親水性ポリ−N−ビニルピロリドンの製造方法およびその使用
本発明は、分散重合による、マイクロメートル範囲で可能な限り大きな球形の単分散ポリビニルピロリドン(PVP)シード粒子の製造方法に関する。この方法で得た粒子は、マクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための新規な出発物質であり、これは次に、タンパク質調製用の分取および分析クロマトグラフィにおいて用いることができる。これらはまた、さらなる反応のための原料物質としても用いることができる。
N−ビニルピロリドンの重合のための、費用効率的に実施できる新規な方法は、例えば単分散性、球形度および粒径などの最適化されたパラメータを有する粒子の製造を可能とし、これはさらなる反応において用いることができ、クロマトグラフィ分離法での使用について、有利な、特に改善された、特性を有する。
N−ビニルピロリドンの重合のための、費用効率的に実施できる新規な方法は、例えば単分散性、球形度および粒径などの最適化されたパラメータを有する粒子の製造を可能とし、これはさらなる反応において用いることができ、クロマトグラフィ分離法での使用について、有利な、特に改善された、特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に狭い粒径分布を有する球状ポリ−N−ビニルピロリドン粒子の製造のための新規な方法、およびその使用に関する。
液体クロマトグラフィは、生体分子、特にタンパク質の調製、分離および分析用の方法として、化学および生化学において益々注目を集めている。有機ポリマーベースの物質は、ここで固定相に非常に好適であることが証明された。これらの高い化学的安定性は、代替のシリカゲルを用いることができない条件下における使用を可能とする[1]。
分取クロマトグラフィ法の経済的効率には、最適な分離効率と可能な限り高いスループット、同時に低い操作圧力が必要とされる。そのための重要な因子は、充填材料の粒径、球形度、および単分散性である。これが非球形の非常に小さい粒子、または異なる大きさの粒子で構成されていると、カラム内に不規則な圧密が生じる可能性があり、分離効率、圧力/流量挙動および再現性に悪影響を及ぼす。
【0002】
しかし、単分散マクロ多孔性ポリマー粒子は、過去には最大2μmのサイズまでしか入手できなかった[2]。
J. Ugelstad(「2段膨潤法」)および J.W. Vanderhoff(「逐次シード法」)による開発から始まり、小さなシード粒子(seed particles)を、単分散性を失うことなく膨潤過程によってその容積を増大して成長させることが、次第に可能となった[23〜28]。シード粒子の製造は分散重合により行われ、ポリスチレンおよび時には他のポリマーについての文献において、詳細に記載されている[12、13、14、18、21]。
【0003】
タンパク質の単離および精製においては、各生体分子が、クロマトグラフィ材料の表面と特定の吸着性相互作用するという事実が利用される。シード重合の支援により、現在、支持フレームワークとしてのシードポリマーから出発して、目的に適合した表面を有する粒子鞘を構築することが可能になっている。これは、成長および/または表面修飾の間に一定のモノマーを用いることにより実現され、これにより、所望のタンパク質の、官能基による粒子表面への固定(不動化)が確実になる[1、2、5、6、7、8]。タンパク質の調製には、用いるこの坦持材料は好ましくは親水性マトリクスであり、その理由は、タンパク質が粒子表面の疎水性領域と非特異的相互作用を行い、これが分離効率に悪影響を有するからである[1、3〜6]。
ポリビニルピロリドンを、N−ビニルピロリドンのフリーラジカル重合により調製することが知られている。
【0004】
第1のステップにおいて、たとえばアゾ化合物または過酸化物などの開始剤の分解(通常は熱による)は、フリーラジカルの形成をもたらす。これらはビニルピロリドン分子と反応して、新しいフリーラジカルをもたらす(連鎖開始)。
連鎖成長の間、さらなるモノマー単位が加えられて、次第にマクロラジカルが形成される。連鎖成長は、2つのフリーラジカルが結合するか、または不均化する時に停止する(連鎖停止)[31]。
図1は、ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップを示す。
【0005】
分散重合は、析出重合の特別なケースである。反応の初めに、モノマー、開始剤、および安定剤または分散剤は均一な溶液中にある。反応中、安定な分散体が形成され、ここでポリマーは非連続相に、溶媒は連続相に生成される。反応溶媒の特徴は、モノマー、開始剤および安定剤に対する良好な溶解能力であり、一方、形成されるポリマーは臨界分子量から析出する。安定剤の重要な特性は、そのポリマー親和性および溶媒親和性なセグメントであり、安定剤が、生じるポリマー粒子の表面にポリマー親和性部分により吸着されること、および粒子の凝集および融解が立体効果を介して防止されることを意味する。用いる立体安定剤は、通常、ポリマーまたはコポリマーである。安定化作用は、その分子量および反応溶媒に対する溶解性に特に依存する。
【0006】
図2は、立体安定化作用の原理を図示したものである(製紙のウェットエンド化学の小百科事典(Mini-Encyclopaedia of Papermaking Wet-end Chemistry)より)。
生じるポリマーの溶解性に影響を及ぼすために、共安定剤を用いて、溶媒または架橋物質の極性を変化させる[11〜22、38]。
最終粒子のサイズ、サイズ分布、平均分子量および球形度は、多数のパラメータ設定に影響される。文献には、モノマー、開始剤および安定剤の種類および濃度、ならびに反応温度と溶媒の極性の変化の効果について、多くの著者の報告がある。
【0007】
ある著者らは、実験データに基づいて、種々の反応条件下、成分の組成を変化させた分散重合におけるポリマー粒子の形成および発達についての、機構的モデルについて記載している。分散重合の過程は、3つの連続的段階に分けられる:
− 重合の開始および連続相における連鎖成長
− 粒子の形成
− 粒子の成長相
【0008】
開始は、開始剤分子の熱分解によって2つのフリーラジカルを形成することにより、引き起こされる。フリーラジカル重合の連鎖成長ステージでは、反応は最初、臨界分子量に到達するまで溶液中で進行し、ポリマーが析出する。形成相の間、析出したオリゴマーが凝集して不安定な粒子を形成し、同時に安定剤分子を吸着する。この過程は十分な安定剤分子が吸着されるまで続き、これは、安定な核粒子が形成されて、さらなる凝集から保護されることを意味する。
成長相において、核は、連続相からのモノマー、オリゴマーのフリーラジカルおよびデッドポリマー(dead polymer)を吸収し(連鎖停止)、その結果、この時間以降さらなる重合は、原則として非連続相内で起こる。
【0009】
図3は、分散重合の間の、たとえば官能性マクロマーを安定剤としたスチレンの重合における、ポリマー粒子の形成および発達過程を示す[14]。
このモデルのアイディアによれば、形成相は単分散ポリマー粒子の製造に重要である。この反応ステージは、高度な単分散性のためには短時間間隔で完了しなければならない。最終粒子数は、初めの20分間または2%〜5%の転化の間に規定されると記載されている[11、13]。メタクリル酸メチルの重合において、K.E.J. Barrettは、粒子形成の完了時間を1%未満の転化において決定している[22]。したがって反応条件は、後に成長するオリゴマーが、凝集核形成のプロセスにおいてそれら自身が安定化される前に核に吸収されるよう、選択しなければならない。
【0010】
粒径もまた、形成相の間に決定的に決定される。析出前の、およびしたがって核の形成が起こる前の、重合の進行に重要な因子は、得られたポリマーの反応媒体中での溶解度である。臨界分子量、フリーラジカル形成および連鎖成長の速度、および核形成中の凝集率と安定化率の比率は、得られる粒子のサイズに重要な因子である[11〜21]。
シード重合の支援により、特別の膨潤過程による、元のサイズの倍数のミクロン範囲のポリマー粒子の成長が可能である(図4参照)。シード重合での成長順序を、図4に例を用いて示す[5]。
【0011】
膨潤の間、周囲媒体中にほとんど溶解しないかまたは不溶解性のシードポリマー親和性成分(特定のモノマー、架橋剤、開始剤、孔形成剤)を、シード粒子分散体に供給する。これは通常、細かく分散したエマルジョンによって行い、粒子が膨潤成分を均一に吸収できるようにする。続いて膨潤したゼラチン状粒子を重合で取り出すことができ、安定な多孔性ポリマー粒子が得られる。この方法を用いて、単分散シード粒子は成長の間、ほぼそれらのサイズ分布を維持する。一方文献には、さまざまなレンジのシード重合技法について記載されており、特に、「2段膨潤法」[35]、「逐次シード法」[36]、「シード乳化重合法」[37]、および「動的膨潤法」[32]などがある。
【0012】
目的
したがって本研究の目的は、N−ビニルピロリドンの重合のための新規な方法を提供することである。特に、この目的は、簡単に実施でき、高い単分散性および顕著な球形度および粒子の最適なサイズ分布を有する、対応するポリマー粒子を与える方法を提供することにある。本研究のさらなる目的は、所望の粒子を製造するための定量的方法であって、実施に費用がかからず、半工業的スケールでも実施でき、さらなる反応に用いることができ同時に有利な特性を有するポリビニルピロリドンシード粒子をもたらし、これらをクロマトグラフィ分離法において用いるのに特に好適なものとする、前記定量的方法を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の説明
実施した一連の実験に基づき、最大限大きな球状の、ミクロン範囲の単分散ポリビニルピロリドン(PVP)シード粒子を、分散重合により製造するための方法が見出された。この方法で得た粒子は、多孔性ポリマー粒子の製造のための出発物質であり、これは次に、タンパク質調製用の分取および分析クロマトグラフィにおいて用いることができる。これは、原料物質として、またさらなる反応のために、用いることができる。
本発明は、高い単分散性および顕著な球形度を有するポリマー粒子の製造方法であって、N−ビニルピロリドンを、エタノール、イソプロパノールおよびジオキサンの群から選択される溶媒またはこれらの溶媒の混合物と、任意に水との混合物の存在下で重合し、形成されたポリビニルピロリドンは、ポリマー粒子の形態で分散体から析出されることを特徴とする、前記方法に関する。
【0014】
この重合法は、シード粒子の存在下で実施することができる。重合は、架橋剤を0.5〜2.5重量%の濃度で、好ましくは1〜2重量%で用いて行うことができる。溶媒としては、エタノールおよび/またはイソプロパノールを、反応溶液中に0.5〜10重量%の量で、好ましくは5重量%の量で加えることできる。しかし特に、ジオキサンも溶媒として用いることができ、より正確には1〜11重量%の濃度、好ましくは1〜3重量%、特に好ましくは5〜10重量%の濃度で用いる。溶媒は、好ましくは反応溶液中で水と混合して用いる。さらに、重合は安定剤の存在下で行うことができ、これは0.8〜18重量%の濃度で用いることができる。安定剤は好ましくは2.5〜10重量%、特に好ましくは6〜10重量%の濃度で用いる。この種類の安定剤は、酢酸ポリビニルであってよい。重合を行うために、シード粒子は反応混合物中に存在してよい。加える開始剤は、反応混合物中に0.2〜5重量%の量で、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは1重量%の量で存在してよい。重合実験により、アゾビスイソブチロニトリル[AIBN]が、この目的に特に好適であることが示されている。
【0015】
特に良好な重合結果は、この方法が60〜90℃の温度範囲で、特に75〜90℃の範囲で行われた場合に達成される。
シード粒子の膨潤により、有利な特性を有する粒子を、本発明の方法によって得ることができる。所望により、一定のサイズ分布および特性を有するポリマー粒子を、本発明の方法により得ることができ、ポリマー粒子をクロマトグラフィ分離法に用いるのに特に好適にすることができる。
【0016】
本発明はまた、ミクロン範囲で可能な限り大きな球状単分散ポリビニルピロリドン(PVP)シード粒子を、分散重合により製造する方法に関する。この方法で得られた粒子はマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための出発物質であり、これは次に、タンパク質調製用の分取および分析クロマトグラフィにおいて用いることができる。しかし、これらはまた、さらなる反応のための原料物質としても用いることができる。
本発明はしたがって、所望の粒子を製造するための定量的方法であって、安価に実施でき、半工業的スケールで実施でき、さらなる反応に用いることができクロマトグラフィ分離法で用いるための有利な、特に改善された、特性を有するポリビニルピロリドンシード粒子をもたらす、前記方法にも関する。
本出願はまた、強い親水性の特徴を有する単分散シード粒子を用いた、ポリビニルピロリドン粒子の製造にも関する。クロマトグラフィにおけるタンパク質と坦持材料の非特異的相互作用の問題が、これにより最小化される。
本発明はまた特に、高度な単分散性と顕著な球形度を有し、平均粒径が<1μm〜5μmの範囲であり、多分散度指数がPDI<1.1であり、本発明に記載の方法により得られる、ポリマー粒子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップを示す。
【図2】図2は、立体安定化作用の図式的原理を示す。
【図3】図3は、機能性マクロマーを立体安定剤としたスチレン重合を例とした、分散重合の間のポリマー粒子の形成および発達の推移[14]を示す。
【図4】図4は、シード重合における成長順序の例[5]を示す。
【図5】図5は、DoEの使用における相を示す。
【図6】図6は、プロセスまたはシステムの入力/出力モデルを示す。
【図7】図7は、装置ドリフトを例とした時間依存性干渉の影響およびランダム化実験計画の利点の図示を示す。
【図8】図8は、2因子(左)および3因子(右)に対する実験ポイントの空間的配置を示す。
【図9】図9は、MultiplantM100の機能を記述するための単純化したフローチャートを示す。
【図10】図10は、ジャケット温度制御の機能的原理(平面図)を示す。
【図11】図11は、PVME、PVAc:MW140k、PVAc:MW500k、PVAc:MW50kをプロピオン酸プロピル中(B〜E)、および酢酸エチル(A)中の安定剤とした場合の系に特徴的な、予備実験からのPVP粒子の顕微鏡写真を示す。
【図12】図12は、体積%分布図とd10、d50、d90および単分散性の計算値の例を示す。
【図13】図13は、d50のオリジナル測定値の分布を示す。
【図14】図14は、d50の変換された測定値の分布を示す。
【図15】図15は、モデル係数および対応する信頼範囲(減少モデル)を示す。
【図16】図16は、d50における変化の1次元(左)および2次元(右)モデル予測を示す。
【図17】図17は、d90/d10のオリジナル測定値の分布を示す。
【図18】図18は、d90/d10の変換された測定値の分布を示す。
【図19】図19は、オリジナル測定値の分布を示す。
【図20】図20は、変換された測定値の分布を示す。
【図21】図21は、d50についてのモデル係数および対応する信頼範囲を示す。
【図22】図22は、d50の変化の1次元モデル予測を示す。
【図23】図23は、平均レベルのAIBNおよび[PVAc]6%、7%、8%における、d50の変化の2次元モデル予測を示す。
【図24】図24は、変換された測定値の分布を示す。
【図25】図25は、再現性の評価を示す。
【図26】図26は、d90/d10についてのモデル係数および対応する信頼範囲を示す。
【図27】図27は、2峰性サイズ分布を有するバッチの例を示す。
【図28】図28は、エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた結果を示す。
【図29】図29は、d50およびd90/d10のジオキサンの割合に対する依存性を示す。
【図30】図30は、0%、2%および20%のジオキサンによる実験を示す。
【図31】図31は、M100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較を示す。
【図32】図32は、2%DVCを用いたM100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較を示す。
【図33】図33は、元の反応混合物へのNVPの添加と続く重合の効果を示す。
【図34】図34は、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%、[PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10の反応温度に対する依存性を示す。
【図35】図35は、T=85℃、[NVP]=4.5%、 [PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10のAIBN濃度に対する依存性を示す。
【図36】図36は、T=85℃、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%の場合の、目的量d50およびd90/d10のPVAc濃度に対する依存性を示す。
【図37】図37は、0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)の場合の、サイズ分布の[AIBN]に対する依存性を示す。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明に記載の新規な方法の支援により、<1μm〜5μm範囲の平均粒径を有するPVP粒子を、分散重合により製造することが可能である。この方法の開発のために行った実験により、粒子特性に対する重要な影響量が発見され、すなわち、所望の粒径およびサイズ分布を有する産物が、特に本発明の本方法により製造できることがわかった。見出された方法は再現可能に有利に実施することができ、特に、好ましくは自動合成装置において実施可能である。そのため、粒径およびサイズ分布の反応器特異的な変化は非常に小さく、個別の反応器の温度管理の差による。
【0019】
本発明の方法により製造される粒子は、実質的に2峰性のサイズ分布を有し、PDI<1.1[PDI=多分散度指数]という高い単分散性を示す。[文献では、PDI<1.05の粒径分布を単分散性としている[11]]。
反応の間、NVPはPVPに転化され、そのため安定化率が増加し、したがってより小さな粒子が、より低いPVPの溶解性を有して生成される。反応の間のサイズ分布の時間的発達を記録する実験が行われた。これらの検討は異なる開始剤濃度で行われ、2峰性がモノマーの転化の関数として生じることを示す。
【0020】
本発明の方法を実施するために、溶媒の選択に特に注意すべきであることがわかったが、これは、異なる膨潤剤の存在下、種々の溶媒中でPVP粒子が異なる膨潤挙動を示すためである。したかって、異なる溶媒は、膨潤剤の取り込みにおいて粒子と競合する。
ポリビニルピロリドンシード粒子は、その親和性により、タンパク質調製用のクロマトグラフィ材料としてのマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための、現在のシード粒子に対する魅力的な代替案である。本実験により、比較的狭いサイズ分布を有し、>4μmの直径を有する粒子の製造が可能な方法の開発が実現された。実施された実験により、異なる反応器の使用でさえも得られる粒子の形態に効果を及ぼし、好適な反応器の特異的な選択によって、所望の特性を有する粒子が製造されることが示された。
【0021】
さらに、PVPシード粒子を、有利な2峰性のサイズ分布を有するクロマトグラフィ材料の調製のために用いる際、これらのシード粒子の膨潤挙動を、架橋剤濃度>2%を用いる場合には特に、考慮すべきであることが見出された。これは、半工業的または工業スケールでのスケールアップバッチにおいては特に重要である。
上記の既知の方法に基づき、実験計画法(DoE)としても知られている統計的実験計画に基づく一連の実験を行い、個別実験数と結果の情報内容との間の最適な割合を確認した。
【0022】
この目的のために、作成した実験計画を実施した。実験数が少ないため、統計的実験計画における各々の個別実験は、数学モデルにおいて重要なポイントとなる。したがって、偶然的または系統的影響を評価に取り入れることができる。実験計画の実施後、実験結果を解析して解釈する。こうして、検討した系に対するパラメータの影響についての定性的または定量的結論が、この種類のDoEの評価後に可能となる。
図5は、DoE(実験計画)の使用における相の図を示す[29]。
実施すべき個別実験のリストおよび数学的計算は、DoEにおいて専用ソフトウェアの支援により行う。したがって、ここでの焦点は、可能な影響量または干渉量、変化させるべきプロセスパラメータおよび目的量を前もって規定することである。
【0023】
簡単に言えば、これは図6に示すような、プロセスまたはシステムの「入力/出力モデル」として図で表すことができる[29]。
必要な個別実験の数は、因子の数以外に、適用した数学モデルに線形、二次または相互作用項を考慮すべきかどうかに本質的に依存する。各項目を含めるためには、さらなる実験が必要である。実験計画の設計には、システムの適切な記述用にどの項目が必要であるかを決定しなければならない。したがって、個別実験の数を最小化するには、対応する文献からの従来の理論的知識および経験値を、実験計画に取り入れることが必要である。
【0024】
実験のランダム系列により、時間変化する影響から生じ得る干渉が相殺される(図7参照)[29]。図7は、機器のドリフトの例に対する時間依存性の干渉の影響を表し、ランダム化実験計画の利点を示す。
スクリーニング実験計画は、ある問題について初めにほとんど知られていない場合には特に適している。製品またはプロセスの開発の初めに、できるだけ多くの因子を、それらの重要性について、およびそれらの目的量への影響の方向について、まず検討しなければならない。プロセスまたは製品を最適化する場合には、次に数種類の影響量のみを互いに変化させる。
【0025】
作成した実験計画において、各個別実験は多次元空間におけるポイントを表す。図8は、2つ(左)および3つ(右)の因子についてのこの実験空間を示す[29]。線形効果を検討するために、因子は、四角形または立方体の角のポイントの値のみを採用する。二次相関を再現できるようにするために、辺または面の中心に追加のポイントを加える。図8では、これらのポイントは実験空間の外側に配置されており、これも可能である。しかし、これらは規定値範囲からはずれる可能性がある。
この空間の各ポイントには、実験を行った後に目的量に対してある値を割り当てることができる。空間配置により、次に、モデルの選択に依存して、検討した実験空間内での目的量の予測が可能となる。表1に示す項が、この目的に用いられる。
【0026】
【表1】
【0027】
表1で用いる項の係数(b0、bA…)は、目的量の実験的決定値の支援により、回帰分析によって決定する。
回帰の後、適用したモデルを精度および適性について試験する。適性モデルであるかどうかは、剰余の図式評価により決定する。剰余(適合モデルによる予測値からの、測定値の偏差
【数1】
を、確率ネットワークにプロットすることにより、正規分布についてチェックする。さらに、異常値実験をこの方法により決定できる。
モデル精度の評価のために、測定値を予測値に対してプロットする。理想的モデル精度の場合、点は二等分線上に並ぶはずである。モデルは相関係数により定量的に記述され、相関係数は、測定値が二等分線からどれだけ離れているかを示す[30]。
【0028】
次の化学物質を、実験計画の実験の実施に用いる:
1−ビニル−2−ピロリドン(N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−フェニレンジアミンにより安定化)、
製造業者:Merck Schuchardt OHG、商品コード:8.08518
プロピオン酸n−プロピル
製造業者:Dow Chemical Company
酢酸エチル
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.09623
メチルエチルケトン
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.06014
エタノール
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.11727
1,4−ジオキサン
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.03115
α,α’−アゾイソブチロニトリル
製造業者:Merck Schuchardt OHG、商品コード:8.01595
ポリビニルメチルエーテル、水中50%溶解、MW〜50,000
製造業者:Polysciences, Inc., 商品コード:07903032-500(供給業者:tebu-bio)
ポリアクリル酸(製品名:Carbopol(登録商標)934)
製造業者:SERVA Electrophoresis、商品コード:15885.01
【0029】
ポリビニルアルコール40−88
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.41353
酢酸ポリビニル、MW〜50,000
製造業者:Alfa Aesar、商品コード:A12732
酢酸ポリビニル、MW〜140,000
製造業者:Sigma-Aldrich、商品コード:387924
酢酸ポリビニル、MW〜500,000
製造業者:Sigma-Aldrich、商品コード:387932
DVC(N,N−ジビニルエチレンウレア、BASF, Ludwigshafen)
【0030】
実施には次の装置を用いた。
MultiplantM100自動合成装置
製造業者:Chemspeed Technologies AG
ソフトウェア:Application Editor/Application Executor Version 1.9.2.24
Leica DM 2500M、光学顕微鏡
カメラ:Leica DFC 280
ソフトウェア:Leica Application Suite Version 3.3.1 (LAS Interactive Measurement Moduleのライセンス含む)
MODDE8、統計実験計画用のソフトウェア
製造業者:Umetrics
Eppendorf Centrifuge 5804
最大負荷:8×40ml;最大速度:5000rpm
【0031】
実験計画の実施におけるさらなる詳細:
相当数の個別実験を実施しなければならなかったため、実際の実験計画はできる限り最小量の物質を用いて実施して、費用と材料をセーブした。これらの実験は、次により大きなプラントにスケールアップされたため、工業スケールに適用可能な規定の条件下で実施する必要があった。
実験は、Chemspeed Technologiesが開発したMultiplantM100を用いて行った。最大容量70mlのバッチ式で操作される最大6個までの撹拌反応器を、規定の反応条件下でこのプラントにおいて同時に制御することができる。
【0032】
図9は、MultiplantM100の機能および装置の簡単なフローチャートを示す。
次の機能および要素を、分散重合実験のプロセス制御のために用いた。
ソフトウェアとして「Application Editor」の支援により、各個別反応器のプロセス制御をプログラム化することができる。真空バルブおよび窒素バルブの設定、反応器温度、加熱相または冷却相での温度率、撹拌速度および各状態での操作持続時間は、このプログラムを用いて決定することができる。
【0033】
次に「Application Executer」を用いて、プログラムされたアプリケーションを実行する。プロセスパラメータの実際の値および目的値は、表形式で、またはリアルタイムの曲線として視覚化され、操作中にユーザーが修正することができる。パラメータの時間変化は、ログファイルに記録される。
反応器の内部にはPt100熱電対を配置し、その信号は制御ユニットにパッチコードを介して送信される。制御システムの動的挙動は、PIDパラメータをこのシステム用に修正することにより、ソフトウェア構成内で最適化することができる。
ステンレススチール製の反応器は、ステンレススチール製のジャケットで囲まれ、その温度もPt100熱電対により記録され、冷却水循環および加熱ロッドを制御して調節される。図10は、ジャケット温度制御の機能原理の平面図を示す。
【0034】
温度制御では、冷却水がジャケットのスペースおよび反応器ヘッドを通って流れる。水は熱交換により冷却され、熱交換はシリコーンベースのオイル(HTF190オイル)を用いて行う。このオイルは、低温保持装置(Huber-Unistat)と循環ポンプの支援により、所望の温度に一定に維持される。
真空ポンプ(Vacuubrand cvc200II)が発生させた減少圧力を、主弁と三方弁の位置を変えることにより、各個別反応器に適用する。同様の操作が窒素供給にも適用され、ここではフロート型流量計の支援により圧力を調節する。
【0035】
各ケースで用いる反応器は、混合用に磁気攪拌機を有する。攪拌機の攪拌シャフトは、駆動装置と直接接触せず、代わりに磁気的に駆動装置と接触する。磁石は歯車システムにより動き、撹拌速度およびエネルギー消費を測定して調節することを可能とする。
実験を行うために、安定剤原液の調製を、ポリマーおよび溶媒を三角フラスコ中に計量し、混合物を磁気攪拌機を用いて室温で均一化することにより行う。
各反応器に対し、反応混合物の個別成分を25mlの三角フラスコ中に直接計量する。
【0036】
最初に、開始剤および架橋剤をNVPに溶解する。続いて安定剤溶液および残りの溶媒を計量して入れる。反応混合物を、筋が見えなくなるまで振動させて均一化し、清浄な乾燥した反応器に移し入れる。
反応器はミニプラント内に置き、各ケースにおいて冷却水回路、温度センサーおよび攪拌機と接続する。
「Application Editor」において、適用はプログラム化されており、これにより、各反応器のプロセス管理が規定されている。適用開始前に、真空ポンプおよび低温保持装置のスイッチを入れ、窒素供給を約1barに調節する。実験のそれぞれの実施は不活性化(inertisation)プロセスにより開始され、ここで窒素および真空が反応器に順番に適用される。
【0037】
NVPの分散重合プロセスの最適化の前に、種々の成分の適合性について予備実験で試験した。開始剤および架橋剤の選択は通常用いられる物質となるが、調査する溶媒および安定剤の機能性についての定量的情報は、これらの予備実験において提供される。さらに、このスクリーニングを実施するための成分の濃度限界について試験し、実験の技術的実行可能性を保証する。
アゾ化合物、特にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)は、文献において分散重合による単分散ポリマー粒子の製造用の好ましい開始剤として記載されている。文献にはAIBNを使用する好適な重合温度として、50℃〜80℃範囲が推奨されている。文献に記載のシステムにおいては、AIBNは、NVPの濃度に基づき0.5%〜4.0%の範囲の量で用いられる[11〜22]。
【0038】
さらなるプロセスステップのための、反応媒体または溶媒中に形成されたポリマーの溶解性の減少は、線形ポリマー鎖の架橋により実現される。この目的のために、ここではジビニル化合物を用いる。架橋剤はポリビニルピロリドン鎖にランダムに統合され、第二反応性ビニル基でのさらなる連鎖開始を介して分子を分枝させる。ジビニル架橋剤の量は、NVPの濃度に基づき重量部で示される。計測の間、強く架橋されたシード粒子は、非溶解性に加えて膨潤特性が劣っていることも、考慮すべきである。
分散重合において、溶媒の選択は重要な役割を果たす。好適な溶媒は、形成されたポリマーに対する析出作用を特徴とし、ここでモノマー、開始剤および安定剤は易溶性でなければならない。
【0039】
PVPの溶媒または沈殿剤として好適な溶媒を、表2に示す:
【表2】
【0040】
重合の間、溶媒の沸点を超えてはならない。文献では、用いる開始剤の場合の理想的な温度範囲は50℃〜80℃であると記載されている。溶媒を選択するときに、前記範囲内で反応温度が変化する可能性が、その沸点によって過度に制限されないことが保証されるべきである。
毒性、入手可能性、および一般的な取扱いにより、表3に示す溶媒の使用が特に好ましい。
【表3】
【0041】
実験により、有利な重合結果もまた、本システムにより、選択された開始剤を用いて、80℃より高い温度、特に85℃以上において得られることが見出された。
NVPの分散重合の実験を、表3からの溶媒と2〜15%のモノマー、0.5〜2.0%のAIBNおよび0〜2.5%のジビニル架橋剤を用いて行った。
実験により、純粋な溶液重合が、1,4−ジオキサンおよびメチルエチルケトンの存在下、架橋剤なしで起きたことが見出された。1%以上の架橋の場合、ポリマーは透明で均一なゲルとして析出する。
【0042】
酢酸エチルおよびプロピオン酸プロピルの存在下で、ポリマーは白色固体として析出する。粒子形態で析出したPVPからなる凝集物は、光学顕微鏡下で明らかである。粒子を形成し、凝集を防ぐために、種々の安定剤を加えることができる。この関連で、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルメチルエーテル(PVME)および酢酸ポリビニル(PVAc)を含む系が特に、文献から安定剤として知られている[7、13、20、24、25、32、34]。
実施した実験において、初めに立体安定剤を、用いる溶媒中でのその溶解性について検討した。PVMEは50%水溶液としてのみ利用可能であり、初めに50℃で48時間乾燥する。
【表4】
【0043】
考慮する安定剤の溶解性および最初の重合実験の結果により、酢酸エチルおよびプロピオン酸プロピルを溶媒とし、PVMEおよびPVAcを立体安定剤としてさらに実験を行った。系の好適性の定量的基準は、形成される粒子の球形度、サイズおよび単離の度合いとする。
平均分子量(MVW)として140kg/molおよび500kg/molのPVMEおよびPVAcは、MW50kg/molのPVAcよりも顕著に高い安定化作用を示す。ここでの利点は、凝集および比較的高いモノマー濃度(20%まで)でのケーキングを回避するために、これらの安定剤については低い濃度(バッチ全体に基づき<1%)で十分だということである。しかし、製造された粒子は、反応混合物の組成変化に対して、球形でないか、または平均粒径(d50)が<1μmであるかのどちらかである。
【0044】
プロピオン酸プロピル中、MW50kg/molのPVAcを溶媒/安定剤系とする実験において、5μmまでのサイズを有する球状粒子であって、粒径分布が反応混合物の組成変化に顕著に影響され得る前記粒子が見出された。安定化作用は比較的小さく、これは、高い安定剤濃度(>12%)のみが6%より高いモノマー濃度の単離粒子の製造を可能とすることを意味する。酢酸エチルにおいて、球状粒子は製造できない(図11参照)。図11は、PVP粒子の顕微鏡写真を示す。これらの写真は、PVME、MWが140kのPVAc、MWが500kのPVAc、MWが50kのPVAcを安定剤とした系の、プロピオン酸プロピル(B〜E)および酢酸エチル(A)における特徴を示す。
【0045】
次の表は、分散重合に好適な溶媒および安定剤を決定することのできる実験結果の概要である。
【表5】
【0046】
実施した実験結果に基づき、表6に示した成分が、N−ビニルピロリドンの分散重合に適することが証明された。
【表6】
【0047】
最大可能な平均粒径を有する単分散球状PVP粒子の製造のための最適条件を決定するために、実験パラメータの影響をDoEの支援により検討した。
予備実験により、AIBN、PVAcおよびNVPの必要濃度の限界値を設定した。
ケーキング、溶融および凝集を防ぐために、PVAc濃度の最小値は、NVPの濃度の上昇が小さい場合に検討された系において、その割合を大幅に増加させねばならないことが見出された。したがって、最大可能なパラメータ変化の検討を可能とするために、最初の実験計画の各NVPレベルについて、PVAcの濃度の別の値の範囲が割り当てられた。
【0048】
これらの実験により、表7に示された個別パラメータについての限界が上昇した。
【表7】
【0049】
一般に、架橋剤含量の影響ついては、架橋度合いが増加する粒子は低い膨潤能力を有し、したがって、より小さく析出することが知られている。さらに、ジビニルモノマーの重合は通常、より制御されない様式で進行し、高濃度の場合(>0.5%)、これはより広いサイズ分布および非球状粒子と凝集を生じる[16、21]。我々独自の実験では、約1.5%のDVC含量は、水相におけるPVP粒子の適当な安定性を保証し、選択された組成において凝集は生じないことが示された。
【0050】
実験により、0.3℃/分〜3℃/分の範囲の温度率では実験結果に顕著な差が生じないことが示され、特にこの値が容易に大規模工業プラントに移行できるため、さらなる実験では温度率は1℃/分に設定した。
さらに、パドル攪拌機で100rpm〜600rpm(dstirrer=1.5cm、dreactor=4.2cm、)の攪拌機速度の変化は、これ以外では一定の実験パラメータにおいて、顕著な差を生じないことも見出された。
さらに、実験により、粒子の表現の変化は、16時間の実験期間の後には感知できなくなることも示された。
【0051】
DoEの評価のために、各実験の目的量として、個別パラメータの影響を判定する顕著な変化を介した値を採用しなければならない。
PVP粒子は、光学顕微鏡写真の支援により、その球形度、平均粒径および単分散性によって特徴づけられる。設定された条件下では主に球状の粒子が得られるため、球形度は最初は評価から除外され、主観的に決定されるスコア1〜3によってのみ記載される。
【0052】
平均粒径(d50)および単分散性(d90/d10)は、体積%分布により決定する。測定には、バッチを最初に均一化して、代表試料をピペットを用いて採取できるようにする。試料が試料スライド上に均一に分散されていることが保証できたら、ランダムな画像切片を写真用に選択する。測定ソフトウェアの支援により、画像切片上の粒子(約300〜500単位)を測定する。
粒子の直径から出発して、その体積を計算する:
【数2】
【0053】
最大限可能な正規分布曲線を得るために、分布図のx軸を対数スケールとする。Microsoft Excelにおいて、同じ大きさのlg値区間を有するカテゴリーを設定し、体積が対応するlg値を与える粒子の数を、各カテゴリーに割り当てる。したがって、
【数3】
により、測定した総体積が得られ、個々のカテゴリーの体積が、体積%分布を与える:
【数4】
【0054】
台形式:
【数5】
の支援により、分布曲線の下のおよその面積が決定され、全体積の10%、50%、および90%を超える粒径についてのそれぞれの区間を決定することができる。d10、d50、d90の最終値を、対応する区間内での線形内挿により計算する。
図18は、d10、d50、d90の計算値および単分散による体積%分布図の例を示し、ここでd10=2.31μm、d50=3.73μm、d90=4.09μmおよびd90/d10=1.77である。
【0055】
実施した実験の評価には、パラメータ設定の変化による目的量の分散(variance)が、測定法によって生じるばらつきよりも大幅に大きいことが重要である。繰り返し測定により、測定法を次の手段を用いて、干渉因子について試験した。
− 繰り返しサンプリング
− 試料の複数の画像部の測定
− 画像部の複数回の測定
繰り返し測定を2つの異なるバッチについて行った。結果は、用いた方法が、目的量における顕著な変化を再現するのに適していることを示す。
【0056】
【表8】
【0057】
プロピオン酸プロピル中でアゾビスイソブチロニトリルを開始剤、ジビニル化合物を架橋成分、および酢酸ポリビニル(MW〜50,000)を立体安定剤とするN−ビニルピロリドンの分散重合のシステムを、その主要な影響量およびその効果について、統計的実験計画の支援により検討した。上記定義の影響量および範囲のほかに、さらに6つの反応器を、目的量に対するそれらの個別の効果について試験した。実験数に関して許容し得るフレームワーク内を維持するため、混合実験について実験計画を実施した。ここでの個別の実験は、可能な組み合わせから、提唱された回帰モデルのマッチングに理想的に好適であるように、反復により選択した。選択されたモデルタイプは、反応温度およびNVP、AIBNおよびPVAcの濃度の因子について、線形、二次および相互作用の項を含んでいた。反応器は、ブロックパラメータとして線形影響について試験した。N=42の個別実験により、作成した実験計画は、再現性をランダム繰り返し実験により試験して、75%の効率度(G効率)を達成した。表9は、MODDE8で作成した実験計画と、個別実験の測定結果を含む。
【0058】
【表9】
【0059】
平均粒径を決定するために、初めにd50の測定値の分布を試験した。これらはほぼ正規分布でなければならず、そうでなければ統計的評価およびモデル形成に問題が生じる。
図19は、d50のオリジナル測定値の分布を示す。
多くの場合、値はおよその正規分布への変換により修正することができる。この場合、目的量はy*=y0.25により変換される。図20は、d50の変換された測定値の分布を示す。
【0060】
次の項を、経験的モデルの形成に用いた:
【数6】
モデル精度を決定するため、測定値をモデルによる予測値に対してプロットする。
【0061】
モデル精度として、89%の値を決定する。モデルの適性のさらなる試験として、剰余を正規分布についてチェックする。モデル誤差を確率グリッドにプロットすると、正規分布の場合、これらは直線上に並ぶ。決定した剰余の分布は良好である。
個別のモデル項を次に、その統計的有意性について試験する。個別モデルの係数の有意性を考慮すると、多くは非常に小さな値を有するか、および/または大きな信頼区間(高い不確定性)を有することが明らかである。
【0062】
非有意なモデル項の削除による段階的縮小の後も、モデル精度73%が見出され、これは基本的な傾向を予測するには十分正確である。
図25は、決定されたモデル係数と対応する信頼区間を図示的に示す(縮小モデル)。
しかしながら、AIBN濃度およびPVAc濃度の影響パラメータのみが、統計的に有意であることが証明される。これらは、d50の変動の73%を記述する。
【0063】
モデル予測により、検討した範囲における開始パラメータの変動に対する、d50値の推移が予想される。図26は、d50値の変化に対する1次元(左)および2次元(右)モデルの予測の図示的な比較を示す。
単分散性の評価のために、目的量d90/d10をd50値と同様にして評価する。図27は、d90/d10の元の測定値の分布を棒グラフの形態で示す。
ここでもy*=y0.25による変換を行い、図28に示すd90/d10の変換測定値の分布を得た。d90/d10に対するモデル精度および剰余の分布(完全モデル)を、次に、決定された測定値に基づき決定した。
【0064】
しかしこの場合は不適切なモデル精度が決定され、単分散性についての劣ったモデル結果のために、実施した一連の実験を、サイズ分布に影響する可能性のある干渉量について試験した。
システムに対するその影響について最大可能な値の範囲を検討できるように、パラメータ値の限界を、実験計画において設定した。したがって、最適な実験の実施を保証しないパラメータの組み合わせもまた、実験計画内で生じた。これは、反応器の壁および攪拌機上のケーキングの形で明らかであった。これについて、好ましいサイズクラス(分類の1種類)の粒子の蓄積が関与するかどうかは明らかでなく、サイズ分布の真実の値は、測定において再現されなかった。明確さの欠如を排除するため、実施の間にケーキングの増加が生じた全12の個別実験を、一連の実験から取り除いた。単分散性のさらなる評価を、残りの結果と単純化されたモデルを用いて行った。
【0065】
この縮小の後、基本的傾向の正確な再現について、モデル精度〜60%が適性であると考えることができる。
単純化したモデルの単分散性の変化についての評価により、粒子のサイズ分布は、用いる反応器に大きく影響されることが示された。さらに、温度の顕著な二次影響と、AIBN濃度の線形影響が存在する(図18参照)。単分散性の最善の値は、2.0%のAIBNおよび78℃において決定された。
【0066】
第1実験計画の結果に基づき、新しい範囲を第2実験計画について規定し、追加の実験を行った。第一に、反応器の目的量に対するその影響についてさらに正確に試験するために、第二に、反応温度の影響の予測傾向を、第1実験計画に規定された範囲を超えて検討した。
反応温度の単分散性に対する影響を検討するために、さらなる一連の実験AおよびBを、第1実験計画において用いた反応温度範囲の上および下の温度で、異なる組成で行った。驚くべきことに、80℃を超える温度範囲は、両方の目的量の値について有利であることが証明される。第2実験計画において、検討する反応温度範囲を75℃〜85℃に修正した。
【0067】
PVACの濃度がNVP濃度に関係するとの事実により、これらの影響量について比較的狭い範囲を選択したが、これについては、第1実験計画からの結果に基づき、2つの目的量の最良の値が予想される。
前の実験で、AIBN濃度の変化による不利な効果が示されたため、以下の実験でのAIBNの濃度は、これまで検討された範囲内である0.9%〜1.4%の範囲に狭めた。
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
表10において、第2実験計画に対して定義された影響量の値の範囲を比較する。表11は、個別実験およびその結果を含む。第1実験計画におけると同様に、線形効果、相互作用および二次効果の記述の項を考慮に入れて、モデルタイプはD最適である。第2実験計画を、第1実験計画と同様に評価する。
図38には、平均粒径のオリジナル測定値の分布を、棒グラフの形で示す。統計的評価のために、測定値はここでもy*=y0.25による変換を行う。これらの変換測定値の分布を、図39に棒グラフの形で同様に示す。モデル精度の評価には、d50の決定値および予測値を再度互いにプロットし、剰余を決定した。
【0070】
図42には、モデル係数を棒グラフの形でプロットすると共に、変化する量である温度およびNVPyとPVAcの濃度の影響下での、d50値の対応する信頼範囲を示す。
第2実験計画で選択された反応条件については、影響量の効果を記述するために、非常にロバストなモデルを設定することができる(図42参照)。検討した範囲での平均粒径に対する主要な影響は、反応温度から出発する。NVP濃度およびPVAc濃度の変化による、d50値への有意な影響も同様に予測される。
【0071】
図22は、温度およびNVPyとPVAcの濃度の関数としての、d50値の変化の1次元モデル予測を示す。
図23は、AIBNの平均レベルおよび種々のPVAc濃度、より正確には6%、7%、8%の濃度(左から右へ)における、d50値の変化の2次元モデル予測を示す。
図22および図23は、検討した範囲での変化についてのモデル予測が、有意な影響量であることを示す。
【0072】
d50値の最適な結果は、PVAcおよびNVPの低濃度レベルにおいて、81℃〜85℃の範囲の反応温度で予想される。
棒グラフ形態での、単分散性のオリジナル測定値の分布は、予想に対応するが、やや左に傾いている。値はy*=y0.5により変換される。図24は、棒グラフの形態で示す、変換された測定値の分布を示す。
第1実験計画における比率d90/d10に対する劣ったモデリング結果により、結果の再現性を、繰り返し実験に基づいて初めに評価する。
【0073】
図25には、再現性評価のために、比率d90/d10を「再現指数」に対してプロットする。再現性は、適切に評価することができる。繰り返し実験のばらつきは、実験設定の変更による目的量の全体的な分散よりも顕著に低い。
比率d90/d10についてのモデル精度および、完全モデル(a)および縮小モデル(b)の剰余分布をここで再度評価する。
【0074】
異常値実験を除いたのち、残りのモデルにおける剰余は、ほぼ正規分布を有することが証明される。図26は、棒グラフで示したd90/d10についての対応するモデル係数と対応する信頼範囲を示す。この方法で、検討した範囲における影響量の効果について決定したモデルは、72.7%の良好なモデル精度を有する。単分散性に対する主要な影響量は、反応温度およびNVP濃度である。AIBN濃度およびPVAc濃度は、ここでは二次的にのみ考慮すべきである。個別モデル項について決定した信頼範囲に基づき、モデル予測においては大きな不確実性に悩まされることを考慮すべきである(図26)。
【0075】
実験のさらなる評価から、温度を75℃から約80℃に上昇させることにより、d90/d10の値に大きな減少が示される。この点から、値は実質的に一定を維持する。さらに、目的量d90/d10の小さな値が、NVPの低濃度およびAIBNおよびPVAcの高濃度において、検討範囲において予測される。しかし、いくつかの場合においては、大きな信頼範囲は高い不確実性をここでもたらす。
第2実験計画からの結果を次にまとめる:
平均粒径および単分散性の非常に良好な値が、より広い作業範囲にわたって反応温度を考慮することにより達成された。さらに、検討した系は、使用可能なモデルによりd50およびd90/d10の変化について、用いた範囲において、実験パラメータを変化させることで記述される。
【0076】
第2実験計画において決定されたデータに基づき、複数量の最適化を2つの目的量について行った。比率d90/d10<1.7およびd50>2.5μの値が予想される実験設定を、ここで決定した。
第2実験計画からの結果に加えて、モデル予測に直接結合されている目的量最適化の実験も行った。
さらなる実験において、目的は、影響量の関数としてのd90/d10およびd50の値の変化が、検討範囲の外側でもまた維持されるかどうか、および目的量についてさらなる最適化が可能かどうかを検討することである。そのために、ここで前の最適な反応条件を用いる一連の実験を行い、これらは、検討すべき成分は別にして、一定に維持された。
【0077】
両方の目的量d90/d10およびd50について、さらなる実験により、80℃〜85℃の範囲が反応温度として有利であることが示された。温度を75℃から80℃に上昇させた場合の両目的量の値の顕著な改善の後に、曲線はかなり平らとなり、これは、反応温度の上昇によりさらなる最適化が期待できないことを意味する。
AIBN濃度の関数としての曲線は、濃度の増加と共に比率d90/d10の値の減少傾向を示し、一方、平均粒径は検討範囲では顕著に変化しない。
NVP濃度範囲4.5%〜<5.3%における第2実験計画からの結果は、低いNVP濃度において、2つの目的量が有利な値に傾くことを示した。したがってNVPの<4.5%の範囲は、さらに検討すべきとして残された。
【0078】
PVAcの濃度変化は、2つの目的量の逆相関を引き起こす。したがってさらなる検討を、<6%および>8%の範囲で行った。
実施した多くの実験は2峰性のサイズ分布を示し、ここでそれぞれのサイズクラスの粒子は比較的狭い分布を有する(図27参照)。反応溶媒の極性は、文献において、最終粒径および粒径分布に対して重要な影響を有するとみなされている[19]。極性の変化は、さらなる実験において、プロピオン酸プロピルをエタノール、イソプロパノールおよび1,4−ジオキサンと種々の比率で混合することにより生じる。検討のために選択された主剤(basis)は、サイズ分布に顕著な2峰性が予想される配合である。図27は、2峰性サイズ分布を有するバッチの例について、初めにサイズ分布を、および次に形成された粒子の写真を示す。
【0079】
実験により、溶媒に基づき5%未満のエタノールまたはイソプロパノールの使用が、単離PVP粒子の析出を可能とすることが示された。エタノールまたはイソプロパノール濃度の増加と共に、粒子はより大きくなり、広いサイズ分布とより少ない球状を有する。>5%の濃度において、PVPは粒子形態で析出しない。図28a)およびb)は、エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた場合の重合結果を示す。
ジオキサンの実験結果に対して見出された影響を、表12および図29の図に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
図29は、d50値および比率d90/d10の、ジオキサンの割合に対する依存の図を示す。
表12および図29の図から明らかであるように、比較的低濃度のジオキサンの添加は、単分散性にわずかな利点のみをもたらす(2%〜3%のジオキサン)。対照的に、5%〜10%のジオキサンの添加は、サイズ分布は実質的に一定でありながら、d50値に正の効果を有する。10%を超えるジオキサンの添加により、広いサイズ分布を有する顕著に大きな粒子が形成される。30%以上のジオキサンの添加からは、ポリマーは粒子形態では析出しない。
図30a)、b)およびc)は、0%、2%および20%のジオキサンで得られた実験結果を示す。
【0082】
実験結果の2Lダブルジャケット装置へのスケールアップおよび移行
実験を実験室スケールから半工業バッチに移行するにあたり、そのように修正された境界条件に対して系がどのように敏感に反応するかをチェックした。
スケールアップ実験を、ジャケット温度が水循環の支援により調節される2Lのガラス製ダブルジャケット装置を用いて実施する。第1の実験は、Chemspeed自動合成装置(M100)で多数回実施され、再現性のある結果をもたらしており、したがってロバストであるとみなせるバッチの処方を用いて行う。M100で行われたような窒素/真空フラッシングの代わりに、ダブルジャケット装置での重合は窒素雰囲気化で進行する。これは、0.2〜0.4barの窒素の定常的供給により保証される。
自動合成装置デザインからのさらなる大きな違いは、反応器および攪拌機の形状および材料と、関連する流動作用および熱伝達における違いである。
【0083】
2リットルガラス製ダブルジャケット反応器(DJA)における重合性能
84gの酢酸ポリビニル(PVAc、50,000g/mol)を、室温で2リットルDJA内の1250gの脱イオン水に溶解する。0.63gのN,N−ジビニルエチレンウレア(DVC、BASF Ludwigshafen)および0.882gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、室温で三角フラスコ内の63gのN−ビニルピロリドン(NVP)に溶解する。有機相を撹拌しつつ(羽根車攪拌機、200rpm)DJAに導入する。混合物を室温から85℃まで、加熱速度1K/分で、窒素フラッシングしつつ加熱し、この温度に16時間維持する。混合物を次に、約2K/分の冷却速度で室温まで冷却し、分散を光学顕微鏡法で解析する。光学顕微鏡解析結果を表14に示す。
【0084】
MultiplantM100反応器における重合性能
次の量に関するデータは、使用した典型的な6つのMultiplantM100(Chemspeed Technologies AG)反応器の1つへの充填に関する。各反応器は、約60mlの反応容量を有する。
2.4gの酢酸ポリビニル(PVAc、50,000g/mol)を、室温で三角フラスコ内の35.8gの脱イオン水に溶解する。0.018gのN,N−ジビニルエチレンウレア(DVC)および0.025gのAIBNを、1.8gのN−ビニルピロリドン(NVP)に溶解する。2つの相を室温でM100反応器の1つに導入し、後者を密封し、不活性化サイクル(5分間真空を3回、続いて窒素エアレーション)を150rpmで撹拌しつつ実施する。次に、ソフトウェアを用いて、重合温度の85℃に加熱速度1K/分で加熱することにより、重合を開始させる。重合温度は16時間維持し、混合物を次に室温に冷却し、光学顕微鏡法により解析する(結果は表14を参照)。
【0085】
初めのスケールアップ実験を、表13に示す反応条件下で行う。結果を表14および図31に示す。
【表13】
【0086】
図31a)およびb)は、M100(a)およびDJA(b)からのバッチの拡大写真の比較を示す。
【表14】
【0087】
スケールアップ実験からの結果に基づき、この処方は、40gバッチ(M100)から1400gのバッチ(DJA)へ移行できたと考えることができる。d50およびd90/d10の値の絶対値は反応器特異的な変化を受けるが(表14参照)、特徴的なサイズ分布は再現可能である(図31参照)。
さらなる実験において、架橋剤濃度を1.0%から2.0%または1.5%に増加させるが、これは、形成されるポリマー粒子の架橋の程度の変化が、のちの膨潤実験に重要だからである。しかし架橋剤含量を増加させる場合は、M100とDJAからの結果には大きな差が明白である。DVCの1%から2%への変化は、M100において目的量のd50およびd90/d10に関して、わずかな不利益な効果をもたらすのみである。対照的にDJAでは、それ以外は一定の条件下でDVCの割合を増加させると、粒子のケーキング、凝集および溶解がかなり生じる。さらに、粒子は粒径、サイズ分布および球形度の相当異なる特徴を有する(図32a)およびb)参照)。図32a)およびb)は、M100およびDJA(DVC2%)のバッチから得られたポリマー粒子の比較拡大図を示す。
【0088】
凝集およびケーキングは、過度に高いモノマー濃度または過度に低い安定剤濃度を使用した場合の主な現象である。安定剤濃度を6%から10%に増加させても効果は見られないが、モノマー濃度の4.5%から2.0%への低下は、さらなる凝集およびケーキングを生じさせない。しかし、粒子自体は、改善された特徴を有さない。結果はまた、DJAおよびM100における流動条件の同等化のために、攪拌機種類および撹拌速度を変化させても変化しない。
さらに、製造されたポリビニルピロリドン粒子をそれらの膨潤挙動について、膨潤実験の支援により検討し、シード重合への、したがってタンパク質混合物調製のためのマクロ多孔性ポリマー粒子製造のための、粒子の適合性の情報を提供できることを目指した。
【0089】
文献には、極性反応媒体、通常は水/エタノール混合物中の、ポリスチレンシード粒子から開始されるシード重合の技術が記載されている[23〜28]。ポリスチレンとは対照的に、非常に親水性なポリマーがPVPの形態で存在するため、種々の溶媒中での粒子の膨潤性を試験する。
膨潤実験の準備のために、粒子をプロピオン酸プロピルで洗浄して反応混合物から分離する。このため、粒子を最初に多数のサイクル中で遠心分離機で沈殿させ、透明な上清を取り出した後、プロピオン酸プロピル中に再度分散させる。これらの洗浄サイクルを、各溶媒の変更時に対応する溶媒を用いて繰り返す。一般にそのポリマーに対して高い親和性を有するモノマー、したがってN−ビニルピロリドンを、以下の実験に膨潤剤として用いる。
【0090】
表15は、製造されたPVP粒子の膨潤特性の検討のために実施した全実験と、その結果を示す。
【表15】
【0091】
実験から、次の知見が得られた:
− 1%の架橋剤含量を有するPVP粒子は、1.5%架橋粒子に比べて水中で不安定である。
− PVPに対し、水はより良好な膨潤剤であり、トルエンはプロピオン酸プロピルより劣る。
− NVPの添加による膨潤効果は、検討した溶媒ではn−ヘキサンのみで観察できる。
− 1.5%架橋PVP粒子はNVPに対して不安定である。
【0092】
さらなる実験において、1%のAIBNを含む、初めに用いた質量に基づき2倍の量のNVPを、もとの反応混合物中に計量した。この混合物を標準重合条件に付した。平均粒径は、これらの条件下でd50=3.07μmからd50=3.86μmに成長した。ケーキングおよび新しく顕著に小さな粒子により、NVPが溶媒中および添加後の粒子中にも配置されているとの結論が導かれる(図33a)およびb)参照)。図33a)およびb)は、異なる量のNVPを元の反応混合物に加えるという影響の下で形成され、続いて重合された粒子の拡大写真である。
詳細に述べれば、異なるプロセスパラメータは形成される粒子およびそれらの特性にかなりの効果を有する。再現可能な結果を得るために、一連の計画実験により影響量を検討した。
【0093】
我々独自の対応実験は、反応温度が両方の目的量に対する主要な影響量であることを示す。62℃〜78℃の範囲の反応温度の変化は単分散性に僅かな効果のみを有するが、平均粒径は顕著に影響されない。しかし、温度を80℃〜85℃に上昇させると、狭いサイズ分布の顕著に大きな粒子が生成される。さらなる実験により、良好な重合結果は、85℃より上の温度でもまだ得られることを示す。全体として、実験により、粒子の後の所望の適用分野に依存して、重合は、60℃〜90℃の範囲の温度において実施することができる。
【0094】
図34は、目的量d50およびd90/d10の、異なるNVP濃度(=4.5%)、AIBN濃度(=1.4%)、PVAc濃度(=6%)における、反応温度に対する依存を示す図である。
AIBN濃度の影響も、実施した一連の実験において重要であることが証明された。開始剤含量を変えることにより、目的量の値において負に相関する変化が、0.5%〜2.0%の濃度範囲で、反応温度62℃〜78℃において生じることが見出された。これは、低いAIBN濃度に対して、広いサイズ範囲を有する大きな粒子が予想されることを意味する。0.9%〜1.4%のAIBNで75℃〜85℃において、平均粒径に対する顕著な効果は見出されなかった。しかし1.4%のAIBNにより、いくらか低いd90/d10の値が予想できる。一連の補足実験において、T=85℃にて、AIBN濃度を0.2%〜5.0%の範囲で変化させた(図35参照)。平均粒径はこの範囲において、AIBN含量の増加と共に減少するが、d90/d10の値については明らかな傾向はみられない。
【0095】
これらの設定において、単分散性の値はAIBN濃度に関係なく実質的に一定レベルである。AIBN濃度<0.5%の範囲において、定量的に十分なPVP粒子の析出は生じなかった。対照的に、AIBN濃度>4%において、凝集が生じる。
図62は、目的量d50およびd90/d10の、T=85℃、NVP濃度=4.5%およびPVAc濃度6%における、AIBN濃度に対する依存の図を示す。
【0096】
安定剤としてのPVAcの濃度の影響を、0.8%〜18%の濃度範囲および62℃〜78℃にて検討した。この範囲において、PVAc濃度は平均粒径への主要な影響量である。低いPVAc濃度において、大きな粒子が予想できる。粒径分布には顕著な影響は明らかではない。さらなる実験を、6%〜8%の濃度範囲および75℃〜85℃にて実施した。これらは、用いたPVAc濃度が粒径に対して主要な効果を有すること、より正確には、d50およびd90/d10の値に対して逆相関効果を有することを示した。この傾向は、PVAcを2.5%〜10%の濃度でT=85℃で用いた実験によっても確認され(図36参照)、粒径が、見出された結果に基づいて、一定の反応条件下で前もってかなり良好に設計可能であることを意味する。8%のPVAcでのd90/d10の最小値の予測も、例えば一連の実験と一致した。
【0097】
図36は、目的量d50およびd90/d10の、T=85℃、NVP濃度=4.5%およびAIBN濃度=1.4%における、PVAc濃度に対する依存を示す図である。
モノマーとしてのN−ビニルピロリドンの開始濃度は、3%〜6%の間の非常に狭い範囲、および特に4.5%〜5.3%の範囲でのみ変化させた。NVP濃度の影響は重要であることが証明され、4.5%において、より小さなサイズ分布を有するいくらか大きな粒子が見出された。補足実験において、この傾向は、選択した範囲である2.5%〜5%のNVPを越えても確認された。
【0098】
粒径の開始剤濃度への依存は、ほとんどの系において開始剤含量の増加と共に粒径の増加として記述される。これに対する文献における根拠は、核生成相において、フリーラジカル濃度の増加と同時により多くのポリマー鎖が析出し、これらは核の安定化が完了する前に、凝集してより大きな粒子を形成できることである[12、14、16、19、21]。反対の効果は、経験的データに基づいてのみ記述されている[18]。反対の効果は、多くの溶媒で同様に観察される[11]。AIBNを開始剤、およびPVAcを安定剤とする、プロピオン酸プロピル中のN−ビニルピロリドンの分散重合の我々独自の実験において、驚くべきことには、AIBN濃度を0.5%から2%に増加させると、粒径が顕著に減少することが見出された。開始剤濃度のさらなる増加は、粒径のさらなる変化をもたらさない。
【0099】
検討した系における粒径に対する安定化の影響は、文献に記載されたモデルと類似していると考えることができる。安定剤濃度の増加と共に、より大きな表面積の安定化が可能であり、これは、粒径の減少により保証される。我々の実験では、文献と同様に、より高い分子量を有するPVAcにより、さらに効果的な安定化が生じる。温度の上昇およびモノマー濃度の増加と共に、形成されるポリマーおよび安定剤の溶解性は増加する。これは一方で、比較的高い分子量の場合に、ポリマーは反応混合物からのみ析出し、こうして重合は移動相においてより長く起こるとの結果となる。他方では、安定剤の安定化作用はその高い溶解性により低減され、すなわち核生成の間にさらなる凝集によりさらに大きな粒子が形成されることを意味する[11〜22]。これは、ここで反応温度に関して実施した実験結果と一致する。溶媒混合物による極性の変化についての実験も、この効果を確認する。
【0100】
文献によれば、粒子数が重合の20分後または5%転化の前に規定される、単分散性についての機構的モデルが記載されている「11〜13]。この時点から、他のモノマーおよびオリゴマーの吸収を介して起こる粒子の成長のみが起こる。単分散性の分布を有する粒子の製造のために、反応の初めに十分な核が形成されて、残りのオリゴマーを、これらが安定化されて新しい核を形成する(第2核生成)前に吸収できることが必要である。核生成相の間の析出ポリマー鎖の生成率および安定化速度は、反応温度ならびに開始剤、モノマー、溶媒および安定剤の種類および濃度を介して影響され得る[11〜22]。しかし、影響量の変化による粒子のサイズ分布における変化は、特に対応する系について、経験的に決定されたデータを参照してのみ、記述されている。
【0101】
我々独自の実験により、粒子集団のサイズ変化は、開始剤およびモノマー濃度の変化により影響され得ることが示された。単分散性におけるこの変化は、d90/d10の値を介しては顕著に明らかではない。図37は、AIBNの濃度変化による、サイズ分布の特徴における変化を示す。粒径分布を記述するさらなる可能性は、多分散度指数(PDI)の引用である:
【数7】
図37は、サイズ分布のAIBN濃度0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)への依存を示す。
【表16】
【0102】
略語リスト
[X]=xの濃度
AIBN=アゾビスイソブチロニトリル
DJA=ダブルジャケット装置
DVC=ジビニル化合物
M100=Multiplant 100(自動合成装置)
MW=分子量
NVP=N−ビニルピロリドン
PAA=ポリアクリル酸
PVAc=酢酸ポリビニル
PVME=ポリビニルメチルエーテル
【0103】
表のリスト
表1:2因子および3因子についての線形、二次および相互作用項
表2:[31]の製品BASF Luvitec(登録商標)Kの製品情報よる、ポリビニルピロリドン用の溶媒および沈殿剤
表3:溶解性決定のための予備実験に選択された溶媒およびその結果
表4:立体安定剤の溶解性
表5:種々の溶媒および安定剤の適合性についての予備実験の概要
表6:検討した系の成分
表7:第1実験計画のパラメータ範囲
表8:繰り返し測定の結果
表9:第1実験計画と個別実験の結果
表10:第2実験計画のパラメータ範囲
表11:第2実験計画と目的量についての結果
表12:ジオキサンの影響
表13:最初のスケールアップ実験のデータ
表14:M100およびDJAのバッチの比較
表15:実施した膨潤実験の結果
表16:種々のモノマーおよびAIBN濃度におけるPDIおよびd90/d10の値の比較
【0104】
図のリスト
図1:ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップ
図2:立体安定化作用の図式的原理
図3:官能性マクロマーを立体安定剤としたスチレン重合を例とした、分散重合の間のポリマー粒子の形成および発達の推移[14]
図4:シード重合における成長順序の例[5]
図5:DoEの使用における相
図6:プロセスまたはシステムの入力/出力モデル
図7:装置ドリフトを例とした時間依存性干渉の影響およびランダム化実験計画の利点の図示
図8:2因子(左)および3因子(右)に対する実験ポイントの空間的配置
図9:MultiplantM100の機能を記述するための単純化したフローチャート
図10:ジャケット温度制御の機能的原理(平面図)
【0105】
図11:PVME、PVAc:MW140k、PVAc:MW500k、PVAc:MW50kをプロピオン酸プロピル中(B〜E)、および酢酸エチル(A)中の安定剤とした場合の系に特徴的な、予備実験からのPVP粒子の顕微鏡写真
図12:体積%分布図とd10、d50、d90および単分散性の計算値の例
図13:d50のオリジナル測定値の分布
図14:d50の変換された測定値の分布
図15:モデル係数および対応する信頼範囲(減少モデル)
図16:d50における変化の1次元(左)および2次元(右)モデル予測
図17:d90/d10のオリジナル測定値の分布
図18:d90/d10の変換された測定値の分布
図19:オリジナル測定値の分布
図20:変換された測定値の分布
図21:d50についてのモデル係数および対応する信頼範囲
図22:d50の変化の1次元モデル予測
図23:平均レベルのAIBNおよび[PVAc]6%、7%、8%における、d50の変化の2次元モデル予測
図24:変換された測定値の分布
【0106】
図25:再現性の評価
図26:d90/d10についてのモデル係数および対応する信頼範囲
図27:2峰性サイズ分布を有するバッチの例
図28:エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた結果
図29:d50およびd90/d10のジオキサンの割合に対する依存性
図30:0%、2%および20%のジオキサンによる実験
図31:M100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較
図32:2%DVCを用いたM100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較
図33:元の反応混合物へのNVPの添加と続く重合の効果
図34:[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%、[PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10の反応温度に対する依存性
図35:T=85℃、[NVP]=4.5%、 [PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10のAIBN濃度に対する依存性
図36:T=85℃、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%の場合の、目的量d50およびd90/d10のPVAc濃度に対する依存性
図37:0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)の場合の、サイズ分布の[AIBN]に対する依存性
【0107】
参考文献
【表17】
【0108】
【表18】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に狭い粒径分布を有する球状ポリ−N−ビニルピロリドン粒子の製造のための新規な方法、およびその使用に関する。
液体クロマトグラフィは、生体分子、特にタンパク質の調製、分離および分析用の方法として、化学および生化学において益々注目を集めている。有機ポリマーベースの物質は、ここで固定相に非常に好適であることが証明された。これらの高い化学的安定性は、代替のシリカゲルを用いることができない条件下における使用を可能とする[1]。
分取クロマトグラフィ法の経済的効率には、最適な分離効率と可能な限り高いスループット、同時に低い操作圧力が必要とされる。そのための重要な因子は、充填材料の粒径、球形度、および単分散性である。これが非球形の非常に小さい粒子、または異なる大きさの粒子で構成されていると、カラム内に不規則な圧密が生じる可能性があり、分離効率、圧力/流量挙動および再現性に悪影響を及ぼす。
【0002】
しかし、単分散マクロ多孔性ポリマー粒子は、過去には最大2μmのサイズまでしか入手できなかった[2]。
J. Ugelstad(「2段膨潤法」)および J.W. Vanderhoff(「逐次シード法」)による開発から始まり、小さなシード粒子(seed particles)を、単分散性を失うことなく膨潤過程によってその容積を増大して成長させることが、次第に可能となった[23〜28]。シード粒子の製造は分散重合により行われ、ポリスチレンおよび時には他のポリマーについての文献において、詳細に記載されている[12、13、14、18、21]。
【0003】
タンパク質の単離および精製においては、各生体分子が、クロマトグラフィ材料の表面と特定の吸着性相互作用するという事実が利用される。シード重合の支援により、現在、支持フレームワークとしてのシードポリマーから出発して、目的に適合した表面を有する粒子鞘を構築することが可能になっている。これは、成長および/または表面修飾の間に一定のモノマーを用いることにより実現され、これにより、所望のタンパク質の、官能基による粒子表面への固定(不動化)が確実になる[1、2、5、6、7、8]。タンパク質の調製には、用いるこの坦持材料は好ましくは親水性マトリクスであり、その理由は、タンパク質が粒子表面の疎水性領域と非特異的相互作用を行い、これが分離効率に悪影響を有するからである[1、3〜6]。
ポリビニルピロリドンを、N−ビニルピロリドンのフリーラジカル重合により調製することが知られている。
【0004】
第1のステップにおいて、たとえばアゾ化合物または過酸化物などの開始剤の分解(通常は熱による)は、フリーラジカルの形成をもたらす。これらはビニルピロリドン分子と反応して、新しいフリーラジカルをもたらす(連鎖開始)。
連鎖成長の間、さらなるモノマー単位が加えられて、次第にマクロラジカルが形成される。連鎖成長は、2つのフリーラジカルが結合するか、または不均化する時に停止する(連鎖停止)[31]。
図1は、ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップを示す。
【0005】
分散重合は、析出重合の特別なケースである。反応の初めに、モノマー、開始剤、および安定剤または分散剤は均一な溶液中にある。反応中、安定な分散体が形成され、ここでポリマーは非連続相に、溶媒は連続相に生成される。反応溶媒の特徴は、モノマー、開始剤および安定剤に対する良好な溶解能力であり、一方、形成されるポリマーは臨界分子量から析出する。安定剤の重要な特性は、そのポリマー親和性および溶媒親和性なセグメントであり、安定剤が、生じるポリマー粒子の表面にポリマー親和性部分により吸着されること、および粒子の凝集および融解が立体効果を介して防止されることを意味する。用いる立体安定剤は、通常、ポリマーまたはコポリマーである。安定化作用は、その分子量および反応溶媒に対する溶解性に特に依存する。
【0006】
図2は、立体安定化作用の原理を図示したものである(製紙のウェットエンド化学の小百科事典(Mini-Encyclopaedia of Papermaking Wet-end Chemistry)より)。
生じるポリマーの溶解性に影響を及ぼすために、共安定剤を用いて、溶媒または架橋物質の極性を変化させる[11〜22、38]。
最終粒子のサイズ、サイズ分布、平均分子量および球形度は、多数のパラメータ設定に影響される。文献には、モノマー、開始剤および安定剤の種類および濃度、ならびに反応温度と溶媒の極性の変化の効果について、多くの著者の報告がある。
【0007】
ある著者らは、実験データに基づいて、種々の反応条件下、成分の組成を変化させた分散重合におけるポリマー粒子の形成および発達についての、機構的モデルについて記載している。分散重合の過程は、3つの連続的段階に分けられる:
− 重合の開始および連続相における連鎖成長
− 粒子の形成
− 粒子の成長相
【0008】
開始は、開始剤分子の熱分解によって2つのフリーラジカルを形成することにより、引き起こされる。フリーラジカル重合の連鎖成長ステージでは、反応は最初、臨界分子量に到達するまで溶液中で進行し、ポリマーが析出する。形成相の間、析出したオリゴマーが凝集して不安定な粒子を形成し、同時に安定剤分子を吸着する。この過程は十分な安定剤分子が吸着されるまで続き、これは、安定な核粒子が形成されて、さらなる凝集から保護されることを意味する。
成長相において、核は、連続相からのモノマー、オリゴマーのフリーラジカルおよびデッドポリマー(dead polymer)を吸収し(連鎖停止)、その結果、この時間以降さらなる重合は、原則として非連続相内で起こる。
【0009】
図3は、分散重合の間の、たとえば官能性マクロマーを安定剤としたスチレンの重合における、ポリマー粒子の形成および発達過程を示す[14]。
このモデルのアイディアによれば、形成相は単分散ポリマー粒子の製造に重要である。この反応ステージは、高度な単分散性のためには短時間間隔で完了しなければならない。最終粒子数は、初めの20分間または2%〜5%の転化の間に規定されると記載されている[11、13]。メタクリル酸メチルの重合において、K.E.J. Barrettは、粒子形成の完了時間を1%未満の転化において決定している[22]。したがって反応条件は、後に成長するオリゴマーが、凝集核形成のプロセスにおいてそれら自身が安定化される前に核に吸収されるよう、選択しなければならない。
【0010】
粒径もまた、形成相の間に決定的に決定される。析出前の、およびしたがって核の形成が起こる前の、重合の進行に重要な因子は、得られたポリマーの反応媒体中での溶解度である。臨界分子量、フリーラジカル形成および連鎖成長の速度、および核形成中の凝集率と安定化率の比率は、得られる粒子のサイズに重要な因子である[11〜21]。
シード重合の支援により、特別の膨潤過程による、元のサイズの倍数のミクロン範囲のポリマー粒子の成長が可能である(図4参照)。シード重合での成長順序を、図4に例を用いて示す[5]。
【0011】
膨潤の間、周囲媒体中にほとんど溶解しないかまたは不溶解性のシードポリマー親和性成分(特定のモノマー、架橋剤、開始剤、孔形成剤)を、シード粒子分散体に供給する。これは通常、細かく分散したエマルジョンによって行い、粒子が膨潤成分を均一に吸収できるようにする。続いて膨潤したゼラチン状粒子を重合で取り出すことができ、安定な多孔性ポリマー粒子が得られる。この方法を用いて、単分散シード粒子は成長の間、ほぼそれらのサイズ分布を維持する。一方文献には、さまざまなレンジのシード重合技法について記載されており、特に、「2段膨潤法」[35]、「逐次シード法」[36]、「シード乳化重合法」[37]、および「動的膨潤法」[32]などがある。
【0012】
目的
したがって本研究の目的は、N−ビニルピロリドンの重合のための新規な方法を提供することである。特に、この目的は、簡単に実施でき、高い単分散性および顕著な球形度および粒子の最適なサイズ分布を有する、対応するポリマー粒子を与える方法を提供することにある。本研究のさらなる目的は、所望の粒子を製造するための定量的方法であって、実施に費用がかからず、半工業的スケールでも実施でき、さらなる反応に用いることができ同時に有利な特性を有するポリビニルピロリドンシード粒子をもたらし、これらをクロマトグラフィ分離法において用いるのに特に好適なものとする、前記定量的方法を提供することである。
【発明の概要】
【0013】
本発明の説明
実施した一連の実験に基づき、最大限大きな球状の、ミクロン範囲の単分散ポリビニルピロリドン(PVP)シード粒子を、分散重合により製造するための方法が見出された。この方法で得た粒子は、多孔性ポリマー粒子の製造のための出発物質であり、これは次に、タンパク質調製用の分取および分析クロマトグラフィにおいて用いることができる。これは、原料物質として、またさらなる反応のために、用いることができる。
本発明は、高い単分散性および顕著な球形度を有するポリマー粒子の製造方法であって、N−ビニルピロリドンを、エタノール、イソプロパノールおよびジオキサンの群から選択される溶媒またはこれらの溶媒の混合物と、任意に水との混合物の存在下で重合し、形成されたポリビニルピロリドンは、ポリマー粒子の形態で分散体から析出されることを特徴とする、前記方法に関する。
【0014】
この重合法は、シード粒子の存在下で実施することができる。重合は、架橋剤を0.5〜2.5重量%の濃度で、好ましくは1〜2重量%で用いて行うことができる。溶媒としては、エタノールおよび/またはイソプロパノールを、反応溶液中に0.5〜10重量%の量で、好ましくは5重量%の量で加えることできる。しかし特に、ジオキサンも溶媒として用いることができ、より正確には1〜11重量%の濃度、好ましくは1〜3重量%、特に好ましくは5〜10重量%の濃度で用いる。溶媒は、好ましくは反応溶液中で水と混合して用いる。さらに、重合は安定剤の存在下で行うことができ、これは0.8〜18重量%の濃度で用いることができる。安定剤は好ましくは2.5〜10重量%、特に好ましくは6〜10重量%の濃度で用いる。この種類の安定剤は、酢酸ポリビニルであってよい。重合を行うために、シード粒子は反応混合物中に存在してよい。加える開始剤は、反応混合物中に0.2〜5重量%の量で、好ましくは0.5〜4重量%、特に好ましくは1重量%の量で存在してよい。重合実験により、アゾビスイソブチロニトリル[AIBN]が、この目的に特に好適であることが示されている。
【0015】
特に良好な重合結果は、この方法が60〜90℃の温度範囲で、特に75〜90℃の範囲で行われた場合に達成される。
シード粒子の膨潤により、有利な特性を有する粒子を、本発明の方法によって得ることができる。所望により、一定のサイズ分布および特性を有するポリマー粒子を、本発明の方法により得ることができ、ポリマー粒子をクロマトグラフィ分離法に用いるのに特に好適にすることができる。
【0016】
本発明はまた、ミクロン範囲で可能な限り大きな球状単分散ポリビニルピロリドン(PVP)シード粒子を、分散重合により製造する方法に関する。この方法で得られた粒子はマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための出発物質であり、これは次に、タンパク質調製用の分取および分析クロマトグラフィにおいて用いることができる。しかし、これらはまた、さらなる反応のための原料物質としても用いることができる。
本発明はしたがって、所望の粒子を製造するための定量的方法であって、安価に実施でき、半工業的スケールで実施でき、さらなる反応に用いることができクロマトグラフィ分離法で用いるための有利な、特に改善された、特性を有するポリビニルピロリドンシード粒子をもたらす、前記方法にも関する。
本出願はまた、強い親水性の特徴を有する単分散シード粒子を用いた、ポリビニルピロリドン粒子の製造にも関する。クロマトグラフィにおけるタンパク質と坦持材料の非特異的相互作用の問題が、これにより最小化される。
本発明はまた特に、高度な単分散性と顕著な球形度を有し、平均粒径が<1μm〜5μmの範囲であり、多分散度指数がPDI<1.1であり、本発明に記載の方法により得られる、ポリマー粒子に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップを示す。
【図2】図2は、立体安定化作用の図式的原理を示す。
【図3】図3は、機能性マクロマーを立体安定剤としたスチレン重合を例とした、分散重合の間のポリマー粒子の形成および発達の推移[14]を示す。
【図4】図4は、シード重合における成長順序の例[5]を示す。
【図5】図5は、DoEの使用における相を示す。
【図6】図6は、プロセスまたはシステムの入力/出力モデルを示す。
【図7】図7は、装置ドリフトを例とした時間依存性干渉の影響およびランダム化実験計画の利点の図示を示す。
【図8】図8は、2因子(左)および3因子(右)に対する実験ポイントの空間的配置を示す。
【図9】図9は、MultiplantM100の機能を記述するための単純化したフローチャートを示す。
【図10】図10は、ジャケット温度制御の機能的原理(平面図)を示す。
【図11】図11は、PVME、PVAc:MW140k、PVAc:MW500k、PVAc:MW50kをプロピオン酸プロピル中(B〜E)、および酢酸エチル(A)中の安定剤とした場合の系に特徴的な、予備実験からのPVP粒子の顕微鏡写真を示す。
【図12】図12は、体積%分布図とd10、d50、d90および単分散性の計算値の例を示す。
【図13】図13は、d50のオリジナル測定値の分布を示す。
【図14】図14は、d50の変換された測定値の分布を示す。
【図15】図15は、モデル係数および対応する信頼範囲(減少モデル)を示す。
【図16】図16は、d50における変化の1次元(左)および2次元(右)モデル予測を示す。
【図17】図17は、d90/d10のオリジナル測定値の分布を示す。
【図18】図18は、d90/d10の変換された測定値の分布を示す。
【図19】図19は、オリジナル測定値の分布を示す。
【図20】図20は、変換された測定値の分布を示す。
【図21】図21は、d50についてのモデル係数および対応する信頼範囲を示す。
【図22】図22は、d50の変化の1次元モデル予測を示す。
【図23】図23は、平均レベルのAIBNおよび[PVAc]6%、7%、8%における、d50の変化の2次元モデル予測を示す。
【図24】図24は、変換された測定値の分布を示す。
【図25】図25は、再現性の評価を示す。
【図26】図26は、d90/d10についてのモデル係数および対応する信頼範囲を示す。
【図27】図27は、2峰性サイズ分布を有するバッチの例を示す。
【図28】図28は、エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた結果を示す。
【図29】図29は、d50およびd90/d10のジオキサンの割合に対する依存性を示す。
【図30】図30は、0%、2%および20%のジオキサンによる実験を示す。
【図31】図31は、M100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較を示す。
【図32】図32は、2%DVCを用いたM100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較を示す。
【図33】図33は、元の反応混合物へのNVPの添加と続く重合の効果を示す。
【図34】図34は、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%、[PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10の反応温度に対する依存性を示す。
【図35】図35は、T=85℃、[NVP]=4.5%、 [PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10のAIBN濃度に対する依存性を示す。
【図36】図36は、T=85℃、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%の場合の、目的量d50およびd90/d10のPVAc濃度に対する依存性を示す。
【図37】図37は、0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)の場合の、サイズ分布の[AIBN]に対する依存性を示す。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明に記載の新規な方法の支援により、<1μm〜5μm範囲の平均粒径を有するPVP粒子を、分散重合により製造することが可能である。この方法の開発のために行った実験により、粒子特性に対する重要な影響量が発見され、すなわち、所望の粒径およびサイズ分布を有する産物が、特に本発明の本方法により製造できることがわかった。見出された方法は再現可能に有利に実施することができ、特に、好ましくは自動合成装置において実施可能である。そのため、粒径およびサイズ分布の反応器特異的な変化は非常に小さく、個別の反応器の温度管理の差による。
【0019】
本発明の方法により製造される粒子は、実質的に2峰性のサイズ分布を有し、PDI<1.1[PDI=多分散度指数]という高い単分散性を示す。[文献では、PDI<1.05の粒径分布を単分散性としている[11]]。
反応の間、NVPはPVPに転化され、そのため安定化率が増加し、したがってより小さな粒子が、より低いPVPの溶解性を有して生成される。反応の間のサイズ分布の時間的発達を記録する実験が行われた。これらの検討は異なる開始剤濃度で行われ、2峰性がモノマーの転化の関数として生じることを示す。
【0020】
本発明の方法を実施するために、溶媒の選択に特に注意すべきであることがわかったが、これは、異なる膨潤剤の存在下、種々の溶媒中でPVP粒子が異なる膨潤挙動を示すためである。したかって、異なる溶媒は、膨潤剤の取り込みにおいて粒子と競合する。
ポリビニルピロリドンシード粒子は、その親和性により、タンパク質調製用のクロマトグラフィ材料としてのマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための、現在のシード粒子に対する魅力的な代替案である。本実験により、比較的狭いサイズ分布を有し、>4μmの直径を有する粒子の製造が可能な方法の開発が実現された。実施された実験により、異なる反応器の使用でさえも得られる粒子の形態に効果を及ぼし、好適な反応器の特異的な選択によって、所望の特性を有する粒子が製造されることが示された。
【0021】
さらに、PVPシード粒子を、有利な2峰性のサイズ分布を有するクロマトグラフィ材料の調製のために用いる際、これらのシード粒子の膨潤挙動を、架橋剤濃度>2%を用いる場合には特に、考慮すべきであることが見出された。これは、半工業的または工業スケールでのスケールアップバッチにおいては特に重要である。
上記の既知の方法に基づき、実験計画法(DoE)としても知られている統計的実験計画に基づく一連の実験を行い、個別実験数と結果の情報内容との間の最適な割合を確認した。
【0022】
この目的のために、作成した実験計画を実施した。実験数が少ないため、統計的実験計画における各々の個別実験は、数学モデルにおいて重要なポイントとなる。したがって、偶然的または系統的影響を評価に取り入れることができる。実験計画の実施後、実験結果を解析して解釈する。こうして、検討した系に対するパラメータの影響についての定性的または定量的結論が、この種類のDoEの評価後に可能となる。
図5は、DoE(実験計画)の使用における相の図を示す[29]。
実施すべき個別実験のリストおよび数学的計算は、DoEにおいて専用ソフトウェアの支援により行う。したがって、ここでの焦点は、可能な影響量または干渉量、変化させるべきプロセスパラメータおよび目的量を前もって規定することである。
【0023】
簡単に言えば、これは図6に示すような、プロセスまたはシステムの「入力/出力モデル」として図で表すことができる[29]。
必要な個別実験の数は、因子の数以外に、適用した数学モデルに線形、二次または相互作用項を考慮すべきかどうかに本質的に依存する。各項目を含めるためには、さらなる実験が必要である。実験計画の設計には、システムの適切な記述用にどの項目が必要であるかを決定しなければならない。したがって、個別実験の数を最小化するには、対応する文献からの従来の理論的知識および経験値を、実験計画に取り入れることが必要である。
【0024】
実験のランダム系列により、時間変化する影響から生じ得る干渉が相殺される(図7参照)[29]。図7は、機器のドリフトの例に対する時間依存性の干渉の影響を表し、ランダム化実験計画の利点を示す。
スクリーニング実験計画は、ある問題について初めにほとんど知られていない場合には特に適している。製品またはプロセスの開発の初めに、できるだけ多くの因子を、それらの重要性について、およびそれらの目的量への影響の方向について、まず検討しなければならない。プロセスまたは製品を最適化する場合には、次に数種類の影響量のみを互いに変化させる。
【0025】
作成した実験計画において、各個別実験は多次元空間におけるポイントを表す。図8は、2つ(左)および3つ(右)の因子についてのこの実験空間を示す[29]。線形効果を検討するために、因子は、四角形または立方体の角のポイントの値のみを採用する。二次相関を再現できるようにするために、辺または面の中心に追加のポイントを加える。図8では、これらのポイントは実験空間の外側に配置されており、これも可能である。しかし、これらは規定値範囲からはずれる可能性がある。
この空間の各ポイントには、実験を行った後に目的量に対してある値を割り当てることができる。空間配置により、次に、モデルの選択に依存して、検討した実験空間内での目的量の予測が可能となる。表1に示す項が、この目的に用いられる。
【0026】
【表1】
【0027】
表1で用いる項の係数(b0、bA…)は、目的量の実験的決定値の支援により、回帰分析によって決定する。
回帰の後、適用したモデルを精度および適性について試験する。適性モデルであるかどうかは、剰余の図式評価により決定する。剰余(適合モデルによる予測値からの、測定値の偏差
【数1】
を、確率ネットワークにプロットすることにより、正規分布についてチェックする。さらに、異常値実験をこの方法により決定できる。
モデル精度の評価のために、測定値を予測値に対してプロットする。理想的モデル精度の場合、点は二等分線上に並ぶはずである。モデルは相関係数により定量的に記述され、相関係数は、測定値が二等分線からどれだけ離れているかを示す[30]。
【0028】
次の化学物質を、実験計画の実験の実施に用いる:
1−ビニル−2−ピロリドン(N,N’−ジ−sec−ブチル−1,4−フェニレンジアミンにより安定化)、
製造業者:Merck Schuchardt OHG、商品コード:8.08518
プロピオン酸n−プロピル
製造業者:Dow Chemical Company
酢酸エチル
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.09623
メチルエチルケトン
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.06014
エタノール
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.11727
1,4−ジオキサン
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.03115
α,α’−アゾイソブチロニトリル
製造業者:Merck Schuchardt OHG、商品コード:8.01595
ポリビニルメチルエーテル、水中50%溶解、MW〜50,000
製造業者:Polysciences, Inc., 商品コード:07903032-500(供給業者:tebu-bio)
ポリアクリル酸(製品名:Carbopol(登録商標)934)
製造業者:SERVA Electrophoresis、商品コード:15885.01
【0029】
ポリビニルアルコール40−88
製造業者:Merck KGaA、商品コード:1.41353
酢酸ポリビニル、MW〜50,000
製造業者:Alfa Aesar、商品コード:A12732
酢酸ポリビニル、MW〜140,000
製造業者:Sigma-Aldrich、商品コード:387924
酢酸ポリビニル、MW〜500,000
製造業者:Sigma-Aldrich、商品コード:387932
DVC(N,N−ジビニルエチレンウレア、BASF, Ludwigshafen)
【0030】
実施には次の装置を用いた。
MultiplantM100自動合成装置
製造業者:Chemspeed Technologies AG
ソフトウェア:Application Editor/Application Executor Version 1.9.2.24
Leica DM 2500M、光学顕微鏡
カメラ:Leica DFC 280
ソフトウェア:Leica Application Suite Version 3.3.1 (LAS Interactive Measurement Moduleのライセンス含む)
MODDE8、統計実験計画用のソフトウェア
製造業者:Umetrics
Eppendorf Centrifuge 5804
最大負荷:8×40ml;最大速度:5000rpm
【0031】
実験計画の実施におけるさらなる詳細:
相当数の個別実験を実施しなければならなかったため、実際の実験計画はできる限り最小量の物質を用いて実施して、費用と材料をセーブした。これらの実験は、次により大きなプラントにスケールアップされたため、工業スケールに適用可能な規定の条件下で実施する必要があった。
実験は、Chemspeed Technologiesが開発したMultiplantM100を用いて行った。最大容量70mlのバッチ式で操作される最大6個までの撹拌反応器を、規定の反応条件下でこのプラントにおいて同時に制御することができる。
【0032】
図9は、MultiplantM100の機能および装置の簡単なフローチャートを示す。
次の機能および要素を、分散重合実験のプロセス制御のために用いた。
ソフトウェアとして「Application Editor」の支援により、各個別反応器のプロセス制御をプログラム化することができる。真空バルブおよび窒素バルブの設定、反応器温度、加熱相または冷却相での温度率、撹拌速度および各状態での操作持続時間は、このプログラムを用いて決定することができる。
【0033】
次に「Application Executer」を用いて、プログラムされたアプリケーションを実行する。プロセスパラメータの実際の値および目的値は、表形式で、またはリアルタイムの曲線として視覚化され、操作中にユーザーが修正することができる。パラメータの時間変化は、ログファイルに記録される。
反応器の内部にはPt100熱電対を配置し、その信号は制御ユニットにパッチコードを介して送信される。制御システムの動的挙動は、PIDパラメータをこのシステム用に修正することにより、ソフトウェア構成内で最適化することができる。
ステンレススチール製の反応器は、ステンレススチール製のジャケットで囲まれ、その温度もPt100熱電対により記録され、冷却水循環および加熱ロッドを制御して調節される。図10は、ジャケット温度制御の機能原理の平面図を示す。
【0034】
温度制御では、冷却水がジャケットのスペースおよび反応器ヘッドを通って流れる。水は熱交換により冷却され、熱交換はシリコーンベースのオイル(HTF190オイル)を用いて行う。このオイルは、低温保持装置(Huber-Unistat)と循環ポンプの支援により、所望の温度に一定に維持される。
真空ポンプ(Vacuubrand cvc200II)が発生させた減少圧力を、主弁と三方弁の位置を変えることにより、各個別反応器に適用する。同様の操作が窒素供給にも適用され、ここではフロート型流量計の支援により圧力を調節する。
【0035】
各ケースで用いる反応器は、混合用に磁気攪拌機を有する。攪拌機の攪拌シャフトは、駆動装置と直接接触せず、代わりに磁気的に駆動装置と接触する。磁石は歯車システムにより動き、撹拌速度およびエネルギー消費を測定して調節することを可能とする。
実験を行うために、安定剤原液の調製を、ポリマーおよび溶媒を三角フラスコ中に計量し、混合物を磁気攪拌機を用いて室温で均一化することにより行う。
各反応器に対し、反応混合物の個別成分を25mlの三角フラスコ中に直接計量する。
【0036】
最初に、開始剤および架橋剤をNVPに溶解する。続いて安定剤溶液および残りの溶媒を計量して入れる。反応混合物を、筋が見えなくなるまで振動させて均一化し、清浄な乾燥した反応器に移し入れる。
反応器はミニプラント内に置き、各ケースにおいて冷却水回路、温度センサーおよび攪拌機と接続する。
「Application Editor」において、適用はプログラム化されており、これにより、各反応器のプロセス管理が規定されている。適用開始前に、真空ポンプおよび低温保持装置のスイッチを入れ、窒素供給を約1barに調節する。実験のそれぞれの実施は不活性化(inertisation)プロセスにより開始され、ここで窒素および真空が反応器に順番に適用される。
【0037】
NVPの分散重合プロセスの最適化の前に、種々の成分の適合性について予備実験で試験した。開始剤および架橋剤の選択は通常用いられる物質となるが、調査する溶媒および安定剤の機能性についての定量的情報は、これらの予備実験において提供される。さらに、このスクリーニングを実施するための成分の濃度限界について試験し、実験の技術的実行可能性を保証する。
アゾ化合物、特にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)は、文献において分散重合による単分散ポリマー粒子の製造用の好ましい開始剤として記載されている。文献にはAIBNを使用する好適な重合温度として、50℃〜80℃範囲が推奨されている。文献に記載のシステムにおいては、AIBNは、NVPの濃度に基づき0.5%〜4.0%の範囲の量で用いられる[11〜22]。
【0038】
さらなるプロセスステップのための、反応媒体または溶媒中に形成されたポリマーの溶解性の減少は、線形ポリマー鎖の架橋により実現される。この目的のために、ここではジビニル化合物を用いる。架橋剤はポリビニルピロリドン鎖にランダムに統合され、第二反応性ビニル基でのさらなる連鎖開始を介して分子を分枝させる。ジビニル架橋剤の量は、NVPの濃度に基づき重量部で示される。計測の間、強く架橋されたシード粒子は、非溶解性に加えて膨潤特性が劣っていることも、考慮すべきである。
分散重合において、溶媒の選択は重要な役割を果たす。好適な溶媒は、形成されたポリマーに対する析出作用を特徴とし、ここでモノマー、開始剤および安定剤は易溶性でなければならない。
【0039】
PVPの溶媒または沈殿剤として好適な溶媒を、表2に示す:
【表2】
【0040】
重合の間、溶媒の沸点を超えてはならない。文献では、用いる開始剤の場合の理想的な温度範囲は50℃〜80℃であると記載されている。溶媒を選択するときに、前記範囲内で反応温度が変化する可能性が、その沸点によって過度に制限されないことが保証されるべきである。
毒性、入手可能性、および一般的な取扱いにより、表3に示す溶媒の使用が特に好ましい。
【表3】
【0041】
実験により、有利な重合結果もまた、本システムにより、選択された開始剤を用いて、80℃より高い温度、特に85℃以上において得られることが見出された。
NVPの分散重合の実験を、表3からの溶媒と2〜15%のモノマー、0.5〜2.0%のAIBNおよび0〜2.5%のジビニル架橋剤を用いて行った。
実験により、純粋な溶液重合が、1,4−ジオキサンおよびメチルエチルケトンの存在下、架橋剤なしで起きたことが見出された。1%以上の架橋の場合、ポリマーは透明で均一なゲルとして析出する。
【0042】
酢酸エチルおよびプロピオン酸プロピルの存在下で、ポリマーは白色固体として析出する。粒子形態で析出したPVPからなる凝集物は、光学顕微鏡下で明らかである。粒子を形成し、凝集を防ぐために、種々の安定剤を加えることができる。この関連で、ポリアクリル酸(PAA)、ポリビニルメチルエーテル(PVME)および酢酸ポリビニル(PVAc)を含む系が特に、文献から安定剤として知られている[7、13、20、24、25、32、34]。
実施した実験において、初めに立体安定剤を、用いる溶媒中でのその溶解性について検討した。PVMEは50%水溶液としてのみ利用可能であり、初めに50℃で48時間乾燥する。
【表4】
【0043】
考慮する安定剤の溶解性および最初の重合実験の結果により、酢酸エチルおよびプロピオン酸プロピルを溶媒とし、PVMEおよびPVAcを立体安定剤としてさらに実験を行った。系の好適性の定量的基準は、形成される粒子の球形度、サイズおよび単離の度合いとする。
平均分子量(MVW)として140kg/molおよび500kg/molのPVMEおよびPVAcは、MW50kg/molのPVAcよりも顕著に高い安定化作用を示す。ここでの利点は、凝集および比較的高いモノマー濃度(20%まで)でのケーキングを回避するために、これらの安定剤については低い濃度(バッチ全体に基づき<1%)で十分だということである。しかし、製造された粒子は、反応混合物の組成変化に対して、球形でないか、または平均粒径(d50)が<1μmであるかのどちらかである。
【0044】
プロピオン酸プロピル中、MW50kg/molのPVAcを溶媒/安定剤系とする実験において、5μmまでのサイズを有する球状粒子であって、粒径分布が反応混合物の組成変化に顕著に影響され得る前記粒子が見出された。安定化作用は比較的小さく、これは、高い安定剤濃度(>12%)のみが6%より高いモノマー濃度の単離粒子の製造を可能とすることを意味する。酢酸エチルにおいて、球状粒子は製造できない(図11参照)。図11は、PVP粒子の顕微鏡写真を示す。これらの写真は、PVME、MWが140kのPVAc、MWが500kのPVAc、MWが50kのPVAcを安定剤とした系の、プロピオン酸プロピル(B〜E)および酢酸エチル(A)における特徴を示す。
【0045】
次の表は、分散重合に好適な溶媒および安定剤を決定することのできる実験結果の概要である。
【表5】
【0046】
実施した実験結果に基づき、表6に示した成分が、N−ビニルピロリドンの分散重合に適することが証明された。
【表6】
【0047】
最大可能な平均粒径を有する単分散球状PVP粒子の製造のための最適条件を決定するために、実験パラメータの影響をDoEの支援により検討した。
予備実験により、AIBN、PVAcおよびNVPの必要濃度の限界値を設定した。
ケーキング、溶融および凝集を防ぐために、PVAc濃度の最小値は、NVPの濃度の上昇が小さい場合に検討された系において、その割合を大幅に増加させねばならないことが見出された。したがって、最大可能なパラメータ変化の検討を可能とするために、最初の実験計画の各NVPレベルについて、PVAcの濃度の別の値の範囲が割り当てられた。
【0048】
これらの実験により、表7に示された個別パラメータについての限界が上昇した。
【表7】
【0049】
一般に、架橋剤含量の影響ついては、架橋度合いが増加する粒子は低い膨潤能力を有し、したがって、より小さく析出することが知られている。さらに、ジビニルモノマーの重合は通常、より制御されない様式で進行し、高濃度の場合(>0.5%)、これはより広いサイズ分布および非球状粒子と凝集を生じる[16、21]。我々独自の実験では、約1.5%のDVC含量は、水相におけるPVP粒子の適当な安定性を保証し、選択された組成において凝集は生じないことが示された。
【0050】
実験により、0.3℃/分〜3℃/分の範囲の温度率では実験結果に顕著な差が生じないことが示され、特にこの値が容易に大規模工業プラントに移行できるため、さらなる実験では温度率は1℃/分に設定した。
さらに、パドル攪拌機で100rpm〜600rpm(dstirrer=1.5cm、dreactor=4.2cm、)の攪拌機速度の変化は、これ以外では一定の実験パラメータにおいて、顕著な差を生じないことも見出された。
さらに、実験により、粒子の表現の変化は、16時間の実験期間の後には感知できなくなることも示された。
【0051】
DoEの評価のために、各実験の目的量として、個別パラメータの影響を判定する顕著な変化を介した値を採用しなければならない。
PVP粒子は、光学顕微鏡写真の支援により、その球形度、平均粒径および単分散性によって特徴づけられる。設定された条件下では主に球状の粒子が得られるため、球形度は最初は評価から除外され、主観的に決定されるスコア1〜3によってのみ記載される。
【0052】
平均粒径(d50)および単分散性(d90/d10)は、体積%分布により決定する。測定には、バッチを最初に均一化して、代表試料をピペットを用いて採取できるようにする。試料が試料スライド上に均一に分散されていることが保証できたら、ランダムな画像切片を写真用に選択する。測定ソフトウェアの支援により、画像切片上の粒子(約300〜500単位)を測定する。
粒子の直径から出発して、その体積を計算する:
【数2】
【0053】
最大限可能な正規分布曲線を得るために、分布図のx軸を対数スケールとする。Microsoft Excelにおいて、同じ大きさのlg値区間を有するカテゴリーを設定し、体積が対応するlg値を与える粒子の数を、各カテゴリーに割り当てる。したがって、
【数3】
により、測定した総体積が得られ、個々のカテゴリーの体積が、体積%分布を与える:
【数4】
【0054】
台形式:
【数5】
の支援により、分布曲線の下のおよその面積が決定され、全体積の10%、50%、および90%を超える粒径についてのそれぞれの区間を決定することができる。d10、d50、d90の最終値を、対応する区間内での線形内挿により計算する。
図18は、d10、d50、d90の計算値および単分散による体積%分布図の例を示し、ここでd10=2.31μm、d50=3.73μm、d90=4.09μmおよびd90/d10=1.77である。
【0055】
実施した実験の評価には、パラメータ設定の変化による目的量の分散(variance)が、測定法によって生じるばらつきよりも大幅に大きいことが重要である。繰り返し測定により、測定法を次の手段を用いて、干渉因子について試験した。
− 繰り返しサンプリング
− 試料の複数の画像部の測定
− 画像部の複数回の測定
繰り返し測定を2つの異なるバッチについて行った。結果は、用いた方法が、目的量における顕著な変化を再現するのに適していることを示す。
【0056】
【表8】
【0057】
プロピオン酸プロピル中でアゾビスイソブチロニトリルを開始剤、ジビニル化合物を架橋成分、および酢酸ポリビニル(MW〜50,000)を立体安定剤とするN−ビニルピロリドンの分散重合のシステムを、その主要な影響量およびその効果について、統計的実験計画の支援により検討した。上記定義の影響量および範囲のほかに、さらに6つの反応器を、目的量に対するそれらの個別の効果について試験した。実験数に関して許容し得るフレームワーク内を維持するため、混合実験について実験計画を実施した。ここでの個別の実験は、可能な組み合わせから、提唱された回帰モデルのマッチングに理想的に好適であるように、反復により選択した。選択されたモデルタイプは、反応温度およびNVP、AIBNおよびPVAcの濃度の因子について、線形、二次および相互作用の項を含んでいた。反応器は、ブロックパラメータとして線形影響について試験した。N=42の個別実験により、作成した実験計画は、再現性をランダム繰り返し実験により試験して、75%の効率度(G効率)を達成した。表9は、MODDE8で作成した実験計画と、個別実験の測定結果を含む。
【0058】
【表9】
【0059】
平均粒径を決定するために、初めにd50の測定値の分布を試験した。これらはほぼ正規分布でなければならず、そうでなければ統計的評価およびモデル形成に問題が生じる。
図19は、d50のオリジナル測定値の分布を示す。
多くの場合、値はおよその正規分布への変換により修正することができる。この場合、目的量はy*=y0.25により変換される。図20は、d50の変換された測定値の分布を示す。
【0060】
次の項を、経験的モデルの形成に用いた:
【数6】
モデル精度を決定するため、測定値をモデルによる予測値に対してプロットする。
【0061】
モデル精度として、89%の値を決定する。モデルの適性のさらなる試験として、剰余を正規分布についてチェックする。モデル誤差を確率グリッドにプロットすると、正規分布の場合、これらは直線上に並ぶ。決定した剰余の分布は良好である。
個別のモデル項を次に、その統計的有意性について試験する。個別モデルの係数の有意性を考慮すると、多くは非常に小さな値を有するか、および/または大きな信頼区間(高い不確定性)を有することが明らかである。
【0062】
非有意なモデル項の削除による段階的縮小の後も、モデル精度73%が見出され、これは基本的な傾向を予測するには十分正確である。
図25は、決定されたモデル係数と対応する信頼区間を図示的に示す(縮小モデル)。
しかしながら、AIBN濃度およびPVAc濃度の影響パラメータのみが、統計的に有意であることが証明される。これらは、d50の変動の73%を記述する。
【0063】
モデル予測により、検討した範囲における開始パラメータの変動に対する、d50値の推移が予想される。図26は、d50値の変化に対する1次元(左)および2次元(右)モデルの予測の図示的な比較を示す。
単分散性の評価のために、目的量d90/d10をd50値と同様にして評価する。図27は、d90/d10の元の測定値の分布を棒グラフの形態で示す。
ここでもy*=y0.25による変換を行い、図28に示すd90/d10の変換測定値の分布を得た。d90/d10に対するモデル精度および剰余の分布(完全モデル)を、次に、決定された測定値に基づき決定した。
【0064】
しかしこの場合は不適切なモデル精度が決定され、単分散性についての劣ったモデル結果のために、実施した一連の実験を、サイズ分布に影響する可能性のある干渉量について試験した。
システムに対するその影響について最大可能な値の範囲を検討できるように、パラメータ値の限界を、実験計画において設定した。したがって、最適な実験の実施を保証しないパラメータの組み合わせもまた、実験計画内で生じた。これは、反応器の壁および攪拌機上のケーキングの形で明らかであった。これについて、好ましいサイズクラス(分類の1種類)の粒子の蓄積が関与するかどうかは明らかでなく、サイズ分布の真実の値は、測定において再現されなかった。明確さの欠如を排除するため、実施の間にケーキングの増加が生じた全12の個別実験を、一連の実験から取り除いた。単分散性のさらなる評価を、残りの結果と単純化されたモデルを用いて行った。
【0065】
この縮小の後、基本的傾向の正確な再現について、モデル精度〜60%が適性であると考えることができる。
単純化したモデルの単分散性の変化についての評価により、粒子のサイズ分布は、用いる反応器に大きく影響されることが示された。さらに、温度の顕著な二次影響と、AIBN濃度の線形影響が存在する(図18参照)。単分散性の最善の値は、2.0%のAIBNおよび78℃において決定された。
【0066】
第1実験計画の結果に基づき、新しい範囲を第2実験計画について規定し、追加の実験を行った。第一に、反応器の目的量に対するその影響についてさらに正確に試験するために、第二に、反応温度の影響の予測傾向を、第1実験計画に規定された範囲を超えて検討した。
反応温度の単分散性に対する影響を検討するために、さらなる一連の実験AおよびBを、第1実験計画において用いた反応温度範囲の上および下の温度で、異なる組成で行った。驚くべきことに、80℃を超える温度範囲は、両方の目的量の値について有利であることが証明される。第2実験計画において、検討する反応温度範囲を75℃〜85℃に修正した。
【0067】
PVACの濃度がNVP濃度に関係するとの事実により、これらの影響量について比較的狭い範囲を選択したが、これについては、第1実験計画からの結果に基づき、2つの目的量の最良の値が予想される。
前の実験で、AIBN濃度の変化による不利な効果が示されたため、以下の実験でのAIBNの濃度は、これまで検討された範囲内である0.9%〜1.4%の範囲に狭めた。
【表10】
【0068】
【表11】
【0069】
表10において、第2実験計画に対して定義された影響量の値の範囲を比較する。表11は、個別実験およびその結果を含む。第1実験計画におけると同様に、線形効果、相互作用および二次効果の記述の項を考慮に入れて、モデルタイプはD最適である。第2実験計画を、第1実験計画と同様に評価する。
図38には、平均粒径のオリジナル測定値の分布を、棒グラフの形で示す。統計的評価のために、測定値はここでもy*=y0.25による変換を行う。これらの変換測定値の分布を、図39に棒グラフの形で同様に示す。モデル精度の評価には、d50の決定値および予測値を再度互いにプロットし、剰余を決定した。
【0070】
図42には、モデル係数を棒グラフの形でプロットすると共に、変化する量である温度およびNVPyとPVAcの濃度の影響下での、d50値の対応する信頼範囲を示す。
第2実験計画で選択された反応条件については、影響量の効果を記述するために、非常にロバストなモデルを設定することができる(図42参照)。検討した範囲での平均粒径に対する主要な影響は、反応温度から出発する。NVP濃度およびPVAc濃度の変化による、d50値への有意な影響も同様に予測される。
【0071】
図22は、温度およびNVPyとPVAcの濃度の関数としての、d50値の変化の1次元モデル予測を示す。
図23は、AIBNの平均レベルおよび種々のPVAc濃度、より正確には6%、7%、8%の濃度(左から右へ)における、d50値の変化の2次元モデル予測を示す。
図22および図23は、検討した範囲での変化についてのモデル予測が、有意な影響量であることを示す。
【0072】
d50値の最適な結果は、PVAcおよびNVPの低濃度レベルにおいて、81℃〜85℃の範囲の反応温度で予想される。
棒グラフ形態での、単分散性のオリジナル測定値の分布は、予想に対応するが、やや左に傾いている。値はy*=y0.5により変換される。図24は、棒グラフの形態で示す、変換された測定値の分布を示す。
第1実験計画における比率d90/d10に対する劣ったモデリング結果により、結果の再現性を、繰り返し実験に基づいて初めに評価する。
【0073】
図25には、再現性評価のために、比率d90/d10を「再現指数」に対してプロットする。再現性は、適切に評価することができる。繰り返し実験のばらつきは、実験設定の変更による目的量の全体的な分散よりも顕著に低い。
比率d90/d10についてのモデル精度および、完全モデル(a)および縮小モデル(b)の剰余分布をここで再度評価する。
【0074】
異常値実験を除いたのち、残りのモデルにおける剰余は、ほぼ正規分布を有することが証明される。図26は、棒グラフで示したd90/d10についての対応するモデル係数と対応する信頼範囲を示す。この方法で、検討した範囲における影響量の効果について決定したモデルは、72.7%の良好なモデル精度を有する。単分散性に対する主要な影響量は、反応温度およびNVP濃度である。AIBN濃度およびPVAc濃度は、ここでは二次的にのみ考慮すべきである。個別モデル項について決定した信頼範囲に基づき、モデル予測においては大きな不確実性に悩まされることを考慮すべきである(図26)。
【0075】
実験のさらなる評価から、温度を75℃から約80℃に上昇させることにより、d90/d10の値に大きな減少が示される。この点から、値は実質的に一定を維持する。さらに、目的量d90/d10の小さな値が、NVPの低濃度およびAIBNおよびPVAcの高濃度において、検討範囲において予測される。しかし、いくつかの場合においては、大きな信頼範囲は高い不確実性をここでもたらす。
第2実験計画からの結果を次にまとめる:
平均粒径および単分散性の非常に良好な値が、より広い作業範囲にわたって反応温度を考慮することにより達成された。さらに、検討した系は、使用可能なモデルによりd50およびd90/d10の変化について、用いた範囲において、実験パラメータを変化させることで記述される。
【0076】
第2実験計画において決定されたデータに基づき、複数量の最適化を2つの目的量について行った。比率d90/d10<1.7およびd50>2.5μの値が予想される実験設定を、ここで決定した。
第2実験計画からの結果に加えて、モデル予測に直接結合されている目的量最適化の実験も行った。
さらなる実験において、目的は、影響量の関数としてのd90/d10およびd50の値の変化が、検討範囲の外側でもまた維持されるかどうか、および目的量についてさらなる最適化が可能かどうかを検討することである。そのために、ここで前の最適な反応条件を用いる一連の実験を行い、これらは、検討すべき成分は別にして、一定に維持された。
【0077】
両方の目的量d90/d10およびd50について、さらなる実験により、80℃〜85℃の範囲が反応温度として有利であることが示された。温度を75℃から80℃に上昇させた場合の両目的量の値の顕著な改善の後に、曲線はかなり平らとなり、これは、反応温度の上昇によりさらなる最適化が期待できないことを意味する。
AIBN濃度の関数としての曲線は、濃度の増加と共に比率d90/d10の値の減少傾向を示し、一方、平均粒径は検討範囲では顕著に変化しない。
NVP濃度範囲4.5%〜<5.3%における第2実験計画からの結果は、低いNVP濃度において、2つの目的量が有利な値に傾くことを示した。したがってNVPの<4.5%の範囲は、さらに検討すべきとして残された。
【0078】
PVAcの濃度変化は、2つの目的量の逆相関を引き起こす。したがってさらなる検討を、<6%および>8%の範囲で行った。
実施した多くの実験は2峰性のサイズ分布を示し、ここでそれぞれのサイズクラスの粒子は比較的狭い分布を有する(図27参照)。反応溶媒の極性は、文献において、最終粒径および粒径分布に対して重要な影響を有するとみなされている[19]。極性の変化は、さらなる実験において、プロピオン酸プロピルをエタノール、イソプロパノールおよび1,4−ジオキサンと種々の比率で混合することにより生じる。検討のために選択された主剤(basis)は、サイズ分布に顕著な2峰性が予想される配合である。図27は、2峰性サイズ分布を有するバッチの例について、初めにサイズ分布を、および次に形成された粒子の写真を示す。
【0079】
実験により、溶媒に基づき5%未満のエタノールまたはイソプロパノールの使用が、単離PVP粒子の析出を可能とすることが示された。エタノールまたはイソプロパノール濃度の増加と共に、粒子はより大きくなり、広いサイズ分布とより少ない球状を有する。>5%の濃度において、PVPは粒子形態で析出しない。図28a)およびb)は、エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた場合の重合結果を示す。
ジオキサンの実験結果に対して見出された影響を、表12および図29の図に示す。
【0080】
【表12】
【0081】
図29は、d50値および比率d90/d10の、ジオキサンの割合に対する依存の図を示す。
表12および図29の図から明らかであるように、比較的低濃度のジオキサンの添加は、単分散性にわずかな利点のみをもたらす(2%〜3%のジオキサン)。対照的に、5%〜10%のジオキサンの添加は、サイズ分布は実質的に一定でありながら、d50値に正の効果を有する。10%を超えるジオキサンの添加により、広いサイズ分布を有する顕著に大きな粒子が形成される。30%以上のジオキサンの添加からは、ポリマーは粒子形態では析出しない。
図30a)、b)およびc)は、0%、2%および20%のジオキサンで得られた実験結果を示す。
【0082】
実験結果の2Lダブルジャケット装置へのスケールアップおよび移行
実験を実験室スケールから半工業バッチに移行するにあたり、そのように修正された境界条件に対して系がどのように敏感に反応するかをチェックした。
スケールアップ実験を、ジャケット温度が水循環の支援により調節される2Lのガラス製ダブルジャケット装置を用いて実施する。第1の実験は、Chemspeed自動合成装置(M100)で多数回実施され、再現性のある結果をもたらしており、したがってロバストであるとみなせるバッチの処方を用いて行う。M100で行われたような窒素/真空フラッシングの代わりに、ダブルジャケット装置での重合は窒素雰囲気化で進行する。これは、0.2〜0.4barの窒素の定常的供給により保証される。
自動合成装置デザインからのさらなる大きな違いは、反応器および攪拌機の形状および材料と、関連する流動作用および熱伝達における違いである。
【0083】
2リットルガラス製ダブルジャケット反応器(DJA)における重合性能
84gの酢酸ポリビニル(PVAc、50,000g/mol)を、室温で2リットルDJA内の1250gの脱イオン水に溶解する。0.63gのN,N−ジビニルエチレンウレア(DVC、BASF Ludwigshafen)および0.882gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を、室温で三角フラスコ内の63gのN−ビニルピロリドン(NVP)に溶解する。有機相を撹拌しつつ(羽根車攪拌機、200rpm)DJAに導入する。混合物を室温から85℃まで、加熱速度1K/分で、窒素フラッシングしつつ加熱し、この温度に16時間維持する。混合物を次に、約2K/分の冷却速度で室温まで冷却し、分散を光学顕微鏡法で解析する。光学顕微鏡解析結果を表14に示す。
【0084】
MultiplantM100反応器における重合性能
次の量に関するデータは、使用した典型的な6つのMultiplantM100(Chemspeed Technologies AG)反応器の1つへの充填に関する。各反応器は、約60mlの反応容量を有する。
2.4gの酢酸ポリビニル(PVAc、50,000g/mol)を、室温で三角フラスコ内の35.8gの脱イオン水に溶解する。0.018gのN,N−ジビニルエチレンウレア(DVC)および0.025gのAIBNを、1.8gのN−ビニルピロリドン(NVP)に溶解する。2つの相を室温でM100反応器の1つに導入し、後者を密封し、不活性化サイクル(5分間真空を3回、続いて窒素エアレーション)を150rpmで撹拌しつつ実施する。次に、ソフトウェアを用いて、重合温度の85℃に加熱速度1K/分で加熱することにより、重合を開始させる。重合温度は16時間維持し、混合物を次に室温に冷却し、光学顕微鏡法により解析する(結果は表14を参照)。
【0085】
初めのスケールアップ実験を、表13に示す反応条件下で行う。結果を表14および図31に示す。
【表13】
【0086】
図31a)およびb)は、M100(a)およびDJA(b)からのバッチの拡大写真の比較を示す。
【表14】
【0087】
スケールアップ実験からの結果に基づき、この処方は、40gバッチ(M100)から1400gのバッチ(DJA)へ移行できたと考えることができる。d50およびd90/d10の値の絶対値は反応器特異的な変化を受けるが(表14参照)、特徴的なサイズ分布は再現可能である(図31参照)。
さらなる実験において、架橋剤濃度を1.0%から2.0%または1.5%に増加させるが、これは、形成されるポリマー粒子の架橋の程度の変化が、のちの膨潤実験に重要だからである。しかし架橋剤含量を増加させる場合は、M100とDJAからの結果には大きな差が明白である。DVCの1%から2%への変化は、M100において目的量のd50およびd90/d10に関して、わずかな不利益な効果をもたらすのみである。対照的にDJAでは、それ以外は一定の条件下でDVCの割合を増加させると、粒子のケーキング、凝集および溶解がかなり生じる。さらに、粒子は粒径、サイズ分布および球形度の相当異なる特徴を有する(図32a)およびb)参照)。図32a)およびb)は、M100およびDJA(DVC2%)のバッチから得られたポリマー粒子の比較拡大図を示す。
【0088】
凝集およびケーキングは、過度に高いモノマー濃度または過度に低い安定剤濃度を使用した場合の主な現象である。安定剤濃度を6%から10%に増加させても効果は見られないが、モノマー濃度の4.5%から2.0%への低下は、さらなる凝集およびケーキングを生じさせない。しかし、粒子自体は、改善された特徴を有さない。結果はまた、DJAおよびM100における流動条件の同等化のために、攪拌機種類および撹拌速度を変化させても変化しない。
さらに、製造されたポリビニルピロリドン粒子をそれらの膨潤挙動について、膨潤実験の支援により検討し、シード重合への、したがってタンパク質混合物調製のためのマクロ多孔性ポリマー粒子製造のための、粒子の適合性の情報を提供できることを目指した。
【0089】
文献には、極性反応媒体、通常は水/エタノール混合物中の、ポリスチレンシード粒子から開始されるシード重合の技術が記載されている[23〜28]。ポリスチレンとは対照的に、非常に親水性なポリマーがPVPの形態で存在するため、種々の溶媒中での粒子の膨潤性を試験する。
膨潤実験の準備のために、粒子をプロピオン酸プロピルで洗浄して反応混合物から分離する。このため、粒子を最初に多数のサイクル中で遠心分離機で沈殿させ、透明な上清を取り出した後、プロピオン酸プロピル中に再度分散させる。これらの洗浄サイクルを、各溶媒の変更時に対応する溶媒を用いて繰り返す。一般にそのポリマーに対して高い親和性を有するモノマー、したがってN−ビニルピロリドンを、以下の実験に膨潤剤として用いる。
【0090】
表15は、製造されたPVP粒子の膨潤特性の検討のために実施した全実験と、その結果を示す。
【表15】
【0091】
実験から、次の知見が得られた:
− 1%の架橋剤含量を有するPVP粒子は、1.5%架橋粒子に比べて水中で不安定である。
− PVPに対し、水はより良好な膨潤剤であり、トルエンはプロピオン酸プロピルより劣る。
− NVPの添加による膨潤効果は、検討した溶媒ではn−ヘキサンのみで観察できる。
− 1.5%架橋PVP粒子はNVPに対して不安定である。
【0092】
さらなる実験において、1%のAIBNを含む、初めに用いた質量に基づき2倍の量のNVPを、もとの反応混合物中に計量した。この混合物を標準重合条件に付した。平均粒径は、これらの条件下でd50=3.07μmからd50=3.86μmに成長した。ケーキングおよび新しく顕著に小さな粒子により、NVPが溶媒中および添加後の粒子中にも配置されているとの結論が導かれる(図33a)およびb)参照)。図33a)およびb)は、異なる量のNVPを元の反応混合物に加えるという影響の下で形成され、続いて重合された粒子の拡大写真である。
詳細に述べれば、異なるプロセスパラメータは形成される粒子およびそれらの特性にかなりの効果を有する。再現可能な結果を得るために、一連の計画実験により影響量を検討した。
【0093】
我々独自の対応実験は、反応温度が両方の目的量に対する主要な影響量であることを示す。62℃〜78℃の範囲の反応温度の変化は単分散性に僅かな効果のみを有するが、平均粒径は顕著に影響されない。しかし、温度を80℃〜85℃に上昇させると、狭いサイズ分布の顕著に大きな粒子が生成される。さらなる実験により、良好な重合結果は、85℃より上の温度でもまだ得られることを示す。全体として、実験により、粒子の後の所望の適用分野に依存して、重合は、60℃〜90℃の範囲の温度において実施することができる。
【0094】
図34は、目的量d50およびd90/d10の、異なるNVP濃度(=4.5%)、AIBN濃度(=1.4%)、PVAc濃度(=6%)における、反応温度に対する依存を示す図である。
AIBN濃度の影響も、実施した一連の実験において重要であることが証明された。開始剤含量を変えることにより、目的量の値において負に相関する変化が、0.5%〜2.0%の濃度範囲で、反応温度62℃〜78℃において生じることが見出された。これは、低いAIBN濃度に対して、広いサイズ範囲を有する大きな粒子が予想されることを意味する。0.9%〜1.4%のAIBNで75℃〜85℃において、平均粒径に対する顕著な効果は見出されなかった。しかし1.4%のAIBNにより、いくらか低いd90/d10の値が予想できる。一連の補足実験において、T=85℃にて、AIBN濃度を0.2%〜5.0%の範囲で変化させた(図35参照)。平均粒径はこの範囲において、AIBN含量の増加と共に減少するが、d90/d10の値については明らかな傾向はみられない。
【0095】
これらの設定において、単分散性の値はAIBN濃度に関係なく実質的に一定レベルである。AIBN濃度<0.5%の範囲において、定量的に十分なPVP粒子の析出は生じなかった。対照的に、AIBN濃度>4%において、凝集が生じる。
図62は、目的量d50およびd90/d10の、T=85℃、NVP濃度=4.5%およびPVAc濃度6%における、AIBN濃度に対する依存の図を示す。
【0096】
安定剤としてのPVAcの濃度の影響を、0.8%〜18%の濃度範囲および62℃〜78℃にて検討した。この範囲において、PVAc濃度は平均粒径への主要な影響量である。低いPVAc濃度において、大きな粒子が予想できる。粒径分布には顕著な影響は明らかではない。さらなる実験を、6%〜8%の濃度範囲および75℃〜85℃にて実施した。これらは、用いたPVAc濃度が粒径に対して主要な効果を有すること、より正確には、d50およびd90/d10の値に対して逆相関効果を有することを示した。この傾向は、PVAcを2.5%〜10%の濃度でT=85℃で用いた実験によっても確認され(図36参照)、粒径が、見出された結果に基づいて、一定の反応条件下で前もってかなり良好に設計可能であることを意味する。8%のPVAcでのd90/d10の最小値の予測も、例えば一連の実験と一致した。
【0097】
図36は、目的量d50およびd90/d10の、T=85℃、NVP濃度=4.5%およびAIBN濃度=1.4%における、PVAc濃度に対する依存を示す図である。
モノマーとしてのN−ビニルピロリドンの開始濃度は、3%〜6%の間の非常に狭い範囲、および特に4.5%〜5.3%の範囲でのみ変化させた。NVP濃度の影響は重要であることが証明され、4.5%において、より小さなサイズ分布を有するいくらか大きな粒子が見出された。補足実験において、この傾向は、選択した範囲である2.5%〜5%のNVPを越えても確認された。
【0098】
粒径の開始剤濃度への依存は、ほとんどの系において開始剤含量の増加と共に粒径の増加として記述される。これに対する文献における根拠は、核生成相において、フリーラジカル濃度の増加と同時により多くのポリマー鎖が析出し、これらは核の安定化が完了する前に、凝集してより大きな粒子を形成できることである[12、14、16、19、21]。反対の効果は、経験的データに基づいてのみ記述されている[18]。反対の効果は、多くの溶媒で同様に観察される[11]。AIBNを開始剤、およびPVAcを安定剤とする、プロピオン酸プロピル中のN−ビニルピロリドンの分散重合の我々独自の実験において、驚くべきことには、AIBN濃度を0.5%から2%に増加させると、粒径が顕著に減少することが見出された。開始剤濃度のさらなる増加は、粒径のさらなる変化をもたらさない。
【0099】
検討した系における粒径に対する安定化の影響は、文献に記載されたモデルと類似していると考えることができる。安定剤濃度の増加と共に、より大きな表面積の安定化が可能であり、これは、粒径の減少により保証される。我々の実験では、文献と同様に、より高い分子量を有するPVAcにより、さらに効果的な安定化が生じる。温度の上昇およびモノマー濃度の増加と共に、形成されるポリマーおよび安定剤の溶解性は増加する。これは一方で、比較的高い分子量の場合に、ポリマーは反応混合物からのみ析出し、こうして重合は移動相においてより長く起こるとの結果となる。他方では、安定剤の安定化作用はその高い溶解性により低減され、すなわち核生成の間にさらなる凝集によりさらに大きな粒子が形成されることを意味する[11〜22]。これは、ここで反応温度に関して実施した実験結果と一致する。溶媒混合物による極性の変化についての実験も、この効果を確認する。
【0100】
文献によれば、粒子数が重合の20分後または5%転化の前に規定される、単分散性についての機構的モデルが記載されている「11〜13]。この時点から、他のモノマーおよびオリゴマーの吸収を介して起こる粒子の成長のみが起こる。単分散性の分布を有する粒子の製造のために、反応の初めに十分な核が形成されて、残りのオリゴマーを、これらが安定化されて新しい核を形成する(第2核生成)前に吸収できることが必要である。核生成相の間の析出ポリマー鎖の生成率および安定化速度は、反応温度ならびに開始剤、モノマー、溶媒および安定剤の種類および濃度を介して影響され得る[11〜22]。しかし、影響量の変化による粒子のサイズ分布における変化は、特に対応する系について、経験的に決定されたデータを参照してのみ、記述されている。
【0101】
我々独自の実験により、粒子集団のサイズ変化は、開始剤およびモノマー濃度の変化により影響され得ることが示された。単分散性におけるこの変化は、d90/d10の値を介しては顕著に明らかではない。図37は、AIBNの濃度変化による、サイズ分布の特徴における変化を示す。粒径分布を記述するさらなる可能性は、多分散度指数(PDI)の引用である:
【数7】
図37は、サイズ分布のAIBN濃度0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)への依存を示す。
【表16】
【0102】
略語リスト
[X]=xの濃度
AIBN=アゾビスイソブチロニトリル
DJA=ダブルジャケット装置
DVC=ジビニル化合物
M100=Multiplant 100(自動合成装置)
MW=分子量
NVP=N−ビニルピロリドン
PAA=ポリアクリル酸
PVAc=酢酸ポリビニル
PVME=ポリビニルメチルエーテル
【0103】
表のリスト
表1:2因子および3因子についての線形、二次および相互作用項
表2:[31]の製品BASF Luvitec(登録商標)Kの製品情報よる、ポリビニルピロリドン用の溶媒および沈殿剤
表3:溶解性決定のための予備実験に選択された溶媒およびその結果
表4:立体安定剤の溶解性
表5:種々の溶媒および安定剤の適合性についての予備実験の概要
表6:検討した系の成分
表7:第1実験計画のパラメータ範囲
表8:繰り返し測定の結果
表9:第1実験計画と個別実験の結果
表10:第2実験計画のパラメータ範囲
表11:第2実験計画と目的量についての結果
表12:ジオキサンの影響
表13:最初のスケールアップ実験のデータ
表14:M100およびDJAのバッチの比較
表15:実施した膨潤実験の結果
表16:種々のモノマーおよびAIBN濃度におけるPDIおよびd90/d10の値の比較
【0104】
図のリスト
図1:ビニルピロリドンのフリーラジカル重合における反応ステップ
図2:立体安定化作用の図式的原理
図3:官能性マクロマーを立体安定剤としたスチレン重合を例とした、分散重合の間のポリマー粒子の形成および発達の推移[14]
図4:シード重合における成長順序の例[5]
図5:DoEの使用における相
図6:プロセスまたはシステムの入力/出力モデル
図7:装置ドリフトを例とした時間依存性干渉の影響およびランダム化実験計画の利点の図示
図8:2因子(左)および3因子(右)に対する実験ポイントの空間的配置
図9:MultiplantM100の機能を記述するための単純化したフローチャート
図10:ジャケット温度制御の機能的原理(平面図)
【0105】
図11:PVME、PVAc:MW140k、PVAc:MW500k、PVAc:MW50kをプロピオン酸プロピル中(B〜E)、および酢酸エチル(A)中の安定剤とした場合の系に特徴的な、予備実験からのPVP粒子の顕微鏡写真
図12:体積%分布図とd10、d50、d90および単分散性の計算値の例
図13:d50のオリジナル測定値の分布
図14:d50の変換された測定値の分布
図15:モデル係数および対応する信頼範囲(減少モデル)
図16:d50における変化の1次元(左)および2次元(右)モデル予測
図17:d90/d10のオリジナル測定値の分布
図18:d90/d10の変換された測定値の分布
図19:オリジナル測定値の分布
図20:変換された測定値の分布
図21:d50についてのモデル係数および対応する信頼範囲
図22:d50の変化の1次元モデル予測
図23:平均レベルのAIBNおよび[PVAc]6%、7%、8%における、d50の変化の2次元モデル予測
図24:変換された測定値の分布
【0106】
図25:再現性の評価
図26:d90/d10についてのモデル係数および対応する信頼範囲
図27:2峰性サイズ分布を有するバッチの例
図28:エタノール濃度を1%から1.5%に増加させた結果
図29:d50およびd90/d10のジオキサンの割合に対する依存性
図30:0%、2%および20%のジオキサンによる実験
図31:M100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較
図32:2%DVCを用いたM100(左)およびDJA(右)からのバッチの比較
図33:元の反応混合物へのNVPの添加と続く重合の効果
図34:[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%、[PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10の反応温度に対する依存性
図35:T=85℃、[NVP]=4.5%、 [PVAc]=6%の場合の、目的量d50およびd90/d10のAIBN濃度に対する依存性
図36:T=85℃、[NVP]=4.5%、[AIBN]=1.4%の場合の、目的量d50およびd90/d10のPVAc濃度に対する依存性
図37:0.5%(1)、1.8%(2)、および4%(3)の場合の、サイズ分布の[AIBN]に対する依存性
【0107】
参考文献
【表17】
【0108】
【表18】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高い単分散性および顕著な球形度を有するポリマー粒子の製造方法であって、N−ビニルピロリドンを、エタノール、イソプロパノールおよびジオキサンの群から選択される溶媒、またはこれらの溶媒の混合物と、任意に水との混合物の存在下で重合し、生じたポリビニルピロリドンを分散体からのポリマー粒子として得ることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
得られたポリマー粒子を、多孔性親水性ポリマー粒子の製造のためのシード粒子として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合を、0.5〜2.5重量%、好ましくは1〜2重量%の濃度の架橋剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合を、0.5〜10重量%、好ましくは5重量%の量のエタノールおよび/またはイソプロパノールの存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
重合を、溶媒としてのジオキサンの存在下、これを1〜11重量%、好ましくは1〜3重量%の濃度、および特に好ましくは5〜10重量%の濃度で用いて行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
重合を行うために、2〜10重量%、好ましくは2〜6重量%、より特に好ましくは2重量%の量の、N−ビニルピロリドンのモノマー濃度を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
重合を、0.8〜18重量%、好ましくは2.5〜10重量%、特に好ましくは6〜10重量%の量の安定剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
重合を、安定剤として酢酸ポリビニルの存在下で行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合を、開始剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
開始剤を、0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の量、特に好ましくは1重量%の量加えることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
用いる開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
重合を、60〜90℃の範囲、好ましくは75〜90℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造されたポリマー粒子の、クロマトグラフィ分離法における使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造されたポリマー粒子の、タンパク質調製における分取または分析クロマトグラフィ用のマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための使用。
【請求項15】
高い単分散性および顕著な球形度を有し、<1μm〜5μmの範囲の平均粒径および多分散度指数PDI<1.1を有し、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により得られる、ポリマー粒子。
【請求項1】
高い単分散性および顕著な球形度を有するポリマー粒子の製造方法であって、N−ビニルピロリドンを、エタノール、イソプロパノールおよびジオキサンの群から選択される溶媒、またはこれらの溶媒の混合物と、任意に水との混合物の存在下で重合し、生じたポリビニルピロリドンを分散体からのポリマー粒子として得ることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
得られたポリマー粒子を、多孔性親水性ポリマー粒子の製造のためのシード粒子として用いることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重合を、0.5〜2.5重量%、好ましくは1〜2重量%の濃度の架橋剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重合を、0.5〜10重量%、好ましくは5重量%の量のエタノールおよび/またはイソプロパノールの存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
重合を、溶媒としてのジオキサンの存在下、これを1〜11重量%、好ましくは1〜3重量%の濃度、および特に好ましくは5〜10重量%の濃度で用いて行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
重合を行うために、2〜10重量%、好ましくは2〜6重量%、より特に好ましくは2重量%の量の、N−ビニルピロリドンのモノマー濃度を用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
重合を、0.8〜18重量%、好ましくは2.5〜10重量%、特に好ましくは6〜10重量%の量の安定剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
重合を、安定剤として酢酸ポリビニルの存在下で行うことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合を、開始剤の存在下で行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
開始剤を、0.2〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%の量、特に好ましくは1重量%の量加えることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
用いる開始剤が、アゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
重合を、60〜90℃の範囲、好ましくは75〜90℃の範囲の温度で行うことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造されたポリマー粒子の、クロマトグラフィ分離法における使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により製造されたポリマー粒子の、タンパク質調製における分取または分析クロマトグラフィ用のマクロ多孔性ポリマー粒子の製造のための使用。
【請求項15】
高い単分散性および顕著な球形度を有し、<1μm〜5μmの範囲の平均粒径および多分散度指数PDI<1.1を有し、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法により得られる、ポリマー粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図29】
【図34】
【図35】
【図36】
【図11】
【図27】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図37】
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【図18】
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【図20】
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【図26】
【図29】
【図34】
【図35】
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【図11】
【図27】
【図28】
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【図31】
【図32】
【図33】
【図37】
【公表番号】特表2012−526158(P2012−526158A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508932(P2012−508932)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002582
【国際公開番号】WO2010/127789
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002582
【国際公開番号】WO2010/127789
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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