説明

解凍装置および解凍方法

【課題】冷凍された食品を解凍する際に当該解凍された食品の品質の低下を確実に防止することができる解凍装置および解凍方法を提供すること。
【解決手段】解凍装置1は、冷凍された食品Fを、食品Fに対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度まで解凍するものであり、冷却液Cを貯留する貯留空間21と、食品Fを貯留空間21内に支持する載置板23とを有する処理槽2と、貯留空間21内に入れられた冷却液Cを冷却する冷凍機5とを備えている。この解凍装置1は、貯留空間21内に貯留され、冷却液Cの液温が解凍終了温度よりも高い初期温度の冷却液Cに食品Fを入れた状態で、予め設定された解凍終了時間内に、冷凍機5の作動により、冷却液Cを初期温度よりも低く、かつ、解凍終了温度よりも高い温度まで強制的に冷却するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍された食品を解凍する解凍装置および解凍方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍された食品(例えば、魚介類や肉類、野菜等)は、通常、解凍され、その後、そのままかまたは加工されて(調理されて)食に供される(例えば、特許文献1参照)。従来、冷凍された食品を解凍するには、例えば流水解凍機が用いられる。この流水解凍機は、水を貯留し、該水で食品を解凍する貯留槽を有している。流水解凍機では、貯留槽に貯留された水が一定の温度(冷凍された食品が解凍されるのに十分な温度)に維持されるとともに、貯留槽内で水に流れが生じるよう構成されている。
【0003】
しかしながら、前記流水解凍機を用いて食品を解凍した際、食品が急激に解凍される、すなわち、食品の温度上昇(温度勾配)が急峻となるため、解凍後の(解凍が完了した)食品の品質が低下するという問題があった。例えば、冷凍されたフグを前記流水解凍機を用いて解凍した場合、解凍後のフグの切り身の透明性が損なわれていた、すなわち、解凍後のフグの切り身が白濁したものとなっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2005−295928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、冷凍された食品を解凍する際に当該解凍された食品の品質の低下を確実に防止することができる解凍装置および解凍方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(23)の本発明により達成される。
(1) 冷凍された食品またはそれを包装した状態の包装体を、前記食品に対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度まで解凍する解凍装置であって、
冷却液を貯留する貯留空間と、前記食品を前記貯留空間内に支持する支持部とを有する処理槽と、
前記貯留空間内に入れられた前記冷却液を冷却する冷却手段とを備え、
前記貯留空間内に貯留され、前記冷却液の液温が前記解凍終了温度よりも高い初期温度の前記冷却液に前記食品を入れた状態で、予め設定された解凍終了時間内に、前記冷却手段の作動により、前記冷却液を前記初期温度よりも低く、かつ、前記解凍終了温度よりも高い温度まで強制的に冷却するよう構成されていることを特徴とする解凍装置。
【0007】
(2) 前記冷却手段は、前記冷却液をその温度勾配が経時的に緩やかになるように冷却する上記(1)に記載の解凍装置。
【0008】
(3) 前記冷却手段は、その単位時間あたりの冷却能力の大きさが可変となるよう構成されたものであり、該冷却能力が経時的に低下するよう作動する上記(1)または(2)に記載の解凍装置。
【0009】
(4) 前記冷却手段の作動は、稼動状態と停止状態とが交互に行なわれる上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の解凍装置。
【0010】
(5) 前記冷却手段は、前記貯留空間内で前記支持部によって支持された前記食品または前記包装体よりも下方に設置され、冷媒が通過する冷媒管を有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の解凍装置。
【0011】
(6) 前記冷媒管は、前記貯留空間の内側に設置されている上記(5)に記載の解凍装置。
【0012】
(7) 前記冷媒管は、前記貯留空間の外側に設置されている上記(5)に記載の解凍装置。
【0013】
(8) 前記貯留空間内の前記冷却液を加熱する加熱手段を有する上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の解凍装置。
【0014】
(9) 前記加熱手段の作動により、前記貯留空間内の前記冷却液は、前記冷却手段が作動する前に、前記液温が前記解凍終了温度よりも高くなるように加熱される上記(8)に記載の解凍装置。
【0015】
(10) 前記液温が前記初期温度になった場合には、前記加熱手段の作動が終了する上記(9)に記載の解凍装置。
【0016】
(11) 前記加熱手段は、ヒートポンプで構成されている上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の解凍装置。
【0017】
(12) 前記加熱手段は、外形形状が棒状をなす加熱体を有する上記(8)ないし(10)のいずれかに記載の解凍装置。
【0018】
(13) 前記貯留空間内の前記冷却液を攪拌する攪拌手段を有する上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の解凍装置。
【0019】
(14) 前記貯留空間内に前記冷却液を供給する供給手段を有し、
前記供給手段の作動による前記貯留空間内への前記冷却液の供給が完了した場合には、前記撹拌手段が作動する上記(13)に記載の解凍装置。
【0020】
(15) 前記撹拌手段の前記貯留空間内に位置する部分は、前記冷却手段の前記貯留空間内に位置する部分よりも下方に配置されている上記(13)または(14)に記載の解凍装置。
【0021】
(16) 前記攪拌手段は、前記貯留空間内に気泡を供給するバブリング装置である上記(13)ないし(15)のいずれかに記載の解凍装置。
【0022】
(17) 前記冷却手段は、その単位時間あたりの冷却能力が可変となるよう構成されたものであり、
前記撹拌手段は、前記冷却手段の前記冷却能力の大小に対応して、気泡の量を調整可能に構成されている上記(16)に記載の解凍装置。
【0023】
(18) 前記貯留空間内に電場を発生させる電場発生手段を有する上記(1)ないし(17)のいずれかに記載の解凍装置。
【0024】
(19) 前記冷却手段が作動した場合には、前記電場発生手段が作動する上記(18)に記載の解凍装置。
【0025】
(20) 前記電場発生手段は、一対の電極を有する上記(18)または(19)に記載の解凍装置。
【0026】
(21) 前記処理槽の槽壁が前記一対の電極のうちの一方を兼ねる上記(20)に記載の解凍装置。
【0027】
(22) 上記(1)ないし(21)のいずれかに記載の解凍装置を用いて、前記食品を解凍することを特徴とする解凍方法。
【0028】
(23) 冷凍された食品またはそれを包装した状態の包装体を、前記食品に対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度まで解凍する解凍方法であって、
液温が前記解凍終了温度よりも高い初期温度の冷却液に前記食品を入れた状態で、解凍終了時間内に、前記冷却液を前記初期温度よりも低く、かつ、前記解凍終了温度よりも高い温度まで強制的に冷却することを特徴とする解凍方法。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、解凍に際しての食品の急峻な温度上昇を抑制することができる。これにより、解凍に際しての食品の品質の低下を確実に防止することができる。具体的には、例えば食品としてフグを挙げた場合、流水解凍機を用いて解凍したときに比べて、解凍後のフグの切り身の透明性が損なわれるのが防止または抑制される。
【0030】
また、冷却手段が作動する前に、貯留空間内の冷却液が、加熱手段の作動により、液温が解凍終了温度よりも高くなるように加熱される場合には、解凍効果を向上させることができ、よって、解凍後の食品の品質の低下をより確実に防止することができる。
【0031】
また、供給手段の作動による貯留空間内への冷却液の供給が完了したときに撹拌手段が作動する場合には、食品に対する解凍を開始する前に、処理槽内の冷却液の温度分布が均一となる。これにより、解凍効果をさらに向上させることができ、解凍後の食品の品質の低下をより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の解凍装置および解凍方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1は、本発明の解凍装置の第1実施形態を示す縦断面図(概略図)、図2は、図1中のA−A線断面図(平面図)、図3は、図1に示す解凍装置のブロック図、図4は、図1に示す解凍装置を用いて食品を解凍する際の当該食品および冷却液のそれぞれの経時的な温度変化の概要を示すグラフ、図5〜図7は、それぞれ、図1に示す解凍装置に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。なお、以下では、説明の都合上、図1中(図9〜図11も同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0034】
図1〜図3に示す解凍装置1は、冷凍された食品F、または冷凍された食品Fを包装した状態の包装体(包装物)Qを解凍する装置である。本実施形態では、包装体Qを代表的に説明する。
【0035】
食品Fとしては、特に限定されないが、例えば、魚介類、肉類、野菜、加工食品(例えば麺類等)が挙げられる。本実施形態では、魚介類、特に、フグを一例に挙げて説明する。また、包装体Qでは、食品Fが例えばポリエチレン等のような樹脂材料で構成された袋体に包装されて(梱包されて)いる。
【0036】
解凍装置1は、処理槽2と、処理槽2に冷却液Cを供給する供給手段(冷却液供給手段)3と、処理槽2に貯留された(供給された)冷却液Cを加熱する加熱手段としてのヒータ4と、処理槽2に貯留された冷却液Cを冷却する冷凍機(冷却手段)5と、処理槽2に貯留された冷却液Cを攪拌するバブリング装置(攪拌手段)6と、制御手段7と、処理槽2内の冷却液Cの温度を検出する温度センサ(温度検出手段)8を備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0037】
処理槽2は、その横断面形状が四角形(正方形)をなす箱状体で構成されたものである。この処理槽2の内部には、冷却液Cを貯留する貯留空間21が形成されている。すなわち、処理槽2の底部24と底部24の縁部から立設する4つの槽壁22とにより、冷却液Cを貯留する貯留空間21が画成されている。
【0038】
なお、貯留空間21(処理槽2)の容積としては、特に限定されないが、例えば、80〜100Lであるのが好ましい。
【0039】
また、貯留空間21に貯留される(入れられる)冷却液Cとしては、特に限定されないが、例えば、塩水(海水)、すなわち、塩化ナトリウム水溶液や、水道水、蒸留水、純水のような水等が挙げられる。本実施形態では、塩水を一例に挙げて説明する。塩水は、それに電圧を印加した場合、通電されるものである。解凍装置1では、後述する電場発生手段9により処理槽2内に電圧を印加する。
【0040】
図1に示すように、貯留空間21の上下方向の途中には、食品Fを包装した包装体Qを貯留空間21内に支持する支持部として機能する載置板(載置部材)23が設置されている。この載置板23には、その厚さ方向に貫通する多数の貫通孔231が形成されている。
【0041】
貯留空間21は、載置板23により、上下に2つの空間に仕切られている。2つの空間のうちの上側の第1の空間211には、複数の包装体Qが収納される。また、第1の空間211には、温度センサ8が配置されている。下側の第2の空間212には、冷凍機5およびバブリング装置6をそれぞれ構成する部材や、ヒータ4が格納されて(収納されて)いる。
【0042】
なお、載置板23は、処理槽2に対して着脱自在に構成されている。載置板23を取り外すことにより、例えば、第2の空間212内を清掃したり、ヒータ4等の部材を交換する際にその操作(交換操作)を容易に行なうことができる。
【0043】
処理槽2の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。本実施形態では、処理槽2は、ステンレス鋼で構成されたものとなっている。
【0044】
図1に示すように、貯留空間21内に冷却液Cを供給する供給手段3は、冷却液Cが通過する供給管31と、供給管31の途中に設置された電磁弁32とを有している。
【0045】
供給管31は、その一端(図1中の右側)が下方に向かって開口している。供給管31の他端側(図1中の左側)は、貯留空間21内を満たすのに十分な程度に冷却液Cが貯留されたタンク(図示せず)に接続されている。このタンク内の冷却液Cが供給管31を通過して、貯留空間21内に供給される。この冷却液Cにより、第1の空間211と第2の空間212とが満たされる。
また、供給管31は、その途中が処理槽2の槽壁22に支持されている。
【0046】
電磁弁32は、供給管31を開閉するものである。供給手段3では、電磁弁32が開状態のとき、流量が一定の冷却液Cを供給することができる。また、電磁弁32が閉状態のとき、冷却液Cの供給が停止する。
【0047】
冷凍機5は、貯留空間21内に入れられた冷却液を冷却する装置である。この冷凍機5は、例えば、蒸気圧縮冷凍機である。蒸気圧縮冷凍機は、一般に、蒸発器、圧縮機、凝縮器、膨張弁がこの順に管体を介して接続されたものである(参考文献:関信弘、「冷凍空調工学」、森北出版株式会社、1990年11月30日、p.2−5)。このような蒸気圧縮冷凍機では、まず、蒸発器内で吸熱作用によって蒸発した冷媒が、圧縮機内でその作動により高温高圧の蒸気となる。これを凝縮器に導いて、水または空気などで冷却すると、冷媒は、凝縮して液体となる。さらに、これを膨張弁を介して蒸発器に送入すると、再度蒸発して吸熱作用を行なう。このようなサイクルが、蒸気圧縮冷凍機(冷凍機5)で繰り返されている。なお、解凍装置1では、蒸発器が、図1に示す冷却コイル(冷媒管)51に相当している。
【0048】
冷凍機5は、その単位時間あたりの冷却能力(冷却能)の大きさ、すなわち、出力が可変となるモード(以下、このモードを「出力変更モード」と言う)を有している。出力を変更するには、例えば、冷凍機5内を流れる冷媒の流速を制御する(増減させる)ことで、行なうことができる。冷凍機5を出力変更モードに設定した場合、制御手段7の制御により、適宜、すなわち、所望のタイミングで冷凍機5の出力を変更することができる。本実施形態では、冷凍機5は、3つの出力レベル1〜3に変更することができる。これらの出力レベルの大きさは、(出力レベル1)>(出力レベル2)>(出力レベル3)となっている。これにより、冷凍機5は、出力が経時的に低下するよう作動し得る(図4参照)。
【0049】
図1に示すように、冷凍機5の冷媒(液化冷媒)が通過する冷却コイル51は、冷媒供給手源(図示せず)に接続されており、第2の空間212内、すなわち、貯留空間21内で載置板23によって支持された各包装体Q(食品F)よりも下側近傍に配置されている。また、図2に示すように、この冷却コイル51は、処理槽2(貯留空間21)の内側にその周方向に沿って形成されて(配置されて)いる。
【0050】
このように冷却コイル51が配置されていることにより、冷凍機5が作動した場合に各包装体Q周辺の冷却液Cを迅速かつ確実に冷却することができる。
【0051】
なお、冷却コイル51は、熱伝導性に優れた材料、例えば、ステンレス鋼のような金属材料で構成されている。
【0052】
ヒータ4は、貯留空間21内の冷却液Cを加熱するものである。このヒータ4は、加熱体41としての電気抵抗線を有し、その電気抵抗によるジュール熱を生じさせて加熱するよう構成されている。これにより、冷却液Cを後述する初期温度tまで確実に加熱することができる。
【0053】
図1および図2に示す加熱体41は、その外形形状が棒状をなしている。この加熱体41は、前述した貯留空間21内で載置板23によって支持された各包装体Qよりも下方に設置されている冷却コイル51よりも、さらに下方に配置されている(図1参照)。また、加熱体41は、貯留空間21の中心を通過するように配置されている(図2参照)。
【0054】
このように加熱体41が配置されていることにより、ヒータ4が作動した、すなわち、ジュール熱が生じた場合に、貯留空間21内の冷却液Cに対流を生じさせることができる。これにより、貯留空間21内の冷却液Cを均一に加熱することができ、よって、その冷却液Cの温度分布が均一となる。
【0055】
なお、加熱体41は、図1に示す構成では棒状であるが、これに限定されず、例えば、コイル状等であってもよい。
【0056】
バブリング装置6は、貯留空間21内の冷却液Cを気泡Bによって攪拌する装置である。図3に示すように、バブリング装置6は、ポンプ61と、ポンプ61の駆動(作動)を制御するドライバ62とを有している。
【0057】
また、図1および図2に示すように、バブリング装置6は、ポンプ61に接続されたバブリング管(管体)63を有している。このバブリング管63は、処理槽2(貯留空間21)の内側にその周方向に沿って配置されている(図2参照)。また、バブリング管63は、冷却コイル51(冷凍機5の貯留空間21内に位置する部分)よりも下方に配置されている。
【0058】
バブリング管63には、その管壁を貫通する多数の貫通孔631が形成されている。これらの貫通孔631は、バブリング管63の長手方向に沿って等間隔に配置されている。バブリング装置6では、ポンプ61からバブリング管63に空気が送り込まれる。この送り込まれた空気は、各貫通孔631を介して、バブリング管63の外に多数の気泡Bとなって流出する。各気泡Bは、それぞれ、第2の空間212から、載置板23の貫通孔231を介して、第1の空間211に流入する。このように、解凍装置1では、バブリング装置6によって貯留空間21の全体に渡って均一に気泡Bを供給することができる。これにより、貯留空間21内の冷却液Cを確実に攪拌することができ、よって、その冷却液Cの温度分布が均一となる。
【0059】
各貫通孔631は、それぞれ、バブリング管63の下方に偏在している、すなわち、下方に向かって開口している。これにより、ポンプ61が停止しているとき、各貫通孔631を介してバブリング管63内に冷却液Cが流入するのが防止される。
【0060】
なお、バブリング管63の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0061】
また、このような構成のバブリング装置6では、例えば攪拌羽根を有する攪拌装置に比べて、攪拌効率が高まると言う利点がある。
【0062】
図1に示すように、処理槽2の第1の空間211内の上側には、板状の電極91が設置されている。この電極91は、スイッチ92を介して交流電源20と電気的に接続されている。
【0063】
電極91と、ステンレス鋼で構成された処理槽2の槽壁22とが一対の電極を構成している。これにより、電極91と処理槽2の槽壁22との間に電圧が印加され、貯留空間21内に電場を発生させることができる。従って、解凍装置1では、電極91と処理槽2の槽壁22とを、貯留空間21内に電場を発生させる機能を有する電場発生手段9と言うことができる。
【0064】
貯留空間21内に電場が発生することにより、貯留空間21内の各食品Fを解凍した際の当該食品Fの色味や味(風味)が向上する。
【0065】
また、電極91に対応する電極を別途設けずに、その電極を処理槽2の槽壁22が担っている(兼ねている)ことにより、電場発生手段9の構成を簡単なものとすることができる。
【0066】
また、電極91の表面および処理槽2の内面には、それぞれ、絶縁処理が施されているのが好ましい。この絶縁処理としては、特に限定されないが、例えば、ゴム材料のような絶縁性を有する材料で構成された絶縁層を、電極91の表面および処理槽2の内面にそれぞれ形成する方法が挙げられる。
また、処理槽2(槽壁22)は、接地されているのが好ましい。
【0067】
図1に示すように、電極91と交流電源20との間には、スイッチ92が設置されている。このスイッチ92のON/OFFに対応して、貯留空間21内を、電場が発生している状態と、電場が発生していない状態とに切り替えることができる。
【0068】
なお、解凍装置1では、電極91と交流電源20との間にブレーカをさらに設置してもよい。また、解凍装置1では、スイッチ92をブレーカに置換してもよい。
【0069】
図3に示すように、制御手段7は、例えばCPUで構成される。この制御手段7は、ヒータ4と、冷凍機5と、電磁弁32と、バブリング装置6のドライバ62と、スイッチ92と、サーミスタで構成された温度センサ8と、それぞれ電気的に接続されており、これらの諸動作をそれぞれ制御する機能を有している。
【0070】
以上のように構成された解凍装置1では、図4に示す温度特性で、食品Fに対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度tまで、包装体Q(食品F)を解凍する。
【0071】
まず、包装体Qを解凍するには、処理槽2内に冷却液Cが予め貯留されている。この冷却液Cは、その液温が解凍終了温度tよりも高い初期温度tに設定されている。初期温度tに設定された冷却液Cに各包装体Qを入れた状態で、冷却が開始される。なお、図4中の温度tは、解凍開始時の食品Fの温度である。
【0072】
解凍が開始されると、冷凍機5が作動する。この作動により、冷却液Cは、予め設定された解凍終了時間m内で、初期温度tよりも低く、かつ、解凍終了温度tよりも高い温度まで強制的に冷却される。なお、解凍の際には、すなわち、解凍終了時間m内では、冷凍機5は、冷却液Cの温度勾配が経時的に緩やかになるように、冷却液Cを冷却するよう制御される。ここで、「温度勾配」とは、冷却液Cの温度がグラフ上において経時的に曲線(カーブ)を描きながら変化する際の、当該曲線に対する接線の傾きθのことを言う(図4参照)。
【0073】
このような冷凍機5の作動により、冷凍された食品Fを解凍する際に当該解凍された食品Fの品質の低下を確実に防止することができる。
【0074】
また、解凍終了時間m後には、そのときの冷却液Cの温度が所定時間(図4中の時間mから時間mまでの間)維持される。これにより、包装体Qの潜熱が冷却液Cに移行する。
【0075】
また、冷却液Cの温度が所定時間維持された後には、冷凍機5が所定時間(図4中の時間mから時間mまでの間)再度作動する。これにより、冷却液Cの温度(液温)がさらに低下する。この冷却液Cの作用により、食品Fが、いわゆる「締められる」こととなり、よって、食品Fの色味や味(風味)がさらに向上する、すなわち、鮮度の低下を抑制または防止することができる。
【0076】
次に、このような解凍を行なう、解凍装置1の制御手段7の制御プログラムを図5〜図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0077】
次に、解凍装置1の制御手段7の制御プログラムを図5〜図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0078】
解凍装置1では、以下の事項が予め設定されている。
冷凍機5が出力変更モードに設定されている。
【0079】
供給手段3の電磁弁32の開状態が維持される、すなわち、冷却液Cを処理槽2に貯留する貯留時間が、制御手段7に内蔵されているタイマ1により設定されている。解凍終了時間mが、制御手段7に内蔵されているタイマ2により設定されている(図4参照)。冷却液Cの液温を維持する時間(m−m)が、制御手段7に内蔵されているタイマ4により設定されている(図4参照)。冷凍機5の再作動時間(m−m)が、制御手段7に内蔵されているタイマ5により設定されている(図4参照)。
【0080】
また、初期温度t、解凍終了温度t、冷凍機5が出力レベル1から出力レベル2に切り替わるときの冷却液Cの温度t、冷凍機5が出力レベル2から出力レベル3に切り替わるときの冷却液Cの温度tの各温度がそれぞれ設定されている(図4参照)。
【0081】
また、供給手段3の電磁弁32が閉状態に設定されている。
また、スイッチ92は、OFFとなっている。
【0082】
タイマ1を作動させる(ステップS300)。次に、供給手段3の電磁弁32を開状態とする(ステップS301)。タイマ1により設定された所定時間(貯留時間)を経過したと判断されたら(ステップS302)、供給手段3の電磁弁32を閉状態とする(ステップS303)。
【0083】
次に、バブリング装置6のポンプ61、およびヒータ4をこの順に作動させる(ステップS304、S305)。処理槽2内の冷却液Cの温度(実温度)tが初期温度tとなったと判断されたら(ステップS306)、ヒータ4の作動を停止する(ステップS307)。ここで、処理槽2内に各包装体Qをそれぞれ投入する。
【0084】
タイマ2を作動させる(ステップS308)。次に、冷凍機5を出力レベル1で作動させ(ステップS309)、スイッチ92をONに設定する(ステップS310)。処理槽2内の冷却液Cの温度tが温度tとなったと判断されたら(ステップS311)、冷凍機5を出力レベル2で作動させる(ステップS312)。処理槽2内の冷却液Cの温度tが温度t4となったと判断されたら(ステップS313)、冷凍機5を出力レベル3で作動させる(ステップS314)。タイマ2により設定された所定時間(解凍終了時間m)を経過したと判断されたら(ステップS315)、冷凍機5の作動を停止する(ステップS316)。
【0085】
次に、スイッチ92をOFFに設定し(ステップS317)、バブリング装置6のポンプ61の作動を停止する(ステップS318)。
【0086】
次に、タイマ4を作動させ(ステップS319)、当該タイマ4により設定された所定時間を経過したと判断されたら(ステップS320)、冷凍機5を出力レベル1で作動させる(ステップS321)。
【0087】
次に、タイマ5を作動させ(ステップS322)、当該タイマ5により設定された所定時間を経過したと判断されたら(ステップS323)、冷凍機5の作動を停止する(ステップS324)。
【0088】
以上のような制御により、図4に示すように、解凍に際しての食品Fの急峻な温度上昇を抑制することができる。これにより、解凍に際しての食品Fの品質の低下を確実に防止することができる。具体的には、流水解凍機を用いて解凍した場合に比べて、解凍後のフグ(食品F)の切り身の透明性が損なわれるのが防止または抑制される。
【0089】
また、ステップS305〜S307において、冷凍機5が作動する前に、貯留空間内の冷却液Cは、ヒータ4の作動により、その温度tが初期温度tまで加熱されている。これにより、解凍効果を向上させることができ、よって、解凍後の食品Fの品質の低下をより確実に防止することができる。
【0090】
また、ステップS301〜S303において、冷却液Cの処理槽2への供給が完了した場合には、バブリング装置6が作動する。これにより、包装体Qに対する解凍を開始する前に、処理槽2内の冷却液Cの温度分布が均一となる。よって、解凍効果をさらに向上させることができ、解凍後の食品Fの品質の低下をより確実に防止することができる。
【0091】
また、ステップS309およびS310において、冷凍機5が作動した場合に、スイッチ92がONとなる、すなわち、電場発生手段9が作動する。これにより、貯留空間21内に電場が発生し、よって、各食品Fを解凍した際の当該食品Fの色味や味(風味)が向上する。
【0092】
また、図4に示すように、解凍装置1では、温度tが温度(t+t)/2となっている。この場合、冷却液Cの温度tが温度tに達するまでの時間mは、時間mの20〜60%であるのが好ましく、20〜30%であるのがより好ましい。
【0093】
解凍装置1では、このような数値範囲内で温度tが温度tに達するような温度特性で、各包装体Qがそれぞれ解凍される。
【0094】
なお、解凍装置1では、解凍終了時間mまでに3つの工程を経ると言うことができる。1つ目の工程は、冷却液Cの温度tが初期温度tから温度tまでに変化する、すなわち、冷凍機5が出力レベル1で作動する工程(第1の解凍工程(急冷工程))である。2つ目の工程は、冷却液Cの温度tが初期温度tから温度tまでに変化する、すなわち、冷凍機5が出力レベル2で作動する工程(第2の解凍工程)である。3つ目の工程は、冷却液Cの温度tが初期温度tから温度tに限りなく近づく、すなわち、冷凍機5が出力レベル3で作動する工程(第3の解凍工程(通常冷却工程))である。
【0095】
<第2実施形態>
図8は、本発明の解凍装置(第2実施形態)に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。
【0096】
以下、この図を参照して本発明の解凍装置および解凍方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0097】
本実施形態は、冷凍機に対する制御が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0098】
本実施形態の解凍装置1では、冷凍機5は、それが作動した際、出力レベルが一定で出力するよう構成されている。すなわち、冷凍機5は、出力レベルが一定の作動状態(稼動状態)と停止状態とに切り替えられるよう構成されている。
【0099】
本実施形態の解凍装置1の制御手段7の制御プログラムを図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0100】
図5に示すステップS300からステップS308までは、前記第1実施形態と同様である。ステップS308を実行した後、冷凍機5を作動させ(ステップS400)、スイッチ92をONに設定する(ステップS401)。
【0101】
次に、処理槽2内の冷却液Cの温度tが温度tとなったと判断されたら(ステップS402)、冷凍機5を停止する(ステップS403)。
【0102】
次に、処理槽2内の冷却液Cの温度tが温度tとなったと判断されたら(ステップS404)、冷凍機5を作動させる(ステップS405)。
【0103】
次に、タイマ2により設定された所定時間(解凍終了時間m)を経過したと判断されたら(ステップS406)、図7に示すステップS316を実行し、さらに、それより下位のステップを順次実行する。
【0104】
このように冷凍機5が作動状態と停止状態とが交互に行なわれるよう制御されることにより、冷却液Cをその温度勾配が経時的に緩やかになるように冷却することができる。これにより、解凍に際しての食品Fの急峻な温度上昇を抑制することができ、よって、解凍後の食品Fの品質の低下を確実に防止することができる。
【0105】
<第3実施形態>
図9は、本発明の解凍装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【0106】
以下、この図を参照して本発明の解凍装置および解凍方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0107】
本実施形態は、冷却コイルの設置位置が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0108】
図9に示す解凍装置1Aでは、冷却コイル51が処理槽2(貯留空間21)の外側にその周方向に沿って配置されている。これにより、載置板23を処理槽2から取り外した場合、例えば、貯留空間21内をより容易に清掃することができる。また、冷却コイル51が冷却液Cに接するのが防止される。これにより、冷却液Cに接する第1実施形態の冷却コイル51の寿命よりも、本実施形態の冷却コイル51の寿命が長くなる。
【0109】
なお、冷却コイル51は、貯留空間21内で載置板23によって支持された各包装体Qよりも下側近傍に配置されているが、これに限定されず、例えば、前記各包装体Qと同じ高さに配置されていてもよい。
【0110】
<第4実施形態>
図10は、本発明の解凍装置の第4実施形態を示す縦断面図である。
【0111】
以下、この図を参照して本発明の解凍装置および解凍方法の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0112】
本実施形態は、解凍装置が循環系をさらに有すること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0113】
図10に示す解凍装置1Bは、冷却液Cが循環する循環系10をさらに有している。循環系10は、冷却液Cが通過する管路(流路)101と、管路101の途中に設置されたポンプ102とを有している。
【0114】
管路101は、その一端部が第1の空間211内に開口する第1の開口部103を構成し、他端部が第2の空間212内に開口する第2の開口部104を構成している。また、第1の開口部103および第2の開口部104には、それぞれ、フィルタ105が設置されている。各フィルタ105により、冷却液C内の例えば肉片等のようなゴミを捕捉することができる。
【0115】
ポンプ102は、制御手段7と電気的に接続され、その駆動が制御されている。ポンプ102が駆動することより、第1の開口部103から冷却液Cが吸引され、当該吸引された冷却液Cが第2の開口部104へ送出される(図10中の矢印参照)。これにより、冷却液Cは、循環系10を介して、処理槽2内を循環する。
【0116】
また、管路101の途中には、加熱体41が設置されている。この加熱体41により加熱された冷却液Cは、第2の開口部104を介して、処理槽2内に流入する。
【0117】
以上のような構成により、貯留空間21内の冷却液Cの温度分布が均一となる。
なお、管路101の構成材料としては、例えば、各種金属材料や各種プラスチック等を単独または組み合わせて用いることができる。
【0118】
また、各フィルタ105としては、特に限定されないが、例えば、金属材料(ステンレス鋼)で構成された線状体(ワイヤ)を網目状に形成したものが挙げられる。
【0119】
<第5実施形態>
図11は、本発明の解凍装置の第5実施形態を示す横断面図(平面図)である。
【0120】
以下、この図を参照して本発明の解凍装置および解凍方法の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0121】
本実施形態は、撹拌手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図11に示す解凍装置1Cのバブリング装置6Aは、4本のバブリング管63Aを有している。各バブリング管63Aは、それぞれ、棒状をなし、その一端側(図11中右側)が処理槽2の槽壁22に支持されている。各バブリング管63Aは、それぞれ、ポンプ61と接続されている。
【0122】
また、各バブリング管63Aとポンプ61との間には、それぞれ、電磁弁64が設置されている。電磁弁64は、その開閉動作が制御手段7によって制御されている。
【0123】
このような構成の解凍装置1Cでは、冷凍機5の出力の大小、すなわち、出力レベルに対応して、各電磁弁64の開閉が制御される。
【0124】
冷凍機5が出力レベル1で駆動している場合、4つの電磁弁64が開状態となるよう制御される。これにより、気泡Bの供給量が最大となる。また、冷凍機5が出力レベル3で駆動している場合、4つの電磁弁64のうちの例えば1つが開状態となり、残りの3つが閉状態となるよう制御される。これにより、気泡Bの供給量が出力レベル1の場合のそれよりも少なくなる。また、冷凍機5が出力レベル2で駆動している場合、4つの電磁弁64のうちの例えば2つが開状態となり、残りの2つが閉状態となるよう制御される。これにより、気泡Bの供給量が出力レベル1の場合それと出力レベル3の場合それとの間のものとなる。
【0125】
このように、解凍装置1Cでは、出力レベルに対応して、気泡Bの量を調整することができる。これにより、包装体Qを解凍する際の攪拌を好適な状態に設定することができる。
【0126】
なお、気泡Bの量を調整する方法としては、4つの電磁弁64の開状態/閉状態を制御する方法に限定されず、例えば、各電磁弁64の開度を調整する方法や、ポンプ61の回転数を調整する方法を採ってもよい。
【0127】
また、バブリング管63Aの設置数は、図示の構成では4本であるが、これに限定されず、例えば、2本、3本、5本以上であってもよい。
【0128】
<第6実施形態>
図12は、本発明の解凍装置の第6実施形態を示す縦断面図である。
【0129】
以下、この図を参照して本発明の解凍装置および解凍方法の第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、加熱手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0130】
図12に示す解凍装置1Dでは、処理槽2(貯留空間21)内の冷却液Cを加熱する加熱手段がヒートポンプ4Aで構成されている。ヒートポンプ4Aの構成としては、一般的に、蒸発器(図示せず)、圧縮機(図示せず)、凝縮器(図示せず)、膨張弁(図示せず)がこの順に配置され、これらの機器同士を連結パイプ42で連結された回路構成をなすものが挙げられる。加熱手段としてヒートポンプ4Aを用いた場合には、例えば、エネルギ効率が高まり、安全性にも優れる。なお、解凍装置1Dは、ヒートポンプ4Aの他、前記第1実施形態のような加熱体41をさらに有していてもよい。
【0131】
図12に示すように、ヒートポンプ4Aを構成する2つの連結パイプ42は、それぞれ、処理槽2の槽壁22に埋設されている。また、解凍装置1Dには、3本の冷却コイル51が設置されており、これらの冷却コイル51も連結パイプ42と同様に処理槽2の槽壁22に埋設されている。このように連結パイプ42や冷却コイル51が埋設されていることにより、処理槽2内を清掃する際、その清掃作業を容易に行なうことができる。
【0132】
また、図12に示すように、連結パイプ42と冷却コイル51とは、鉛直方向に沿って交互に配置されているのが好ましい。
【0133】
以上、本発明の解凍装置および解凍方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、解凍装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0134】
また、本発明の解凍装置および解凍方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0135】
また、前記各実施形態で記載した解凍装置では、それぞれ、電場発生手段が省略されていてもよい。
【0136】
また、バブリング管は、前述したような構成のものに限定されず、例えば、焼結体(多孔質体)で構成されたものであってもよい。
【0137】
また、バブリング管を通過する気体としては、空気に限定されず、例えば、二酸化炭素等であってもよい。
【実施例】
【0138】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.解凍装置の製造
【0139】
(実施例)
まず、図1および図2に示すような解凍装置を製造した。この解凍装置の仕様は、下記に示すとおりである。
・処理槽の構成材料 :ステンレス鋼
・処理槽(貯留空間)の容積 :90L
【0140】
この解凍装置を、以下に示す条件で作動させた。
・解凍される食品 :フグ
・解凍される食品の解凍開始前の温度:−40度
・解凍される食品数 :4個
・解凍される食品を包装する袋体の材料:ポリエチレン
・処理槽に貯留される冷却液 :塩水
・処理槽に貯留される冷却液の解凍開始前の温度:38度
・冷凍機の出力レベル1 :1210W
・冷凍機の出力レベル2 :1100W
・冷凍機の出力レベル3 :990W
・冷凍機の冷却コイルを流れる冷媒:R404A
・交流電源の電圧: :200V
・設定された解凍終了時間 :3600秒
【0141】
以上のような条件で、解凍装置を作動させ、冷凍された食品を解凍した。そのときのフグおよび塩水のそれぞれの経時的な温度変化を図13に示す。
【0142】
(比較例1)
解凍装置として、前記実施例1と同様の解凍装置を用意した。そして、この解凍装置を用いて、冷凍機の出力レベルを変更せずに、冷却液の液温が解凍終了時間まで一定としたこと以外は、前記実施例1と同様の条件で作動させた。そのときのフグおよび塩水のそれぞれの経時的な温度変化を図13に示す。
【0143】
2.評価
魚介類や肉類等の鮮度を示す指数として、一般に「K値」が知られている(参考文献:「食品ビジネス用語」、日本食料新聞社、平成4年1月20日、p.146−147)。鮮魚や生鮮肉は、死後硬直した後、自己消化、そして腐敗の変化をたどる。その過程で、たんぱく質は、分解を続け、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、イノシン酸、イノシン、ヒポキサンチンの順に変質する。魚介類や肉類等がいわゆる「生き」がよいとされる場合、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、アデノシン一リン酸、イノシン酸がより多く含有されている。「K値」とは、イノシン酸への変化の過程を超えた、いわゆる「うまみ」を示さないイノシンおよびヒポキサンチンの含有率を示すものである。このK値が小さいほど、鮮度が高い、すなわち、「生き」がよいことになる。
【0144】
「K値」を測定するには、鮮度測定器(鮮度計)を用いることにより、それを行なうことができる。
【0145】
実施例1および比較例1の解凍装置を用いて解凍したそれぞれのフグのK値を鮮度測定器で測定した。その結果を図14に示す。
【0146】
実施例1の解凍装置で解凍したフグのK値と比較例1の解凍装置で解凍したフグとK値とを比較した。その結果、図14から明らかなように、実施例1の解凍装置で解凍したフグの方が、比較例1の解凍装置で解凍したフグよりもK値が低くなっていた。これにより、実施例1の解凍装置で解凍したフグの方が、比較例1の解凍装置で解凍したフグよりも鮮度が高いことが分かった。
【0147】
また、実施例1の解凍装置で解凍したフグの透明度と比較例1の解凍装置で解凍したフグと透明度とを目視で比較した。その結果、実施例1の解凍装置で解凍したフグの方が、比較例1の解凍装置で解凍したフグよりも透明度が高かった。すなわち、実施例1の解凍装置で解凍したフグは、透明性を有していたが、比較例1の解凍装置で解凍したフグは、白濁していた。
【0148】
また、図8〜図12に示す解凍装置を製造し、それらを前記実施例1と同様の条件でフグを解凍した。そして、同様の評価を行なった。その結果、各図に示す解凍装置で解凍したフグについても、前記実施例1とほぼ同様の評価結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の解凍装置の第1実施形態を示す縦断面図(概略図)である。
【図2】図1中のA−A線断面図(平面図)である。
【図3】図1に示す解凍装置のブロック図である。
【図4】図1に示す解凍装置を用いて食品を解凍する際の当該食品および冷却液のそれぞれの経時的な温度変化の概要を示すグラフである。
【図5】図1に示す解凍装置に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図6】図1に示す解凍装置に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】図1に示す解凍装置に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図8】本発明の解凍装置(第2実施形態)に内蔵された制御手段の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図9】本発明の解凍装置の第3実施形態を示す縦断面図である。
【図10】本発明の解凍装置の第4実施形態を示す縦断面図である。
【図11】本発明の解凍装置の第5実施形態を示す横断面図(平面図)である。
【図12】本発明の解凍装置の第6実施形態を示す縦断面図である。
【図13】冷凍された食品(フグ)を解凍する際の当該食品および冷却液(塩水)のそれぞれの経時的な温度変化を示すグラフである。
【図14】解凍された食品(フグ)の鮮度(K値)を示すグラフである。
【符号の説明】
【0150】
1、1A、1B、1C、1D 解凍装置
2 処理槽
21 貯留空間
211 第1の空間
212 第2の空間
22 槽壁
23 載置板(載置部材)
231 貫通孔
24 底部
3 供給手段(冷却液供給手段)
31 供給管
32 電磁弁
4 ヒータ(加熱手段)
4A ヒートポンプ(加熱手段)
41 加熱体
42 連結パイプ
5 冷凍機(冷却手段)
51 冷却コイル(冷媒管)
6、6A バブリング装置(攪拌手段)
61 ポンプ
62 ドライバ
63、63A バブリング管(管体)
631 貫通孔
64 電磁弁
7 制御手段
8 温度センサ(温度検出手段)
9 電場発生手段
91 電極
92 スイッチ
10 循環系
101 管路(流路)
102 ポンプ
103 第1の開口部
104 第2の開口部
105 フィルタ
20 交流電源
B 気泡
C 冷却液
F 食品
Q 包装体(包装物)
、m、m、m 時間
t、t、t、t、t、t 温度
θ 傾き
S300〜S324、S400〜S406 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍された食品またはそれを包装した状態の包装体を、前記食品に対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度まで解凍する解凍装置であって、
冷却液を貯留する貯留空間と、前記食品を前記貯留空間内に支持する支持部とを有する処理槽と、
前記貯留空間内に入れられた前記冷却液を冷却する冷却手段とを備え、
前記貯留空間内に貯留され、前記冷却液の液温が前記解凍終了温度よりも高い初期温度の前記冷却液に前記食品を入れた状態で、予め設定された解凍終了時間内に、前記冷却手段の作動により、前記冷却液を前記初期温度よりも低く、かつ、前記解凍終了温度よりも高い温度まで強制的に冷却するよう構成されていることを特徴とする解凍装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記冷却液をその温度勾配が経時的に緩やかになるように冷却する請求項1に記載の解凍装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、その単位時間あたりの冷却能力の大きさが可変となるよう構成されたものであり、該冷却能力が経時的に低下するよう作動する請求項1または2に記載の解凍装置。
【請求項4】
前記冷却手段の作動は、稼動状態と停止状態とが交互に行なわれる請求項1ないし3のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記貯留空間内で前記支持部によって支持された前記食品または前記包装体よりも下方に設置され、冷媒が通過する冷媒管を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項6】
前記冷媒管は、前記貯留空間の内側に設置されている請求項5に記載の解凍装置。
【請求項7】
前記冷媒管は、前記貯留空間の外側に設置されている請求項5に記載の解凍装置。
【請求項8】
前記貯留空間内の前記冷却液を加熱する加熱手段を有する請求項1ないし7のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項9】
前記加熱手段の作動により、前記貯留空間内の前記冷却液は、前記冷却手段が作動する前に、前記液温が前記解凍終了温度よりも高くなるように加熱される請求項8に記載の解凍装置。
【請求項10】
前記液温が前記初期温度になった場合には、前記加熱手段の作動が終了する請求項9に記載の解凍装置。
【請求項11】
前記加熱手段は、ヒートポンプで構成されている請求項8ないし10のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項12】
前記加熱手段は、外形形状が棒状をなす加熱体を有する請求項8ないし10のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項13】
前記貯留空間内の前記冷却液を攪拌する攪拌手段を有する請求項1ないし12のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項14】
前記貯留空間内に前記冷却液を供給する供給手段を有し、
前記供給手段の作動による前記貯留空間内への前記冷却液の供給が完了した場合には、前記撹拌手段が作動する請求項13に記載の解凍装置。
【請求項15】
前記撹拌手段の前記貯留空間内に位置する部分は、前記冷却手段の前記貯留空間内に位置する部分よりも下方に配置されている請求項13または14に記載の解凍装置。
【請求項16】
前記攪拌手段は、前記貯留空間内に気泡を供給するバブリング装置である請求項13ないし15のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項17】
前記冷却手段は、その単位時間あたりの冷却能力が可変となるよう構成されたものであり、
前記撹拌手段は、前記冷却手段の前記冷却能力の大小に対応して、気泡の量を調整可能に構成されている請求項16に記載の解凍装置。
【請求項18】
前記貯留空間内に電場を発生させる電場発生手段を有する請求項1ないし17のいずれかに記載の解凍装置。
【請求項19】
前記冷却手段が作動した場合には、前記電場発生手段が作動する請求項18に記載の解凍装置。
【請求項20】
前記電場発生手段は、一対の電極を有する請求項18または19に記載の解凍装置。
【請求項21】
前記処理槽の槽壁が前記一対の電極のうちの一方を兼ねる請求項20に記載の解凍装置。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれかに記載の解凍装置を用いて、前記食品を解凍することを特徴とする解凍方法。
【請求項23】
冷凍された食品またはそれを包装した状態の包装体を、前記食品に対する解凍が終了したとみなされる解凍終了温度まで解凍する解凍方法であって、
液温が前記解凍終了温度よりも高い初期温度の冷却液に前記食品を入れた状態で、解凍終了時間内に、前記冷却液を前記初期温度よりも低く、かつ、前記解凍終了温度よりも高い温度まで強制的に冷却することを特徴とする解凍方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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