説明

親油性表面層材料、及び、親油性化粧板

【課題】従来のメラミン樹脂化粧板の優れた特性を有しながら、汚れ(特に、油性成分による汚れ)が付着しても目立ちにくく、かつ、払拭作業によって容易に汚れが見えなくなる化粧板に用いることができる親油性表面層材料、及び、これを用いてなる親油性化粧板を提供する。
【解決手段】化粧板表面に用いられる親油性表面層材料であって、
前記親油性表面層材料は、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも前記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されており、
前記親油性樹脂層は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とを含有する親油性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする親油性表面層材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性表面層材料、及び、親油性化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メラミン樹脂化粧板は、表面硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐水性などに優れ、意匠性においても美しい外観を有することから、住宅、公共施設、各種事業所などにおいて、家具、扉、間仕切り材用途などに幅広く使用されている。
近年ではユーザーニーズが多様化し、単なる装飾材としてだけではなく、汚れが目立ちにくい(汚れが付着しにくい、もしくは、付着しても目立ちにくい)化粧板、あるいは、付着した汚れを容易に払拭できる化粧板など、意匠性に加えて高度の防汚性能が求められるようになってきた。
【0003】
従来、例えば、シリコーンのような低表面張力材料を使用し、化粧板表面を撥水・撥油性にして汚れをはじくことにより、汚れの付着を抑えたり、払拭性を向上させたりすることが行われてきた(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、化学的な手法のみで化粧板表面を撥水・撥油性にするには理論的な限度があり、汚れ(特に、表面張力の低い油性成分)の付着を完全に防ぐことも困難である。
上記のような手法では、化粧板表面に汚れが付着した場合、化粧板表面に対する汚れ付着部分の接触角が大きくなり、その部分に入射した光が乱反射し、付着部分が白く見えるようになる。このため、表面が平滑な鏡面仕上げタイプの化粧板(特に濃色柄)では有効ではなく、通常のメラミン樹脂化粧板と比較しても、かえって汚れが目立ちやすくなる。
また、付着した汚れを払拭しても、撥水・撥油性が不十分で、容易に全て払拭することはできないため、化粧板表面に汚れが残る。この汚れは、払拭作業によって小さく分裂しているが、可視光の波長よりは十分に大きいサイズであり、かつ、はじかれて接触角が大きくなっているため、入射光が乱反射して、払拭後も目立ちやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3610454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のメラミン樹脂化粧板の優れた特性を有しながら、汚れ(特に、油性成分による汚れ)が付着しても目立ちにくく、かつ、払拭作業によって容易に汚れが見えなくなる化粧板に用いることができる親油性表面層材料、及び、これを用いてなる親油性化粧板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[5]により達成される。
[1]化粧板表面に用いられる親油性表面層材料であって、
上記親油性表面層材料は、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも上記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されており、
上記親油性樹脂層は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とを含有する親油性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする親油性表面層材料。
[2]上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂に対して、油変性アルキド樹脂0.1〜10重量%を含有するものである、上記[1]に記載の親油性表面層材料。
[3]上記親油性樹脂組成物は、界面活性剤を含有するものである、上記[1]又は[2
]に記載の親油性表面層材料。
[4]上記親油性樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物を含有するものである、上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の親油性表面層材料。
[5]上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の親油性表面層材料を用いてなる親油性化粧板であって、
上記親油性表面層材料の第一の面側を最表面としたものであることを特徴とする親油性化粧板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のメラミン樹脂化粧板の優れた特性を有しながら、汚れ(特に、油性成分による汚れ)が付着しても目立ちにくく、かつ、払拭作業によって容易に汚れが見えなくなる化粧板に用いることができる親油性表面層材料、及び、これを用いてなる親油性化粧板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の親油性表面層材料、及び、親油性化粧板について説明する。
本発明の親油性表面層材料は、化粧板表面に用いられる親油性表面層材料であって、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも上記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されており、上記親油性樹脂層は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とを含有する親油性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。
また、本発明の親油性化粧板は、上記本発明の親油性表面層材料を用いてなる化粧板であって、上記親油性表面層材料の第一の面側を最表面としたものであることを特徴とする。
【0009】
まず、本発明の親油性表面層材料において、親油性樹脂層の形成に用いられる親油性樹脂組成物について説明する。
上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とを含有する。
【0010】
ここで用いられるメラミン樹脂としては、メラミン(M)に対するホルムアルデヒド(F)の反応モル比(F/M比)を1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0として反応させて得られたものを好適に用いることができる。
【0011】
ここで用いられる油変性アルキド樹脂において、アルキド樹脂とは、アルコールと酸とを反応させて得られるポリエステル樹脂のことであり、油変性アルキド樹脂とは、油成分で変性されたポリエステル樹脂である。
アルキド樹脂の変性に用いられる油成分とは、具体的には、脂肪酸や油脂(グリセリンに脂肪酸がエステル結合したもので、通常はトリグリセライドの形態をとるもの)などが挙げられる。
【0012】
油変性アルキド樹脂は、大別して脂肪酸法とモノグリセライド法の2つの方法により合成することができる。
脂肪酸法は、脂肪酸、多塩基酸、多価アルコールを反応させて、脂肪酸で変性させたポリエステル樹脂を合成する方法である。一方、モノグリセライド法は、油脂と多価アルコールとをエステル交換反応させてグリセライド化合物をつくり、さらに多塩基酸あるいは必要に応じ、多価アルコールを加えて反応させエステル化し、油脂で変性させたポリエステル樹脂を合成する方法である。
【0013】
油変性アルキド樹脂の合成に用いられる脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、マルガリン酸(ヘプ
タデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸、エレオステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、アラキジン酸(イコサン酸)、イコサジエン酸、イコサトリエン酸、アラキドン酸(イコサテトラエン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、ネルボン酸、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸などが挙げられる。
油変性アルキド樹脂の合成に用いられる油脂としては、例えば、サラダ油、コーン油、大豆油、ゴマ油、菜種油、ベニバナ油、椿油、パーム油、ヤシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、魚油、ヒマシ油、パーム油、ラード、牛脂などが挙げられる。
【0014】
油変性アルキド樹脂の合成に用いられる多塩基酸としては、例えば、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、イソフタル酸、無水トリメリト酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物などのディールズ−アルダー反応による多塩基酸などが挙げられる。
【0015】
油変性アルキド樹脂の合成に用いられる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ペンタエリトリット、ジペンタエリトリット、マンニット、ソルビットなどが挙げられる。
【0016】
また、上記のようにして得られる油変性アルキド樹脂は、極性溶媒への溶解性を付与することを目的として、必要に応じて極性の高い官能基を導入したものでも良いし、所望の物理的・化学的特性を付与することを目的として、必要に応じて他の変性物質、例えば、ロジン、フェノール、エポキシなどを導入したものでも良い。
本発明に用いられる油変性アルキド樹脂は、上記のようにして合成された市販品を用いることもできる。
【0017】
本発明に用いられる油変性アルキド樹脂は、変性に用いられる油のヨウ素価が100〜130である半乾性油、もしくは、ヨウ素価が100以下である不乾性油であることが好ましい。これにより、経時による油変性アルキド樹脂の化学的な性質変化が少なくなり、油変性アルキド樹脂や親油性表面層材料の保存安定性を高めることができる。
また、油変性アルキド樹脂の油長(樹脂の中に含まれる脂肪酸もしくは油脂の量)が45〜58重量%である中油タイプ、もしくは、油長が45重量%以下である短油タイプであることが好ましい。これにより、化粧板表面の光沢性や耐変色性、硬度を高めることができる。
【0018】
上記メラミン樹脂と、上記油変性アルキド樹脂とを含有する親油性樹脂組成物を用いて、本発明の親油性表面層材料に親油性樹脂層を形成することができ、本発明の親油性表面層材料を用いた化粧板表面を親油性とすることができる。
これにより、メラミン樹脂の優れた表面硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐水性などの優れた特性を有しながら、防汚性(特に、油性成分による汚れが付着しても目立ちにくく、かつ、払拭作業によって容易に汚れが見えなくなる)を付与することができる。
【0019】
上記親油性樹脂組成物としては、上記メラミン樹脂に対して、上記油変性アルキド樹脂0.1〜10重量%を含有するものであることが好ましい。さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
メラミン樹脂に対する油変性アルキド樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、優れた防汚性を付与することができる。また、上記上限値以下とすることにより、メラミン樹脂の優れた物性を維持し、かつ、白化や光沢性の低下のない外観の良好な化粧板を得ることができる。
【0020】
上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とともに、界面活性剤を含有することができる。
これにより、化粧板の製造プロセスにおいて、油変性アルキド樹脂の凝集を防止し、分散性を向上させることができる。製造プロセスにおける油変性アルキド樹脂の分散性を向上させることによって、本発明の親油性化粧板の外観を向上させ、化粧板表面の親油性の均一性を高めることができる。
【0021】
本発明において親油性樹脂組成物は、溶媒などを添加したワニスの形態で用いられるが、ここで使用されるメラミン樹脂は極性が高く、また、ワニスの溶媒としては通常、極性の高い水が使用される。極性の低い油変性アルキド樹脂を用いる場合、上記のように極性の高いワニス組成物中で、油変性アルキド樹脂の凝集を防ぎ、均一かつ安定に分散させるには、界面活性剤を添加することが効果的である。また、上記と同様の理由で、親油性樹脂組成物を含むワニスを塗布して親油性表面層材料を得るプロセス、これを用いて親油性化粧板を加熱加圧成形するプロセスにおいても、界面活性剤を含むことは、油変性アルキド樹脂の凝集を防ぐのに効果的である。
【0022】
本発明において用いられる界面活性剤としては、上記のように、親油性表面層材料及び親油性化粧板の製造プロセスにおいては、極性の高いメラミン樹脂や水を使用するため、極性の高い界面活性剤であることが好ましい。
極性の高い界面活性剤としては、例えば、HLB(Hydrophile−Lipophile Balance/親水親油バランス)が7以上、好ましくは10以上である非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。
【0023】
上記親油性樹脂組成物が、界面活性剤を含有する場合、この成分の含有量としては、上記メラミン樹脂に対して、0.01〜10重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
これにより、上記作用を効果的に発現させることができる。
【0024】
また、上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とともに、エポキシ基含有化合物を含有することができる。
これにより、親油性樹脂組成物中のメラミン樹脂と油変性アルキド樹脂との化学的結合を進めることができるので、本発明の親油性化粧板において、油変性アルキド樹脂がブリードアウトするのを防止することができ、親油性化粧板表面の親油性の耐久性を高めることができる。
メラミン樹脂と油変性アルキド樹脂は、加熱により反応して化学結合を生成するが、比較的高温かつ長時間の加熱が必要となる。メラミン樹脂と油変性アルキド樹脂の反応が十分に進行しない場合、本発明の親油性表面層材料を用いて作製した親油性化粧板には、未反応の油変性アルキド樹脂が残ることとなる。未反応の油変性アルキド樹脂が残存した場合、経時でブリードアウトして、親油性化粧板表面の親油性が低下し、防汚性が低下する可能性が考えられる。
【0025】
本発明において用いられるエポキシ基含有化合物としては、上記のように、親油性表面層材料及び親油性化粧板の製造プロセスにおいては、極性の高いメラミン樹脂や水を使用するため、極性の高いエポキシ基含有化合物であることが好ましい。
極性の高いエポキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール系、グリセリン系、ソルビトール系などの水溶性エポキシ樹脂や、エポキシ系シランカップリング剤(溶媒が水の場合)などを挙げることができる。
【0026】
上記親油性樹脂組成物が、エポキシ基含有化合物を含有する場合、この成分の含有量としては、上記メラミン樹脂に対して、0.01〜10重量%とすることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜5重量%である。
これにより、上記作用を効果的に発現させることができる。
【0027】
また、上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とともに、界面活性剤と、エポキシ基含有化合物とを併せて用いることができる。
これにより、親油性化粧板の外観を向上させ、表面の親油性の均一性及び耐久性を高めることができる。
界面活性剤と、エポキシ基含有化合物とを併せて用いる場合、その含有量としては、それぞれ、メラミン樹脂に対して、界面活性剤0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%、エポキシ基含有化合物0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%とすることができる。これにより、上記作用を効果的に発現させることができる。
【0028】
上記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂、油変性アルキド樹脂、必要に応じて上記各成分のほか、触媒、添加剤、溶媒などを加えた親油性樹脂組成物含有ワニスの形態で用いることができる。
親油性樹脂組成物含有ワニス中の、メラミン樹脂、油変性アルキド樹脂の固形分量は、合計で例えば20〜80重量%とすることができる。
【0029】
本発明の親油性表面層材料は、親油性化粧板表面に用いられ、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも上記第一の面の最表面に、上記親油性樹脂組成物からなる親油性樹脂層が形成されているものである。
本発明の親油性表面層材料としては、例えば、下記の二つの形態を挙げることができる。
【0030】
第一の形態の親油性表面層材料は、化粧板表面に用いられ、意匠性を有する第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも上記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されているものである。
【0031】
第一の形態の親油性表面層材料に用いられる基材は、第一の面側に意匠面が形成されたシート状の基材であり、その材質としては特に限定されないが、好ましくは、パルプ、リンター、合成繊維などを用いることができ、例えば、カーボンブラックなどの顔料を含有するカーボンブラック含有化粧紙などを用いることができる。
この基材の単位面積あたりの重量としては特に限定されないが、80〜150g/mのものを好適に用いることができる。
【0032】
第一の形態の親油性表面層材料の少なくとも第一の面側の最表面に親油性樹脂層を形成する方法としては、例えば、上記シート基材を親油性樹脂組成物含有ワニスに含浸させ、これを加熱乾燥する方法、あるいは、上記シート基材をメラミン樹脂ワニスに含浸させ、加熱乾燥した後、第一の面側に親油性樹脂組成物含有ワニスを塗工し、これを加熱乾燥する方法、などにより実施することができる。
【0033】
第二の形態の親油性表面層材料は、親油性化粧板表面に用いられ、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも上記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されているものである。
【0034】
第二の形態の表面層材料に用いられる基材は、シート状の基材であり、その材質としては特に限定されないが、好ましくは、晒しパルプなどを用いることができる。
この基材の単位面積あたりの重量としては特に限定されないが、20〜60g/mのものを好適に用いることができる。
【0035】
第二の形態の親油性表面層材料の少なくとも第一の面側の最表面に親油性樹脂層を形成する方法としては、例えば、上記シート基材を親油性樹脂組成物含有ワニスに含浸させ、これを加熱乾燥する方法、あるいは、上記シート基材をメラミン樹脂ワニスに含浸させ、加熱乾燥した後、第一の面側に親油性樹脂組成物含有ワニスを塗工し、これを加熱乾燥する方法、などにより実施することができる。
【0036】
本発明において、第二の形態の親油性表面層材料を適用する場合は、これと併せて、化粧層材料を用いる。
ここで化粧層材料としては、第一の形態の親油性表面層材料に用いたのと同様の、意匠面が形成されたシート基材に、メラミン樹脂ワニスを含浸させ、これを加熱乾燥することにより製造することができる。
【0037】
なお、第一の形態の親油性表面層材料、及び、第二の形態の親油性表面層材料の製造に際してメラミン樹脂ワニスを用いる場合は、メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比(F/M比)を1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0として反応させて得られたメラミン樹脂に、必要に応じて、触媒、添加剤、溶媒などを加えて調製することができる。
また、第二の形態の親油性表面層材料を適用する際に併用する化粧層材料の製造に際しても、同様にして調製したメラミン樹脂ワニスを用いることができる。
【0038】
次に、本発明の親油性化粧板について説明する。
本発明の親油性化粧板は、以上に説明した本発明の親油性表面層材料を用いてなるものであり、上記親油性表面層材料の第一の面側を最表層としたものであることを特徴とする。
【0039】
本発明の親油性化粧板は、上記第一の形態の親油性表面層材料を用いた場合は、この親油性表面層材料の第二の面側に、芯材層材料を積層して製造することができる。
【0040】
芯材層材料は、芯材層基材に熱硬化性樹脂を含浸させてなるものである。
芯材層基材としては特に限定されないが、例えば、クラフト紙などを好適に用いることができる。
芯材層基材の単位面積あたりの重量としては特に限定されないが、例えば、150〜250g/mのものを好適に用いることができる。
この芯材層材料に用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、フェノール樹脂を好適に用いることができる。
芯材層基材への熱硬化性樹脂の含浸量としては、芯材層材料に対して、熱硬化性樹脂を例えば30〜70重量%とすることができる。
芯材層材料は、熱硬化性樹脂のほか、必要に応じて、触媒、添加剤、溶媒などを加えた熱硬化性樹脂ワニスを調製し、これを芯材層基材に含浸させ、加熱乾燥する方法などにより製造することができる。
【0041】
上記第一の形態の親油性表面層材料を用いた化粧板は、第一の形態の親油性表面層材料の第二の面側に、上記芯材層材料を一枚もしくは複数枚重ね合わせ、これを120〜15
0℃、7〜10MPaで加熱加圧成形することにより製造することができる。
【0042】
本発明の化粧板は、上記第二の形態の親油性表面層材料を用いた場合は、この親油性表面層材料に、上記化粧層材料、上記芯材層材料を積層して製造することができる。
具体的には、第二の形態の親油性表面層材料の第二の面側に、上記化粧層材料の意匠面側を重ね、さらに、上記芯材層材料を一枚もしくは複数枚重ね合わせ、これを120〜150℃、7〜10MPaで加熱加圧成形することにより製造することができる。
【0043】
以上に説明したように、本発明の親油性化粧板は、本発明の親油性表面層材料を用いたものであり、化粧板の最表面に親油性樹脂組成物からなる親油性樹脂層が形成されている。
これにより、本発明の親油性化粧板は、表面が平滑な鏡面仕上げタイプ(特に濃色柄)において、油性成分による汚れが付着しても目立ちにくく、かつ、払拭作業によって容易に汚れが見えなくなるというものである。
本発明の親油性化粧板は表面が親油性であるため、油性成分による汚れが付着した場合、油性成分による汚れは、表面にぬれ拡がることとなり(化粧板表面と油性成分による汚れとの接触角は小さくなり)、平滑に近い状態となる。そのため、汚れの付着部分へ光が入射しても乱反射が起こりにくくなり、汚れは目立ちにくくなる。また、付着した汚れを払拭した場合、化粧板表面に汚れが残ったとしても、付着した汚れははじかれることなく、平滑にぬれ拡がっているため、視認できなくなる。
本発明の親油性化粧板は、このような特性を有することにより、油汚れや指紋汚れが目立ちやすくなるキッチン廻り、テーブル、家具などに特に好適に用いることができるものである。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例、比較例で示される「%」は「重量%」を表す。
【0045】
<実施例1>
(1)親油性表面層材料
(1.1)表面層材料
表面層用のシート基材として、坪量80g/mのカーボンブラック含有化粧紙を用いた。
上記シート基材を、メラミン樹脂(F/M比1.7)の樹脂固形分に対して、触媒(MRCユニテック社製「キャタニット」)2.0%を添加したメラミン樹脂ワニス(メラミン樹脂固形分50%)に含浸させ、これを加熱乾燥して、表面層材料に対するメラミン樹脂分50%、揮発分6%の表面層材料を得た。
(1.2)親油性表面層材料
メラミン樹脂(F/M比1.7)の樹脂固形分に対して、触媒(MRCユニテック社製「キャタニット」)を2.0%、油変性アルキド樹脂(DIC社製「WATERSOL BC−3010」、有効成分59.2%、半乾性油変性、短油タイプ)を有効成分として5%添加した親油性樹脂組成物含有ワニス(メラミン樹脂固形分50%)を得た。
上記で得られた表面層材料の第一の面側に、スプレーコート法で上記親油性樹脂組成物含有ワニスを塗布し、これを加熱乾燥して、固形分量で10g/mの親油性樹脂層が形成された親油性表面層材料を得た。
【0046】
(2)芯材層材料
芯材層基材として、坪量190g/mの未晒しクラフト紙を用いた。
上記基材を、フェノール(P)とホルムアルデヒド(F)とを反応モル比(F/P比)=1.3として反応させて得られたレゾール型フェノール樹脂ワニス(フェノール樹脂固
形分50%)に含浸させ、これを加熱乾燥し、芯材層材料に対するフェノール樹脂分35%、揮発分6%の芯材層材料を得た。
【0047】
(3)親油性化粧板
上記(1)で得られた親油性表面層材料の第二の面側に、上記(2)で得られた芯材層材料5枚を重ね合わせ、さらに、外側に鏡面仕上げのプレスプレートを配して、圧力8MPa、化粧板最高温度140℃となるようにプレス装置で加熱加圧成形して、厚みが1.2mmの親油性化粧板を得た。
【0048】
<実施例2>
実施例1の(1.2)において、さらに、メラミン樹脂固形分に対してエポキシ樹脂(阪本薬品工業社製「SR−2EG」、有効成分100%、エチレングリコール系エポキシ樹脂、水溶性)を2%添加して親油性樹脂組成物含有ワニスを得た以外は、実施例1と同様にして親油性表面層材料及び親油性化粧板を得た。
【0049】
<実施例3>
実施例1の(1.2)において、メラミン樹脂(F/M比1.7)の樹脂固形分に対して、触媒(MRCユニテック社製「キャタニット」)を2.0%、油変性アルキド樹脂(DIC社製「BECKOSOL 1308」、有効成分50.0%、不乾性油変性、短油タイプ)を有効成分として0.5%添加し、さらに、界面活性剤(日本エマルジョン社製「EMALEX HC−80」、非イオン性界面活性剤、HLB=14.6、水溶性)を0.1%添加して親油性樹脂組成物含有ワニス(メラミン樹脂固形分50%)を得た以外は、実施例1と同様にして親油性表面層材料及び親油性化粧板を得た。
【0050】
<実施例4>
実施例1の(1.2)において、メラミン樹脂(F/M比1.7)の樹脂固形分に対して、触媒(MRCユニテック社製「キャタニット」)を2.0%、油変性アルキド樹脂(DIC社製「BECKOSOL 1308」、有効成分50.0%、不乾性油変性、短油タイプ)を有効成分として0.5%添加し、さらに、界面活性剤(日本エマルジョン社製「EMALEX HC−80」、非イオン性界面活性剤、HLB=14.6、水溶性)を0.1%、エポキシ樹脂(阪本薬品工業社製「SR−2EG」、有効成分100%、エチレングリコール系エポキシ樹脂、水溶性)を0.2%添加して親油性樹脂組成物含有ワニス(メラミン樹脂固形分50%)を得た以外は、実施例1と同様にして親油性表面層材料及び親油性化粧板を得た。
【0051】
<比較例1>
実施例1の(1.2)において、油変性アルキド樹脂を添加せずに樹脂組成物含有ワニス(メラミン樹脂固形分50%)を得た以外は、実施例1と同様にして表面層材料及び化粧板を得た。
【0052】
実施例で得られた親油性化粧板及び比較例で得られた化粧板について、評価を実施した。結果を表1に示す。
評価項目ならびに評価方法は以下の通りである。
【0053】
【表1】

【0054】
(1)化粧板の外観
化粧板の外観を目視で確認し、以下の基準により判定した。
A:白濁ムラや光沢低下がなく、良好である
B:白濁ムラや光沢低下があり、不良である。
(2)皮脂汚れの目立ちにくさ
皮脂膜の量が最も多い部分の1つである鼻に、人差し指を押し当てて皮脂膜を転写させ、その指を化粧板の表面に、一定荷重(1kg)で押し当てて再転写させた。皮脂膜を転写させた化粧板表面を目視及び拡大観察(400倍)し、以下の基準により評価した。
A:目視観察の場合、皮脂膜の付着汚れが目立ちにくい(白く見えにくい)。拡大観察の場合、皮脂膜がはじかれておらず、なじんで付着している。
B:目視観察の場合、皮脂膜の付着汚れが目立ちやすい(白く見える)。拡大観察の場合、皮脂膜がはじかれて付着している。
(3)皮脂汚れの払拭性
上記(2)と同様の方法で化粧板表面に皮脂膜を付着させ、これをティッシュペーパーを用いて、一定荷重(1kg)で払拭作業を行った後、目視観察及び拡大観察(3000倍)し、以下の基準により評価した。
A:目視観察の場合、皮脂膜の付着汚れが目立たない(白く見えない)。拡大観察の場合、皮脂膜がはじかれておらず、なじんで付着している。
B:目視観察の場合、皮脂膜の付着汚れが目立ちやすい(白く見える)。拡大観察の場合、皮脂膜がはじかれて付着している。
(4)油汚れの払拭性
油(トリオレイン)を染み込ませたティッシュペーパーに、人差し指を押し当ててトリオレインを転写させ、その指を化粧板の表面に、一定荷重(1kg)で押し当てて再転写させた。化粧板表面に付着させたトリオレインを、ティッシュペーパーを用いて、一定荷重(1kg)で払拭作業を行った後、目視観察及び拡大観察(3000倍)し、以下の基準により評価した。
A:目視観察の場合、トリオレインの付着汚れが目立たない(白く見えない)。拡大観察の場合、トリオレインがはじかれておらず、なじんで付着している。
B:目視観察の場合、トリオレインの付着汚れが目立ちやすい(白く見える)。拡大観察の場合、トリオレインがはじかれて付着している。
【0055】
実施例1〜4は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂を含有する親油性樹脂組成物に
より形成されている親油性樹脂層を表面に有する本発明の親油性化粧板であり、外観、皮脂汚れの目立ちにくさ、皮脂汚れ及び油汚れの払拭性において良好なものであった。
比較例1は、油変性アルキド樹脂を含有しない樹脂層を表面に有する化粧板であるが、皮脂汚れの目立ちにくさ、皮脂汚れ及び油汚れの払拭性において実施例と比較して低下が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の親油性化粧板は、メラミン樹脂化粧板としての表面性能を損なうことなく、従来のメラミン樹脂化粧板と比較して、油性成分による汚れが付着しても目立ちにくく、付着した汚れを払拭した場合、化粧板表面に汚れが残ったとしても、付着した汚れははじかれることなく、平滑にぬれ拡がっているため、視認できなくなる。
本発明の親油性化粧板は、このような特性を有することにより、油汚れや指紋汚れが目立ちやすくなるキッチン廻り、テーブル、家具などに特に好適に用いることができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧板表面に用いられる親油性表面層材料であって、
前記親油性表面層材料は、第一の面と、第二の面とを有し、少なくとも前記第一の面の最表面に親油性樹脂層が形成されており、
前記親油性樹脂層は、メラミン樹脂と、油変性アルキド樹脂とを含有する親油性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする親油性表面層材料。
【請求項2】
前記親油性樹脂組成物は、メラミン樹脂に対して、油変性アルキド樹脂0.1〜10重量%を含有するものである、請求項1に記載の親油性表面層材料。
【請求項3】
前記親油性樹脂組成物は、界面活性剤を含有するものである、請求項1又は2に記載の親油性表面層材料。
【請求項4】
前記親油性樹脂組成物は、エポキシ基含有化合物を含有するものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の親油性表面層材料。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の親油性表面層材料を用いてなる親油性化粧板であって、
前記親油性表面層材料の第一の面側を最表面としたものであることを特徴とする親油性化粧板。

【公開番号】特開2011−178137(P2011−178137A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47232(P2010−47232)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】