説明

触媒を製造するための二酸化チタン混合物の使用

本発明は、殊に無水フタル酸合成に適している触媒の製造のために、定義される物理的性質を有するアナタース形の二酸化チタン混合物の使用に関する。さらに本発明は、定義される物理的性質を有するアナタース形の二酸化チタンを含有する触媒に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殊に無水フタル酸合成に適している触媒の製造のための、定義される物理的性質を有するアナタース形の二酸化チタン混合物の使用に関する。さらに本発明は、定義される物理的性質を有するアナタース形の二酸化チタン混合物を含有する触媒に関する。
【0002】
五酸化バナジウムと二酸化チタンとからなる、無水フタル酸を製造するための触媒は久しい以前から公知である。その際、アナタース変態における二酸化チタンは、無水フタル酸触媒の活性組成物の主成分でありかつ触媒活性および触媒選択性を示す五酸化バナジウム成分の担体として用いられる。
【0003】
DE−A2106796は、o−キシレンから無水フタル酸への酸化のための担持触媒の製造を記載し、その際、二酸化チタンは15〜100m/g、有利には25〜50m/gのBET表面積を有する。とりわけ適しているのは、7〜11m/gのBET表面積のアナタースと>100m/gのBET表面積の二酸化チタン水和物とからなる混合物であって、その際、成分だけでは適さないとされる。
【0004】
EP−A522871には、二酸化チタンのBET表面積と触媒活性の関係が記載されている。この文献に従うと、10m/g未満のBET表面積を有する二酸化チタンが使用される場合、触媒活性は小さい。60m/gを上回るBET表面積を有する二酸化チタンが使用される場合、触媒の寿命は減少しかつ無水フタル酸収率はひどく低下する。有利なのは15〜40m/gのBET表面積である。
【0005】
近年では、無水フタル酸収率および触媒の開始挙動の改善のために、活性構造化された触媒(activity-structured catalysts)を使用することに移行している。個々の触媒層は、一般的に個々の層の活性が反応入口から反応出口に向かって増大するように構成される。
【0006】
例えばEP−A985648は、o−キシレンおよび/またはナフタリンと触媒系との接触気相酸化による無水フタル酸の製造を記載しており、該触媒系は、触媒の多孔性ひいては活性が反応入口から反応出口に向かっていわば連続的に上昇するように構成される。多孔性は、反応管内の堆積物の被覆された成形体間の自由体積により定義される。例の中では、活性成分の比表面積は二酸化チタンの比表面積を変化させることにより変えられ、これは40〜140m/gであった。
【0007】
EP−A1063222の中で要約された従来技術によれば、活性上昇は上層(反応入口)から下層(反応出口)に向かって、非常に種々の工程:
(1)リン含有量の連続的な上昇により、
(2)活性組成物含有量の連続的な上昇により、
(3)アルカリ含有量の連続的な減少により、
(4)個々の触媒間の空間の連続的な減少により、
(5)不活性物質の含有量の連続的な減少によるかまたは
(6)温度の連続的な上昇により
において行うことができる。その際、二酸化チタンのBET表面積は10〜60m/gであるべきである。EP−A1063222の例の中では、BET表面積は22m/gで一定している。
【0008】
多層の触媒系の場合、第一の触媒層の活性の減少が触媒の寿命に関して不利に作用する。老化が次第に増すことにより、第一の高選択性層の領域中での反応が衰える。主反応帯域は、触媒寿命の経過とともに常に触媒床のより深くへと移動し、つまりo−キシレンまたはナフタリンの供給原材料は常に頻繁に、後続する選択性がより少ない層内でようやく反応する。結果、無水フタル酸収率は減少しかつ副生成物または反応しなかった出発物質の濃度が高まる。主反応帯域が後続する層内へ移るのを防止するために、塩浴温度を連続的に上げてよい。ただし触媒の使用期間が増すことで、この措置もまた無水フタル酸収率の減少をもたらす。
【0009】
従って課題は、殊に収率に関して改善された性質を有する触媒を示すことにあった。なかでも酸化触媒、殊に改善された活性、選択性および収率をともなう無水フタル酸触媒が示されるべきである。さらに課題は、活性構造化された多層の触媒系での使用においてこの利点を第一の触媒層内での高い寿命および高い選択性の利点と結び付ける酸化触媒を見つけることにあった。
【0010】
意想外にも、15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における1つまたは複数のさらに他の二酸化チタン(B)と混合した、15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタン(A)が、とりわけ触媒を製造するために適していることが見つかった。
【0011】
有利なのは、18〜90m/g、殊に18〜55m/gのBET表面積を有する二酸化チタンAの使用である。有利には、二酸化チタンAは5〜17マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有する。
【0012】
有利なのは、3〜15m/gのBET表面積を有する二酸化チタンBの使用である。有利には、二酸化チタンBは0.6〜5マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有する。
【0013】
AとBとからなる二酸化チタン混合物のBET表面積は、有利には5〜50m/g、殊に10〜30m/gの値を有する。
【0014】
有利には、混合は0.5:1〜6:1、殊に1:1〜5:1の二酸化チタンA対二酸化チタン(B)の比により行う。
【0015】
有利には、3つ以上の二酸化チタンAと3つ以上の二酸化チタンBとは互いに混合されない。とりわけ有利には、本発明により使用される二酸化チタン混合物は、群AとBとからの1つずつの二酸化チタンからなる。
【0016】
殊に、本発明により使用される二酸化チタン混合物は、活性構造化された少なくとも2層の、有利には少なくとも3層の触媒系において、反応器入口に向かって置かれた最も上の、もしくは上方の、殊に最も上の触媒層内で用いられる触媒の製造に適している。
【0017】
活性構造化された触媒系は、異なる触媒層からなる系と理解され、その際、触媒の活性は層からまた次の層へと移る。一般的に、その活性が反応入口から反応出口に向かっていわば連続的に上昇する触媒系が有利である。ただし、後続する層より高い活性を有する1つまたは複数の上流に置かれた触媒層または間に置かれた触媒層を使用してもよい。
【0018】
多層の触媒系において本発明により使用される二酸化チタン混合物が用いられる場合、これは最上層内で有利には0.8:1〜3:1、殊に1:1〜2.5:1の二酸化チタンA対二酸化チタンBの比で使用される。さらに他の層内で、二酸化チタン混合物またはアナタース変態の純粋な二酸化チタンを使用してよい。二酸化チタン混合物が用いられる場合、A対Bの比はすぐ下の層内では有利には2:1〜5:1である。
【0019】
とりわけ、前記二酸化チタン混合物は、アルデヒド、カルボン酸および/または無水カルボン酸の合成のための酸化触媒の製造に適している。芳香族または複素環式芳香族炭化水素、例えばベンゼン、o−、m−またはp−キシレン、ナフタリン、トルエン、ズロール(1,2,4,5−テトラメチルベンゼン)またはβ−ピコリン(3−メチルピリジン)のこれらの接触気相酸化の場合、出発物質に応じて、例えばベンズアルデヒド、安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水ピロメリト酸またはニコチン酸が獲得される。
【0020】
とりわけ、前記二酸化チタン混合物は、活性構造化された少なくとも2層の、有利には少なくとも3層の触媒系において、最も上の触媒層内(2層の触媒系の場合)でか、もしくは最も上の2つのまたは最も上の触媒層内(3層または多層の触媒系の場合)で用いられる無水フタル酸の触媒の製造に適している。場合により、前記二酸化チタン混合物を含有する本発明による触媒上層には1つまたは複数の触媒層があらかじめ層をなしていてもよい。
【0021】
さらに、以下で記載される本発明による触媒の使用下で、有利にはベンズアルデヒド、安息香酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水ピロメリト酸またはニコチン酸を製造できることが見つかった。そのために一般的に、分子酸素を含有するガス、例えば空気および酸化されるべき出発物質からなる混合物が管に導通されるが、該管内には本発明による触媒の堆積物が存在する。とりわけ有利には、本発明による触媒の使用下での酸化は活性構造化された触媒系において実施される。
【0022】
触媒として酸化物担持触媒が適している。通常、o−キシレンまたはナフタリンまたはそれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造のために、ケイ酸塩、炭化ケイ素、陶材、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化スズ、ルチル、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(ステアタイト)、ケイ酸ジルコニウムまたはケイ酸セリウムまたはそれらの混合物からなる球状、リング状またはシェル状の担体が用いられる。とりわけ、触媒活性組成物がシェル状に担体上に施与されているいわゆるシェル触媒が有効であることがわかった。有利には、触媒活性成分として五酸化バナジウムが用いられる。さらに触媒活性組成物中には、助触媒として例えば触媒の活性を下げるかまたは高めることにより触媒の活性および選択性に影響を及ぼす多数の他の酸化物化合物が少量で含有していてよい。この種の助触媒は、例えばアルカリ金属酸化物、酸化タリウム(I)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化スズ、酸化銀、酸化銅、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化砒素、酸化アンチモン、酸化セリウムおよび五酸化リンである。例えばアルカリ金属酸化物は、活性を低下させかつ選択性を高める助触媒として作用する。さらに触媒活性組成物に、有機バインダー、有利には水性分散液の形における、ビニルアセテート/ビニルラウレート、ビニルアセテート/アクリレート、スチレン/アクリレート、ビニルアセテート/マレエート、ビニルアセテート/エチレンの有利にはコポリマーならびにヒドロキシエチルセルロースを添加してよく、その際、活性組成物成分の溶液の固体含有量に対して3〜20質量%のバインダー量が使用された(EP−A744214)。有利には、DE−A19824532の中で記載されているような有機バインダーが用いられる。有機バインダーを用いずに触媒活性組成物が担体上に施与される場合、例えば150℃を上回る被覆温度が有利である。上記バインダーが添加される場合、使用可能な被覆温度は使用されるバインダーに応じて50〜450℃の間にある(DE−A2106796)。施与されたバインダーは、触媒の導入および反応器の運転開始後、短時間の内に燃焼する。バインダーの添加は、活性組成物が担体上にしっかり付着することから触媒の運搬および導入が軽減されるという利点を有する。
【0023】
有利には無水フタル酸合成のための触媒は、多孔質および/または多孔質でない担体材料上に、全触媒に対して活性組成物5〜15質量%を有し、その際、この活性組成物はV3〜30質量%、Sb0〜4質量%、P0〜1.0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜1.5質量%および残分として15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンA、および15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンBからなる混合物を有する。
【0024】
有利な一実施態様において、第一の最上層内で触媒は、担体材料上に全触媒に対して活性組成物5〜12質量%を有し、その際、この活性組成物はV3〜20質量%、Sb0〜4質量%、P0〜0.5質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1.5質量%および残分として15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンA、および15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンBからなる混合物を有する。
【0025】
一般的に多層の触媒系が用いられるが、該触媒系において活性の少ない触媒は、反応ガスがまずこの触媒と接触しかつそれに引き続きようやく活性触媒と第二の層内で接触するように固定床に配置されている。場合により、引き続く触媒層より高い活性を有する、上流に置かれた触媒層または間に置かれた触媒層を使用してもよい。引き続き、反応ガスは依然として活性な触媒層と接触する。異なる活性触媒は、同じ温度でまたは異なる温度で温度調節してよい。
【0026】
有利には、3層〜5層の触媒系が用いられるが、殊に3層〜4層の触媒系が用いられる。とりわけ有利なのは、その触媒活性が層から層へといわば連続的に上昇する触媒系である。
【0027】
少なくとも3層の触媒系の有利な一実施態様において、無水フタル酸合成のための触媒は以下の組成物を有する:
−反応器入口に向かって置かれた、第一の最も上の層(層a)に関して):
全触媒に対して活性組成物7〜10質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム6〜11質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
を含有しかつ残分として15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンA、および15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンBからなる混合物100質量%まで
−第二の中間層(層b)に関して):
全触媒に対して活性組成物7〜12質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム5〜13質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
五酸化リン0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有しかつ残分として、場合により層a)中のようにアナタース変態における二酸化チタン100質量%まで
−反応器出口に向かって置かれた、第三の最も下の層(層c)に関して):
全触媒に対して活性組成物8〜12質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム5〜30質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0〜0.3質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
五酸化リン0.05〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有しかつ残分として、場合により層a)中のように殊にアナタース変態における二酸化チタン100質量%まで。
【0028】
少なくとも4層の触媒系の有利な一実施態様において、触媒は以下の組成物を有する:
−反応器入口に向かって置かれた、第一の層(層a)に関して):
全触媒に対して活性組成物7〜10質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム6〜11質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
を含有しかつ残分として15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンA、および15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における二酸化チタンBからなる混合物100質量%まで
−第二の層(層b1)に関して):
全触媒に対して活性組成物7〜12質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム4〜15質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0.1〜1質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
五酸化リン0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有しかつ残分として、場合により層a)中のようにアナタース変態における二酸化チタン100質量%まで
−第三の層に関して(層b2)):
全触媒に対して活性組成物7〜12質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム5〜15質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
アルカリ0〜0.4質量%(アルカリ金属として計算)、殊に酸化セシウム
五酸化リン0〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有しかつ残分として、場合により層a)中のように殊にアナタース変態における二酸化チタン100質量%まで
−第四の層に関して(反応器出口に向かって置かれた、層C)):
全触媒に対して活性組成物8〜12質量%、その際、この活性組成物は:
バナジウム5〜30質量%(Vとして計算)
三酸化アンチモン0〜3質量%
五酸化リン0.05〜0.4質量%(Pとして計算)
を含有しかつ残分として、場合により層a)中のように殊にアナタース変態における二酸化チタン100質量%まで。
【0029】
一般的に、触媒層a)、b1)、b2)および/またはc)は、該触媒層がそのつど2つまたはそれ以上の層からなるように配置されていてもよい。これらの中間層は、有利には中間触媒組成物を有する。
【0030】
互いに向き合って境界付けられた種々の触媒の層の代わりに、層からまた次の層への移行に際して、連続する触媒の混合物を有する帯域を取り付けることにより、いわば連続的な層の移行およびいわば均一な活性の上昇ももたらすことができる。
【0031】
触媒は、反応のために層状に多管式反応器の管内に充填される。そのように配置された触媒堆積物上に、反応ガスが一般的に300〜450℃、有利には320〜420℃かつとりわけ有利には340〜400℃の塩浴温度で導通される。ただし異なる触媒堆積物は、異なる温度で温度調節してもよい。
【0032】
第一の触媒層の堆積物長さは、有利には反応器中の全体の触媒充填高さの20〜80%となる。第一の2つの、もしくは第一の3つの触媒層の堆積物高さは、有利には全体の触媒充填高さの60〜95%となる。場合により、有利には全体の触媒充填高さの20%未満である1つまたは複数の触媒層があらかじめ前記の第一の触媒層の層をなしていてよい。典型的な反応器は、250cm〜350cmの充填高さを有する。また場合により触媒層は複数の反応器に分けられていてよい。
【0033】
一般的に、触媒に供給される反応ガス(出発ガス混合物)は、酸素以外にさらに適切な反応調節剤、例えば窒素、および/または希釈剤、例えば蒸気および/または二酸化炭素を含有してよい、分子酸素を含有するガスと、酸化されるべきo−キシレンまたはナフタリンとの混合により生成される。一般的に、反応ガスは酸素1〜100モル%、有利には2〜50モル%かつとりわけ有利には10〜30モル%を含有する。一般的に、反応ガスはo−キシレンおよび/またはナフタリン5〜140g/ガスNm、有利には60〜120g/Nmかつとりわけ有利には80〜120g/Nmで負荷される。
【0034】
所望される場合、無水フタル酸製造のために、例えばDE−A19807018またはDE−A2005969の中で記載されているようにさらに1つの後接続された仕上げ反応器を備え付けてよい。その際、触媒として、最後の層の触媒と比較して有利にはさらに活性を示す1種の触媒を用いる。
【0035】
本発明による触媒は、改善された性能の利点を有する。この改善はまたさらにo−キシレンおよび/またはナフタリンによる高い負荷量、例えば100g/Nmにおいても確認されるべきである。
【0036】

A. 触媒の製造
A.1 本発明による触媒系1の製造(4層触媒系)
上層(a)
アナタース29.3g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース69.8g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:7.7マイクロモル/m)、V7.8g、Sb1.9g、CsCO0.49gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液を7mmの外径、7mmの長さおよび1.5mmの肉厚を有するリングの形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.1質量%(Vとして計算)、アンチモン1.8質量%(Sbとして計算)、セシウム0.36質量%(Csとして計算)を含有していた。TiO混合物のBET表面積は15.8m/gであった。
【0037】
上方中間層(b1)
アナタース24.6g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース74.5g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:7.7マイクロモル/m)、V7.8g、Sb2.6g、CsCO0.35gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液を7mmの外径、7mmの長さおよび1.5mmの肉厚を有するリングの形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.1質量%(Vとして計算)、アンチモン2.4質量%(Sbとして計算)、セシウム0.26質量%(Csとして計算)を含有していた。TiO混合物のBET表面積は16.4m/gであった。
【0038】
下方中間層(b2)
アナタース24.8g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース74.5g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:7.7マイクロモル/m)、V7.8g、Sb2.6g、CsCO0.13gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液を7mmの外径、7mmの長さおよび1.5mmの肉厚を有するリングの形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.1質量%(Vとして計算)、アンチモン2.4質量%(Sbとして計算)、セシウム0.10質量%(Csとして計算)を含有していた。TiO混合物のBET表面積は16.4m/gであった。
【0039】
下層(C)
アナタース17.2g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース69.1g(BET表面積27m/g、H吸蔵量:16.1マイクロモル/m)、V21.9g、NHPO1.5gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー55gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液を7mmの外径、7mmの長さおよび1.5mmの肉厚を有するリングの形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム20.00質量%(Vとして計算)、リン0.38質量%(Pとして計算)を含有していた。TiO混合物のBET表面積は20.9m/gであった。
【0040】
A.2 本発明による触媒系2の製造(3層触媒系)
上層(a)
アナタース34.3g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース63.6g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:7.7マイクロモル/m)、V7.74g、Sb2.58g、CsCO0.48gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV7.1質量%、Sb2.4質量%、Cs0.36質量%を含有していた。BET表面積は14.7m/gであった。
【0041】
中間層(b)
アナタース24.6g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース54.9g(BET表面積27m/g、H吸蔵量:16.1マイクロモル/m)、V7.74g、Sb2.37g、CsCO0.10gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)55gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の9%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV8.6質量%、Sb2.6質量%、Cs0.10質量%を含有していた。BET表面積は20.8m/gであった。
【0042】
下層(c)
アナタース24.6g(BET表面積7m/g、H吸蔵量:4.9マイクロモル/m)、アナタース73.7g(BET表面積30m/g、H吸蔵量:2.8マイクロモル/m)、V25.0g、NHPO1.7gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)62gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の10%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV20.0質量%、P0.4質量%を含有していた。BET表面積は24.2m/gであった。
【0043】
A.3 比較触媒系3の製造(3層触媒系)
上層(a)
アナタース46.0g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース51.9g(BET表面積27m/g、H吸蔵量:16.1マイクロモル/m)、V7.74g、Sb2.58g、CsCO0.44gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、外径(AD)×長さ(L)×内径(ID))の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV7.1質量%、Sb2.4質量%、Cs0.33質量%を含有していた。BET表面積は18.4m/gであった。
【0044】
中間層(b)
アナタース21.5g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース86.1g(BET表面積27m/g、H吸蔵量:16.1マイクロモル/m)、V14.2g、NHPO1.7gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)55gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の9%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV11.5質量%、P0.4質量%を含有していた。BET表面積は21.3m/gであった。
【0045】
下層(c)
アナタース24.6g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース73.7g(BET表面積30m/g、H吸蔵量:2.8マイクロモル/m)、V25.0g、NHPO1.7gを、脱イオン水550ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)62gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の9%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV20.0質量%、P0.4質量%を含有していた。BET表面積は19.9m/gであった。
【0046】
A.4 比較触媒系4の製造(3層触媒系)
上層(a)
アナタース34.3g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース63.6g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:1.5マイクロモル/m)、V7.74g、Sb2.58g、CsCO0.48gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)50gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV7.1質量%、Sb2.4質量%、Cs0.36質量%を含有していた。BET表面積は16.1m/gであった。
【0047】
中間層(b)
アナタース34.3g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース102.9g(BET表面積20m/g、H吸蔵量:1.5マイクロモル/m)、V11.0g、Sb3.7g、NHPO2.3gおよびCsCO0.19gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)52gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の9%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV7.1質量%、Sb2.4質量%、Cs0.10質量%、P0.4質量%を含有していた。BET表面積は17.3m/gであった。
【0048】
下層(c)
アナタース28.7g(BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース86.2g(BET表面積30m/g、H吸蔵量:2.8マイクロモル/m)、V29.2g、NHPO2.0gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ15時間攪拌した。引き続きこの懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからなる水性分散液(50質量%)60gを添加した。引き続き、リング(7×7×4mm、AD×L×ID)の形のステアタイト成形体(ケイ酸マグネシウム)1200gへの懸濁液の施与を噴霧により行った。施与された活性組成物シェルの質量は、完成触媒の全質量の10%であった。
このように施与された触媒活性組成物は、400℃で4時間のか焼後にV20.0質量%、P0.4質量%を含有していた。BET表面積は24.8m/gであった。
【0049】
A.5 WO2004/103944(触媒2)に従う比較触媒系5の製造(4層触媒系)
上層(a)
アナタース29.97g(TiO−1、BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース69.80g(TiO−2、BET表面積20m/g、H吸蔵量:1.5マイクロモル/m)、五酸化バナジウム7.83g、酸化アンチモン2.61g、炭酸セシウム0.49gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ均一な分布を達成するために18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液をリング(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))の形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.12質量%(Vとして計算)、アンチモン2.37質量%(Sbとして計算)、セシウム0.36質量%(Csとして計算)、二酸化チタン(TiO−1)27.20質量%および二酸化チタン(TiO−2)63.46質量%を含有していた。
【0050】
中間層(b1)
アナタース24.61g(TiO−1、BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース74.46g(TiO−2、BET表面積20m/g、H吸蔵量:1.5マイクロモル/m)、五酸化バナジウム7.82g、酸化アンチモン2.60g、炭酸セシウム0.35gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ均一な分布を達成するために18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液をリング(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))の形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.12質量%(Vとして計算)、アンチモン2.37質量%(Sbとして計算)、セシウム0.26質量%(Csとして計算)、二酸化チタン(TiO−1)22.60質量%および二酸化チタン(TiO−2)67.79質量%を含有していた。
【0051】
中間層(b2)
アナタース24.82g(TiO−1、BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース74.46g(TiO−2、BET表面積20m/g、H吸蔵量:1.5マイクロモル/m)、五酸化バナジウム7.82g、酸化アンチモン2.60g、炭酸セシウム0.135gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ均一な分布を達成するために18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液をリング(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))の形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム7.12質量%(Vとして計算)、アンチモン2.37質量%(Sbとして計算)、セシウム0.10質量%(Csとして計算)、二酸化チタン(TiO−1)22.60質量%および二酸化チタン(TiO−2)67.79質量%を含有していた。
【0052】
下層(c)
アナタース17.23g(TiO−1、BET表面積9m/g、H吸蔵量:0.4マイクロモル/m)、アナタース69.09g(TiO−3、BET表面積27m/g、H吸蔵量:2.8マイクロモル/m)、五酸化バナジウム21.97g、リン酸二水素アンモニウム1.55gを、脱イオン水650ml中に懸濁しかつ均一な分布を達成するために18時間攪拌した。この懸濁液に、ビニルアセテートとビニルラウレートとからのコポリマーからなる有機バインダー50gを50質量%の水性分散液の形で添加した。引き続き、得られた懸濁液をリング(7×7×4mm、(AD)×(L)×(ID))の形のステアタイト(ケイ酸マグネシウム)1200gに噴霧しかつ乾燥させた。施与されたシェルの質量は、完成触媒の全質量の8%であった。このように施与された触媒活性組成物、つまり触媒シェルは、450℃でのか焼1時間後にバナジウム20.0質量%(Vとして計算)、リン0.38質量%(Pとして計算)、二酸化チタン(TiO−1)15.73質量%および二酸化チタン(TiO−3)62.90質量%を含有していた。
【0053】
B Ti4+からTi3+への還元の際の水素消費量の測定
アナタース変態におけるTiO200mgを、粉状の堆積物として反応器中に配置した。まず第一に、吸着水を除去するために前処理を行った。そのために試料をヘリウム中で20K/分で673Kに加熱しかつこの温度で1時間そのままにしておいた。232K以下への冷却およびヘリウム中での洗浄後に実験を行った。そのために、試料をH/He流中で15K/分のランプを用いて1373Kの最終温度に加熱した(He中のH10%、流量Nml/分)。水素消費量を、ガスクロマトグラフィー(熱伝導率検出器)を用いて計算しかつ引き続き、使用された試料の量/表面積に標準化した。
【0054】
C o−キシレンから無水フタル酸への酸化
C.1 3層触媒
下方から上方へと、そのつど下層(c)の触媒0.70m、中間層(b)の触媒0.60および上層(a)の触媒1.50mを、25mmの内径を有する長さ3.85mの鉄管に導入した。鉄管を温度調節のために塩溶融物で包囲し、組み込まれた取り出し可能なエレメント(an installed withdrawable element)を有する熱電対シース2mmを触媒温度の測定に用いた。1時間ごとに上方から下方へ、98.5質量%のo−キシレン0〜100g/Nmの負荷量を有する4Nmの空気を管に導通した。その際、o−キシレン60〜100g/Nmにおいて表2中にまとめられた結果が得られた("PSA収率"は、100%のo−キシレンに対する質量パーセントでの得られたPSAを意味する)。
【0055】
C.2 4層触媒
下方から上方へと、そのつど下層(c)の触媒0.70m、中間層2(b2)の触媒0.70m、中間層1(b1)の触媒0.50mおよび上層(a)の触媒1.30mを、25mmの内径を有する長さ3.85mの鉄管に導入した。その他の点では、試験の実施はC.1に記載されているように行った。
活性化後の試験結果は、表1中にまとめられている。
【0056】
以下の略称を用いた:
HST ホットスポット温度
OS 上層
SBT 塩浴温度
PHD フタリド
PSA 無水フタル酸
【表1】

【0057】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を製造するための15m/g以下のBET表面積および0.6〜7マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における1つまたは複数のさらに他の二酸化チタン(B)と混合した、15m/gを上回るBET表面積および5〜20マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有するアナタース変態における1つまたは複数の二酸化チタン(A)の使用。
【請求項2】
Aが18〜90m/gのBET表面積を有する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
Aが5〜17マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有する、請求項1記載の使用。
【請求項4】
Bが3〜15m/gのBET表面積を有する、請求項1記載の使用。
【請求項5】
Bが0.6〜5マイクロモル/mのTi4+からTi3+への還元のための水素吸蔵量を有する、請求項1記載の使用。
【請求項6】
二酸化チタンAおよび二酸化チタンBが0.5:1〜6:1の比において使用される、請求項1記載の使用。
【請求項7】
アルデヒド、カルボン酸および/または無水カルボン酸の合成のための酸化触媒を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物の使用。
【請求項8】
無水フタル酸の合成のための酸化触媒を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物の使用。
【請求項9】
活性構造化された触媒系の上方帯域中に存在する触媒を製造するための、請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物の使用。
【請求項10】
担体材料上に全触媒に対して活性組成物5〜15質量%を有する、無水フタル酸を製造するための触媒であって、その際、活性組成物がV3〜30質量%、Sb0〜4質量%、P0〜1.0質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜1.5質量%および残分として請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物を含有する、無水フタル酸を製造するための触媒。
【請求項11】
請求項10記載の触媒が上方帯域中で使用される、少なくとも2種の重ねて配置された触媒帯域を有する触媒系。
【請求項12】
少なくとも3種の重ねて配置された帯域を有し、その際、
a)反応器入口に最も近い上方帯域の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物7〜10質量%を有し、その際、活性組成物はV6〜11質量%、Sb0〜3質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1質量%および残分として請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物を含有し、
b)すぐ下の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物7〜12質量%を有し、その際、活性組成物はV5〜13質量%、Sb0〜3質量%、P0〜0.4質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.4質量%および残分として、場合により帯域a)中のようにアナタース形における二酸化チタンを含有し、
c)反応器出口に最も近いすぐ下の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物8〜12質量%を有し、その際、活性組成物はV5〜30質量%、Sb0〜3質量%、P0.05〜0.4質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.3質量%および残分として、場合により帯域a)中のようにアナタース形における二酸化チタンを含有する
請求項11記載の触媒系。
【請求項13】
少なくとも4種の重ねて配置された帯域を有し、その際、
a)反応器入口に最も近い上方帯域の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物7〜10質量%を有し、その際、活性組成物はV6〜11質量%、Sb0〜3質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1質量%および残分として請求項1から6までのいずれか1項記載の二酸化チタン混合物を含有し、
b1)すぐ下の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物7〜12質量%を有し、その際、活性組成物はV4〜15質量%、Sb0〜3質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0.1〜1質量%、P0〜0.4質量%および残分として、場合により帯域a)中のようにアナタース形における二酸化チタンを含有し、
b2)すぐ下の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物7〜12質量%を有し、その際、活性組成物はV5〜15質量%、Sb0〜3質量%、アルカリ(アルカリ金属として計算)0〜0.4質量、P0〜0.4質量%および残分として、場合により層a)中のようにアナタース形における二酸化チタンを含有し、
c)反応器出口に最も近いすぐ下の触媒が、担体材料上で全触媒に対して活性組成物8〜12質量%を有し、その際、活性組成物はV5〜30質量%、Sb0〜3質量%、P0.05〜0.4質量%および残分として、場合により帯域a)中のようにアナタース形における二酸化チタンを含有する
請求項11記載の触媒系。
【請求項14】
多管式反応器中でのキシレン、ナフタリンまたはそれらの混合物の気相酸化による無水フタル酸の製造法において、キシレン、ナフタリンまたはそれらの混合物および分子酸素を含有するガスを、請求項10記載の触媒または請求項11から13までのいずれか1項記載の触媒系に導通することを特徴とする無水フタル酸の製造法。

【公表番号】特表2008−520418(P2008−520418A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541780(P2007−541780)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2005/012283
【国際公開番号】WO2006/053732
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】