説明

触媒を高スループットでスクリーニングおよび最適化する方法および装置

本発明は、触媒を高スループットで迅速にスクリーニング、最適化、再生、還元および活性化する装置および方法に関する。より詳しくは、本発明は、予め決定された通油時間範囲を保持しつつ、複数の急速失活触媒を迅速にスクリーニング、最適化および再生する方法および装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒を高スループットで迅速にスクリーニング、最適化、再生、還元および活性化する装置および方法に関する。より詳しくは、本発明は、複数の急速失活触媒を迅速にスクリーニング、最適化および再生する方法および装置である。
【背景技術】
【0002】
多くの方法が触媒の高スループットスクリーニングのために開発されたが、これらの従前の装置および方法には、ある触媒または触媒の組の試験を、異なる触媒または触媒の組を異なる処理ガスで処理しつつ、同時に行う能力を示すものは一つもなかった。急速失活触媒においては、本発明により、触媒のスクリーニングおよび最適化時間が著しく向上され、減少する。非常に長い失活時間を有する安定な触媒においては臨界的でないものの、本発明の装置および方法により、依然として、触媒のスクリーニングおよび最適化の向上が示されうる。
【0003】
多くの工業的に重要な反応系において、触媒は、反応のタイムスケールより短いか、それと同等のタイムスケールで失活する。本発明は、急速失活触媒(多くの数ある中でも、ナフサおよび軽油の分解、メタノールツーオレフィンプロセス、貴金属触媒による炭化水素の脱水素、金属酸化物による部分酸化で用いられるものなど)を高スループットで評価するように設計される。失活はとりわけ、コーキング、ファウリング、被毒、還元、相転位などの(これらに限定されない)機構によって引き起こされる。失活のタイムスケールは、ミリ秒〜分の範囲である。
【0004】
従前の高スループット触媒系は、反応器内の触媒性能を同じ通油時間(TOS)で測定する(急速失活触媒を比較するための前提条件)ことができないため、急速失活触媒に対しては不適切である。更に、それらはまた、急速失活触媒が適切な条件下での前処理、再生、再活性化および還元を必要とするという点でも不適切である。この方法は、TOSのいかなる標準的な定義にも当てはまる。例えば、多くの数ある中で、時刻(clock time)、処理反応体の重量/触媒の重量、処理反応体の容積/触媒の容積、所望の処理生成物(g)/触媒(g)である。当業者には、TOSの他の標準的な形態はよく知られている。
【0005】
特許文献には、高スループット触媒試験反応器の設計が多い。これらの設計の多くは、共通の原料を、反応器に逐次または並列に供給することが可能な、並列反応器の特色をなす。多くの先行する発明、例えば特許文献1および特許文献2には、多数の小試料を非常に薄い基体上に置く触媒スクリーニング方法が示される。この方法は、安定な触媒に対しては適切であるものの、これらの方法は、試料が同じTOSで試験されないことから、急速失活触媒に対しては適切でなかった。また、これらの基体では、ある基体部位で、別の第2の基体部位で再生、還元等何らかの他の処理を行いつつ、反応を行うことが可能でない。更に、基体の設計は、多くの触媒系に対して必要な高温および高圧を、慎重に個別に制御可能なものではでない。
【0006】
上記発明の他の問題は、それらの反応体回収系が、非常に短い暴露時間で十分な生成物を回収するのに十分な感受性を持たないため、急速失活触媒に対しては効果的でないことである。特許文献3では、基体の各要素にそれら自体を逐次にしっかりと取り付ける原料管および回収管を提案することによって、この問題は解決された。しかし、この発明は、依然として、TOSおよび空間速度を、急速失活触媒に十分に必要な精度で制御することが出来ない上、それらは他の基体部分で第二の処理を進行させる能力も有さない。
【0007】
特許文献4では、高圧および高温の問題が、共通の原料を多数の並列反応器に送ることによって解決された。特許文献5では、並列反応器系が開発された。これにより、共通の原料および反応器の間に平衡流量レストリクターを置き、次いで出力を並列検出装置に送って、触媒を通る同じ流速が確保される。
【0008】
しかし、特許文献5の発明は、急速失活触媒に対しては効果的でない。更なる制限および平衡化の努力により、理論的には、各反応器のTOSは、特許文献5の発明を、示された並列運転とは対照的に逐次に用いることによって制御されうる。しかし、特許文献5の発明によって教示される装置は、依然として、急速失活触媒に対しては有用でない。何故なら、原料ガス以外の処理ガスにより、実際に試験されない触媒は、初期状態(または個々に最適化された状態)で保持されなかったからである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,959,297号明細書
【特許文献2】国際公開第00/29844号パンフレット
【特許文献3】国際公開第98/15969号パンフレット
【特許文献4】米国特許第4,099,923号明細書
【特許文献5】米国特許第6,149,882号明細書
【非特許文献1】H.スコット フォグラー(H.Scott Fogler)著「化学反応工学の要件(Elements of Chemical Reaction Engineering)」(第二版、プレンティスホール(Prentiss Hall)、1992年、第256頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多くの高スループット触媒スクリーニング系が開発されたが、それらは同時にTOSを制御せず、他の触媒を試験の準備ができた条件に保持しないので、急速失活触媒に対して効果的なものは一つもない。更に、これらの系は、並列の異なる触媒を異なる原料または処理ストリームによって処理可能でないという点で、安定な触媒に対しても柔軟性がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、TOSを制御し、他の試験候補を迅速試験の準備ができた初期条件に保持することにより、急速失活触媒を適切にスクリーニングし、最適化するための系に関する。更に、本発明はまた、他の触媒をも試験している同じ装置において、触媒を再生し、再活性化する能力を提供し、更により高いスループットの試験および最適化を可能にする。本発明はまた、比較的安定な触媒について、それらを試験リグから除去することなく、同じ系内で試験、再生、再活性化しうるという利点をもたらす。これもまた、触媒の試験および最適化処理の効率を著しく向上する。
【0012】
好ましくは、本発明は、全ての候補触媒について、一定のTOS(実験的に重要性のある、予め特定されたTOSの範囲内)を保持しつつ、急速失活触媒を同時に試験、初期化、再生、再活性化するための系および方法を提供し、更に反応器出力の一つ、二つ以上、または全てを監視可能な一つ以上の検出系を提供する。この方式においては、触媒の活性および選択性は、同じTOSで比較されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
触媒の迅速スクリーニングおよび最適化は、多くの産業で久しく望まれていた。多数の高スループット触媒スクリーニングの発明が提案されたものの、それらは一つも、急速失活触媒をスクリーニングする効果的な方法を提供しない。先行する発明はいずれも、TOSを適切に制御し、試験すべき触媒をいずれも所望の予備試験された状態に保持することができず、また試験系に置きつつ再生、再活性化その他の処理をする方法をも提供しなかった。
【0014】
急速失活調査のための触媒を試験するに際しては、全ての候補触媒が同じTOSで試験されることが必須である。従前の反応器配列の設計は、急速失活触媒に意味のあるデータを提供しない。例えば、生成物の分析に10秒を要する60個の反応器配列については、共通の原料系において、最初の反応器と最後の反応器の間のTOSの差は10分にもなりうる。数秒以下程度の失活タイムスケールを有する急速失活触媒については、この遅延が無意味なデータをもたらす。唯一の従前の解決策は、各反応器に独自の監視装置を提供することであった。これは、高速作動するGCまたは質量分光計についてはあまりにも高価であった。
【0015】
本発明は、少なくとも1つ、好ましくは2組の選択バルブ系(第一は、種々の入力原料ストリームを分配し、第二は、反応器の出力ストリームを運ぶ)を有する反応器配列、および検出装置(高速走査質量分光計および/または高速応答GCなど)からなる。所望の任意の時間において、いずれかの反応器を、いずれかの個々の原料ストリームに暴露しうる。従って、一つ(またはそれ以上)の反応器を、他の反応器の触媒床を、不活性環境条件下で前処理、再生、賦活、ストリッピング、還元、硫化または加熱(「作動していない」反応器)しつつ、関心ある反応体を含む原料ストリームに暴露しうる(「作動中の」反応器)。当業者は、触媒床への種々の他の入力ストリームに対する他の用途を容易に決定しうる。
【0016】
一般に、触媒に対しては、種々の前処理プロセスの条件は、実際の触媒評価または失活のプロセスとは異なる。本発明においては、触媒の再生を行ってよい。限定しない例として、触媒の失活がコーク沈積によるものである場合(ナフサ分解、メタノールツーオレフィン(MTO)反応などにおけるもの)には、「作動していない」反応器において、コーク化触媒を酸素含有ガスで処理して、コークを燃焼除去する。触媒の失活が、炭化水素原料中の低濃度汚染物質による被毒による場合には、失活触媒は、適切に選択されたガスストリームおよび条件による脱着によって賦活される。失活の速度パラメーター(吸着容量および吸光係数)は、吸着プロセスの可逆性の程度に応じ、周知の吸着理論を用いてTOSデータによって得られる。
【0017】
「作動中の」反応器の触媒特性を監視しつつ、前処理プロセスを延長することにより、「作動していない」反応器における触媒の活性および選択性は損なわれない。従って本発明を、関心ある原料下で、前処理から評価に手動で切り替えるように設計することさえでき、また好ましくは、本過程は自動化されうる。
【0018】
本発明は、各反応器に対するTOSを正確に制御し、よって複数の高スループット系において、全範囲のTOSにおける活性および選択性が決定される装置および手段を提供する。TOSは、好ましくは、0〜90%の失活、最も好ましくは0〜50%の失活に制御される。本発明は、高スループット系において、一つの触媒を、同時に他の反応器で一つ以上の分離プロセスを実行しつつ試験することが可能であるという更なる利点を有する。好ましくは、本系は、多くの反応器を含む高スループット系の一つの反応器において、一つの触媒を、その高スループット系で、いずれか一つ以上の他の反応器中、不活性環境下で同時に前処理、再生、賦活、ストリッピング、還元、硫化または加熱を行いつつ、正確に試験する(TOSを制御することによって)ことを可能にする。
【0019】
より好ましくは、本発明は、急速失活触媒を試験可能にする。これは、複数反応器の高スループット系において、一つの反応器のTOSを正確に制御し、反応生成物ストリームを、同時に、他の触媒を、それ自体の(恐らくは異なる)原料ストリームにより試験する(同時に、それらの出力ストリームを異なる検出装置に送る)か、その高スループット系の他の反応器に対して、不活性環境下で、前処理、再生、賦活、ストリッピング、還元、硫化または加熱をもたらしつつ、その反応器から一つ以上の高速応答装置に送ることによる。
【0020】
一実施形態においては、本発明は、触媒を評価するための装置である。これは、
・各々少なくとも一つの入口および出口を有する二つ以上の反応槽;および
・いずれか一つ以上の出力ストリームと連通する少なくとも一つの検出装置
を含み、
・各入口は、少なくとも一つの原料分配系と直接連通し、
・各分配系は、少なくとも二つの流入ストリームを有し、またいずれか一つ以上の流入ストリームを、いずれか一つ以上の反応槽に通油可能である。
【0021】
他の実施形態においては、本発明は、触媒を試験する方法である。これは、
・少なくとも一つの触媒を、少なくとも二つ以上の反応槽中に置き、それにより高スループット系を構成する工程;
・少なくとも二つの入力ストリームから選択された第一の入力ストリームを、第二の入力ストリームを高スループット系の一つ以上の他の反応槽に運びつつ、少なくとも一つの反応槽に分配する工程;および
・少なくとも一つの反応槽の出力を監視する工程
による。
【0022】
他の限定しない実施形態においては、本発明は、急速失活触媒の高スループット評価のために設計される。候補触媒を、反応器に充填した後、いずれかの時間に、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料が、一つの反応器、即ち「作動中の」反応器にのみ入るよう予めプログラムされた順序で、逐次に試験する。各反応器は、質量流量調節装置を有し、いずれかの反応器に、いずれかの原料ストリームの正確な流れを提供しうる。GC/質量分光計は、作動中の反応器の反応生成物を、触媒活性が予め調節されたレベル(例えば、最初の活性の半分)に低下するまで監視する。本方法においては、作動していない反応器中の触媒を、必要に応じて賦活、再生、硫化、活性化または還元して、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料に暴露されるように準備しうる。
【0023】
より具体的な、限定しない例においては、単一装置における16個の反応器の反応器配列は、二つのストリーム選択バルブを備えて、二つの異なる原料ストリームを反応器に送る。16個の装置が、二つ以上の別個に加熱された金属ブロックに取り付けられて、一定の、しかし個別化された温度を全ての反応器に提供する。各反応器に充填する触媒は、数十グラム〜1mgで変動しうる。この例においては、重量空間速度は、0.1〜1000g原料/g触媒/時間の範囲である。反応器温度は、150〜700℃で変化し、反応器圧力は、大気圧〜1000psigで変化する。反応は、単相または多相として行われうる。
【0024】
15個の作動していない反応器には、不活性の炭化水素非含有または炭化水素含有ストリームが、ストリーム選択バルブを通して供給される。作動していない反応器に、単一の質量調整装置を用いて類似の流速を提供するために、作動していない各反応器の上流に個別的なレストレクターを設置することによって、伝動制限(conductive restriction)の変量が計量される。実際の運転においては、これらの作動していない反応器は準備状態で保持され、そのために触媒特性は直ちに測定されうる。
【0025】
第一のストリーム選択バルブは、関心ある原料が作動中の反応器だけに送られることを確実にする。関心ある原料は、作動中の反応器に、第一のストリーム選択バルブを通って反応器に直接供給してもよく、ストリーム選択バルブに入る前に、まず他の流体または被毒物質との混合または希釈のための室に導入してもよい。意味のあるデータを得るためには、質量流速を正確に測定しなければならないので、原料を作動中の反応器に運ぶストリーム選択バルブは、それ自体の質量流量調整装置を有する。ストリーム選択バルブは同時に、異なるストリーム(不活性の非炭化水素または炭化水素)を、作動していない反応器に供給する。出力ストリームを特定の反応器から監視装置へ導くのに、第二のストリーム選択バルブを用いてもよい。
【0026】
作動中の反応器は、予め決定されたTOSに対して原料供給され、その出力は、監視装置に導かれる。二つの選択バルブは、予め選択された間隔で同時に回転し、新たな反応器を作動中にし、以前には作動中だった反応器を作動中でなくする。新たな作動中の反応器の出力ストリームは、監視装置に運ばれる。二つのストリーム選択バルブは、同時に回転する必要はない。ある実施形態においては、作動中の反応器を監視装置から分離し、不活性ガスで監視ストリームをパージできるようにし、その後他の反応器を作動中にすることが好ましい場合がある。同様に、バルブが同時に回転する場合、作動中の反応器からの出力ストリームを監視系から迂回させ、不活性パージによって置換してもよい。パージが完了するとき、同時にバルブを切り替え、関心ある原料を次の関心ある反応器に運び、反応器の出力ストリームを、前にパージされた監視装置に導くことを可能にしてもよい。作動中の反応器に供された質量流量調整装置は、同じ空間速度およびTOSを確実にする。
【0027】
本発明は、各反応器が、高スループット方式で独自の処理を行えるという点で、従前に知られた装置より優れている。従って、作動中の反応器が、関心ある原料ストリームを試験しつつ、作動していない反応器が再活性化され、急速触媒試験のための準備状態に保持されうる。更にこの系は、各反応器が作動中の反応器になる際、TOSをそれに適合させる。最終的に、本発明は、種々の触媒に対する原料組成の変化を、高速で増分監視することを可能にする。更に、作動していない反応器の候補触媒を、個々に最適化された条件で前処理できる。異なる触媒は異なる前処理条件を必要とするので、これは本高スループット系の重要な特徴である。そして、候補触媒を独自の最適な前処理条件で評価することが重要である。
【実施例】
【0028】
実施例1
本発明者らは、上記の方法を用いて、メタノールツーオレフィン触媒(40wt%SAPO−34を含む)の完全な性能履歴を得た。下記表1に、触媒性能(450℃)およびメタノール分圧(20〜40psia)を、通油時間(TOS)の関数として示す。運転を、重量空間速度258〜831g/g/時間で行った(表1の行B)。メタノールの炭化水素への転化率、および混合エチレン(C)およびプロピレン(C)への選択性は、それぞれ行DおよびEである。分析には11期間が存在する。行Fは、各分析期間において、触媒1gを通過するメタノールの量を示す。これらのデータから、TOS(分)、即ちg触媒当たりに供給されたgメタノール(gMeOH/g触媒)、およびg触媒当たりの転化されたgメタノール(g転化MeOH/g触媒)を計算できる。一次速度定数kは、次式に従って計算される。
k=(重量空間速度)×ln(1/(1−x/100))×(触媒の密度/ガス状メタノールの密度@反応条件)
(式中、xはメタノール転化率(wt%)であり、lnは自然対数関数であり、触媒の密度=1.5g/ccであり、反応条件におけるMeOHの密度は、メタノール分圧20および40psiaに対して、それぞれ7.3×10−4および14.7×10−4g/ccである。メタノールの密度は、理想気体の法則から計算される。)
【0029】
図2は、短時間(TOSは2分以内)における活性化および失活の両触媒経緯を示す。一次速度定数は、88から196.4に上昇し、次いで8.9秒−1に低下する。図3は、TOSがg供給メタノール/g触媒の無次元時間として定義されることを除いて、図2に類似する。図4は、TOSがg転化メタノール/g触媒で表されることを除いて、図3に類似する。三つの異なるTOSの間の相互変換を表1に示す。図5、6および7は、主要オレフィン(エチレン+プロピレン)の選択性を、三つの異なる形態のTOSの関数として示す。主要オレフィンの選択性は、TOSと共に増大するが、後に低下する。この実施例は、触媒の失活が急速である場合に、触媒の完全性能履歴を得て、触媒性能を比較することの重要性を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例2
本発明を、二種の水素化脱硫(HDS)触媒の触媒被毒、特に有機窒素被毒に対する動力学パラメーターを示すのに用いた。第一の触媒は、市販硫化CoMo/Al−SiO触媒であった。第二は、非担持CoMo硫化物触媒である。二種の原料混合物を調製した。原料Aは、ドデカン中に0.8wt%の4,6−ジエチルジベンゾチオフェン(46DEDBT)を含んでいた。原料Bは、3−エチルカルバゾールとしての全窒素(N)80ppm、および0.8wt%の46DEDBTを含んだ。試験条件は、265℃、250psigおよび水素処理ガス比650SCF/Bであった。各触媒について、原料Aで試験を開始して、触媒活性を有機窒素被毒なしでラインアウトさせた。次いで、反応器を原料Bに切り替えた。
【0032】
予期されるように、原料Bに切り替えることにより、窒素種での活性点阻害によるHDS活性の急速な低下がもたらされた。二つの鍵となる被毒速度パラメーターを、非特許文献1によって記載される化学吸着理論を用いて決定した。バルクCoMo触媒の吸着容量は、0.0044gN/g触媒と判明した。これを、担持CoMo/Al−SiO触媒に対する0.0085gN/g触媒と比較した。バルクCoMo触媒の吸着速度定数は、担持CoMo/Al−SiO触媒に対するものの6倍である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】二つの入力ストリーム、六個の反応器、一つの検出ストリームの系に適用されたこの装置の断面を示す概略図である。
【図2】急速失活触媒について、TOS(分で測定される)に対する一次速度定数の変化を示すグラフである。
【図3】急速失活触媒について、TOS(g反応体/g触媒で測定される)に対する一次速度定数の変化を示すグラフである。
【図4】急速失活触媒について、TOS(g転化反応体/g触媒で測定される)に対する一次速度定数の変化を示すグラフである。
【図5】急速失活触媒について、TOS(分で測定される)に対する選択性の変化を示すグラフである。
【図6】急速失活触媒について、TOS(g反応体/g触媒で測定される)に対する選択性の変化を示すグラフである。
【図7】急速失活触媒について、TOS(g転化反応体/g触媒で測定される)に対する選択性の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの入口ストリームおよび少なくとも一つの出口ストリームを各々有する二つ以上の反応槽を含む高スループットの触媒評価装置であって、
前記入口ストリームは、少なくとも一つの入口分配系と直接連通しており、
前記入口分配系は、少なくとも二つの原料ストリームを有し、
前記入口分配系は、前記原料ストリームを、いずれか一つ以上の前記反応槽に通油可能であるか、または原料をいずれかの反応槽に排出可能であり、
いずれかまたは全ての前記出口ストリームは、少なくとも一つの監視装置に導かれる
ことを特徴とする触媒評価装置。
【請求項2】
前記出口ストリームは、出口分配系により方向付けられることを特徴とする請求項1に記載の触媒評価装置。
【請求項3】
前記出口分配系は、いずれかの前記出口ストリームを、いずれか一つ以上の前記監視装置に運ぶことを特徴とする請求項2に記載の触媒評価装置。
【請求項4】
前記原料ストリームの一つは、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料ストリームであることを特徴とする請求項3に記載の触媒評価装置。
【請求項5】
少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリーム以外の、前記原料ストリームの一つは、不活性流体、賦活流体、再生流体、硫化流体、活性化流体、ストリッピング流体、被毒流体および還元流体よりなる群から選択されるストリームであることを特徴とする請求項4に記載の触媒評価装置。
【請求項6】
前記監視装置は、ガス分光計、質量分光計、IR計、ガスクロマトグラフ、UV計、液体クロマトグラフ、流量計、元素分析計、および水素、スチーム、硫化水素、酸素、一酸化炭素または二酸化炭素モニターよりなる群から選択される一種以上の監視装置であることを特徴とする請求項5に記載の触媒評価装置。
【請求項7】
前記入口分配系は、一つ以上のバルブであることを特徴とする請求項1に記載の触媒評価装置。
【請求項8】
前記入口分配系は、単一のバルブであり、前記単一のバルブは、いずれか一つ以上の前記原料ストリームを、いずれか一つ以上の前記反応槽に運ぶことを特徴とする請求項7に記載の触媒評価装置。
【請求項9】
前記出口分配系は、一つ以上のバルブであることを特徴とする請求項2に記載の触媒評価装置。
【請求項10】
前記出口分配系は、単一のバルブであり、前記単一のバルブは、いずれか一つ以上の出口ストリームを、いずれか一つ以上の前記監視装置に運ぶことを特徴とする請求項9に記載の触媒評価装置。
【請求項11】
前記出口分配系は、単一の出口分配バルブであり、前記単一の出口分配バルブは、いずれか一つ以上の出口ストリームを、いずれか一つ以上の前記監視装置に運ぶことを特徴とする請求項10に記載の触媒評価装置。
【請求項12】
少なくとも四つの反応器からなり、前記各反応器が少なくとも一つの入口および出口ストリームを有する反応槽配列;および
少なくとも二つの原料ストリームを前記反応器に運ぶ少なくとも二つの入口ストリーム選別分配系
を含む高スループットの触媒評価装置であって、
第一の入口ストリーム分配系は、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料を、少なくとも一つの作動中の反応槽に運び、
前記第一の入口ストリーム分配系を除く、少なくとも一つの入口ストリーム分配系は、不活性流体、賦活流体、再生流体、硫化流体、活性化流体、ストリッピング流体、被毒流体および還元流体よりなる群から選択されるストリームを、前記作動中の反応器を除く反応槽以外の、少なくとも一つの作動していない反応槽に運び、
前記作動中の反応器の前記出口ストリームは、ガス分光計、質量分光計、IR計、ガスクロマトグラフ、UV計、液体クロマトグラフ、流量計、元素分析計、および水素、スチーム、酸素、硫化水素、一酸化炭素または二酸化炭素モニターよりなる群から選択される一種以上の計測機器によって監視され、
前記反応槽の二つが同時に、前記作動中の反応槽であることはない
ことを特徴とする触媒評価装置。
【請求項13】
少なくとも一つの前記原料ストリームは、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料であり、他の原料ストリームは、関心ある反応体を含まない処理ガスであり、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料は、作動中の反応槽に運ばれ、
前記前処理ストリームは、作動していない反応槽に運ばれ、
前記入口および出口分配系は、作動中の各反応器の通油時間(TOS)が予め定められた範囲に制御されるように調整される
ことを特徴とする請求項12に記載の触媒評価装置。
【請求項14】
少なくとも一つの関心ある触媒を、各々入口および出口を有する少なくとも二つの反応槽に充填する工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの原料ストリームを、入口分配系に導く工程;
関心ある反応体を含まない少なくとも一つの処理ストリームを、前記入口分配系に導く工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームを、前記入口分配系から一つの反応器の前記入口に運ぶ工程であって、少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリームが運ばれる前記反応器は、作動中の反応器として知られる工程;
少なくとも一つの前記処理ストリームを、前記入口分配系から少なくとも一つの他の反応器の前記入口に運ぶ工程であって、前記他の反応器は、作動中の反応器でなく、前記他の反応器は、作動していない反応器として知られる工程;
前記作動中の反応器の出口ストリームを、監視装置に運ぶ工程;および
前記入口分配系を操作して、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームは、以前には作動していない反応器であった、新たな作動中の反応器に導かれ、また
少なくとも一つの前記処理ストリームは、以前には作動中の反応器であった、新たな作動していない反応器に導かれる
ようにする工程
を含み、
作動中の各反応器のTOSは、予め定められた範囲に制御される
ことを特徴とする急速失活触媒の試験方法。
【請求項15】
少なくとも一つの関心ある触媒を、各々入口および出口を有する少なくとも二つの反応槽に充填する工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの原料ストリームを、入口分配系に導く工程;
関心ある反応体を含まない少なくとも一つの処理ストリームを、第二の入口分配系に導く工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームを、前記入口分配系から一つの反応器の前記入口に運ぶ工程であって、少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリームが運ばれる前記反応器は、作動中の反応器として知られる工程;
少なくとも一つの前記処理ストリームを、前記第二の入口分配系から少なくとも一つの他の反応器の前記入口に運ぶ工程であって、前記他の反応器は、作動中の反応器でなく、前記他の反応器は、作動していない反応器として知られる工程;
前記作動中の反応器の出口ストリームを、監視装置に運ぶ工程;および
前記第一および第二の入口分配系を操作して、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームは、以前には作動していない反応器であった、新たな作動中の反応器に導かれ、また
少なくとも一つの前記処理ストリームは、以前には作動中の反応器であった、新たな作動していない反応器に導かれる
ようにする工程
を含み、
作動中の各反応器のTOSは、予め定められた範囲に制御される
ことを特徴とする急速失活触媒の試験方法。
【請求項16】
出口分配系を更に含み、いずれか一つ以上の前記反応器の前記出口ストリームは、前記出口分配系に導かれ、次いで前記出口分配系は更に、前記出口ストリームを、一つ以上の監視装置または受器に分配することを特徴とする請求項14に記載の急速失活触媒の試験方法。
【請求項17】
出口分配系を更に含み、いずれか一つ以上の前記反応器の前記出口ストリームは、前記出口分配系に導かれ、次いで前記出口分配系は更に、前記出口ストリームを、一つ以上の監視装置または受器に分配することを特徴とする請求項15に記載の急速失活触媒の試験方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの入口ストリームおよび少なくとも一つの出口ストリームを各々有する二つ以上の反応槽を含む高スループットの急速失活触媒評価装置であって、
前記入口ストリームは、少なくとも一つの入口分配系と直接連通しており、
前記入口分配系は、少なくとも二つの原料ストリームを有し、
前記出口ストリームは、出口分配系により方向付けられ、
前記入口分配系は、前記原料ストリームを、いずれか一つ以上の前記反応槽に通油可能であるか、または原料をいずれかの反応槽に排出可能であり、
前記出口分配系は、いずれかの前記出口ストリームを、いずれか一つ以上の監視装置に運び、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料は、少なくとも一つの作動中の反応槽に運ぶ手段を含み、
関心ある反応体を含まない前記原料は、少なくとも一つの作動していない反応槽に運ぶ手段を含み、
前記入口および出口分配系は、作動中の各反応器の通油時間(TOS)を、予め定められた、制御された範囲に調整する手段を含む
ことを特徴とする触媒評価装置。
【請求項2】
少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリーム以外の、前記原料ストリームの一つは、不活性流体、賦活流体、再生流体、硫化流体、活性化流体、ストリッピング流体、被毒流体および還元流体よりなる群から選択されるストリームであることを特徴とする請求項1に記載の触媒評価装置。
【請求項3】
前記監視装置は、ガス分光計、質量分光計、IR計、ガスクロマトグラフ、UV計、液体クロマトグラフ、流量計、元素分析計、および水素、スチーム、硫化水素、酸素、一酸化炭素または二酸化炭素モニターよりなる群から選択される一種以上の監視装置であることを特徴とする請求項2に記載の触媒評価装置。
【請求項4】
前記入口分配系は、一つ以上のバルブであることを特徴とする請求項1に記載の触媒評価装置。
【請求項5】
前記入口分配系は、単一のバルブであり、前記単一のバルブは、いずれか一つ以上の前記原料ストリームを、いずれか一つ以上の前記反応槽に運ぶことを特徴とする請求項4に記載の触媒評価装置。
【請求項6】
前記出口分配系は、一つ以上のバルブであることを特徴とする請求項1に記載の触媒評価装置。
【請求項7】
前記出口分配系は、単一のバルブであり、前記単一のバルブは、いずれか一つ以上の出口ストリームを、いずれか一つ以上の前記監視装置に運ぶことを特徴とする請求項6に記載の触媒評価装置。
【請求項8】
少なくとも四つの反応器からなり、前記各反応器が少なくとも一つの入口および出口ストリームを有する反応槽配列;および
各々少なくとも二つの原料ストリームを有する、前記反応器に運ぶ少なくとも二つの入口ストリーム選別分配系
を含む高スループットの触媒評価装置であって、
第一の入口ストリーム選別分配系は、少なくとも一つの関心ある反応体を含む原料を、少なくとも一つの作動中の反応槽に運び、
前記第一の入口ストリーム選別分配系を除く、少なくとも一つの入口ストリーム選別分配系は、不活性流体、賦活流体、再生流体、硫化流体、活性化流体、ストリッピング流体、被毒流体および還元流体よりなる群から選択されるストリームを、前記作動中の反応器を除く反応槽以外の、少なくとも一つの作動していない反応槽に運び、
前記作動中の反応器の前記出口ストリームは、ガス分光計、質量分光計、IR計、ガスクロマトグラフ、UV計、液体クロマトグラフ、流量計、元素分析計、および水素、スチーム、酸素、硫化水素、一酸化炭素または二酸化炭素モニターよりなる群から選択される一種以上の計測機器によって監視され、
前記反応槽の二つが同時に、前記作動中の反応槽であることはない
ことを特徴とする触媒評価装置。
【請求項9】
少なくとも一つの関心ある触媒を、各々入口および出口を有する少なくとも二つの反応槽に充填する工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの原料ストリームを、入口分配系に導く工程;
関心ある反応体を含まない少なくとも一つの処理ストリームを、前記入口分配系に導く工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームを、前記入口分配系から一つの反応器の前記入口に運ぶ工程であって、少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリームが運ばれる前記反応器は、作動中の反応器として知られる工程;
少なくとも一つの前記処理ストリームを、前記入口分配系から少なくとも一つの他の反応器の前記入口に運ぶ工程であって、前記他の反応器は、作動中の反応器でなく、前記他の反応器は、作動していない反応器として知られる工程;
前記作動中の反応器の出口ストリームを、監視装置に運ぶ工程;および
前記入口分配系を操作して、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームは、以前には作動していない反応器であった、新たな作動中の反応器に導かれ、また
少なくとも一つの前記処理ストリームは、以前には作動中の反応器であった、新たな作動していない反応器に導かれる
ようにする工程
を含み、
作動中の各反応器のTOSは、予め定められた範囲に制御される
ことを特徴とする急速失活触媒の試験方法。
【請求項10】
少なくとも一つの関心ある触媒を、各々入口および出口を有する少なくとも二つの反応槽に充填する工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの原料ストリームを、入口分配系に導く工程;
関心ある反応体を含まない少なくとも一つの処理ストリームを、第二の入口分配系に導く工程;
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームを、前記入口分配系から一つの反応器の前記入口に運ぶ工程であって、少なくとも一つの関心ある反応体を含む前記原料ストリームが運ばれる前記反応器は、作動中の反応器として知られる工程;
少なくとも一つの前記処理ストリームを、前記第二の入口分配系から少なくとも一つの他の反応器の前記入口に運ぶ工程であって、前記他の反応器は、作動中の反応器でなく、前記他の反応器は、作動していない反応器として知られる工程;
前記作動中の反応器の出口ストリームを、監視装置に運ぶ工程;および
前記第一および第二の入口分配系を操作して、
少なくとも一つの関心ある反応体を含む少なくとも一つの前記原料ストリームは、以前には作動していない反応器であった、新たな作動中の反応器に導かれ、また
少なくとも一つの前記処理ストリームは、以前には作動中の反応器であった、新たな作動していない反応器に導かれる
ようにする工程
を含み、
作動中の各反応器のTOSは、予め定められた範囲に制御される
ことを特徴とする急速失活触媒の試験方法。
【請求項11】
出口分配系を更に含み、いずれか一つ以上の前記反応器の前記出口ストリームは、前記出口分配系に導かれ、次いで前記出口分配系は更に、前記出口ストリームを、一つ以上の監視装置または受器に分配することを特徴とする請求項9に記載の急速失活触媒の試験方法。
【請求項12】
出口分配系を更に含み、いずれか一つ以上の前記反応器の前記出口ストリームは、前記出口分配系に導かれ、次いで前記出口分配系は更に、前記出口ストリームを、一つ以上の監視装置または受器に分配することを特徴とする請求項10に記載の急速失活触媒の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−511339(P2006−511339A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565088(P2004−565088)
【出願日】平成15年11月21日(2003.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2003/037403
【国際公開番号】WO2004/060551
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】