説明

角パイプジョイント構造

【課題】角パイプにおけるジョイントを作業性良く、簡単に連結・固定でき、また、ジョイント部の重量を抑え、重量構造物においても、構造設計に影響を及ぼすことのない、軽量構造を実現でき、作業性が良く、信頼性の高い角パイプのジョイント構造を提供することである。
【解決手段】角パイプを差し込み式に連結・固定する角パイプのジョイント構造において、ジョイント部は、同径の角パイプからなり、その連結部分となる差し込み部分は、板厚分の絞り加工が施され、該絞り加工された差し込み部分に、角パイプを差し込んで、固定することにより、ジョイントされることを特徴とする角パイプジョイント構造であり、該角パイプを、前記のジョイント構造により、連結されてなることを特徴とする基礎軸杭である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角パイプと角パイプとを連結・固定するための角パイプジョイント構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の角パイプのジョイント構造として、角形鋼管(角パイプ)等を構造体(骨組)とする場合には、溶接により接合するか、又はL型ブラケットや差込ブラケット等でネジ止め固定する構造が主流である。
【0003】
また、特開2003−49814号公報では、6面体1の各面1’に4角形凹部2を形成し、該各凹部2の内部に6面体1の内部に向う雌ネジ孔3を穿設して本体ブロック4を形成し、上記4角形凹部2に嵌合する4角形凸部5を中空アームブロック6の一端部外面6’に形成し、上記一端部に上記ネジ孔3に符合する透孔7を穿設し、一端部内面6aにボルト頭8’を回動自在に係合し、透孔7を経て上記ネジ孔3に螺合するボルト8とよりなり、上記各面1’の外周4辺1”の内側に間隔rを介して上記一端部外周4辺6”を平行に配置し、上記本体ブロック4、中空アームブロック6及び上記ボルト8を分解組立自在に形成してなるジョイント構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−49814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の角パイプのジョイント構造においては、現場で溶接を行う場合には、溶接作業の困難な場合も多く、作業性に問題があった。
【0005】
また、L型ブラケットや差込ブラケットなどでは、ボルト止めであるため、溶接よりも作業性は良くなるが、強固で頑丈なブラケットの材料コスト、運搬コストがかかり、重量も重くなる。
【0006】
上記の特開2003−49814号公報では、本体ブロックと中空アームブロックをボルト8で固定するものであり、ジョイント部が重量物となり、家具やテーブルなどの軽量物においては有効と思われるが、鉄骨構造物などの重量物においては、ジョイント部の重量が重過ぎるので適さない。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、角パイプにおけるジョイントを作業性良く、簡単に連結・固定でき、また、ジョイント部の重量を抑え、重量構造物においても、構造設計に影響を及ぼすことのない、軽量構造を実現でき、作業性が良く、信頼性の高い角パイプのジョイント構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を解決するために、本発明の請求項1では、角パイプを差し込み式に連結・固定する角パイプのジョイント構造において、ジョイント部は、同径の角パイプからなり、その連結部分となる差し込み部分は、板厚分の絞り加工が施され、該絞り加工された差し込み部分に、角パイプを差し込んで、固定することにより、ジョイントされることを特徴とする角パイプジョイント構造としたものである。
【0009】
角パイプの絞り加工は、本願出願人の実用新案第2120022号(角パイプ用絞り装置)を用いて、絞り加工を行うことができる。絞り加工は、連結する相手の角パイプと同径サイズの角パイプの先端部の差し込み連結部分を板厚相当分を絞り加工することが好ましく、めっき材であれば、板厚+めっき厚とし、連結後、外面に段差が生じないことが好ましい。
【0010】
また、本発明の請求項2では、前記の差し込み部分の角パイプの内部に、ボルト止め用のライナーパイプが内設されていることを特徴とする角パイプジョイント構造としたものである。
【0011】
該ライナーパイプは、連結時のボルトの締め付けにより、角パイプが変形することを防止し、精度を維持するためのものであり、使用するボルトの径より大きな内径のパイプ材であり、締め付け力に耐えるものであればいずれでも良い。
【0012】
また、本発明の請求項3では、角パイプを、前記のジョイント構造により、連結されてなることを特徴とする基礎軸杭としたものである。
【0013】
基礎杭は通常円柱状であるが、本願発明では、角パイプを連結して使用し、該角パイプ内にコンクリートミルクを注入して固化することで、四角柱の基礎杭となる。
【0014】
断面形状を四角形とすることにより、円柱杭の問題となっている、横方向の力に弱いという問題に対して、その強度を飛躍的に高めることができる。今までにない、横方向に強い基礎杭を実現できるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の角パイプジョイント構造では、以下のような効果を奏する。
【0016】
1)連結作業が容易で作業性が高なる。
【0017】
2)角パイプ同士を特別なジョイント部材を必要とせずに連結できる。
【0018】
3)連結部の形状が、精度の高い絞り加工による嵌め込み式であるため、ガタやブレが無く、精度よく結合できるため、連結後の歪みやズレが生じにくく、信頼性、安全性が高い。
【0019】
4)連結部材は角パイプ自体を絞り加工するのみであり、連結のためのブラケット材などは使用しないので、その分軽量であり、重量構造物の骨組みの軽量化に適する。
【0020】
5)板厚相当の絞り加工により、外面に段差が生じることがなく、ジョイント部材も露出しないので、外観状の見栄えが良い。
【0021】
6)差し込みジョイントとなるので、容易に接続でき、かつ精度の高い、信頼性の高いジョイント構造を実現できる。
【0022】
7)基礎軸杭のジョイント構造に使用することで、横方向強度の高い、断面形状が四角形の角柱パイルを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は本発明のジョイント構造を用いた角パイプコーナージョイントの実施例を示す図である。
【0025】
このジョイント構造は、6方向の角パイプのを連結するための多方向ジョイントであり、上下、前後、左右の角パイプを簡単に連結することができる。
【0026】
該ジョイント部1は、6方向に突出する角パイプの先端側の結合部1aが絞り装置により、板厚相当分絞り加工されており、その接合部である絞り部分1aに固定用のボルト2が挿通する貫通孔3が設けられている。また、該ジョイントの結合部1aの内部の貫通孔3部分には、ライナーパイプ4が設けられている。このライナーパイプ4は、ボルトナットで締め付けた場合に、角パイプが変形しないように支持するものである。各貫通孔3にすべてライナーパイプ4が内設されている。
【0027】
この多方向ジョイント1の結合部1aに接続する角パイプ5を差し込み、貫通孔6にボルト2を通してナット7で固定することで、強固に角パイプを結合することができるものである。
【0028】
また、ジョイント部は角パイプのみで製作されているため、特別な器具やブラケットなど必要とせず、軽量であり、重量構造物の骨組みとして軽量化に有効である。また、差し込み式であり、精度が高く、連結用ブラケットなどがなく、外観的な意匠も良い。
【0029】
図2は、本発明のジョイント構造を用いた角パイプL型ジョイントの実施例を示す図である。ジョイント部10は、図1と同様に、連結部の一方10aは、板厚相当分、絞られており、他方の連結部10bは、そのままであり、連結する角パイプ11の先端部分11aが板厚相当分絞り加工されている。12は補強リブである。
【0030】
図3は、本発明のジョイント構造を用いた角パイプT型ジョイントの実施例を示す図である。ジョイント部20は、図1と同様に、水平方向の2方向の連結部20a、20bの先端側が板厚相当分、絞り加工されており、縦方向の結合部20bは絞り加工されておらず、結合する角パイプ21の先端部分21aが板厚相当分、絞り加工されている。
【0031】
図4は、本発明のジョイント構造を用いた角パイプ十字型ジョイントの実施例を示す図である。ジョイント部30は、図1と同様に、4方向の結合部分30aが板厚相当分、絞り加工されている。31はライナーパイプである。
【0032】
図5は、本発明のジョイント構造を用いた角パイププレハブ鉄骨の実施例を示す図である。鉄骨のジョイント部分40が図1と同様に、一片側が板厚相当分、絞り加工されており、他片側40bはそのままとし、差し込み式に結合できるようになっているものである。
【0033】
図6は、本発明のジョイント構造を用いた角パイプ中梁ジョイントの実施例を示す図である。中梁をコの字状の部材50で跨いで設置し、角パイプの結合部51は、図1と同様に、結合部分51aが板厚相当分、絞り加工されており、接続する角パイプ52を差し込んで、ボルトで固定する。
【0034】
図7は、本発明のジョイント構造を用いた角パイプ3方向コーナージョイントの実施例を示す図である。ジョイント部60は、図1と同様に、横方向2方向の結合部分60aが板厚相当分、絞り加工されており、縦方向の結合部分60bはそのままで、連結する角パイプ61の接続部分61aが板厚相当分、絞り加工されており、各々差し込んで連結し、ボルトナットで固定するものである。
【0035】
図8は、本発明のジョイント構造を用いた基礎軸杭の実施例を示す図である。杭のジョイント構造に、図1と同様に、角パイプ杭70の上端部70aが板厚相当分、絞り加工されおり、下端部70bはそのままとする(絞り加工しない)。杭が打ち込まれると、次の角パイプ杭を上部から嵌め込み、ボルト71、ナット72で固定する。杭打ち後、角パイプ内にコンクリートを注入し、コンクリートパイルとする。
【0036】
このように、本発明によれば、角パイプの連結が容易となり、差し込んでボルト止めするのみなので、作業性が良く、ブラケットなどの特別な部材を必要とせず、軽量で、運搬しやすく、重量構造物の骨組みの軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のジョイント構造を用いた角パイプコーナージョイントの実施例を示す図である。
【図2】本発明のジョイント構造を用いた角パイプL型ジョイントの実施例を示す図である。
【図3】本発明のジョイント構造を用いた角パイプT型ジョイントの実施例を示す図である。
【図4】本発明のジョイント構造を用いた角パイプ十字型ジョイントの実施例を示す図である。
【図5】本発明のジョイント構造を用いた角パイププレハブ鉄骨の実施例を示す図である。
【図6】本発明のジョイント構造を用いた角パイプ中梁ジョイントの実施例を示す図である。
【図7】本発明のジョイント構造を用いた角パイプ3方向コーナージョイントの実施例を示す図である。
【図8】本発明のジョイント構造を用いた基礎軸杭の実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1、10、20、30、40、50、60 ジョイント部
1a、10a、20a、20b、30a、40a、40b、50a、60a、60b 結合部
2、71 ボルト
3、6 貫通孔
4 ライナーパイプ
5、11 接続する角パイプ
7、72 ナット
70 角パイプ杭
70a 角パイプ杭の上端部
70b 角パイプ杭の下端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角パイプを差し込み式に連結・固定する角パイプのジョイント構造において、
ジョイント部は、同径の角パイプからなり、その連結部分となる差し込み部分は、板厚分の絞り加工が施され、該絞り加工された差し込み部分に、角パイプを差し込んで、固定することにより、ジョイントされることを特徴とする角パイプジョイント構造。
【請求項2】
前記の差し込み部分の角パイプの内部に、ボルト止め用のライナーパイプが内設されていることを特徴とする請求項1に記載の角パイプジョイント構造。
【請求項3】
角パイプを、前記の請求項1又は請求項2に記載のジョイント構造により、連結されてなることを特徴とする基礎軸杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−25190(P2010−25190A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185691(P2008−185691)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(595119361)
【Fターム(参考)】