説明

親水性組成物、親水性部材及び浴室用防曇ミラー

【課題】支持体表面に優れた防曇性、密着性、特に耐水垢付着性を付与する親水性組成物及び親水性部材を提供する。
【解決手段】例えば下記の(A)特定のシランカップリング基を有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物とを含有し、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する親水性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体表面に優れた防曇性、密着性、特に耐水垢付着性を付与する親水性組成物、親水性部材及び浴室用防曇ミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
部材表面への油性汚れの付着を防止する技術は、種々提案されている。例えば、反射防止膜、光学フィルター、光学レンズ、眼鏡レンズ、鏡等の光学部材は、人が使用することによって、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れが付着し、その機能を低下させると共に、汚れの除去が煩雑であるため、効果的な汚れ防止処理を施すことが望まれている。
特にガラス部材は、スポンジ等で擦ることにより物理的に汚れを除去することにより、傷がつきやすく、ガラス特有の輝きを失うという問題がある。このため、ガラス部材の表面に処理を施し防汚性を付与して汚れを落ち易くする技術が知られている(特許文献1〜3)。
【0003】
ガラス部材に防汚性を付与する従来技術として、特許文献1には、基材表面にZrOとSiOからなる皮膜形成成分中にTiO結晶が分散された高い耐久性光触媒膜付き基材が記載されている。特許文献2には、ジエチルホスファトエチルトリエトキシシラン等のシリコン化合物をコーティング物質として含むコーティング膜を有するガラス製品が記載されている。
【0004】
また、光学部材などの表面に汎用される樹脂フィルム、或いは、ガラスや金属等の無機材料は、その表面は疎水性であるか、弱い親水性を示すものが一般的である。樹脂フィルム、無機材料などを用いた基板の表面が親水化されると、付着水滴が基板表面に一様に拡がり均一な水膜を形成するようになるので、ガラス、レンズ、鏡の曇りを有効に防止でき、湿分による失透防止、雨天時の視界性確保等に役立つ。更に、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着しにくく、付着しても降雨や水洗により簡単に落せるようになるので、種々の用途に有用である。
【0005】
従来提案されている部材を親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、部材は高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。
一方、表面親水性に優れたフィルムとして、従来から酸化チタンを使用したフィルムが知られており、例えば、基板表面に光触媒含有層形成し、光触媒の光励起に応じて表面を高度に親水化する技術が開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防汚性を付与できることが報告されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら酸化チタンを用いた親水性フィルムは充分な膜強度を有さず、更に光励起されないと親水化効果が発現されないことから使用部位に制限があるという問題があるため、持続性があり、かつ、いずれの部位にも使用可能な防汚性部材が求められている。
【0006】
上記課題を達成するために、ゾルゲル有機無機ハイブリッド膜の特性に着眼し、親水性ポリマーとアルコキシドとを加水分解、縮重合することにより架橋構造を備えた親水性表面が優れた防曇性、防汚性を示し、かつ、良好な耐摩擦性を有することが見出されている
(特許文献4参照)。このような架橋構造を有する親水性表面層は反応性基を末端に有する特定の親水性ポリマーと、架橋剤とを組合せることにより容易に得られる。
【0007】
しかしながら、上記親水性表面層には水道水が膜状に付着・乾燥すると、白い堆積物(以下、水垢とする)が付着するという欠点があった。水周りでの用途が想定された部材においては、耐水垢付着は必須性能であるといえる。しかしながら、水垢の除去は非常に難しく、一般的には強アルカリ性の洗浄剤を用いるが、基材の劣化につながる。また、タワシ等でのこすり洗い等では、膜表面が無数の傷を帯びてしまう等の問題があった。
そして、特許文献5〜7には水垢付着を防止するため、親水性ポリマー及び金属錯体触媒を含有する親水性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−70801号公報
【特許文献2】特開2002−12450号公報
【特許文献3】国際公開第96/29375号
【特許文献4】特願2006−256215号公報
【特許文献5】特開2009−83147号公報
【特許文献6】特開2009−67972号公報
【特許文献7】特開2009−191169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、支持体表面に優れた防曇性、密着性、特に耐水垢付着性を付与し、酸を含む洗浄液により水垢を容易に除去可能であり、かつ水垢除去後の膜の残存率に優れる親水性組成物及び親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、ゾルゲル有機無機ハイブリッド親水膜の研究を進めた結果、(A)特定構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(B)特定構造を有する((A)とは異なる)親水性ポリマーの少なくとも一つと、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物とを含有し、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する親水性組成物により、親水性部材に耐水垢付着性を付与させることに成功した。また、水垢が付着した場合には酸を含む洗浄液により水垢を容易に除去可能であり、かつ水垢除去後の膜の残存率に優れる親水性膜を形成し得る親水性組成物を見出した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
【0011】
1.
(A)下記一般式(I−1)で表される構造単位と、下記一般式(I−2)で表される構造単位とを有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(B)下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物とを含有し、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する親水性組成物。
【化1】

(一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。)
【化2】

(一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。)
2.
前記(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物が、下記一般式(V−1)又は一般式(V−2)で表される化合物であることを特徴とする上記1に記載の親水性組成物。
(R20−Z−(OR214−m (V−1)
Al−(OR22 (V−2)
(R20は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21及びR22はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。)
3.
前記(A)下記一般式(I−1)で表される構造単位と、下記一般式(I−2)で表される構造単位とを有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、前記(B)下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つとの質量比(A)/(B)が、80/20〜90/10であることを特徴とする上記1又は2に記載の親水性組成物。
4.
更に(D)金属触媒を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
5.
更に(E)界面活性剤を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
6.
基材上に、上記1〜5のいずれかに記載の親水性組成物を塗設した親水性層を有することを特徴とする親水性部材。
7.
前記基材がガラス基材であることを特徴とする上記6に記載の親水性部材。
8.
上記6〜7のいずれかに記載の親水性部材に付着した水垢を、pH2〜4の酸洗浄液により除去する方法。
9.
上記6〜7のいずれかに記載の親水性部材を用いた浴室用防曇ミラー。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、支持体表面に優れた防曇性、密着性、特に耐水垢付着性を付与する親水性組成物及びこれを用いた親水性部材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
〔親水性組成物〕
本発明の親水性組成物は、(A)下記一般式(I−1)で表される構造単位と、下記一般式(I−2)で表される構造単位とを有する親水性ポリマーの少なくとも一つ(以下「親水性ポリマー(A)」と称する場合がある)と、(B)下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、かつ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つ(以下「親水性ポリマー(B)」と称する場合がある)と、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物とを含有し、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する。
【0014】
親水性を付与する組成物として、ポリアクリルアミド等の親水性構造及び架橋構造を形成するアルコキシシリル基を含有する親水性ポリマー(A)及び親水性ポリマー(B)を併用することで高い親水性を維持できることに加えて親水性表面に付着した水により親水性層(以下、「親水性膜と称する場合もある」)が溶け出すことがなく長期にわたる耐水性にも優れる。親水性ポリマー(B)を併用しない場合には十分な親水性が得られず、更に親水組成物の水酸基の量が増加するために水垢が付着しやすくなる。更に、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有することで、親水性組成物に適度な架橋度が得られ水が保持されにくくなり水垢が付着しにくい親水性部材を形成し得る。12.5質量%より少なくなると親水性組成物の架橋度が低いため水を保持しやすくなり水垢が付着しやすくなる。また、22.5%より多くなると親水性組成物中に含まれる水酸基の数が増加して水垢が付着しやすくなる。また、酸を含む洗浄液により水垢を容易に除去可能であり、かつ水垢除去後の膜の残存率に優れる親水性部材を形成し得る。これは、水垢の成分であるカルシウムやマグネシウムが酸により除去できることによる効果である。
【0015】
〔一般式(I−1)で表される構造及び一般式(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)〕
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0018】
上記一般式(I−1)及び(I−2)において、R101〜R108はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素原子数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R101〜R108は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0019】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0020】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0021】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(GCO−)におけるGとしては、水素、並びに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0022】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0023】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては好ましくは炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、より好ましくは炭素原子数1から12まで、更に好ましくは炭素原子数1から8の直鎖状、より好ましくは炭素原子数3から12までの、更に好ましくは炭素原子数3から8までの分岐状並びにより好ましくは炭素原子数5から10まで、更に好ましくは炭素原子数5から8までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0024】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0025】
親水性の観点から上記のなかでもヒドロキシメチル基が好ましい。
【0026】
101〜L102は単結合又は有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA101又はSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。
101〜L102が有機連結基を表す場合、L101〜L102は非金属原子からなる多価の連結基を表し、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。具体的には、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、及びそれらの組合せから選ばれることが好ましく、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−又は−S−又は−CO−又はNH−を含む組合せで、2価の連結基であることが好ましい。
より具体的な連結基としては下記の構造単位又はこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0027】
【化4】

【0028】
一般式(I−1)及び一般式(I−2)において、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA101又はSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。
一般式(I−1)において、L101は単結合、又は、−CH−、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。L101は−CH−、及び−CONH−を含むことがより好ましく、−CONH−(CHn1−であることが更に好ましい(n1は1〜5の整数を表し、1〜4が好ましく、2又は3がより好ましい)。
一般式(I−2)において、L102は単結合であることが好ましい。
【0029】
一般式(I−2)中、A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rは更に置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R101〜R108がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
101は、−CONH、−CONH(R)又は−CON(Rであることが好ましい。式中、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
【0030】
〜R、Rにおいて、直鎖、分岐又は環状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。
また、R〜Rにおいて、アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等、アルカリ土類金属としてしはバリウム等、オニウムとしてはアンモニウム、ヨードニウム又はスルホニウム等が好適に挙げられる。
ハロゲンイオンとしてはフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオンを挙げることでき、無機アニオンとしては硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等が、有機アニオンとしてはメタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等が好適に挙げられる。
【0031】
101としては、具体的には、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−COOH、−SONMe、−SO、−(CHCHO)H、モルホリル基等が好ましい。より好ましくは、−NHCOCH、−CONH、−CON(CH、−SO、−(CHCHO)H、である。尚、上記において、nは1〜100の整数を表すことが好ましい。
【0032】
pは1〜3の整数を表し、好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
101、R102、及びR103が水素原子であって、R105は炭化水素基であることが好ましく、1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。
【0033】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)において、x及びyは親水性ポリマー(A)における、一般式(I−1)で表される構造単位と一般式(I−2)で表される構造単位の組成比を表す。xは0<x<100、yは0<y<100である。xは1<x<90の範囲であることが好ましく、1<x<50の範囲であることが更に好ましい。yは10<y<99の範囲であることが好ましく、50<y<99の範囲であることが更に好ましい。
【0034】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)の共重合比率は、親水性基を有する一般式(I−2)の量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、一般式(I−2)の構造単位のモル比(y)と加水分解性シリル基を有する一般式(I−1)の構造単位のモル比(x)が、y/x=30/70〜99/1の範囲が好ましく、y/x=40/60〜98/2がより好ましく、y/x=50/50〜97/3が最も好ましい。y/xが30/70以上であれば親水性が不足することなく、一方、y/x=99/1以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0035】
親水性ポリマー(A)の質量平均分子量は、例えば1,000,000以下であり、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000が更に好ましく、5,000〜50,000が最も好ましい。
【0036】
以下に、一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)の具体例をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体又はブロック共重合体であることを意味する。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)を合成するための各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(I−1)及び(I−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(A)を合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。
具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3(1996年、共立出版)、高分子の合成と反応1(高分子学会編、1992年、共立出版)、新実験化学講座19(1978年、丸善)、高分子化学(I)(日本化学会編、1996年、丸善)、高分子合成化学(物質工学講座、1995年、東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0048】
親水性組成物は、親水性ポリマー(A)と、親水性ポリマー(B)とを併用する。
【0049】
〔一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)〕
【0050】
【化15】

【0051】
一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0052】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)は、上記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、かつ、ポリマー鎖の末端に上記一般式(II−1)で表される部分構造を有する。
【0053】
前記一般式(II−1)及び(II−2)において、R201〜R205は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、R201〜R205が炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、前記一般式(I−1)及び(I−2)のR101〜R108で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
201、L202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とA201又はSi原子が連結鎖なしに直接結合していることを表す。L201、L202が多価の有機連結基を表す場合、具体的な例は、前記一般式(I−1)のL101で挙げたものと同様のものを挙げることができる。
101は単結合、又は、−CH−、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが好ましい。L101は−CH−を含むことがより好ましく、−(CHn1−であることが更に好ましい(n1は1〜5の整数を表し、1〜4が好ましく、2又は3がより好ましい)。
102は単結合であることが好ましい。
201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。A201の具体的な例及び好ましい例は一般式(I−2)のA101で挙げられたものと同様のものを挙げることができる。
qは1〜3の整数を表す。好ましくは2〜3、より好ましくは3である。
203、R204、及びR205が水素原子であって、R202は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることが更に好ましい。
【0054】
201及びL202は、より好ましくは、−CHCHCHS−、−CHS−、−CONHCH(CH)CH−、−CONH−、−CO−、−CO−、−(CHn1−である。L201は−CH−を含むことがより好ましく、−(CHn1−であることが更に好ましい(n1は1〜5の整数を表し、1〜4が好ましく、2又は3がより好ましい)。
202は単結合であることが好ましい。
【0055】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)は、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter(Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
【0056】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)は、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0057】
【化16】

【0058】
上記一般式(i)及び(ii)において、R201〜R205、L201、L202、A201、qは、上記一般式(II−1)中のものと同義である。また、これらの化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーは親水性基A201を有しており、このモノマーが親水性ポリマーにおける一構造単位となる。
【0059】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)において、加水分解性シリル基を有する一般式(II−1)の構造単位のモル数に対して、一般式(II−2)の構造単位のモル数が、1000〜10倍の範囲が好ましく、500〜20倍の範囲がより好ましく、200〜30倍の範囲が最も好ましい。30倍以上であれば親水性が不足することなく、一方、200倍以下であれば、加水分解性シリル基量が十分量となり、十分な硬化が得られ、膜強度も十分なものとなる。
【0060】
一般式(II−1)及び(II−2)で表される構造を含む親水性ポリマー(B)の質量平均分子量は、例えば1,000,000以下であり、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000が更に好ましく、1,000〜200,000が特に好ましく、10,000〜50,000が最も好ましい。
【0061】
本発明に好適に用い得る親水性ポリマー(B)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。具体例中、*はポリマーへの結合位置を表す。
【0062】
【化17】

【0063】
【化18】

【0064】
【化19】

【0065】
【化20】

【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
【化23】

【0069】
【化24】

【0070】
【化25】

【0071】
【化26】

【0072】
【化27】

【0073】
【化28】

【0074】
親水性組成物においては、親水性ポリマー(A)と親水性ポリマー(B)を併用する。これにより、親水性を向上させ水垢付着性を抑制することができる。親水性ポリマー(A)/親水性ポリマー(B)の比率(質量比)は、好ましくは5/95〜95/5の範囲内であり、より好ましくは60/40〜95/5の範囲内であり、最も好ましくは80/20〜90/10の範囲内である。
【0075】
親水性ポリマー(A)及び親水性ポリマー(B)は、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0076】
他のモノマーの具体例としては、特願2008−15350号公報の段落番号〔0066〕〜〔0070〕に記載のものを挙げることができる。
【0077】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量である必要があるが、親水性層としての機能が十分であり、親水性ポリマー(A)又は親水性ポリマー(B)を添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、親水性ポリマー(A)又は親水性ポリマー(B)中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以下である。
【0078】
親水性ポリマー(A)及び親水性ポリマー(B)の共重合比の測定は、核磁気共鳴装置(NMR)や、標準物質で検量線を作成し、赤外分光光度計により測定することができる。
【0079】
本発明における親水性組成物は、親水性ポリマー(A)及び親水性ポリマー(B)をそれぞれ1種以上混合して使用する。
親水性ポリマー(A)及び親水性ポリマー(B)の総量は硬化性と親水性の観点から、親水性組成物の全固形分に対して20〜87.5質量%使用されることが好ましく、30〜87.5質量%使用されることが更に好ましい。
【0080】
親水性組成物は、親水性ポリマー(A)を含む加水分解性シリル基を有する親水ポリマーを全固形分に対して80質量%以上含有し、かつ前記一般式(I−2)に於けるA101又は前記一般式(II−2)に於けるA201が、−CONH、−CONH(R)、又はCON(R(式中、Rは、それぞれ独立に直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す)を表すことが好ましい。
【0081】
上記、親水性ポリマー(A)は、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマー(A)は、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマー(A)の粘度が0.1〜100mPa・s(5%水溶液、20℃測定)、好ましくは0.5〜70mPa・s、更に好ましくは1〜50mPa・sの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0082】
〔架橋剤〕
親水性組成物中に、親水性ポリマー(B)を含有する場合は、良好な硬化性を得るために架橋剤を含有することが好ましい。また、親水性組成物中に親水性ポリマー(A)を含有する場合は架橋剤を含有しない場合でも良好な硬化性を得ることはできるが、膜強度が非常に優れた塗膜を得るためには架橋剤を含有してもよい。
【0083】
本発明の組成物において、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物(金属アルコキシドともいう)は架橋剤として用いることができる。
【0084】
〔(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物〕
本発明で用いられる金属アルコキシドは、その構造中に加水分解して重縮合可能な官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、金属アルコキシド同士が重縮合することにより架橋構造を有する強固な架橋皮膜を形成し、更に、前記親水性ポリマーとも化学結合する。金属アルコキシドは一般式(V−1)及び一般式(V‐2)で表すことができ、式中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。R及びRがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量2000以下であることが好ましい。
【0085】
(R−Z−(OR4−m (V−1)
Al−(OR (V−2)
【0086】
以下に、一般式(V−1)及び一般式(V−2)で表される加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。ZがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、等を挙げることができる。
【0087】
ZがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。ZがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
また、中心金属がAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、トリイソプロポキシアルミネート等を挙げることができる。
【0088】
本発明に係る(C)金属アルコキシドは、単独で用いても2種以上併用してもよい。
上記のなかでも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランが更に好ましい。
【0089】
本発明の親水性部材において(C)金属アルコキシドは、親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する。好ましくは12.5〜20質量%、更に好ましくは12.5〜15質量%含有する。(C)金属アルコキシドの含有量が上記の範囲であれば耐水垢性の付与に優れる。
【0090】
(C)金属アルコキシドは、本発明の下塗り層用組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用することができる。
(C)金属アルコキシドは市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0091】
〔(D)金属触媒〕
本発明の親水性層の形成において使用できる金属触媒は、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができる。特に好ましい金属触媒は、金属錯体触媒であり、金属錯体触媒としては、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ−ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される金属錯体である。
構成金属元素の中では、Mg,Ca,Sr,Baなどの2A族元素、Al,Gaなどの3B族元素,Ti,Zrなどの4A族元素及びV,Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0092】
上記金属錯体の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0093】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基又はカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0094】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンが特に好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0095】
好ましい金属錯体の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム・アコ錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム・クロロ錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、トリス(アセチルアセトナト)バリウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、加熱乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0096】
上記した金属錯体の対塩の記載を本明細書においては省略しているが、対塩の種類は、錯体化合物としての電荷の中性を保つ水溶性塩である限り任意であり、例えば硝酸塩、ハロゲン酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの化学量論的中性が確保される塩の形が用いられる。金属錯体のシリカゾルゲル反応での挙動については、J.Sol−Gel.Sci.and Tec. 16.209(1999)に詳細な記載がある。反応メカニズムとしては以下のスキームを推定している。すなわち、塗布液中では、金属錯体は、配位構造を取って安定であり、塗布後の加熱乾燥過程に始まる脱水縮合反応では、酸触媒に似た機構で架橋を促進させるものと考えられる。いずれにしても、この金属錯体を用いたことにより塗布液経時安定性及び皮膜面質の改善と、高親水性、高耐久性の、いずれも満足させるに至った。
【0097】
また、上記の金属錯体触媒の他に、Si、Ti、Zr、Alから選択される金属アルコキシド化合物の加水分解、重縮合を促進し、親水性ポリマーとの結合を生起することができるものを併用してもよい。このような触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素又は置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などの酸性を示す化合物、あるいは、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などの塩基性化合物が挙げられる。
上記の金属錯体触媒は、市販品として容易に入手でき、また公知の合成方法、例えば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0098】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性層は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、親水性層中に安定に分散して、親水性層の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れるを形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性層の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0099】
〔(E)界面活性剤〕
本発明においては、親水性組成物及び下塗り層用組成物の被膜面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
【0100】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0101】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0102】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0103】
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、本発明の親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%の範囲で使用される。また、界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0104】
本発明に用いる界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤が好ましい。
好ましい界面活性剤の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0105】
【化29】

【0106】
〔抗菌剤〕
本発明においては、本発明の親水性組成物を所望の支持体上に塗設し、親水性層を形成し、親水性部材とすることができる。
本発明の親水性部材に抗菌性、防カビ性、防藻性を付与するために、組成物に抗菌剤を含有させることができる。親水性層の形成において、親水性、水溶性抗菌剤を含有させることが好ましい。親水性、水溶性抗菌剤を含有させることにより、表面親水性を損なうことなく抗菌性、防カビ性、防藻性に優れた表面親水性部材が得られる。
抗菌剤としては、親水性部材の親水性を低下させない化合物を添加することが好ましく、そのような抗菌剤としては、無機系抗菌剤又は、水溶性の有機系抗菌剤が挙げられる。抗菌剤としては、黄色ブドウ球菌や大腸菌に代表される細菌類や、かび,酵母などの真菌類など、身の回りに存在する菌類に対して殺菌効果を発揮するものが用いられる。
【0107】
有機系の抗菌剤としては、フェノールエーテル誘導体,イミダゾール誘導体,スルホン誘導体,N・ハロアルキルチオ化合物,アニリド誘導体,ピロール誘導体,第4アンモニウム塩、ピリジン系、トリアジン系、ベンゾイソチアゾリン系、イソチアゾリン系などが挙げられる。
例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−フルオルジクロロメチルチオ−フタルイミド、2,3,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−トリクロロメチルチオ−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシイミド、8−キノリン酸銅、ビス(トリブチル錫)オキシド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール〈以後、TBZと表示〉、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル〈以後、BCMと表示〉、10,10’−オキシビスフェノキシアルシン〈以後、OBPAと表示〉、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォン)ピリジン、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛〈以後、ZPTと表示〉、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド〈ジクロルフルアニド〉、ポリ−(ヘキサメチレンビグアニド)ハイドロクロライド、ジチオ−2−2’−ビス(ベンズメチルアミド)、2−メチル−4,5−トリメチレン−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、ヘキサヒドロ−1,3−トリス−(2−ヒドロキシエチル)−S−トリアジン、p−クロロ−m−キシレノール、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
これら有機系の抗菌剤は、親水性、耐水性、昇華性、安全性等を考慮し、適宜選択して使用することができる。有機系抗菌剤中では、親水性、抗菌効果、コストの点から2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。
【0108】
無機系の抗菌剤としては、殺菌作用の高い順に、水銀,銀,銅,亜鉛,鉄,鉛,ビスマスなどが挙げられる。例えば、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の金属や金属イオンをケイ酸塩系担体、リン酸塩系担体、酸化物、ガラスやチタン酸カリウム、アミノ酸等に担持させたものが挙げられる。たとえばゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩−四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0109】
天然系抗菌剤としては、カニやエビの甲殻等に含まれるキチンを加水分解して得られる塩基性多糖類のキトサンがある。
本発明には、アミノ酸の両側に金属を複合させたアミノメタルから成る日鉱の「商品名ホロンキラービースセラ」が好ましい。
これらは蒸散性ではなく、また、親水性層のポリマーや架橋剤成分と相互作用しやすく、安定に分子分散あるいは固体分散可能であり、親水性層表面に抗菌剤が効果的に露出しやすく、かつ、水がかかっても溶出することなく、効果を長期間持続させることができ、人体に影響を及ぼすこともない。また、親水性層や塗布液に対して安定に分散することができ、親水性層や塗布液の劣化もおこらない。
上記抗菌剤の中では、抗菌効果が大きいことから、銀系無機抗菌剤と水溶性有機抗菌剤が最も好ましい。特にケイ酸塩系担体であるゼオライトに銀を担持させた銀ゼオライトやシリカゲルに銀を担持させた抗菌剤や2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、TPN、TBZ、BCM、OBPA、ZPTが好ましい。特に好ましい市販の銀ゼオライト系抗菌剤としては、品川燃料の「ゼオミック」や富士シリシア化学の「シルウェル」や日本電子材料の「バクテノン」等がある。その他、銀を無機イオン交換体セラミックスに担持させた東亜合成の「ノバロン」や触媒化成工業の「アトミーボール」やトリアジン系抗菌剤の「サンアイバックP」も好ましい。
【0110】
抗菌剤の含有量は、一般的には0.001〜10質量%であるが、0.005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.02〜1.5質量%が特に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。含有量が0.001質量%以上であれば効果的な抗菌効果を得ることができる。また、含有量が10質量%以下であれば親水性も低下せず、かつ経時性も悪化せず、防汚性、防曇性に悪影響を及ぼさない。
【0111】
〔無機微粒子〕
本発明の親水性組成物には、親水性膜の硬化皮膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム又はこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、親水性膜中に安定に分散して、膜強度及び親水性を十分に保持でき好ましい。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性組成物の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
【0112】
〔紫外線吸収剤〕
本発明においては、親水性膜の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0113】
〔酸化防止剤〕
本発明の組成物及び親水性膜の安定性向上のため、親水性組成物に酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0114】
〔溶剤〕
本発明の親水性部材の親水性層形成時に、基板に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、親水性層形成用組成物に適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は親水性膜形成時の親水性層形成用組成物全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0115】
〔高分子化合物〕
本発明の親水性組成物には、親水性膜の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0116】
この他にも、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基板への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
【0117】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、例えば上述の親水性ポリマー及び金属アルコキシドに加え、必要に応じて添加される各種成分をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
また、親水性組成物中の親水性ポリマーの濃度は、支持体への塗布性の観点から、親水性組成物に対する親水性ポリマーの割合が0.001〜2.0質量%であることが好ましく、0.01〜1.0質量%であることがより好ましい。親水性ポリマーの濃度がこの範囲であれば、支持体に親水性層を形成する際に均一な厚みの層が形成しやすい。
【0118】
前記親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0119】
以上述べたように、本発明の親水性組成物により親水性層を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
【0120】
〔親水性部材〕
本発明の親水性部材は基材上に、本発明の親水性組成物を塗設した親水性層を有する。以下、親水性部材について説明する。
(基材)
本発明に用いられる基材(支持体)は、特に限定されないが、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、皮革、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。特に好ましい基材は、ガラス基板又はプラスチック基板である。
ガラス基板としては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。また素板ガラスのまま、前記親水性層を塗設できるが、必要に応じ、親水性層の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、酸化法や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0121】
本発明に用いられるプラスチック基板としては、特に制限はないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、アクリル、ナイロン、フッ素樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン等のフィルム若しくはシートを挙げることができる。その中でも特にポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステフィルムが好ましい。なお、光学的には、透明性に優れている方が好ましい場合が多いが、用途によっては半透明、あるいは、印刷されたものも用いられる。プラスチック基板の厚みは、積層する相手によってさまざまである。例えば曲面の多い部分では、薄いものが好まれ、6〜50μm程度のものが用いられる。また平面に用いられ、あるいは、強度を要求されるところでは50〜400μmが用いられる。
【0122】
基材と親水性層の密着性を向上させる目的で、所望により基材の片面又は両面に、酸化や粗面化法等により表面親水化処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。粗面化法としては、サンドブラスト、ブラシ研磨等により機械的に粗面化することもできる。
【0123】
(下塗層)
本発明においては、基材と親水性層との間に、一層又は二層以上の下塗層を設けることができる。
下塗層は、Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させたものであることが好ましい。
Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物と不揮発性触媒とを少なくとも有する組成物を、加水分解、重縮合させた下塗層は、架橋構造を有し、このようなアルコキシド化合物の加水分解、縮重合により形成された架橋構造を、本発明では、適宜、ゾルゲル架橋構造と称する。
【0124】
Si、Ti、Zr及びAlから選択される元素を含むアルコキシド化合物としては前述のものが挙げられる。これらのなかでも、反応性、入手の容易性からSiのアルコキシドが好ましく、具体的には、シランカップリング剤に用いる化合物を好適に使用することができる。
【0125】
下塗層で用いられる不揮発性の触媒とは、沸点が20℃未満のもの以外のものであり、換言すれば、沸点が20℃以上のものや、そもそも沸点がないもの(熱分解など、相変化を起こさないものを含む)等である。
本発明に用いられる不揮発性の触媒としては、特に限定されないが、金属錯体(金属のキレート化合物とも称する)やシランカップリング剤が挙げられる。その他、当業界においては触媒として酸又はアルカリが好適に用いられるが、これらも沸点が20℃以上のものであれば特に制限なく適用可能である。たとえば沸点が−83℃の塩酸などは除かれるが、沸点が121℃の硝酸や分解温度が213℃のリン酸などは本発明において不揮発性の触媒として適用される。
金属錯体としては、前述のものが挙げられる。
【0126】
不揮発性の触媒として用いられるシランカップリング剤としては、特に限定されないが、酸性又はアルカリ性を示す官能基を有するものが挙げられ、更に詳細には、ペルオキソ酸、カルボン酸、カルボヒドラゾン酸、カルボキシミド酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、セレノン酸、セレニン酸、セレネン酸、テルロン酸、及び上記のアルカリ金属塩などといった酸性を示す官能基、或いは、アミノ基などといった塩基性を示す官能基を有するシランカップリング剤が挙げられる。
【0127】
下塗層は、基材上に上記アルコキシド化合物と不揮発性の触媒とを少なくとも有する組成物を、基材上に、塗布し、加熱、乾燥することにより、該組成物が加水分解、重縮合させて、形成することができる。下塗層形成のための加熱温度と加熱時間は、ゾル液中の溶媒が除去され、強固な皮膜が形成できる温度と時間であれば特に制限はないが、製造適性などの点から加熱温度は150℃以下であることが好ましく、加熱時間は1時間以内が好ましい。
下塗層は、公知の塗布方法で作成することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0128】
このようにして得られた下塗層は、その中に不揮発性の触媒が活性を失わずに含有されて存在し、特にその表面にも存在することにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性が極めて高いものとなる。
【0129】
また、下塗層は、プラズマエッチング又は金属粒子を混入させて微細凹凸を設けることにより、該下塗層と親水性層の界面における密着性を更に高いものとすることができる。
【0130】
下塗層の素材としては、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることもできる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0131】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、かつ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレン又はプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレン又はポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性層の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗層中における総量としては、0.01〜20g/mが好ましく、0.1〜10g/mがより好ましい。
【0132】
(親水性部材使用時の層構成)
本発明の親水性部材は、その目的、形態、使用場所に応じ、適宜別の層を付加して使用することができる。以下に必要に応じ付加される層構成について述べる。
1)接着層
本発明の親水性部材を、別の基材上に貼り付けて使用する場合、基材の裏面に、接着層として、感圧接着剤である粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ビニルエーテル系、スチレン系粘着剤などの一般的に粘着シートに用いられるものが使用できる。
光学的に透明なものが必要な場合は光学用途向けの粘着剤が選ばれる。着色、半透明、マット調などの模様が必要な場合は、基材における模様付けのほかに粘着剤に、染料、有機や無機の微粒子を添加して効果を出すことも行うことができる。
粘着付与剤が必要な場合、樹脂、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、スチレン系樹脂及びこれらの水素添加物などの接着付与樹脂を1種類又は混合して用いることができる。
本発明で用いられる粘着剤の粘着力は一般に言われる強粘着であり、200g/25mm以上、好ましくは300g/25mm以上、更に好ましくは400g/25mm以上である。なお、ここでいう粘着力はJIS Z 0237 に準拠し、180度剥離試験によって測定した値である。
【0133】
2)離型層
本発明の親水性部材が前記の接着層を有する場合には、更に離型層を付加することができる。離型層には、離型性をもたせるために、離型剤を含有させることが好ましい。離型剤しては、一般的に、ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン系離型剤、フッ素系化合物、ポリビニルアルコールの長鎖アルキル変性物、ポリエチレンイミンの長鎖アルキル変性物等が用いることができる。また、ホットメルト型離型剤、ラジカル重合、カチオン重合、重縮合反応等により離型性モノマーを硬化させるモノマー型離型剤などの各種の離型剤や、この他、アクリル−シリコーン系共重合樹脂、アクリル−フッ素系共重合樹脂、及びウレタン−シリコーン−フッ素系共重合樹脂などの共重合系樹脂、並びに、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンド、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂ブレンドが用いられる。また、フッ素原子及び/又はケイ素原子のいずれかの原子と、活性エネルギー線重合性基含有化合物を含む硬化性組成物を、硬化して得られるハードコート離型層としてもよい。
【0134】
3)その他の層
親水性層の上に、保護層を設けてもよい。保護層は、ハンドリング時や輸送時、保管時などの親水性表面の傷付きや、汚れ物質の付着による親水性の低下を防止する機能を有する。保護層としては、上記離型層や、下塗層に用いた親水性ポリマー層を使用することができる。保護層は、親水性部材を適切な基材へ貼り付けた後には剥がされる。
【0135】
(表面自由エネルギー)
親水性層表面の親水性度は、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、更には5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、更に好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水性層が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0136】
本発明の親水性部材は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。親水性膜の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmが更に好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得られ好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
親水性層の乾燥塗布量を好ましくは0.01g/m〜100g/m、より好ましくは0.02g/m〜80g/m、特に好ましくは0.05g/m〜50g/mとすることで、上記の膜厚を得ることができる。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性膜を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0137】
本発明の親水性部材は、水道水を親水性基材全面に噴霧し、2時間の乾燥を7サイクル繰返した後の水垢付着がほとんどない。これは本願の親水性組成物における金属アルコキシド化合物の含有量を12.5〜22.5質量%とすることで親水性組成物に適度な架橋度が付与され水が保持されにくくなり水垢が付着しにくくなるためである。
また、本発明は、本発明の親水性部材に付着した水垢を、pH2〜4の酸洗浄液により除去する方法にも関する。本発明の親水性部材は、pH2〜4の酸洗浄液により水垢除去が可能である。これは、水垢の成分であるカルシウムやマグネシウムが酸により除去されるためである。本発明の親水性部材は水垢を除去し得る酸洗浄液による水垢除去に供しても、親水性層の残存率が高い。これは本願の発明の構成による効果である。
【0138】
(酸洗浄液)
本発明の親水性組成物の表面に付着した水垢は有機酸の洗浄液により容易に除去することが可能である。
酸性の洗浄液とは有機酸又は無機酸を含む洗浄液であり、有機酸を含む洗浄液であることが好ましい。pHは2〜4の洗浄液であることが好ましく、pH3〜4の洗浄液であることがより好ましい。
有機酸とてしは、例えば、リンゴ、グリコール、スルファミン、酒石酸、グルコン酸、アスコルビン酸、乳酸、マロン酸、又はクエン酸等のカルシウムとキレート反応する化合物であれば何れも使用できるが、コスト、人体、地球環境、水周り用機器材料への影響度の観点から酒石酸、又はクエン酸が好ましい。
酸として酒石酸、又はクエン酸を用いる場合、洗浄液における酒石酸、又はクエン酸の使用濃度は約0.5g/L〜数10/Lの水溶液であることが好ましく、該濃度とすることで、酸洗浄液のpHを2〜5とすることができる。酒石酸、又はクエン酸は、このpH領域で、水垢中の無機カルシウムや脂肪酸カルシウムなどのカルシウム成分とキレート反応し、これを分解する。また酒石酸やクエン酸は、食品添加物としても使用されており、人体には無害の薬品であって、地球環境にも優しい。
酸洗浄液には、油脂などの有機物汚れを化学的に除去するため、界面活性剤を添加することが好ましく、例えばアルキルエーテル硫酸エルテル類、脂肪酸アルカノールアミド類、アルキルアミンオキシド類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸ナトリウム等の台所用、浴室用等の潜在類として市販されている洗剤の成分として使用可能な界面活性剤を挙げることができる。
【0139】
本発明の親水性部材は、公知の塗布方法で作製することが可能であり、特に限定がなく、例えばスプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、フィルムアプリケーター法、スクリーン印刷法、バーコーター法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が適用できる。
【0140】
本発明の親水性部材が適用可能なものとしては、例えば、防曇効果を期待する場合には透明なものであり、透明なガラス基材又は透明なプラスチック基材、レンズ、プリズム、鏡等である。好ましくはガラス基材である。
ガラスとしては、ソーダガラス、鉛ガラス、硼珪酸ガラスなどの何れのガラスを使用しても良い。また目的に応じ、フロート板ガラス、型板ガラス、スリ板ガラス、網入ガラス、線入ガラス、強化ガラス、合わせガラス、複層ガラス、真空ガラス、防犯ガラス、高断熱Low−E複層ガラスを使用することができる。
防曇効果を有する部材が適用可能な用途としては、車両用バックミラー、浴室用鏡、浴室用防曇ミラー、洗面所用鏡、歯科用鏡、道路鏡のような鏡;眼鏡レンズ、光学レンズ、写真機レンズ、内視鏡レンズ、照明用レンズ、半導体用レンズ、複写機用レンズのようなレンズ;プリズム;建物や監視塔の窓ガラス;その他建材用ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の窓ガラス;自動車、鉄道車両、航空機、船舶、潜水艇、雪上車、スノーモービル、オートバイ、ロープウエイのゴンドラ、遊園地のゴンドラ、種々の乗物の風防ガラス;防護用ゴーグル、スポーツ用ゴーグル、防護用マスクのシールド、スポーツ用マスクのシールド、ヘルメットのシールド、冷凍食品陳列ケースのガラス;計測機器のカバーガラス、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。上記の中でも特に好ましい用途は鏡であり、最も好ましくは浴室用防曇ミラーである。
【0141】
また、本発明の表面親水性部材に防汚効果を期待する場合には、その基材は、例えば、ガラス、プラスチック以外にも、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、紙、それらの組合せ、それらの積層体が、いずれも好適に利用できる。
防汚効果を有する部材が適用可能な用途としては、建材、外壁や屋根のような建物外装、建物内装、窓枠、窓ガラス、構造部材、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、自転車、オートバイのような乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用防音壁、鉄道用防音壁、橋梁、ガードレールの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、照明カバー、台所用品、食器、食器洗浄器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、及び上記物品表面に貼付させるためのフィルムを含む。
看板、交通標識、防音壁、ビニールハウス、碍子、乗物用カバー、テント材、反射板、雨戸、網戸、太陽電池用カバー、太陽熱温水器等の集熱器用カバー、街灯、舗道、屋外照明、人工滝・人工噴水用石材・タイル、橋、温室、外壁材、壁間や硝子間のシーラー、ガードレール、ベランダ、自動販売機、エアコン室外機、屋外ベンチ、各種表示装置、シャッター、料金所、料金ボックス、屋根樋、車両用ランプ保護カバー、防塵カバー及び塗装、機械装置や物品の塗装、広告塔の外装及び塗装、構造部材、住宅設備、便器、浴槽、洗面台、照明器具、台所用品、食器、食器乾燥器、流し、調理レンジ、キッチンフード、換気扇、窓レール、窓枠、トンネル内壁、トンネル内照明、窓サッシ、熱交換器用放熱フィン、舗道、浴室用洗面所用鏡、ビニールハウス天井、洗面化粧台、自動車ボディ、及びそれら物品に貼着可能なフィルム、ワッペン等を含む。
雪国用屋根材、アンテナ、送電線等への適用も可能であり、その際は、着雪防止性にも優れた特性が得られる。
【実施例】
【0142】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0143】
[合成例]
〔アルコキシ基含有モノマーAの精製〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーA20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を13g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマーAを取り出した。
〔アルコキシ基含有モノマーBの精製〕
200mlの3つ口フラスコに、アルコキシシリル基含有モノマーB20.0gと酢酸エチル80.0gを添加し15分間攪拌溶解する。溶解を目視で確認後、吸着剤としてワコーゲルC−200(シリカゲル)を7g添加し30分間攪拌した。ヌッチェ7cmにセライト3gをプレコートし減圧濾過した。濾過液をエバポレーターで濃縮し精製アルコキシ基含有モノマーBを取り出した。
【0144】
【化30】

【0145】
〔化合物Aの合成〕
200ml三口フラスコにアクリルアミド25g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(アルコキシ基含有モノマーA)3.5g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて65℃窒素気流下、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25g添加し、反応を開始した。6時間攪拌した後、室温まで戻し、メタノール1.5L中に投入したところ固体が析出した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、化合物Aを得た。
【0146】
【化31】

【0147】
〔化合物Bの合成〕
200ml4つ口フラスコにアクリルアミド20g、N−(3−(トリエトキシシリル)プロピル)アクリルアミド(N−(3−(triethoxysilyl)propyl)acrylamide)(アルコキシ基含有モノマーB)18g、1−メトキシ2プロパノールを入れ、60℃窒素気流下、1,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル0.15gを加えた4時間攪拌後、70℃に昇温し4時間攪拌する。40℃まで冷却後n−ヘキサン2L中に投入し、析出のあった固体を濾取し、メタノールで洗浄後化合物Bを得た。
乾燥後の重量は30gであった。
【0148】
【化32】

【0149】
〔実施例1〕
ガラス基板(10cm×10cm、厚み3mm)をクレンザーにより研磨し、表面を洗浄した。洗浄後、アルカリ性洗浄液(横浜油脂、セミクリーンA 5%水溶液)で表面を磨き、水洗を行った。
下記組成の親水性塗布液(1)を調液した。親水性塗布液の全固形分に対するテトラメトキシシランの含有量は12.5質量%であった。
下記組成の親水性塗布液(1)を♯3バーにてバー塗布し、180℃、300分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/mの第1層を形成し、親水性部材1を得た。
【0150】
<親水性塗布液(1)(ポリマー濃度 6%)>
・下記ゾルゲル調製液(1) 298.74g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 7.33g
・蒸留水 193.93g
【0151】
<ゾルゲル調製液(1)>
エチルアルコール6.64g、アセチルアセトン0.3g、オルトチタン酸テトラエチル0.34g、蒸留水193.98g中に、化合物Aを22.94g、化合物Bを6.41g、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)3.67gを加え混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0152】
【化33】

【0153】
[評価]
上記親水性部材について、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0154】
〔接触角〕
協和界面科学(株)製 接触角計DropMaster500を用いて超純水を用いて基板上に形成した親水膜表面の水滴接触角を求めた。
【0155】
〔密着性試験〕
試験片上にセロハンテープを3cm貼着し、20回人差し指で擦ったのちに剥がし、親水性層が剥がれるか目視で確認した。
○:剥れなし
△:部分的に剥れ有り
×:全面的に剥れ
【0156】
〔耐水垢性〕
水道水をガラス基板全面がぬれるように噴霧し、40℃の乾燥機で垂直状態で2時間乾燥させた。このサイクルを7回繰り返した後、24時間静置して目視にて耐水垢性(水垢付着性)を確認した。
○:ほとんど付着なし
×:付着あり
【0157】
〔水垢除去性〕
水垢付着性試験後のガラス基板全面が濡れるように酒石酸を含む酸洗浄液(pH=2、3、4、5)を噴霧した。噴霧後、スポンジで数回擦り蒸留水により洗浄した。洗浄後、自然乾燥させ目視で水垢の有無を確認した。pH=2、3、4、5の酸洗浄液は2M酒石酸(和光純薬工業株式会社製)水溶液100mLと2MNaOH(和光純薬工業株式会社製)水溶液をそれぞれ10mL、70mL、160mL、195mL混合し、蒸留水で1Lに希釈することにより調製した。
○:除去
△:ほとんど除去
×:除去できず
【0158】
〔水垢除去後の膜残存率〕
上記酸洗浄液で水垢除去したガラス基板に残存している親水膜を反射IR(Thermo SCIENTIFIC社製 NICOLET6700 FT−IR)により測定した。膜残存率は化合物A、Bに特有の1600cm−1〜1700cm−1のピーク(アミドのC=O)強度の減少率を算出することにより行った。
○:70%以上残存
△:50%〜70%
×:50%未満
【0159】
〔実施例2〜4、比較例1〜9〕
実施例1における化合物A、化合物B、及びテトラメトキシシランの使用量を表1に記載の量に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、親水性部材2〜9を得た。
実施例1〜4及び比較例1〜9の親水性組成物の表面にpH=5の酸洗浄液をガラス基板全面が濡れるように噴霧して水垢除去性を確認した。
【0160】
【表1】

【0161】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I−1)で表される構造単位と、下記一般式(I−2)で表される構造単位とを有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(B)下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物とを含有し、(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物を親水性組成物の全固形分に対して、12.5〜22.5質量%含有する親水性組成物。
【化1】

(一般式(I−1)及び(I−2)中、R101〜R108はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。pは1〜3の整数を表し、L101及びL102は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。x及びyは組成比を表し、xは0<x<100、yは0<y<100となる数を表す。A101は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。)
【化2】

(一般式(II−1)及び(II−2)中、R201〜R205はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表す。qは1〜3の整数を表し、L201及びL202は、それぞれ独立に単結合又は多価の有機連結基を表す。A201は−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(R)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又はPO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、Rは、直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rはハロゲンイオン、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。)
【請求項2】
前記(C)Si、Ti、Zr、Alから選択される元素を含むアルコキシド化合物が、下記一般式(V−1)又は一般式(V−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の親水性組成物。
(R20−Z−(OR214−m (V−1)
Al−(OR22 (V−2)
(R20は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21及びR22はアルキル基又はアリール基を表し、ZはSi、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。)
【請求項3】
前記(A)下記一般式(I−1)で表される構造単位と、下記一般式(I−2)で表される構造単位とを有する親水性ポリマーの少なくとも一つと、前記(B)下記一般式(II−2)で表される構造単位を有し、且つ、ポリマー鎖の末端に下記一般式(II−1)で表される部分構造を有する親水性ポリマーの少なくとも一つとの質量比(A)/(B)が、80/20〜90/10であることを特徴とする請求項1又は2に記載の親水性組成物。
【請求項4】
更に(D)金属触媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項5】
更に(E)界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の親水性組成物。
【請求項6】
基材上に、請求項1〜5のいずれかに記載の親水性組成物を塗設した親水性層を有することを特徴とする親水性部材。
【請求項7】
前記基材がガラス基材であることを特徴とする請求項6に記載の親水性部材。
【請求項8】
請求項6〜7のいずれかに記載の親水性部材に付着した水垢を、pH2〜4の酸洗浄液により除去する方法。
【請求項9】
請求項6〜7のいずれかに記載の親水性部材を用いた浴室用防曇ミラー。

【公開番号】特開2011−144302(P2011−144302A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7542(P2010−7542)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】