるが、そのベクトルの位相方向が解析窓毎に各自ばらばらであることから、加算後のベクトル長は長くならず、特定の視覚誘発電位信号があるものと誤判定してしまうおそれを低減することができる。一方、信号検出部24は、仮に特定の脳波信号の振幅が小さく、そのベクトル長が短いものであったとしても、解析窓毎のベクトルの位相方向が一致しているのであれば、加算後のベクトルの長さが第2の閾値に到達するまでの時間はかかるものの、特定の視覚誘発電位信号がある旨を確実に判定することができる。
【0061】
このように、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、クロススペクトル解析を適用して視覚誘発電位信号を検出することにより、フーリエ変換等の通常のパワースペクトル解析では解析精度の悪化が著しかった信号であっても、特定の視覚誘発電位信号の相関は高く、ノイズ成分の相関は低く算出されることから、極めて高精度に特定の視覚誘発電位信号を検出することができる。また、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、所定の周波数帯域における相関に基づいて視覚誘発信号を検出することから、取得した脳波信号を逐次処理することによって検出可能であり、従来のようにパターン解析のために大量のデータを前処理する必要がなく、処理のリアルタイム性を確保することができる。
【0062】
本願発明者は、本発明の有効性を検証するために、以下のような実験を行った。この実験において、光源は、先に図1に示したように、所定のボード表面に3.7cm間隔で2行×3列に配列させた6個のLEDを用いた。LEDは、東芝製の赤色LED(TLRE180AP)である。各光源の点滅周波数は、それぞれ、37Hz〜42Hzであり、前記6個のLEDに対して1Hz刻みで設定した。そして、ボードから1m離れた位置に被験者を正対させ、指定した光源を注視させたときの脳波を記録した。被験者は、総計17名であり、その内訳は、健常者9名(21歳〜24歳、男性7名、女性2名)、ALS患者8名(47歳〜84歳、男性4名、女性4名)である。これらの被験者には、1個のLEDを10秒間注視する行為を、第1のLEDから第6のLEDまで順次行わせ、これを1タスクとし、被験者1名あたり10タスクの実験を行い、脳波を取得した。脳波は、国際10−20法に準拠して配置された電極を用いて被験者の後頭部から採取した。
【0063】
そして、このようにして取得した脳波信号に対して、従来と同様のパワースペクトル解析と上述したクロススペクトル解析とをそれぞれ適用して得られた解析結果に基づいて、被験者が注視した光源を判定し、その判定結果に基づいて正答率を求めた。
【0064】
その結果、図4に示すように、従来の解析を適用した場合に比べ、本発明のクロススペクトル解析を適用した場合の方が高い正答率が得られ、約5秒以上の脳波信号を処理すれば75%以上の正答率が得られた。なお、正答率は、全ての被験者の正答率を人数で除算した数値である。また、健常者とALS患者との間で正答率に差はみられなかった。
【0065】
このように、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、点滅光が融合して視認されるような高い点滅周波数で各光源11CHnを点滅させた場合であっても、極めて高精度に視覚誘発電位信号を検出することができる。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施の形態として示す視覚誘発電位信号検出システムにおいては、点滅光が点滅しているにもかかわらず観測者OBにとって連続して点灯しているように視認される程度の高い点滅周波数で各光源11CHnを点滅させることにより、観測者OBに点滅光の眩しさやちらつきを感じさせないようにすることができ、長時間の使用にも苦痛を強いることなく、優れた実用性を発揮することができる。また、視覚誘発電位信号検出システムにおいては、高い点滅周波数で各光源11CHnを点滅させることによる信号のSNRの悪化を補完するために、各光源11CHnの駆動信号と脳波信号との周波数領域上での相関を算出するクロススペクトル解析を行うことにより、極めて高精度に視覚誘発電位信号を検出することができる。
【0067】
このような視覚誘発電位信号検出システムは、例えば、ブレインコンピュータインターフェース等、運動機能を機械的に代償する技術に適用して極めて好適であり、視覚による機器制御命令を行う様々な装置を実現することができる。
【0068】
例えば、図5に示すように、操作者たる観察者OBが着座する電動ベッド51の近傍等に、上述した視覚誘発電位信号検出システムにおける観測対象物10や信号処理部20を1ボックス化した制御装置50を配設しておく。このとき、制御装置50に設けられた光源には、それぞれ、例えば、電動ベッド51の角度調整、ブラインド52の開閉、エアーコンディショナー53の電源オン/オフや温度設定、テレビジョン54の電源オン/オフやチャンネル切り替え、パーソナルコンピュータ55のキーボード操作、電話機56のキー操作や発呼・着呼等、当該制御装置50の制御対象である各種機器の制御内容を割り当てておく。そして、制御装置50は、観察者OBが所望の光源に視線を向けるのに応じて、当該光源に割り当てられた制御内容を示す制御信号を各種機器に対して送信することにより、各種機器を制御することができる。
【0069】
視覚誘発電位信号検出システムは、このようなブレインコンピュータインターフェースに適用して極めて好適であり、身体が不自由な人の生活を支援するのみならず、手がふさがっている人が所望の機器を制御したり等の用途が期待できる。また、視覚誘発電位信号検出システムは、光源数、すなわち、チャンネル数を増やすことにより、多種多様な機器を制御することが可能であり、また、バーチャルキーボード等にも適用可能である。さらに、視覚誘発電位信号検出システムは、1つの光源に複数の制御内容を割り当てるようにしてもよい。例えば、視覚誘発電位信号検出システムは、所定の光源を注視する時間に応じて、機器の電源のオン/オフや設定を行うようにしたり、注視する光源の組み合わせに応じて、機器の設定を行うようにしたりすることも可能である。
【0070】
このように、視覚誘発電位信号検出システムは、様々な分野に広く応用することが見込めるものである。また、この視覚誘発電位信号検出システムは、ヒトの肉眼では点滅を確認することができない点滅周波数の光源を用いることから、観測者が光過敏性発作を引き起こす心配がない点でも優れている。
【0071】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0072】
例えば、上述した実施の形態では、光源が配設された観測対象物がボード状であるものとして説明したが、本発明は、観測者が各光源を視認可能な態様であれば、観測対象物を任意の形状とすることができる。同様に、本発明は、光源の配置に限定されるものでもない。
【0073】
また、上述した実施の形態では、電極を用いて脳波信号を取得するものとして説明したが、脳波信号を取得可能であれば必ずしも電極を用いる必要はない。ただし、本発明は、ブレインコンピュータインターフェース等の応用形態を考えると、非侵襲的に脳波測定を行うのが望ましいことから、電極を用いて脳波信号を取得するのが好適である。この場合、電極が配置されたヘッドセットを用意し、これを観測者の頭部に装着するようにすることにより、容易に脳波信号を取得することが可能となる。
【0074】
さらに、上述した実施の形態では、脳波信号の解析時に使用する解析窓の内容については特に言及していないが、本発明は、例えば、信号の周波数に応じて解析窓長を変化させたり、解析窓内に含まれる信号のうち一部のみを処理対象として、残りの解析窓内のデータをボイド値としたりする等、任意の解析窓を適用可能であり、使用する解析窓や解析窓長によって解析精度を向上させることが期待できる。
【0075】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10 観測対象物
11CH1,11CH2,11CH3,11CH4,11CH5,11CH6,11CHn 光源
20 信号処理部
21 増幅部
22 信号蓄積部
23 クロススペクトル解析部
24 信号検出部
30 電極
50 制御装置
51 電動ベッド
52 ブラインド
53 エアーコンディショナー
54 テレビジョン
55 パーソナルコンピュータ
56 電話機
OB 観測者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳波に含まれる特定の視覚誘発電位信号を検出する視覚誘発電位信号検出システムであって、
光源が配設された観測対象物と、
前記光源を視認する観測者の脳波信号を処理する信号処理部とを備え、
前記観測対象物は、点滅光が点滅しているにもかかわらず前記観測者にとって連続して点灯しているように視認される程度の点滅周波数で前記光源を点滅させること
を特徴とする視覚誘発電位信号検出システム。
【請求項2】
前記信号処理部は、前記光源の駆動信号と脳波信号との周波数領域上での相関を算出するクロススペクトル解析を行い、その解析結果に基づいて視覚誘発電位信号を検出すること
を特徴とする請求項1記載の視覚誘発電位信号検出システム。
【請求項3】
前記信号処理部は、解析窓をオーバーラップさせて所定時間分だけずらしながら、前記光源の駆動信号と脳波信号とのクロススペクトル解析を行い、クロススペクトルを表す複素平面上のベクトルを加算して得られる加算後のベクトルの位相及び振幅に基づいて、視覚誘発電位信号を検出すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の視覚誘発電位信号検出システム。
【請求項4】
前記信号処理部は、少なくとも前記加算後のベクトルの位相範囲について閾値を設定しておき、当該閾値によって画定される位相範囲内に生じる加算後のベクトルのみを処理対象とすること
を特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載の視覚誘発電位信号検出システム。
【請求項5】
前記観測対象物には、複数の光源が配設されており、
前記複数の光源は、それぞれ、互いに異なる固有の点滅周波数で点滅し、
前記信号処理部は、前記クロススペクトル解析の解析結果に基づいて、検出した視覚誘発電位信号に対応する前記観測者が注視した光源を判定すること
を特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項記載の視覚誘発電位信号検出システム。
【請求項6】
前記光源の点滅周波数は、臨界融合周波数以上であること
を特徴とする請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項記載の視覚誘発電位信号検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−15788(P2011−15788A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161691(P2009−161691)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム、課題名:「日本の特長を活かしたBMIの統合的研究開発」(ブレイン・マシン・インターフェースの臨床応用を目指した医工連携プロジェクト ―「機能代償システム」から「治療システム」へ―)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】