説明

解離可能な連結を有する第IX因子部分−ポリマー共役体

本明細書において、解離可能な連結を有する第IX因子部分−ポリマー共役体が提供される。本発明はまた、そのような共役体を作製する方法、そようなの共役体を投与するための方法なども提供する。本発明は、概して、解離可能な連結を有し、それによって体内において活性薬剤を解離するポリマーと活性薬剤の共役体に関する。加えて、本発明は、特に、そのような共役体を合成するための方法、共役体を精製するための方法等に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年12月27日に出願された米国暫定特許出願第60/877,589号に対する優先権の利益を主張するものであり、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、解離可能な連結を有し、それによって体内において活性薬剤を解離するポリマーと活性薬剤の共役体に関する。加えて、本発明は、特に、共役体を合成するための方法、共役体を精製するための方法等に関する。
【背景技術】
【0003】
科学者および臨床医は、活性薬剤を、患者に送達するのに適切な形態に開発する試みにおいて多くの課題に直面する。ポリペプチドである活性薬剤は、例えば、経口よりも注射によって送達されることが多い。このようにして、ポリペプチドは、胃のタンパク質分解環境へ曝露されることなく、体循環に導入される。しかしながら、ポリペプチドの注射には幾つかの欠点がある。例えば、多くのポリペプチドは、比較的短い半減期を有し、そのため反復注射を必要とし、不都合で、痛みを伴うことが多い。さらに、いくらかのポリペプチドは、患者の免疫系が、免疫原性ポリペプチドを破壊あるいは中和しようとするという結果を伴って、1つ以上の免疫応答を誘発し得る。当然ながら、一旦ポリペプチドが破壊あるいは中和されると、ポリペプチドは、その意図する薬力学的活性を発揮することができない。したがって、ポリペプチド等の活性薬剤の送達は、これらの物質が注射によって投与される時でさえも、問題になることが多い。
【0004】
注射による活性薬剤の送達の問題への取り組みは、ある程度成功している。例えば、活性薬剤を水溶性ポリマーと共役させることにより、免疫原性および抗原性が低下した、ポリマーと活性薬剤の共役体をもたらした。加えて、これらのポリマーと活性薬剤の共役体は、腎臓を介したクリアランスの低下および/または体循環における酵素分解の低下の結果として、非共役型の対応物と比べて大いに延長した半減期を有することが多い。より長い半減期を有する結果として、ポリマーと活性薬剤の共役体は、より低い頻度の投与で十分であり、痛みを伴う注射および医療専門家への訪問の全体的な数を減少させる。さらに、ごく僅かに可溶性の活性薬剤は、水溶性ポリマーに共役されると、水溶性の大幅な増加を示す。
【0005】
局所使用および内服に対するその立証された安全性ならびにFDAによるその承認のために、ポリエチレングリコールが、活性薬剤に共役されている。活性薬剤が、ポリエチレングリコールつまり「PEG」のポリマーに共役される時に、共役された活性薬剤剤を、従来「ペグ化されている」と称す。ペガシス(PEGASYS(登録商標))ペグ化インターフェロンアルファ−2a(Hoffmann−La Roche,Nutley,NJ)、ペグイントロン(PEG−INTRON(登録商標))ペグ化インターフェロンアルファ−2b(Schering Corp.,Kennilworth,NJ)、およびNEULASTA(登録商標)PEG−フィルグラスチム(Amgen Inc.,Thousand Oaks,CA)等のペグ化活性物質の商業的な成功は、活性薬剤の共役形態の投与が、非共役型の対応物に比べて著しい利点を有することができることを示す。また、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(Zalipsky(1993)Bioconjug.Chem.44):296−299)およびフルオロウラシル(Ouchi et al.(1992)DrugDes.Discov.9(l):93−I05)等の小分子もペグ化されている。Harrisらは、医薬調製物へのペグ化の作用に関する再考を提供している。Harris et al.(2003)Nat.Rev.DrugDiscov.2(3):214−221。
【0006】
これらの成功にもかかわらず、商業的に関連性のある薬物が得られるような活性薬剤へのポリマーの共役は、困難であることが多い。例えば、共役は、薬理学的活性(例えば結合部位またはその付近)に必要とされる活性薬剤上の部位またはその付近に付着されるポリマーをもたらし得る。したがって、そのような共役体は、例えば、ポリマーによって導入される立体効果に起因して、受け入れ難いほど低い活性を有し得る。受け入れ難いほど低い活性を有する共役体を修復する試みは、活性薬剤が、ポリマーへの付着に適切な部位をほとんど有しないか、または全く有しない場合、失敗し得る。したがって、付加的なペグ化の代替手段が所望される。
【0007】
この問題または他の問題を解決するために提案された1つの手法は、天然活性薬剤(または、ペグ化活性薬剤と比較して増加した活性を有する部分)が解離される、「可逆的ペグ化」である。例えば、可逆的ペグ化は、癌化学療法の分野において開示されている。非特許文献1を参照されたい。特許文献1は、可逆的連結を使用する共役体を説明する。この公報に説明されるように、可逆的連結は、酵素基質部分を使用することで達成することができる。しかしながら、酵素活性に依存するその手法は、酵素の有効性に依存することが指摘されている。非特許文献2を参照されたい。これらの酵素の量および活性に関する患者に起因する変動性は、異なる集団間での一貫性のない共役体の効能を導入し得る。したがって、分解のために酵素過程に依存しないさらなる手法が、望ましいとして記述されている。
【0008】
可逆的ペグ化への別の手法は、特許文献2に説明されており、(特に)生物活性薬剤が、加水分解性カルバミン酸結合によって水溶性非免疫原性ポリマーに連結される、水溶性プロドラッグを説明する。本明細書に説明されるように、生物活性薬剤は、酵素または触媒材料を追加する必要なく、体内カルバミン酸結合の加水分解によって容易に解離することができる。
【0009】
可逆的ペグ化への別の手法は、非特許文献2、特許文献3および特許文献4に説明される。この手法は、限られた数の活性薬剤に適用されているが、これらの参考文献は、可逆的ペグ化が特に適切であろう他の活性薬剤を無視している。さらに別の解離可能な手法は、特許文献5に説明される。
【0010】
出血性疾患の分野において、タンパク質(例えば、第IX因子等)は、出血性疾患に対処するまたは寛解させるために、患者に投与することができる場合もある。第IX因子および関連タンパク質の比較的短い半減期により、例えば、可逆的ペグ化によって、これらのタンパク質の体内半減期を増加させることが有利となろう。したがって、本発明は、当技術分野におけるこの必要性および他の必要性の解決に努める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0079155号明細書
【特許文献2】米国特許第7,060,259号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/089280号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0171920号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0293499号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Greenwald(1997)Exp.Opin.Ther.Patents7(6):601−609
【非特許文献2】Peleg−Schulman(2004)J.Med.Chem.47:4897−4904
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つ以上の実施形態において、以下の式の共役体を提供する。
【0014】
【化1】

式中、
POLYは、第1の水溶性ポリマーであり、
POLYは、第2の水溶性ポリマーであり、
は、第1のスペーサ部分であり、
は、第2のスペーサ部分であり、
αは、イオン化水素原子であり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
(a)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
(b)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
elは、存在する場合、第1の電子変化基であり、
e2は、存在する場合、第2の電子変化基であり、
は、OまたはSであり、
は、OまたはSであり、
F9は、アミン含有の第IX因子部分の残基である。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態において、共役体を調製するための方法を提供する。
【0016】
本発明の1つ以上の実施形態において、該共役体を含む医薬調製物を提供する。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態において、該共役体を投与するための方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の共役体の時間−濃度曲線の図である。この図に関するさらなる情報を、実施例3に提供する。
【図2】本発明の共役体の凝集活性を提供する図である。この図に関するさらなる情報を、実施例4に提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は特定のポリマー、合成法、活性薬剤等に限定されるものではなく、これらは変化し得ることを理解されたい。
【0020】
本明細書および特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により明らかに別途指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、単数形の「ポリマー」(a “polymer”)を言及する場合、単一のポリマー、ならびに同一または異なるポリマーの2つ以上を含み、単数形の「共役体」(a “conjugate”)を言及する場合、単一の共役体、ならびに同一または異なる共役体の2つ以上を指し、単数形の「賦形剤」(an “exipient”)を言及する場合、単一の賦形剤、ならびに同一または異なる賦形剤の2つ以上を含む等である。
【0021】
本発明の説明や請求項においては、以下の用語は、後述の定義に従って用いられる。
【0022】
本明細書において使用される、「PEG」、「ポリエチレングリコール」、および「ポリ(エチレングリコール)」は、任意の水溶性のポリ(エチレンオキシド)を包含することを企図する。典型的には、本発明に従って使用されるPEGは、次の構造「−O(CHCHO)−」を含み、式中、(m)は2から4000である。本明細書において使用されるPEGは、末端酸素が置き換えられたかどうかに応じて、「−CHCH−O(CHCHO)−CHCH−」および「−(CHCHO)−」もまた含む。PEGがスペーサ部分(以下でより詳細に説明する)をさらに含む場合、スペーサ部分を含む原子は、水溶性ポリマー部分に共有結合的に付着される際、酸素−酸素結合(つまり、「−O−O−」または過酸化物連結)の形成をもたらさない。本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、「PEG」という用語は、様々な末端基または「エンドキャッピング」基等を有する構造を含むことが、念頭に置かれるべきである。「PEG」という用語は、過半数、つまり50%を超える−CHCHO−モノマーサブユニットを含むポリマーもまた意味する。具体的な形態について、PEGは、以下でより詳細に説明する、任意の数の様々な分子量、ならびに「分岐」、「線状」、「V型」、「多機能」等の構造および幾何学形状をとることができる。
【0023】
「エンドキャップされた」または「末端キャップされた」という用語は、本明細書において同義で使用され、エンドキャッピング部分を有する、ポリマーの末端またはエンドポイントを指す。典型的には、必ずしもそうではないが、エンドキャッピング部分は、ヒドロキシまたはC1−20アルコキシ基を含む。したがって、エンドキャッピング部分の例には、アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、およびベンジルオキシ)、ならびにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロ等を含む。加えて、前述のもののそれぞれの、飽和、不飽和、置換、および非置換形態が想定される。さらに、エンドキャッピング基は、シランでもあり得る。エンドキャッピング基は、有利に、検出可能な標識も含み得る。ポリマーが、検出可能な標識を含むエンドキャッピング基を有する場合、ポリマーおよび/またはポリマーがカップリングされる対象部分(例えば活性薬剤)の量および場所を、適切な検出器を使用して決定することができる。そのような標識には、限定しないが、蛍光物質、化学発光物質、酵素標識で使用される部分、比色物質(例えば染料)、金属イオン、放射性部分等が含まれる。適切な検出器には、光度計、フィルム、分光計等を含む。
【0024】
ポリマーまたは水溶性ポリマーに関して「天然に存在しない」とは、その全体として、天然には見られないポリマーを意味する。しかしながら、天然に存在しないポリマーまたは水溶性ポリマーは、ポリマー構造全体が天然に見られない限り、天然に存在する1つ以上のサブユニットまたはサブユニットの一部分を含み得る。
【0025】
「水溶性ポリマー」という用語は、室温で水に可溶性の任意のポリマーである。典型的には、水溶性ポリマーは、濾過後の同一溶液にて伝送される光の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を伝送する。重量ベースでは、水溶性ポリマーは、好ましくは水に少なくとも約35(重量)%可溶性であり、より好ましくは水に少なくとも約50(重量)%可溶性であり、さらに好ましくは水に約70(重量)%可溶性であり、さらに好ましくは水に約85(重量)%可溶性である。しかしながら、水溶性ポリマーが、水に約95(重量)%可溶性であることがさらに好ましく、水溶性ポリマーが水に完全に可溶性であることが最も好ましい。
【0026】
PEG等の本発明の水溶性ポリマーの関連の分子量は、数平均分子量または重量平均分子量のいずれかとして表現され得る。別途指示されていない限り、本明細書の分子量に対する全ての言及は、重量平均分子量を指す。数平均および重量平均の両方の分子量の決定は、ゲル透過クロマトグラフィまたは他の液体クロマトグラフィ法を使用して測定することができる。数平均分子量を決定するための、末端基分析または束一性(例えば凝固点降下、沸点上昇、または浸透圧)の測定の使用、または重量平均分子量を決定するための光散乱法、超遠心分離法、もしくは粘度測定法の使用等、分子量値を測定するための他の方法もまた、使用することができる。本発明のポリマーは、典型的には、多分散性(つまり、ポリマーの数平均分子量および重量平均分子量が等しくない)であるが、好ましくは約1.2未満、より好ましくは約1.15未満、さらに好ましくは約1.10未満、またさらに好ましくは約1.05未満、そして最も好ましくは約1.03未満の、低い多分散性値を有する。
【0027】
本明細書において使用される、「カルボン酸」という用語は、
【0028】
【化2】

官能基[「−COOH」または−C(O)OHとしても表される]を有する部分、ならびにカルボン酸の誘導体である部分であり、そのような誘導体には、例えば、保護カルボン酸を含む。したがって、文脈により明らかに別途指示されない限り、カルボン酸という用語は、酸形態だけでなく、対応するエステルおよび保護された形態もまた含む。本明細書で説明するカルボン酸に適した保護基および他の任意の官能基に関して、Greene et al,”PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS” 3rd Edition,John Wiley and Sons,Inc.,New York,1999を参照することができる。
【0029】
「反応性」および「活性」という用語は、特定の官能基と関連して使用される場合、別の分子上の求電子試薬または求核試薬と容易に反応する、反応性官能基を指す。これは、反応するために、強力な触媒または非常に非実用的な反応条件を必要とする基(つまり、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的である。
【0030】
「保護された」、「保護基(protecting group)」、および「保護基(protective group)」という用語は、特定の反応条件下の分子における、特定の化学反応性官能基の反応を防止または阻止する部分(つまり、保護基)の存在を指す。保護基は、保護される化学反応性官能基の種類、ならびに用いられる反応条件および、存在する場合、該分子中のさらなる反応基または保護基の存在により異なる。当技術分野において既知の保護基は、上記Greeneらに見出される。
【0031】
本明細書において使用される、「官能基」という用語またはそのいずれかの同義語は、その保護された形態を包含することが企図される。
【0032】
「スペーサ」または「スペーサ部分」という用語は、1つの部分と別の部分の間で任意に現れる原子または原子の集合を指すために、本明細書において使用される。スペーサ部分は、加水分解に安定であり得、または1つ以上の生理学的に加水分解可能、または酵素的に解離可能な連結を含み得る。
【0033】
本明細書において使用される「有機ラジカル」には、例えば、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、および置換アリールを含む。
【0034】
「アルキル」は、典型的には、約1から20個の範囲の原子の長さの、炭化水素鎖を指す。そのような炭化水素鎖は、必ずしもそうではないが、好ましくは飽和されていて、典型的には直鎖が好ましいが、分枝または直鎖状であり得る。典型的なアルキル基には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1−メチルブチル、1−エチルプロピル、3−メチルペンチル等を含む。本明細書において使用される「アルキル」は、3個以上の炭素原子が言及される場合シクロアルキル、および低級アルキルを含む。
【0035】
「低級アルキル」は、1から6個の炭素原子を含むアルキル基を指し、メチル、エチル、n−ブチル、iso−ブチル、およびtert−ブチルに例をみるように、直鎖状または分枝状であり得る。
【0036】
「シクロアルキル」は、好ましくは3から約12個の炭素原子、より好ましくは3から約8個の炭素原子から成る、架橋された、縮合された、またはスピロ型の環状化合物を含む、飽和または不飽和の環状炭化水素鎖を指す。
【0037】
「非干渉置換基」は、分子中に存在する場合、典型的には、該分子内に含有される他の官能基と非反応性である基である。
【0038】
例えば「置換アルキル」の中の「置換」という用語は、限定するわけではないが、1個以上の水素原子について、のC−Cシクロアルキル(例えばシクロプロピル、シクロブチル等)、ハロ(例えばフルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード等)、シアノ、アルコキシ、低級フェニル、置換フェニル等の、1つ以上の非干渉置換基で置換される部分(例えば、アルキル基)を指す。「置換アリール」は、置換基として1つ以上の非干渉基を有するアリールである。フェニル環上での置換については、置換基は、任意の配向(つまり、オルト、メタ、またはパラ)であり得る。「置換アンモニウム」は、置換基として1つ以上の非干渉基(例えば、有機ラジカル)を有するアンモニウムである。
【0039】
「アルコキシ」は、−O−R基を指し、式中、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくはC−C20アルキル(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ベンジル等)、より好ましくはC−Cアルキルである。
【0040】
本明細書において使用される「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含む、2から15個の原子の長さの、分岐または非分枝状の炭化水素基を指す。例示的なアルケニルには、(限定しないが)、エテニル、n−プロペニル、イソプロペニル、n−ブテニル、iso−イソブテニル、オクテニル、デセニル、テトラデセニル等を含む。
【0041】
本明細書において使用される、「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を含む、2から15個の原子の長さの、分岐または非分枝状の炭化水素基を指す。例示的なアルキニルには、(限定しないが)、エチニル、n−ブチニル、iso−ペンチニル、オクチニル、デシニル等を含む。
【0042】
「アリール」は、それぞれ5個または6個の核炭素原子を持つ、1つ以上の芳香族環を意味する。アリールは、ナフチルのように縮合されるか、またはビフェニルのように縮合されない、複数のアリール環を含む。アリール環はまた、1つ以上の環状炭化水素、ヘテロアリール、または複素環で縮合されるか、または縮合されない場合もある。本明細書において使用される「アリール」は、ヘテロアリールを含む。芳香族含有部分(例えば、Ar、Ar等)は、アリールを含有する構造を意味する。
【0043】
「ヘテロアリール」は、1から4個のヘテロ原子、好ましくはN、O、もしくはS、またはそれらの組み合わせを含有する、アリール基である。ヘテロアリール環は、1つ以上の、環状炭化水素、ヘテロ環、アリールまたはヘテロアリール環と縮合され得る。
【0044】
「ヘテロ環」または「ヘテロ環式」は、不飽和または芳香族性である、またはそうではない、かつ炭素ではない少なくとも1個の環原子を有する、5〜12個の原子、好ましくは5〜7個の原子の1つ以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子には、硫黄、酸素、および窒素を含む。
【0045】
「置換ヘテロアリール」は、置換基として1つ以上の非干渉基を有する、ヘテロアリールである。
【0046】
「置換ヘテロ環」は、非干渉置換基から形成される1つ以上の側鎖を有する、ヘテロ環である。
【0047】
「求電子試薬」は、イオン性で、求電子中心、つまり、求電子性の、求核試薬と反応することのできる中心を有する、イオンもしくは原子、または原子の集合を指す。
【0048】
「求核試薬」は、イオン性で、求核中心、つまり求電子中心を求める、または求電子試薬を持つ、中心を有する、イオンもしくは原子、または原子の集合を指す。
【0049】
「生理学的に切断可能な」ならびに「加水分解可能な」結合は、生理学的条件下で水と反応する(つまり、加水分解される)比較的弱い結合である。水の中で結合が加水分解する傾向は、2つの中心原子を接続する一般的な種類の連結のみではなく、これらの中心原子に付着される置換基にも依存する。例示的な加水分解可能な結合には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、およびオルトエステルを含むが、それらに限定されない。
【0050】
「解離可能な連結」は、生理学的に切断可能な結合、加水分解可能な結合、および酵素的に分解可能な連結を含むが、それらに限定されない。したがって、「解離可能な連結」は、生理学的条件下で、何らかの他の機構(例えば、酵素触媒、酸触媒、塩基触媒等)により、加水分解または切断のいずれかを受け得る連結である。例えば、「解離可能連結」は、原動力として、プロトン(例えば、イオン化水素原子、Hα)の塩基引き抜きを有する脱離反応を伴い得る。本明細書の目的上、「解離可能連結」は、「分解可能な連結」と同義である。
【0051】
「酵素的に解離可能な連結」は、1つ以上の酵素による分解を受ける、連結を意味する。
【0052】
「加水分解的に安定した」連結または結合は、化学結合、典型的には、水中で実質的に安定している、つまり、長期間にわたり、生理学的条件下で、いずれの感知できる程度の加水分解も受けない、共有結合を指す。加水分解的に安定した連結の例には、次の、炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖内の)、エーテル、アミド等を含むが、それらに限定されない。概して、加水分解的に安定した連結とは、生理学的条件下で、1日当たり約1〜2%未満の加水分解速度を呈するものである。代表的な化学結合の加水分解速度は、ほとんどの標準的な化学の教科書に記載されている。一部の連結は、(例えば)隣接および周辺の原子ならびに周囲条件に依存して、加水分解的に安定、または加水分解可能であり得ることが、指摘されねばならない。当業者であれば、例えば、対象の連結を含有する分子を対象の条件下に置き、加水分解の証拠(例えば、単一分子の切断から生じる2つの分子の存在および量)を試験することにより、所与の文脈において、所与の連結または結合が加水分解的に安定、または加水分解可能であるかを決定することができる。所与の連結または結合が加水分解的に安定、または加水分解可能であるかどうかを決定するために、当業者に既知である他の手法もまた使用することができる。
【0053】
「活性薬剤」、「生物活性薬剤」、および「薬理学的活性薬剤」という用語は、本明細書において同義で使用され、体内または体外で実証され得る、なんらかの薬理学的な、しばしば有益である効果を提供する、物質または混合物の任意の薬剤、薬物、化合物、組成物を含むと定義される。これには、食物補足剤、栄養素、栄養補給食品、薬物、タンパク質、ワクチン、抗体、ビタミン、および他の有益な薬剤が含まれる。本明細書において使用されるこれらの用語は、さらに、患者に全身的または局所的な効果を産生する全ての生理学的あるいは薬理学的活性物質を含む。
【0054】
「医薬的に許容される賦形剤」または「医薬的に許容される担体」は、本発明の組成物に含むことができ、患者に有意な毒性の副作用を及ぼさない賦形剤を意味する。
【0055】
「薬理学的有効量」、「生理学的有効量」、および「治療的有効量」は、本明細書において同義で使用され、血流または標的組織内において、所望のレベルの活性薬剤および/または共役体を提供するために必要とされる、(典型的には、医薬調製物中に存在する)ポリマーと活性薬剤の共役体の量を意味する。正確な量は、多数の因子、例えば、特定の活性薬剤、医薬調製物の成分および物理的特性、対象とする患者集団、患者に対する考慮等に依存し、本明細書で提供される、および該当する文献で入手可能な情報に基づき、当業者により容易に決定され得る。
【0056】
ポリマーの文脈における「多官能性」は、そこに含有される3つ以上の官能基を有するポリマーを意味し、官能基は、同一または異なる場合もある。多官能性ポリマーは、典型的には、約3〜100の官能基、または3〜50の官能基、または3〜25の官能基、または3〜15の官能基、または3から10の官能基を含有するか、またはポリマー内に3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10の官能基を含有する。「二官能性」ポリマーは、同一(つまり、ホモ二官能性)または異なる(つまり、ヘテロ二官能性)のいずれかの、そこに含有される2つの官能基を有するポリマーを意味する。
【0057】
ポリマーの幾何学的形状または全体の構造に関する「分岐」は、2つ以上のポリマー「アーム」を有するポリマーを指す。分岐したポリマーは、2つのポリマーアーム、3つのポリマーアーム、4つのポリマーアーム、6つのポリマーアーム、8つのポリマーアーム、またはそれ以上を有する。高度に分岐したポリマーの1つの具体的な種類は、樹状ポリマーまたはデンドリマーであり、これは本発明の目的において、分岐ポリマーとは明らかに異なる構造を有すると見なされる。
【0058】
「デンドリマー」または樹状ポリマーは、球形の単分散ポリマーであり、そこですべての結合は、中心の焦点またはコアから放射状に出て、規則的な分岐パターンとそれぞれが分岐点に寄与する繰り返し単位を有する。デンドリマーは、コアのカプセル化等のいくつかの樹状性を示し、それにより、これらは他の種類のポリマーとは異なる。
【0059】
本明細書で述べる塩基性または酸性の反応物質は、それらの、中性の、荷電された、あるいはすべての相当する塩類を含む。
【0060】
「患者」という用語は、本明細書で提供される共役体の投与により予防あるいは治療され得る状態に罹患しているか、またはそのような状態に罹りやすい生体を指し、ヒトおよび動物の両方を含む。
【0061】
本明細書において使用される「薬物放出速度」は、ある系におけるポリマー−活性薬剤共役体の総量の半分が、活性薬剤およびポリマー残基に開裂する速度(半減期として表される)を意味する。
【0062】
「任意の」および「任意に」は、その語の後に説明される状況が起こるかもしれないか、あるいは起こらないかもしれないことを意味し、そのため、その説明にはその状況が起こる場合の例および起こらない場合の例を含む。
【0063】
本明細書において使用される、「ハロ」識別子(例えばフルオロ、クロロ、ヨード、ブロモ等)は、概して、ハロゲンが分子に付着される場合に使用され、接尾辞「化物」(例えばフッ化物、塩化物、ヨウ化物、臭化物等)は、ハロゲンが独立したイオン形態で存在する場合に使用される(例えば、離脱基が分子を離脱する場合等)。
【0064】
本明細書で使用される、「第IX因子部分」という用語は、第IX因子活性を有する部分を指す。第IX因子部分は、少なくともポリマー試薬との反応に適したアミン基も有する。必ずしもそうではないが、典型的には、第IX因子部分はタンパク質である。さらに、「第IX因子部分」という用語は、共役前の第IX因子部分、ならびに共役後の第IX因子部分残基の両方を包含する。以下にさらに詳細に説明するように、当業者であれば、任意の所与の部分が第IX因子活性を有するかどうかを決定することができる。本明細書で使用される、「第IX因子部分」という用語は、例えば、部位特異的突然変異誘発または偶然の突然変異により、意図的に修飾されたタンパク質を含む。「第IX因子部分」という用語は、1つから6つのさらなる糖鎖付加部位を有する誘導体、タンパク質のカルボキシ末端に少なくとも1つの追加のアミノ酸を有し、該追加のアミノ酸は、少なくとも1つの糖鎖付加部位を含む誘導体、および少なくとも1つの糖鎖付加部位を含むアミノ酸配列を有する誘導体も含む。
【0065】
本考察の文脈において、一構造または式に関して提供される変数の定義は、文脈により別途指示されない限り、異なる構造において繰り返される同一の変数に適用可能であることを認識されたい。
【0066】
既に述べたように、本発明は、(とりわけ)解離可能な連結を有する共役体を含む。
【0067】
本発明の例示的な共役体を説明する前に、カルバミン酸連結等の、活性薬剤のアミノ基と反応して解離可能な連結を形成することができる、水溶性ポリマーおよび官能基の実施形態を考察する。
【0068】
所与の水溶性ポリマーに関して、それぞれの水溶性ポリマー(例えばPOLY、POLY、およびPOLY)は、ポリマーが水溶性かつ非ペプチド性である限り、任意のポリマーを含み得る。本明細書における使用のための水溶性ポリマーは、好ましくはポリ(エチレングリコール)であるが、例えば、他のポリ(アルキレングリコール)[「ポリ(アルキレンオキシド)」とも称される]等、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)等、エチレングリコールおよびプロピレングリコール等のコポリマー、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタアクリレート)、ポリ(サッカリド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、米国特許第5,629,384号で説明されるもの等の、他の水溶性ポリマーであり得る。水溶性ポリマーは、前述のもののうちのいずれの、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、非ランダムブロックポリマー、およびランダムブロックポリマーでもあり得る。さらに、水溶性ポリマーは線状であり得るが、以下にさらに詳細に説明するように、他の形態(例えば、分岐、V型等)であり得る。全体の構造内に存在するという関連で、水溶性ポリマーは1から約300の末端を有する。
【0069】
ポリマー試薬が2つ以上の水溶性ポリマーを含有する例において、構造全体中のそれぞれの水溶性ポリマーは、同一または異なり得る。しかしながら、構造全体中の全ての水溶性ポリマーは、同一種類のものであることが好ましい。例えば、所与の構造中の全ての水溶性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)ポリマーであることが好ましい。
【0070】
任意の個別の水溶性ポリマーの重量平均分子量は異なり得るが、任意の所与の水溶性ポリマーの重量平均分子量は、典型的には、100ダルトンから約150,000ダルトンの範囲である。しかしながら、例示的な範囲は、約880ダルトンから約5,000ダルトンの範囲、5,000ダルトン超過から約100,000ダルトンの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、10,000ダルトン超過から約85,000ダルトンの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約53,000ダルトンから約85,000ダルトンの範囲、約25,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約29,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約35,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲、約880ダルトンから約60,000ダルトンの範囲、約440ダルトンから約40,000ダルトンの範囲、約440ダルトンから約30,000ダルトンの範囲、ならびに約40,000ダルトンから約120,000ダルトンの範囲の、重量平均分子量を含む。任意の所与の水溶性ポリマーについて、これらの1つ以上の範囲のうちの分子量を有するPEGが好ましい。
【0071】
水溶性ポリマーについての例示的な重量平均分子量には、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約440ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約1,500ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約4,500ダルトン、約5,000ダルトン、約5,500ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約16,000ダルトン、約17,000ダルトン、約18,000ダルトン、約19,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約35,000ダルトン、約40,000ダルトン、約45,000ダルトン、約50,000ダルトン、約55,000ダルトン、約60,000ダルトン、約65,000ダルトン、約70,000ダルトン、および約75,000ダルトンを含む。前述のもののうちのいずれかの総重量平均分子量を有する、水溶性ポリマーの分岐型(例えば、2つの20,000ダルトンポリマーを含む分岐40,000ダルトン水溶性ポリマー)も使用することができる。
【0072】
該共役体を調製するために使用されるポリマー試薬は、それから形成される共役体の所望の放出速度に適した範囲の全体サイズを有する少なくとも1つの水溶性ポリマーを含む。例えば、比較的遅い放出速度を有する共役体は、(a)共役体からの活性薬剤の放出前の持続的循環、および(b)共役体からの放出時に共役体から遊離される種の、適度に迅速な体内クリアランスに適したサイズを有するポリマー試薬から調製することができる。同様に、共役体が比較的早い放出速度を有する場合、ポリマー試薬は、典型的には低分子量を有するであろう。
【0073】
ポリマー試薬に水溶性ポリマーとしてPEGが使用される場合、PEGは、典型的には、多数の(OCHCH)モノマーを含む[またはPEGがどのように定義されるかにより、(CHCHO)モノマー]。本説明全体において使用される、繰り返し単位の数は、「(OCHCH」の中の下付き文字「n」により特定される。したがって、(n)の値は、典型的には、以下の範囲、すなわち、2から約3400、約4から約1500、約100から約2300、約100から約2270、約136から約2050、約225から約1930、約450から約1930、約1200から約1930、約568から約2727、約660から約2730、約795から約2730、約795から約2730、約909から約2730、および約1,200から約1,900のうちの1つ以上に含まれる。分子量が既知である任意の所与のポリマーについて、ポリマーの総重量平均分子量を、繰り返しモノマーの分子量で割ることにより、繰り返し単位の数(つまり、「n」)を決定することが可能である。
【0074】
各水溶性ポリマーは、典型的には生体適合性かつ非免疫原性である。生体適合性に関して、物質は、生体組織に関して、該物質の単独使用または別の物質(例えば活性薬剤)との併用(例えば患者への投与)に関連する、臨床医、例えば内科医により評価される有益な効果が、任意の悪影響を上回る場合、生体適合性があるとみなされる。非免疫原性に関して、物質は、生体組織に関して、該物質の単独使用または別の物質との併用により、免疫応答(例えば抗体の形成)が産生されない場合、または免疫応答が産生される場合で、そのような応答が臨床医による評価として臨床的に有意または重要であるとみなされない場合、非免疫原性であるとみなされる。本明細書で説明される水溶性ポリマー、ならびに活性薬剤およびポリマーの共役体は、生体適合性かつ非免疫原性であることが特に好ましい。
【0075】
有用な一形態において、遊離または非結合PEGは、各端部がヒドロキシル基で終結する線状ポリマーである。
HO−CHCHO−(CHCHO)m’−CHCH−OH
式中、(m’)は、典型的にはゼロから約4,000、好ましくは約20から約1,000の範囲である。
【0076】
上記ポリマー、アルファ−、オメガ−ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)は、−PEG−記号が以下の構造単位を表すことができると理解される、HO−PEG−OHとして簡単に表すことができ、
−CHCHO−(CHCHO)m’−CHCH
式中、(m’)は上記で定義される通りである。
【0077】
本発明において有用である、別の種類の遊離または非結合PEGは、一末端が比較的不活性であるメトキシ基であり、もう一方の末端がヒドロキシル基である、メトキシ−PEG−OH、または簡単にmPEGである。mPEGの構造を以下に記す。
CHO−CHCHO−(CHCHO)m’−CHCH
式中、(m’)は上述の通りである。
【0078】
米国特許第5,932,462号で説明されるもの等の、マルチアームまたは分岐PEG分子もまた、PEGポリマーとして使用することができる。
例えば、PEGは、構造
【0079】
【化3】

を有することができ、式中、
polyおよびpolyは、(同一または異なる)メトキシポリ(エチレングリコール)等のPEG骨格であり、
R”は、H、メチル、またはPEG骨格等の非反応部分であり、
PおよびQは、非反応連結である。好ましい実施形態において、分岐PEGポリマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)2置換リジンである。
【0080】
さらに、PEGは、V型PEGを含み得る。遊離または非結合V型PEGの一例は、以下の式により表され、
【0081】
【化4】

式中、Xは、スペーサ部分であり、それぞれのZは、定義された長さの原子鎖によりCHに連結される、活性末端基である。Z官能基を分岐する炭素原子に連結する原子鎖は、テザー基としての役目を果たし、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖、およびそれらの組み合わせを含み得る。米国特許第6,362,254号は、本発明で使用することのできる、様々なV型PEG構造を開示している。
【0082】
PEGポリマーは、PEG鎖の端部にではなく、PEGの長さに沿って共有結合的に付着されるカルボキシル等の反応基を有する、ペンダントPEG分子を含み得る。ペンダント反応基は、直接、またはアルキレン基等のスペーサ部分を介して、PEGに付着することができる。
【0083】
上述の形態のPEGに加えて、ポリマー試薬中のそれぞれの水溶性ポリマーは、上述のポリマーのうちのいずれかを含む、ポリマー中の1つ以上の弱いまたは解離可能な連結でも調製することができる。例えば、PEGは、加水分解を受ける、ポリマー中のエステル連結で調製することができる。以下に示すように、この加水分解により、より低い分子量の断片へのポリマーの切断が生じる:
−PEG−CO−PEG−+HO→−PEG−COH+HO−PEG−。
【0084】
ポリマー骨格内での分解可能な連結として有用である、他の加水分解で分解可能な連結には、炭酸塩連結、例えば、アミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン連結(例えばOuchi et al.(1997)Polymer Preprints 38(1):582−3を参照)、例えばアルコールをリン酸基と反応させることにより形成される、リン酸エステル連結、典型的にはヒドラジドとアルデヒドとの反応により形成される、ヒドラゾン連結、典型的にはアルデヒドとアルコールとの間の反応により形成される、アセタール連結、例えばギ酸塩とアルコールとの間の反応により形成される、オルトエステル連結、例えばPEG等のポリマーの端部のアミン基および別のPEG鎖のカルボキシル基により形成される、アミド連結、例えば末端イソシアネート基を有するPEGとPEGアルコールとの反応により形成される、ウレタン結合、例えばPEG等のポリマーの端部のアミン基およびペプチドのカルボキシル基により形成される、ペプチド連結、ならびに例として、例えばポリマーの端部のホスホルアミダイト基およびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基により形成される、オリゴヌクレオチド連結を含む。
【0085】
ポリ(エチレングリコール)またはPEGという用語は、PEGの上記全ての形態を表す、または含むことが、当業者には理解される。
【0086】
当業者は、実質的に水溶性のポリマーに関する前述の考察が決して包括的なものではなく、例証的なものであるに過ぎず、上述の品質を有するいかなるポリマー材料も企図されることを認識する。本明細書において使用される、「水溶性ポリマー」という用語は、別の部分に付着された水溶性ポリマーの分子および残基の両方を指す。水溶性ポリマーの以下の説明は、ポリマー試薬のみではなく、説明されるポリマー試薬を使用して形成される、対応する共役体にも適用可能である。
【0087】
本明細書で説明される共役体を形成するために使用される、ポリマー試薬の官能基は、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸連結等の解離可能連結を形成することのできる官能基である。本発明は、官能基が、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸連結等の解離可能な連結を形成することが可能である限り、特定の官能基に対して限定されない。活性薬剤のアミノ基と反応することのできる例示的な官能基には、N−スクシンイミジル、1−ベンゾトリアゾリル、イミダゾール、炭酸ハロゲン化物(炭酸塩化物および炭酸臭化物等)、フェノラート類(p−ニトロフェノラート等)等の活性炭酸塩から成る群から選択される官能基を含む。また、特別な例として、活性薬剤が、イソシアネートまたはイソチオシアネート基に変換された活性アミン基と共に利用可能である場合、ポリマー試薬の官能基は、これらの成分の反応は、解離可能なカルバミン酸連結をもたらすため、ヒドロキシルであることが可能である。
【0088】
ここで、例示的なポリマー試薬をさらに詳細に考察する。立体化学はいずれの式または構造(ポリマー試薬、共役体、またはいずれの他の式または構造であろうとも)においても、具体的には示されていないが、提供される式または構造は、両方の光学異性体、ならびに等量(つまり、ラセミ混合物)および不等量のそれぞれの光学異性体の混合物を含有する組成物を企図することが、念頭に置かれねばならない。
【0089】
例示的なポリマー試薬は、次の式を有し、
【0090】
【化5】

式中、
POLYは、第1の水溶性ポリマーであり、
POLYは、第2の水溶性ポリマーであり、
は、第1のスペーサ部分であり、
は、第2のスペーサ部分であり、
αは、イオン化水素原子であり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
(a)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
(b)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
elは、存在する場合、第1の電子変化基であり、
e2は、存在する場合、第2の電子変化基であり、
(FG)は、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸連結等の解離可能連結を形成することのできる官能基である。
【0091】
例示的なポリマー試薬は、以下の式に含まれ、
【0092】
【化6】

【0093】
【化7】

式中、各場合において、(FG)は、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸連結等の解離可能な連結を形成することのできる官能基であり、Rは、Hまたは有機ラジカルであり、Rは、Hまたは有機ラジカルである。
【0094】
さらに他の例示的なポリマー試薬は、構造
【0095】
【化8】

を有し、式中、POLY、POLY、X、X、R、R、Hα、および(FG)のそれぞれは、既に定義した通りであり、Relは、第1の電子変化基であり、Re2は、第2の電子変化基である。
【0096】
さらに他の例示的なポリマー試薬は、以下の構造に含まれ、
【0097】
【化9】

【0098】
【化10】

【0099】
【化11】

式中、各構造に対して、および各場合において、(n)は、独立して4から1500の整数である。
【0100】
ポリマー試薬は、任意の数の様式で、調製することができる。そのため、ポリマー試薬の合成は、それらの調製で使用される特定の技術または手法に限定されない。
【0101】
本明細書で説明される共役体の調製に有用である、ポリマー試薬を調製するための一方法において、該方法は、(a)第1の付着部位、第2の付着部位、および任意の第3の付着部位を持つ芳香族含有部分を提供するステップと、(b)官能基試薬を第1の付着部位と反応させて、活性薬剤のアミノ基と反応することのできる官能基を持つ第1の付着部位を生じさせ、カルバミン酸等の解離可能な連結を生じさせるステップと、(c)反応性基を持つ水溶性ポリマーを、第2の付着部位、および存在する場合、任意の第3の付着部位と反応させ、(i)スペーサ部分を介して水溶性ポリマーを持つ第2の付着部位と、(ii)存在する場合、スペーサ部分を介して第2の水溶性ポリマーを持つ任意の第3の付着部位を生じさせるステップと、を含む。一部の例において、(b)はステップ(c)の前に行われるが、他の場合においては(c)がステップ(b)の前に行われる。
【0102】
したがって、ポリマー試薬を調製するための本方法において、必要とされるステップは、(a)第1の付着部位、第2の付着部位、および任意の第3の付着部位を持つ芳香族含有部分を提供するステップである。合成的調整に関連して、材料を「提供するステップ」は、(例えば、合成または商業的に取得することにより)、材料を取得することを意味すると理解される。例示的な芳香族含有部分は、例示目的として、以下に示す9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンである。
【0103】
【化12】

この芳香族含有部分である9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンは、3つの付着部位、9位にヒドロキシル基ならびに2および7位のそれぞれにアミノ基、を有する芳香族含有部分の一例である。芳香族含有部分は、塩基または塩形態で提供することができる。9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンについて、二塩酸塩形態を使用することが可能である。他の芳香族含有部分は、合成的調整を介して、および/または商業的に供給業者から購入することにより、提供することができる。
【0104】
芳香族含有部分を提供した後、本方法における別のステップは、反応性基を持つ水溶性ポリマーを、芳香族含有部分上の付着部位と反応させるステップを広範に含む。ここで、水溶性ポリマーを芳香族含有部分上の1つ以上の付着部位に付着するための、当技術分野において既知である任意の手法を使用することができ、該方法は、特定の手法には限定されない。例えば、アミン反応性PEG(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドおよびCHO−CHCH−(OCHCH)−OCHCH−OCHCOOHと、凝縮剤として、および任意で塩基の存在下、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはジイソプロピルカルボジイミド(DIC)との反応から形成される、N−スクシンイミジルエステル終端mPEG等)を、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレン等の、アミンを持つ芳香族含有部分と反応させることができる。
【0105】
一部の例において、反応性基を持つ水溶性ポリマーと、芳香族含有部分との反応により、そこに付着される水溶性ポリマーを有する、全ての可能性のある付着部位が生じる。そのような状況では、付着部位が官能基試薬との反応に利用されるように、少なくとも1つの水溶性ポリマーを除去する必要がある。したがって、例えば、前段落で考察されたN−スクシンイミジルエステル終端mPEGの、9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンとの反応により、(a)2つのアミン部位のそれぞれに1つずつの、2つの水溶性ポリマーを持つ種、および(b)2つのアミン部位のそれぞれに1つずつ、およびヒドロキシル部位に1つの、3つの水溶性ポリマーを持つ種を含有する混合物が生じる。ここで、サイズ排除クロマトグラフィにより、より高分子量の種を除去および収集することが可能である。さらに、混合物を高pHに処理[例えば、混合物を水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)に処理する]し、その後、イオン交換クロマトグラフィ(IEC)を行うことが可能である。いずれの場合も、結果、2つのアミン部位のそれぞれに1つずつの、2つの水溶性ポリマーを持つ9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを主に含有する組成物が得られる。これにより、第3のヒドロキシル部位が、官能基試薬との反応に使用可能となる。
【0106】
最終ステップは、芳香族含有部分の反応部位を、官能基試薬と反応させるステップである。好ましい手法は、2つのアミン部位のそれぞれに1つずつの、2つの水溶性ポリマーを持つヒドロキシル含有の9−ヒドロキシメチル−2,7−ジアミノフルオレンを、トリホスゲンと反応させ、その後、N−ヒドロキシスクシンイミドで処置することである。このようにして、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸連結等の解離可能な連結を形成することのできる官能基(この場合、「活性炭酸塩」)が、ヒドロキシル含有の反応部位上に形成される。
【0107】
どのような手法が使用されても、合成方法のステップは、適切な溶媒中で行われる。当業者であれば、いずれかの特定の溶媒が、いずれかの所与の反応に適切であるかどうかを判定することができる。しかしながら、典型的には、溶媒は、非極性溶媒または極性非プロトン性溶媒であることが好ましい。非極性溶媒の非限定例には、ベンゼン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、t−ブチルアルコール、およびトルエンを含む。特に好ましい非極性溶媒には、トルエン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、およびt−ブチルアルコールを含む。例示的な極性非プロトン性溶媒には、DMSO(ジメチルスルホキシド)、HMPA(ヘキサメチルホスホルアミド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DMA(ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリジノン)を含むが、それらに限定されない。
【0108】
調製されると、ポリマー試薬は単離することができる。既知の方法を使用してポリマー試薬を単離することができるが、クロマトグラフィ、例えばサイズ排除クロマトグラフィを使用することが特に好ましい。交互に、または加えて、本方法は、ポリマー試薬が形成されると、それを精製するステップを含む。ここでも、当技術分野において既知である、標準的な精製方法を使用して、ポリマー試薬を精製することができる。
【0109】
ポリマー試薬は水分および酸素に敏感であり、アルゴン下または窒素下等の不活性雰囲気下、かつ低温で保存されることが理想的である。このようにして、例えば大気中の酸素に関連する、潜在的に分解性の過程が削減、または完全に回避される。一部の例において、酸化分解反応を回避するために、ブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)等の酸化防止剤を、保存前にポリマー試薬に添加することが可能である。さらに、保存条件に関連する水分量を最小限に抑え、水と関連する潜在的に有害な反応、例えば活性エステルの加水分解を軽減することが好ましい。さらに、光に関与する特定の分解過程を防止するめに、保存条件を暗状態に維持することが好ましい。したがって、好ましい保存条件には以下のうちの1つ以上が含まれる。乾燥アルゴンまたは別の乾燥不活性ガス下での保存、約−15℃より低い温度での保存、明かりのない状態での保存、および適切な量(例えば約50から約500(百万分の一))の、BHT等の酸化防止剤を用いた保存。
【0110】
上述のポリマー試薬は、生物活性薬剤への共役に有用である。例えば、活性薬剤上のアミノ基(例えば1級アミン)は、活性薬剤のアミノ基と反応して、カルバミン酸等の解離可能な連結を形成することのできる官能基と反応する。
【0111】
例示的な共役体は、以下の構造を有し、
【0112】
【化13】

式中、
POLYは、第1の水溶性ポリマーであり、
POLYは、第2の水溶性ポリマーであり、
は、第1のスペーサ部分であり、
は、第2のスペーサ部分であり、
αは、イオン化水素原子であり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
(a)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
(b)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
elは、存在する場合、第1の電子変化基であり、
e2は、存在する場合、第2の電子変化基であり、
は、OまたはSであり、
は、OまたはSであり、
F9は、アミン含有の第IX因子部分の残基である。
【0113】
例示的な共役体には、以下の式のものを含み、
【0114】
【化14】

【0115】
【化15】

式中、各構造に対して、および各場合において、(n)は、独立して4から1500の整数であり、F9は、アミン含有の第IX因子部分の残基である。
【0116】
本明細書で説明されるポリマー試薬が共役することができる生物活性薬剤は、アミン含有の生物活性薬剤である。典型的には、生物活性薬剤は、約3,500ダルトンを超える分子量を有するポリペプチド等の巨大分子になる。薬理学的に活性なポリペプチドが、生物活性薬剤の好ましい種類に相当する。本考察の目的上、「ポリペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびタンパク質の総称であることを理解されたい。ポリペプチドに関して、ポリマー試薬が連結するアミンは、ポリペプチド内のアミノ酸(リジン等)の、N−末端またはアミン含有の側鎖上にあり得る。
【0117】
本発明は、共役体の調製方法であって、ポリマーと生物活性薬剤との間の共有結合的付着を形成するのに適した条件下で、ポリマー試薬を生物活性薬剤に接触させるステップを含む、方法も提供する。典型的には、該ポリマーは、等モル量(反応性基との反応に適した所望の数の基に対して)、またはモル過剰で、活性薬剤または表面に添加される。例えば、ポリマー試薬は、標的活性薬剤に、約1:1(ポリマー試薬:活性薬剤)、1.5:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、8:1、または10:1のモル比で添加することができる。共役反応は、実質的にさらなる共役が起きなくなるまで進行させ、これは、概して反応の進行を経時的に監視することにより決定することができる。反応の進行は、様々な時点で反応混合物からアリコートを採取し、SDS−PAGEまたはMALDI−TOF質量スペクトル法または他の適した分析法で反応混合物を分析することにより監視することができる。形成される共役体の量または残存する非共役ポリマーの量に関してプラトーに達すると、反応が完了したと見なされる。典型的には、共役反応は、数分から数時間(例えば、5分から24時間以上)の間のどの時点かで起きる。結果として生じる産物混合物は、精製されて、余分な試薬、非共役反応物(例えば活性薬剤)、所望でない多重共役種、および遊離または未反応ポリマーを分離することが好ましいが、必ずしも必要ではない。次に、結果として生じる結合体は、MALDI、毛細管電気泳動、ゲル電気泳動、および/またはクロマトグラフィ等の分析法を使用して、さらに特徴付けることができる。
【0118】
ポリマー−活性薬剤共役体に関して、共役体を精製して、異なる共役種を取得/または単離することができる。代替として、および低分子量(例えば約20キロダルトン未満、より好ましくは約10キロダルトン未満)のポリマーに対してより好ましくは、産物混合物を精製して、活性薬剤当たりの水溶性ポリマーセグメントの分布を取得することができる。例えば、産物混合物を精製して、活性薬剤につき1つから5つの間の任意の平均のPEG(例えばポリペプチド)を取得することができる。最終共役反応混合物の精製のための戦略は、例えば、用いられるポリマーの分子量、特定の活性薬剤、所望の投与計画、ならびに個々の共役体の残効性および体内特性を含む、多くの因子に依存する。
【0119】
所望であれば、異なる分子量を有する共役体は、ゲルろ過クロマトグラフィを使用して単離することができる。つまり、ゲルろ過クロマトグラフィを使用して、それらの異なる分子量(差異は、本質的に、水溶性ポリマーセグメントの平均分子量に相当する)に基づき、異なる数のポリマー対活性薬剤比(例えば1量体、2量体、3量体等であって、「1量体」は、活性薬剤に対して1つのポリマーを示し、「2量体」は、活性薬剤に対して2つのポリマーを示す等)を分別する。例えば、100kDaのタンパク質が約20kDaの分子量を有するポリマー試薬に不規則に共役される、例示的な一反応において、結果として生じる反応混合物は、未修飾タンパク質(MW 100kDa)、モノ−PEG化タンパク質(MW 120kDa)、ジ−PEG化タンパク質(MW 140kDa)等を含有する可能性が高い。この手法を使用して、異なる分子量を有するPEGと他のポリマーとの共役体を分離することは可能であるが、この手法は、タンパク質内で異なるポリマー付着部位を有する位置異性体を分離するには、概して効果がない。例えば、ゲルろ過クロマトグラフィを使用して、PEG1量体、2量体、3量体等の混合物を互いに分離することができるが、回収されたPEG量体組成物のそれぞれが、活性薬剤内で異なる反応性アミノ基(例えばリジン残基)に付着するPEGを含有し得る。
【0120】
この種類の分離を行うのに適したゲルろ過カラムには、Amersham Biosciences(Piscataway,NJ)より入手可能な、Superdex(登録商標)およびSephadex(登録商標)カラムがある。特定のカラムの選択は、所望の分画範囲に依存する。溶出は、概して、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液等の適した緩衝液を使用して行われる。回収された画分は、例えば、(i)タンパク質含有量についての280nmの光学密度(OD)、(ii)ウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質分析、(iii)PEG含有量についてのヨード試験[Sims et αl.(1980)Anal.Biochem,107:60−63]、ならびに(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS PAGE)、その後のヨウ化バリウムでの染色の、多くの異なる方法で分析することができる。
【0121】
位置異性体の分離は、逆相高速液体クロマトグラフ(RP−HPLC)C18カラム(Amersham BiosciencesまたはVydac)を使用した逆相クロマトグラフィにより、またはイオン交換カラム、例えば、Amersham Biosciencesより入手可能なSepharose(登録商標)イオン交換カラムを使用した、イオン交換クロマトグラフィにより、実行することができる。どちらの手法を使用しても、同一分子量を有するポリマー−活性薬剤異性体(位置異性体)を分離することができる。
【0122】
第IX因子部分に関して、本発明に有用な第IX因子部分には、未変性のヒト第IX因子として、同一活性(必ずしも同程度の活性である必要はないが)を有する任意のタンパク質を含む。
【0123】
すでに述べたように、「第IX因子部分」という用語は、共役前の第IX因子部分、ならびに水溶性ポリマーに付着後の第IX因子部分を含むものとする。しかしながら、第IX因子部分が非ペプチド性の水溶性ポリマーに付着される場合、第IX因子部分は、ポリマー(またはポリマーに付着されるスペーサ部分)への連結に関連する1つ以上の共有結合の存在により、僅かに変化することが理解される。しばしば、別の分子に付着された第IX因子部分のわずかに変化した形態は、第IX因子部分の「残基」と称される。
【0124】
第IX因子部分は、非組換え法、または組換え法のいずれかから誘導することができ、本発明は、この点で限定されることはない。さらに、第IX因子部分は、ヒト供給源または動物供給源に由来し得る。
【0125】
第IX因子部分は、非組換え法により誘導することができる。例えば、第IX因子部分は、血液由来の供給源から取得することができる。特に、第IX因子は、当業者に既知である沈殿技術および遠心分離法を使用して、ヒト血漿から分別することができる。例えば、Wickerhauser(1976)Transfusion 16(4):345−350およびSlichter et al.(1976)Transfusion 16(6):616−626を参照されたい。第IX因子は、ヒト顆粒球から単離することもできる。Szmitkoski et al.(1977)Haematologia(Budap.)U(l−2):177−187を参照されたい。
【0126】
第IX因子部分は、組換え法から誘導することができる。例えば、第IX因子部分である、未変性第IX因子をコードするcDNAが、発現ベクターに単離され、特徴付けられ、クローン化されている。例えば、Choo et al.(1982)”Molecular Cloning of the Gene for Human Anti−hemophilic Factor IX,”Nature,Vol.299:178−180、およびKurachi et al.(1982)”Isolation and Characterization of a cDNA Coding for Human Factor IX,”Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,Vol.79:6461−65を参照されたい。
【0127】
未変性第IX因子は、発現されると、約55,000ダルトンの単鎖糖タンパク質になる。これは、構造的に、GIaまたはガンマカルボキシグルタミン酸に富む領域、EGF様領域、活性化ペプチド、および活性部位の、4つのドメインを有すると考えられる。
【0128】
第IX因子部分に関して、少なくともある程度の所望の第IX因子活性を維持する、前述のもののうちのいずれかの生物活性断片、欠失変異体、置換変異体、または付加変異体もまた、使用することができる。
【0129】
アミノ酸の側鎖内の原子への該ポリマーの容易な付着を提供するために、活性薬剤を有利に修飾して、例えば、リジン、システイン、および/またはアルギニン等の1つ以上のアミノ酸残基を含むことができる。アミノ酸残基を付加するための技術は、当業者には周知である。J.March,Advanced Organic Chemistry:Reactions Mechanisms and Structure,4th Ed.(New York:Wiley−Interscience,1992)を参照することができる。
【0130】
活性薬剤は、血液由来の供給源から取得することができる。例えば、第VIII因子は、当業者に既知である沈殿技術および遠心分離法を使用して、ヒト血漿から分別することができる。例えば、Wickerhauser(1976)Transfusion I6(4):345−350およびSlichter et al.(1976)Transfusion]6(6):616−626を参照されたい。第VIII因子は、ヒト顆粒球から単離することもできる。Szmitkoski et al.(1977)Haematologia(Budap.)Ii(I−2):177−187を参照されたい。
【0131】
さらに、活性薬剤は、組換え法からも取得することができる。簡潔に述べると、組換え法は、所望のポリペプチドまたは断片をコードする核酸を構築するステップと、核酸を発現ベクターにクローン化するステップと、宿主細胞(例えば細菌、酵母菌、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞もしくはベビーハムスター腎臓細胞等の哺乳類細胞)を転換するステップと、核酸を発現させて所望のポリペプチドまたは断片を産生するステップと、を伴う。組換えポリペプチドを、体外、ならびに原核性および真核性の宿主細胞に産生および発現するための方法は、当業者に既知である。例えば、米国特許第4,868,122号を参照されたい。
【0132】
上記の例示的な生物活性薬剤は、該当する場合、それらの類似体、作用薬、拮抗薬、阻害剤、異性体、および医薬的に許容される塩形態を包含することを意図する。ペプチドおよびタンパク質について、本発明は、これらの合成型、組換え型、未変性型、糖化型、および非糖化型、ならびに生物活性断片を包含することを企図する。さらに、「活性薬剤」という用語は、共役前の活性薬剤、ならびに共役後の活性薬剤「残基」を包含することを企図する。
【0133】
任意の所与の部分について、その部分が第IX因子活性を有するかどうか、決定することが可能である。例えば、例えば、いくつかの動物株を、そのような株から産生された動物が、非常に低く、不十分なレベルの第IX因子を有するように、意図的に、血友病の突然変種に繁殖させた。そのような株は、限定するわけではないが、the Division of Laboratories and Research,New York Department of Public Health,Albany,NYおよびthe Department of Pathology,University of North Carolina,Chapel Hill,NC等の様々な供給源から入手可能である。これらの供給源の両方が、例えば、イヌB型血友病を罹患するイヌを提供する。問題となる任意の所与の部分の第IX因子活性を試験するために、該部分を罹患動物に注射し、小さく切り込み、対照として非処理の罹患動物と出血時間を比較する。第IX因子活性の決定に有用な別の方法は、補因子および凝固促進活性を決定することである。例えば、Mertens et al.(1993)Brit.J.Haematol.85:133−42を参照されたい。当業者に既知の他の方法を使用して、所与の部分が第IX因子活性を有するかどうかを決定することもできる。そのような方法は、提案される第IX因子部分、ならびに対応するポリマー−第IX因子部分共役体の両方の第IX因子活性を決定するのに有用である。
【0134】
本発明はまた、医薬賦形剤と組み合わせた、本明細書で提供される共役体を含有する、医薬調製物も含む。概して、共役体自体は、固形(例えば沈殿物)であり、固形または液状のいずれかであり得る、適した医薬賦形剤と組み合わせることができる。
【0135】
例示的な賦形剤には、炭水化物、無機塩類、抗菌剤、酸化防止剤、界面活性剤、緩衝液、酸、塩基、およびそれらの組み合わせから成る群から選択されるものを含むが、それらに限定されない。
【0136】
糖等の炭水化物、アルジトール等の誘導体化糖、アルドン酸、エステル化糖、および/または糖ポリマーは、賦形剤として存在し得る。具体的な炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボース等の単糖類、乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオース等の二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプン等の多糖類、およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトール等のアルジトール類を含む。
【0137】
賦形剤はまた、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、およびそれらの組み合わせ等の無機塩または緩衝液も含む。
【0138】
調製物はまた、微生物の増殖を防止または遅らせるための抗微生物剤を含んでもよい。本発明に適した抗微生物剤の非限定例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゾトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール、およびそれらの組み合わせを含む。
【0139】
抗酸化剤も同様に調製物中に存在することができる。抗酸化剤は、酸化を防ぎ、したがって、共役体または調製物の他の成分の劣化を防止するために使用される。本発明での使用に適した抗酸化剤には、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせを含む。
【0140】
界面活性剤は賦形剤として存在し得る。例示的な界面活性剤には、「ツイーン20」および「ツイーン80」等のポリソルベート類、およびF68とF88(共にBASF,Mount Olive,New Jerseyから入手可能)等のプルロニック類、ソルビタンエステル、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン等のリン脂質等の脂質(ただし好ましくは、リポソーム型ではない)、脂肪酸、および脂肪酸エステル、コレステロール等のステロイド、ならびにEDTA、亜鉛、および他の適した陽イオン等のキレート剤を含む。
【0141】
酸または塩基は、調製物中に賦形剤として存在し得る。使用可能な酸の非限定例には、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される酸を含む。適した塩基の例には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される塩基を含むが、それらに限定されない。
【0142】
医薬調製物は、あらゆる種類の製剤を含み、特に注射に適したもの、例えば再構成可能な散剤、ならびに懸濁液および溶液を包含する。組成物中の共役体(つまり、本明細書で説明される活性薬剤とポリマーとの間で形成される共役体)の量は、多くの因子により異なるが、組成物が単位用量容器(例えばバイアル)に保存される場合は、治療的有効用量が最適である。さらに、医薬調製物は、シリンジに収容することができる。治療的有効用量は、どの量が臨床的に所望の終点をもたらすかを決定するために、共役体の量を増加させて繰り返し投与することにより、実験的に決定することができる。
【0143】
組成物中の任意の個々の賦形剤の量は、賦形剤の活性と組成物の特定の必要性により異なる。典型的には、個々の賦形剤の最適量は、日常的実験により、つまり、異なる量(低濃度から高濃度まで)の賦形剤を含有する組成物を調製し、安定性や他のパラメータを調べ、次に大きな副作用無しで最適な性能が達成される範囲を決定することにより、決定することができる。
【0144】
しかし、概して、賦形剤は組成物中に、約1〜約99重量%、好ましくは約5〜98重量%、より好ましくは約15〜95重量%の賦形剤の量で存在し、30重量%未満の濃度が最も好ましい。
【0145】
これらの前述の医薬賦形剤は、他の賦形剤とともに、”Remington:The Science & Practice of Pharmacy”,19th ed.,Williams & Williams,(1995),the ”Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,NJ(1998),およびKibbe,A.H.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd Edition,American Pharmaceutical Association,Washington,D.C,2000で説明されている。
【0146】
本発明の医薬調製物は、必ずしもそうとは限らないが、典型的には注射により投与され、したがって、概して投与直前は液体または懸濁液である。医薬調製物は、シロップ剤、クリーム剤、軟膏剤、錠剤、散剤等の他の形態をとることもできる。肺、直腸、経皮、経粘膜、経口、くも膜下、皮下、動脈内等の、他の投与形式も含まれる。
【0147】
既に説明したように、共役体は、静脈内注射、またはそれほど好ましくはないが、筋肉内もしくは皮下注射により、非経口的に投与することができる。非経口投与に適した製剤の種類には、とりわけ、即時注射可能な溶液、使用前に溶媒と組み合わされる乾燥散剤、即時注射可能な懸濁液、使用前に媒体と組み合わされる乾燥不溶性組成物、ならびに投与前に希釈されるエマルジョンおよび液体濃縮物を含む。
【0148】
本発明はまた、共役体による治療に応答性の状態に罹患する患者に、本明細書で提供される共役体を投与する方法を提供する。本方法は、概して注射により、治療的有効量の共役体(好ましくは医薬調製物の一部として提供される)を投与するステップを含む。本投与方法は、特定の共役体の投与により改善または予防可能な任意の状態を治療するために、使用することができる。当業者は、特定の共役体がどの状態を有効に治療できるかを容易に理解する。投与される実際の用量は、対象の年齢、体重、および全般の状態、ならびに治療される疾患の重症度、医療専門家の判断、および投与される共役体により異なる。治療的有効量は、当業者に既知であり、および/または関連する参考書および文献で説明されている。概して、治療的有効量は、約0.001mg〜100mg、好ましくは0.01mg/日〜75mg/日の用量であり、より好ましくは0.10mg/日〜50mg/日の用量の範囲である。
【0149】
任意の所与の共役体の単位用量(やはり、好ましくは医薬調製物の一部として提供される)は、臨床医の判断、患者の必要性等により、様々な投与計画で投与することができる。具体的な投与計画は当業者に既知であるか、または日常的方法を使用して実験的に決定することができる。投与計画の例には、1日に5回、1日に4回、1日に3回、1日に2回、1日に1回、週に3回、週に2回、週に1回、月に2回、月に1回、およびそれらの任意の組み合わせがあるが、それらに限定されない。臨床的終点が達成されると、組成物の投与が停止される。
【0150】
本発明を、その好ましい具体的な実施形態と併せて説明したが、前述の説明ならびに以下の実験は、本発明の範囲を例示することを意図し、その範囲を制限するものではないことを理解されたい。本発明の範囲内の他の態様、利点および修正は、本発明に関連する当業者には明らかであろう。
【0151】
本明細書で参照される全ての論文、書物、特許、特許公報、および他の刊行物は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0152】
実験
本発明の実施は、特に明記しない限り、有機合成等の従来の技術を採用し、これは、当業者によって理解され、文献に説明されている。以下の実施例において、使用される数字(例えば、量、温度等)に関しては正確性を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差および偏差を考慮すべきである。特に明記しない限り、温度は摂氏であり、圧力は、海面での大気圧またはその付近である。全ての試薬は、特に明記しない限り、商業的に取得した。全ての産生されたNMRは、Bruker(Billerica,MA)によって製造された300または400MHz NMR分光計から取得した。全ての処理は、ガラスまたはガラス裏打ち容器内で行い、金属含有容器または機器との接触を避ける。
【0153】
以下の略称を使用する。
【0154】
HPLC 高圧液体クロマトグラフィ
SDS−PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
以下の実施例で使用される第IX因子は、組換え第IX因子のBENEFIX(登録商標)ブランド(Wyeth,Madison NJ)で販売される市販の調製物から単離される。単離されたタンパク質溶液は、低温で保存される。
【0155】
ポリマー試薬は、米国特許出願公報第2006/0293499号に説明される基本的な手法に従って生成され、以下の構造を有した。
【0156】
【化16】

実施例1
第IX因子共役体の調製
(20,000ダルトン総ポリマー重量平均分子量)
(「短解離」)
【0157】
【化17】

Benefix(登録商標)第IX因子のバイアル(5.5mgの第IX因子、Wyeth)を4℃の保存庫から取り出し、室温に温めた。添付文書に説明の通り、凍結乾燥粉末を再懸濁した(バイアルにつき10mLの滅菌水)。第IX因子溶液をロッカープレート上で可溶化している間、ポリマー試薬Aを−20℃の保存庫から取り出し、室温に温めた。Benefix(登録商標)再懸濁液を、GEからの16/10HiPrep DeSaItカラムを使用して、1×PBS+1%ショ糖+0.005%ツイーン20 pH7.3に緩衝液交換し、製剤中のグリシンを除去した。タンパク質画分を収集し、ポリマー試薬共役反応のために、50mL円錐管にプールした。2mM HCl中に新たに溶解した、約40,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量(つまり、各ポリマー「アーム」の重量平均分子量の和)を有する、9.34過剰モル比(第IX因子に対して)のポリマー試薬Aを、第IX因子溶液中にゆっくりとピペットした。攪拌子を反応に加え、3時間の共役工程の間、低速で溶液を攪拌した。そして、1Mグリシンの水中1:100添加により反応を停止し、室温でさらに30分間、振盪機上で緩やかに振盪させた。グリシンの添加は、24時間以内に行うべきであると考えられる。20 15mM Bis−Tris pH7.5+1%ショ糖+10mMヒスチジン+0.005%ツイーン20の3:1(容積)添加により、溶液を希釈した。溶液を緩やかな回旋で良く混合させ、次いで、溶液中の非結合ポリマー試薬Aをイオン交換クロマトグラフィで除去した。共役された第IX因子を、NaCl勾配で溶出した。その結果、「短解離」第IX因子共役体が調製された。
【0158】
約40,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量を有するポリマー試薬Aおよび640.64mgのポリマー試薬が使用された点を除いて、基本的な手順を繰り返した。
実施例2
第IX因子共役体の調製
(20.000ダルトン総ポリマー重量平均分子量)
(「長解離」)
【0159】
【化18】

Benefix(登録商標)第IX因子のバイアル(5.5mgの第IX因子、Wyeth)を4℃の保存庫から取り出し、室温に温めた。添付文書に説明の通り、凍結乾燥粉末を再懸濁した(バイアルにつき10mLの滅菌水)。第IX因子溶液をロッカープレート上で可溶化している間、ポリマー試薬Bを−20℃の保存庫から取り出し、室温に温めた。Benefix(登録商標)再懸濁液を、GEからの16/10HiPrep DeSaItカラムを使用して、1×PBS+1%ショ糖+0.005%ツイーン20 pH7.3に緩衝液交換し、製剤中のグリシンを除去した。タンパク質画分を収集し、ポリマー試薬共役反応のために、50mL円錐管にプールした。2mM HCl中に新たに溶解した、約40,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量(つまり、各ポリマー「アーム」の重量平均分子量の和)を有する、9.34過剰モル比(第IX因子に対して)のポリマー試薬Aを、第IX因子溶液中にゆっくりとピペットした。攪拌子を反応に加え、3時間の共役工程の間、低速で溶液を攪拌した。そして、1Mグリシンの水中1:100添加により反応を停止し、室温でさらに30分間、振盪機上で緩やかに振盪させた。グリシンの添加は、24時間以内に行うべきであると考えられる。20 15mM Bis−Tris pH7.5+1%ショ糖+10mMヒスチジン+0.005%ツイーン20の3:1(容積)添加により、溶液を希釈した。溶液を緩やかな回旋で良く混合させ、次いで、溶液中の非結合ポリマー試薬Bをイオン交換クロマトグラフィで除去した。共役された第IX因子を、NaCl勾配で溶出した。その結果、「長解離」第IX因子共役体が調製された。
【0160】
約40,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量を有するポリマー試薬Bおよび400.4mgのポリマー試薬が使用された点を除いて、基本的な手順を繰り返した。
実施例3
薬物動態
(対照として第IX因子に加えて)それぞれ20,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量を有する、実施例1および2に従って調製された共役体の薬物動態を、従来の技術を使用して決定した。簡潔に述べると、雄のSDラットを使用し(180〜220グラム、6〜7週齢)、100μLの静脈注射を一回投与した。1群につき4匹の動物を使用し、注射後様々な時点(例えば0、1、2、3、6、12、24、36、48、72時間)で、血漿を収集した。
【0161】
結果を以下の表1に提供し、Vは分布量、CLは総血漿クリアランス、AUCは血漿濃度−時間曲線下面積、およびT1/2βは、最終消失相の半減期である。濃度−時間曲線も作成し、図1に提供する。
表1
共役体薬物動態値
【0162】
【表1】

実施例4
凝集活性
(対照としての第IX因子ともに)それぞれ20,000ダルトンの総ポリマー重量平均分子量を有する、実施例1および2に従って調製された共役体の体外凝集活性を、従来の技術を使用して決定した。結果を図2に提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造を有する化合物であって、
【化19】

式中、
POLYは、第1の水溶性ポリマーであり、
POLYは、第2の水溶性ポリマーであり、
は、第1のスペーサ部分であり、
は、第2のスペーサ部分であり、
αは、イオン化水素原子であり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
(a)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
(b)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
e1は、存在する場合、第1の電子変化基であり、
e2は、存在する場合、第2の電子変化基であり、
は、OまたはSであり、
は、OまたはSであり、
(F9)は、アミン含有の第IX因子部分の残基である、である、化合物。
【請求項2】
前記アミン含有の第IX因子部分は、組換え第IX因子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記組換え第IX因子は、ヒト組換え第IX因子である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記第1の水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)であり、前記第2の水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記第1の水溶性ポリマーは、10,000ダルトンから85,000ダルトンの重量平均分子量を有し、前記第2の水溶性ポリマーは、10,000ダルトンから85,000ダルトンの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
以下から成る群から選択される構造を有し、
【化20】

【化21】

各構造に対して、および各場合において、(n)は、独立して4から1500の整数であり、(F9)は、アミン含有の第IX因子部分の残基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
以下の構造を有し、
【化22】

式中、(F9)は、アミン含有の第IX因子部分の残基であり、(n)は、各場合において、独立して4から1500である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
以下の構造を有し、
【化23】

式中、(F9)は、アミン含有の第IX因子部分の残基であり、(n)は、各場合において、独立して4から1500である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記第IX因子部分は、ヒト組換え第IX因子である、請求項7および請求項8のうちの1項に記載の化合物。
【請求項10】
ポリマー試薬をアミン含有の第IX因子部分に接触させるステップを含む方法であって、前記ポリマー試薬と前記生物活性薬剤との間の共有結合を形成するのに適切な条件下で行なわれ、前記ポリマー試薬は以下の構造を有し、
【化24】

式中、
POLYは、第1の水溶性ポリマーであり、
POLYは、第2の水溶性ポリマーであり、
は、第1のスペーサ部分であり、
は、第2のスペーサ部分であり、
αは、イオン化水素原子であり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
は、Hまたは有機ラジカルであり、
(a)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
(b)は、ゼロまたは1のいずれかであり、
e1は、存在する場合、第1の電子変化基であり、
e2は、存在する場合、第2の電子変化基であり、
(FG)は、活性薬剤のアミノ基と反応して、解離可能連結を形成することが可能な官能基である、方法。
【請求項11】
前記解離可能連結は、カルバミン酸連結である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー試薬は、以下から成る群から選択される構造を有し、
【化25】

【化26】

各構造に対して、および各場合において、(n)は、独立して4から1500の整数である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
第IX因子部分は、ヒト組換え第IX因子である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物と、医薬的に許容される賦形剤とを含有する、組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物を、患者に投与するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−514770(P2010−514770A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544104(P2009−544104)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/026425
【国際公開番号】WO2008/082613
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】