説明

角度付きセメントポケットを有する膝プロテーゼの大腿骨コンポーネント

【課題】埋め込み型整形外科用膝プロテーゼを提供する。
【解決手段】埋め込み型整形外科用膝プロテーゼは、外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成されている大腿骨コンポーネントを含む。この大腿骨コンポーネントは、後方大腿骨顆表面を含む関節面を有する。固定面は、関節面とは反対側であり、それは、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含む。後方固定表面は、内部に形成された、角度付き後方セメントポケットを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、埋め込み型整形外科的プロテーゼ、より具体的には、埋め込み型膝プロテーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の生涯において、例えば、疾患又は外傷により、患者に関節置換手術を実行することが必要な場合がある。膝置換手術は、1つ以上の患者の骨に移植されるプロテーゼの使用を伴い得る。膝置換手術の場合、脛骨トレイが患者の脛骨に移植される。ベアリングは、脛骨トレイに固定される。代替大腿骨コンポーネントの顆表面は、脛骨ベアリングを支える。
【0003】
大腿骨コンポーネントの埋め込み中に、外科医は一般的に、コンポーネントの、骨と接触する表面上に骨セメントを予め装填する。予め装填された骨セメントは、外科的に準備された遠位大腿骨上に大腿骨コンポーネントが位置決めされるとき、大腿骨コンポーネントから流出する傾向がある。流出した骨セメントを介した、大腿骨コンポーネントの前方移動は「セメント鋤」と呼ばれる。流出した骨セメント及び関連のセメント鋤は両方とも、外科手術の完了前に、付着した骨セメントを取り除くための更なる外科工程の実施につながる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様によると、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼは、外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成されている大腿骨コンポーネントを含む。この大腿骨コンポーネントは後方大腿骨顆表面を含む関節面を有する。固定面は、関節面とは反対側であり、それは、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含む。後方固定表面は、内部に形成され、その下端部において、その上端部におけるよりも深い後方セメントポケットを有する。
【0005】
大腿骨コンポーネントの固定面は、概ね前方向/後方向に延びる遠位固定表面、及び後方固定表面に向かう方向で、遠位固定表面から上位及び後方に延びる後方面取り固定表面も含み得る。後方面取り表面は、内部に形成され、後方セメントポケットと隣接する後方面取りセメントポケットを有してもよい、同様に、遠位固定表面は、内部に形成され、後方面取りセメントポケットと隣接する遠位セメントポケットを有してもよい。
【0006】
後方セメントポケットは、その下端部において、後方面取りセメントポケット及び遠位セメントポケットの両方よりも深くてもよい。
【0007】
大腿骨コンポーネントの固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる前方固定表面と、遠位固定表面から上位及び前方に、前方固定表面に向かう方向で延びる、前方面取り固定表面も含んでもよい。前方面取り表面は、内部に形成され、遠位セメントポケットと隣接する前方面取りセメントポケットを有してもよい。前方固定表面は、内部に形成され、前方面取りセメントポケットと隣接する前方セメントポケットを含んでもよい。
【0008】
一実施形態では、後方セメントポケットは、その下端部において、前方面取りセメントポケット及び前方セメントポケットの両方よりも深い。
【0009】
一実施形態では、後方固定表面は、この後方固定表面から後方に延びる側壁を有する取り付け縁部を含む。側壁は、後方セメントポケットの外辺部を画定する。矢状方向で見たときに、側壁の下端部は、側壁の上端部よりも広い。
【0010】
他の態様によると、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼは、外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む。大腿骨コンポーネントは、後方大腿骨顆表面を有する関節面と、この関節面とは反対側の固定面と、を含んでもよい。固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含んでもよい。後方固定表面は、周縁部と、この周縁部から後方に離間する底部壁と、後方縁部から底部壁まで後方に延びる側壁と、を含んでもよい。矢状方向に見たときに、周縁部によって画定される仮想面は、底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する。
【0011】
矢状方向で見たときに、側壁の下端部は、側壁の上端部よりも広くてもよい。
【0012】
一実施形態では、側壁及び底部壁は集合的にセメントポケットを画定する。
【0013】
関節面は、後方外側大腿骨顆表面を含んでもよい。関節面は、後方内側大腿骨顆表面も含んでもよい。
【0014】
他の態様によると、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼは、外科的に準備された近位脛骨に連結されるように構成された脛骨トレイ、及びこの脛骨トレイに連結したベアリングを含む。ベアリングは、内側関節表面及び外側関節表面を含む。膝プロテーゼは、外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントも含んでもよい。大腿骨コンポーネントは、ベアリングの外側関節表面と関節接合するように構成された外側顆表面、及びベアリングの内側関節表面と関節接合するように構成された内側顆を含んでもよい。大腿骨コンポーネントは、後方外側固定表面が上位方向/下位方向に延びている状態で、外側顆表面とは反対側の後方外側固定表面も含んでもよい。大腿骨コンポーネントは、後方内側固定表面が上位方向/下位方向に延びている状態で、内側顆表面とは反対側の後方内側固定表面も含む。後方内側固定表面及び後方外側固定表面の両方は、周縁部と、この周縁部から後方に離間する底部壁と、後方縁部から底部壁まで後方に延びる側壁と、を含んでもよい。矢状方向に見たときに、周縁部によって画定される仮想面は、底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する。
【0015】
矢状方向で見たときに、後方内側固定表面の側壁の下端部は、その上端部よりも広い。
【0016】
矢状方向で見たときに、後方外側固定表面の側壁の下端部は、その上端部よりも広い。
【0017】
後方内側固定表面の側壁及び底部壁は、集合的にセメントポケットを画定する。
【0018】
後方外側固定表面の側壁及び底部壁は、集合的にセメントポケットも画定する。
【0019】
他の態様によると、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼは、外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む。大腿骨コンポーネントは、大腿骨顆表面を含む関節面と、この関節面とは反対側の固定面と、を有する。固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる固定表面を含む。固定表面は、内部に形成され、その下端部において、その上端部におけるよりも深いセメントポケットを有する。
【0020】
固定表面はまた、この固定表面から延びる側壁を有する取り付け縁部を含んでもよい。側壁は、セメントポケットの外辺部を画定する。矢状方向で見たときに、側壁の下端部は、側壁の上端部よりも広い。
【0021】
矢状方向に見たときに、周縁部によって画定される仮想面は、底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する。
【0022】
固定表面は、内部に形成された後方セメントポケットを有する後方固定表面を含んでもよい。かかる構成では、底部壁は、周縁部から後方に離間され、側壁は、後方縁部から底部壁まで後方に延びる。
【0023】
固定表面は、内部に形成された前方セメントポケットを有する前方固定表面を含んでもよい。かかる構成では、底部壁は、周縁部から前方に離間され、側壁は、前方縁部から底部壁まで前方に延びる。
【0024】
大腿骨コンポーネントは、単顆型大腿骨コンポーネントとして具体化されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
「発明を実施するための形態」は特に以下の図面に関する。
【図1】膝プロテーゼの斜視図。
【図2】図1の膝プロテーゼの分解斜視図。
【図3】図1の膝プロテーゼの大腿骨コンポーネントの斜視図。
【図4】図3の大腿骨コンポーネントの矢状方向の横断面図。
【図5】大腿骨コンポーネントの後方顆をより詳細に示している、図4の部分の、拡大断片図。
【図6】図4と同様ではあるが、後方セメントポケット及び前方セメントポケットの両方が角度付きである、大腿骨コンポーネントの別の実施形態を示している。
【図7】単顆型大腿骨コンポーネントの斜視図。
【図8】図7の単顆型大腿骨コンポーネントの矢状方向の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の概念には様々な改変及び代替的形態が考えられるが、その特定の例示的実施形態を図面に例として示し、ここに詳しく述べる。ただし、本開示の概念を開示される特定の形態に限定することを何ら意図するものではなく、その逆に、添付の「特許請求の範囲」において定義される発明の趣旨並びに範囲に包含されるすべての改変物、均等物及び代替物を網羅することを意図するものである点を理解すべきである。
【0027】
解剖学的参照を表す前側、後側、内側、外側、上、下等の用語は、本開示全体にて、本明細書に記載する整形的インプラントと、患者の天然の解剖学的構造との両方に関して使用され得る。これらの用語は、解剖学的構造の研究及び整形外科の分野の両方にて十分理解される意味を有する。明細書及び特許請求の範囲におけるこれらの解剖学的参照用語の使用は、特に言及しない限り、それらの十分理解される意味と一致することが意図される。
【0028】
ここで図1〜5を参照すると、膝プロテーゼ10が示されている。膝プロテーゼ10は、大腿骨コンポーネント12、脛骨トレイ14、及びベアリング16を含む。大腿骨コンポーネント12は、患者の遠位大腿骨(図示せず)の外科的に準備された端部に固定されるように構成されている一方で、脛骨トレイ14は、患者の近位脛骨(図示せず)の外科的に準備された端部に固定されるように構成されている。
【0029】
脛骨トレイ14は、その下部表面から離れて延在する固定部材、例えば細長いステム20を有するプラットフォーム18を含む。ベアリング16は、脛骨トレイ14における補助穴24(図2)内に位置決め可能なステム22(図2を参照)を含む。かかる方法では、ベアリング16は、脛骨トレイ14に対して自由に回転できる。他の実施形態において、ベアリング16は、スナップ嵌め、ないしは別の方法で脛骨トレイ14に固定され得る。かかる方法で、ベアリング16は、脛骨トレイ14に対して固定される(すなわち、それは、前方/後方又は内側/外側方向において回転しない又は移動可能ではない)。かかる実施形態では、1つ以上の短いペグ又は柱など他の固定部材は、細長いステム20の代わりに使用されてもよいということを理解されたい。
【0030】
ベアリング16は、外側関節表面26及び内側関節表面28を含む。関節表面26、28は、大腿骨コンポーネント12の外側顆表面30及び内側顆表面32とそれぞれ関節をなすように構成される。具体的に、大腿骨コンポーネント12は、患者の自然な大腿骨顆の構成を模倣するように構成されており、よって外側顆表面30及び内側顆表面32は、自然の大腿骨の顆を模倣する方式で構成されている(例えば、湾曲している)。外側顆表面30及び内側顆表面32は、互いから離れて離間され、それによって、それらの間に顆間切痕を画定する。
【0031】
大腿骨コンポーネント12及び脛骨トレイ14など、天然骨に係合する膝プロテーゼ10のコンポーネントは、コバルトクロム合金等の生体適合性金属で構成され得るが、他の材料、例えばセラミックも使用されてもよい。これらのコンポーネントの骨に係合する表面は、骨に対するコンポーネントへの接着を促進するように非平滑化され得る。かかる表面は、永久固定のために骨内部成長を推進するように多孔質で被覆され得る。
【0032】
ベアリング16は、ベアリング16と大腿骨コンポーネント12との間の円滑な関節を可能にする、高分子材料等の材料で構成され得る。1つのかかる高分子材料は、ポリエチレン、例えば超高分子ポリエチレン(UHMWPE)であるが、他の生体適合性ポリマーが使用されてもよい。
【0033】
大腿骨コンポーネント12は、本明細書において説明目的で一体コンポーネントとして記載されているが、それは多くの「区域」又は「構造体」を特徴とする。例えば、大腿骨コンポーネント12の前方構造体は、前方フランジ34と呼ばれる。前方フランジ34は、前方面取り領域36に推移し、これは次いで、遠位顆領域38に推移する。遠位顆領域38は、後方面取り領域40に推移する。一対の後方大腿骨顆42は、大腿骨コンポーネント12の後方構造体を形成する。
【0034】
図2において示されたように、外側顆表面30及び内側顆表面32は両方とも大腿骨コンポーネント12の関節面44に形成されている。固定面48は、関節面44とは反対側であり、患者の外科的に準備された遠位大腿骨と接触する大腿骨コンポーネント12の面である。固定面48は、患者の遠位大腿骨内に外科的に切り込まれた平坦な表面と嵌合する複数の表面を含む。具体的に、図3に示されているように、一対の後方固定表面50は、後方顆表面52とは反対側であり、後方固定表面50の一方は、内側固定表面であり、他方は外側固定表面である。図4において見ることができるように、後方固定表面50は、概ね上位方向/下位方向において延びる。一対の遠位固定表面58(一方は内側に位置決めされており、他方は外側に位置決めされている)は、遠位顆表面60とは反対側である。遠位固定表面58は、概ね前方向/後方向において延びる。内側及び外側の後方面取り固定表面54は、後方面取り顆表面56とは反対側である。内側及び外側の後方面取り固定表面54は、それらの対応の後方固定表面50に向かう方向で、それらの対応の内側及び外側の遠位固定表面58から上位及び後方に延びる。内側及び外側の前方面取り固定表面62は、前方の面取り顆表面64とはそれぞれ反対側であり、前方固定表面66に向かう方向で、それらの対応の遠位固定表面58から上位及び前方外側に延びる。前方固定表面66は、前方顆表面68とは反側であり、後方固定表面50のように、概ね上位方向/下位方向に延びる。
【0035】
固定表面のそれぞれは、内部に形成された、セメントポケットを有する。具体的には、後方セメントポケット70は、後方固定表面50のそれぞれに形成され、後方面取りセメントポケット72は、後方面取り固定表面54のそれぞれに形成され、遠位セメントポケット74は、遠位固定表面58のそれぞれに形成され、前方面取りセメントポケット76は、前方面取り固定表面62のそれぞれに形成され、前方セメントポケット78は前方固定表面66に形成される。本明細書に記載される例示的な実施形態では、隣接するセメントポケットは単一の連続セメントポケットが、大腿骨コンポーネントの固定面48に形成されるように、相互に隣接している。
【0036】
セメントポケット70、72、74、76、78のぞれぞれは、取り付け縁部82から外へ延びる側壁80によって形成される。図3〜5で見ることができるように、側壁80はそれぞれセメントポケット70、72、74、76、78の外辺部を形成する。底部壁84は、取り付け縁部82から側壁80によってそれに接続される。そのような方法で、側壁80及び底部壁84は、集合的に対応のセメントポケット70、72、74、76、78を画定する。
【0037】
後方面取りセメントポケット72、遠位セメントポケット74、前方面取りセメントポケット76、及び前方セメントポケット78のそれぞれの深さ(D)は、ほぼ等しい。本明細書に記載される例示的な実施形態では、セメントポケット72、74、76、及び78のそれぞれは、約1mmの深さである(すなわち、D=1mm)。
【0038】
他方では、後方セメントポケット70は、結果として角度が付いて、その下端部において、その上端部上におけるよりも深い。具体的には、図5に示されるように、後方セメントポケット70は、後方固定表面50の取り付け縁部82’から底部壁84’まで、後方に延びる側壁80’によって形成される。矢状方向で見たときに、例えば図4及び5の横断面図において、側壁80’の下端部86は、側壁80’の上端部88よりも広い。結果として、後方セメントポケット70は、その下端部90において、その上端部92におけるよりもより深い。本明細書に記載される例示的な実施形態では、後方セメントポケット70の上端部92は、他のセメントポケット72、74、76、及び78の深さとほぼ等しい。換言すれば、後方セメントポケット70の上端部92は、約1mmの深さである(すなわち、D=1mm)。しかしながら、後方セメントポケット70の下端部90は、説明目的で1.5mmの深さである(すなわち、D=1.5mm)。大腿骨コンポーネント12の所与の設計の要求にあてはめるために、他の寸法もまた使用されてもよいということが理解されよう。
【0039】
かかる構成は、角度付きの底部壁84’を作成する。具体的には、底部壁84’は、その下端部86からその上端部88まで前方に傾斜する。この傾斜した構成は、図5の横断面図に説明目的で示されている。その図で見られ得るように、仮想面94は、後方固定表面50の取り付け縁部82’によって画定されているのに対して、後方固定表面50の底部壁84’は、仮想面96を画定する。2つの仮想面94、96は、それらの間に鋭角(θ)を形成する。かかる鋭角は、取り付け縁部82’に対する底部壁84’の傾斜を示す。
【0040】
大腿骨コンポーネント12を、患者の大腿骨の外科的に準備された遠位端に埋め込む外科手術中に、セメントポケット70、72、74、76、78は骨用セメントで予め装填される。大腿骨コンポーネント12は、次いで、患者の外科的に準備された遠位大腿骨に位置決めされ、これはまた、すでに骨セメントでコーティングされている。後方セメントポケット70の角度突き構成は、液圧式に骨用セメントをセメントポケット内に装填する。これは、骨セメントの閉じ込めを強化し、セメント鋤の発生を低減する。後方セメントポケット70の構成はまた、骨セメントの充填及び加圧を改善し、これは次いで、遠位大腿骨に対する大腿骨コンポーネント12の接合の強化につながる。
【0041】
ここで図6を参照すると、大腿骨コンポーネント12の他の実施形態が示されている。この実施形態では、後方セメントポケット70及び前方セメントポケット78の両方が角度付きである。そのため、セメントポケット70、78の両方は、それらの対応の下端部において、それらの対応の上端部におけるよりも深い。図6に示される実施形態では、後方セメントポケット70は、図1〜5に関して上記のものと本質的に同じである。前方セメントポケット78に関して、それは、前方固定表面66の取り付け縁部82”から底部壁84”まで前方に延びる側壁80”によって形成される。例えば図6横断面図のように、矢状方向で見たときに、側壁80”の下端部106は、側壁80”の上端部108よりも広い。結果として、後方セメントポケット70のように、前方セメントポケット78は、その下端部110において、その上端部112におけるよりも深い。本明細書に記載される例示的な実施形態では、前方セメントポケット78の上端部112は、他のセメントポケット72、74、及び76の深さとほぼ等しい。換言すれば、前方セメントポケット70の上端部112は、約1mmの深さである(すなわち、D=1mm)。しかしながら、前方セメントポケット78の下端部110は、説明目的で1.5mmの深さである(すなわち、D=1.5mm)。大腿骨コンポーネント12の所与の設計の要求にあてはめるために、他の寸法もまた使用されてもよいということが理解されよう。
【0042】
かかる構成は、角度付き底部壁84”を作成する。具体的には、前方セメントポケット78の底部壁84”は、その下端部106からその上端部108まで後方に傾斜する。この傾斜した構成は説明目的で図6に示されており、ここでは、仮想面114が、前方固定表面66の取り付け縁部82”によって画定されている一方で、前方固定表面66の底部壁84”が、仮想面116を画定する。2つの仮想面114、116は、それらの間に鋭角(β)を形成する。かかる鋭角は、取り付け縁部82”に対する底部壁84”の傾斜を示す。
【0043】
図6の大腿骨コンポーネント12を、患者の大腿骨の外科的に準備された遠位端に埋め込む外科手術中に、セメントポケット70、72、74、76、78は骨セメントで予め装填される。大腿骨コンポーネント12は、次いで、患者の外科的に準備された遠位大腿骨に位置決めされ、これはまた、すでに骨セメントでコーティングされている。セメントポケット70、78の角度付き構成は、液圧式に骨セメントをセメントポケット70、78内に装填する。これは、骨セメントの閉じ込めを強化し、セメント鋤の発生を低減する。これはまた、骨セメントの充填及び加圧を向上させ、これは次いで、遠位大腿骨に対する大腿骨コンポーネント12の接合の強化につながる。
【0044】
図6の実施形態は、角度が付けられている後方セメントポケット70及び前方セメントポケット78の両方を説明目的で示すが、他の実施形態もまた想到されるということが理解されるべきである。例えば、図1〜5に示されるように、大腿骨コンポーネント12は、角度の付けられている後方セメントポケット70のみを有して具体化されてもよい。あるいは、大腿骨コンポーネント12は、角度の付けられている前方セメントポケット78のみで具体化されてもよい。
【0045】
ここで図7及び8を参照すると、大腿骨コンポーネント12はまた、単顆型大腿骨コンポーネントとして具体化されてもよい。本明細書に記載の他の実施形態のように、単顆型大腿骨コンポーネント12の後方セメントポケット70が角度付きであってもよい。後方セメントポケット70の角度付きの構成は、液圧式に骨セメントをセメントポケット内に装填する。これは、骨セメントの閉じ込めを強化し、セメント鋤の発生を低減する。後方セメントポケット70の構成はまた、骨セメントの充填及び加圧を改善し、これは次いで、単顆型大腿骨コンポーネント12の、遠位大腿骨に対する接合の強化につながる。
【0046】
以上、図面及び上記の説明文において本開示内容を詳細に図示、説明したが、こうした図示、説明はその性質上、例示的なものとみなすべきであって、限定的なものとみなすべきではなく、あくまで例示的実施形態を示し、説明したにすぎないのであって、本開示の趣旨の範囲に含まれる変更並びに改変はすべて保護されることが望ましい点は理解されよう。
【0047】
本開示には、ここに述べた装置、システム、及び方法の様々な特徴に基づく多くの利点がある。本開示の装置、システム、及び方法の代替的実施形態は、ここで述べた特徴のすべてを含むわけではないが、こうした利点の少なくとも一部から利益を享受するものである。当業者であれば、本発明の1つ以上の特徴を取り入れた、「特許請求の範囲」において定義される本開示の趣旨及び範囲に包含される装置、システム、及び方法を独自に実施することが容易に可能であろう。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、前記大腿骨コンポーネントは、(i)後方大腿骨顆表面を含む関節面と、(ii)該関節面とは反対側の固定面と、を有し、該固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含み、前記後方固定表面は、内部に形成された後方セメントポケットを有し、該後方セメントポケットは、その下端部において、その上端部におけるよりも深い、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(2) 前記大腿骨コンポーネントの前記固定面が、(i)概ね前方向/後方向に延びる遠位固定表面と、(ii)前記遠位固定表面から上位及び後方に、前記後方固定表面に向かう方向で延びる、後方面取り固定表面と、を更に含み、
前記後方面取り表面が、内部に形成され、前記後方セメントポケットと隣接する後方面取りセメントポケットを有し、
前記遠位固定表面が、内部に形成され、前記後方面取りセメントポケットと隣接する遠位セメントポケットを有する、実施態様1に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(3) 前記後方セメントポケットが、その下端部において、前記後方面取りセメントポケット及び前記遠位セメントポケットの両方よりも深い、実施態様2に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(4) 前記大腿骨コンポーネントの前記固定面が、(i)概ね前記上位方向/下位方向に延びる前方固定表面と、(ii)前記遠位固定表面から上位及び前方に、前記前方固定表面に向かう方向で延びる、前方面取り固定表面と、を更に含み、
前記前方面取り表面が、内部に形成され、前記遠位セメントポケットと隣接する前方面取りセメントポケットを有し、
前記前方固定表面が、内部に形成され、前記前方面取りセメントポケットと隣接する前方セメントポケットを有する、実施態様3に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(5) 前記後方セメントポケットが、その下端部において、前記前方面取りセメントポケット及び前記前方セメントポケットの両方よりも深い、実施態様4に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(6) 前記後方固定表面が、取り付け縁部を含み、該取り付け縁部が、そこから後方に延びる側壁を有し、
前記側壁が、前記後方セメントポケットの外辺部を画定し、
矢状方向で見たときに、前記側壁の下端部が、前記側壁の上端部よりも広い、実施態様1に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(7) 外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、前記大腿骨コンポーネントは、(i)後方大腿骨顆表面を含む関節面と、(ii)前記関節面とは反対側の固定面と、を有し、該固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含み、
前記後方固定表面は、(i)周縁部と、(ii)該周縁部から後方に離間する底部壁と、(iii)後方縁部から前記底部壁まで後方に延びる側壁と、を含み、
矢状方向に見たときに、前記周縁部によって画定される仮想面は、前記底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(8) 矢状方向で見たときに、前記側壁の下端部が、前記側壁の上端部よりも広い、実施態様7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(9) 前記側壁及び前記底部壁が集合的にセメントポケットを画定する、実施態様7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(10) 前記関節面が、後方外側大腿骨顆表面を含む、実施態様7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【0049】
(11) 前記関節面が、後方内側大腿骨顆表面を含む、実施態様7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(12) 外科的に準備された近位脛骨に連結されるように構成された脛骨トレイ、
前記脛骨トレイに連結したベアリングであって、前記ベアリングは、内側関節表面及び外側関節表面を有する、ベアリング、並びに
外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントであって、該大腿骨コンポーネントは、(i)前記ベアリングの前記外側関節表面と関節接合するように構成された外側顆表面、及び前記ベアリングの前記内側関節表面と関節接合するよう構成された内側顆と、(ii)前記外側顆表面とは反対側の後方外側固定表面であって、上位方向/下位方向に延びる、後方外側固定表面と、(iii)前記内側顆表面とは反対側の後方内側固定表面であって、前記上位方向/下位方向に延びる、後方内側固定表面と、を有する、大腿骨コンポーネント、を含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、
前記後方内側固定表面及び前記後方外側固定表面の両方は、(i)周縁部と、(ii)該周縁部から後方に離間する底部壁と、(iii)後方縁部から前記底部壁まで後方に延びる側壁と、を含み、
矢状方向に見たときに、前記周縁部によって画定される仮想面は、前記底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(13) 矢状方向で見たときに、前記後方内側固定表面の前記側壁の下端部が、その上端部よりも広い、実施態様12に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(14) 矢状方向で見たときに、前記後方外側固定表面の前記側壁の下端部が、その上端部よりも広い、実施態様12に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(15) 前記後方内側固定表面の前記側壁及び前記底部壁が、集合的にセメントポケットを画定する、実施態様12に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(16) 前記後方外側固定表面の前記側壁及び前記底部壁が、集合的にセメントポケットを画定する、実施態様12に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(17) 外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、前記大腿骨コンポーネントは、(i)大腿骨顆表面を含む関節面と、(ii)前記関節面とは反対側の固定面と、を有し、該固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる固定表面を含み、前記固定表面は、内部に形成されたセメントポケットを有し、前記セメントポケットは、その下端部において、その上端部におけるよりも深い、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(18) 前記固定表面が、取り付け縁部を含み、該取り付け縁部が、そこから延びる側壁を有し、
前記側壁が、前記セメントポケットの外辺部を画定し、
矢状方向で見たときに、前記側壁の下端部が、前記側壁の上端部よりも広い、実施態様17に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
(19) 矢状方向に見たときに、前記周縁部によって画定される仮想面は、前記底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する、実施態様18に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(20) 前記固定表面が、内部に形成された後方セメントポケットを有する後方固定表面を含み、
前記底部壁が前記周縁部から後方に離間しており、
前記側壁が、前記後方縁部から前記底部壁まで後方に延びる、実施態様19に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【0050】
(21) 前記固定表面が、内部に形成された前方セメントポケットを有する前方固定表面を含み、
前記底部壁が前記周縁部から前方に離間しており、
前記側壁が、前記前方縁部から前記底部壁まで前方に延びる、実施態様19に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
(22) 前記大腿骨コンポーネントが、単顆型大腿骨コンポーネントを含む、実施態様17に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、前記大腿骨コンポーネントは、(i)後方大腿骨顆表面を含む関節面と、(ii)該関節面とは反対側の固定面と、を有し、該固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含み、前記後方固定表面は、内部に形成された後方セメントポケットを有し、該後方セメントポケットは、その下端部において、その上端部におけるよりも深い、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【請求項2】
前記大腿骨コンポーネントの前記固定面が、(i)概ね前方向/後方向に延びる遠位固定表面と、(ii)前記遠位固定表面から上位及び後方に、前記後方固定表面に向かう方向で延びる、後方面取り固定表面と、を更に含み、
前記後方面取り表面が、内部に形成され、前記後方セメントポケットと隣接する後方面取りセメントポケットを有し、
前記遠位固定表面が、内部に形成され、前記後方面取りセメントポケットと隣接する遠位セメントポケットを有する、請求項1に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
【請求項3】
前記後方セメントポケットが、その下端部において、前記後方面取りセメントポケット及び前記遠位セメントポケットの両方よりも深い、請求項2に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
【請求項4】
前記大腿骨コンポーネントの前記固定面が、(i)概ね前記上位方向/下位方向に延びる前方固定表面と、(ii)前記遠位固定表面から上位及び前方に、前記前方固定表面に向かう方向で延びる、前方面取り固定表面と、を更に含み、
前記前方面取り表面が、内部に形成され、前記遠位セメントポケットと隣接する前方面取りセメントポケットを有し、
前記前方固定表面が、内部に形成され、前記前方面取りセメントポケットと隣接する前方セメントポケットを有する、請求項3に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
【請求項5】
前記後方セメントポケットが、その下端部において、前記前方面取りセメントポケット及び前記前方セメントポケットの両方よりも深い、請求項4に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
【請求項6】
前記後方固定表面が、取り付け縁部を含み、該取り付け縁部が、そこから後方に延びる側壁を有し、
前記側壁が、前記後方セメントポケットの外辺部を画定し、
矢状方向で見たときに、前記側壁の下端部が、前記側壁の上端部よりも広い、請求項1に記載の埋め込み型整形外科用プロテーゼ。
【請求項7】
外科的に準備された遠位大腿骨に連結されるように構成された大腿骨コンポーネントを含む、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼであって、前記大腿骨コンポーネントは、(i)後方大腿骨顆表面を含む関節面と、(ii)前記関節面とは反対側の固定面と、を有し、該固定面は、概ね上位方向/下位方向に延びる後方固定表面を含み、
前記後方固定表面は、(i)周縁部と、(ii)該周縁部から後方に離間する底部壁と、(iii)後方縁部から前記底部壁まで後方に延びる側壁と、を含み、
矢状方向に見たときに、前記周縁部によって画定される仮想面は、前記底部壁によって画定される仮想面と鋭角を形成する、埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【請求項8】
矢状方向で見たときに、前記側壁の下端部が、前記側壁の上端部よりも広い、請求項7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【請求項9】
前記側壁及び前記底部壁が集合的にセメントポケットを画定する、請求項7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【請求項10】
前記関節面が、後方外側大腿骨顆表面を含む、請求項7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。
【請求項11】
前記関節面が、後方内側大腿骨顆表面を含む、請求項7に記載の埋め込み型整形外科用膝プロテーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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