説明

角膜障害抑制剤

【課題】角膜障害、特に紫外線により引き起こされる角膜障害を抑制することができる角膜障害予防剤を提供することを目的とする。
【解決手段】プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする角膜障害抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角膜障害抑制剤に関する。更に本発明は、紫外線により引き起こされる角膜障害の予防又は治療剤。
【背景技術】
【0002】
角膜は、眼の最外層にあり、外界の環境の影響を直接受けるため、様々な障害が生じやすい器官である。角膜障害の病因として、主として、紫外線等の光線の暴露、涙液の減少、異物・病原菌の付着、コンタクトレンズ脱着時の損傷等が挙げられる。特に、近年、オゾン層の破壊により、環境中の紫外線量が増加しており、紫外線暴露によって引き起こされる角膜障害が増大することが懸念されている。
【0003】
紫外線等の光線の曝露による角膜障害の代表的なものとしては、紫外線眼炎(いわゆる雪盲、雪目炎、ゆきめ)や電気性眼炎等があり、その症状は、疼痛や羞明、流涙等が強いことが特徴である。多くの場合、紫外線暴露後、8時間前後で急に強い羞明、流涙、眼痛が起こり、眼瞼、結膜は充血、腫脹し、びまん性表層角膜炎、角膜上皮剥離をきたす。強い刺激症状のために眼瞼痙攣を起こすこともある。
【0004】
紫外線が角膜に障害を引き起こすメカニズムについては、未だ完全には解明されていないが、紫外線暴露によって角膜上皮細胞の分裂抑制、代謝障害、又は細胞死が誘発されていることが関与していると考えられている。
【0005】
従来、角膜障害治療・予防剤としては、レシチン化スーパーオキシドディスムターゼを有効成分とするものが知られている(特許文献1)。しかし、特許文献1に記載の製剤は、有効成分として酵素を用いており、安定な製剤として供給することが困難である。また、アスコルビン酸とトコフェロールとのリン酸ジエステル化合物を含有してなる角膜障害治療剤も報告されている(特許文献2)。しかし、特許文献2に記載の製剤は、有効成分の分解や容器への吸着によって、効果を安定的に維持しえないという欠点がある。
【0006】
一方、プラノプロフェンは、非ステロイド性抗炎症剤として知られており、眼科用組成物の成分として汎用されている。当該プラノプロフェンについては、強制的に角膜上皮を剥離した角膜上皮剥離眼において、角膜上皮の修復には寄与しないことが既に明らかにされている(非特許文献1参照)。しかしながら、プラノプロフェンに角膜障害を抑制する作用があることについては、これまで報告されていない。
【0007】
ところで、角膜の上皮障害は種々の原因によって引き起こされ、その症状も多様であり、それぞれの角膜障害にあわせた予防、治療が必要である。非特許文献1のように強制的
に角膜上皮を剥離した上皮障害は、残存する細胞は障害を受けていない為、比較的早期に創傷は治癒する。一方、紫外線による障害は眼表面全体に影響を及ぼすため、残存する上皮細胞においても増殖が遅延したり、創傷治癒に最も重要な基底細胞にまで影響を及ぼすことも考えられる。このような、紫外線障害により発症する角膜障害に対して、プラノプロフェンがいかなる作用を及ぼすかについては、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9-124505号公報
【特許文献2】特開平7-291870号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】寺嶋啓子ら、「非ステロイド性抗炎症剤 プラノプロフェン点眼液の家兎角膜創傷治癒に及ぼす影響」、薬理と治療、1988年6月、第16巻、第6号、第131−135頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、角膜障害、特に紫外線により引き起こされる角膜障害を抑制することができる角膜障害抑制剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、紫外線により引き起こされる角膜障害の予防又は治療に有効である該角膜障害の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、プラノプロフェン又はその塩には、角膜上皮細胞の生存能を高めて角膜障害を抑制する作用があること、及び紫外線により引き起こされる角膜障害を予防乃至治療する作用があることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることによって完成したものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる角膜障害抑制剤である:
項1. プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする角膜障害抑制剤。
項2. 角膜障害が紫外線によるものである、項1に記載の角膜障害抑制剤。
【0013】
また本発明は、下記に掲げる角膜保護剤である:
項3. プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする角膜保護剤。
項4. 紫外線暴露に対する角膜保護のために使用される、項3に記載の角膜保護剤。
【0014】
更に本発明は、下記に掲げる角膜障害の予防又は治療剤である:
項5. プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする、紫外線により引き起こされる角膜障害の予防又は治療剤。
【0015】
以下に、発明を詳細に説明する。
(I)角膜障害抑制剤
本発明の角膜障害抑制剤は、プラノプロフェン又はその塩を有効成分とすることを特徴とするものである。
【0016】
本発明において抑制対象となる角膜障害としては特に制限されないが、例えば、紫外線、太陽光、溶接光、殺菌灯、レーザー光線等の各種光線の暴露、涙液の減少、異物・病原菌の付着、コンタクトレンズ脱着時の損傷等の原因によって生じる角膜障害を挙げることができる。中でも、好適な抑制対象となる角膜障害として、各種光線の暴露、特に紫外線暴露により生じる角膜障害を挙げることができる。
【0017】
本発明の抑制対象となる角膜障害として、具体的には、角膜潰瘍、角膜上皮剥離、角膜炎、びまん性表層角膜炎、点状表層角膜炎、眼球乾燥症等を挙げることができる。これらの中でも、紫外線暴露によって誘発され易い角膜障害、具体的には角膜上皮剥離及びびまん性表層角膜炎は、本発明の角膜障害抑制剤の好適な抑制対象である。
【0018】
また、特に制限されないが、角膜上皮細胞の生存能を高めるというプラノプロフェン又はその塩の作用に鑑みれば、好ましい抑制対象角膜障害として、角膜上皮障害を挙げることができる。なお、本発明でいう「角膜上皮細胞の生存能」とは、角膜上皮細胞が外界から悪影響を受けても、該細胞の増殖能を維持し、生存を維持し続ける能力を意味する。
【0019】
本発明の角膜障害抑制剤の有効成分であるプラノプロフェン、即ち2-(5 H-[1]benzopyrano[2,3- b]pyridin-7-yl)propionic acidは、プロピオン酸系の酸性非ステロイド性抗炎症剤として既に公知の化合物である。
【0020】
本発明には、上記プラノプロフェンの代わりに、又は上記プラノプロフェと組み合わせて、プラノプロフェンの塩を使用してもよい。プラノプロフェンの塩としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モルホリン、ピペラジン等の有機塩基との塩などが挙げられる。これらのプラノプロフェンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明には、上記プラノプロフェン又はその塩は、公知の方法により合成したものを使用してもよいし、また簡便には市販品を使用してもよい。
【0022】
本発明の角膜障害抑制剤は、後述する公知の基材、担体又はその他成分を配合して、眼科用製剤に用いられる任意の形態に製剤化することができる。本発明の角膜障害抑制剤の製剤形態の一例として、点眼薬、洗眼薬、眼軟膏、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ用剤等の眼科用局所適用製剤;液剤、カプセル剤、錠剤、散剤、顆粒等の内用剤;及びその他外用剤等を挙げることができる。ここで、「コンタクトレンズ用剤」とは、コンタクトレンズを保存、洗浄、消毒するための組成物である。本発明の角膜障害抑制剤は、眼科用局所適用製剤、特に点眼薬又は洗眼薬として使用されることが好ましい。
【0023】
上記各種製剤に配合されるプラノプロフェン又はその塩の割合については、製剤の剤型、種類、角膜障害の程度等によって異なり一律に規定することはできないが、例えば眼科用局所適用製剤の場合であれば、該製剤の総重量に対してプラノプロフェン又はその塩が0.005〜2重量%、好ましくは0.005〜0.5重量%となる割合を挙げることができる。より具体的には、角膜障害抑制剤を点眼剤、眼軟膏剤、コンタクトレンズ用点眼剤、コンタクトレンズ用装着液、又はコンタクトレンズ用剤(保存剤、洗浄剤、殺菌剤)として調製する場合、該製剤の総重量に対してプラノプロフェン又はその塩が0.01〜0.5重量%、より好ましくは0.01〜0.1%;洗眼剤として調製する場合、該製剤の総重量に対してプラノプロフェン又はその塩が0.005〜0.05重量%、より好ましくは0.005〜0.02%となる割合を例示できる。また、内用剤の場合、液剤であれば、該製剤の総重量に対してプラノプロフェン又はその塩が0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%となる割合を挙げることができ、一方、固形剤であれば、例えば1日あたりの投与量が10〜1000mg、好ましくは30〜300mgとなるように適宜製剤設定すればよい。また、外用剤の場合であれば、該製剤の総重量に対してプラノプロフェン又はその塩が0.001〜10重量%、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは0.01〜1重量%となる割合を挙げることができる。
【0024】
本発明の角膜障害抑制剤を眼科用局所適用製剤として調製する場合、そのpH及び浸透圧については、眼科用局所適用製剤として許容されることを限度として、特に制限されない。該剤のpHとしては、例えばpH5〜9.5、好ましくは6〜9、特に好ましくは7〜9を例示できる。該剤(眼軟膏剤以外の場合)の生理食塩液に対する浸透圧比としては、例えば0.3〜4.3、好ましくは0.3〜2.2、特に好ましくは0.5〜1.5程度を例示できる。pHや浸透圧の調節は、後述するpH調整剤、等張化剤、塩類等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。
【0025】
本発明の角膜障害抑制剤を製剤化する際には、本発明の効果を妨げないことを限度として、プラノプロフェン又はその塩の他に、種々の成分(薬理活性成分や生理活性成分を含む)を組み合わせて配合することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、充血除去成分、眼調節薬成分、抗炎症薬成分または収斂薬成分、抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分、ビタミン類、アミノ酸類、抗菌薬成分、殺菌薬成分、糖類、多糖類またはその誘導体、セルロース又はその誘導体又はそれらの塩、前述以外の水溶性
高分子、局所麻酔薬成分、ステロイド成分、緑内障治療成分、白内障治療成分などが例示できる。好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0026】
充血除去成分:α−アドレナリン作動薬、例えば、イミダゾリン誘導体(ナファゾリン、テトラヒドロゾリンなど)、β−フェニルエチルアミン誘導体(フェニレフリン、エピネフリン、エフェドリン、メチルエフェドリンなど)、及びそれらの薬学上又は生理的に許容される塩(例えば、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、硝酸テトラヒドロゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸メチルエフェドリンなどの無機酸塩;酒石酸水素エピネフリンなどの有機酸塩など)など。
【0027】
眼筋調節薬成分:アセチルコリンと類似した活性中心を有するコリンエステラーゼ阻害剤、例えばメチル硫酸ネオスチグミン等の第4級アンモニウム化合物及びそれらの塩等。
【0028】
抗炎症薬成分または収斂薬成分:セレコキシブ(celecoxib)、ロフェコキシブ(rofecoxib)、インドメタシン、ジクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、メロキシカム(meloxicam)、アスピリン、メフェナム酸、インドメタシンファルネシル、アセメタシン、イブプロフェン、チアプロフェン酸、ロキソプロフェンナトリウム、塩酸チアラミド、イプシロン−アミノカプロン酸、ベルベリンおよび薬理学的に許容される塩(例えば、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン)、アズレンスルホン酸および薬理学的に許容される塩(例えば、アズレンスルホン酸ナトリウム、など)、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、など)、リゾチーム、塩化リゾチーム、サリチル酸メチル、アラントイン、グリチルリチン酸および薬理学的に許容される塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、など)など。
【0029】
抗ヒスタミン薬成分又は抗アレルギー薬成分:例えば、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、ケトチフェン、エメダスチン、クレマスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、クロモグリク酸、トラニラスト、アンレキサノクス、メキタジン、ロラタジン(loratadine)、フェキソフェナジン(fexofenadine)、セチリジン(cetirizine)、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラスト、レピリナスト、タザノラスト、オキサトミド、テルフェナジン、エピナスチン、アステミゾール、エバスチンまたはその塩(例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸エメダスチン、フマル酸クレマスチン、塩酸アゼラスチン、塩酸レボカバスチン、塩酸オロパタジン、クロモグリク酸ナトリウムなど)など。
【0030】
ビタミン類:例えば、ビタミンA類[例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン及びその薬理学的に許容される塩類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなど)など]、ビタミンB類[チアミン、ジセチアミン、塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジセチル硝酸エステル塩、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、フルスルチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム、酪酸リボフラビン、ピリドキシン、塩酸ピリドキシン、ピリドキサール、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサールカルシウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パンテノール、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、コリン、イノシトールなど]、ビタミンC類[アスコルビン酸及びその誘導体、エリソルビン酸及びその誘導体及びその薬理学的に許容される塩類(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムなど)など]、ビタミンD類[例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール及びその薬理学的に許容される塩類など)など]、ビタミンE類[例えば、トコフェロール及びその誘導体、ユビキノン誘導体及びその薬理学的に許容される塩類(酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)など]、その他のビタミン類[例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、シアノコバラミン、ルチン、エリオシトリン、ヘスペリジン及びその薬理学的に許容される塩類(塩化カルニチンなど)など]。
【0031】
アミノ酸類:例えば、ロイシン、イソイロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)またはその塩(例えばアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、塩酸システインなど)など。
【0032】
抗菌薬成分または殺菌薬成分:スルホンアミド類(例えば、スルファメトキサゾール、スルフイソキサゾール、スルフイソミジン及び薬理学的に許容される塩(スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソミジンナトリウムなど)、アクリノール、第4級アンモ
ニウム化合物(例えば、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム、セチルピリジニウム、及び薬理学的に許容される塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウムなど)、アルキルポリアミノエチルグリシン、ニューキノロン剤(ロメフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、ノルフロキサシン、塩酸シプロフロキサシンなど)、ベルベリン又はその塩(例えば、硫酸ベルベリンなど)、βラクタム系抗菌薬(スルベニシリン、セフメノキシムなど)、アミノグリコシド系抗菌薬(カナマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シソマイシン、ミクロノマイシンなど)、テトラサイクリン系抗菌薬(オシテトラサイクリンなど)、マクロライド系抗菌薬(エリスロマイシンなど)、クロラムフェニコール系抗菌薬(クロラムフェニコールなど)、ポリペプトド系抗菌薬(コリスチンなど)など。また、抗ウイルス薬(ドクスウリジン、アシクロビル、アデニンアラビノシド、ガンシクロビル、ホスカルネット、バラシクロビル、トリフルオロチミジン、シドフォビア、カルボサイクリック・オキセタノシンGなど)、抗真菌薬(ピマリシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール、フルシトシン、アムホテリシンBなど)など。
【0033】
糖類:単糖類(例えば、グルコースなど)、二糖類(例えば、トレハロース、ラクトース、フルクトースなど)、オリゴ糖類(例えば、ラクツロース、ラフィノース、プルランなど)、糖アルコール類(例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトールなど)など。
【0034】
多糖類又はその誘導体:アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダルマンガム、トラガント、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸(アルギン酸)、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸またはその塩(アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウムなど)など。
【0035】
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース、など。
【0036】
前述以外の水溶性高分子:ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドンなど。
【0037】
局所麻酔薬成分:リドカイン、オキシブプロカイン、ジプカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、メプリルカイン、メピバカイン、ブピバカイン、コカイン及びそれらの塩(塩酸リドカイン、塩酸オキシブプロカインなど)など。
【0038】
ステロイド成分:ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、コルチゾール、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、ベタメタゾン及びそれらの塩など。
【0039】
緑内障治療成分:マレイン酸チモロール、塩酸カルテオロール、塩酸ベタキソロール、ラタノプロスト、ウノプロストン、塩酸ジピベフリン、エピネフリン、塩酸アプラクロニジン、塩酸ピロカルピン、カルバコール、塩酸ドルゾラミド、アセタゾラミド、メタゾラミド及びそれらの塩など。
【0040】
白内障治療成分:ピレノキシン、グルタチオン、唾液腺ホルモン、チオプロニン、Dihydro azapentacene disulfonate及びそれらの塩(例えばSodium5,12-dihydro azapentacene disulfonateなど)など。
【0041】
これらの成分の配合割合は、製剤の種類、活性成分の種類等に応じて選択でき、眼科用局所適用製剤、内用剤、外用剤等における各種成分の配合割合は当該技術分野で既知である。例えば、製剤総重量に対して0.0001〜30%、好ましくは、0.001〜10%程度の範囲から選択できる。より具体的には,製剤の総重量に対して各成分を以下に例示する割合で含有させることができる。
充血除去成分(血管収縮薬又は交感神経興奮薬):例えば、0.0001〜0.5重量%、好ましくは、0.0005〜0.3重量%、さらに好ましくは0.001〜0.1重量%。
眼筋調節薬成分:例えば、0.0001〜0.5重量%、好ましくは、0.0005〜0.1重量%、さらに好ましくは0.0005〜0.01重量%。
抗炎症薬成分または収斂薬成分:例えば、0.0001〜10重量%、好ましくは0.0001〜5重量%。
抗ヒスタミン薬成分または抗アレルギー薬成分:例えば、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%。
ビタミン類:例えば、0.0001〜1重量%、好ましくは、0.0001〜0.5重量%。
アミノ酸類:例えば、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜3重量%。
抗菌薬成分または殺菌薬成分:例えば、0.00001〜10重量%、好ましくは、0.0001〜10重量%。
糖類:例えば、0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜5重量%、さらに好ましくは0.01〜2重量%。
多糖類又はその誘導体:例えば、0.0001〜2重量%、好ましくは0.01〜2重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%。
セルロース又はその誘導体又はそれらの塩:例えば、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%。
前述以外の水溶性高分子:例えば、0.001〜10重量%、好ましくは0.001〜5
重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%。
局所麻酔薬成分:例えば、0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜1重量%。
ステロイド成分:例えば、0.001〜1重量%、好ましくは0.01〜1重量%。
緑内障治療成分:例えば、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%。
白内障治療成分:例えば、0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%。
【0042】
本発明において、各種所望の形態の製剤を調製するために、本発明の効果を損なわない範囲で、その用途や形態に応じて、常法に従い、様々な成分や添加物を適宜選択し、一種またはそれ以上を併用して配合させてもよい。それらの成分または添加物として、例えば、眼科用局所適用製剤、半固形剤、液剤などの調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤など)、増粘剤、糖類、界面活性剤、防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤、pH調節剤、等張化剤、香料または清涼化剤、キレート剤、緩衝剤などの各種添加剤を挙げることができる。以下に、使用できる代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0043】
増粘剤:例えば、多糖類又はその誘導体(アラビアゴム、カラヤガム、キサンタンガム、キャロブガム、グアーガム、グアヤク脂、クインスシード、ダルマンガム、トラガントガム、ベンゾインゴム、ローカストビーンガム、カゼイン、寒天、アルギン酸、デキストリン、デキストラン、カラギーナン、ゼラチン、コラーゲン、ペクチン、デンプン、ポリガラクツロン酸、キチン及びその誘導体、キトサン及びその誘導体、エラスチン、ヘパリン、ヘパリノイド、ヘパリン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)、セラミド、セルロース誘導体(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セルロース、ニトロセルロースなど)、ポリビニルアルコール(完全、又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、ポリビニルメタアクリレート、ポリアクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、リボ核酸、デオキシリボ核酸、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体など、及びその薬理学的に許容される塩類(例えば、アルギン酸ナトリウム)など。
【0044】
糖類:例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、リボース、リブロース、アラビノース、キシロース、リキソース、デオキシリボース、マルトース、トレハロース、スクロース、セロビオース、ラクトース、プルラン、ラクツロース、ラフィノース、マルチトールなど、及びその薬理学的に許容される塩類など。
【0045】
界面活性剤:例えば、ポリオキシエチレン(POE)−ポリオキシプロピレン(POP)ブロックコポリマー (例えば、ポロクサマー407 、ポロクサマー235 、ポロクサマー188 など) 、エチレンジアミンのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー付加物(例えば、ポロキサミン)、モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20) 、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン (ポリソルベート80) 、ポリソルベート60などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POE(60)硬化ヒマシ油などのPOE硬化ヒマシ油、POE(9) ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類、POE(20)POP(4) セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類、POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類、POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類などの非イオン性界面活性剤;アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型、イミダゾリン型などの両性界面活性剤;POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテルリン酸及びその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのN−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−ココイルメチルタウリンナトリウムなどのN−アシルタウリン塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、POE(3) ラウリルエーテル硫酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル4級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)、アルキルピリジニウム塩(塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウムなど)などの陽イオン界面活性剤など。なお、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0046】
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、ソルビン酸またはその塩(ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸トリクロカルバンなど)、パラオキシ安息香酸エステル(パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチルなど)、アクリノール、塩化メチルロザニリン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン又はその塩、ポリヘキサメチレンビグアニド、アルキルポリアミノエチルグリシン、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、クロロブタノール、イソプロパノール、エタノール、フェノキシエタノール、リン酸ジルコニウムの銀、マーキュロクロム、ポピヨンヨードなどの担持体、チメロサール、デヒドロ酢酸、クロルキシレノール、クロロフェン、レゾルシン、オルトフェニルフェノール、イソプロピルメチルフェノール、チモール、ヒノキチオール、スルファミン、リゾチーム、ラクトフェリン、トリクロサン、8−ヒドロキシキノリン、ウンデシレン酸、カプリル酸、プロピオン酸、安息香酸、プロピオン酸、ハロカルバン、チアベンダゾール、ポリミキシンB、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ポリリジン、過酸化水素、塩化ポリドロニウム、Glokill(商品名例えばGlokill PQ、ローディア社製)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン−(ジメチルイミニオ)エトレンジクロリド]、ポリエチレンポリアミン・ジメチルアミンエピクロルヒドリン重縮合物(商品名例えばBusan1157、バックマン社製)、ビグアニド化合物(コスモシルCQ(商品名、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩を約20重量%含有、アピシア社製))など、及びその薬理学的に許容される塩類等。
【0047】
pH調整剤:例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸など)、有機酸(乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸など)、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなど)、有機塩基(モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジンなど)、ホウ砂、及びその薬理学的に許容される塩類など。
【0048】
等張化剤:例えば、無機塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、チオ硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど)、多価アルコール類(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリオールなど)、糖類(例えば、ブトウ糖,マンニトール,ソルビトールなど)など。
【0049】
香料又は清涼化剤:テルペン類(例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノールなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)精油(ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ウイキョウ油、ハッカ油、ケイヒ油、ローズ油など)
など。
【0050】
キレート剤:例えば、エデト酸、クエン酸、ポリリン酸、ヘキサメタリン酸、メタリン酸、アスコルビン酸、コハク酸、トリヒドロキシメチルアミノメタン、ニトリロトリ酢酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸等、及びその薬理学的に許容される塩類等。
【0051】
緩衝剤:ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸塩など。例えば、ホウ酸またはその塩(ホ
ウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウムなど) 、リン酸又はその塩
(リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど)、炭酸
又はその塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなど)、クエン酸又はその塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムなど)など。
【0052】
これらの各種成分や添加物の配合割合は、製剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。以下に、製剤総重量に対するこれらの成分又は添加物の配合割合の一例を示すが、これに制限されるものではない。
増粘剤:例えば、0.0005〜50重量%、好ましくは、0.001〜10重量%
糖類:例えば、0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%
界面活性剤:例えば、0.0001〜10重量%、好ましくは、0.005〜5重量%
防腐剤、殺菌剤又は抗菌剤:例えば、0.00001〜5重量%、好ましくは、0.0001〜2重量%
pH調整剤:例えば、0.00001〜5重量%、好ましくは、0.0001〜2重量%等張化剤:例えば、0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%
香料または清涼化剤:例えば、0.00001〜5重量%、好ましくは、0.0001〜2重量%
キレート剤:例えば、0.00001〜5重量%、好ましくは、0.0001〜2重量%緩衝剤:例えば、0.001〜10重量%、好ましくは、0.01〜5重量%
本発明の角膜障害抑制剤の製剤化は、その形態等に応じて、公知の方法で実施することができる。例えば、点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ装着液、又はコンタクトレンズ用剤とする場合であれば、蒸留水または精製水等の適当な希釈剤中で、プラノプロフェンと任意の配合成分とを混合して、上記の浸透圧及びpHに調整し、無菌環境下、ろ過滅菌処理し、洗浄滅菌済みの容器に無菌充填することにより製造できる。また、例えば、眼軟膏とする場合であれば、通常用いられる眼軟膏用基剤中に、プラノプロフェン又はその塩と任意の配合成分とを混和し、常法に従って無菌的に調製することができる。なお、眼軟膏を調製する場合には、プラノプロフェン又はその塩の溶解性を高めるために、界面活性剤を添加することが望ましい。
【0053】
本発明の角膜障害抑制剤は、角膜障害の予防、角膜障害の軽減、角膜障害の進行の減退・停止、及び角膜障害の治癒の促進等の目的で、適用することができる。本発明の角膜障害抑制剤は、好ましくは角膜障害の予防、角膜障害の軽減及び角膜障害の進行の減退・停止、更に好ましくは角膜障害の予防を目的として適用することができる。
【0054】
本発明の角膜障害抑制剤の適用方法については特に制限されない。例えば角膜障害の予防を目的とする場合であれば、角膜障害の誘発が懸念される時期の前後に該剤を適用すればよい。より具体的には、適当量の角膜障害抑制剤を紫外線等への曝露の約3日前から最終曝露の約1週間後までの間に任意の回数で適用する方法を例示できる。また日常的に角膜障害の誘発が懸念される場合には、日常的に適用することも可能である。一方、角膜障害の治療(軽減や治癒)を目的とする場合であれば、角膜障害が発症した後に、角膜障害抑制剤を任意の回数で適用すればよい。
【0055】
適用量は、点眼剤、コンタクトレンズ用点眼剤の場合、1回の点眼で両眼あわせて0.2 ml程度;コンタクト用装着液の場合、1回の使用量で両眼あわせて0.05〜0.2ml程度;コ
ンタクトレンズ用剤の場合、1回の使用量で両眼レンズあわせて0.05〜10ml程度;洗眼剤の場合、両眼で10ml程度;眼軟膏の場合、両眼で0.1g程度を例示できる。また、その他外用剤及び内用剤の場合についても、症状、適用対象者の年齢、期待される効果等に応じて、適宜設定することができる。なお、本発明の角膜障害抑制剤の適用時期、適用回数、適用量等は、角膜障害の原因、症状の程度、適用者の年齢等に応じて適宜調整されるべきであり、上記に限定されるものではない。
【0056】
また、プラノプロフェン又はその塩には、紫外線暴露等による悪影響から、角膜を保護、特に角膜上皮を保護する作用がある。故に、別の観点から、本発明の角膜障害抑制剤は、角膜保護剤、角膜上皮の保護剤、角膜上皮細胞の保護剤ということもできる。
【0057】
(II)角膜障害の予防又は治療剤
また、後述する試験例に示すように、プラノプロフェン又はその塩には、紫外線により引き起こされる角膜障害を予防又は治療する作用がある。故に、本発明は、更に、プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする紫外線により引き起こされる角膜障害の予防又は治療剤を提供する。
【0058】
当該予防又は治療剤の対象となる角膜障害は、紫外線暴露により生じる角膜障害であれば、特に制限されず、例えば、角膜潰瘍、角膜上皮剥離、角膜炎、びまん性表層角膜炎、点状表層角膜炎、眼球乾燥症等を挙げることができる。これらの中でも、角膜上皮剥離及びびまん性表層角膜炎は、好適な予防・治療対象の角膜障害である。
【0059】
また、特に制限されないが、好ましい予防・治療対象の角膜障害として、角膜上皮障害を挙げることができる。
【0060】
なお、本発明の角膜障害の予防又は治療剤で使用されるプラノプロフェン又はその塩、該予防又は治療剤の製剤形態、製剤中でのプラノプロフェン又はその塩の配合割合、配合される任意成分、該予防又は治療剤の適用方法、適用量等については、前記角膜障害抑制剤の場合と同様である。
【発明の効果】
【0061】
本発明の角膜障害抑制剤によれば、角膜上皮細胞の生存能を高めることができ、それによって、種々の要因によって引き起こされる角膜障害、特に紫外線によって生じる角膜上皮細胞のダメージを抑制することができる。故に、本発明の角膜障害抑制剤は、角膜障害の発症のおそれがある場合にその発症を予防したり、既に発症した角膜障害の悪化を軽減乃至治癒を促進するのに有用である。
【0062】
また、本発明の角膜障害抑制剤は、点眼剤や洗眼剤等の形態に調製できるので、角膜障害が誘発される前後に、例えば紫外線等に被曝する恐れがある場合や紫外線被曝後早期に、使用者自身が該剤を角膜に適用することができる。これによって、角膜障害の発症や症状の悪化をより効果的に抑制することが可能となる。
【0063】
また、本発明の角膜保護剤によれば、角膜、特に角膜上皮を保護して、角膜を正常な状態に保つことができるので、該剤を日常的に適用することによって眼を健康に保つことが可能となる。
【0064】
更に、本発明の角膜障害の予防又は治療剤によれば、紫外線照射により生じる角膜細胞障害を未然に防ぎ、また軽減乃至緩和することができるので、紫外線により惹起される角
膜障害の予防又は治療に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に、試験例および実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0066】
試験例1 紫外線照射ウサギ角膜上皮細胞に及ぼすプラノプロフェンの作用
プラノプロフェンの紫外線による角膜障害に対する作用を確認するために、以下に記載の方法に従い試験を行った。
【0067】
(方法)
ウサギ角膜上皮細胞(NRCE2、クラボウ(株))を96穴マイクロプレートに播種し(5000 cells/well)、37℃、5% CO2でコンフレントになるまで、無血清培地(RCGM2、クラボウ(株))で予備培養を行った。90%コンフレントになった細胞にPBS(−)[Ca2+及びMg2+を含まないPBS(phosphate buffered saline)]に溶解したプラノプロフェンを終濃度が0.01%になるように添加した(処置群)。対照群として、非ステロイド性抗炎症剤であり、角膜上皮細胞の増殖を抑制することが知られているジクロフェナックナトリウムを終濃度が0.002%になるように添加した。無処置対照群にはPBS(−)のみを添加した。直ちに250mJ/cm2のUV(UV-B、302nm)を約4分間かけて照射し、さらに72時間培養を続けた。その後、MTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H tetrazolium bromide)法により、細胞生存能の指標となる生細胞の呼吸量を測定した。MTT(和光純薬より入手)は細胞内ミトコンドリアの脱水素酵素の基質であり、生存能の高い細胞ほど還元されるMTT量が多く、その結果生じるホルマザン量が生存細胞数とよく対応する。MTT 溶液を0.5mg/mlになるように各ウェルに添加し、4時間のインキュベート後、2−プロパノールでMTT及びホルマザンを溶解した。570nm の吸光度を測定して細胞生存能とした。
【0068】
(結果)
得られた結果を表1に示す。表1において、紫外線無照射の細胞を72時間培養した細胞の生存能(生細胞の呼吸量)を100%とした場合の、紫外線照射後さらに72時間培養
した各群での細胞生存能の割合(以下、細胞生存率(%)という)を示している。表1に示すように、0.01%プラノプロフェン添加群では、無添加群及び0.002%ジクロフェナッ
クナトリウム添加群に比して、細胞生存率が顕著に高いことが確認された。
【0069】
【表1】

試験例1の実験結果から、プラノプロフェンには紫外線曝露後の角膜上皮細胞の細胞生存率を向上させる作用があることが確認された。即ち、本結果から、プラノプロフェンはUV等による角膜上皮障害の抑制に有効であることが明らかである。この結果はまた、プラノプロフェンには、紫外線暴露等による悪影響から角膜上皮細胞を保護する作用があることを示している。
【0070】
更にこの結果は、プラノプロフェンに紫外線暴露により引き起こされる角膜障害の症状
の治癒を促進又は悪化を軽減する作用があることを示しており、プラノプロフェンが紫外線により惹起される角膜障害の予防又は治療剤として有用であることが明らかである。
【0071】
加えて、プラノプロフェンと同様の非ステロイド性抗炎症剤であるジクロフェナックナトリウム添加群では、無添加群よりも、細胞生存率が低下しているのに対して、プラノプロフェンは無添加群よりも細胞生存率は高いことから、抗炎症剤の中でも、特にプラノプロフェンが紫外線等による角膜上皮障害の抑制、保護、予防・治療に有用であることが確認された。
【0072】
実施例1−11
常法により、以下の表2及び3に記載の処方の点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液(表中、CL装着液という)、コンタクトレンズ用消毒剤(表中、CL消毒剤という)、及びコンタクトレンズ用保存剤(表中、CL保存剤という)を調製した。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする角膜障害抑制剤。
【請求項2】
角膜障害が紫外線によるものである、請求項1に記載の角膜障害抑制剤。
【請求項3】
プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする角膜保護剤。
【請求項4】
紫外線暴露に対する角膜保護のために使用される、請求項3に記載の角膜保護剤。
【請求項5】
プラノプロフェン又はその塩を有効成分とする、紫外線により引き起こされる角膜障害の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2010−189442(P2010−189442A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129731(P2010−129731)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【分割の表示】特願2003−290844(P2003−290844)の分割
【原出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【出願人】(000115991)ロート製薬株式会社 (366)
【Fターム(参考)】