説明

解析プログラム、解析方法、および解析装置

【課題】解析対象回路全体のリーク電流解析にかかる計算量を減らした関数を提供すること。
【解決手段】変動関数L1は、解析対象回路100内に含まれるセルごとの、定数aおよび第1の重み係数bとセルに固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数αとによって表現される正規分布から得られる平均値と、解析対象回路100内のセル群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数βと第2の重み係数cとの乗算結果と、により表現されている。変動関数L1では、第1の確率変数αがないため、第1の確率変数αの値を所定回数乱数で発生させる分の計算量が削減される。解析装置は、変動関数L1に、セルごとに取得した定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を与えることで、第2の確率変数βの値により変動する解析対象回路100のリーク電流量の変動関数を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路のリーク電流量を解析する解析プログラム、解析方法、および解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体集積回路の高集積化にともなって、リーク電流が増大する。リーク電流とは、電子回路において本来流れるはずのない箇所で流れ出る電流である。リーク電流は、半導体集積回路の消費電力・発熱を増大させ、回路性能を低下させる。
【0003】
そのため、回路設計時にリーク電流を正確に見積もり、その対策を行うことが重要となる。一方で、プロセスの微細化により、回路リーク電流に対してもプロセスに起因するばらつきが増大している。ばらつきを考慮し、より正確に回路リーク電流を見積もる方法として、統計的リーク電流解析が挙げられる。統計的リーク電流解析とは、解析対象回路内の各素子のリーク電流のばらつきの総和として、回路全体のリーク電流のばらつき分布を計算する手法である。リーク電流を統計的に見積もる手法として、数百万素子の確定的なリーク電流解析を数万回反復させるモンテカルロ法が知られている。
【0004】
また、統計的リーク電流解析に関連する技術としては、リーク電流量で影響される歩留まりを、その分布形状を限定することなく正確に求める技術が知られている(たとえば、下記特許文献1)。または、解析対象回路を階層的に分割し、その階層ごとにリーク電流量に関する分布の関数に対してWilkinson近似を適用し、最終的に解析対象回路全体のリーク電流量に関する分布の関数を近似計算する技術が知られている(たとえば、下記特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−205509号公報
【特許文献2】特開2010−56554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したモンテカルロ法によってリーク電流を統計的に見積もる手法によれば、確率変数の値として乱数の発生回数が多ければ、リーク電流を正確に見積もることができる反面、その計算に膨大な計算時間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、解析対象回路全体のリーク電流解析にかかる計算量を減らした関数を提供することができる解析プログラム、解析方法、および解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の側面によれば、解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記素子ごとに取得された前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、解析プログラム、解析方法、および解析装置が提案される。
【0009】
本発明の他の側面によれば、解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、記憶装置に記憶されており、前記素子ごとの、前記定数、前記第1の重み係数、および前記第2の重み係数を用い、前記第2の確率変数の値により変動する正規分布に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記正規分布の統計情報を算出し、前記正規分布で表現された前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、算出した統計情報を与えることで、前記第2の確率変数の値で変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、解析プログラム、解析方法、および解析装置が提案される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、解析対象回路全体のリーク電流解析にかかる計算量を減らした関数を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる解析装置の一動作例を示す説明図である。
【図2】図2は、実施の形態1にかかる解析装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図3】図3は、データテーブルの記憶内容の一例を示す説明図である。
【図4】図4は、実施の形態1にかかる解析装置200の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、実施の形態1にかかる解析装置200が行う解析処理手順例を示すフローチャートである。
【図6】図6は、実施の形態2にかかる解析装置200の一動作例を示す説明図である。
【図7】図7は、実施の形態2にかかる解析装置200による一動作例を示すフローチャートである。
【図8】図8は、実施の形態3にかかる解析装置の一動作例を示す説明図である。
【図9】図9は、実施の形態3にかかる解析装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、第2の確率変数βの値の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、実施の形態3にかかる解析装置900が行う解析処理手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施の形態4にかかる解析装置900の一動作例を示す説明図である。
【図13】図13は、実施の形態4にかかる解析装置900が行う解析処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明にかかる解析プログラム、解析方法、および解析装置の実施の形態は、実施の形態1〜実施の形態4に分けて説明する。
【0013】
実施の形態1では、解析対象回路のリーク電流量のばらつきに関する変動関数に代わって、該変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数を用いて、解析対象回路のリーク電流量のサンプル数を減少させた変動関数を提供する例を説明する。
【0014】
実施の形態2では、解析対象回路のリーク電流量のばらつきに関する既存の変動関数から自動で該変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数を作成する例を説明する。
【0015】
実施の形態3では、既存の変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数に含まれる複数の指数関数が1つの関数で近似された変動関数の正規分布によって、所定確率時の解析対象回路のリーク電流量を算出する例を説明する。
【0016】
実施の形態4では、既存の変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数に含まれる複数の指数関数が1つの関数で近似された変動関数の正規分布を自動で作成する例を説明する。
【0017】
(実施の形態1)
解析対象回路全体のリーク電流解析に各素子のリーク電流のばらつきを用いると、解析対象回路内の素子の数が多いため、計算量が多い割に各素子のリーク電流のばらつきは相殺される。そこで、実施の形態1では、解析対象回路内の各素子に固有のリーク電流量のばらつきに関する変動関数に代わって、該変動関数の正規分布の平均値で代用して解析対象回路内の素子群で共通のばらつきで変化する変動関数を提供する。すなわち、計算量が削減された変動関数が提供される。これにより、精度を維持しつつ確率密度分布を生成するためのサンプル数を減少させることで、対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0018】
図1は、実施の形態1にかかる解析装置の一動作例を示す説明図である。解析対象回路100は、セルC1〜セルCn(n≧1)を有している。解析対象回路100とは、回路設計時におけるリーク電流の解析対象となる半導体集積回路(たとえば、プロセッサ)である。セルとは、解析対象回路100に含まれるNOTゲート、ANDゲート、NANDゲート、ORゲート、配線、バッファ、INV(インバータ)、FFなどの素子である。図面では、解析対象回路100の一部を抜粋して表示している。ここでは説明上、解析対象回路100に含まれる全セルをセルC1〜Cnとする。
【0019】
解析対象回路100内の各セルのリーク電流量を算出するための変動関数は、下記式(1)のようにセル内のトランジスタのゲート長、ゲート幅などに基づく確率変数の関数として表現される。
【0020】
IC=exp(a+b×α+c×β) ・・・(1)
【0021】
αは、平均「0」、標準偏差「1」の標準正規分布に従いセルに固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数である。βは、平均「0」、標準偏差「1」の標準正規分布に従い解析対象回路100内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数である。aは、セルに固有のリーク電流に関する定数である。bは、第1の確率変数αに対する第1の重み係数である。cは、第2の確率変数βに対する第2の重み係数である。
【0022】
定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値とは、各セルに付された番号(1〜n)に基づいて、セルごとに記憶装置102に記憶されている。
【0023】
この場合、解析対象回路100全体のリーク電流量を算出するためのモデル式は、下記式(2)のように、各セルC1〜Cnのリーク電流のばらつきの総和となる。
【0024】
L0=IC1+IC2+・・・+ICn
=exp(a1+b1×α1+c1×β)+exp(a2+b2×α2+c2×β)+・・・+exp(an+bn×αn+cn×β)・・・(2)
【0025】
ただし、L0は、解析対象回路100のリーク電流を表す変動関数である。変動関数L0の場合、第1の確率変数αと第2の確率変数βごとにモンテカルロなどを用いて数万回乱数を発生させなければならない。実際の半導体集積回路では、何百万個もの素子を有している。第1確率変数αがセルごとに異なっていたとしても、素子が何百万個もあることで、ばらつきが相殺される可能性が高い。すなわち、いくつかの素子のばらつきが顕著であったとしても、素子数が何百万個もあれば、各素子のばらつきが相殺されて平均に近づく(大数の法則)。
【0026】
そこで、実施の形態1にかかる解析方法では、上記式(2)内の第1の確率変数αと定数aと第1の重み係数bで示される確率分布の関数を確率分布の平均値で代用する。
【0027】
【数1】

【0028】
L0と上記式(3)で示した変動関数L1の関係は、L0≒変動関数L1である。これにより、本解析方法によれば、第1の確率変数αをモンテカルロシミュレーションによってランダムに発生させることなく、解析対象回路100全体のリーク電流量を算出することができる。したがって、解析対象回路100全体のリーク電流の見積もりにかかる計算量を減少させることができる。変動関数L1は、あらかじめ記憶装置101に記憶されている。変動関数L1は、利用者が手作業やコンピュータを用いて作成してもよい。図面では、記憶装置101と記憶装置102とは、異なる記憶装置であるが、同一の記憶装置であってもよい。
【0029】
ここで、定数aと、第1の確率変数αと第1の重み係数bとの乗算結果と、で表される関数Iが表す対数正規分布の平均値について説明する。定数aと、第1の確率変数αと第1の重み係数bとの乗算結果と、で表される関数Iは、下記式(4)である。
【0030】
I=exp(a+b×α)・・・(4)
【0031】
第1の確率変数αは標準正規分布に従うため、第1の確率変数の確率密度関数は、下記式(5)である。
【0032】
【数2】

【0033】
よって、関数Iが表す対数正規分布の平均値は式(6)である。
【0034】
【数3】

【0035】
解析装置は、記憶装置102から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、をセルごとに取得する。解析装置は、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値を記憶装置101に記憶された変動関数L1に与えることで、第2の確率変数βの値で変動する変動関数L1を生成する。
【0036】
そして、解析装置は、モンテカルロシミュレーションを実行可能な他の装置に変動関数L1を出力してもよい。他の装置が、モンテカルロシミュレーションにより、第2の確率変数βの値を数万回(K回)乱数発生させて、変動関数L1−1〜変動関数L1−Kを算出することで、変動関数L1の確率密度分布d1を生成する。確率密度分布d1のグラフでは、縦軸が確率であり、横軸がリーク電流量である。他の装置が、変動関数L1の確率密度分布d1を積分することで、累積確率分布d2を生成する。累積確率分布d2のグラフでは、縦軸が累積確率であり、横軸がリーク電流量である。そして、他の装置が、累積確率分布d2から、所定確率時のリーク電流量を特定してもよい。または、解析装置が、他の装置の処理と同様の処理を行ってもよい。
【0037】
したがって、実施の形態1にかかる解析装置によれば、精度を維持しつつ確率密度分布を生成するためのサンプル数を減少させることで、対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0038】
(解析装置のハードウェア構成例)
図2は、実施の形態1にかかる解析装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2において、解析装置200は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read‐Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、を有している。さらに、解析装置200は、磁気ディスクドライブ204と、磁気ディスク205と、光ディスクドライブ206と、光ディスク207と、ディスプレイ208と、I/F(Interface)209と、を有している。さらに、解析装置200は、キーボード210と、マウス211と、スキャナ212と、プリンタ213と、を有している。また、各構成部はバス215によってそれぞれ接続されている。
【0039】
ここで、CPU201は、解析装置200の全体の制御を司る。ROM202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。RAM203は、CPU201のワークエリアとして使用される。磁気ディスクドライブ204は、CPU201の制御にしたがって磁気ディスク205に対するデータのリード/ライトを制御する。磁気ディスク205は、磁気ディスクドライブ204の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0040】
光ディスクドライブ206は、CPU201の制御にしたがって光ディスク207に対するデータのリード/ライトを制御する。光ディスク207は、光ディスクドライブ206の制御で書き込まれたデータを記憶したり、光ディスク207に記憶されたデータをコンピュータに読み取らせたりする。
【0041】
ディスプレイ208は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する。このディスプレイ208は、たとえば、CRT、TFT液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどを採用することができる。
【0042】
I/F209は、通信回線を通じてLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネットなどのネットワーク214に接続され、このネットワーク214を介して他の装置に接続される。そして、I/F209は、ネットワーク214と内部のインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。I/F209には、たとえばモデムやLANアダプタなどを採用することができる。
【0043】
キーボード210は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。マウス211は、カーソルの移動や範囲選択、あるいはウィンドウの移動やサイズの変更などをおこなう。ポインティングデバイスとして同様に機能を備えるものであれば、トラックボールやジョイスティックなどであってもよい。
【0044】
スキャナ212は、画像を光学的に読み取り、解析装置200内に画像データを取り込む。なお、スキャナ212は、OCR(Optical Character Reader)機能を持たせてもよい。また、プリンタ213は、画像データや文書データを印刷する。プリンタ213には、たとえば、レーザプリンタやインクジェットプリンタを採用することができる。
【0045】
(データテーブルの記憶内容)
つぎに、解析装置が用いるデータテーブルの記憶内容について説明する。なお、データテーブルは、たとえば、図2に示したRAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置により実現される。
【0046】
図3は、データテーブルの記憶内容の一例を示す説明図である。図3において、データテーブル300は、セルID、定数a、第1の重み係数b、第2の重み係数cのフィールドを有する。各フィールドに情報を設定することで、セルC1〜Cnごとのばらつきデータ300−1〜300−nがレコードとして記憶されている。
【0047】
セルIDは、対象回路に含まれるセルCiの識別子である(i=1,2,…,n)。定数a,第1の重み係数b,第2の重み係数cは、セルCiごとに記憶されている。ここで、定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値の特定方法について説明する。データテーブル300の作成者は、セルの種類ごとに特定の電圧や特定の温度などの条件を用いてSPICEシミュレータを用いてリーク電流量をシミュレーションする。そして、作成者は、シミュレーションにより算出したリーク電流量から上記式(1)に沿うように定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を特定する。または、作成者は、素子ごとにTEGを用いて、リーク電流の実測値から定数a、第1の重み係数b、および第2の重み係数cを特定してもよい。
【0048】
(実施の形態1にかかる解析装置200の機能的構成例)
図4は、実施の形態1にかかる解析装置200の機能的構成を示すブロック図である。解析装置200は、変換部401と、取得部402と、生成部403と、リーク電流量算出部404と、を有している。
【0049】
変換部401からリーク電流量算出部404の処理は、具体的には、たとえば、図2に示したROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置に記憶された解析プログラムにコーディングされている。そして、CPU201が記憶装置から解析プログラムを読み出して、解析プログラムにコーディングされている処理を実行することにより、変換部401からリーク電流量算出部404の処理が、実現される。CPU201が、I/F209を介してネットワーク214から解析プログラムを読み出してもよい。変換部401の詳細な処理については実施の形態2で説明するため、実施の形態1では、取得部402からリーク電流量算出部404までの詳細な処理について説明する。
【0050】
ここで、解析対象回路100に沿った変動関数L1については、あらかじめROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置101に記憶されている。
【0051】
まず、取得部402は、データテーブル300から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する。
【0052】
つぎに、生成部403は、記憶装置101に記憶された変動関数L1に、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値とを与えることで、第2の確率変数βで変動する変動関数L1”を生成する。
【0053】
たとえば、生成部403が、変動関数L1に、a1=−10、b1=0.1、・・・、c1=0.1、a1=−10、b1=0.1、c1=0.1を与えることにより、下記式(7)に示す変動関数L1”を生成する。
【0054】
L1”=exp(−10+(0.1×0.1)/2+0.1×β)+・・・+exp(−10+(0.1×0.1)/2+0.1×β)
=exp(−9.995+0.1×β)+・・・+exp(−9.995+0.1×β)・・・(7)
【0055】
つぎに、リーク電流量算出部404は、第2の確率変数βの値を乱数で発生させて、変動関数L1に与えることで、解析対象回路100のリーク電流量を算出する。そして、リーク電流量算出部404は、第2の確率変数βの値の乱数発生を所定回数K(たとえば、1万回)行うことで、K回分のリーク電流量を算出する。ここでは、算出されたリーク電流量を変動関数L1”−1〜変動関数L1”−Kと表す。
【0056】
そして、リーク電流量算出部404は、変動関数L1”−1〜変動関数L1”−Kに基づいて確率密度分布d1を生成する。リーク電流量算出部404は、生成した確率密度分布d1を積分することで、累積確率分布d2を作成する。リーク電流量算出部404は、累積確率分布d2から、所定確率におけるリーク電流量を特定する。たとえば、所定確率が99[%]の場合、99[%]の確率で、特定したリーク電流量以下になることが特定される。
【0057】
(実施の形態1にかかる解析装置200が行う解析処理手順)
図5は、実施の形態1にかかる解析装置200が行う解析処理手順例を示すフローチャートである。まず、解析装置200が、取得部402によって、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する(ステップS501)。つぎに、解析装置200が、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を記憶装置101に記憶された変動関数L1に与えることで、変動関数L1”を生成する(ステップS502)。
【0058】
つぎに、解析装置200が、モンテカルロシミュレーションの反復回数Kを設定し(ステップS503)、k=1とし(ステップS504)、k≦Kであるか否かを判断する(ステップS505)。そして、k≦Kであると判断された場合(ステップS505:Yes)、解析装置200が、第2の確率変数βの値を乱数で生成し(ステップS506)、生成した第2の確率変数βの値を変動関数L1”に与えて、変動関数L1”−kの値を算出する(ステップS507)。つぎに、解析装置200が、k=k+1とし(ステップS508)、ステップS505へ戻る。
【0059】
ステップS505において、k≦Kでないと判断された場合(ステップS505:No)、解析装置200が、変動関数L1”−1〜変動関数L1”−kの確率密度分布d1を作成し(ステップS509)、確率密度分布を積分して累積確率分布d2を作成する(ステップS510)。
【0060】
解析装置200が、累積確率分布から所定確率時のリーク電流量を特定し(ステップS511)、特定したリーク電流量を出力し(ステップS512)、一連の処理を終了する。
【0061】
実施の形態1によれば、対象回路全体のリーク電流量の解析の精度を維持しつつ、確率密度分布を生成するためのサンプル数を減少させることで、対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0062】
(実施の形態2)
つぎに、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、既存の2つの確率変数のそれぞれの値で変動するリーク電流のばらつきを表す変動関数から、1つの確率変数の値で変動する変動関数を生成する。これにより、利用者は既存のリーク電流量のばらつきを表す変動関数を用意しておくだけで、解析対象回路100のリーク電流量の解析にかかる計算量が減少されたリーク電流量に関する変動関数が提供される。
【0063】
また、実施の形態2では、実施の形態1で説明した同一の構成や機能について同一符号を付し、同一符号が付された構成や機能の詳細な説明を省略する。
【0064】
図6は、実施の形態2にかかる解析装置200の一動作例を示す説明図である。解析対象回路100に含まれるセルに沿った変動関数L0については、あらかじめROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置601に記憶されている。
【0065】
変換部401が、記憶装置601に記憶された変動関数L0から変動関数L1に変換する。上述したように、式(4)で表される対数正規分布の平均値は、式(6)となる。したがって、変換部401は、記憶装置601に記憶された変動関数L0のうち、セルごとの指数関数に含まれる「b×α」を「b2/2」に置き換えることで、変動関数L0から変動関数L1に変換することができる。なお、変換部401による変換処理によって得られる変動関数L1はROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置に記憶される。
【0066】
つぎに、取得部402は、データテーブル300から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する。
【0067】
生成部403は、変換部401によって変換された変動関数L1に、セルごとの、取得部402によって取得された定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値とを与えることで、第2の確率変数βで変動する変動関数L1”を生成する。
【0068】
つぎに、リーク電流量算出部404の詳細な処理は、実施の形態1で説明した処理と同一処理であるため、説明を省略する。
【0069】
(実施の形態2にかかる解析装置200が行う解析処理手順)
図7は、実施の形態2にかかる解析装置200による一動作例を示すフローチャートである。まず、解析装置200が、変換部401によって、記憶装置601に記憶された変動関数L0から変動関数L1に変換し(ステップS701)、取得部402によって、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する(ステップS702)。つぎに、解析装置200が、生成部403によって、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を変動関数L1に与えることで、変動関数L1”を生成する(ステップS703)。
【0070】
つぎに、解析装置200が、リーク電流量算出部404によって、モンテカルロシミュレーションの反復回数Kを設定し(ステップS704)、k=1とし(ステップS705)、k≦Kであるか否かを判断する(ステップS706)。そして、k≦Kであると判断された場合(ステップS706:Yes)、解析装置200が、リーク電流量算出部404によって、第2の確率変数βの値を乱数で生成し(ステップS707)、生成した第2の確率変数βの値を変動関数L1”に与えて、変動関数L1”−kの値を算出する(ステップS708)。つぎに、解析装置200が、リーク電流量算出部404によって、k=k+1とし(ステップS709)、ステップS706へ戻る。
【0071】
ステップS706において、k≦Kでないと判断された場合(ステップS706:No)、解析装置200が、リーク電流量算出部404によって、変動関数L1”−1〜変動関数L1”−kの確率密度分布d1を作成し(ステップS710)、確率密度分布d1を積分して累積確率分布d2を作成する(ステップS711)。解析装置200が、リーク電流量算出部404によって、累積確率分布d2から所定確率時のリーク電流量を特定し(ステップS712)、特定したリーク電流量を出力し(ステップS713)、一連の処理を終了する。
【0072】
実施の形態2にかかる解析装置によれば、解析対象回路100のリーク電流量の解析に関する既存の変動関数を用いて、精度を維持しつつ確率密度分布d1を生成するためのサンプル数を減少させることができる変動関数を提供することができる。よって、解析対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0073】
(実施の形態3)
つぎに、実施の形態3について説明する。変動関数L1が複数の指数関数の和であるため、リーク電流量を1回算出するときに、n回分の指数関数の算出が必要になる。さらに、第2の確率変数βを数万回乱数で発生させるため、数万回リーク電流量を算出しなければならない。そこで、実施の形態3では、解析対象回路100のリーク電流量の正規分布が近似された正規分布から、所定確率におけるリーク電流量が近似されたリーク電流量を得ることができる1つの指数関数で表される変動関数を提供する。これにより、指数関数の算出回数を減少させることができ、第2の確率変数βの値を乱数で発生させることなく、近似されたリーク電流量が得られる。
【0074】
また、実施の形態3では、実施の形態1および2で説明した同一の構成や機能について同一符号を付し、同一符号が付された構成や機能の詳細な説明を省略する。
【0075】
図8は、実施の形態3にかかる解析装置の一動作例を示す説明図である。解析対象回路100のリーク電流量の正規分布が近似された正規分布d3を表す変動関数L2が記憶装置801に記憶されている。変動関数L2は、複数の指数関数の和である変動関数L1が近似されて1つの指数関数で表された第2の確率変数βで変動する関数である。近似手法としては、Wilkinson近似でもよいし、経験則でもよい。
【0076】
さらに、記憶装置801には、正規分布d3の平均Aと、近似された正規分布d3の標準偏差Bの2乗であるB2とが記憶されている。記憶装置801に記憶されている平均Aとは、平均Aの値を算出できる式である。記憶装置801に記憶されているB2とは、B2の値を算出できる式である。正規分布d3のグラフでは、縦軸が確率であり、横軸がリーク電流量である。正規分布d3の統計情報が、平均Aの値と標準偏差Bの値である。ここで、図面でも示しているが、変動関数L2と、平均Aと、B2と、をそれぞれ下記式(8)〜(10)に示す。
【0077】
【数4】

【0078】
ここで、変動関数L1と変動関数L2とから平均AとB2の導出について説明する。たとえば、ばらつきがない(typ値)場合にはβ=0であり、変動関数L1と変動関数L2とが一致する場合、下記式(11)になる。下記式(11)を平均Aについて解くと、上記式(9)が得られる。
【0079】
【数5】

【0080】
そして、変動関数L1で表される正規分布の平均値と、変動関数L2で表される正規分布d3の平均値と、が一致する場合、下記式(12)になる。下記式(12)をB2について解くと、上記式(10)が得られる。
【0081】
【数6】

【0082】
解析装置が、データテーブル300から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、をセルごとに取得する。解析装置は、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値を記憶装置801に記憶された平均Aに与える。これにより、解析装置が、平均Aの値を算出する。
【0083】
解析装置は、セルごとの、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、算出した平均Aの値とを記憶装置801に記憶されたB2に与えることで、B2の値を算出する。これにより、解析装置が、B2の値の正の平方根を算出することで、標準偏差Bの値を算出する。
【0084】
解析装置が、記憶装置801に記憶された変動関数L2に平均Aの値と標準偏差Bの値とを与えることで、正規分布d3の変動関数L2”を生成する。
【0085】
図面で示すlog(e〜z)のうち、e〜zは、正規分布d3を積分した累積確率分布における所定確率時のリーク電流量であり、zは、所定確率を示している。正規分布d3のうち、−Log(e〜z)〜Log(e〜z)の範囲の累積確率が、zである。たとえば、所定確率が99[%]であれば、e〜0.99と表記する。
【0086】
ここで、L0と変動関数L1と変動関数L2との関係は、L0≒変動関数L1≒変動関数L2である。そして、L0の算出結果があるリーク電流量(e〜z)よりも小さくなる確率がzであるため、変動関数L2がe〜zよりも小さくなる確率はzである。よって、下記式(13),(14)が成り立つ確率は、zである。
【0087】
exp(A+B×β)<e〜〜z・・・(13)
A+B×β<log(e〜−z)・・・(14)
【0088】
そのため、解析装置が、標準正規分布の累積が所定確率になるときの第2の確率変数βの値を変動関数L2”に与えることで、近似された正規分布を積分した累積確率分布における所定確率時のリーク電流量を算出することができる。
【0089】
これにより、指数関数の算出回数を減少させることができ、第2の確率変数βの値を乱数で発生させることなく、近似されたリーク電流量が得られる。
【0090】
(実施の形態3にかかる解析装置の機能的構成例)
図9は、実施の形態3にかかる解析装置の機能的構成を示すブロック図である。解析装置900は、変換部901と、取得部902と、統計情報算出部903と、生成部904と、リーク電流量算出部905と、を有している。
【0091】
変換部901からリーク電流量算出部905の処理は、具体的には、たとえば、図2に示したROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置に記憶された解析プログラムにコーディングされている。そして、CPU201が記憶装置から解析プログラムを読み出して、解析プログラムにコーディングされている処理を実行することにより、変換部901からリーク電流量算出部905の処理が、実現される。
【0092】
ここで、解析対象回路100に含まれるセルに沿った変動関数L2と平均Aと標準偏差Bとについては、あらかじめROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置801に記憶されている。
【0093】
つぎに、取得部902は、データテーブル300から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する。
【0094】
統計情報算出部903は、記憶装置801に記憶された平均Aに、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を与えることで、平均Aの値を算出する。統計情報算出部903は、記憶装置801に記憶されたB2に、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を与えることで、B2の値を算出する。統計情報算出部903は、B2の値の正の平方根を算出することで、標準偏差Bの値を算出する。
【0095】
生成部904は、平均Aの値と、標準偏差Bの値と、を変動関数L2に与えることで、リーク電流量に関する正規分布が近似された正規分布d3の変動関数L2”を生成する。たとえば、平均Aの値が−14であり、標準偏差Bの値が、2の場合の変動関数L2”は下記式(15)となる。
【0096】
変動関数L2”=exp(−14+2×β)・・・(15)
【0097】
リーク電流量算出部905は、変動関数L2”に、標準正規分布の累積が所定確率になるときの第2の確率変数βの値を与えることで、近似された正規分布d3を累積した累積確率分布の所定確率時のリーク電流量を算出する。リーク電流量以下になる確率は、所定確率である。標準正規分布の累積が所定確率になるときの第2の確率変数βの値は、標準正規分布表や後述する累積確率分布d4から特定することができる。
【0098】
標準正規分布の累積が所定確率になるときの第1の確率変数βの値は、利用者が入力手段によって解析装置900に入力してもよい。入力手段としては、キーボード210やマウス211が挙げられる。または、標準正規分布における所定確率での第1の確率変数βの値は、あらかじめROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置に記憶されていてもよい。
【0099】
図10は、第2の確率変数βの値の一例を示す説明図である。図10では、標準正規分布の累積確率分布d4のグラフを示している。縦軸が、累積確率であり、横軸が、第2の確率変数βの値である。ここでは、所定確率が99[%]を例に挙げている。標準正規分布の累積が99[%]になるときの第2の確率変数βの値は、2.33である。たとえば、リーク電流量算出部905は、変動関数L2”に、第2の確率変数βの値として2.33が与えられることで、と下記のようにリーク電流量を算出する。
【0100】
L2”=exp(−14+2×2.33)
=0.009
【0101】
(実施の形態3にかかる解析装置900が行う解析処理手順)
図11は、実施の形態3にかかる解析装置900が行う解析処理手順を示すフローチャートである。まず、解析装置900が、取得部902によって、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、をセルごとに取得する(ステップS1101)。解析装置900が、記憶装置801に記憶された平均Aに、セルごとに取得された定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を与えることにより、平均Aの値を算出する(ステップS1102)。解析装置900が、記憶装置801に記憶されたB2に、セルごとに取得された定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を与え、B2の値を算出する(ステップS1103)。
【0102】
そして、解析装置900が、B2の正の平方根を算出することで、標準偏差Bの値を算出する(ステップS1104)。解析装置900が、変動関数L2に、平均Aの値と標準偏差Bの値を与えることにより、近似された正規分布の変動関数L2”を生成する(ステップS1105)。
【0103】
解析装置900が、変動関数L2”に、標準正規分布の累積が所定確率になるときの第2の確率変数βの値を与えることにより、近似された正規分布を累積した累積確率分布の所定確率時の解析対象回路100のリーク電流量を算出する(ステップS1106)。そして、解析装置900が、算出したリーク電流量を出力し(ステップS1107)、一連の処理を終了する。
【0104】
実施の形態3によれば、指数関数の算出回数を減少させることができ、第2の確率変数βの値を乱数で発生させることなく、近似されたリーク電流量が得られる。
【0105】
(実施の形態4)
実施の形態4は、既存の変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数に含まれる複数の指数関数が1つの関数で近似された変動関数の正規分布を自動で作成する。これにより、利用者の手間を省きつつ、リーク電流量の解析にかかる計算量を削減することができる。
【0106】
また、実施の形態4では、実施の形態1〜3で説明した同一の構成や機能について同一符号を付し、同一符号が付された構成や機能の詳細な説明を省略する。
【0107】
図12は、実施の形態4にかかる解析装置900の一動作例を示す説明図である。解析対象回路100に沿った変動関数L1については、あらかじめROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置1201に記憶されている。
【0108】
変換部901は、記憶装置に記憶された変動関数L1を正規分布に変換する。具体的には、変換部901は、変動関数L1の複数の指数関数を1つの関数で近似させることで、変動関数L1を変動関数L2に変換する。変動関数L2は、第2の確率変数の値により変動する正規分布を表すことができる。なお、変換処理によって得られる変動関数L2は、ROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置1201に記憶させる。
【0109】
そして、変換部901は、変動関数L1と変動関数L2に、第2の確率変数βの値として0を与えて、平均Aを生成する。変換部901は、変動関数L1の正規分布の平均値と変動関数L2の正規分布の平均値と、からB2を生成する。変動関数L2の正規分布は、平均Aと標準偏差Bとを表すことができる。なお、変換処理によって得られる平均AとB2は、ROM202、RAM203、磁気ディスク205、光ディスク207などの記憶装置1201に記憶させる。
【0110】
つぎに、取得部902は、データテーブル300から、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を解析対象回路100内のセルごとに取得する。
【0111】
統計情報算出部903は、変換部901による処理によって得られる平均Aに、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を与えることで、平均Aの値を算出する。統計情報算出部903は、変換部901による処理によって得られるB2に、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、を与えることで、B2の値を算出する。統計情報算出部903は、B2の値の正の平方根を算出することで、標準偏差Bの値を算出する。
【0112】
つぎに、生成部904とリーク電流量算出部905の処理については、実施の形態3で説明した処理と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0113】
また、実施の形態2で説明した変換部901の処理と実施の形態4で説明した変換部901の処理と、を組み合わせて、変換部901によってL0から変動関数L1へ変換し、変換部901によって変動関数L1から変動関数L2へ変換してもよい。
【0114】
(実施の形態4かかる解析装置900が行う解析処理手順)
図13は、実施の形態4にかかる解析装置900が行う解析処理手順を示すフローチャートである。まず、解析装置900が、変動関数L1の複数の指数関数を1つの関数で近似させることで、変動関数L2に変換する(ステップS1301)。解析装置900が、変動関数L1と変動関数L2に、第2の確率変数βの値として0を与えて、平均Aを生成する(ステップS1302)。解析装置900が、変動関数L1の正規分布の平均値と変動関数L2の正規分布の平均値と、からB2を生成する(ステップS1303)。
【0115】
解析装置900が、取得部902によって、定数aの値と、第1の重み係数bの値と、第2の重み係数cの値と、をセルごとに取得する(ステップS1304)。解析装置900が、平均Aに、セルごとに取得された定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を与えることにより、平均Aの値を算出する(ステップS1305)。
【0116】
そして、解析装置900が、B2に、セルごとに取得された定数aの値、第1の重み係数bの値、および第2の重み係数cの値を与え、B2の値を算出する(ステップS1306)。解析装置900が、B2の正の平方根を算出することで、標準偏差Bの値を算出する(ステップS1307)。解析装置900が、変動関数L2に、平均Aの値と標準偏差Bの値を与えることにより、近似された正規分布の変動関数L2”を生成する(ステップS1308)。
【0117】
解析装置900が、変動関数L2”に、標準正規分布の累積が所定確率になるときの第2の確率変数βの値を与えることにより、近似された正規分布を累積した累積確率分布の所定確率時の解析対象回路100のリーク電流量を算出する(ステップS1309)。そして、解析装置900が、算出したリーク電流量を出力し(ステップS1310)、一連の処理を終了する。
【0118】
これにより、実施の形態4によれば、複数の指数関数を有する変動関数を自動で近似させることで、利用者の手間を省きつつ、リーク電流量の解析にかかる計算量を削減することができる。
【0119】
以上実施の形態1で説明したように、解析対象回路全体のリーク電流解析に各素子のばらつきを用いると、解析対象回路内の素子の数が多いと、計算量が多い割に各素子のリーク電流のばらつきが相殺される。各素子のリーク電流のばらつきを表す変数について、数万回程度乱数で発生させなければならないため、計算量が多くなる。そこで、本解析プログラム、解析方法、および解析装置によれば、該変動関数の正規分布の平均値で代用した解析対象回路のリーク電流量に関する変動関数が提供される。これにより、精度を維持しつつ確率密度分布を生成するためのサンプル数を減少させることで、解析対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0120】
以上実施の形態2で説明したように、解析プログラム、解析方法、および解析装置によれば、解析対象回路のリーク電流量のばらつきに関する既存の変動関数から自動で該変動関数の正規分布の平均値で表される変動関数が提供される。これにより、利用者は既存の変動関数を利用することができるため、利用者の手間を省きつつ、解析対象回路全体のリーク電流量の解析にかかる計算量を削減させることができる。
【0121】
以上実施の形態3で説明したように、複数の指数関数を1つの関数で近似することにより、指数関数の算出回数を減少させることができる。
【0122】
また、複数の指数関数を1つの関数で近似することで、近似後の変動関数の正規分布は、解析対象回路全体のリーク電流値が近似された正規分布になる。そのため、標準正規分布の累積が所定確率になるときの確率変数の値を近似後の変動関数に与えることで、所定確率時のリーク電流量を特定することができる。したがって、確率変数をモンテカルロのように乱数で発生させずに、精度を維持しつつ、解析対象回路全体の解析にかかる計算量を削減することができる。
【0123】
以上実施の形態4で説明したように、解析プログラム、解析方法、および解析装置によれば、複数の指数関数を有する変動関数を近似させた変動関数と、変動関数で表される正規分布の統計情報が自動で提供される。これにより、利用者の手間を省きつつ、リーク電流量の解析にかかる計算量を削減することができる。
【0124】
なお、本実施の形態で説明した解析方法は、あらかじめ用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本解析プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本解析プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【符号の説明】
【0125】
100 解析対象回路
101,601,801,1201 記憶装置
200,900 解析装置
300 データテーブル
401,901 変換部
402,902 取得部
403,904 生成部
903 統計情報算出部
905 リーク電流量算出部
L0,L1,L1”,L2,L2” 変動関数
a 定数
b 第1の重み係数
c 第2の重み係数
α 第1の確率変数
β 第2の確率変数
d3 正規分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータに、
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、
記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、
処理を実行させることを特徴とする解析プログラム。
【請求項2】
前記記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数と、前記第1の確率変数と前記第1の重み係数との乗算結果と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に変換する処理を前記コンピュータに実行させ、
前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する処理は、
変換した前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成することを特徴とする請求項1に記載の解析プログラム。
【請求項3】
コンピュータに、
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、
記憶装置に記憶されており、前記素子ごとの、前記定数、前記第1の重み係数、および前記第2の重み係数を用い、前記第2の確率変数の値により変動する正規分布に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記正規分布の統計情報を算出し、
前記正規分布で表現された前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、算出した統計情報を与えることで、前記第2の確率変数の値で変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、
処理を実行させることを特徴とする解析プログラム。
【請求項4】
前記記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される他の正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を、前記正規分布と、前記正規分布で表現された前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数とに変換する処理を前記コンピュータに実行させ、
前記統計情報を算出する処理は、
前記変換処理された正規分布に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記変換された正規分布の統計情報を算出することを特徴とする請求項3に記載の解析プログラム。
【請求項5】
標準正規分布の累積が所定確率になるときの前記第2の確率変数の値を、生成した前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に与えることにより、前記所定確率時の前記解析対象回路のリーク電流量を算出する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項3または4に記載の解析プログラム。
【請求項6】
コンピュータが、
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、
記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、
処理を実行することを特徴とする解析方法。
【請求項7】
コンピュータが、
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得し、
記憶装置に記憶されており、前記素子ごとの、前記定数、前記第1の重み係数、および前記第2の重み係数を用い、前記第2の確率変数の値により変動する正規分布に、前記素子ごとに取得した前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記正規分布の統計情報を算出し、
前記正規分布で表現された前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、算出した統計情報を与えることで、前記第2の確率変数の値で変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する、
処理を実行することを特徴とする解析方法。
【請求項8】
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得する取得手段と、
記憶装置に記憶されている、前記素子ごとの、前記定数および前記第1の重み係数と前記第1の確率変数とによって表現される正規分布から得られる平均値と、前記第2の確率変数と前記第2の重み係数との乗算結果と、により表現される前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記取得手段によって前記素子ごとに取得された前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記第2の確率変数の値により変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする解析装置。
【請求項9】
解析対象回路内に含まれる素子に固有のリーク電流に関する定数の値と、標準正規分布に従い前記素子に固有のリーク電流のばらつきを表す第1の確率変数に対する第1の重み係数の値と、前記解析対象回路内の素子群で共通のリーク電流のばらつきを表す第2の確率変数に対する第2の重み係数の値と、を素子ごとに取得する取得手段と、
記憶装置に記憶されており、前記素子ごとの、前記定数、前記第1の重み係数、および前記第2の重み係数を用い、前記第2の確率変数の値により変動する正規分布に、前記取得手段によって前記素子ごとに取得された前記定数の値、前記第1の重み係数の値、および前記第2の重み係数の値を与えることにより、前記正規分布の統計情報を算出する統計情報算出手段と、
前記正規分布で表現された前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数に、前記統計情報算出手段により算出された統計情報を与えることで、前記第2の確率変数の値で変動する前記解析対象回路のリーク電流量の変動関数を生成する生成手段と、
を備えることを特徴とする解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−92901(P2013−92901A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234395(P2011−234395)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】