説明

解剖学的生物物理学的軟骨保護のための電磁場刺激装置

電流発生装置(7、18、20)が、ソレノイド(24)に所定の傾斜を有するランプの繰り返しを含む波形の電流(i(t))を供給する電磁場刺激装置を提供する。この電流により電磁場が発生し、この電磁場が照射された制御プローブ(32)上に、電流(i(t))のランプ状の線形増大段階において、著しく一定の振幅を有する誘導電圧Vinが誘導される。この電磁場は、変性した関節軟骨の一体性を維持するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解剖学的生物物理学的軟骨保護(Anatomic Biophysical
Chondroprotection)のための電磁場刺激装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁場刺激装置は、脈動する可変の電流が少なくとも1つのソレノイドに送給可能になっており、骨組織を有する人体の部分に向けて電磁場を発生するものであるが、公知である。
【0003】
例えば、1974年に公開された米国特許第3,820,534号明細書には、50Hzより低い周波数の交流電気信号を供給したソレノイドによって発生した電磁場を介して骨組織の成長および修復を可能にする装置が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在知られている装置は、関節軟骨を変性(degeneration)から保護することができないばかりか、軟骨自体の分解(degradation)に対する保存効果を活性化して軟骨組織の一体性に有効な作用を与えることもできない。
【0005】
知られているように、関節軟骨の変性は非常に頻繁に発現し、加齢と共に悪化する。さらに言うと、軟骨表面の変質(alteration)は、年齢が75歳を超えた人たちの80%超に発現するのに対し、年齢が25歳未満の人たちの5%にしか発現しない。しかし、軟骨の変性は加齢の結果として起こるだけでなく、生物学的性質を有する問題および/または機械的問題に関連する複雑な一連の要因の最終結果でもある。
【0006】
関節軟骨は、若年時における小さな損傷以外に対しては、自己治癒力が顕著とは言えない。関節軟骨の質と機械的特性は、生活の過程において劣化する一方である。
【0007】
関節軟骨を損傷しうる原因の中では、機械的原理を有する原因と生物学的原理を有する原因とを特定することができる。
【0008】
機械的原因は、重外傷の結果によるものか、荷重軸の変質によるものかによって、それぞれ急性と慢性とがあり得る。
【0009】
生物学的原因は、主に、軟骨下骨および関節内構造(特に滑膜)に起因する炎症の存在による。炎症過程は、軟骨に対して強い異化作用を与える効果がある。なぜなら、炎症細胞は、軟骨細胞によるプロテオグリカンの合成を阻害する炎症促進性のサイトカイン(インターロイキン1および6、ならびにTNF−α)の合成と放出を行い、酵素(マトリックスメタロプロテイナーゼ3、MMP3)の合成を増大するが、代わりに軟骨基質を減少させるからである。関節構造の炎症反応は、急性または慢性の外傷、変形、軟骨下骨の虚血性骨壊死、顆状突起の骨髄浮腫、および直視下手術(open surgery)または関節鏡手術の副作用の結果として起こることが多い。
【0010】
これらの前提に基づき、軟骨下骨および関節構造の両レベルにおいて、炎症を局所的に抑制することができる当面の治療を受けることが重要となる。この治療は、同化活動およびプロテオグリカンの合成を容易にするために、軟骨の深さにある軟骨細胞に直接的に作用することができ、軟骨細胞および基質への炎症サイトカインの異化作用を防ぐことができるものでなければならない。軟骨、軟骨下骨組織および関節肉部構造(articular fleshy structure)の刺激による治療は、物理的手段を用いた場合にのみ実現できる。
【0011】
この前提に基づき、上記により特定したことを実行できる装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は前記目的を達成するものであって、軟骨組織を有する人体の一部分に向けて電磁場を発生する少なくとも1つのソレノイドを作動するための電流発生手段を備えた、解剖学的生物物理学的軟骨保護治療のための電磁場装置に関し、前記電流発生手段が、前記ソレノイドに所定の傾斜を有するランプの繰り返しを含む波形を持つ電流を供給し;前記ソレノイド中の前記電流のランプ状の線形増大段階において、該電流が発生する電磁場が照射される制御プローブ上に、著しく一定の振幅を有する電圧Vinを誘導することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、好ましい実施形態を表した添付図面を特に参照して本発明を詳述するが、本発明はこれら実施形態によって限定されない。
【0014】
図1は、本発明の原理により実現される解剖学的生物物理学的軟骨保護のための電磁場刺激装置の概略配線図を示す。
図2は、本発明の刺激装置により制御される2つの量の時間変調を示す。
図3は、本発明の刺激装置により活性化される細胞内現象を示す。
図4および図5は、本発明の刺激装置で処置した領域と、処置されていない領域との間で見られた、細胞内レベルでの違いに関するヒストグラムを示す。
図6(a)および図6(b)は、それぞれ、治療されていない関節領域の像と、本発明の刺激装置により治療した関節領域の像とを示す。
図7(a)および図7(b)は、本発明の刺激装置により治療した骨軟骨移植片の像を示す。
【0015】
図1において、解剖学的生物物理学的軟骨保護(CBA)のための電磁場刺激装置は、総じて符号1で示されている。
【0016】
特に、刺激装置1は、内部参照として用いられる一定周波数(例えば16MHz)を有する出力信号ckを発生するのに好適な同期信号発生器3を有している。装置1は、入力側の合成信号ckを受信する時分割回路4も有し、信号ckを時分割して、テーブル7の入力側に送給される走査信号scを発生することできる。
【0017】
テーブル7は、複数の選択可能なマップを有し、各マップは、入力側における走査信号scの各値に応じて目標電流強度を表す出力値Ioutを与える、関数f(t)を実行する。
【0018】
より詳しくは、関数f(t)は線形関数であり、入力側における走査信号scの増大に対して目標電流の強度値Ioutを線形に増大する、所定の傾斜を有するランプを表す。関数の走査が終わると、関数は再びランプの最初から走査される。このように、同期信号発生器3および時分割器4の操作の後、出力信号Ioutは電流強度値の増大を表すランプの繰り返しを有する鋸歯形状となる。
【0019】
装置1は、信号Ioutを入力側で受信し、同一の信号Ioutと実際の電流強度を表す信号Imisとの算術差を演算する減算ブロック12に送給する。減算ブロック12(リング偏差(ring error)の出力は、デジタル/アナログ変換器19を介してパルス幅変調ブロック(PMW)18を運転する出力を有する偏差増幅器14(例えば、比例−積分−微分回路)の入力側に送給される。
【0020】
PWMブロック18は、一定周波数(例えば250kHz)および可変デューティサイクルを有する出力側において、交流アナログ信号s(t)を発生する。例えば、信号s(t)は矩形波でもよい。
【0021】
信号s(t)のデューティサイクルは、PMWブロック18の入力側に送給される数値の関数として変調される。特に、信号s(t)のデューティサイクルは、PMWブロック18の入力側に送給される信号の数値が増大するにつれて、増大する。
【0022】
アナログ信号s(t)は、出力増幅ステージ20(公知のタイプ)の入力側に送給され、ローパスフィルタ22を介してソレノイド24に送給される出力電力信号S(t)を発生する。ローパスフィルタ22は、電力信号S(t)からのスプリアス成分を削減するために好適である。このフィルタ22は、電力シグナルS(t)が高調波成分を発生するので有利である。
【0023】
ソレノイド24は、軟骨27、中でも関節軟骨、の部分を有する人体26の部分に向けて特定のタイプの電磁場(以下詳述)を発生する。
【0024】
ソレノイド24は、物理的刺激が人体26の部分の解剖学的表面の形状に沿うようになっている。
【0025】
特に、ソレノイド24は、好ましくは複数の可撓性材料のシート(例えば、Kapton(厚さ50μm)のシート3枚)を用いて形成され、シート表面には写真製版法(photoengraving process)により銅線路が付着し、ソレノイド24自体の巻きを形成している。例えば、銅線路は互いに0.3mm離間し、幅1.7mm、厚さ35pmであるのが都合がよい。
【0026】
これら銅線路間の距離ならびに銅線路の厚さおよび幅により、ソレノイド24は特に可撓性を示し、これにより物理的刺激が、適用される領域の全周で均一になるように、治療領域全体にわたって伝達され、解剖学的表面の形状に沿うようになっている。
【0027】
特に、ソレノイド24によって誘導される電磁場は、軟骨組織の全広がり方向および全厚さ方向だけでなく、様々な関節表面、半月板、靱帯、シンポジア(symposia)、軟骨下骨等も含まれるように、人体26の部分にわたって分布する。
【0028】
検知装置28(例えば、分路抵抗器またはホール効果センサ)は、ソレノイド24中を流れる電流i(t)の値を検知する。検知器28の出力はフィードバック増幅器29に送給され、つづいてその出力はアナログ/デジタル変換器30に送給され、ソレノイド24中を流れる電流の測定値を表す信号Imisが生成される。
【0029】
減衰回路10は、プログラム可能なパラメータIPKによってテーブル7中の全ての点を比例的に減じ、均一に測られた電流特性を達成する。特に、パラメータIPKの値が0ならば、ソレノイド24に送給される電流の制限はなくなり、従って制約が無くなる。すなわち、これが最大負荷需要となる。しかし、もしパラメータIPKが0でないならば、このパラメータIPKは、代わりに、ソレノイド24により発生した電流に関する最大ピーク値を表す。従って、テーブル7の各値は、パラメータIPKによって表される最大ピーク値に比例する電流値の実現に寄与する。
【0030】
使用の際は、装置1のスイッチを入れた後で、参照機能を有し、電流強度の増大値を表すランプの繰り返しを有する信号Ioutが発生する。参照値Ioutは、テーブル7の異なるマップを選択することによって変えることもできる。
【0031】
PWMブロック18は、入力側で可変信号を受信し、結果的にこの入力信号の関数における電力信号S(t)のデューティサイクルを変える。これにより、信号Ioutによって生じた変調に従う電流をソレノイド24中に誘導し、よって信号Ioutは参照機能として働く。
【0032】
従って、ソレノイド24中の電流の強度は、電力信号S(t)のデューティサイクルを変化させることによって調節される。
【0033】
こうすることにより、所定の一定の傾斜を有するランプ(図2)の繰り返しを有する波形を持つ電流i(t)をソレノイド24に送給する電流発生器が実現される。
【0034】
この電流は電磁場を発生し、ソレノイド24中の電流のランプ状の線形増大段階において、電磁場が照射された制御プローブ32(図1)上に、著しく一定の振幅を有する誘導電圧Vinを誘導する。
【0035】
誘導電圧は、実際に、ソレノイド24に送給される信号の導関数に経時的に比例する。
【0036】
例えば、ソレノイド24を運転する全運転時間において、1mVから4mVの一定の振幅を有する誘導電圧Vinを効果的に実現できる。
【0037】
装置1のフィードバックシステムは、検知装置28、フィードバック増幅器29、およびアナログ/デジタル変換器30によって構成されるが、ソレノイド24中を循環する電流i(t)の連続モニタリングを行い、測定された電流値Imisをテーブル7で「マッピングされた」電流値、すなわち信号Iout、と比較する(減算ブロック12)。
【0038】
例えばソレノイド24のインピーダンス(抵抗および/またはインダクタンス)の小さな変化によって、これらの値に相違がある場合には、誘導電圧Vinの波形を不変に維持するために、直ちにフィードバックシステムが、リング偏差信号を介して電力信号S(t)のデューティサイクルを補正し、これによりソレノイド24に送給される電流の値も補正する。
【0039】
本出願人の実験結果は、装置1が解剖学的生物物理学的軟骨保護を達成することを示している。換言すれば、装置1が以下を行うことを示している:軟骨の一体性の維持、軟骨下骨および関節構造の両方に依存する関節炎過程の抑制、軟骨細胞および軟骨基質の炎症サイトカインの異化作用からの保護、軟骨細胞の代謝およびプロテオグリカンの合成を刺激する軟骨栄養機能の助長、および自家移植片の存在下において栄養機能を保護し一体化を確実にする軟骨下骨への直接的作用。
【0040】
特に、解剖学的生物物理学的軟骨保護は、主要な関節(特に膝)の関節軟骨および軟骨下骨に関する炎症および変性状態の治療のためや、大腿顆の軟骨下骨に関する骨髄浮腫のあらゆる状態においてや、膝の繊維状屈筋鞘の靱帯再建手術後における骨移植片の治癒および一体化においてや、膝関節の骨軟骨移植片の治癒および一体化において、ヒトに好適に用いられる。
【0041】
これらの効果は、in vitroおよびin vivoの両方で行われた一連の研究により確認された。その結果を以下に説明する。
【0042】
[In vitro効果: 炎症の抑制]
解剖学的生物物理学的軟骨保護は、炎症促進性細胞である好中球の細胞膜のアデノシン受容体A2Aに対して、特定の方法で作用し、アデノシンとの結合を可能にする。アデノシン受容体の範疇において、受容体A2Aはより優れた抗炎症効果を有する受容体である。
【0043】
アデノシンとの結合は、以下を引き起こす:炎症促進性サイトカインの生成の阻害、遊離基の合成の減少、ATPおよび抗炎症作用を有するサイトカインであるTGFβの生成の増大、およびシクロオキシゲナーゼ2の活性の阻害。
【0044】
本出願人により行われた動的研究は、本発明によって実現した刺激装置がどのようにして抗炎症効果を達成したかを示している。炎症の場合には、装置1を用いることにより、発生した生物物理学的刺激によって、細胞膜上のアデノシン受容体を実際に活性化することができる。
【0045】
図3は、細胞膜のアデノシン受容体A2A上の生物物理学的信号の伝達機構と、アデノシンおよびこれに付随する受容体の結合によって活性化され、抗炎症作用を生じる細胞内現象とを詳細に示している。
【0046】
図4は、代わりに、装置1による処置の有無において、アデノシンとヒト好中球の膜上のアデノシン受容体A2Aとの間に形成された結合の数を、時間の関数として表したヒストグラムを示している。図から分かるように、形成された結合の数と、結果として生じた抗炎症作用とは、本発明の原理により実現した装置1による刺激処置を行った場合、大略2倍になっている。
【0047】
[In vitro効果: 軟骨に対する同化作用]
解剖学的生物物理学的軟骨保護は、炎症サイトカイン(IL−1)の存在下で、軟骨に同化作用を及ぼす。
【0048】
炎症サイトカイン(IL−1)の存在下で培養された関節軟骨の外植片には、軟骨基質の分解とプロテオグリカンの合成の減少とを伴う、異化活動の増大が見られる。しかし、もし外植片が装置1により発生した電磁場に曝された場合、基質上の炎症サイトカインの異化作用は完全に阻害され、軟骨基質の一体性とプロテオグリカンの合成能力は維持される。
【0049】
図5は、以下の条件における関節軟骨の外植片中のプロテオグリカン(S−PG)の合成能力を示すヒスグラムを表す:対照条件、炎症サイトカインの異化作用への露出条件、および本発明の装置1による刺激と組み合わせた炎症サイトカインの異化作用への露出条件。図から分かるように、プロテオグリカンの合成能力は、炎症サイトカインによって非常に損なわれているが、刺激装置1により生じた解剖学的生物物理学的軟骨保護効果の存在により、多かれ少なかれ通常値(対照値と同等の値)に戻っている。
【0050】
[In vivo効果: 関節軟骨変性の阻害]
【0051】
解剖学的生物物理学的軟骨保護は、加齢と共に見られる関節軟骨に影響する変性過程を阻害する。モルモットにおける自発性変形性関節症のモデルを用いて、マンキン分類(Mankin
classification)により関節軟骨への損傷を定量し、本発明の装置1により与えられた刺激と関連づけられる強い軟骨保護の効果が明らかになった。
【0052】
図6(a)は、対照動物において加齢によって生じた軟骨変性の明らか兆候を示している。図6(b)は、代わりに、解剖学的生物物理学的軟骨保護治療により処置した軟骨を示しており、変性が起きていないことが明らかである。特に、軟骨の厚さ方向は、通常の水準に維持されており、軟骨基質の色が強く、フィブリル化現象は観察されない。
【0053】
[In vivo効果: 軟骨下骨組織の治癒]
解剖学的生物物理学的軟骨保護は、軟骨下骨組織に治癒作用を及ぼす。
【0054】
重い軟骨障害の治癒は、様々な外科的選択肢によって行われるが、その成功は軟骨下骨組織の特徴に大きく依存する。
【0055】
本発明の装置1の作用により、軟骨下骨組織は速やかに治癒され、骨再吸収の現象が防がれる。これにより、上を覆う関節軟骨が生存するための最適条件が得られる。さらに、骨移植片の存在下において、移植片そのものの初期固定が助長され、移植された骨組織の良好な一体化が確保され、小さい骨嚢胞の形成が防がれ、こうして骨移植片の安定性が確保される。なお、この点において、骨軟骨移植片の場合には、軟骨下骨の初期固定は、移植された軟骨の生存および維持のための必須の前提条件である。
【0056】
図7(a)および図7(b)は、移植手術の6ヶ月後に解剖学的生物物理学的軟骨保護治療の処置を行った動物モデルにおける、骨軟骨移植片に関する2つの像を示している。特に、図7(a)のマイクロラジオグラフィ像においては軟骨下骨の完全な一体化が見られ、図7(b)の組織像においては移植された軟骨の生存が観察され、軟骨基質の適切な厚さおよび強い色が示されている。
【0057】
本発明によって実現された解剖学的生物物理学的軟骨保護のための電磁場刺激装置の特徴の実験から、この装置により達成された効果は明らかである。
【0058】
特に、上記刺激装置を用いることにより、ソレノイドの運転電流特性を、刺激を与える電磁場が点毎に発生されるようにプログラムすることが可能となり、また異なる運転マップを単に選択するだけで、様々なタイプの治療および/または使用するソレノイドの違いを考慮して、異なる電流特性を発生することができる。特に、用いられるそれぞれ異なったソレノイドの「アドホック」な電流特性を実現できるという可能性は、有利である。
【0059】
さらに、運転電流の正確な制御により、可能な限り一定でかつこのタイプの治療に適した振幅を有する誘導電圧を発生することができる。
【0060】
最後に、フィードバックシステムの実現により、例えば、温度の変化に伴うインピーダンスの変化に起因する負荷の変化や成分の許容差に自動的に反応でき、刺激装置の高い操作安定性を確保し、従ってあらゆる条件において刺激装置自体の治療効果を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の原理により実現される解剖学的生物物理学的軟骨保護のための電磁場刺激装置の概略配線図を示す。
【図2】本発明の刺激装置により制御される2つの量の時間変調を示す。
【図3】本発明の刺激装置により活性化される細胞内現象を示す。
【図4】本発明の刺激装置で処置した領域と、処置されていない領域との間で見られた、細胞内レベルでの違いに関するヒストグラムを示す。
【図5】本発明の刺激装置で処置した領域と、処置されていない領域との間で見られた、細胞内レベルでの違いに関するヒストグラムを示す。
【図6】(a)は治療されていない関節領域の像を示し、(b)は本発明の刺激装置により治療した関節領域の像を示す。
【図7】(a)、(b)共に、本発明の刺激装置により治療した骨軟骨移植片の像を示す。
【符号の説明】
【0062】
1 刺激装置
3 同期信号発生器
4 時分割回路
7 テーブル(電流発生手段)
10 減衰回路(減衰装置)
12 減算ブロック(フィードバックシステム、減算装置)
14 偏差増幅器(フィードバックシステム)
18 パルス幅変調ブロック(電流発生手段、発生回路、パルス幅変調器)
19 デジタル/アナログ変換器
20 出力増幅ステージ(電流発生手段、発生回路)
22 ローパスフィルタ
24 ソレノイド
26 人体
27 軟骨
28 検知装置(フィードバックシステム)
29 フィードバック増幅器(フィードバックシステム、検知装置)
30 アナログ/デジタル変換器(フィードバックシステム)
32 制御プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨組織(27)を有する人体(26)の一部分に向けて電磁場を発生する少なくとも1つのソレノイド(24)を作動するための電流発生手段(7、18、20)を備え、
前記電流発生手段(7、18、20)が、前記ソレノイド(24)に所定の傾斜を有するランプの繰り返しを含む波形を持つ電流(i(t))を供給し;前記電流(i(t))のランプ状の線形増大段階において、該電流(i(t))が発生する電磁場が照射される制御プローブ(32)上に、著しく一定の振幅を有する電圧(Vin)を誘導することを特徴とする解剖学的生物物理学的軟骨保護のための電磁場刺激装置。
【請求項2】
前記電流発生手段が、少なくとも1つの関数(f(t))を格納した少なくとも1つのテーブル(7)を有し、前記関数(f(t))は入力側における走査信号(sc)の各値に関して目標電流強度(Iout)を表す出力値を与える線形関数であって、かつ入力側における前記走査信号(sc)の増加する値に関して前記目標電流強度(Iout)の増加する値を供給する所定の傾斜を有するランプを表す、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記テーブル(7)が、選択可能な異なる複数の関数(f(t))を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
入力側における前記走査信号(sc)を発生するために用いられるタイマー装置(3、4)を備えた、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記テーブル(7)の出力側と連絡する入力側を有する減衰装置(10)を備え、該減衰装置(10)が、前記ソレノイド(24)に送給される前記電流(i(t))の最大値を制限するプログラム可能なパラメータ(IPK)の関数において、前記目標電流強度(Iout)の値を減じるために用いられる、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
測定された電流値(Imis)を参照値(7、Iout)と比較(12)し、前記ソレノイド(24)中の前記電流(i(t))の連続モニタリングを行うフィードバックシステム(28、29、30、12、14)を備え、前記ソレノイド(24)のインピーダンスの変化によって前記2つの値の間に相違がある場合、前記誘導電圧(Vin)の波形を不変に維持するために、前記フィードバックシステムが前記ソレノイド(24)に送給される前記電流(i(t))の値を自動的に調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記フィードバックシステム(22、29、30、12、14)が、
前記測定された電流値(Imis)を供給するために用いられる検知装置(28、29)と、
前記測定された電流値(Imis)および前記参照値(7、Iout)の関数において偏差信号を発生するために用いられる減算装置(12)と
を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
入力側において前記偏差信号を受信し、前記偏差信号の関数において固定周波数および可変デューティサイクルを有する交流アナログ電力信号(S(t))を発生する発生回路(18、20)を備え、前記可変デューティサイクルが前記電流(i(t))の強度を調節するために用いられる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記発生回路(18、20)がパルス幅変調器(18)を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記発生回路(18、20)の出力側および前記ソレノイド(24)の間にローパスフィルタ装置(22)を備えた、請求項8または請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ソレノイド(24)が、人体(26)の前記部分の形状に適合する複数の可撓性材料のシートからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
電磁場を発生する工程と、該電磁場を軟骨組織(27)を含む人体(26)の部分に当てる工程とを有し、
前記電磁場を発生する工程が、所定の傾斜を有するランプの繰り返しを含む波形を持つ電流(i(t))によりソレノイド(24)を作動する工程を含み、前記電流(i(t))のランプ状の線形増大段階において、該電流(i(t))が発生する電磁場が照射される制御プローブ(32)上に、著しく一定の振幅を有する電圧(Vin)を誘導することを特徴とする
解剖学的生物物理学的軟骨保護のための方法。
【請求項13】
前記電磁場が、軟骨(27)の前記部分および該軟骨(27)の前記部分に付随した軟骨下骨の部分の、全体の厚さ方向および広がり方向にわたって浸透するまで、人体(26)の前記部分の深さ方向に貫通するように、前記電流(i(t))の強度が設定されかつ前記ソレノイド(24)が構成され、細胞内レベルで以下の過程のうちの少なくとも1つを活性化する、請求項12に記載の方法:
軟骨下骨および関節構造の両方に関する関節炎抑制の過程、
炎症促進性細胞である好中球の細胞膜のアデノシン受容体A2Aに対して、特定の方法で作用することができ、アデノシンとの結合の数を倍増する、関節炎抑制の過程、
軟骨細胞および軟骨基質に直接作用する炎症サイトカインの異化作用を阻害する過程、
軟骨細胞の代謝活動およびプロテオグリカンの合成を増進する過程、
関節軟骨の変性を阻害し、同一の関節軟骨の一体性を保つ過程、
軟骨下骨組織を速やかに治癒する過程、
大腿顆の軟骨下骨に関する骨髄浮腫を治癒する過程、および
膝の繊維状屈筋鞘に対する靱帯再建手術の後に骨移植片を治癒し一体化する過程。
【請求項14】
前記電磁場が、軟骨(27)の前記部分および該軟骨(27)の前記部分に付随した軟骨下骨の部分の、全体の厚さ方向および広がり方向にわたって浸透するまで、人体(26)の前記部分の深さ方向に貫通するように、前記電流(i(t))の強度が設定されかつ前記ソレノイド(24)が構成され、骨軟骨移植片の存在下において、軟骨(26)の前記部分の生存度の維持過程を活性化し、以下の作用のうちの少なくとも1つを誘発する、請求項12または請求項13に記載の方法:
下骨(underlying bone)への再吸収現象の阻害、
移植片の速やかな固定(anchorage)、
移植片の良好な骨結合、および
骨嚢胞の形成の阻害。
【請求項15】
前記ソレノイド(24)が、人体(26)の前記部分の形状に適合する複数の可撓性材料のシートからなる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【公表番号】特表2007−510487(P2007−510487A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538859(P2006−538859)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052914
【国際公開番号】WO2005/044375
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506157949)イジェア・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (2)
【Fターム(参考)】