説明

触媒層シートの修正方法

【課題】凝集物や異物がなく、しかもピンホールの発生を防いだ触媒層シートを製造し、電池特性の劣化を防いだ膜電極接合体を実現するための、触媒層シートの正確な修正方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム21と基材フィルム21の一方の面に設けた触媒層22とを備える触媒層シート23の修正方法は、触媒層22のうち、凝集物または異物24を含む一部を所定の量だけ除去する工程と、触媒層22の除去された部分に修正インク26を充填する工程と、修正インク26を乾燥させる工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体に用いられて好適な触媒層シートの修正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池用膜電極接合体の製造方法として、基材フィルム上に触媒層を設けた触媒層シートを高分子電解質膜に熱圧着する方法が知られている。触媒層シートの製造方法は、基材フィルムに触媒インクを塗布、乾燥して製造される。
【0003】
触媒シートの触媒層には、製造工程で発生する触媒の凝集物や異物が混入することがある。凝集物や異物が付着したままの触媒層シートを高分子電解質膜に熱圧着すると、高分子電解質膜を薄膜化させ、さらには高分子電解質膜に穴を開けてしまい膜電極接合体のピンホールとなるおそれがある。このような膜電極接合体のピンホールは電池性能の低下の原因となる。
【0004】
また、熱圧着する前に触媒層シートから凝集物や異物が剥がれた場合には、触媒層に穴が開く触媒層のピンホールとなる。触媒層ピンホールがある膜電極接合体は、触媒層ピンホールの部分の高分子電解質膜が劣化しやすくなり、膜電極接合体のピンホールが起こりやすくなる原因となる。
【0005】
図3は、凝集物または異物が存在する触媒層シートを説明する断面図である。基材フィルム31の一方の面に触媒層32が形成されてなる触媒層シート33には、図3(a)に示すように触媒の凝集物または異物34が含まれてしまうことがある。このような凝集物または異物34は、触媒層32の中に埋め込まれていることがほとんどであるため、これが触媒層シート33から剥がれ落ちると、図3(b)に示すように、触媒層32にピンホール37が発生するおそれがある。ここで、凝集物または異物34の大きさは、数十μm〜数百μm程度のものが多く、これらの凝集物または異物34がピンホール37の原因となる。
【0006】
図3(a)に示すような、凝集物または異物34を含む触媒層シート33を、図3で不図示の高分子電解質膜に熱圧着して膜電極接合体を製造すると、凝集物または異物34が高分子電解質膜にくい込んで高分子電解質膜が薄膜化し、異物が高分子電解質膜の厚みより大きい場合は、高分子電解質膜にピンホールが発生するおそれがある。
【0007】
一方、凝集体や異物34が剥がれ落ちた図3(b)の触媒層シートから膜電極接合体を製造した場合は、図3(a)に示す例のような高分子電解質膜への直接のダメージはないが、触媒層32のピンホール37がある部分の高分子電解質膜が劣化しやすいため、膜電極接合体のピンホールを発生させる原因となる。
【0008】
これを防ぐため、膜電極接合体のピンホールの検出方法や、修正方法が検討されてきた(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−325346号公報
【特許文献2】特開2004−214089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1、2の方法は、膜電極接合体のピンホールが発生してしまった後、それを検出する方法や、ピンホール部分を高分子電解質以外の材料で埋める方法であって、ピンホールの発生を防止することを目的とした方法ではなかった。
【0011】
そこで、本発明は、凝集物や異物がなく、しかもピンホールの発生を防いだ触媒層シートを製造し、電池特性の劣化を防いだ膜電極接合体を実現するための、触媒層シートの正確な修正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材フィルムと前記基材フィルムの一方の面に設けた触媒層とを備える触媒層シートの修正方法であって、前記触媒層のうち、凝集物または異物を含む一部を所定の量だけ除去する工程と、前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填する工程と、前記修正インクを乾燥させる工程とを備えることを特徴とする触媒層シートの修正方法である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記修正インクが触媒と高分子電解質と溶媒とを含み、前記修正インクの固形分が修正インク全体のうち10%以上90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の触媒層シートの修正方法である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填する工程において、前記触媒層シートをあらかじめ加熱しながら、前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒層シートの修正方法である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法により修正された触媒層シートを用いて製造された膜電極接合体である。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の触媒層シートの修正方法によれば、凝集物や異物がなく、しかもピンホールの発生を防いだ触媒層シートを製造できるため、膜電極接合体の製造においても膜電極接合体のピンホールを防ぎ、電池性能の低下を防ぐことができる。また、触媒層シートの製造工程で凝集物や異物が発生しても修正できるため、触媒層シートの歩留まりを改善することができる。また、凝集物や異物を除去する工程で、除去する触媒層の面積を一定にすることによって、修正インクを配置する工程で必要な修正インク量を一定にすることができ、上述の触媒層を正確に修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である触媒層シートの修正方法の工程を表した図である。
【図2】本発明の一実施形態が適用されうる固体高分子型燃料電池の分解斜視図である。
【図3】触媒の凝集物または異物がある触媒層シートを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
まず、本発明の一実施形態が適用されうる膜電極接合体を使用した固体高分子型燃料電池について説明する。図2は、本発明の一実施形態にかかる固体高分子型燃料電池13を示す概略図である。図2に示されるように、本実施形態にかかる固体高分子型燃料電池13は、高分子電解質膜1の両面に電極触媒層2および電極触媒層3を有する膜電極接合体12を備え、電極触媒層2および電極触媒層3と対向して空気極側ガス拡散層4および燃料極側ガス拡散層5が配置されてなり、それぞれ空気極6および燃料極7が構成されてなる。セパレータ10は、導電性を有し、かつ不透過性の材料よりなる。該セパレータ10には、ガス流通用のガス流路8と、該ガス流路8の形成された面と相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9が形成されてなる。図2に示されるように、セパレータ10は、空気極側ガス拡散層4および燃料極側ガス拡散層5を挟持するよう配置される。燃料極7側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスが供給される。燃料ガスとしては、例えば水素ガスが挙げられる。空気極6側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスが供給される。酸化剤ガスとしては、例えば空気などの酸素を含むガスが供給される。
【0021】
図2に示すように、本実施形態にかかる固体高分子型燃料電池13は、1組のセパレータ10に、高分子電解質膜1と、電極触媒層2と、電極触媒層3と、空気極側ガス拡散層4と、燃料極側ガス拡散層5とが挟持された、いわゆる単セル構造の固体高分子型燃料電池13である。しかしながら、本実施の形態では、セパレータ10を介して複数のセルを直列に積層した積層スタック構造を採用することも可能である。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態である触媒層シートの修正方法を説明するための図である。本実施形態の触媒層シートの修正方法では、図1(a)に示すように、基材フィルム21上に触媒層22を形成してなる触媒層シート(図1では、代表して触媒層シート23を説明する。)から凝集物または異物24を含む触媒層の一部を所定の量だけ除去して、図1(b)に示す状態にして、触媒層22のピンホール27部分に修正インク26を充填することで、図1(c)に示すように触媒層シート23を修正するものである。
【0023】
ここで、凝集物または異物24とは、例えば、触媒層22に含まれる触媒の凝集体、触媒層シート23の製造工程で混入する繊維、埃、金属粒子、高分子片、または、基材フィルム21と触媒層22の間に気泡が入ることで生じる触媒層23の微小な突出部分などのことをいう。
【0024】
凝集物または異物24の除去には、除去したい凝集物または異物24を含む触媒層と接触する先端部が粘着性を有する棒状の器具25を用いると、除去したい部分だけを除くことができる。棒状の器具25は、その先端部が平坦であることが望ましい。先端部が平坦であれば、触媒層に押し当てることで、接触する触媒層の面積を一定にすることができる。また、除去したい凝集物または異物24を含む触媒層と接触する先端部の接触面の形状は、円形や長方形など、接触する触媒層の面積を一定にすることができればどのような形状でもよい。また、棒状の器具25の先端部は、数十μmから数百μm程度の凝集物または異物を除去できる大きさが好ましい。具体的には、先端部の触媒層への接触面の直径または一辺が、凝集物または異物の大きさの約10倍に相当する数百μmから数mmの大きさであることが望ましい。ただし、先端部の触媒層への接触面積が、除去したい凝集物または異物24を含む触媒層の面積と精度よく一致することができれば、先端部の触媒層への接触面の直径または一辺は、凝集物または異物の大きさの約2倍から10倍の範囲内であってもよい。このような器具を用いて、凝集物または異物24とその周辺の触媒層も除去すると、凝集物または異物を確実に取り除くことができる。また、触媒層のうち、凝集物または異物を含む一部を所定の量だけ除去することができるため、凝集体または異物24を除去した後の触媒層のピンホール27部分を所定の体積にすることができる。
【0025】
凝集物または異物24の除去は、上述した棒状の器具25以外に、触媒層のうち、凝集物または異物を含む一部を所定の量だけ除去することができる手段であれば、特に限定されない。ここで、触媒層の一部を除去する所定の量とは、触媒層に含まれる凝集物または異物の大きさによって決まり、具体的には、棒状の器具25の先端部の触媒層への接触面積と触媒層の厚みから理論的に算出される。
【0026】
棒状の器具25の先端部の材料は、凝集物または異物24とその周辺の触媒層を除去できる程度の粘着性を有する材料であれば特に限定されないが、粘着材またはタック性のあるゴムを使用するのが良い。具体的には、ゴム系、アクリル系、シリコン系、ウレタン系などの材料が挙げられる。
【0027】
棒状の器具25によって凝集物または異物24とその周辺の触媒層を除去した後に形成された触媒層のピンホール27部分には、マイクロディスペンサーやマイクロピペットなどの公知の方法により修正インク26を充填する。その後、充填した修正インク26を乾燥させると、修正された触媒層シート23を製造できる。
【0028】
触媒層のピンホール27部分に充填した修正インク26の量は、乾燥したときに触媒層22より突出しないよう、修正インク26を乾燥したときに触媒層のピンホール27以下の体積になるように調整しておく必要がある。棒状の器具25における除去したい凝集物または異物24を含む触媒層と接触する先端部の接触面の大きさを一定にすれば、接触する触媒層の面積が一定となるため、触媒層のピンホール27部分を充填するために必要な修正インク26を常に一定量とすることができる。
【0029】
一方、触媒層にある凝集物または異物のみを除去し、凝集物または異物を除去したことにより形成される触媒層のピンホール部分に、修正インク26を充填する場合、個々のピンホール部分の大きさに合わせて修正インク26を所定量だけ充填しなければならない。その結果、修正インク26が所定量より少ない場合、触媒層のピンホール部分を覆うことができないため、好ましくない。また、修正インク26が所定量より多い場合、触媒層面より突出してしまい、突出した部分が高分子電解質膜を薄膜化させる原因となってしまうため、好ましくない。
【0030】
修正インク26は、触媒と高分子電解質と溶媒を少なくとも含み、その固形分は、修正インク全体のうち10%以上90%以下が良く、さらには20%以上70%以下が好ましい。固形分が10%より小さい場合、溶媒分が多く、修正インクの溶媒により近傍の触媒層も溶解してしまう可能性があるため好ましくない。一方、固形分が90%より大きい場合、修正インクの粘度が高くなり、所定の量を充填するのが困難になるため好ましくない。
【0031】
触媒層のピンホール27部分に充填した修正インクは、加熱することで乾燥させる。修正インク26の固形分が低く溶媒分が多い場合は、周辺の触媒層を溶解して触媒層の厚みが不均一になる可能性があるため、触媒層シート23をあらかじめ加熱しながら修正インク26を充填することで、ただちに溶媒を除去することが望ましい。また、乾燥させるときの加熱温度は、60℃から150℃の範囲であることが望ましい。
【0032】
加熱手段は、修正インク26を充填した箇所を加熱できるものであればよい。例えば、基材フィルム21の触媒層22と反対の面にヒーター等の加熱装置を設置する方法、触媒層22の基材フィルム21の反対の空間にヒーターを設置する方法でもよい。
【0033】
修正インク26は、乾燥させた後に触媒層22と同じ組成となるように調整する。修正インク26は、触媒、高分子電解質、溶媒を混合し、分散処理を加えることで製造できる。分散方法としては、ボールミルやビーズミル、ロールミル、せん断ミル、湿式ミル、超音波分散処理、ホモジナイザーが挙げられる。
【0034】
触媒層22および修正インク26に含まれる触媒としては、カーボンに触媒物質を担持したものを用いることができる。触媒物質としては、白金のほかに、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、オスミウムの白金族元素の他、鉄、鉛、銅、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウムなどの金属又はこれらの合金、または酸化物、複酸化物等が使用できる。カーボン粒子の種類は、微粒子状で導電性を有し、触媒におかされないものであればどのようなものでも構わないが、カーボンブラックやグラファイト、黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレンが使用できる。
【0035】
修正インク26の溶媒としては、高分子電解質と触媒を溶解または分散できるものであればよい。具体的には、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール1−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノ−ル、エチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。このうち、修正インク26の溶媒としては、加熱により除去しやすいものが好ましく、沸点が150℃以下であるとよい。
【0036】
触媒層22および触媒インク26に含まれる高分子電解質は、プロトン伝導性があればどのようなものでもよく、例えば、フッ素系高分子電解質、炭化水素系高分子電解質を用いることができる。フッ素系高分子電解質としては、例えば、デュポン社製Nafion(登録商標)、旭硝子(株)製Flemion(登録商標)、旭化成(株)製Aciplex(登録商標)、などを用いることができる。炭化水素系高分子電解質としては、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリスルフィド、スルホン化ポリフェニレン等の電解質を用いることができる。
【0037】
また、本発明の膜電極接合体の高分子電解質膜1にも、上記の高分子電解質の膜を用いることができる。
【0038】
基材フィルム21は、転写性がよい材質であればよく、例えばエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂を用いることができる。また、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレートなどの高分子フィルムも用いることができる。これらの基材に、離形層などの処理をしたものを用いても良い。
【実施例】
【0039】
〈触媒層インクの作製〉
白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(ナフィオン:登録商標、Dupont社製)を、水、エタノールの混合溶媒で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行い、触媒インクを調製した。触媒インクをPTFEフィルムの上にアプリケーターを用いて塗工し、80℃のオーブンで乾燥させて、触媒層シートを作製した。触媒インクの塗工では、乾燥後の触媒層の厚みが20μmとなるようにアプリケーターを調整した。触媒層シートの触媒層には、大きさが200μm程度の触媒の凝集体および異物があることを確認した。
【0040】
〈修正インクの作製〉
白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質溶液(ナフィオン:登録商標、Dupont社製)を、水、エタノールの混合溶媒で混合し、遊星型ボールミルで分散処理を行い、修正インクを調製した。白金担持カーボンと高分子電解質の重量比は触媒層インクと同じ比とした。また修正インクの固形分重量比は20%とした。
【0041】
<実施例>
〈触媒層シートの修正〉
先端に面積1平方mmで円形の粘着剤をつけたペンを用いて、触媒層上の凝集体および異物と周辺の触媒層をペンの粘着剤へ移し、触媒層から取り除いた。このときの取り除いた容積は、0.02立方mmであった。触媒層シートをオーブンへ基材フィルムの面を接触させて置き、80℃で加熱しながら、異物を取り除いて触媒層がなくなりピンホールとなった部分に、マイクロディスペンサーを用いて、ピンホールの容積に一致するように一定量の修正インクを導入し、溶媒を乾燥させて、凝集体および異物のあった部分を修正した。
【0042】
<比較例>
〈触媒層シートの修正〉
先端に球状の粘着剤をつけたペン(圧着時の先端の面積はおよそ0.1〜0.5平方mm)を用いて、触媒層上の凝集体および異物と周辺の触媒層をペンの粘着材へ移し、触媒層から取り除いた。触媒層シートをオーブンへ基材フィルムの面を接触させて置き、80℃で加熱しながら、異物を取り除いて触媒層がなくなりピンホールとなった部分に、マイクロディスペンサーを用いて、一定量の修正インクを導入し、溶媒を乾燥させて、凝集体および異物のあった部分を修正した。
【0043】
〈膜電極接合体の作製〉
実施例および比較例の触媒層シートから、膜電極接合体を作製した。高分子電解質膜としてナフィオン211(登録商標、Dupont社製)を使用した。高分子電解質膜の両面に触媒層シートを配置し、油圧式ホットプレス機で、150℃で5分加圧して、基材フィルムを剥離し、膜電極接合体を作製した。
【0044】
実施例の触媒層シートから作製した膜電極接合体と、比較例の触媒層シートから作製した膜電極接合体の、凝集体および異物があった部分の断面をSEMにより観察した。比較例1の触媒層シートから作製した膜電極接合体の断面は、修正インクが触媒層面より突出した部分があったため、高分子電解質膜が押しつぶされ、他の部分より薄膜化していることを確認した。実施例1の触媒層シートから作製した膜電極接合体では、修正インクが触媒層面より突出せず高分子電解質膜が薄膜化していないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の触媒層シートから作製した膜電極接合体は、固体高分子形燃料電池に用いた場合にもピンホールが発生しにくく、長期耐久性に問題が発生しにくい。したがって、本発明は高分子電解質膜を用いた燃料電池、特に定置型コジェネレーションシステムや燃料電池自動車などに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 高分子電解質膜
2、3 電極触媒層
4 空気極側ガス拡散層
5 燃料極側ガス拡散層
6 空気極
7 燃料極
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
12 膜電極接合体
13 固体高分子形燃料電池
21、31 基材フィルム
22、32 触媒層
23、33 触媒層シート
24、34 凝集物または異物
25 棒状の器具
26 修正インク
27、37 触媒層のピンホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと前記基材フィルムの一方の面に設けた触媒層とを備える触媒層シートの修正方法であって、
前記触媒層のうち、凝集物または異物を含む一部を所定の量だけ除去する工程と、
前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填する工程と、
前記修正インクを乾燥させる工程と
を備えることを特徴とする触媒層シートの修正方法。
【請求項2】
前記修正インクが触媒と高分子電解質と溶媒とを含み、前記修正インクの固形分が修正インク全体のうち10%以上90%以下であることを特徴とする請求項1に記載の触媒層シートの修正方法。
【請求項3】
前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填する工程において、前記触媒層シートをあらかじめ加熱しながら、前記触媒層の除去された部分に修正インクを充填することを特徴とする請求項1または2に記載の触媒層シートの修正方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法により修正された触媒層シートを用いて製造された膜電極接合体。
【請求項5】
請求項4に記載の膜電極接合体を備えた固体高分子形燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20753(P2013−20753A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151795(P2011−151795)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】