説明

触媒搬送システム

本発明は、燃焼反応システムの火炎帯中に直接、もしくは、供給空気、供給燃料、または、燃料/空気混合気中に直接、或いは、燃焼反応の高温排出ガス中に直接、或いは、これら3種類のいずれかの組合せ中に供給するための化学触媒前駆体を含むエアロゾルを発生させる触媒エアロゾル搬送システムを提供する。
本発明のシステムおよび組成物は、燃焼チャンバから放出される汚染物質を低減することができ、また、より効率的で、清浄な燃焼を確実に行わせることができる。本発明の燃焼システムおよび組成物は、ほとんどの用途において、燃料経済性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼反応システムの火炎帯中に直接、もしくは、供給空気、供給燃料、または、燃料/空気混合気中に直接、或いは、燃焼反応の高温排出ガス中に直接、或いは、これら3種類のいずれかの組合せ中に供給するための化学触媒前駆体を含むエアロゾルを発生させる触媒エアロゾル搬送システムを提供する。本発明のシステムおよび組成物は、燃焼チャンバから放出される汚染物質を低減することができ、また、より効率的で、清浄な燃焼を確実に行わせることができる。本発明の燃焼システムおよび組成物は、ほとんどの用途において、燃料経済性を向上させることができる。
【背景技術】
【0002】
触媒粒子を含むスパージングガス(sparging gases)を生成し、燃焼システムの火炎帯内に供給するための搬送システムは、当業界で知られている。
【0003】
非特許文献1には、ディーゼルトラックおよび他の商用車両、または大型車両に対するEUおよび米国の排出ガス規制に適合することができる既存の技術が検討されている。これらの技術は、ディーゼル用酸化触媒、DeNOx触媒および窒素酸化物(NOx)吸収装置、選択的接触還元(SCR)およびディーゼル微粒子除去装置(DPF)、さらに、粒子状物質クランクケース排出規制のフィルタ技術を含む。
【0004】
触媒コンバータは、米国で1974年に初めて乗用車に導入され、現在では、世界中の5億台の自動車のうち2億7500万台以上に導入され、世界中で生産される全新車のほぼ90%が、触媒コンバータを備えている。しかし、ディーゼル駆動高馬力エンジンの排ガス規制技術は、まだ、これほどは、広く行き渡っていない。
【0005】
懸念される他の問題としては、ディーゼル燃料の硫黄分がある。硫黄は、触媒表面に強く吸着されるため、触媒性能に対し重大なマイナスの影響を及ぼす。したがって、触媒の表面積が縮小され、その結果、酸化触媒上に形成される二酸化窒素の量が減少する。このことは、一部のDPFおよびNOx吸収装置では、再生を行うのに二酸化窒素に依存していることから、問題を生じる。さらに、硫黄は、NOxに比べて化学NOxトラップとより強く反応するため、NOx吸蔵能力を低下させ、より強い、また頻繁な再生を必要とし、したがって、燃料消費量が増える。
【0006】
ディーゼル用酸化触媒は、一酸化炭素と炭化水素を二酸化炭素と水に転換することに留意されたい。したがって、これらのシステムは、粒子状物質排出の量を減らすが、NOx排出に対してはほとんど効果を有しないことが判明している。
【0007】
ディーゼル用酸化触媒は、さらに、NOx吸収装置、DeNOx触媒、DPFまたはSCRとともに使用され、二酸化窒素レベルを下げるか、または噴射された炭化水素、尿素、またはアンモニアのバイパスを浄化することもできる。
【0008】
従来の自動車用触媒コンバータは、本質的に、セラミックハニカムからなり、排気ガスはここを通る。触媒コンバータの内側は、白金またはパラジウム、ロジウム、およびセリウム触媒の微粒子層でコーティングされている。触媒の白金成分は、COをCO2に酸化し、UHCをCO2と蒸気に酸化し、ロジウムは、形成されるNOxのレベルを低減する。
【0009】
触媒コンバータは、時間が経過し、使用が進むとともに劣化する。1984年以降、触媒コンバータは、ドイツのすべての車両に装着されてきた。この結果、微量の白金およびロジウムがアウトバーン上で検出されている。
【0010】
特許文献1には、触媒混合受容器が入口管、二次スプラッシュチャンバ、およびガス出口につながる空気入口を備える、スパージングガス触媒搬送システムが開示されている。ガスは、液体の底部近くに出口を備える管を介して受容器内の液体にスパージングされ、その結果得られるガス、液体からの蒸気、液体しぶき、および触媒の組み合わさったものは、燃焼帯に向けられる。しかし、この特許文献1の明細書によれば、重要なことに液体蒸気および液体触媒スプラッシュは、燃焼帯に運ばれず、また二次スプラッシュチャンバが必要であることが文献で開示されている。このチャンバは、システムの性能を低下させるので、受容器と燃焼帯との間の連絡管内にスプラッシュするか、またはそこで凝縮する液体触媒の効果を低減するために使用される。また、特許文献1には、このようなスプラッシュは、結果として触媒混合物の消費率が無制御になるため望ましくないと文献では指摘されている。このため、燃焼が予測不可能になり、および/または触媒消費率が高くなりすぎる。
【0011】
また、特許文献2には、ガス入口に接続されたスパージング管を備え、ここから、ガス、通常は空気が液体の底部近くに出口を有する管を介して触媒混合物に泡立てられつつ通される触媒搬送システムも開示されている。この方法では、触媒粒子は、ガス流により液気界面で気泡がはじけることで、蒸発することなく流動化され、酸化火炎帯内に運び込まれるようにできる。次いで、触媒粒子は、ガス流により輸送管路を介して火炎帯内に運ばれる。
【0012】
スパージングガスを使用して触媒または触媒前駆体を燃焼システムに導入することに関わる問題としては、触媒または触媒前駆体の一部が、ガス流と接触する表面に付着する可能性があることである。したがって、従来技術で使用される触媒前駆体の一部は、触媒溶液受容器から出たスパージングガスが燃焼チャンバに到達する前に流れ込む任意の供給管路の表面に付着する。これにより、システムの効率が下がり、高価な触媒物質を無駄にすることになる。
【0013】
エアロゾルは、気体中に固体または液体粒子が分散した微細分散物として定義される。本発明で使用されるエアロゾル搬送システムは、原子吸光分光法で使用されているように希釈溶液を火炎内に噴霧する際に使用される方法と同様の方法で機能する。エアロゾルを微粒子噴霧として発生するプロセスは、噴霧または霧化と呼ぶことができる。エアロゾルは、液体を吸い上げるか、または汲み上げ、乱流の下でガス、通常は空気と混合し、1つまたは複数の小さなオリフィスを通して排出することにより発生させられる。空気の使用量は、ガス流量および液体流量を含む、さまざまなパラメータに依存する。エアロゾルは、さらに、1つまたは複数の小さなオリフィスを通して高圧下で液体のみを放出することにより発生させることもできる。超音波デバイスも、微細分散エアロゾルを発生させるために使用することができる。本発明の文脈では、霧化および噴霧という用語は、エアロゾルの供給を示すものとして交換可能に使用することができ、このエアロゾルは、予燃焼帯および/または燃焼帯内に、および/または後燃焼帯に送られる触媒物質の微細噴霧からなる。エアロゾル搬送システムは、当業界で知られている。しかし、現在まで、このタイプのシステムは、触媒物質を燃焼帯に供給するのには使用されていない。
【0014】
本発明によるエアロゾルの生成は、化学的に不活性なガスを液体中に通して気泡を生じさせるプロセスを伴うスパージングの原理から区別されるべきである。本発明の場合、エアロゾルは、微細ノズルに通して排出する直前に、圧力下で溶液中に触媒を含む液体とガスとの乱流混合により形成される。この方法による混合および噴霧は、微量レベルで触媒を含むエアロゾルの定常状態および連続供給を行う。
【0015】
【特許文献1】国際公開第02/083281号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,776,606号明細書
【非特許文献1】Business Briefing: "Global Truck and Commercial Vehicle Technology"; London' World Marketing Research Centre; 2000; p.97-102; EU Directive 1999/99 EC
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、従来技術によるシステムの特性のさまざまな欠点を解消するか、または改善することである。したがって、吸気または燃焼帯の1つまたは複数に、または燃焼システムの高温排気ガス中に直接、導入することができるエアロゾル搬送システムを提供することは本発明の目的である。
【0017】
本発明の他の目的は、従来技術のシステムに比べて、燃焼システムから出るCO、NOx、UHC、および硫黄酸化物の排出物の低減を著しく改善するエアロゾル搬送システムを提供することである。
【0018】
本発明の他の目的は、低NOxバーナーを採用する燃焼システム内で生じる腐食を低減し、それにより、従来技術のシステムに比べて、そのような燃焼システムの寿命を延ばすエアロゾル搬送システムを提供することである。
【0019】
本発明の他の目的は、従来技術のシステムに比べて、燃焼システムの燃焼効率を高めるエアロゾル搬送システムを提供することである。したがって、燃焼システムの火炎温度を維持し、過剰な空気レベルを下げて燃焼システムの熱効率を改善することは本発明の目的である。
【0020】
また、本発明のエアロゾル搬送システムは、燃焼システムの内側に堆積する炭素およびチャーの量を減らすことが望ましいことである。
【0021】
さらに、本発明のエアロゾル搬送システムは、従来技術のシステムに比べて、燃焼システムに関連する騒音および振動を低減することも望ましい。
【0022】
本発明の他の目的は、一定期間稼働していたコンバータなど、非効率になったコンバータを復活させるために使用できるエアロゾル搬送システムを提供することである。
【0023】
本発明の他の目的は、触媒が燃焼システム内に保持されるエアロゾル搬送システムを提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、石炭中に存在する水銀、および他の可燃物質ならびに高温ガス流と相互作用し、排気ガス中に排出されるのを妨げるか、または排出される量を低減するエアロゾル搬送システムを提供することである。
【0025】
出願人は、驚いたことに、これらの問題および他の問題は、エアロゾル搬送システムを使用することにより触媒または触媒前駆体を直接、燃焼部位の中に、およびその周辺に送ることにより解消することができることを見いだした。そこで、本発明は、上記の目的の一部または全部を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の一態様によれば、燃焼装置とともに使用するエアロゾル搬送システムが提供され、このシステムは、
ガスの発生源をチャンバに供給するための第1の入口と、
溶媒中に1つまたは複数の無機金属塩を含む触媒溶液をチャンバに供給するための第2の入口と、
チャンバからエアロゾルの形態で流体を放出するための霧化ノズルを備えるチャンバを備え、
第1の入口および第2の入口、ならびに霧化ノズルは、チャンバ内のガスおよび流体が混合され一緒になって、ノズルを通して放出されたときにエアロゾルを形成するように配列され、ノズルは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡している。
【0027】
一実施形態では、ノズルは、燃焼帯内に存在する。他の実施形態では、ノズルは、燃焼に先立って空気と燃料が混合される予燃焼領域内に存在する。他の実施形態では、ノズルは、燃料のみがある予燃焼領域内に置くことができ、および/またはノズルは、空気のみがある予燃焼領域内に置くことができ、つまり2つの成分が混合される前に置くことができる。他の実施形態では、ノズルは、後燃焼領域に置くことができる。こうして、ノズルは、排気領域内の燃焼生成物にエアロゾルを供給する。ノズルは、流体混合物をエアロゾルの形態で排出させることができる1つまたは複数の噴口を備える。ノズルから出るエアロゾル放出物の形状は、ノズルの噴口のサイズ、個数、および配列により異なる。したがって、エアロゾル形状は、必要に応じて作ることができる。円錐形エアロゾルが得られるため、ノズルには実質的に円錐の形状が好ましい。
【0028】
他の実施形態では、複数のノズルが存在できる。そのため、ノズルは、上記の領域のうちの1つまたは複数にエアロゾルを独立に供給することができる。触媒溶液は、それぞれの場合において同じであることも、異なることもある。ノズル形状および噴口の配列は、複数のノズルが存在するそれぞれの場合において同じものとすることも、異なるものとすることもできる。
【0029】
本発明の一実施形態では、ガスおよび触媒溶液のチャンバへの供給は、連続的であり、エアロゾルは、ノズルから連続的に噴霧することができる。あるいは、ガスまたは溶液のチャンバへの供給を中断して、エアロゾルがノズルから間欠的に噴霧されるようにもできる。
【0030】
エアロゾルは、さらに、空気を使用せずに発生させることもできる。触媒前駆体溶液を、高圧に曝し、非常に細かいノズルから排出させると、エアロゾルとして出てくる。そのため、上記の出願の他の実施形態では、エアロゾルがガス、例えば空気を、触媒の溶液と組み合わせて使用して生成されるものとして説明される場合、このような生成システムは、ガス無使用高圧システムで置き換えることができ、圧縮ガスの供給を必要としない。圧力がかかっている触媒の溶液をノズルに単に供給するだけで十分である。この実施形態には、工業用バーナー、ボイラーおよびSIおよびディーゼルエンジンなどの、ガスと溶液とを混合することによりエアロゾルが生成される場合のすべてにおいて用途がある(つまり、直火炎(open flame)および閉鎖火炎(closed flame)の両方のシステム)。
【0031】
燃焼は、直火炎または閉鎖火炎用途において行うことができる。直火炎用途としては、石炭、ガス、および石油を燃料とするボイラーおよび加熱炉がある。閉鎖火炎用途としては、ガソリンおよびディーゼル用の内燃機関がある。本発明の一実施形態では、エアロゾルは、触媒コンバータを装着した車両において使用される。
【0032】
本明細書で使用されているように、燃焼帯は、燃料の酸化が発生する領域、およびその領域を直に囲む領域、例えば燃焼チャンバを意味し、含む。
【0033】
触媒溶液中の1つまたは複数の金属塩は、消費される燃料の燃焼、または燃焼生成物(排気)の、無害なまたは清浄な生成物への酸化または還元のための触媒である。触媒は、単純化合物、二成分化合物、複合金属塩、または有機金属化合物とすることができる。
【0034】
好ましくは、本発明の触媒溶液は、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、セリウム、イリジウム、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、銅、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、鉄、モリブデン、マンガン、金、または銀の1つまたは複数の無機塩または有機金属化合物を含む。好ましくは、本発明の溶液は、第VIII族元素(つまり、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt)、マグネシウム、またはアルミニウムの1つまたは複数の化合物を含む、より好ましくは、この化合物は、白金、ロジウム、レニウム、マグネシウム、またはアルミニウムの化合物である。化合物が1つだけ使用される場合、溶液は、白金またはロジウム塩を含まなければならない。
【0035】
一実施形態では、この化合物は、0.1から2.0mg/mlまでの濃度で溶液中に存在する。より好ましくは、この濃度は、0.2から1.0mg/mlまでの範囲である。化合物のモル重量は、200から2000までとすることができ、より好ましくは、200から750までの範囲内である。
【0036】
無機金属塩は、H2PtCl6、RhCl3、HReO4、MgCl2、およびAlCl3として存在する。このような無機金属塩から水中に形成される錯体イオンは、[PtCl62-、[Rh(H2O)63+、および[ReO4-を含む。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、触媒前駆体溶液濃縮液は、金属は白金、ロジウム、レニウム、またはアルミニウムから選択される1つまたは複数の金属塩を含む。触媒前駆体溶液濃縮液中にH2PtCl6.6H2Oとして存在する白金の濃度は、0.2から1.0mg/mlまでの範囲内であり、より好ましくは0.5から0.7mg/mlまでの範囲内であり、特に好ましくは0.6mg/mlの濃度である。触媒前駆体溶液濃縮液中にRhCl3として存在するロジウムの濃度は、好ましくは0.04から1.2mg/mlまでの範囲内であり、より好ましくは0.06から0.09mg/mlまでの範囲内であり、特に好ましくは0.07mg/mlの濃度である。触媒前駆体溶液濃縮液中にHReO4として存在するレニウムの濃度は、好ましくは0.05から1.5mg/mlまでの範囲内であり、より好ましくは0.08から1.2mg/mlまでの範囲内であり、特に好ましくは1.0mg/mlの濃度である。触媒前駆体溶液濃縮液中にAlCl3として存在するアルミニウムの濃度は、好ましくは0.05から1.0mg/mlまでの範囲内であり、より好ましくは0.07mg/mlの濃度である。
【0038】
本発明の他の好ましい一実施形態では、本発明の溶液中のアルミニウムは、0.05から1.0mg/mlまでの範囲の濃度、より好ましくは0.07mg/mlの濃度のMgCl2などのマグネシウムにより置き換えられる。
【0039】
本発明のさらに他の好ましい一実施形態では、アルミニウムの一部のみをマグネシウムで置き換え、触媒前駆体溶液が、アルミニウムとマグネシウムの両方を含むようにする。
【0040】
本発明のさらに他の好ましい一実施形態では、白金とロジウムの両方が、触媒溶液中に存在する場合、白金とロジウムとの比は、約8.6:1であり、白金とアルミニウムとの比は、約8.6:1であり、白金とレニウムとの比は、約6:1であり、アルミニウムが、マグネシウムにより置き換えられる場合、白金とマグネシウムとの比は、約8.6:1である。
【0041】
しかし、本発明の成分の比は、これらの範囲よりも高い場合も低い場合もある。したがって、白金とレニウムとの比は、好ましくは30:1から1:1までの範囲内、より好ましくは15:1から2:1までの範囲内である。白金とアルミニウムまたはマグネシウムとの比は、好ましくは30:1から1:1までの範囲内、より好ましくは15:1から2:1までの範囲内である。白金とロジウムとの比は、好ましくは30:1から4:1までの範囲内、より好ましくは15:1から4:1までの範囲内である。
【0042】
本発明の他の好ましい一実施形態では、触媒前駆体溶液は、白金のみとロジウム、レニウム、マグネシウム、またはアルミニウムのうちの他の1つの無機金属塩を含む。
【0043】
溶媒は、1つまたは複数の金属塩(触媒)を溶解することができ、安定したエアロゾルを形成することができる溶媒とすることができる。理想的には、溶媒は、通常温度および圧力において著しい蒸気圧を持つが、溶媒は、あまり揮発性が高すぎてはならず、さもないと、触媒が供給管路内に早い段階で堆積され、および/またはたちまち消費されてしまうこともある。最も効果的な溶媒は、通常温度および圧力で沸点が80℃から140℃の範囲内であるものである。溶媒は、好ましくは水である。アルコール(メタノールまたはエタノールなど)または炭化水素溶媒も、溶媒として使用することができる。溶媒は、さらに、好適な溶媒の混合液であってもよい。水は、多くの無機金属塩を溶解する能力および安定したエアロゾルを形成する能力を有するため、好ましい溶媒である。
【0044】
溶媒は、さらに、例えば、エチレングリコールなどの不凍液を含むことができる。他の添加剤も必要に応じて含めることができる。
【0045】
他の態様では、本発明は、燃料を触媒により燃焼する方法を提供し、この方法は、
a)チャンバへの触媒の溶液の供給および圧縮ガスの供給を行い、チャンバは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡するノズルを備える工程と、
b)溶液とガスをチャンバ内で混合する工程と、
c)溶液とガスの混合物をノズルに強制的に通し、エアロゾルを燃料燃焼装置の予燃焼帯、燃焼帯、または後燃焼帯内に形成する工程とを含む。
【0046】
本発明のエアロゾルおよび燃料は、同時に、または別々に、燃料噴射ディーゼルまたはガソリンエンジンの燃焼帯内に導入することができる。
【0047】
本発明の一実施形態では、エアロゾルは、キャブレターから空気とともにエンジンの燃焼帯内に導入することができる。無機金属塩が燃焼システムに導入される地点と必要な使用地点(つまり、燃焼帯)との間の距離を最小にするために、エアロゾルは、キャブレターに入る直前に火花点火エンジンの空気流内に導入され、揮発燃料と混合され、混合物はエンジン内に入る。ディーゼルエンジンの場合、エアロゾルは、エアフィルタを通過した後に空気流内に導入される。
【0048】
燃焼には、火炎内、およびその周囲にラジカルが存在する必要があり、本発明のシステムが燃焼プロセスに導入する白金および/またはロジウムなどの触媒物質は、プロセスを著しく改善する。これは、発生するラジカル量を増やし、それにより、通常必要とされる過剰な酸素の量を減らし、したがって燃料節約することにより達成される。これは、排出も改善する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の無機金属塩を含むエアロゾルを燃焼システムを出る燃焼システムの最終高温排気ガス流内に導入することにより燃焼システムの有害な排出物、特にNOxを低減する方法を提供する。これらのシステムは、燃焼帯内、燃焼帯の前、または燃焼帯の直後に排出量削減システムを採用しても、また採用しなくてもよい。好ましくは、本発明のエアロゾルは、内燃機関(ディーゼル、ガソリン、バイオディーゼル、および代替え燃料などを使用する)、または発電所もしくはプロセスステーションボイラー、バーナー、および乾燥機の高温排気ガス流内に導入される。
【0050】
石炭は、本発明の燃焼技術の恩恵を受ける燃料の1つである。本発明の主要な用途の1つは、したがって、石炭燃焼で使用されるさまざまなNOx削減技術の応用である。特に、このプロセスは、灰などの中の炭素を減らすためにさまざまなNOx削減デバイスおよび手順を採用する加熱炉およびボイラー内の石炭燃焼に応用することができる。
【0051】
燃焼プロセスにおけるNOx形成の2つの主要機序は、熱NOxおよび燃料NOxである。前者は、燃料が内在的に窒素を含まない場合(例えば、天然ガス)である場合に支配的であり、後者は、燃料が石炭または重油などである場合に支配的である。燃焼改良技術は、燃焼プロセスの初期段階でのNOx形成を制限することを目的としている。本発明のプロセスは、これらの方法と親和性があり、適用可能である。
【0052】
好ましくは、本発明のエアロゾルは、燃焼システムの高温排気ガス流内に、直接的にまたは間接的に、アンモニアまたは尿素とともに、また必要に応じて、必要な反応温度を得るために添加された炭化水素および空気とともに、導入される。本発明のエアロゾルは、NOx、CO、および炭素低減のためアンモニア/尿素/炭化水素/空気システムを採用する燃焼システムの高温排気ガス流内に、または他の適切な部位に、特に、SNCR(選択的非接触還元)戦略を採用して排出物を削減する石炭動力および類似の油または固体燃料動力プラントに、同時に、または別々に導入することができる。
【0053】
NOxを削減するエアステージング法では、燃焼用空気は複数の段階に分けられ、一次燃焼帯は、総燃料過剰理論空燃比で動作し、残りの空気は、下流に噴射される。本発明のプロセスをこの方法に応用するには、両方の段階において適当な地点に触媒を噴射する必要がある。低NOxバーナーは、燃焼を遅らせ、酸素の利用度を減らし、ピーク火炎温度を下げるような方法でバーナー内部の空気流と燃料流とを分割することによりステージング効果をもたらすように設計されている。これらのファクタすべてがNOxの削減に役立つ。本発明のプロセスをこの方法に適用するには、それに加えてまだ形成されるNOxを削減するラジカル反応を増強し、それにより、その効率およびNOx削減の全体的効率、さらには全体として燃焼プロセスの効率を改善することができるようにエアロゾル触媒をすべての地点に導入することを伴う。
【0054】
NOxレベルは、希釈剤を燃焼チャンバに導入する、燃焼排ガス循環の技術により低減することもできる。本発明のプロセスをこの方法に適用することは、エアロゾル触媒を導入し、希釈剤とよく混合することを伴う。NOxを下げる他の方法は、過剰空気レベルを下げることによる方法である。これにより、NOxは削減されるが、不安定な燃焼、バーンアウトの減少、スラギング、ファウリング、および腐食などの望ましくない問題が生じる。しかし、本発明のエアロゾル触媒を使用すると、燃料プロセスを正常に進行させることができるため、これらの問題を最小限に抑えられる。これは、火炎内に発生する余分なラジカルによるものである。
【0055】
後燃焼NOx制御技術も多数ある。これらは、一般に、排ガス処理と呼ばれ、(a)選択的接触還元(SCR)、(b)選択的非接触還元(SNCR)、および(c)非選択的接触還元(NSCR)に分類できる。
【0056】
方法(b)は、アンモニアガスまたはアンモニア水または尿素水を燃焼排ガス中に噴射することを用いる。発生するラジカル反応は、本質的に、NOxを酸素と窒素に転換するが、この反応は、制限された反応条件においてしか発生しない。本発明の他の態様によるエアロゾル触媒を燃焼排ガス中に導入すると(エアロゾル触媒が燃焼領域または予燃焼領域に導入されるのと同じ方法で)、これらの反応を高め、稼働温度範囲を拡大する。本発明のプロセスにより、触媒は、アンモニアガスまたはアンモニア水または尿素水中に、またはアンモニアガスまたはアンモニア水または尿素水とともに噴射され、および/または他の塩も、燃焼排ガス中に必要に応じて加えられる。
【0057】
本発明の方法により燃焼排ガスに供給される触媒は、さらに、SCR触媒の効率を維持し、SCR触媒の寿命を延ばすために使用することもできるが、ただし、それらが白金ベースであるかまたは他の認められている触媒物質を含んでいる場合である。触媒グリッドシステムに入るガス流中の白金およびロジウム均一系触媒は、触媒作用が触媒上で発生するのを助け、白金ベースまたは他の何らかの触媒に付着し、そこに留まる白金およびロジウムは、二酸化炭素ガスへの酸化に触媒採用により加わることによりSCR触媒への炭素およびチャーの堆積を防ぐことを助ける。
【0058】
一実施例は、SCR、SNCR、またはNSCR技術を使用してNOxを削減する燃焼器に関する。一部のNOxがそのまま残り、プラントから出て最終スタックを通じて大気中へ出ることが可能であり、またよくあることである。最終スタックNOxを削減するために使用される技術では、アンモニアまたは尿素の最終スタック噴射を使用する。温度が十分に高くない場合、好適な炭化水素ガスを燃焼させる、口火も、出口ガスを温度範囲内にし、それにより、アンモニアまたは尿素をNOxと反応させるために使用される。霧状触媒は、ラジカル反応領域に入るのに先立って口火内に噴射することができる。これにより、白金およびロジウム触媒種が形成され、また、温度範囲も下がり、ラジカル反応は、より効率的になり、口火に必要なガスの量も削減され、燃料節約につながる。
【0059】
本発明のプロセスには、多数の応用例がある。生成されるエアロゾルまたは噴霧は、燃料と混合する空気流中に噴射され、燃焼帯に入る。この概念は、化学およびラジカル機序を伴うすべての高温反応に拡大することができる。そのため、本発明は、さらに、エアロゾル触媒を、気相ラジカル反応が発生することが知られている、または想定されるすべての状況に導入するという概念も含み、プロセスの応用は、燃焼を伴うものに限定されず、ラジカルを伴う高温化学反応、特に石油精製産業における均一系および不均一系触媒を伴うものも含むことができる。石油精製産業およびいくつかの関係する産業では、高温で白金触媒を使用する。これは、時間の経過とともに、また使用が進むにつれ劣化するため、浄化または交換されなければならない。本発明は、このような触媒の寿命を延ばし、効率を高める潜在力を有する。
【0060】
本明細書で説明されているような本発明の技術は、さらに、本発明の触媒燃焼プロセスが性能および生産量を高め、さらにメンテナンスを削減するため、石油精製産業でも応用される。この分野における特定の問題の1つに、熱エネルギーを例えば石油蒸留プラントに供給する炉内の望ましくない煤堆積があり、煤は定期的に取り除かなければならない。本発明は、このような問題を解決する方法も提供する。
【0061】
本発明のプロセスは、さらに、CO浄化とともに煤およびチャー燃焼にも使用することができる。これらのプロセスはすべて、ラジカル反応がこれらのプロセスのそれぞれに関与するので、触媒エアロゾルの噴射により増強することができる。応用例には、接触分解装置、改質器および他の精製プロセス、および流動床燃焼プロセスがある。
【0062】
本発明の他の実施形態では、エアロゾルの噴霧は、周期律表の第II族の元素の化合物に基づく1つまたは複数の添加剤を使用して硫黄捕獲を行うために使用される。排気および燃焼排ガスから硫黄の酸化物を除去するために使用されるさまざまな化学物質および手順がある。貴金属触媒とこれらの化学物質との同時噴射は、またはガス温度が低すぎて元素金属を生成できない場合には上流での噴射は、硫黄除去効率を改善し、関わる反応の低い温度限界を拡大すると考えられている。
【0063】
このプロセスでは、さらに、微量の水銀を同様の方法で捕捉できる。現在、燃焼中に石炭から水銀を除去する技術は、望ましいが、未実証であるか、または完全に実証されてはいない。水銀は、貴金属を含む場合を除きほとんどの金属(鉄を除く)とアマルガムを容易に形成し、石炭燃焼ボイラー内に、それらに関連する条件の下で形成された白金およびロジウムコーティング面に付着すると考えられている。現在テスト中の水銀除去技術のうち、どの技術も、アマルガムを形成する水銀の特性を使用していない。
【0064】
一実施形態では、本発明で使用される溶液から誘導される金属(触媒)は、燃焼チャンバ内に保持されるか、または排気ガスが通る表面に付着するか、または触媒コンバータのハニカム構造内にトラップされる。これは、付着した金属(触媒)がさらに不均一系触媒反応に関わる、したがって連続反応が発生する連続的再生触媒表面をもたらすので有利である。
【0065】
本発明の他の態様では、燃料を前処理する方法が提供され、この方法は、
a)チャンバへの触媒の溶液の供給および圧縮ガスの供給を行い、チャンバは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡するノズルを備える工程と、
b)チャンバ内で溶液とガスとを混合し、溶液とガスとの混合物を強制的にノズルに通してエアロゾルを形成し、燃焼に先立って燃料を前処理するためにエアロゾルを固体燃料に加える工程とを含む。
【0066】
燃料は、好ましくは固体燃料である。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態は、ボイラー、発電所もしくはプロセスステーションボイラー、バーナーおよび乾燥機、加熱炉、タービンエンジン、往復機関、焼却炉エンジン、直火炎、火花点火エンジン、天然ガスエンジン、ガソリンエンジン、ロータリーエンジン、ディーゼル、ガソリン、バイオディーゼル、またはガソリンエンジンおよび他の代替え燃料などを使用する内燃機関、または燃料が酸化されるシステムなどの直火炎または閉鎖火炎用途のいずれかでエアロゾル触媒組成物および搬送システムを使用することを含むことができる。通常、燃料の酸化は、空気または酸素過剰媒体中での燃焼を伴う。酸化には、燃焼条件の下で酸素を遊離させる他の酸素発生源を供給することが影響を及ぼすことができる。
【0068】
本発明のエアロゾル搬送システムは、中に入れられる溶液の影響を受けない硬質容器を備える。容器は、エアロゾルの所望の使用に適している物質から作ることができる。本発明の好ましい一実施形態では、エアロゾルの容器は、セラミック、金属、またはプラスチック、またはそれらの組合せから作られる。
【0069】
エアロゾル搬送システムの圧縮ガスは、例えば、空気、蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、およびそれらの組合せから選択されたプラスまたはマイナスにイオン化したガスまたは中性のガスなどのエアロゾルの所望の使用に適しているガスとすることができる。好ましくは、圧縮ガスは空気である。ある種の状況下では、圧縮ガスは、空気および追加の酸素成分またはアンモニアガスを含む。
【0070】
エアロゾル搬送システムのガスを、30から90psiまでの範囲内の圧力に曝すのが好ましい。より好ましくは、約50から70psiまでの範囲内の圧力が必要である。
【0071】
エアロゾル搬送システムの溶液は、圧力に曝される。好ましくは、溶液を、約20から70psiまでの範囲内の圧力に曝す。より好ましくは、溶液は、約30から50psiまでの範囲内の圧力に曝す。
【0072】
エアロゾルを発生する方法はさまざまなものがある。エアロゾルを発生するシステムは、原理上、触媒エアロゾルを発生するために使用することができ、選択は、触媒エアロゾルの目的の用途に依存する。
【0073】
本発明のエアロゾル搬送システムで使用される触媒前駆体溶液のpHは、コロイドまたは微細析出物のその後の形成とともに生じる劣化または分解を妨げるようなpHでなければならず、好ましく5未満である。より好ましくは、触媒前駆体溶液のpHは、4から1までの範囲内であり、さらにより好ましくは3.0から1.4までの範囲内であり、特に好ましくは1.6から2.2までの範囲内である。
【0074】
好ましい一実施形態では、本発明は、火炎中に、または排気ガス中に、複数の触媒を発生させ、その前駆体を直接に、または入口空気を使用して、火炎または排気ガス中に導入している。これにより、酸素原子濃度およびフリーラジカル発生が高まり、燃焼率が向上し、そのため、滞留時間における効率が向上する。
【0075】
無機金属塩および有機金属化合物のうちのいくつかは、高温の火炎内で、または高温排気ガス中で元素形態に分解し、酸素と触媒反応させる従来の燃焼元素および燃焼プロセス中に中間物質として形成される分子およびラジカルを生成すると考えられている。本発明では、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、セリウム、イリジウム、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、銅、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、鉄、モリブデン、マンガン、金、または銀のうちの少なくとも1つの元素形態は、火炎中にまたは高温排気ガス内に、ppmからppbの領域内のあるレベルで存在する。好ましくは、白金およびロジウムは、火炎中または高温排気ガス内にppmからppbの領域内のあるレベルで存在する。燃焼システム内または高温排気ガス中に導入されたエアロゾル中の無機金属塩または有機金属化合物の濃度は、それぞれの燃焼システムのサイズおよび特性に依存する。
【0076】
本発明のエアロゾル搬送システムは、燃焼システムの熱出力およびサイズに依存するppmからppbまでのレベルの量の無機金属塩または有機金属化合物を含む。好ましくは、1つまたは複数の無機金属塩は、1から1000ppbまでの範囲内の濃度で溶液中に存在する。より好ましくは、1つまたは複数の無機金属塩は、50から100ppbまでの範囲内の濃度で溶液中に存在する。触媒として作用するにはごく低いレベルの無機金属塩が必要であることが都合よく判明している。これにより、ppbからppmまでのレベルのこれらの触媒前駆体を、石炭またはガス動力工業用ボイラーまたは火花点火およびディーゼルエンジンの燃焼チャンバなどの燃焼チャンバ内に運ぶことができる。したがって、本発明のエアロゾルは、効果的に、無機金属塩または有機金属化合物を、燃焼が行われる領域内に入れる。
【0077】
本発明のエアロゾルの形態の希釈された触媒前駆体溶液の投与量は、所望の使用に依存する。しかし、投与量は、好ましくは1時間当たり0.1から1USガロン(0.3785リットルから3.785リットル)までの範囲内である。より好ましくは、投与量は、1時間当たり0.5USガロン(1.8925リットル)である。希釈の程度は、燃料が消費される、またはボイラーにより熱エネルギーが供給される速度に依存する。
【0078】
本発明の他の実施形態では、エアロゾルは、ディーゼル燃料、ガソリン、ナンバー2燃料油、バンカー油、原油から精製された燃料油、圧縮天然ガス、液化天然ガス、ガソホール、炭化水素、コーンオイル、植物油、鉱物油、石炭、石炭ガス、アスファルト蒸気、酸化可能蒸気、木材、紙、わら、生物燃料、可燃性廃棄物、およびそれらの組合せなどの燃料を使用する燃焼チャンバに関して使用される。
【0079】
本発明のエアロゾルに関して使用するのに好適な燃焼システムの運転温度は、好ましくは500から2000℃までの範囲内であり、好ましくは900から1600℃までの範囲内であり、より好ましくは1000から1500℃までの範囲内である。
【0080】
さらに他の態様を参照すると、本発明は、ディーゼルまたはガソリンエンジンとともに使用する小型エアロゾル搬送システムを実現する。エアロゾル搬送システムの寸法は、エアロゾルの目的の使用に依存する。システムは、例えば、石炭燃料プラントに関係する高温を受けることのないように構成できるので、微細エアロゾルを生成するために超音波発生器(上記を参照)を採用する小型システムを使用することができる。
【0081】
好ましくは、本発明の小型エアロゾル搬送システムの幅は、目的とする使用に応じて10cmから2mまでの間とすることができる。
【0082】
本発明の他の利点は、本発明のエアロゾル供給デバイスおよび方法が適用されるエンジンの振動により、触媒前駆体溶液の完全な混合が可能になることである。
【0083】
本発明の他の利点は、触媒塩または有機金属化合物、例えば、白金およびロジウムの元素形態は、炉の内部に付着し、また触媒エアロゾルの成分から導かれた炉内部に付着している他の化合物に付着し、したがって、触媒活性は、触媒混合物がシステム内に噴霧される期間を超えて持続する。
【0084】
エアロゾル搬送システムは、都合よく、燃焼機関に関連する騒音および振動を低減することができる。例えば、白金の存在は、ディーゼルエンジン内で火炎を低い温度で燃焼させると考えられ、したがって、ピストンがその行程の終わりに達する前に消えない。ディーゼルエンジンの特徴は、「ガラガラ音」であり、高調波とよく呼ばれる。これは、一部は断熱膨張で温度降下が生じるため膨張するガスのエネルギーがある点を超えて減少した場合に、また火炎が消えた場合に発生する。これが生じると、ピストンは、そのまま、行程のほぼ1/4だけ進む。この時点でのピストンの移動は、押す動作から引く動作に変化し、ガラガラ音を発生する。本発明のエアロゾル搬送システムが取り付けられると、高調波は、かなり低減され、エンジンは、相当静かに、また滑らかになる。通常の状況では、燃焼が開始されると、その結果生じる膨張により、シリンダーが押し下げられる。本発明の白金含有エアロゾルシステムは、酸素原子を発生することに関与し、そのため、火炎および膨張は長く続くと考えられる。さらに、白金は、高速燃焼を助長し、それにより、火炎を持続し、発生する出力レベルを高めることに寄与すると考えられる。
【0085】
COおよびNOx排出量を最小に抑えて火花点火エンジンを運転するための最適な条件は、幾分対立したものとなる。燃焼チャンバ内の温度が高ければ高いほど、形成されるCOの量は少なくなり、したがって、エンジンを可能な限り高温で運転することによりCO排出量を最小に抑える。しかし、NOxの形成については逆のことが言え、排出量を最小にするためには、燃焼チャンバ内の温度は可能な限り低くなければならない。現在、エンジンは、温度の関数としてのCOおよびNOx形成のプロットの交差点に近くなるように、触媒コンバータの効率に関してチューニングされている。
【0086】
本発明のエアロゾル搬送システムの固有の利点としては、燃焼チャンバからの排気ガス中のCO、NOx、および未燃焼炭化水素レベルを最小限に抑えるために燃焼温度が上記交差点温度を中心とする範囲に収まるように設計しなくてもよいようになっているということが挙げられる。したがって、低い温度の方式では、形成されるNOxの量は少なく、この量は、燃焼チャンバ内のロジウムの存在によりさらに低減される。他の結果および利点は、触媒コンバータに対する作業負荷は、これでかなり減らされ、したがって、その効率および寿命は、延びるという点である。
【0087】
本発明の触媒濃縮液中にレニウムを含めることは、エンジンの動作を滑らかにし、静かにすることに寄与すると考えられ、したがって、その役割は、滑らかな火炎燃焼を助長するもの、および火炎に対する滑らかな最前部となるものと考えられる。
【0088】
出願人は、驚くべきことに本発明のエアロゾル搬送システムが、燃料の燃焼特性を改善し、したがって、燃焼システム内に堆積した炭素を減らすことを発見した。さらに、触媒の量は、後から、またはその後、低減することができる。いくつかの状況では、本発明のエアロゾル搬送システムは、明るい青色火炎を発生し、これは、特に効率のよい燃料燃焼を示す。この技術の利点は、燃焼システムがきれいな内部、きれいなフライアッシュ、および触媒の小さいが定常の噴射を有し、触媒腐食または毒作用が生じないという点である。したがって、本発明は、燃焼システムの寿命を延ばすことができる。
【0089】
本発明は、いくつかの図により例示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0090】
図1では、空気1の供給は、送風機2に送られ、さらに混合装置3に送られ、そこで、燃料源4からの燃料と合わされる。空気を補うために、または空気の代わりに、酸素を使用することもできる。空気と燃料の混合物5は、燃焼チャンバ6に供給され、そこで燃焼が行われる。燃焼生成物7、つまり、排気ガスは、次いで、燃焼チャンバを出て、熱交換機9を備える排気領域8を通過する。
【0091】
参照文字aからiは、本発明のエアロゾル搬送システムの配置に好適な噴射部位を示す。そのため、触媒溶液を含むエアロゾル噴霧は、文字aからiで示される部位のどれかに供給することができる。複数のこのような部位は、装置内に存在することができる。複数の部位が存在する場合、供給される触媒溶液は、同じ用途における他のエアロゾル供給部位と同じでも、異なっていてもよい。好ましい部位は、a、c、およびdの1つまたは複数であり、これは燃焼を改善し、燃料消費量を減らすからである。NOxレベルを下げるために、後燃焼帯内のエアロゾル供給部位が好ましい。そのため、g、h、またはiでの供給が好ましい。噴射は、さらに、これらの領域にアンモニアまたは尿素(図には示されていない)を添加して、または添加せずに、行うこともできる。
【0092】
図2は、接線方向の入口管10で触媒溶液をエアロゾル供給ヘッド12内の渦流室11内に供給する単純な噴射装置を示している。圧縮ガスは、管13により渦流室11に供給される。霧化ノズル14は、微細エアロゾルミスト16を与えるようにサイズが決められ、配列されているオリフィス15を備える。図に示されている実施例では、霧化ノズル14は、一般に、円錐形状であり、円錐形状エアロゾルミスト16が得られる。ガスと触媒溶液をよく混合することは、渦流室11内のガス管13と管10の位置決めのため、ノズル14内のオリフィス15を通って排出するのに先立って渦流室11内で行われる。
【0093】
図3は、図2のエアロゾル供給デバイスの簡素化上面図を示している。噴口15は、霧化ノズル14の周りに規則正しいパターンを描くように配置されていることがわかる。オリフィスのパターンは、所望の霧化された噴霧の形状により決まる。図3は、円錐状霧化ノズル14を示しており、これにより、エアロゾル15の円錐状噴霧が得られ、燃料消費を減らし、NOxレベルを改善することに関して最も有利な効果が生じる。
【0094】
図4は、水冷霧化器17を示しており、これは、炉壁18を通り、炉の内側絶縁セラミックれんが張り19を通る。霧化器17は、金属で作られており、霧化器17の本体内の流路22を通る冷却水21の供給源を備えることにより形成されるウォータージャケット20を備える。触媒溶液23は、流路24を介して渦流室25に供給される。圧縮ガス26、この場合は空気は、流路27により渦流室25に供給される。触媒溶液および空気は、渦流室25内で混合し、霧化ノズル28を通り、エアロゾル29の噴霧円錐を形成する。
【0095】
以下の実施例は、本発明の有効性を実証するものである。
【実施例1】
【0096】
ボイラー(毎時3300万BTU定格のJohnston 800馬力)は、蒸気を発生する効率が低下し、これを相殺するために、供給されるガスの量が増やされた。ボイラーを調べ、空気供給に不具合があるため、燃焼が不完全になり、炉内に炭素が堆積したことがわかった。ボイラーのこの空気搬送システムを修理し、本発明のエアロゾル搬送システムを取り付けた。その後の測定により、本発明のエアロゾルの装着後、騒音レベルは107デシベルから97デシベルに減少したことがわかった。ボイラーを、最大負荷に近い状態で1ヶ月間運転し、本発明のエアロゾル搬送システムとともに動作させた。1ヶ月後、炉の内部は、かなりきれいであり、燃料節約は、約4%であることがわかった。さらに測定したところ、NOxレベルは、6.5週間後に26.8%、149ppmから109ppmに減少したことがわかった。13週間エアロゾル搬送システムとともに動作させた後、NOxレベルは、全体として33%だけ減少し100ppmとなり、全体の燃料節約は、約4%であることがわかった。
【実施例2】
【0097】
他のボイラー(毎時3300万BTU定格のJohnston 800馬力)を、約25%負荷で運転した。ベースラインのNOxレベルおよび酸素過剰割合を決定した後、本発明のエアロゾル搬送システムを取り付け、3週間動作させた。その結果、ボイラーは、45%だけ過剰酸素を減少させて25%負荷で維持することができ、したがって、燃料削減は約4%であることがわかった。このボイラーのNOxレベルは、35%削減され、136ppmから87ppmになった。火炎は、会社のボイラーエンジニアにより、純粋な水素火炎に最も近いと見えた最も青い火炎であると説明された。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一態様による直火炎用途を示す略図である。
【図2】本発明によるエアロゾル搬送システムの側面図である。
【図3】図2のエアロゾル搬送システムの上面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による他のエアロゾル搬送システムの側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼装置とともに使用するエアロゾル搬送システムであって、
ガスの発生源をチャンバに供給するための第1の入口と、
溶媒中に1つまたは複数の無機金属塩を含む触媒溶液を前記チャンバに供給するための第2の入口と、
前記チャンバからエアロゾルの形態で流体を放出するための霧化ノズルを備えるチャンバを備え、
前記第1の入口および前記第2の入口ならびに霧化ノズルは、前記チャンバ内のガスおよび流体が混合され一緒になって、前記ノズルを通して放出されるときにエアロゾルを形成するように配列され、前記ノズルは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡していることを特徴とするエアロゾル搬送システム。
【請求項2】
前記ノズルは、前記燃焼帯内に存在することを特徴とする請求項1に記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項3】
前記ノズルは、燃焼に先立って空気と燃料が混合される予燃焼領域内に存在することを特徴とする請求項1または2に記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項4】
前記ノズルは、2つの成分が混合されるより前の、燃料のみが存在する予燃焼領域内、および/または、空気のみが存在する予燃焼領域内に置かれることを特徴とする請求項1または2に記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項5】
前記ノズルは、燃焼領域の後に置かれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項6】
前記ノズルは、円錐形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項7】
複数のノズルが存在できることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項8】
ガスおよび触媒溶液の前記チャンバへの供給は、連続的であり、したがってエアロゾルは、前記ノズルから連続的に噴霧されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項9】
本発明の触媒溶液は、白金、パラジウム、ロジウム、レニウム、ルテニウム、オスミウム、セリウム、イリジウム、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、銅、亜鉛、リチウム、カリウム、ナトリウム、鉄、モリブデン、マンガン、金、または銀から選択された金属を含む1つまたは複数の化合物を含むことを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項10】
前記化合物は、0.1から2.0mg/mlまでの濃度で溶液中に存在することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のエアロゾル搬送システム。
【請求項11】
燃料を触媒により燃焼する方法であって、
a)チャンバへの触媒の溶液の供給および圧縮ガスの供給を行い、前記チャンバは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡するノズルを備える工程、
b)前記溶液と前記ガスを前記チャンバ内で混合する工程、
c)溶液とガスの前記混合物を前記ノズルに強制的に通し、エアロゾルを燃料燃焼装置の前記予燃焼帯、燃焼帯、または後燃焼帯内で形成する工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記エアロゾルおよび前記燃料を、燃料噴射ディーゼルまたはガソリンエンジンの燃焼帯内に同時にまたは別々に導入することができることを特徴とする請求項11に記載の燃料を触媒により燃焼する方法。
【請求項13】
前記エアロゾルを、燃焼システムの高温排気ガス流中に導入することを特徴とする請求項11または12に記載の燃料を触媒により燃焼する方法。
【請求項14】
前記圧縮ガスは、空気、蒸気、窒素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、二酸化炭素、およびそれらの組合せから選択されることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の燃料を触媒により燃焼する方法。
【請求項15】
前記ガスを、30から90psiまでの範囲内の圧力下に置くことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の燃料を触媒により燃焼する方法。
【請求項16】
前記溶液を、20から70psiまでの範囲内の圧力下に置くことを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の燃料を触媒により燃焼する方法。
【請求項17】
燃料を前処理する方法であって、
a)チャンバへの触媒の溶液の供給および圧縮ガスの供給を行い、前記チャンバは、予燃焼帯、燃焼帯、および後燃焼帯のうちの1つまたは複数と流体で連絡するノズルを備える工程、
b)前記チャンバ内で前記溶液と前記ガスとを混合し、溶液とガスとの前記混合物を強制的に前記ノズルに通してエアロゾルを形成し、燃焼に先立って前記燃料を前処理するために前記エアロゾルを固体燃料に加える工程、を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記燃料は、固体燃料であることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−514898(P2008−514898A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534075(P2007−534075)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003717
【国際公開番号】WO2006/037952
【国際公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(507107682)エルジーアール リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【Fターム(参考)】