説明

解凍状態判定方法および解凍装置

【課題】被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定することを目的としている。
【解決手段】 被解凍物1へ電波発生手段3より周波数を変化させて電波を照射し、電波反射量検出手段4により前記電波の反射量を検出し、前記電波反射量検出手段4の検出値から被解凍物1の表面および中心部の解凍状態を判定することを特徴とする。また、被解凍物1を収容する解凍室2と、被解凍物1へ電波を照射し、電波の周波数が可変の電波発生手段3と、被解凍物1へ照射する電波の反射量を検出する電波反射量検出手段4と、前記電波発生手段3を制御して周波数を変化させ、前記電波反射量検出手段4の検出値から被解凍物1の表面および中心部の解凍状態を判定する制御手段9とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍食品の解凍状態を判定するための解凍状態判定方法および冷凍食品を解凍するための解凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品に対して照射したマイクロ波の反射量を検出し、その検出値に基づいて冷凍食品か非冷凍食品かの食品状態を判定する技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特公平7−26736号公報
【0004】
特許文献1に記載の技術は、食品の表面の解凍を判定することができるが、食品の中心部まで判定することができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、被解凍物へ電波発生手段より周波数を変化させて電波を照射し、電波反射量検出手段により前記電波の反射量を検出し、前記電波反射量検出手段の検出値から被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定することを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、被解凍物を収容する解凍室と、被解凍物へ電波を照射し、電波の周波数が可変の電波発生手段と、被解凍物へ照射する電波の反射量を検出する電波反射量検出手段と、前記電波発生手段を制御して周波数を変化させ、前記電波反射量検出手段の検出値から被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定する制御手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この実施の形態は、本発明の解凍状態判定方法、すなわち食品等(以下、「被解凍物」と云う。)へ電波発生手段より周波数を変化させて電波を照射して、電波反射量検出手段により前記電波の反射量を検出して、前記電波反射量検出手段の検出値から被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定する解凍状態判定方法を実施する解凍装置である。まず、この解凍装置について説明する。
【0010】
前記解凍装置は、被解凍物を収容する解凍室と、被解凍物へ電波を照射し、電波の周波数が可変の電波発生手段と、被解凍物へ照射する電波の反射量を検出する電波反射量検出手段と、前記電波発生手段を制御して周波数を変化させ、前記電波反射量検出手段の検出値から被解凍物の表面および中心部の解凍状態を判定する制御手段とを備えている。
【0011】
このような構成の前記解凍装置の作用について説明する。まず、前記解凍室内へ収容された被解凍物は、前記電波発生手段から電波が周波数を変化させながら照射される。この
電波は、被解凍物へ吸収され、一部反射波となる。そして、前記電波反射量検出手段がこの反射波の反射量を検出する。前記制御手段は、この反射量から被解凍物の解凍状態を判定する。これにより、被解凍物の解凍された部分と凍っている部分の解凍状態を判定する。
【0012】
つぎに、この実施の形態の構成要素について説明する。まず、前記解凍室は、被解凍物の解凍に用いられる区域であり、被解凍物を収容し出し入れ可能な室,部屋、容器,槽を意味し、解凍領域または解凍空間と称することもできる。
【0013】
前記電波発生手段は、被解凍物に対して周波数を変化させながら電波を照射する機能を有する。発生した電波が変化する周波数範囲は、好ましくは、1MHz〜3GHzとする。
【0014】
前記電波反射量検出手段は、前記電波発生手段から被解凍物へ照射した電波の反射量を検出するものである。前記電波反射量検出手段としては、アンテナを用いることができる。
【0015】
前記制御手段は、前記電波発生手段を制御し、前記電波反射量検出手段により検出した反射量から被解凍物の解凍状態を判定する機能を有する。この制御手段は、判定手段と称することもできる。また、前記制御手段は、反射量からの判定に限らず、前記電波発生手段からの照射量および前記電波反射量検出手段により検出した反射量に基づいて、演算して求めた反射率(反射量を照射量で割った値)から被解凍物の解凍状態を判定する機能も有する。この制御手段は、被解凍物表面の解凍状態判定および中心部の解凍状態判定をする構成とすることができる。これらの判定は、高周波数の電波であるほど被解凍物の表面にて吸収されやすく、被解凍物の中心部に吸収されにくいという性質,低周波数の電波であるほど被解凍物の表面から中心部にわたって吸収され、被解凍物の表面のみにおいて吸収されるのではないという性質を利用して行われる。
【0016】
前記制御手段は、前記電波発生手段から高周波数の電波を照射するとき、被解凍物の表面の解凍状態を判定し、低周波数の電波を照射するとき、被解凍物の中心部の解凍状態を判定する。
【0017】
それぞれの解凍状態を判定するには、被解凍物の解凍判定の基準値を決定する必要がある。まず、前記制御手段は、前記電波発生手段の周波数を変化させて、被解凍物へ高周波および低周波を照射する。そして、前記電波反射量検出手段は、電波の周波数の高低変化に伴って、被解凍物からの反射量を検出する。そして、前記制御手段は、高周波および低周波を照射したときの前記電波反射量検出手段により検出した反射量または前記反射率に基づいて、被解凍物の表面が解凍したと判定する基準値および被解凍物の中心部が解凍したと判定する基準値をあらかじめ設定された計算式または設定表にしたがって決定する。
【0018】
そして、前記電波発生手段は、周波数を変化させながら電波を被解凍物へ照射する。前記電波反射量検出手段は、前記電波発生手段から高周波および低周波を照射したときの反射量を検出する。前記制御手段は、前記電波反射量検出手段の検出した反射量または前記反射率に基づいて、設定された基準値と比較することにより、被解凍物の表面および中心部の解凍したことを判定する。また、これに限らず、解凍開始前に測定した反射量または反射率の値を判定することにより、被解凍物の厚さおよび凍っている程度等を判定することができる。
【0019】
より具体的に、被解凍物の表面の解凍状態判定について説明する。前記制御手段は、前記電波発生手段が高周波数の電波を照射することで、被解凍物の表面の解凍状態を判定する。前記制御手段は、前記電波反射量検出手段により検出した反射量または前記反射率が
基準値より低ければ被解凍物の表面は解凍していると判定し、基準値より高ければ被解凍物の表面は解凍されていないと判定する。
【0020】
つぎに、被解凍物の中心部の解凍状態判定について説明する。前記制御手段は、前記電波発生手段が低周波数の電波を照射することで、被解凍物の中心部の解凍状態を判定する。前記制御手段は、前記電波反射量検出手段により検出した反射量または前記反射率が基準値より低ければ被解凍物の中心部は解凍していると判定し、基準値より高ければ被解凍物の中心部は解凍されていないと判定する。
【0021】
そして、前記制御手段は、前記電波発生手段により高周波および低周波を照射した場合の両方において、前記電波反射量検出手段により検出した反射量または前記反射率が基準値より低いことを検出すれば、被解凍物の表面および中心部ともに解凍していると判定し、解凍処理を終了する制御を行う。この場合、前記制御手段は、解凍処理を行う時間を設定しているが、設定時間内に被解凍物が解凍すれば、解凍処理を終了する制御をすることができる。また、前記制御手段は、設定時間経過後、被解凍物が解凍していなければ、解凍処理を継続して行う制御をすることができる。
【0022】
以上のように、この実施の形態によれば、前記制御手段は、前記電波発生手段からの電波の周波数を高低に変化させて被解凍物の表面および中心部の反射量または反射率を検出することで、被解凍物の大きさに関わらず、正確に解凍状態を判定することができる。
【実施例】
【0023】
以下、この発明を実施した解凍装置の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、この発明の実施例の解凍装置の概略構成を示す縦断面の説明図である。図2は、本発明の実施例の判定手順を示すフローチャートである。
【0024】
前記実施例の解凍装置は、被解凍物1を収容する解凍室2と、この解凍室2内の被解凍物1に対して電波を照射する電波発生器3と、被解凍物1に対して照射した電波の反射量を検出する受信アンテナ4と、前記解凍室2内へ蒸気を供給する給蒸手段5と、前記解凍室2内を吸引排気し低圧に保持する減圧手段6と、減圧された前記解凍室2に外気を導入することにより復圧する復圧手段7と、前記解凍室2内の圧力を検出する圧力検出器8と、前記受信アンテナ4および前記圧力検出器8の信号を入力してメモリに記憶した制御手順に基づき、被解凍物1の解凍制御および解凍状態判定制御を行う制御器9とを主要部として備えている。
【0025】
前記解凍室2は、被解凍物1を出し入れするための扉(図示省略)を備えている。
【0026】
前記電波発生器3は、被解凍物1に対して電波を照射するもので、電波の周波数を変化する機能を有しており、この実施例では可変周波数範囲を1MHz〜3GHzとしている。
【0027】
前記受信アンテナ4は、被解凍物1からの反射波の量を検出するものであり、前記解凍室2の上面部に設置されている。
【0028】
前記給蒸手段5は、一端を前記解凍室2に接続し、清浄蒸気を前記解凍室2内へ供給し、被解凍物1を解凍するものである。前記給蒸手段5は、前記解凍室2側から軟水器,リボイラ,給蒸弁(いずれも図示省略)をこの順に設けた構成としている。前記減圧手段6は、前記解凍室2側から蒸気エゼクタ,熱交換器,逆止弁,水封式真空ポンプ(いずれも図示省略)をこの順に設けた構成としている。前記復圧手段7は、前記解凍室2側から復圧弁,除菌用フィルタ(いずれも図示省略)を設けた構成としている。
【0029】
前記解凍室2は、解凍モードなどの各種設定や運転状態および被解凍物の解凍状態を表示する表示器10をその前面の扉(図示省略)に備えている。また、前記解凍室2内には、被解凍物1を収容するための棚11,11,…が設けられている。図1で示した前記各棚11は、電波の通過可能な材料により構成される。
【0030】
前記制御器9は、解凍処理機能と、解凍状態判定機能とを有している。前記制御器9は、前記受信アンテナ4および前記圧力検出器8からの信号を入力し、所定の解凍処理手順(プログラム)に従い、前記電波発生器3,前記給蒸手段5,前記減圧手段6,前記復圧手段7,前記表示器10等を制御するように構成されている。
【0031】
前記制御器9は、解凍処理手順において、被解凍物1の表面解凍状態判定および中心部解凍状態判定を行う。前記解凍状態判定は、前記制御器9から前記表示器10へ信号を出力することで、ユーザーが前記表示器10にて解凍状態を確認することができる。以下に、この実施例の被解凍物1の解凍状態の判定を図1および図2にしたがって説明する。
【0032】
まず、被解凍物1を前記各棚11に載置し、前記解凍室2を密閉にし、被解凍物1の解凍判定の基準値を決定する。前記制御器9は、前記電波発生器3の周波数を1MHz〜3GHzの間で変化させて、被解凍物1へ高周波および低周波を照射する。そして、前記受信アンテナ4は、電波の周波数の高低変化に伴って、被解凍物1からの反射量を検出する。そして、前記制御器9は、高周波を照射したときの前記受信アンテナ4の検出値に基づいて、被解凍物1の表面が解凍したと判定する基準値Xと、低周波を照射したときの前記受信アンテナ4の検出値に基づいて、被解凍物1の中心部が解凍したと判定する基準値Yとをあらかじめ設定された計算式または設定表にしたがって自動算出する(ステップS1)。基準値X,Yの決定後、前記制御器9は、前記電波発生器3からの電波の照射を一時停止する。
【0033】
そして、前記制御器9は、前記復圧手段7を閉じた状態で、前記減圧手段6を作動し、減圧のみの排気を行い、その後減圧させながら前記給蒸手段5から蒸気を供給することによる排気を行うことにより、前記解凍室2内の空気排除を行う。続いて前記制御器9は、前記給蒸手段5を連続作動,すなわち前記圧力検出器8の検出圧力に応じて蒸気の供給を調整しながら、被解凍物1の解凍処理を行う。この解凍処理は、前記表示器10にて設定された時間行われる。
【0034】
前記制御器9は、ステップS2にて、解凍処理中に所定のタイミングで前記電波発生器3から高周波K1Hzを被解凍物1へ照射させる。そして、前記制御器9は、前記受信アンテナ4により検出した反射量を入力する。ステップS3にて、前記制御器9は、T1時間内において、前記受信アンテナ4の検出値が基準値X以上かどうかを判定する。基準値X以上である場合、被解凍物1の表面が凍っていることを前記表示器10に表示させ(ステップS4)、基準値X以下である場合、被解凍物1の表面が解凍していることを前記表示器10に表示させる(ステップS5)。そして、ステップS6に移行する。
【0035】
そして、前記電波発生器3は、T1時間高周波K1Hzを照射した後、設定したタイミングにてT2時間低周波K2Hzを照射する(ステップS6)。ステップS7にて、前記制御器9は、T2時間内において、前記受信アンテナ4の検出値が基準値Y以上かどうかを判定する。基準値Y以上である場合、被解凍物1の中心部が凍っていることを前記表示器10に表示させ(ステップS8)、解凍処理を継続させる処理をする(ステップS9)。このステップS9の処理後は、被解凍物1の中心部まで完全に解凍処理されていないので、再度ステップS2に移行する。
【0036】
前記制御器9は、T2時間内において、前記受信アンテナ4の検出値が基準値Y以下である場合、被解凍物1の中心部が解凍していることを前記表示器10に表示させる(ステップS10)。ステップS11にて、前記制御器9は、ステップS3での判定がYESであれば、被解凍物1の完全に解凍が行われたと判定し、解凍処理の終了処理をする(ステップS12)。また、前記制御器9は、解凍処理を終了する判定をすれば、前記設定時間を経過せずに解凍処理を終了する。また、前記制御器9は、前記設定時間を経過しても解凍処理を終了した判定をしなければ、前記設定時間を延長し、解凍処理を継続することができる。
【0037】
解凍処理が終了すると、前記制御器9は、前記給蒸手段5および前記減圧手段6の作動を停止し、前記復圧手段7を作動させることで前記解凍室2内を大気圧に戻す。
【0038】
前記の実施例によれば、前記制御器9により、電波の周波数を変化して照射することで、被解凍物1の表面および中心部の解凍状態を判定することができる。また、これにより、被解凍物1は、過剰に解凍されることなく、中心部まで解凍した状態で前記解凍室2から取り出すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例の解凍装置の概略構成を示す縦断面の説明図である。
【図2】本発明の実施例の判定手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 被解凍物
2 解凍室
3 電波発生器
4 受信アンテナ
9 制御器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解凍物1へ電波発生手段3より周波数を変化させて電波を照射し、電波反射量検出手段4により前記電波の反射量を検出し、前記電波反射量検出手段4の検出値から被解凍物1の表面および中心部の解凍状態を判定することを特徴とする解凍状態判定方法。
【請求項2】
被解凍物1を収容する解凍室2と、被解凍物1へ電波を照射し、電波の周波数が可変の電波発生手段3と、被解凍物1へ照射する電波の反射量を検出する電波反射量検出手段4と、前記電波発生手段3を制御して周波数を変化させ、前記電波反射量検出手段4の検出値から被解凍物1の表面および中心部の解凍状態を判定する制御手段9とを備えることを特徴とする解凍装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−86004(P2006−86004A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269175(P2004−269175)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】