説明

視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステム

【課題】 視覚障害者のための点字ブロック誘導システムにおいて、埋設ICタグ情報の評価を行うデバッグ装置を提供する。
【解決手段】 視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムにおいて、予め情報が記憶された埋設ICタグ1と、この埋設ICタグ1に記憶されている記憶情報を健常者が案内杖2を介して音声情報として出力する音声出力手段と、この音声出力手段により出力された音声情報が正しいか否かを健常者の視覚による視覚情報によって評価する手段と、前記音声出力手段により出力された音声情報と前記視覚情報とが一致しない場合に前記埋設ICタグ1のデバッグを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の駅構内などの点字ブロックにおける位置情報システムをデバッグするための視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道事業において、視覚障害者を対象とした点字ブロック誘導システムが研究されている。これは、点字ブロック下に埋め込まれた位置情報と、その情報を捉えて音声情報として伝える白杖との開発によるものであり、実用品化に向けて現在研究中である。
【0003】
図5はかかる従来の点字ブロックによる視覚障害者用誘導案内システムの構成図である。
【0004】
この図において、携帯端末装置101は、入出力装置として音声認識・音声合成装置102を有し、この音声認識・音声合成装置102は処理装置104に接続されている。この、処理装置104には記憶装置103が接続され、この記憶装置103には目的地への誘導案内に必要な情報が記憶されている。また、処理装置104は、埋設ICタグ120や130からのICタグ位置情報と、記憶装置103からの情報に基づいたナビゲーション機能を持っている。
【0005】
更に、この携帯端末装置101には、埋設ICタグ120や130からの情報を受信する受信装置(受信機)105と、各部に電力を供給する電池107とが搭載されている。
【0006】
また、案内用杖110は先端にタグリーダー111が装備され、そのタグリーダー111には送信装置112が接続されている(下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−276516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この点字ブロック誘導システムは、点字ブロックから伝えられる音声による位置情報によって、視覚障害者が自身のいる位置を把握し、実際に目的地に移動できることを目的としている。このような誘導案内システムは、将来的には点字ブロックだけでなく、地上全体に普及する可能性も考えられる。その際には、視覚障害者は点字ブロック上を選択して移動する必要はなく、健常者と同様に自由な移動が可能になる。
【0008】
このようなシステムに対し、点字ブロック下に埋め込まれた位置情報が正しいか否かの評価を行い、デバッグを容易に実施することが求められている。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、このようなシステムに、健常者によるデバッグシステムを導入して、点字ブロックに埋め込まれた位置情報が正しいか否かを評価してデバッグを行う視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムにおいて、予め情報が記憶された埋設ICタグと、この埋設ICタグに記憶されている記憶情報を健常者が案内杖を介して音声情報として出力する音声出力手段と、この音声出力手段により出力された音声情報が正しいか否かを健常者の視覚による視覚情報によって評価する手段と、前記音声出力手段により出力された音声情報と前記視覚情報とが一致しない場合に前記埋設ICタグのデバッグを行うことを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムにおいて、前記視覚による視覚情報は健常者がゴーグルを用いて点検した視覚情報であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な方法で、点字ブロック位置情報システムのデバックを実施することができる。
【0013】
特に、健常者によって点字ブロックの機能評価を簡便に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報システム用デバッグ装置は、予め情報が記憶された埋設ICタグと、この埋設ICタグに記憶されている記憶情報を健常者が案内杖を介して音声情報として出力する音声出力手段と、この音声出力手段により出力された音声情報が正しいか否かを健常者の視覚による視覚情報によって評価する手段と、前記音声出力手段により出力された音声情報と前記視覚情報とが一致しない場合に前記埋設ICタグのデバッグを行う。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施例を示す点字ブロック位置情報システムの埋設ICタグの配置図、図2はその点字ブロック位置情報システムの埋設ICタグの構成図、図3は本発明の実施例を示す健常者がゴーグルを用いて点字ブロックを評価する様子を示す図である。
【0017】
図1において、1は埋設ICタグ、2は視覚障害者Aが携帯する案内杖、3は案内杖2に設けられるタグリーダー、4はタグリーダー3からの出力を送信する送信機、5はその送信機4からの情報を受信して音声として出力する視覚障害者Aが携帯する音声出力装置である。
【0018】
そこで、視覚障害者Aは、案内杖2で読み出された埋設ICタグ1の情報を受信機(図示なし)により検知して、音声出力装置5からの音声により埋設ICタグ1の情報を認識する。
【0019】
ここでは、視覚障害者Aは、埋設ICタグ1の情報を検知した結果、「5m先は階段6′です。」との情報を得る。
【0020】
ところが、工事により階段6′が実際は塞がれた壁6になっているような場合には、埋設ICタグ1の情報は実際の状態を反映していなくない。
【0021】
本発明によれば、このような場合、図3に示すように、健常者Bがゴーグルを使用して埋設ICタグ1の情報を点検するとともに、実際の状況と適合しているか否かを評価する。埋設ICタグ1の情報が実際の状況と一致していない場合には、直ちに埋設ICタグ1の情報を「5m先に壁があり、迂回して下さい。」との情報に書換えを行う。つまり、本来は階段であった箇所が実際は工事により変更になって壁になって迂回しなければならなくなっているような場合、埋設ICタグ1にはバグがあることになるので、「5m先には壁があり、迂回が必要です。」との誘導案内情報に書き換えることにする。あたかも、健常者Bはデバッグのためのゴーグル11を使用していると言える。
【0022】
このように、ゴーグルをデバッグ用のインタフェースとするのは、ICタグ等の情報環境構成機器から多数の、あるいは詳細な情報が提供されるような場合、利用者としての視覚障害者には、その視覚障害者には、その障害者の進行方向や向いている方向等により、更には予め利用者が設定する移動等の目的をフィルターとして選択的に提供されるが、デバックを行う健常者は情報環境構成機器の全ての情報をチェックしてければならなくなるので、デバック作業者は、情報の利用者としての視覚障害者に比較して遙かに膨大な量の情報を短時間に効率的にチェックしてければならない。したがって、ICタグ等の情報環境構成機器から提供される、視覚障害者には音声で提示されることを想定した情報、つまり、視覚障害者が使用する機器において音声情報に変換される情報を、視覚的な情報としてデバッグを行う健常者に提供する機能を付加するようにしてもよい。このように構成することにより、相手が健常者である場合には、環境が提示する情報としては、音声で提示するよりも視覚情報として提示する方が遙に効率的である。
【0023】
また、シースルー・ゴーグルを通して、現実と、上記により視覚情報として再構成された情報を重ねて見る場合には、視点の位置を十分に正確に特定しなければならないが、これは上記のICタグ等の情報環境構成機器が提供する情報から得ることができるが、必要に応じて、環境に一定の弱磁場を発生させて、これらを利用した位置センサー等を利用することもできる。
【0024】
このように、健常者Bのゴーグル11を用いて点字ブロックを評価することによって実際の誘導案内情報に適合させることができる。
【0025】
上記のように、本発明は、敷設されている埋設ICタグの情報と実際の状況とが一致しているか否かを健常者Bが逐次チェックすることによって、点字ブロック位置情報システムの高い信頼性を補償し、安全な運用に資することができる。
【0026】
また、上記実施例では、階段が壁になっていた場合を示したが、駅のホームの番線が変更になったり、改札口が変更になるような場合でも、健常者による埋設ICタグの情報と現状とのチェックを的確に行うことができる。
【0027】
ところで、GPSが全地球的な位置計測システムとして用いられているが、当然のことながら建築物の内部や地下では利用することはできない。そこで、例えば、駅構内等には点字ブロック等が敷設され、視覚障害者に幾らかの情報が提示されている。
【0028】
図4は本発明にかかる駅のホームに配置される点字ブロック位置情報システムの模式図である。
【0029】
この図において、21は電車、22は電車21のドア、23はホームであり、埋設ICタグ24−26はホーム23の端で危険であるから、進入するのを禁止する情報を記憶させておき、埋設ICタグ27−29に沿って歩行するように誘導案内するようにしている。
【0030】
本発明の点字ブロック位置情報のデバックシステムは、かかる駅のホームに配置される点字ブロックの位置情報のデバックも容易に行うことができる。特に、駅のホームにおける誘導案内は危険を伴うので、点字ブロックの位置情報のチェックは重要なことである。
【0031】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステムは、簡便な構成により安全度を高めることができる点字ブロック位置情報システムに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例を示す点字ブロック位置情報システムの埋設ICタグの配置図である。
【図2】本発明の実施例を示す点字ブロック位置情報システムの埋設ICタグの構成図である。
【図3】本発明の実施例を示す健常者がゴーグルを用いて点字ブロックを評価する様子を示す図である。
【図4】本発明にかかる駅のホームに配置される点字ブロック位置情報システムの模式図である。
【図5】従来の点字ブロックによる視覚障害者用誘導案内システムの構成図である。
【符号の説明】
【0034】
A 視覚障害者
1,24〜29 埋設ICタグ
2 案内杖
3 案内杖に設けられるタグリーダー
4 送信機
5 音声出力装置
6 壁
6′ 階段
B 健常者
11 ゴーグル
21 電車
22 電車のドア
23 ホーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)予め情報が記憶された埋設ICタグと、
(b)該埋設ICタグに記憶されている記憶情報を健常者が案内杖を介して音声情報として出力する音声出力手段と、
(c)該音声出力手段により出力された音声情報が正しいか否かを健常者の視覚による視覚情報によって評価する手段と、
(d)前記音声出力手段により出力された音声情報と前記視覚情報とが一致しない場合に前記埋設ICタグのデバッグを行うことを特徴とする視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステム。
【請求項2】
請求項1記載の視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報システム用デバッグシステムにおいて、前記視覚による視覚情報は健常者がゴーグルを用いて点検した視覚情報であることを特徴とする視覚障害者を対象とした点字ブロック位置情報のデバッグシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−250622(P2008−250622A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90382(P2007−90382)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】