触媒材料及びその製造方法
本発明は、金属酸化物を含むナノサイズの結晶に固定された金属触媒を含む触媒材料に関する。更に、本発明は、前記触媒材料の製造方法に関する。最後に、本発明は、汚染物質を除去し、所望の生成物を得るための、前記触媒材料の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、担持金属触媒に関する。特に、本発明は、UV非照射下で有害汚染物質を酸化することが可能な、ナノ構造を有する担持金属触媒に関する。
【発明の背景】
【0002】
空気中の揮発性有機化合物(VOC)及び一酸化炭素(CO)は汚染物質であり、ヒトの健康に有害である。これらの汚染物質を除去する方法が開発されている。
【0003】
担持金属触媒は、CO及び炭化水素の低温酸化、並びにプロピレンの選択的酸化に有効であることが判明している(M.Haruta,Catal.Today 36:153(1997);M.T.Hayashi,K.Tanaka and M.Haruta,J.Catal 178:566(1998);M.Haruta and M.Date,Appl.Catal.A:Gen,222:427(2001)。
【0004】
担持金属触媒は通常、金属酸化物担体に付着しているナノサイズの金属粒子を含む。担持金属触媒の欠点の1つは、低温で触媒活性が低いことである。現在の担持金属触媒の他の欠点は、金属原子が担体の表面上で焼結して、金属クラスターを形成する傾向があるので、触媒寿命が短いことである。金属原子がクラスターに凝集すると、その触媒活性は著しく減少する。加えて、金属原子は、ハロゲン化物及びイオウ含有化合物の毒作用の影響を受けやすい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、金属酸化物結晶に固定された金属触媒を含む触媒材料を提供する。
【0006】
本発明の一態様は、金属が高度に分散した金属触媒を含む触媒材料を提供するが、焼結現象を妨げるので、本発明の触媒材料は安定で、長期間に渡って活性を示す。
【0007】
一実施形態では、触媒材料は、式(C)及び(D)に示されるように、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物の表面に付着した金属触媒と、を含む(更に図1C及び1D参照)。金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約50%、約60%又は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めていてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0008】
他の実施形態では、触媒材料は、式(G)により示されるように、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物及び金属触媒を含む。金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定されている一方で、第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面に直接固定されている。第1の金属酸化物は、金属触媒の担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルは約0〜約30重量%を占めていてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0009】
第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面上にヒドロキシル基が存在する場合にも、第1の金属酸化物の表面上で金属触媒が移動することをブロックするブロッキング剤として有用である。好ましくは、第2の金属酸化物を付着させ、その後、金属触媒を第1の金属酸化物の表面に付着させる。更に好ましくは、第2の金属酸化物は、モノマー型若しくはオリゴマー型又はこれらの混合物である。最も好ましくは、第2の金属酸化物の少なくとも約60%はモノマー型である。第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム又は酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0010】
上述の各実施形態では、金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種である。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは、約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%である。
【0011】
本発明の他の態様は、触媒材料の製造方法を提供する。一実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(f)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の製造方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物を第1の金属酸化物の表面に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(f)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(g)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の他の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、触媒材料の使用を提供する。特に、本発明の触媒材料は、毒性を有する有機種、無機種及び/又は生物学的種を含有する汚染物質を空気から除去することにより、空気を清浄化するのに有用である。一実施形態では、本発明の触媒材料を試料(空気流等)と接触させて、汚染物質レベルの低減を検出する。
【詳細な説明】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上、明らかに異なる意味に解するべきでない限り、単数形と複数形の両方を指す。
【0015】
(触媒材料)
本発明の一態様は、金属が高度に分散した金属触媒を含む触媒材料を提供するが、焼結現象を妨げるので、本発明の触媒材料は安定で、長期間に渡って活性を示す。
【0016】
一実施形態では、触媒材料は、下記式(C)及び(D)(図1C及び1Dも参照)に示されるように、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物の表面に付着した金属触媒と、を含む。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約50%又は約60%又は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0020】
式(C)に示されるように、第1の金属酸化物の表面には、ヒドロキシル基が固定されている。結晶の表面に固定されたヒドロキシル基の数によって、第1の金属酸化物の表面の水和比率が決定される。金属触媒を付着させる前に、高い水和比率の表面を得ることが望ましい。好ましくは、表面の水和比率は、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約100mg、更に好ましくは、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約50mg又は約0〜約25mgである。第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基によって、金属触媒が第1の金属酸化物の表面上で焼結する可能性があるので、金属触媒を付着させた後に、第1の金属酸化物の表面からヒドロキシル基を除去することが望ましい。表面に遊離基を導入して水を形成させ、続いて、低温で触媒材料を加熱することにより、ヒドロキシル基を除去することができる。加熱は、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃で行う。
【0021】
金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択されるものである。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%の範囲内である。
【0022】
他の実施形態では、触媒材料は、下記式(G)に示されるように、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物及び金属触媒を含む。
【0023】
【化3】
【0024】
金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定されるが、この場合、第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面に直接固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0025】
第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面上にヒドロキシル基が存在する場合にも、第1の金属酸化物の表面上で金属触媒が移動することをブロックするブロッキング剤として有用である。好ましくは、第2の金属酸化物を付着させ、その後、金属触媒を第1の金属酸化物の表面に付着させる。更に好ましくは、第2の金属酸化物は、モノマー型若しくはオリゴマー型又はその混合物である。最も好ましくは、少なくとも約60%の第2の金属酸化物がモノマー型である。第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム又は酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0026】
式(C)に示されるように、第1の金属酸化物の表面には、ヒドロキシル基が固定されている。結晶の表面に固定されたヒドロキシル基の数によって、第1の金属酸化物の表面の水和比率が決定される。金属触媒を付着させる前に、高い水和比率の表面を得ることが望ましい。好ましくは、表面の水和比率は、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約100mg、更に好ましくは、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約50mg又は約0〜約25mgである。第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基によって、金属触媒は第1の金属酸化物の表面上で焼結する可能性があるので、金属触媒を付着させた後に、第1の金属酸化物の表面からヒドロキシル基を除去することが望ましい。表面に遊離基を導入して、水を形成させ、続いて、低温で触媒材料を加熱することにより、ヒドロキシル基を除去することができる。加熱は、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃で行う。
【0027】
金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択されるものである。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%の範囲内である。
【0028】
本発明の触媒材料は、多くの触媒反応に関して、先行技術より有用である。利点としては、例えば、低温での高い触媒活性、金属結晶の固定により改善された触媒安定性及び寿命、並びに単純で容易な触媒材料の再生法が挙げられる(これらに限られない)。例えば、本発明の触媒材料は、再生させることなく、約9000時間を超えて機能する。加えて、洗浄し、炉中で乾燥させることにより、簡単に再生させることができる。
【0029】
(触媒材料の調製方法)
本発明の他の態様は、触媒材料の製造方法を提供する。通常、この方法は、第1の金属酸化物を結晶化して、ナノサイズ粒子を調製するステップと、第1の金属酸化物の表面上に金属触媒前駆体を付着させるステップと、金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、を含む。随意的に、金属触媒を形成させた後に、第1の金属酸化物の表面上の過剰のヒドロキシル基を除去することもできる。
【0030】
一実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(f)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の製造方法を提供する。
【0031】
当技術分野の通常の専門家に知られている多くの方法を用いて、非晶質金属酸化物を製造することができる。例えば、当技術分野で知られているゾルゲル法を使用して、非晶質金属酸化物を形成させることができる。特に、この方法は、(a)金属酸化物前駆体をヒドロキシル含有中間体に変換する加水分解反応;(b)加水分解された前駆体を相互に反応させて(水分子を放出)、ポリマー鎖を形成させる縮合反応を伴う。好ましくは、迅速な加水分解及び縮合反応のために、金属酸化物前駆体を過剰の水アルコール溶液に滴加する。
【0032】
結晶化金属酸化物を形成させる方法は、当技術分野ではよく知られている。好ましくは、結晶化金属酸化物を、(1)熱処理、(2)熱水処理、及びマイクロ波処理により形成させることができる(A.J.Maira,K.L.Yeung,J.Soria,J.M.Coronado,C.Belver,C.Y.Lee,V.Augugliaro,Appl.Catal.B:Environ,29:327(2001);A.M.Peiro,J.Peral,C.Domingo,X.Domenech and J.A.Ayllon,Chem.Mater.,13:2567(2001)。これらはすべて、参照されることにより、本明細書にそのまま組み込まれる)。
【0033】
結晶が形成された後に、結晶表面への金属触媒前駆体の付着を妨害しうるいくつかの炭素汚染物質(即ち有機分子)が存在する。このような汚染物質は、当技術分野でよく知られている方法により、好ましくは低温酸化処理、更に好ましくはオゾン処理により除去することができる。
【0034】
前記の(d)ステップでは、当技術分野でよく知られている慣用の方法により、金属触媒前駆体を、結晶化された第1の金属酸化物の表面に付着させることができる。次いで、付着後、金属触媒前駆体を活性金属触媒に変換する。多くの金属触媒の前駆体が、当技術分野でよく知られている。一般的な概観に関しては、R.A.van Santen,P.W.N.M.van Leeuwen,J.A.Moulijn,B.A.Averill,Catalysis:An Integrated Approach,second edition,Elsevier(1999)参照。金属触媒前駆体は通常、塩、好ましくは水溶性の塩として存在する。金属触媒前駆体としては、例えば、金属触媒の硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、酢酸塩、アセチルアセトン酸塩、ヒドロキシ酢酸塩又は水酸化物塩が挙げられる(これらに限られない)。
【0035】
金属触媒を金属酸化物結晶に付着させた後に、金属触媒は、容易に利用可能な遊離ヒドロキシル基を介して表面上を移動する傾向がある。このような動きは、場合により焼結をもたらすので、防ぐべきである。従って、金属触媒を金属酸化物結晶の表面に付着させた後に、金属酸化物結晶の表面上の過剰の遊離ヒドロキシル基を除去することが望ましい。理想的には、表面上の多少の痕跡量の水も、時間が経過するにつれて遊離ヒドロキシル基となるので、表面の水和のすべてを除去するべきである。一実施形態では、遊離ヒドロキシル基を、遊離ラジカルと反応させることにより水に代える。次いで、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃の低温加熱により、水を蒸発させる。好ましくは、オゾン処理又はUV放射により、遊離ラジカルを導入する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物を第1の金属酸化物の表面に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(f)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(g)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の他の製造方法を提供する。
【0037】
第2の金属酸化物を加える主な目的は、より大きな金属粒子の形成をもたらす付着金属の移動を防ぐことである。金属酸化物は、第1の金属酸化物又は金属触媒の電子的又は触媒的特性を直接的又は間接的に変更しうる。
【0038】
第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム、酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0039】
第2の金属酸化物(ブロッキング剤)を第1の金属酸化物担体に加えたら、前記の方法を用いて、金属触媒を第1の金属酸化物担体に付着させることができる。形成された金属触媒/触媒材料を特性を決定する方法は多く存在する(方法の非制限的な例に関しては表4参照)。
【0040】
(触媒材料の使用)
本発明の触媒材料は、幅広い反応で活性を示す。特に、この触媒材料は、CO又は炭化水素を酸化させるために使用することができる。加えて、本発明の触媒材料は、細菌、カビ等の微生物を破壊するために使用することもできる。従って、本発明の触媒材料は、毒性を有する有機種、無機種及び/又は生物学的種を含む汚染物質を空気から除去することにより、空気を清浄化するのに有用である。本発明において、「有機種、無機種又は生物学的種」という用語は、ヒトに危害、疾患及び/又は死をもたらす有機及び/又は無機粒子、細菌及び/又はウイルスを指す。それに該当する周知の毒性物質としては、サリン、マスタードガス(ビス(2−クロロエチル)チオエーテル)、ホスゲン、塩化シアン、アンモニア、酸化エチレン、一酸化炭素、炭疽、大腸菌(E.coli)、サルモネラ、肝炎、リステリア、レジオネラ及びノーウォークウイルス等が挙げられる(これらに限られない)。一実施形態では、本発明の触媒材料を試料(空気流等)と接触させて、汚染物質レベルの低下を検出する。汚染物質除去の非限定的な例に関しては実施例12〜14参照。
【実施例】
【0041】
〔実施例1:触媒中間体及び最終生成物〕
図1を参照すると、化合物(A)は、触媒担体として有用な第1の金属酸化物結晶(M1O)である。(A)のサイズは約3〜約25nm、好ましくは約3〜約16nm、更に好ましくは約6〜約15nmである。好ましくは、(A)の結晶化度は約70%よりも良好であり、(A)の結晶構造は主にアナターゼであってもよい。約30%までのルチルは許容される。
【0042】
化合物(B)は、化合物(A)に付着した金属前駆体(図1では、丸囲みのMCatで表されている。)を含む。好ましくは、金属前駆体は、化合物(A)上のヒドロキシル基の一部に吸着している。好ましくは、金属前駆体の負荷は約0.01〜約2.5重量%の範囲内である。
【0043】
化合物(C)は、化合物(B)の金属前駆体から変換された活性な金属触媒MCatを含む。好ましくは、金属触媒は、化合物(A)上のヒドロキシル基の一部に吸着している。金属触媒の負荷は約0.01〜約2.5重量%の範囲内である。
【0044】
化合物(D)の組成は、非吸着ヒドロキシル基が約0〜約3mg/gに限定されている点を除いて、化合物(C)の組成と同様である。このように遊離ヒドロキシル基を低量にすることより、金属触媒の焼結を防ぐことができる。
【0045】
化合物(E)は、化合物(A)の表面に付着している第2の金属酸化物(M2Ox)を含む。化合物(F)は、金属前駆体が(E)上のヒドロキシル基のいくつかに吸着している点を除いて、化合物(E)と同様である。化合物(G)は、金属前駆体が活性金属触媒に変換されている点を除いて、化合物(F)と同様である。
【0046】
〔実施例2:触媒材料を製造する概要的プロセス〕
図2は、本発明の好ましい実施形態に従って本発明の金属触媒を製造する方法をまとめたものである。第1のステップ21は、第1の金属酸化物の非晶質ゲル球を形成させるステップである。ステップ22では、金属付着に最適に水和された表面を有する第1の金属酸化物の結晶が形成されるように厳密に調整された条件下で、このゲル球を結晶化させる。ステップ23は、第1の金属酸化物の表面上の汚染物質を清浄し、表面の水和レベルを約5〜約100mg/乾燥固体gに調節して、化合物(A)を形成させるステップを含む。ステップ24は、金属前駆体を(A)に付着させて、化合物(B)を形成させるステップを含む。ステップ25は、化合物(B)上の金属前駆体を活性金属触媒に変換して、化合物(C)を形成させるステップを含む。ステップ26は、化合物(C)上の過剰な水和を除去して、金属触媒が第1の金属酸化物担体の表面上で移動しないように化合物(D)を形成させるステップを含む。
【0047】
別のステップ27は、(A)を形成させた後に用いることができ、第2の金属酸化物を化合物(A)の表面に付着させて、化合物(E)を形成させるステップを含む。金属前駆体を、ステップ28で化合物(E)に更に付着させて、化合物(F)を形成させる。ステップ29では、化合物(F)上の金属前駆体を活性金属触媒に変換させて、化合物(G)を形成させる。この特定の実施形態では、ステップ29の後の過剰な水和を除去するステップを省くことができる。
【0048】
〔実施例3:(TiOx(OH)y)の形成(ステップ21に対応)〕
好ましくは、TiOx(OH)yにおいて、xは0〜2の整数であり、yは4−2xの値である整数である。更に好ましくは、TiOx(OH)yは、Ti(OH)4、TiO(OH)2、TiO2種又はこれらの混合物を含む。
【0049】
手順:
(1)チタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich)を室温でイソプロパノールに溶かして、約0.1〜約20mMのTIPを含む溶液を得た。
(2)25〜80℃の固定温度で常に攪拌しながら、TIP−イソプロパノール溶液を、イソプロパノール水溶液(約0.01〜約2.5Mの水を含有)に一滴ずつ加えた。
(3)後の使用のために、生じた沈殿物を濾過し、洗浄し、室温で乾燥させた。
【0050】
〔実施例4:TiO2結晶の形成(ステップ22に対応)〕
ここでは、TiO2結晶を形成させるための3種の異なる方法、即ち熱処理、熱水処理及びマイクロ波処理を説明する。
【0051】
(1.熱処理)
手順:
(1)実施例1から得られた非晶質TiO2粉末を、るつぼ上で薄層に広げた。
(2)この試料を予熱された炉に入れ、必要とされている結晶サイズに応じて、処理温度及び時間を選択した。推奨されるいくつかの条件を表1に挙げる(即ち、P11S100、P27S100)。
(3)空中か焼試料を炉から出し、室温でクエンチした。
【0052】
熱処理により、優れた結晶化度(市販のアナターゼTiO2(Aldrich Chemicals)に対して>約80%)を低い表面の水和と共に有するTiO2結晶が製造された。この技術を使用すると、約10nmよりも小さい結晶を調製することができるが、生じた結晶は往々にして、幅広い粒径からなる。
【0053】
【表1】
【0054】
(2.熱水処理)
手順:
(1)非晶質TiO2粉末を有機水溶液に分散させた。外来汚染物質を回避するために、イソプロパノール−水を選択した。
(2)熱水処理を150ml Teflon−裏付きオートクレーブ容器(PTFE−4748、Parr Scientific)内で行った。
(3)容器を予熱された炉中に予めセットされた時間入れて、表1に示される所望の結晶サイズを得た(P02S100、P04S100、P05S100、P07S100及びP08S100)。
【0055】
熱水処理により、表面が高レベルに水和されたTiO2結晶が製造される。これは、サイズ分布が狭い試料を調製するのに優れた方法である。
【0056】
注:混合物の組成、温度及び時間は、結晶化速度に影響を及ぼす。結晶化は、高い水濃度を有する溶液中では遅いが、高温では速い。
【0057】
(3.マイクロ波処理)
A.二酸化チタンゾルのマイクロ波処理手順(マイクロ波ゾルゲル法):
(1)激しく攪拌しながら、1Mのチタンイソプロポキシド(98%、ACROS)及びイソプロパノール溶液(99%、BDH)を徐々に蒸留脱イオン水に加えた。このステップで使用することができる水の量は、最終溶液の濃度により決定される。
(2)生じた溶液を約1時間攪拌して、チタンイソプロポキシドの完全な加水分解を保証した。
(3)次いで、所望の量の硝酸(約1.0M、[H+]/[Ti4+]=約0.4))を解凝固のために加えた。
(4)温度を徐々に70℃まで高め、次いで、2時間維持して、イソプロパノールを蒸発させた。
(5)続いて、室温で攪拌して、TiO2ゾル(約0.28M)を形成させた。
(6)所望の量のTiO2ゾルをテフロン裏付き分解容器に入れ、異なる出力設定(即ち50W、70W、90W、120W、250W)で作動する電子炉(MLS−1200MEGA,MILESTONE)内で加熱した。
(7)処置時間を、いずれの合成プロセスでも20分と設定した。
(8)得られたTiO2試料を、ゲル試料が形成されるまで真空箱内で乾燥させ、次いで、異なる温度でか焼させて、アナターゼTiO2を製造した。
【0058】
マイクロ波処理により、表面が高レベルに水和されたTiO2結晶が製造される。結晶サイズ調節は、熱水結晶化に比べるとあまり正確ではないが、数時間ないし数分へと、時間は著しく短縮される。
【0059】
B.ポリエチレングリコール(PEG)変性二酸化チタンゾル(PEG支援マイクロ波法)のマイクロ波処理手順(PEGの添加は、粒子凝集を防ぎうる):
(1)平均分子量400(ACROS)を有するポリエチレングリコール(PEG)を変性ポリマーとして選択した。
(2)PEG400量(約5重量%)を元々のTiO2ゾル溶液(前記の手順A、項目5)に直接加え、5時間攪拌して、変性溶液を得た。
(3)所望量の変性TiO2ゾルをテフロン裏付き分解容器に入れ、出力90W及び120Wで作動する電子炉内でそれぞれ20分間加熱した。
(4)得られたTiO2試料を真空箱中で乾燥させ、次いで、450℃で5時間か焼して、粉末試料を得た。
【0060】
〔実施例5:表面変性:汚染物質の除去(ステップ23に対応)〕
TiO2結晶を製造した後に、TiO2への金属前駆体の付着を妨害しうるいくつかの望ましくない炭素汚染物質(例えば有機分子)が存在することがある。このような汚染物質は、低温酸化処理により除去することができる。この実施例に記載の実施形態では、オゾン処理を用いる。
【0061】
手順:
(1)TiO2粉末を石英製のフローセルに入れた。
(2)酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
(3)フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1時間処理した。
【0062】
オゾン処理を使用すると、汚染物質の除去と共に、TiO2表面上の過剰な水和を除去することもできる。
【0063】
〔実施例6:金属触媒の付着(ステップ24及びステップ25に対応)〕
A.Au/TiO2の調製手順:
1.TiO2粉末1gを250ml丸底フラスコに入れた。
2.フラスコをアルミニウムフォイルで包んだ。
3.二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
4.TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
5.2.5mMのテトラクロロ金酸(III)三水和物、HAuCl420mlを加えた。
6.混合物を室温で30分間攪拌した。
7.粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
8.粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
9.粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
10.石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Au/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0064】
B.Pt/TiO2の調製手順:
1.オゾン処理されたTiO2粉末1gを250ml丸底フラスコに入れた。
2.フラスコをアルミニウムフォイルで包んだ。
3.二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
4.TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
5.2.5mMのヘキサクロロ白金酸(IV)(H2PtCl6・5H2O)20mlを加えた。
6.混合物を室温で30分間攪拌した。
7.粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
8.粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
9.粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
10.石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Pt/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0065】
〔実施例7:TiO2表面上の水和レベル調節(ステップ26に対応)〕
A.オゾン処理の手順:
1.TiO2粉末を石英製のフローセルに入れた。
2.酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
3.フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1〜5時間処理した。
【0066】
フーリエ変換赤外分光法を使用して、プロセスをその場で監視した(後の段落に記載されている一般的な同定法参照)。
【0067】
B.UV放射線の手順:
1.TiO2粉末をUV透過性石英製のフローセルに入れた。
2.乾燥空気をフローセルに供給した。
3.TiO2粉末にUVブラックランプを照射したが、これにより、吸着水のガス抜き及び表面ヒドロキシル基の除去が生じた。
【0068】
フーリエ変換赤外分光法を使用して、プロセスをその場で監視した(一般的な同定法参照)。
【0069】
〔実施例8:金属付着前のブロッキング剤の添加(ステップ27に対応)〕
手順:
1.TiO2粉末をNH4VO3(Sigma)水溶液に含浸させた。
2.粉末の上に薄層膜が形成されるまで、既知の重量のTiO2試料を水で滴定することにより、必要な液体容量を決定した。
3.濃度は、酸化バナジウム表面被覆約0.25〜0.5単層をもたらすであろうバナジウム前駆体の量をベースとした。
4.混合物を加熱し、80℃で50分間攪拌した。
5.過剰の水を回転蒸発機中、80℃で除去した。
6.生じた固体を空気中、200℃で4時間熱処理した。
【0070】
1つの単層は、TiO2nm2当たり約8〜9原子である。モノマー酸化バナジウムは、ラマン分光法において顕著なピーク及び昇温還元を示す。
【0071】
〔実施例9:ブロッキング剤を加えた後の金属付着(ステップ28及び29に対応)〕
Au/酸化バナジウム−TiO2の調製手順:
(1)酸化バナジウム−TiO2(モノマー)1gを石英製のフローセルに入れた。
(2)酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
(3)フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1〜5時間処理した。
(4)オゾン処理された酸化バナジウム−TiO2(モノマー)1gを250ml丸底フラスコに入れた。
(5)フラスコをアルミニウムフォイルで包装した。
(6)二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
(7)TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
(8)2.5mMの2.5mMのテトラクロロ金酸(III)三水和物、HAuCl420mlを加えた。
(9)混合物を室温で30分間攪拌した。
(10)粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
(11)粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
(12)粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
(13)石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Au/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0072】
X−線光電子分光法から、VOx/TiO2の表面原子濃度比は約0.2028であり、Au/VOx/TiO2中でのVOx/TiO2の割合は約0.1195であった。誘導結合プラズマ分光法から、VOx/TiO2中でのバナジウムの質量比は約4.37重量%であった。Au/VOx/TiO2中での金の質量比は約0.041重量%であった。
【0073】
〔実施例10:触媒の同定法〕
表4は、本発明で調製された担持金属触媒を同定するのに用いる方法を説明したものであるが、その詳細は後述する。
【0074】
【表2】
【0075】
(1.結晶構造及びTiO2のサイズ)
(1)X線回折分析(Philips1080):
1.微細な粉末を製造するために、触媒粉末を粉砕し、移動させた。
2.粉末をアルミニウムホルダーに入れ、X線回折計の試料ホルダーに入れた。
3.CuKα X線源を使用し、0.05°増加での段階的走査により、X線回折を20°<2θ<60°に関して記録した。
【0076】
(2)X線回折分析(台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)):
1.試料の厚さによる作用を排除するために、TiO2粉末をScotchテープ上で均一にこすり、Δμx≦1(ここで、Δμxはエッジステップである。)を満たす所望の厚さを得るために折り畳んだ。
2.TiO2粉末のX線回折分析を、台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)でビームラインBL17Aで行った。120〜200mAのビーム電流でのX線照射(λ=1.3271Å)を、1.5GeV貯蔵リングから供給した。XRDパターンを、0.05°増加での段階的走査により、20°<2θ<60°に関して記録した。
3.ブラッグ回折式を使用してのピーク拡大から、結晶サイズを算出した。
【0077】
図3Bは、純粋なナノ構造アナターゼTiO2のXRDパターンを示す。図3Aは、触媒Au1T、Pt1T、Au1H及びPt1HのXRDパターンを示す(これらの表現の意味については表9を参照されたい)。ほぼ2θ=25.3°、37.8°、48°、55°で観察された鋭い回折ピークは、アナターゼTiO2構造に特徴的である(表3)。図3Aと図3Bとのパターンの相似により、本発明の触媒に純粋なアナターゼ相が存在することが確認される。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
(3)マイクロラマン分析:
1.TiO2粉末を顕微鏡スライドガラスに載せた。スペクトル分解を約1.0cm−1に設定したが、スポットサイズは、直径で約2マイクロメートルであった。
2.Olympus BH−2顕微鏡を備えたRenishaw 3000マイクロラマン系を使用して、TiO2試料のラマンスペクトルを測定した。倍率20倍及び50倍の対物レンズを選択した。使用した励起光源は、出力25mWで514.5nmで操作されるアルゴンレーザーであった。
3.Iida及び協働者が記載しているように、結晶サイズをラマン線幅増大から測定した(Y.Iida,M.Furukawa,T.Aoki,T.Sakai,Appl.Spectrosc,1998,52,673)。
【0081】
図4は、ナノ構造アナターゼTiO2のラマンスペクトルを示す。純粋なアナターゼの特徴的なピークは395、511、634、795cm−1に位置し、ルチルの特徴的なピークは446及び611cm−1に位置している。
【0082】
(4)電子顕微鏡法:
1.TiO2粉末をイソプロパノールに分散させ、炭素被覆された銅格子に置いた。紙製の灯心を使用して、過剰の液体を除去し、撮像の前に付着物を乾燥させた。
2.200kVの加速電圧でPhilips CM−20透過型電子顕微鏡を使用して、TiO2を撮像した。ルチルエネルギー分散X線分光法(Link Pentafet detector,Link ISISソフトウェア、OXFORD Instruments)を行って、撮像された粒子の化学組成を確認した。
3.凝集体中の個々の結晶を測定し、400回の測定の平均を使用して、平均結晶サイズを算出した。
【0083】
【表5】
【0084】
(2.TiO2の結晶化度)
(1)X線吸着分析:
1.試料の厚さによる作用を排除するために、TiO2粉末をScotchテープ上で均一にこすり、Δμx≦1(ここで、Δμxはエッジステップである。)を満たす所望の厚さを得るために折り畳んだ。
2.TiO2粉末のX線回折分析を、台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)でビームラインBL17Aで行った。120〜200mAのビーム電流でのX線照射(λ=1.3271Å)を、1.5GeV貯蔵リングから供給した。TiO2試料のX線吸収スペクトルを透過モード、室温で測定した。
3.ガス電離検出器を使用して、スペクトルを集めた。入射(I0)及び透過(I)シンクロトロンビーム強度を測定するために使用されるイオン室にそれぞれ、He/N2ガス混合物及びN2ガスを充填した。
4.データを、Ti K−エッジ(4966eV)の200eV下からこのエッジの1100eV上まで集めた。通常のチタン金属フォイル及び市販のアナターゼTiO2を参照標準として使用した。結合構造に関する情報(即ち、隣接する原子の結合長さ、数及びタイプ)は、X線吸収データから得ることができた。
5.正規化Ti KエッジX線吸収端近傍スペクトル(XANES)は、TiO2の局所環境及び構造に関する情報をもたらし、これは、結晶及び非晶質相の相対量を定量するために使用することができる。
【0085】
図5は、台湾のSRRCで得られたナノ構造TiO2のXANESスペクトルである。それぞれ4969.5(A1)、4970.5(A2)及び4971.5(A3)eVに位置しているプレエッジピークの位置及び強度に従い、4配位、5配位、6配位Tiを同定することができる。TiO2結晶サイズが低下するにつれて、低い配位数でチタン原子を含む界面領域が増える。従って、チタン原子は小さい結晶中であるほど、低い配位数を示す。確かに、3nmTiO2(P3)は最も強いA2ピーク(4970.75eV)を有し、これは、5配位されたTiと一致する。同様の構造幾何が、1.9nmTiO2で報告されている。より小さい界面面積を有する比較的大きな結晶は、比較的弱いA2ピークを示すが、比較的強いA3ピーク(4971.75eV)を示し、これは、6配位Tiに対応している。
【0086】
(2)電子常磁性共鳴分光法:
1.TiO2粉末約12〜約30mgを石英管に入れ、真空中で脱ガスした(T=25℃、t=1h)。
2.EPR測定を実施した X帯で操作されるBruker ER200D装置で、EPR測定を実施した。スペクトルをすべて、77Kで、T型二重キャビティー内で記録した。
3.第2のキャビティーに位置しているDPPH(g=2.0036)の標準を使用して、マイクロ波の周波数を各実験で較正した。スペクトルパラメーターをチェックし、全体強度に対する各シグナルの寄与率を立証する必要がある場合には、コンピューターシミュレーションを使用した。
4.吸収及び/又は脱離処理を、10−4N.m−2までの圧力低下を達成している慣用の真空管内で行った。金属コーティングを伴わず、液体N2を充填されている石英製デュワーフラスコにセルを入れて、77Kでの照射処理を実施した。これらの実験では、UV源は、350nmでその最大強度を放射する3個の蛍光ランプ(Osram Eversun L40W/79K)であった。
5.吸着酸素の存在下でUV照射されたTiO2のEPRスペクトルが得られたが、バルク欠陥に寄与する(g1=2.057、g2=2.012、g3=2.003)が存在しないことは、結晶化度が良好(即ち、70%よりも良好)であることを示している。
【0087】
(3.表面の水和)
TiO2の表面の水和レベルを、フーリエ変換赤外分光法並びに熱重量及び示差熱分析により測定した。
【0088】
(1)フーリエ変換赤外分光法:
1.臭化カリウム(参照試料)10mgを、拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダーに入れた。
2.セルをPraying Mantis mirror assembly(Harrick)に設置し、Perkin Elmer Spectrum GX FTIRに入れた。
3.15分後にシグナルが安定するまで、乾燥した二酸化炭素不含空気で、このチャンバーを掃気した。
4.FTIRの反射モードを使用して、背景シグナルを観察した。
5.試料10mgを拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダーに入れた。
6.セルをPraying Mantis mirror assembly(Harrick)に配置し、FTIRに入れた。
7.15分後にシグナルが安定するまで、乾燥した二酸化炭素不含空気で、このチャンバーを掃気した。
8.FTIRの反射モードを使用して、ヒドロキシル基の存在を観察した。
9.試料を400cm−1〜4000cm−1で、室温で1cm−1の解像で走査した。
10.走査数は、256であった。
【0089】
図6は、水和TiO2のDRIFTスペクトルである。3300cm−1付近の幅広ピークは、O−H伸縮によるものであった。ほぼ1600cm−1に現れるピークは、Ti−OHを伴っている。吸着された水は、ほぼ1000cm−1に幅広ピークをもたらす。
【0090】
(2)熱重量及び示差熱分析:
1.アルファアルミナ粉末40mgを白金ホルダー1に入れ、試料30mg及びアルファアルミナ10mgを白金ホルダー2に入れた。
2.アルファアルミナ粉末10mgを他の白金ホルダー内部に入れ、試料30mgをアルファアルミナ粉末の頂部に入れた。
3.両方の白金ホルダーを、25℃〜1600℃の加熱範囲を伴う熱重量分析器/示差熱分析器(TGA/DTA、Setaram、31/1190)内部に入れた。
4.試料重量が一定値を示した後に、実験を開始した。
5.試料を加熱速度5℃/分、25℃〜800℃で、空気中で分析した。
6.温度変化の分解能は0.01℃であり、重量変化に関する分解能は0.001mgであった。
7.800℃まで温度を加熱した後に、システム全体を水により冷却した。
8.参照シグナルを試料シグナルから引くと、試料の熱変化及び重量変化に関して集められたシグナルが得られた。
【0091】
図7は、TiO2試料の通常の熱重量及び示差熱分析を示す。吸着された水は、約50℃が頂点である吸熱熱流を伴いながら、100℃以下の温度で脱着する。水素結合水は、100〜200℃で失われる。
【0092】
(4.付着したVOxの特性)
NH4VO3含浸させたTiO2粉末を石英製のフローセルに入れ、酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給し、フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を2時間処理した。次いで、付着した酸化バナジウムを次の方法により同定した。
【0093】
(1)マイクロ−ラマン分析:
1.冷却されるCCD検出器(−73℃)及びホログラフィックスーパーNotchフィルターを備えた単一のモノクロメーターRenishaw System1000を用いて、ラマンスペクトルを作動させた。
2.ホログラフィックNotchフィルターが、弾性散乱を除去する一方で、ラマンシグナルは非常に高く維持された。
3.試料を514nmAr線を用いて励起させた。
4.スペクトル解像度は約3cm−1であり、スペクトルの取得は、30sの20回の蓄積からなった。
5.脱水条件(約120℃)下に、温かい段階で、スペクトルを得た(Linkam TS−1500)。
【0094】
図8は、TiO2上の酸化バナジウムのラマンシフトを示す。1017cm−1でのラマンバンドは、末端V=O結合モードに対応している。900cm−1付近での幅広なラマンバンドは、表面ポリマーバナジア種のV−O−V伸縮モードに特徴的である。990cm−1付近での、オゾン処理後の新たな弱い付加的ラマンバンドは、結晶性V2O5のV=Oの伸縮モードに対応している。バナジア前駆体をオゾン処理で酸化させて、酸化バナジウムにした。
【0095】
(2)昇温還元:
1.石英綿の小片をU字型石英管の一方の足の底部に入れた。
2.粉末0.1gを石英綿の上に置いた。
3.石英管をAltamira AMI−200触媒同定系の炉内に入れた。
4.アルゴン(99.99%)を50sscmで用いて100℃で、試料を2時間掃気した。
5.10%水素−アルゴンガス混合物50sccm中で、試料を100℃〜800℃に10℃/分で加熱することにより、昇温還元を行った。
6.アルゴン中10%水素(50sccm)での3つの較正パルスを対照で得た。
7.試料の還元性は、式:
較正値
=(ループ容量)(分析ガスのパーセント)/(平均較正面積)(100)
取込み(μモル/触媒g)
=(分析面積)(較正値)/(試料重量)(24.5)
から算出することができた。
【0096】
図9は、TiO2上の酸化バナジウムの(a)単層、(b)1/2単層、(c)1/4単層のTPRを示す。
【0097】
(5.金属負荷及び分散)
(1)金属触媒の負荷を、次のステップにより決定した:
1.触媒を王水(濃HNO318部及び濃HCl82部)に溶かした。
2.混合物を連続的に攪拌しながら、穏やかに沸騰するまで加熱した。
3.スラリーを濾過し、較正範囲の濃度まで脱イオン水で希釈した。
4.誘導結合プラズマを使用することにより、触媒負荷を決定した(PerkinElmer Optima 3000XL)。
5.金属標準溶液(Aldrich)1000mg/mlから調製された標準溶液0.5〜20mg/mlを用いて、装置を較正した。
【0098】
(2)分散測定:
分散は通常、試料中に存在する触媒原子の全数と、表面に曝されている触媒原子の数との比として定義される。
【0099】
手順:
1.石英綿の小片をU字型石英管の一方の足の底部に入れた。
2.粉末試料0.1gを石英綿の上に置いた。
3.石英管をAltamira AMI−200触媒同定系の炉内に入れた。
4.試料を、アルゴン(99.99%)50sscmを用いて300℃で2時間掃気し、次いで、温度を25℃まで低下させた。
5.一酸化炭素(ヘリウム中50容量%)50μlパルスを供与することにより、一酸化炭素化学吸着を行った。熱伝導検出器を使用して、金属表面に化学吸着されているCOの量を決定した。
6.全部で20パルスを使用したが、各パルス間の時間は、120秒であった。
7.3つの較正パルスを対照で得た。
8.試料への金の分散を、式:
較正値
=(ループ容量)(分析ガスのパーセント)/(平均較正面積)(100)
取込み(μモル/触媒g)
=(分析面積)(較正値)/(試料重量)(24.5)
分散パーセント
=(取込み)(原子量)/(化学量論)(金属パーセント)
を使用することにより算出することができた。
【0100】
水素及び酸素化学吸着を用いて、金属触媒表面積を測定することもできた。
【0101】
(6.BET表面積)
窒素物理吸着により、触媒のBET表面積を測定した。
【0102】
手順:
1.Coulter SA3100窒素物理吸着装置からの、キャップを有する石英管試料ホルダーを秤量した。
2.触媒0.1gを測定し、試料ホルダー内に入れた。
3.ホルダーをCoulter SA3100の脱ガスポートに接続した。
4.試料を120℃で2時間脱ガスした。
5.脱ガスの後に触媒を秤量し、窒素物理吸着を77Kで行った。
6.BET表面積を物理吸着データから算出した。
【0103】
(7.X線光電子分光法)
触媒の表面組成及び化学をX線光電子分光法(XPS)により決定した。
【0104】
手順:
1.触媒粉末をインジウムフォイルの上にプレスした。
2.このフォイルを、X光電子分光器(Physical Electronics PHI5600)内に入れた。
3.試料を超高真空で脱ガスした。
4.350W、45℃で単色AlKαX線源を使用して、試料を衝撃させた。
5.対照として炭素1Sを使用して、データを集めた。
【0105】
(8.マイクロ波処理により調製された試料の粒子形態及び特性)
マイクロ波処理により調製されたゾル試料の粒子形態を、原子間力分光法(AFM、Nanoscope IIIa)により同定した。AFMにより撮像されるゾル試料は、新たに割った雲母表面の上に希釈ゾル試料10マイクロリットルを付着させることによって調製した。付着させた試料を室温で乾燥させ、n+−ケイ素チップ(Nanosensors)をタッピングモードAFM撮像実験のために使用した。
【0106】
図10及び表6は、それぞれ、本発明の方法により調製された二酸化チタンゾルのTM−AFM形態及び特性を示す。約20nmの狭いサイズ分布を有する球状一次ゾル粒子が良好に分散していることが、図10(a)から明らかである。マイクロ波加熱を用いても、出力を50Wに設定すれば、一次粒子はそのサイズ及び分散を維持した。マイクロ波出力を高めると、多数の一次粒子が、異なるサイズ及び形状の凝集体を形成したことが、図10(c)及び(d)から分かる。一次粒子のサイズは増大を示した。120W以上に出力を高めると、安定なゾルは製造されなかった。代わりに、粉末の沈殿が生じた(表6参照)。マイクロ波処理により、迅速な加熱、及び極めて迅速な結晶運動が可能であるようであった。
【0107】
得られたゲル試料の結晶構造をXRDにより同定した。そのXRDパターンを図11に示す。いくつかの幅広なピークが、アナターゼ構造による約25°、38°、47°及び54°に等しい2θの値で観察された。31°での小さい幅広シグナルは、試料中のTiO2板チタン石痕跡による(例えば表6)。25°に等しい2θでのピークの半値全幅(FWHM)を測定することにより、アナターゼの増大サイズをScherrer式により算出した。そのデータを表6に挙げる。試料はすべて、約3〜約5nmの小さい結晶サイズを有し、このサイズは、TiO2−MW70試料を除き、マイクロ波出力が強くなるにつれて増大した。
【0108】
前記のAFM及びXRDデータでは、3種の異なる試料(即ちTiO2、TiO2−MW90及びTiO2−MW120)を、材料特性に対する操作方法の影響を証明するための例として選択した。図12〜14は、異なる温度でのか焼後の試料のXRDパターンを示し、表7は、熱処理された試料のBET表面積及び結晶サイズをまとめたものである。マイクロ波法により結晶化させたTiO2が、比較的大きな表面積を有し、熱焼結を比較的受けにくいことは明らかであった。担体表面積の喪失は、金属触媒が焼結する原因の1つである。担体の熱安定性の更なる改善が、PEG支援マイクロ波法を用いることにより達成された。図15は、PEG変性TiO2ゾル試料のAFM像を示す。図10に示される未変性TiO2試料と比較すると、狭いサイズ分布を有する高分散球状ゾル粒子のみが両方の試料に現れた。更に、試料は、400℃での熱処理の後にも、大きな表面積及び小さい結晶サイズを維持した(表7)。
【0109】
比較的高いマイクロ波出力(120W)を適用すると、ゾルの色が、薄青色〜白色へと変化したが、沈殿は生じなかった。図16は、TiO2−PEG−MW120試料の粒子形態を示す。図16(b)での位相画像パターンから、コロイドは、様々な形態を伴う凝集粒子からなるものであった(例えばラベルA)ことが分かる。PEGポリマーを分解するための高温アニーリング(450℃)の後に、約7.16及び約7.49nmの粒度を有するアナターゼ相(図17)を、それぞれTiO2−PEG−MW90及びTiO2−PEG−MW120試料について得ることができた。
【0110】
表6は、マイクロ波処理により調製されたTiO2試料でのXRD同定結果を示す。表7は、マイクロ波処理により調製されたTiO2試料でのXRD及びBET同定結果を示す。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
(同定結果のまとめ)
表8では、熱結晶化TiO2上で調製された担持触媒のBET表面積、粒径及び表面原子比を挙げている。この試料は、市販のP25TiO2粉末(例えば約50m2/g)と比較すると、約11nm〜約14nmの小さい粒径、及び広いBET面積を有する。
【0114】
【表8】
【0115】
表9では、熱及び熱水処理下に、異なるAu又はPt負荷パーセンテージで調製された触媒をまとめている。XRD分析は、熱及び熱水法により調製された触媒は、それぞれ約13及び約12nmの結晶サイズを有するアナターゼであることを示していた。
【0116】
【表9】
【0117】
〔実施例11:触媒の反応速度試験〕
図18は、一酸化炭素(CO)及びトルエンの気相酸化に関する触媒の性能を評価するために使用された実験装置の概略図である。これは、合成空気62、CO64、トルエン(VOC)66供給輸送モジュール、圧力調整器63、ガラス反応器68及び分析装置(即ちガスクロマトグラフ及びオンラインガス分析器)65からなる。CO酸化試験のために、合成空気62及びCO64を混合し、その後、ガラス反応器68に入れた。ガラス反応器68は、長さ18インチ及び外径1/4インチの寸法を有した。触媒61(約0.03g)を入口から12インチ下流に設置した。ガスクロマトグラフの内側にあるCTR1カラムを用いて出口ガスを分離し、ガスクロマトグラフ(HP6890)65を用いて分析した。オンラインガス分析器(Bruel & Kjaer,Type 1302)を時折、ガスクロマトグラフと連続して使用して、反応に関する一時データを得た。トルエン酸化試験では、手順は、COの酸化と同様であるが、液体トルエン供給は、シリンジポンプ(kdScientific 1000)67を使用することにより輸送した。120℃にステインスチール管を加熱することによってトルエンを気化させ、合成空気と混合し、その後、ガラス反応器68に入れた。100%Carbowax 20Mカラムを使用することにより、出口ガスを分離した。
【0118】
図19は、種々の触媒(Au1H、Au3H、Au1T及びAu3T)について、使用した触媒の質量当たりのCOの変換速度を、反応時間の関数としてプロットした図である。Au1TとAu3Tとを比較すると、25℃及び200℃の両方で、明らかに、Au1Tの反応速度がAu3Tよりも速かった。Au1HとAu3Hとを比較しても、同じ結果が得られた。この結果は、触媒の性能が、TiO2担体上でのAuの量に左右されることを示唆している。触媒に含まれるAuが多いほど、COの反応速度は速くなる。
【0119】
図20は、種々の触媒(Au1T、Au1H、Pt1T及びPt1H)について、使用した触媒の質量当たりのCOの変換速度を、反応時間の関数としてプロットした図である。Au1TとAu1Hとを比較すると、25℃又は200℃での温度に関わりなく、Au1Tの反応速度は、Au1Hよりも速かった。また、Pt1TとPt1Hとを比較したが、200℃では同等の反応速度であり、25℃では、Pt1Tの反応速度がPt1Hよりも速かった。この結果は、熱処理されたTiO2上に担持されている金属触媒が、熱水処理されたTiO2上に担持されている触媒よりも良好な性能を有することを示している。同様の金属負荷では、Pt触媒が金触媒よりも大きい活性を示した。
【0120】
〔実施例12:CO及びトルエンとの反応の際の触媒の持続性〕
触媒の頻繁な交換を回避するために、触媒は、長期間に渡って機能するべきである。CO及びトルエンの酸化反応に関する本発明の触媒の持続性を試験する実験を行った。
【0121】
図21は、200℃、4サイクルのPt1Tの反応速度を示す。これは、COの酸化に関する反応速度が、4サイクルの反応の後にも全く安定であったことを示している。1サイクルは、反応温度を25℃〜200℃へと、次いで再び25℃へと、交互に変化させることを意味する。Pt1Tは2サイクル及び4サイクルの後に反応速度の低下を示したが、3サイクル目には、反応速度の上昇が見られた。このことは、触媒Pt1TがCOの反応に関して安定な反応速度を有することを示している。COの反応の持続性試験の後に、トルエンに関する更なる持続性試験を行った。
【0122】
図22は、3サイクルのトルエンの処理における触媒Pt1Tの反応速度を示す。トルエン反応速度は、反応時間と共に上昇していき、25℃での反応速度は、200℃での反応速度よりも速いが、いずれの場合にも、正常な現象から逸脱していることが分かる。異常な結果にも関わらず、図22はまさに、Pt1Tがトルエン酸化の触媒において有効であり、トルエンの反応速度は3サイクルの後にも全く安定であることを示唆している。
【0123】
〔実施例13:オゾン処理及びバナジウム添加を伴う、COに対する触媒の性能〕
触媒を、CO酸化に関して、示差プラグ流反応器で試験した。触媒粉末約30mgを、約2.5%の一酸化炭素を含有する乾燥空気流中で反応させた。担体のオゾン前処理により、炭素質表面付着物は除去され、付着VOxが安定化された。図23は、Au/TiO2(□)、及びオゾン処理Au/TiO2(△)のCO変換速度を示すグラフであり、ここには、典型的な反応の成り行きがまとめられている。Au/TiO2触媒は、298Kでの反応の1時間以内に迅速に失活化した。反応温度を高くすると、より高い変換速度がもたらされたが、失活化の加速も生じた。オゾンによるAu/TiO2触媒の前処理は、より良好でより安定な触媒性能をもたらした。図24は、オゾン処理を伴うか、又は伴わないAu/TiO2及びAu−VOx/TiO2触媒の性能を比較したものである。この結果は、バナジウム濃度が触媒活性に影響を及ぼし、オゾンによる前処理が一貫して、より良好な触媒性能をもたらすことを明らかにしている。
【0124】
〔実施例14:VOC及び細菌の破壊における有効性〕
VOC及び細菌の破壊における本発明の触媒の有効性を試験するために、試作品を作製した。この試作品では、Pt1T触媒を約2g使用した。試作品の性能を10カ月に渡って試験した。表10では、40cfmの空気流(1分当たり1立方フィート)下、室温で操作される試作品システムの性能を挙げている。2003年5月から2004年2月までの実験期間の間、フィルターは使用しなかった。
【0125】
表10では、様々なVOCのためにPt1T触媒を使用する試作品ユニットの性能を挙げている。100ppmよりも高いVOCを含有する空気で、50%よりも良好な低減が得られ、約30ppm未満のVOCにより汚染された空気では、ほぼ100%の低減が得られた。VOCは、完全に二酸化炭素及び水に変換された。
【0126】
【表10】
【0127】
3種の異なる試験を行って、バイオエアロゾル処理に関する試作品の性能を測定した。
【0128】
(A)バイオエアロゾル試験1:
細菌種:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、枯草菌(Bacillus subtilis)、及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、の低減に関する空気清浄機試作品の性能試験。3種の試験細菌は、一般的な空中浮遊細菌である。試験はすべて、環境微生物学の分野に通常適している一般的な調製、取扱い、分析プロトコールに従って実施した。
【0129】
手順:
1.細菌細胞のストック培養を、液体栄養ブイヨン培養中で107〜108細胞/mlの細胞密度まで活性化させた。
2.試作品及びAndersen生存可能一段試料採取器を、60cmの距離で密閉チャンバー内に入れた。
3.滅菌蒸留水2×15mlを、ネブライザーを用いてエアロゾル化して、エアロゾル化された細胞及び芽胞に対する蒸発作用を最小化するためにチャンバーを飽和させた。
4.相対湿度を試験の間、室温(23〜24℃)で約80%に維持した。
5.ストック細菌培養溶液10mlを、ネブライザーを介して、試験のためのチャンバー内へとエアロゾル化し、試作品を作動させたり、停止したりした(対照)。試験及び対照の両方で、二重作動を行った。
6.Tryptic Soy Agar(TSA)を負荷されたAndersen一段試料採取器を用いて、空気試料を0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5及び10分間隔で10秒間集めた。次のシークエンス(1)対照1(C1)、(2)試験1、試作品を採取の0秒後に作動させた(T1)、(3)試験2(T2)、試作品をONモードに維持した、及び(4)対照2(C2)で、試験を行った。
【0130】
図25に示される結果は、エアロゾル化された枯草菌(B.subtilis)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)及び緑膿菌(P.aeruginosa)が、それぞれ0.5、2及び10分で死滅及び破壊されたことを示している。綿棒試験は、試作品ユニットの表面に残っている生存細菌が存在しないことを示していた。
【0131】
(B)バイオエアロゾル試験2:
試作品ユニットを、公共食堂での天然バイオエアロゾル(即ち細菌及びカビ)の低減に関して試験した。この場所は、800コロニー形成単位/m3の平均バイオエアロゾル負荷を有する。表11は、細菌の約64%、及びカビの約87%が、試作品への1回通過で死滅及び破壊されたことを示している。
【0132】
【表11】
【0133】
(C)バイオエアロゾル試験3:
試作品ユニットを、通常の公立クリニックに存在する天然バイオエアロゾル(即ち細菌及びカビ)、及びありうる空中病原体の低減に関して試験した。表12では、香港のWan Chaiに位置している公立クリニックで行われた6カ月の試作品試験データをまとめている。
【0134】
【表12】
【0135】
クリニック空気のバイオエアロゾル調査を行った。Biomeieux APIキットを用いた細菌種同定により、最も一般的に生じる3種の分離株は、(1)&(2)2種の異なる種のミクロコッカス(Micrococcus)、及び(3)表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)であることが判明した。カビ種は、コロニー、菌糸及び芽胞形態を用いて同定した。次の種が単離された。(1)クラドスポリウム(Cladosporium)、(2)〜(3)3種のペニシリウム(Penicillium)、(4)エモンシア(Emmonsia)、(5)酵母(Yeast)、及び(6)未知の種。
【0136】
〔他の実施形態〕
本発明は、明細書に記載の実施形態により範囲を限定されるものではなく、これらは、本発明の個々の態様の単なる説明として意図されている。他の実施形態は、当技術分野の専門家には明らかであろう。上述の詳細な説明は、明確化のためのみに提供されており、単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神及び範囲は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、表面の水和のレベルが調節された金属酸化物の粒子を示す。
【図1B】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物に金属触媒前駆体を付着させた後に形成される金属触媒中間体を示す。
【図1C】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物及び金属触媒を含む触媒材料を示す。
【図1D】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、過剰なヒドロキシル基を除去するステップの後の生成物を示す。
【図1E】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物への、第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物の付着を示す。
【図1F】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物に金属触媒前駆体を付着させた後に生じる中間体である。
【図1G】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換した後の生成物を示す。
【図2】本発明に従って触媒を製造するステップを示す概略図である。化合物(A)から(G)は、図1A〜Gに示されている。
【図3A】純粋なアナターゼTiO2結晶((a)Au1T、(b)Pt1T、(c)Au1H及び(d)Pt1H)に被覆された触媒のX線回折パターン(XRD)である。
【図3B】純粋なナノ構造アナターゼTiO2結晶のX線回折パターン(XRD)である。
【図4】ナノ構造アナターゼTiO2のラマンスペクトルを示す。
【図5】Synchrotron Radiation Research Center(SRRC、台湾)で得られたナノ構造TiO2のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルである。
【図6】水和TiO2の拡散反射赤外線フーリエ変換(DRIFT)スペクトルである。
【図7】TiO2の熱重量及び示差熱分析の結果を示す図である。
【図8】TiO2上の酸化バナジウムのラマン分析の結果を示す図である。
【図9】TiO2上の酸化バナジウムの(a)単層、(b)1/2単層、(c)1/4単層、の昇温還元(TPR)の結果を示す図である。
【図10】様々な出力((a)0W、(b)50W、(c)70W、(d)90W)でマイクロ波ゾルゲル法により調製された二酸化チタンゾルのタッピングモード(TM)原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図11】様々な出力((a)0W、(b)50W、(c)70W、(d)90W、(e)120W、(f)250W)でマイクロ波ゾルゲル法により調製されたTiO2試料のX線回折パターンである。
【図12】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2試料のX線回折パターンである。
【図13】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2−MW90試料のX線回折パターンである。
【図14】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2−MW120試料のX線回折パターンである。
【図15】PEG支援ゾルゲル法((a)マイクロ波処理なし、(b)90Wでマイクロ波加熱)により調製されたTiO2ゾル試料のTM−AFM像である。
【図16】TiO2−PEG−MW120試料のTM−AFM像((a)高さ画像、(b)位相画像)である。
【図17】PEG支援マイクロ波法により調製されたTiO2試料のXRDパターンである。
【図18】一酸化炭素(CO)及びトルエンの気相酸化に関する触媒の性能を評価するために使用された実験装置の概略図である。
【図19】試料Au1H、Au3T、Au1T及びAu3Hの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図20】試料Au1T、Au1H、Pt1T及びPt1Hの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図21】200℃、4サイクルの試料Pt1Tの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図22】3サイクルのトルエンの処理における試料Pt1Tの反応速度を示す図である。
【図23】Au/TiO2(□)、及びオゾン処理されたAu/TiO2(△)のCO変換速度を示すグラフである。
【図24】熱処理前(左側棒グラフ)、473Kでの反応混合物の熱処理後(中央棒グラフ)、及び室温下の反応48時間後(右側棒グラフ)の、(1)Au−TiO2;(2)O3−Au−TiO2;(3)Au−1V−TiO2;(4)O3−Au−1V−TiO2;(5)Au−0.5V−TiO2;(6)O3−Au−0.5V−TiO2;(7)Au−0.25V−TiO2;(8)O3−Au−0.25V−TiO2に関して、298KでのCO変換速度を比較するグラフである。本明細書において、Vは、VOxの単層に対する比を表す。例えば、1Vは1単層のVOxを、0.5Vは半単層のVOxを、0.25Vは1/4単層のVOxを意味する。
【図25A】Pt1T触媒の使用による緑膿菌(P.aeruginosa)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【図25B】Pt1T触媒の使用による枯草菌(B.subtilis)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【図25C】Pt1T触媒の使用による表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、担持金属触媒に関する。特に、本発明は、UV非照射下で有害汚染物質を酸化することが可能な、ナノ構造を有する担持金属触媒に関する。
【発明の背景】
【0002】
空気中の揮発性有機化合物(VOC)及び一酸化炭素(CO)は汚染物質であり、ヒトの健康に有害である。これらの汚染物質を除去する方法が開発されている。
【0003】
担持金属触媒は、CO及び炭化水素の低温酸化、並びにプロピレンの選択的酸化に有効であることが判明している(M.Haruta,Catal.Today 36:153(1997);M.T.Hayashi,K.Tanaka and M.Haruta,J.Catal 178:566(1998);M.Haruta and M.Date,Appl.Catal.A:Gen,222:427(2001)。
【0004】
担持金属触媒は通常、金属酸化物担体に付着しているナノサイズの金属粒子を含む。担持金属触媒の欠点の1つは、低温で触媒活性が低いことである。現在の担持金属触媒の他の欠点は、金属原子が担体の表面上で焼結して、金属クラスターを形成する傾向があるので、触媒寿命が短いことである。金属原子がクラスターに凝集すると、その触媒活性は著しく減少する。加えて、金属原子は、ハロゲン化物及びイオウ含有化合物の毒作用の影響を受けやすい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、金属酸化物結晶に固定された金属触媒を含む触媒材料を提供する。
【0006】
本発明の一態様は、金属が高度に分散した金属触媒を含む触媒材料を提供するが、焼結現象を妨げるので、本発明の触媒材料は安定で、長期間に渡って活性を示す。
【0007】
一実施形態では、触媒材料は、式(C)及び(D)に示されるように、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物の表面に付着した金属触媒と、を含む(更に図1C及び1D参照)。金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約50%、約60%又は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めていてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0008】
他の実施形態では、触媒材料は、式(G)により示されるように、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物及び金属触媒を含む。金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定されている一方で、第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面に直接固定されている。第1の金属酸化物は、金属触媒の担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルは約0〜約30重量%を占めていてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0009】
第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面上にヒドロキシル基が存在する場合にも、第1の金属酸化物の表面上で金属触媒が移動することをブロックするブロッキング剤として有用である。好ましくは、第2の金属酸化物を付着させ、その後、金属触媒を第1の金属酸化物の表面に付着させる。更に好ましくは、第2の金属酸化物は、モノマー型若しくはオリゴマー型又はこれらの混合物である。最も好ましくは、第2の金属酸化物の少なくとも約60%はモノマー型である。第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム又は酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0010】
上述の各実施形態では、金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種である。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは、約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%である。
【0011】
本発明の他の態様は、触媒材料の製造方法を提供する。一実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(f)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の製造方法を提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物を第1の金属酸化物の表面に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(f)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(g)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の他の製造方法を提供する。
【0013】
本発明の他の態様は、触媒材料の使用を提供する。特に、本発明の触媒材料は、毒性を有する有機種、無機種及び/又は生物学的種を含有する汚染物質を空気から除去することにより、空気を清浄化するのに有用である。一実施形態では、本発明の触媒材料を試料(空気流等)と接触させて、汚染物質レベルの低減を検出する。
【詳細な説明】
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上、明らかに異なる意味に解するべきでない限り、単数形と複数形の両方を指す。
【0015】
(触媒材料)
本発明の一態様は、金属が高度に分散した金属触媒を含む触媒材料を提供するが、焼結現象を妨げるので、本発明の触媒材料は安定で、長期間に渡って活性を示す。
【0016】
一実施形態では、触媒材料は、下記式(C)及び(D)(図1C及び1Dも参照)に示されるように、第1の金属酸化物と、第1の金属酸化物の表面に付着した金属触媒と、を含む。
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約50%又は約60%又は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0020】
式(C)に示されるように、第1の金属酸化物の表面には、ヒドロキシル基が固定されている。結晶の表面に固定されたヒドロキシル基の数によって、第1の金属酸化物の表面の水和比率が決定される。金属触媒を付着させる前に、高い水和比率の表面を得ることが望ましい。好ましくは、表面の水和比率は、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約100mg、更に好ましくは、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約50mg又は約0〜約25mgである。第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基によって、金属触媒が第1の金属酸化物の表面上で焼結する可能性があるので、金属触媒を付着させた後に、第1の金属酸化物の表面からヒドロキシル基を除去することが望ましい。表面に遊離基を導入して水を形成させ、続いて、低温で触媒材料を加熱することにより、ヒドロキシル基を除去することができる。加熱は、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃で行う。
【0021】
金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択されるものである。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%の範囲内である。
【0022】
他の実施形態では、触媒材料は、下記式(G)に示されるように、第1の金属酸化物、第2の金属酸化物及び金属触媒を含む。
【0023】
【化3】
【0024】
金属触媒は、第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基との相互作用により表面に固定されるが、この場合、第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面に直接固定される。第1の金属酸化物は、金属触媒のための担体として有用な結晶形態(M1O、式(A)参照)である。好ましくは、第1の金属酸化物の結晶形態は、約3〜約25nm、更に好ましくは約6〜約15nmのサイズを有する。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶化度は約70%より大きい。更に好ましくは、第1の金属酸化物の結晶構造はアナターゼであってもよく、この場合、ルチルが約0〜約30重量%を占めてもよい。好ましい実施形態では、第1の金属酸化物は、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である。更に好ましい実施形態では、第1の金属酸化物はTiO2である。
【0025】
第2の金属酸化物は、第1の金属酸化物の表面上にヒドロキシル基が存在する場合にも、第1の金属酸化物の表面上で金属触媒が移動することをブロックするブロッキング剤として有用である。好ましくは、第2の金属酸化物を付着させ、その後、金属触媒を第1の金属酸化物の表面に付着させる。更に好ましくは、第2の金属酸化物は、モノマー型若しくはオリゴマー型又はその混合物である。最も好ましくは、少なくとも約60%の第2の金属酸化物がモノマー型である。第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム又は酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0026】
式(C)に示されるように、第1の金属酸化物の表面には、ヒドロキシル基が固定されている。結晶の表面に固定されたヒドロキシル基の数によって、第1の金属酸化物の表面の水和比率が決定される。金属触媒を付着させる前に、高い水和比率の表面を得ることが望ましい。好ましくは、表面の水和比率は、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約100mg、更に好ましくは、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約0〜約50mg又は約0〜約25mgである。第1の金属酸化物の表面上のヒドロキシル基によって、金属触媒は第1の金属酸化物の表面上で焼結する可能性があるので、金属触媒を付着させた後に、第1の金属酸化物の表面からヒドロキシル基を除去することが望ましい。表面に遊離基を導入して、水を形成させ、続いて、低温で触媒材料を加熱することにより、ヒドロキシル基を除去することができる。加熱は、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃で行う。
【0027】
金属触媒は通常、遷移金属又はその塩を含む。好ましくは、金属触媒中の金属は、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択されるものである。更に好ましくは、Au若しくはPt又はこれらの混合物を金属触媒中で使用する。第1の金属酸化物への金属触媒の負荷は、好ましくは約0.01〜約2.5重量%、更に好ましくは約0.7〜約2重量%の範囲内である。
【0028】
本発明の触媒材料は、多くの触媒反応に関して、先行技術より有用である。利点としては、例えば、低温での高い触媒活性、金属結晶の固定により改善された触媒安定性及び寿命、並びに単純で容易な触媒材料の再生法が挙げられる(これらに限られない)。例えば、本発明の触媒材料は、再生させることなく、約9000時間を超えて機能する。加えて、洗浄し、炉中で乾燥させることにより、簡単に再生させることができる。
【0029】
(触媒材料の調製方法)
本発明の他の態様は、触媒材料の製造方法を提供する。通常、この方法は、第1の金属酸化物を結晶化して、ナノサイズ粒子を調製するステップと、第1の金属酸化物の表面上に金属触媒前駆体を付着させるステップと、金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、を含む。随意的に、金属触媒を形成させた後に、第1の金属酸化物の表面上の過剰のヒドロキシル基を除去することもできる。
【0030】
一実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(f)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の製造方法を提供する。
【0031】
当技術分野の通常の専門家に知られている多くの方法を用いて、非晶質金属酸化物を製造することができる。例えば、当技術分野で知られているゾルゲル法を使用して、非晶質金属酸化物を形成させることができる。特に、この方法は、(a)金属酸化物前駆体をヒドロキシル含有中間体に変換する加水分解反応;(b)加水分解された前駆体を相互に反応させて(水分子を放出)、ポリマー鎖を形成させる縮合反応を伴う。好ましくは、迅速な加水分解及び縮合反応のために、金属酸化物前駆体を過剰の水アルコール溶液に滴加する。
【0032】
結晶化金属酸化物を形成させる方法は、当技術分野ではよく知られている。好ましくは、結晶化金属酸化物を、(1)熱処理、(2)熱水処理、及びマイクロ波処理により形成させることができる(A.J.Maira,K.L.Yeung,J.Soria,J.M.Coronado,C.Belver,C.Y.Lee,V.Augugliaro,Appl.Catal.B:Environ,29:327(2001);A.M.Peiro,J.Peral,C.Domingo,X.Domenech and J.A.Ayllon,Chem.Mater.,13:2567(2001)。これらはすべて、参照されることにより、本明細書にそのまま組み込まれる)。
【0033】
結晶が形成された後に、結晶表面への金属触媒前駆体の付着を妨害しうるいくつかの炭素汚染物質(即ち有機分子)が存在する。このような汚染物質は、当技術分野でよく知られている方法により、好ましくは低温酸化処理、更に好ましくはオゾン処理により除去することができる。
【0034】
前記の(d)ステップでは、当技術分野でよく知られている慣用の方法により、金属触媒前駆体を、結晶化された第1の金属酸化物の表面に付着させることができる。次いで、付着後、金属触媒前駆体を活性金属触媒に変換する。多くの金属触媒の前駆体が、当技術分野でよく知られている。一般的な概観に関しては、R.A.van Santen,P.W.N.M.van Leeuwen,J.A.Moulijn,B.A.Averill,Catalysis:An Integrated Approach,second edition,Elsevier(1999)参照。金属触媒前駆体は通常、塩、好ましくは水溶性の塩として存在する。金属触媒前駆体としては、例えば、金属触媒の硝酸塩、亜硝酸塩、塩化物、酢酸塩、アセチルアセトン酸塩、ヒドロキシ酢酸塩又は水酸化物塩が挙げられる(これらに限られない)。
【0035】
金属触媒を金属酸化物結晶に付着させた後に、金属触媒は、容易に利用可能な遊離ヒドロキシル基を介して表面上を移動する傾向がある。このような動きは、場合により焼結をもたらすので、防ぐべきである。従って、金属触媒を金属酸化物結晶の表面に付着させた後に、金属酸化物結晶の表面上の過剰の遊離ヒドロキシル基を除去することが望ましい。理想的には、表面上の多少の痕跡量の水も、時間が経過するにつれて遊離ヒドロキシル基となるので、表面の水和のすべてを除去するべきである。一実施形態では、遊離ヒドロキシル基を、遊離ラジカルと反応させることにより水に代える。次いで、好ましくは25℃〜200℃、更に好ましくは30℃〜150℃の低温加熱により、水を蒸発させる。好ましくは、オゾン処理又はUV放射により、遊離ラジカルを導入する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、(b)第1の金属酸化物をナノサイズ、好ましくは約3〜約16nmのサイズの粒子に結晶化させるステップと、(c)第1の金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、(d)第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物を第1の金属酸化物の表面に付着させるステップと、(e)金属触媒前駆体を第1の金属酸化物に付着させるステップと、(f)金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換するステップと、(g)第1の金属酸化物の表面から過剰なヒドロキシル基を除去するステップと、を含む、触媒材料の他の製造方法を提供する。
【0037】
第2の金属酸化物を加える主な目的は、より大きな金属粒子の形成をもたらす付着金属の移動を防ぐことである。金属酸化物は、第1の金属酸化物又は金属触媒の電子的又は触媒的特性を直接的又は間接的に変更しうる。
【0038】
第2の金属酸化物は、モノマー層又はオリゴマー層を形成しうる任意の金属酸化物から選択することができる。好ましくは、酸化バナジウム、酸化マンガン又は酸化クロム又は酸化モリブデンを第2の金属酸化物として選択する。第1の金属酸化物への第2の金属酸化物の負荷は、好ましくは約0.25〜約0.5ラングミュアである。即ち、第1の金属酸化物表面の約25〜約50%が、第2の金属酸化物により被覆されるのが好ましい。
【0039】
第2の金属酸化物(ブロッキング剤)を第1の金属酸化物担体に加えたら、前記の方法を用いて、金属触媒を第1の金属酸化物担体に付着させることができる。形成された金属触媒/触媒材料を特性を決定する方法は多く存在する(方法の非制限的な例に関しては表4参照)。
【0040】
(触媒材料の使用)
本発明の触媒材料は、幅広い反応で活性を示す。特に、この触媒材料は、CO又は炭化水素を酸化させるために使用することができる。加えて、本発明の触媒材料は、細菌、カビ等の微生物を破壊するために使用することもできる。従って、本発明の触媒材料は、毒性を有する有機種、無機種及び/又は生物学的種を含む汚染物質を空気から除去することにより、空気を清浄化するのに有用である。本発明において、「有機種、無機種又は生物学的種」という用語は、ヒトに危害、疾患及び/又は死をもたらす有機及び/又は無機粒子、細菌及び/又はウイルスを指す。それに該当する周知の毒性物質としては、サリン、マスタードガス(ビス(2−クロロエチル)チオエーテル)、ホスゲン、塩化シアン、アンモニア、酸化エチレン、一酸化炭素、炭疽、大腸菌(E.coli)、サルモネラ、肝炎、リステリア、レジオネラ及びノーウォークウイルス等が挙げられる(これらに限られない)。一実施形態では、本発明の触媒材料を試料(空気流等)と接触させて、汚染物質レベルの低下を検出する。汚染物質除去の非限定的な例に関しては実施例12〜14参照。
【実施例】
【0041】
〔実施例1:触媒中間体及び最終生成物〕
図1を参照すると、化合物(A)は、触媒担体として有用な第1の金属酸化物結晶(M1O)である。(A)のサイズは約3〜約25nm、好ましくは約3〜約16nm、更に好ましくは約6〜約15nmである。好ましくは、(A)の結晶化度は約70%よりも良好であり、(A)の結晶構造は主にアナターゼであってもよい。約30%までのルチルは許容される。
【0042】
化合物(B)は、化合物(A)に付着した金属前駆体(図1では、丸囲みのMCatで表されている。)を含む。好ましくは、金属前駆体は、化合物(A)上のヒドロキシル基の一部に吸着している。好ましくは、金属前駆体の負荷は約0.01〜約2.5重量%の範囲内である。
【0043】
化合物(C)は、化合物(B)の金属前駆体から変換された活性な金属触媒MCatを含む。好ましくは、金属触媒は、化合物(A)上のヒドロキシル基の一部に吸着している。金属触媒の負荷は約0.01〜約2.5重量%の範囲内である。
【0044】
化合物(D)の組成は、非吸着ヒドロキシル基が約0〜約3mg/gに限定されている点を除いて、化合物(C)の組成と同様である。このように遊離ヒドロキシル基を低量にすることより、金属触媒の焼結を防ぐことができる。
【0045】
化合物(E)は、化合物(A)の表面に付着している第2の金属酸化物(M2Ox)を含む。化合物(F)は、金属前駆体が(E)上のヒドロキシル基のいくつかに吸着している点を除いて、化合物(E)と同様である。化合物(G)は、金属前駆体が活性金属触媒に変換されている点を除いて、化合物(F)と同様である。
【0046】
〔実施例2:触媒材料を製造する概要的プロセス〕
図2は、本発明の好ましい実施形態に従って本発明の金属触媒を製造する方法をまとめたものである。第1のステップ21は、第1の金属酸化物の非晶質ゲル球を形成させるステップである。ステップ22では、金属付着に最適に水和された表面を有する第1の金属酸化物の結晶が形成されるように厳密に調整された条件下で、このゲル球を結晶化させる。ステップ23は、第1の金属酸化物の表面上の汚染物質を清浄し、表面の水和レベルを約5〜約100mg/乾燥固体gに調節して、化合物(A)を形成させるステップを含む。ステップ24は、金属前駆体を(A)に付着させて、化合物(B)を形成させるステップを含む。ステップ25は、化合物(B)上の金属前駆体を活性金属触媒に変換して、化合物(C)を形成させるステップを含む。ステップ26は、化合物(C)上の過剰な水和を除去して、金属触媒が第1の金属酸化物担体の表面上で移動しないように化合物(D)を形成させるステップを含む。
【0047】
別のステップ27は、(A)を形成させた後に用いることができ、第2の金属酸化物を化合物(A)の表面に付着させて、化合物(E)を形成させるステップを含む。金属前駆体を、ステップ28で化合物(E)に更に付着させて、化合物(F)を形成させる。ステップ29では、化合物(F)上の金属前駆体を活性金属触媒に変換させて、化合物(G)を形成させる。この特定の実施形態では、ステップ29の後の過剰な水和を除去するステップを省くことができる。
【0048】
〔実施例3:(TiOx(OH)y)の形成(ステップ21に対応)〕
好ましくは、TiOx(OH)yにおいて、xは0〜2の整数であり、yは4−2xの値である整数である。更に好ましくは、TiOx(OH)yは、Ti(OH)4、TiO(OH)2、TiO2種又はこれらの混合物を含む。
【0049】
手順:
(1)チタンイソプロポキシド(TIP、Aldrich)を室温でイソプロパノールに溶かして、約0.1〜約20mMのTIPを含む溶液を得た。
(2)25〜80℃の固定温度で常に攪拌しながら、TIP−イソプロパノール溶液を、イソプロパノール水溶液(約0.01〜約2.5Mの水を含有)に一滴ずつ加えた。
(3)後の使用のために、生じた沈殿物を濾過し、洗浄し、室温で乾燥させた。
【0050】
〔実施例4:TiO2結晶の形成(ステップ22に対応)〕
ここでは、TiO2結晶を形成させるための3種の異なる方法、即ち熱処理、熱水処理及びマイクロ波処理を説明する。
【0051】
(1.熱処理)
手順:
(1)実施例1から得られた非晶質TiO2粉末を、るつぼ上で薄層に広げた。
(2)この試料を予熱された炉に入れ、必要とされている結晶サイズに応じて、処理温度及び時間を選択した。推奨されるいくつかの条件を表1に挙げる(即ち、P11S100、P27S100)。
(3)空中か焼試料を炉から出し、室温でクエンチした。
【0052】
熱処理により、優れた結晶化度(市販のアナターゼTiO2(Aldrich Chemicals)に対して>約80%)を低い表面の水和と共に有するTiO2結晶が製造された。この技術を使用すると、約10nmよりも小さい結晶を調製することができるが、生じた結晶は往々にして、幅広い粒径からなる。
【0053】
【表1】
【0054】
(2.熱水処理)
手順:
(1)非晶質TiO2粉末を有機水溶液に分散させた。外来汚染物質を回避するために、イソプロパノール−水を選択した。
(2)熱水処理を150ml Teflon−裏付きオートクレーブ容器(PTFE−4748、Parr Scientific)内で行った。
(3)容器を予熱された炉中に予めセットされた時間入れて、表1に示される所望の結晶サイズを得た(P02S100、P04S100、P05S100、P07S100及びP08S100)。
【0055】
熱水処理により、表面が高レベルに水和されたTiO2結晶が製造される。これは、サイズ分布が狭い試料を調製するのに優れた方法である。
【0056】
注:混合物の組成、温度及び時間は、結晶化速度に影響を及ぼす。結晶化は、高い水濃度を有する溶液中では遅いが、高温では速い。
【0057】
(3.マイクロ波処理)
A.二酸化チタンゾルのマイクロ波処理手順(マイクロ波ゾルゲル法):
(1)激しく攪拌しながら、1Mのチタンイソプロポキシド(98%、ACROS)及びイソプロパノール溶液(99%、BDH)を徐々に蒸留脱イオン水に加えた。このステップで使用することができる水の量は、最終溶液の濃度により決定される。
(2)生じた溶液を約1時間攪拌して、チタンイソプロポキシドの完全な加水分解を保証した。
(3)次いで、所望の量の硝酸(約1.0M、[H+]/[Ti4+]=約0.4))を解凝固のために加えた。
(4)温度を徐々に70℃まで高め、次いで、2時間維持して、イソプロパノールを蒸発させた。
(5)続いて、室温で攪拌して、TiO2ゾル(約0.28M)を形成させた。
(6)所望の量のTiO2ゾルをテフロン裏付き分解容器に入れ、異なる出力設定(即ち50W、70W、90W、120W、250W)で作動する電子炉(MLS−1200MEGA,MILESTONE)内で加熱した。
(7)処置時間を、いずれの合成プロセスでも20分と設定した。
(8)得られたTiO2試料を、ゲル試料が形成されるまで真空箱内で乾燥させ、次いで、異なる温度でか焼させて、アナターゼTiO2を製造した。
【0058】
マイクロ波処理により、表面が高レベルに水和されたTiO2結晶が製造される。結晶サイズ調節は、熱水結晶化に比べるとあまり正確ではないが、数時間ないし数分へと、時間は著しく短縮される。
【0059】
B.ポリエチレングリコール(PEG)変性二酸化チタンゾル(PEG支援マイクロ波法)のマイクロ波処理手順(PEGの添加は、粒子凝集を防ぎうる):
(1)平均分子量400(ACROS)を有するポリエチレングリコール(PEG)を変性ポリマーとして選択した。
(2)PEG400量(約5重量%)を元々のTiO2ゾル溶液(前記の手順A、項目5)に直接加え、5時間攪拌して、変性溶液を得た。
(3)所望量の変性TiO2ゾルをテフロン裏付き分解容器に入れ、出力90W及び120Wで作動する電子炉内でそれぞれ20分間加熱した。
(4)得られたTiO2試料を真空箱中で乾燥させ、次いで、450℃で5時間か焼して、粉末試料を得た。
【0060】
〔実施例5:表面変性:汚染物質の除去(ステップ23に対応)〕
TiO2結晶を製造した後に、TiO2への金属前駆体の付着を妨害しうるいくつかの望ましくない炭素汚染物質(例えば有機分子)が存在することがある。このような汚染物質は、低温酸化処理により除去することができる。この実施例に記載の実施形態では、オゾン処理を用いる。
【0061】
手順:
(1)TiO2粉末を石英製のフローセルに入れた。
(2)酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
(3)フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1時間処理した。
【0062】
オゾン処理を使用すると、汚染物質の除去と共に、TiO2表面上の過剰な水和を除去することもできる。
【0063】
〔実施例6:金属触媒の付着(ステップ24及びステップ25に対応)〕
A.Au/TiO2の調製手順:
1.TiO2粉末1gを250ml丸底フラスコに入れた。
2.フラスコをアルミニウムフォイルで包んだ。
3.二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
4.TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
5.2.5mMのテトラクロロ金酸(III)三水和物、HAuCl420mlを加えた。
6.混合物を室温で30分間攪拌した。
7.粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
8.粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
9.粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
10.石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Au/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0064】
B.Pt/TiO2の調製手順:
1.オゾン処理されたTiO2粉末1gを250ml丸底フラスコに入れた。
2.フラスコをアルミニウムフォイルで包んだ。
3.二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
4.TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
5.2.5mMのヘキサクロロ白金酸(IV)(H2PtCl6・5H2O)20mlを加えた。
6.混合物を室温で30分間攪拌した。
7.粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
8.粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
9.粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
10.石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Pt/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0065】
〔実施例7:TiO2表面上の水和レベル調節(ステップ26に対応)〕
A.オゾン処理の手順:
1.TiO2粉末を石英製のフローセルに入れた。
2.酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
3.フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1〜5時間処理した。
【0066】
フーリエ変換赤外分光法を使用して、プロセスをその場で監視した(後の段落に記載されている一般的な同定法参照)。
【0067】
B.UV放射線の手順:
1.TiO2粉末をUV透過性石英製のフローセルに入れた。
2.乾燥空気をフローセルに供給した。
3.TiO2粉末にUVブラックランプを照射したが、これにより、吸着水のガス抜き及び表面ヒドロキシル基の除去が生じた。
【0068】
フーリエ変換赤外分光法を使用して、プロセスをその場で監視した(一般的な同定法参照)。
【0069】
〔実施例8:金属付着前のブロッキング剤の添加(ステップ27に対応)〕
手順:
1.TiO2粉末をNH4VO3(Sigma)水溶液に含浸させた。
2.粉末の上に薄層膜が形成されるまで、既知の重量のTiO2試料を水で滴定することにより、必要な液体容量を決定した。
3.濃度は、酸化バナジウム表面被覆約0.25〜0.5単層をもたらすであろうバナジウム前駆体の量をベースとした。
4.混合物を加熱し、80℃で50分間攪拌した。
5.過剰の水を回転蒸発機中、80℃で除去した。
6.生じた固体を空気中、200℃で4時間熱処理した。
【0070】
1つの単層は、TiO2nm2当たり約8〜9原子である。モノマー酸化バナジウムは、ラマン分光法において顕著なピーク及び昇温還元を示す。
【0071】
〔実施例9:ブロッキング剤を加えた後の金属付着(ステップ28及び29に対応)〕
Au/酸化バナジウム−TiO2の調製手順:
(1)酸化バナジウム−TiO2(モノマー)1gを石英製のフローセルに入れた。
(2)酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給した。
(3)フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を1〜5時間処理した。
(4)オゾン処理された酸化バナジウム−TiO2(モノマー)1gを250ml丸底フラスコに入れた。
(5)フラスコをアルミニウムフォイルで包装した。
(6)二重蒸留された脱イオン水100mlをフラスコに加えた。
(7)TiO2懸濁液を5分間攪拌した。
(8)2.5mMの2.5mMのテトラクロロ金酸(III)三水和物、HAuCl420mlを加えた。
(9)混合物を室温で30分間攪拌した。
(10)粉末を、3500rpmで15分間遠心分離することにより集めた。
(11)粉末を〜95℃の温水で3回洗浄して、塩素を除去した。
(12)粉末を120℃の炉中で24時間乾燥させた。
(13)石英管中、200℃、O3100g/m3流中で5時間、Au/TiO2粉末をオゾンで処理した。
【0072】
X−線光電子分光法から、VOx/TiO2の表面原子濃度比は約0.2028であり、Au/VOx/TiO2中でのVOx/TiO2の割合は約0.1195であった。誘導結合プラズマ分光法から、VOx/TiO2中でのバナジウムの質量比は約4.37重量%であった。Au/VOx/TiO2中での金の質量比は約0.041重量%であった。
【0073】
〔実施例10:触媒の同定法〕
表4は、本発明で調製された担持金属触媒を同定するのに用いる方法を説明したものであるが、その詳細は後述する。
【0074】
【表2】
【0075】
(1.結晶構造及びTiO2のサイズ)
(1)X線回折分析(Philips1080):
1.微細な粉末を製造するために、触媒粉末を粉砕し、移動させた。
2.粉末をアルミニウムホルダーに入れ、X線回折計の試料ホルダーに入れた。
3.CuKα X線源を使用し、0.05°増加での段階的走査により、X線回折を20°<2θ<60°に関して記録した。
【0076】
(2)X線回折分析(台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)):
1.試料の厚さによる作用を排除するために、TiO2粉末をScotchテープ上で均一にこすり、Δμx≦1(ここで、Δμxはエッジステップである。)を満たす所望の厚さを得るために折り畳んだ。
2.TiO2粉末のX線回折分析を、台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)でビームラインBL17Aで行った。120〜200mAのビーム電流でのX線照射(λ=1.3271Å)を、1.5GeV貯蔵リングから供給した。XRDパターンを、0.05°増加での段階的走査により、20°<2θ<60°に関して記録した。
3.ブラッグ回折式を使用してのピーク拡大から、結晶サイズを算出した。
【0077】
図3Bは、純粋なナノ構造アナターゼTiO2のXRDパターンを示す。図3Aは、触媒Au1T、Pt1T、Au1H及びPt1HのXRDパターンを示す(これらの表現の意味については表9を参照されたい)。ほぼ2θ=25.3°、37.8°、48°、55°で観察された鋭い回折ピークは、アナターゼTiO2構造に特徴的である(表3)。図3Aと図3Bとのパターンの相似により、本発明の触媒に純粋なアナターゼ相が存在することが確認される。
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
(3)マイクロラマン分析:
1.TiO2粉末を顕微鏡スライドガラスに載せた。スペクトル分解を約1.0cm−1に設定したが、スポットサイズは、直径で約2マイクロメートルであった。
2.Olympus BH−2顕微鏡を備えたRenishaw 3000マイクロラマン系を使用して、TiO2試料のラマンスペクトルを測定した。倍率20倍及び50倍の対物レンズを選択した。使用した励起光源は、出力25mWで514.5nmで操作されるアルゴンレーザーであった。
3.Iida及び協働者が記載しているように、結晶サイズをラマン線幅増大から測定した(Y.Iida,M.Furukawa,T.Aoki,T.Sakai,Appl.Spectrosc,1998,52,673)。
【0081】
図4は、ナノ構造アナターゼTiO2のラマンスペクトルを示す。純粋なアナターゼの特徴的なピークは395、511、634、795cm−1に位置し、ルチルの特徴的なピークは446及び611cm−1に位置している。
【0082】
(4)電子顕微鏡法:
1.TiO2粉末をイソプロパノールに分散させ、炭素被覆された銅格子に置いた。紙製の灯心を使用して、過剰の液体を除去し、撮像の前に付着物を乾燥させた。
2.200kVの加速電圧でPhilips CM−20透過型電子顕微鏡を使用して、TiO2を撮像した。ルチルエネルギー分散X線分光法(Link Pentafet detector,Link ISISソフトウェア、OXFORD Instruments)を行って、撮像された粒子の化学組成を確認した。
3.凝集体中の個々の結晶を測定し、400回の測定の平均を使用して、平均結晶サイズを算出した。
【0083】
【表5】
【0084】
(2.TiO2の結晶化度)
(1)X線吸着分析:
1.試料の厚さによる作用を排除するために、TiO2粉末をScotchテープ上で均一にこすり、Δμx≦1(ここで、Δμxはエッジステップである。)を満たす所望の厚さを得るために折り畳んだ。
2.TiO2粉末のX線回折分析を、台湾のSynchrotoron Radiation Research Center(SRRC)でビームラインBL17Aで行った。120〜200mAのビーム電流でのX線照射(λ=1.3271Å)を、1.5GeV貯蔵リングから供給した。TiO2試料のX線吸収スペクトルを透過モード、室温で測定した。
3.ガス電離検出器を使用して、スペクトルを集めた。入射(I0)及び透過(I)シンクロトロンビーム強度を測定するために使用されるイオン室にそれぞれ、He/N2ガス混合物及びN2ガスを充填した。
4.データを、Ti K−エッジ(4966eV)の200eV下からこのエッジの1100eV上まで集めた。通常のチタン金属フォイル及び市販のアナターゼTiO2を参照標準として使用した。結合構造に関する情報(即ち、隣接する原子の結合長さ、数及びタイプ)は、X線吸収データから得ることができた。
5.正規化Ti KエッジX線吸収端近傍スペクトル(XANES)は、TiO2の局所環境及び構造に関する情報をもたらし、これは、結晶及び非晶質相の相対量を定量するために使用することができる。
【0085】
図5は、台湾のSRRCで得られたナノ構造TiO2のXANESスペクトルである。それぞれ4969.5(A1)、4970.5(A2)及び4971.5(A3)eVに位置しているプレエッジピークの位置及び強度に従い、4配位、5配位、6配位Tiを同定することができる。TiO2結晶サイズが低下するにつれて、低い配位数でチタン原子を含む界面領域が増える。従って、チタン原子は小さい結晶中であるほど、低い配位数を示す。確かに、3nmTiO2(P3)は最も強いA2ピーク(4970.75eV)を有し、これは、5配位されたTiと一致する。同様の構造幾何が、1.9nmTiO2で報告されている。より小さい界面面積を有する比較的大きな結晶は、比較的弱いA2ピークを示すが、比較的強いA3ピーク(4971.75eV)を示し、これは、6配位Tiに対応している。
【0086】
(2)電子常磁性共鳴分光法:
1.TiO2粉末約12〜約30mgを石英管に入れ、真空中で脱ガスした(T=25℃、t=1h)。
2.EPR測定を実施した X帯で操作されるBruker ER200D装置で、EPR測定を実施した。スペクトルをすべて、77Kで、T型二重キャビティー内で記録した。
3.第2のキャビティーに位置しているDPPH(g=2.0036)の標準を使用して、マイクロ波の周波数を各実験で較正した。スペクトルパラメーターをチェックし、全体強度に対する各シグナルの寄与率を立証する必要がある場合には、コンピューターシミュレーションを使用した。
4.吸収及び/又は脱離処理を、10−4N.m−2までの圧力低下を達成している慣用の真空管内で行った。金属コーティングを伴わず、液体N2を充填されている石英製デュワーフラスコにセルを入れて、77Kでの照射処理を実施した。これらの実験では、UV源は、350nmでその最大強度を放射する3個の蛍光ランプ(Osram Eversun L40W/79K)であった。
5.吸着酸素の存在下でUV照射されたTiO2のEPRスペクトルが得られたが、バルク欠陥に寄与する(g1=2.057、g2=2.012、g3=2.003)が存在しないことは、結晶化度が良好(即ち、70%よりも良好)であることを示している。
【0087】
(3.表面の水和)
TiO2の表面の水和レベルを、フーリエ変換赤外分光法並びに熱重量及び示差熱分析により測定した。
【0088】
(1)フーリエ変換赤外分光法:
1.臭化カリウム(参照試料)10mgを、拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダーに入れた。
2.セルをPraying Mantis mirror assembly(Harrick)に設置し、Perkin Elmer Spectrum GX FTIRに入れた。
3.15分後にシグナルが安定するまで、乾燥した二酸化炭素不含空気で、このチャンバーを掃気した。
4.FTIRの反射モードを使用して、背景シグナルを観察した。
5.試料10mgを拡散反射赤外フーリエ変換分光(DRIFTS)セルの試料ホルダーに入れた。
6.セルをPraying Mantis mirror assembly(Harrick)に配置し、FTIRに入れた。
7.15分後にシグナルが安定するまで、乾燥した二酸化炭素不含空気で、このチャンバーを掃気した。
8.FTIRの反射モードを使用して、ヒドロキシル基の存在を観察した。
9.試料を400cm−1〜4000cm−1で、室温で1cm−1の解像で走査した。
10.走査数は、256であった。
【0089】
図6は、水和TiO2のDRIFTスペクトルである。3300cm−1付近の幅広ピークは、O−H伸縮によるものであった。ほぼ1600cm−1に現れるピークは、Ti−OHを伴っている。吸着された水は、ほぼ1000cm−1に幅広ピークをもたらす。
【0090】
(2)熱重量及び示差熱分析:
1.アルファアルミナ粉末40mgを白金ホルダー1に入れ、試料30mg及びアルファアルミナ10mgを白金ホルダー2に入れた。
2.アルファアルミナ粉末10mgを他の白金ホルダー内部に入れ、試料30mgをアルファアルミナ粉末の頂部に入れた。
3.両方の白金ホルダーを、25℃〜1600℃の加熱範囲を伴う熱重量分析器/示差熱分析器(TGA/DTA、Setaram、31/1190)内部に入れた。
4.試料重量が一定値を示した後に、実験を開始した。
5.試料を加熱速度5℃/分、25℃〜800℃で、空気中で分析した。
6.温度変化の分解能は0.01℃であり、重量変化に関する分解能は0.001mgであった。
7.800℃まで温度を加熱した後に、システム全体を水により冷却した。
8.参照シグナルを試料シグナルから引くと、試料の熱変化及び重量変化に関して集められたシグナルが得られた。
【0091】
図7は、TiO2試料の通常の熱重量及び示差熱分析を示す。吸着された水は、約50℃が頂点である吸熱熱流を伴いながら、100℃以下の温度で脱着する。水素結合水は、100〜200℃で失われる。
【0092】
(4.付着したVOxの特性)
NH4VO3含浸させたTiO2粉末を石英製のフローセルに入れ、酸素中のオゾン100g/m3を100sccmでフローセルに供給し、フローセルを200℃に加熱し、TiO2粉末を2時間処理した。次いで、付着した酸化バナジウムを次の方法により同定した。
【0093】
(1)マイクロ−ラマン分析:
1.冷却されるCCD検出器(−73℃)及びホログラフィックスーパーNotchフィルターを備えた単一のモノクロメーターRenishaw System1000を用いて、ラマンスペクトルを作動させた。
2.ホログラフィックNotchフィルターが、弾性散乱を除去する一方で、ラマンシグナルは非常に高く維持された。
3.試料を514nmAr線を用いて励起させた。
4.スペクトル解像度は約3cm−1であり、スペクトルの取得は、30sの20回の蓄積からなった。
5.脱水条件(約120℃)下に、温かい段階で、スペクトルを得た(Linkam TS−1500)。
【0094】
図8は、TiO2上の酸化バナジウムのラマンシフトを示す。1017cm−1でのラマンバンドは、末端V=O結合モードに対応している。900cm−1付近での幅広なラマンバンドは、表面ポリマーバナジア種のV−O−V伸縮モードに特徴的である。990cm−1付近での、オゾン処理後の新たな弱い付加的ラマンバンドは、結晶性V2O5のV=Oの伸縮モードに対応している。バナジア前駆体をオゾン処理で酸化させて、酸化バナジウムにした。
【0095】
(2)昇温還元:
1.石英綿の小片をU字型石英管の一方の足の底部に入れた。
2.粉末0.1gを石英綿の上に置いた。
3.石英管をAltamira AMI−200触媒同定系の炉内に入れた。
4.アルゴン(99.99%)を50sscmで用いて100℃で、試料を2時間掃気した。
5.10%水素−アルゴンガス混合物50sccm中で、試料を100℃〜800℃に10℃/分で加熱することにより、昇温還元を行った。
6.アルゴン中10%水素(50sccm)での3つの較正パルスを対照で得た。
7.試料の還元性は、式:
較正値
=(ループ容量)(分析ガスのパーセント)/(平均較正面積)(100)
取込み(μモル/触媒g)
=(分析面積)(較正値)/(試料重量)(24.5)
から算出することができた。
【0096】
図9は、TiO2上の酸化バナジウムの(a)単層、(b)1/2単層、(c)1/4単層のTPRを示す。
【0097】
(5.金属負荷及び分散)
(1)金属触媒の負荷を、次のステップにより決定した:
1.触媒を王水(濃HNO318部及び濃HCl82部)に溶かした。
2.混合物を連続的に攪拌しながら、穏やかに沸騰するまで加熱した。
3.スラリーを濾過し、較正範囲の濃度まで脱イオン水で希釈した。
4.誘導結合プラズマを使用することにより、触媒負荷を決定した(PerkinElmer Optima 3000XL)。
5.金属標準溶液(Aldrich)1000mg/mlから調製された標準溶液0.5〜20mg/mlを用いて、装置を較正した。
【0098】
(2)分散測定:
分散は通常、試料中に存在する触媒原子の全数と、表面に曝されている触媒原子の数との比として定義される。
【0099】
手順:
1.石英綿の小片をU字型石英管の一方の足の底部に入れた。
2.粉末試料0.1gを石英綿の上に置いた。
3.石英管をAltamira AMI−200触媒同定系の炉内に入れた。
4.試料を、アルゴン(99.99%)50sscmを用いて300℃で2時間掃気し、次いで、温度を25℃まで低下させた。
5.一酸化炭素(ヘリウム中50容量%)50μlパルスを供与することにより、一酸化炭素化学吸着を行った。熱伝導検出器を使用して、金属表面に化学吸着されているCOの量を決定した。
6.全部で20パルスを使用したが、各パルス間の時間は、120秒であった。
7.3つの較正パルスを対照で得た。
8.試料への金の分散を、式:
較正値
=(ループ容量)(分析ガスのパーセント)/(平均較正面積)(100)
取込み(μモル/触媒g)
=(分析面積)(較正値)/(試料重量)(24.5)
分散パーセント
=(取込み)(原子量)/(化学量論)(金属パーセント)
を使用することにより算出することができた。
【0100】
水素及び酸素化学吸着を用いて、金属触媒表面積を測定することもできた。
【0101】
(6.BET表面積)
窒素物理吸着により、触媒のBET表面積を測定した。
【0102】
手順:
1.Coulter SA3100窒素物理吸着装置からの、キャップを有する石英管試料ホルダーを秤量した。
2.触媒0.1gを測定し、試料ホルダー内に入れた。
3.ホルダーをCoulter SA3100の脱ガスポートに接続した。
4.試料を120℃で2時間脱ガスした。
5.脱ガスの後に触媒を秤量し、窒素物理吸着を77Kで行った。
6.BET表面積を物理吸着データから算出した。
【0103】
(7.X線光電子分光法)
触媒の表面組成及び化学をX線光電子分光法(XPS)により決定した。
【0104】
手順:
1.触媒粉末をインジウムフォイルの上にプレスした。
2.このフォイルを、X光電子分光器(Physical Electronics PHI5600)内に入れた。
3.試料を超高真空で脱ガスした。
4.350W、45℃で単色AlKαX線源を使用して、試料を衝撃させた。
5.対照として炭素1Sを使用して、データを集めた。
【0105】
(8.マイクロ波処理により調製された試料の粒子形態及び特性)
マイクロ波処理により調製されたゾル試料の粒子形態を、原子間力分光法(AFM、Nanoscope IIIa)により同定した。AFMにより撮像されるゾル試料は、新たに割った雲母表面の上に希釈ゾル試料10マイクロリットルを付着させることによって調製した。付着させた試料を室温で乾燥させ、n+−ケイ素チップ(Nanosensors)をタッピングモードAFM撮像実験のために使用した。
【0106】
図10及び表6は、それぞれ、本発明の方法により調製された二酸化チタンゾルのTM−AFM形態及び特性を示す。約20nmの狭いサイズ分布を有する球状一次ゾル粒子が良好に分散していることが、図10(a)から明らかである。マイクロ波加熱を用いても、出力を50Wに設定すれば、一次粒子はそのサイズ及び分散を維持した。マイクロ波出力を高めると、多数の一次粒子が、異なるサイズ及び形状の凝集体を形成したことが、図10(c)及び(d)から分かる。一次粒子のサイズは増大を示した。120W以上に出力を高めると、安定なゾルは製造されなかった。代わりに、粉末の沈殿が生じた(表6参照)。マイクロ波処理により、迅速な加熱、及び極めて迅速な結晶運動が可能であるようであった。
【0107】
得られたゲル試料の結晶構造をXRDにより同定した。そのXRDパターンを図11に示す。いくつかの幅広なピークが、アナターゼ構造による約25°、38°、47°及び54°に等しい2θの値で観察された。31°での小さい幅広シグナルは、試料中のTiO2板チタン石痕跡による(例えば表6)。25°に等しい2θでのピークの半値全幅(FWHM)を測定することにより、アナターゼの増大サイズをScherrer式により算出した。そのデータを表6に挙げる。試料はすべて、約3〜約5nmの小さい結晶サイズを有し、このサイズは、TiO2−MW70試料を除き、マイクロ波出力が強くなるにつれて増大した。
【0108】
前記のAFM及びXRDデータでは、3種の異なる試料(即ちTiO2、TiO2−MW90及びTiO2−MW120)を、材料特性に対する操作方法の影響を証明するための例として選択した。図12〜14は、異なる温度でのか焼後の試料のXRDパターンを示し、表7は、熱処理された試料のBET表面積及び結晶サイズをまとめたものである。マイクロ波法により結晶化させたTiO2が、比較的大きな表面積を有し、熱焼結を比較的受けにくいことは明らかであった。担体表面積の喪失は、金属触媒が焼結する原因の1つである。担体の熱安定性の更なる改善が、PEG支援マイクロ波法を用いることにより達成された。図15は、PEG変性TiO2ゾル試料のAFM像を示す。図10に示される未変性TiO2試料と比較すると、狭いサイズ分布を有する高分散球状ゾル粒子のみが両方の試料に現れた。更に、試料は、400℃での熱処理の後にも、大きな表面積及び小さい結晶サイズを維持した(表7)。
【0109】
比較的高いマイクロ波出力(120W)を適用すると、ゾルの色が、薄青色〜白色へと変化したが、沈殿は生じなかった。図16は、TiO2−PEG−MW120試料の粒子形態を示す。図16(b)での位相画像パターンから、コロイドは、様々な形態を伴う凝集粒子からなるものであった(例えばラベルA)ことが分かる。PEGポリマーを分解するための高温アニーリング(450℃)の後に、約7.16及び約7.49nmの粒度を有するアナターゼ相(図17)を、それぞれTiO2−PEG−MW90及びTiO2−PEG−MW120試料について得ることができた。
【0110】
表6は、マイクロ波処理により調製されたTiO2試料でのXRD同定結果を示す。表7は、マイクロ波処理により調製されたTiO2試料でのXRD及びBET同定結果を示す。
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
(同定結果のまとめ)
表8では、熱結晶化TiO2上で調製された担持触媒のBET表面積、粒径及び表面原子比を挙げている。この試料は、市販のP25TiO2粉末(例えば約50m2/g)と比較すると、約11nm〜約14nmの小さい粒径、及び広いBET面積を有する。
【0114】
【表8】
【0115】
表9では、熱及び熱水処理下に、異なるAu又はPt負荷パーセンテージで調製された触媒をまとめている。XRD分析は、熱及び熱水法により調製された触媒は、それぞれ約13及び約12nmの結晶サイズを有するアナターゼであることを示していた。
【0116】
【表9】
【0117】
〔実施例11:触媒の反応速度試験〕
図18は、一酸化炭素(CO)及びトルエンの気相酸化に関する触媒の性能を評価するために使用された実験装置の概略図である。これは、合成空気62、CO64、トルエン(VOC)66供給輸送モジュール、圧力調整器63、ガラス反応器68及び分析装置(即ちガスクロマトグラフ及びオンラインガス分析器)65からなる。CO酸化試験のために、合成空気62及びCO64を混合し、その後、ガラス反応器68に入れた。ガラス反応器68は、長さ18インチ及び外径1/4インチの寸法を有した。触媒61(約0.03g)を入口から12インチ下流に設置した。ガスクロマトグラフの内側にあるCTR1カラムを用いて出口ガスを分離し、ガスクロマトグラフ(HP6890)65を用いて分析した。オンラインガス分析器(Bruel & Kjaer,Type 1302)を時折、ガスクロマトグラフと連続して使用して、反応に関する一時データを得た。トルエン酸化試験では、手順は、COの酸化と同様であるが、液体トルエン供給は、シリンジポンプ(kdScientific 1000)67を使用することにより輸送した。120℃にステインスチール管を加熱することによってトルエンを気化させ、合成空気と混合し、その後、ガラス反応器68に入れた。100%Carbowax 20Mカラムを使用することにより、出口ガスを分離した。
【0118】
図19は、種々の触媒(Au1H、Au3H、Au1T及びAu3T)について、使用した触媒の質量当たりのCOの変換速度を、反応時間の関数としてプロットした図である。Au1TとAu3Tとを比較すると、25℃及び200℃の両方で、明らかに、Au1Tの反応速度がAu3Tよりも速かった。Au1HとAu3Hとを比較しても、同じ結果が得られた。この結果は、触媒の性能が、TiO2担体上でのAuの量に左右されることを示唆している。触媒に含まれるAuが多いほど、COの反応速度は速くなる。
【0119】
図20は、種々の触媒(Au1T、Au1H、Pt1T及びPt1H)について、使用した触媒の質量当たりのCOの変換速度を、反応時間の関数としてプロットした図である。Au1TとAu1Hとを比較すると、25℃又は200℃での温度に関わりなく、Au1Tの反応速度は、Au1Hよりも速かった。また、Pt1TとPt1Hとを比較したが、200℃では同等の反応速度であり、25℃では、Pt1Tの反応速度がPt1Hよりも速かった。この結果は、熱処理されたTiO2上に担持されている金属触媒が、熱水処理されたTiO2上に担持されている触媒よりも良好な性能を有することを示している。同様の金属負荷では、Pt触媒が金触媒よりも大きい活性を示した。
【0120】
〔実施例12:CO及びトルエンとの反応の際の触媒の持続性〕
触媒の頻繁な交換を回避するために、触媒は、長期間に渡って機能するべきである。CO及びトルエンの酸化反応に関する本発明の触媒の持続性を試験する実験を行った。
【0121】
図21は、200℃、4サイクルのPt1Tの反応速度を示す。これは、COの酸化に関する反応速度が、4サイクルの反応の後にも全く安定であったことを示している。1サイクルは、反応温度を25℃〜200℃へと、次いで再び25℃へと、交互に変化させることを意味する。Pt1Tは2サイクル及び4サイクルの後に反応速度の低下を示したが、3サイクル目には、反応速度の上昇が見られた。このことは、触媒Pt1TがCOの反応に関して安定な反応速度を有することを示している。COの反応の持続性試験の後に、トルエンに関する更なる持続性試験を行った。
【0122】
図22は、3サイクルのトルエンの処理における触媒Pt1Tの反応速度を示す。トルエン反応速度は、反応時間と共に上昇していき、25℃での反応速度は、200℃での反応速度よりも速いが、いずれの場合にも、正常な現象から逸脱していることが分かる。異常な結果にも関わらず、図22はまさに、Pt1Tがトルエン酸化の触媒において有効であり、トルエンの反応速度は3サイクルの後にも全く安定であることを示唆している。
【0123】
〔実施例13:オゾン処理及びバナジウム添加を伴う、COに対する触媒の性能〕
触媒を、CO酸化に関して、示差プラグ流反応器で試験した。触媒粉末約30mgを、約2.5%の一酸化炭素を含有する乾燥空気流中で反応させた。担体のオゾン前処理により、炭素質表面付着物は除去され、付着VOxが安定化された。図23は、Au/TiO2(□)、及びオゾン処理Au/TiO2(△)のCO変換速度を示すグラフであり、ここには、典型的な反応の成り行きがまとめられている。Au/TiO2触媒は、298Kでの反応の1時間以内に迅速に失活化した。反応温度を高くすると、より高い変換速度がもたらされたが、失活化の加速も生じた。オゾンによるAu/TiO2触媒の前処理は、より良好でより安定な触媒性能をもたらした。図24は、オゾン処理を伴うか、又は伴わないAu/TiO2及びAu−VOx/TiO2触媒の性能を比較したものである。この結果は、バナジウム濃度が触媒活性に影響を及ぼし、オゾンによる前処理が一貫して、より良好な触媒性能をもたらすことを明らかにしている。
【0124】
〔実施例14:VOC及び細菌の破壊における有効性〕
VOC及び細菌の破壊における本発明の触媒の有効性を試験するために、試作品を作製した。この試作品では、Pt1T触媒を約2g使用した。試作品の性能を10カ月に渡って試験した。表10では、40cfmの空気流(1分当たり1立方フィート)下、室温で操作される試作品システムの性能を挙げている。2003年5月から2004年2月までの実験期間の間、フィルターは使用しなかった。
【0125】
表10では、様々なVOCのためにPt1T触媒を使用する試作品ユニットの性能を挙げている。100ppmよりも高いVOCを含有する空気で、50%よりも良好な低減が得られ、約30ppm未満のVOCにより汚染された空気では、ほぼ100%の低減が得られた。VOCは、完全に二酸化炭素及び水に変換された。
【0126】
【表10】
【0127】
3種の異なる試験を行って、バイオエアロゾル処理に関する試作品の性能を測定した。
【0128】
(A)バイオエアロゾル試験1:
細菌種:緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、枯草菌(Bacillus subtilis)、及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、の低減に関する空気清浄機試作品の性能試験。3種の試験細菌は、一般的な空中浮遊細菌である。試験はすべて、環境微生物学の分野に通常適している一般的な調製、取扱い、分析プロトコールに従って実施した。
【0129】
手順:
1.細菌細胞のストック培養を、液体栄養ブイヨン培養中で107〜108細胞/mlの細胞密度まで活性化させた。
2.試作品及びAndersen生存可能一段試料採取器を、60cmの距離で密閉チャンバー内に入れた。
3.滅菌蒸留水2×15mlを、ネブライザーを用いてエアロゾル化して、エアロゾル化された細胞及び芽胞に対する蒸発作用を最小化するためにチャンバーを飽和させた。
4.相対湿度を試験の間、室温(23〜24℃)で約80%に維持した。
5.ストック細菌培養溶液10mlを、ネブライザーを介して、試験のためのチャンバー内へとエアロゾル化し、試作品を作動させたり、停止したりした(対照)。試験及び対照の両方で、二重作動を行った。
6.Tryptic Soy Agar(TSA)を負荷されたAndersen一段試料採取器を用いて、空気試料を0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、5及び10分間隔で10秒間集めた。次のシークエンス(1)対照1(C1)、(2)試験1、試作品を採取の0秒後に作動させた(T1)、(3)試験2(T2)、試作品をONモードに維持した、及び(4)対照2(C2)で、試験を行った。
【0130】
図25に示される結果は、エアロゾル化された枯草菌(B.subtilis)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)及び緑膿菌(P.aeruginosa)が、それぞれ0.5、2及び10分で死滅及び破壊されたことを示している。綿棒試験は、試作品ユニットの表面に残っている生存細菌が存在しないことを示していた。
【0131】
(B)バイオエアロゾル試験2:
試作品ユニットを、公共食堂での天然バイオエアロゾル(即ち細菌及びカビ)の低減に関して試験した。この場所は、800コロニー形成単位/m3の平均バイオエアロゾル負荷を有する。表11は、細菌の約64%、及びカビの約87%が、試作品への1回通過で死滅及び破壊されたことを示している。
【0132】
【表11】
【0133】
(C)バイオエアロゾル試験3:
試作品ユニットを、通常の公立クリニックに存在する天然バイオエアロゾル(即ち細菌及びカビ)、及びありうる空中病原体の低減に関して試験した。表12では、香港のWan Chaiに位置している公立クリニックで行われた6カ月の試作品試験データをまとめている。
【0134】
【表12】
【0135】
クリニック空気のバイオエアロゾル調査を行った。Biomeieux APIキットを用いた細菌種同定により、最も一般的に生じる3種の分離株は、(1)&(2)2種の異なる種のミクロコッカス(Micrococcus)、及び(3)表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)であることが判明した。カビ種は、コロニー、菌糸及び芽胞形態を用いて同定した。次の種が単離された。(1)クラドスポリウム(Cladosporium)、(2)〜(3)3種のペニシリウム(Penicillium)、(4)エモンシア(Emmonsia)、(5)酵母(Yeast)、及び(6)未知の種。
【0136】
〔他の実施形態〕
本発明は、明細書に記載の実施形態により範囲を限定されるものではなく、これらは、本発明の個々の態様の単なる説明として意図されている。他の実施形態は、当技術分野の専門家には明らかであろう。上述の詳細な説明は、明確化のためのみに提供されており、単なる例示であることを理解されたい。本発明の精神及び範囲は、上述の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1A】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、表面の水和のレベルが調節された金属酸化物の粒子を示す。
【図1B】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物に金属触媒前駆体を付着させた後に形成される金属触媒中間体を示す。
【図1C】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物及び金属触媒を含む触媒材料を示す。
【図1D】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、過剰なヒドロキシル基を除去するステップの後の生成物を示す。
【図1E】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物への、第2の金属酸化物のモノマー若しくはオリゴマー又はそれらの混合物の付着を示す。
【図1F】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、第1の金属酸化物に金属触媒前駆体を付着させた後に生じる中間体である。
【図1G】本発明のあるステップで形成される化合物を示す概略図である。具体的には、金属触媒前駆体を活性な金属触媒に変換した後の生成物を示す。
【図2】本発明に従って触媒を製造するステップを示す概略図である。化合物(A)から(G)は、図1A〜Gに示されている。
【図3A】純粋なアナターゼTiO2結晶((a)Au1T、(b)Pt1T、(c)Au1H及び(d)Pt1H)に被覆された触媒のX線回折パターン(XRD)である。
【図3B】純粋なナノ構造アナターゼTiO2結晶のX線回折パターン(XRD)である。
【図4】ナノ構造アナターゼTiO2のラマンスペクトルを示す。
【図5】Synchrotron Radiation Research Center(SRRC、台湾)で得られたナノ構造TiO2のX線吸収端近傍構造(XANES)スペクトルである。
【図6】水和TiO2の拡散反射赤外線フーリエ変換(DRIFT)スペクトルである。
【図7】TiO2の熱重量及び示差熱分析の結果を示す図である。
【図8】TiO2上の酸化バナジウムのラマン分析の結果を示す図である。
【図9】TiO2上の酸化バナジウムの(a)単層、(b)1/2単層、(c)1/4単層、の昇温還元(TPR)の結果を示す図である。
【図10】様々な出力((a)0W、(b)50W、(c)70W、(d)90W)でマイクロ波ゾルゲル法により調製された二酸化チタンゾルのタッピングモード(TM)原子間力顕微鏡(AFM)像である。
【図11】様々な出力((a)0W、(b)50W、(c)70W、(d)90W、(e)120W、(f)250W)でマイクロ波ゾルゲル法により調製されたTiO2試料のX線回折パターンである。
【図12】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2試料のX線回折パターンである。
【図13】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2−MW90試料のX線回折パターンである。
【図14】様々な条件((a)真空箱中で乾燥、(b)200℃でか焼、(c)400℃でか焼)下の処理後のTiO2−MW120試料のX線回折パターンである。
【図15】PEG支援ゾルゲル法((a)マイクロ波処理なし、(b)90Wでマイクロ波加熱)により調製されたTiO2ゾル試料のTM−AFM像である。
【図16】TiO2−PEG−MW120試料のTM−AFM像((a)高さ画像、(b)位相画像)である。
【図17】PEG支援マイクロ波法により調製されたTiO2試料のXRDパターンである。
【図18】一酸化炭素(CO)及びトルエンの気相酸化に関する触媒の性能を評価するために使用された実験装置の概略図である。
【図19】試料Au1H、Au3T、Au1T及びAu3Hの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図20】試料Au1T、Au1H、Pt1T及びPt1Hの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図21】200℃、4サイクルの試料Pt1Tの一酸化炭素反応速度を示す図である。
【図22】3サイクルのトルエンの処理における試料Pt1Tの反応速度を示す図である。
【図23】Au/TiO2(□)、及びオゾン処理されたAu/TiO2(△)のCO変換速度を示すグラフである。
【図24】熱処理前(左側棒グラフ)、473Kでの反応混合物の熱処理後(中央棒グラフ)、及び室温下の反応48時間後(右側棒グラフ)の、(1)Au−TiO2;(2)O3−Au−TiO2;(3)Au−1V−TiO2;(4)O3−Au−1V−TiO2;(5)Au−0.5V−TiO2;(6)O3−Au−0.5V−TiO2;(7)Au−0.25V−TiO2;(8)O3−Au−0.25V−TiO2に関して、298KでのCO変換速度を比較するグラフである。本明細書において、Vは、VOxの単層に対する比を表す。例えば、1Vは1単層のVOxを、0.5Vは半単層のVOxを、0.25Vは1/4単層のVOxを意味する。
【図25A】Pt1T触媒の使用による緑膿菌(P.aeruginosa)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【図25B】Pt1T触媒の使用による枯草菌(B.subtilis)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【図25C】Pt1T触媒の使用による表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)の低減を、時間の関数として示すグラフである。この図は2つの繰返し実験を示し、ここで、C1は対照実験1、C2は対照実験2、T1は試験実験1、T2は試験実験2である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属酸化物と金属触媒とを含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有するナノサイズの結晶粒子を含み、
金属触媒が遷移金属を含む触媒材料。
【請求項2】
第1の金属酸化物が、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
金属触媒が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項4】
第1の金属酸化物の少なくとも約70%がアナターゼである、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項5】
TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される第1の金属酸化物と、
Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む金属触媒と、
を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有する触媒材料。
【請求項6】
TiO2と、Auを含む金属触媒と、を含む触媒材料であって、
TiO2が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有する触媒材料。
【請求項7】
第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物と、金属触媒と、を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有するナノサイズの結晶粒子を含み、
第2の金属酸化物が、第1の金属酸化物の表面に付着して、第1の金属酸化物の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採り、
金属触媒が遷移金属を含む触媒材料。
【請求項8】
第1の金属酸化物が、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項9】
第2の金属酸化物が遷移金属を含む、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項10】
第2の金属酸化物が、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化クロム及び酸化モリブデンからなる群より選択される一種である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項11】
金属触媒が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項12】
第2の酸化物の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項13】
TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される第1の金属酸化物と、
酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化クロム及び酸化モリブデンからなる群より選択される第2の金属酸化物と、
Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む金属触媒と、
を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有し、
第2の金属酸化物が、第1の金属酸化物の表面に付着して、第1の金属酸化物の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採る触媒材料。
【請求項14】
第2の酸化物の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項13に記載の触媒材料。
【請求項15】
TiO2、V2O5及びAuを含む触媒材料であって、
TiO2が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有し、
V2O5が、TiO2の表面に付着して、TiO2の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採る触媒材料。
【請求項16】
V2O5の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項15に記載の触媒材料。
【請求項17】
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、
(b)第1の金属酸化物を約4〜約15nmの粒子に結晶化させるステップと、
(c)金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、
(d)金属触媒前駆体を、(c)で得られた第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(e)金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、
を含む、触媒材料の製造方法。
【請求項18】
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、
(b)第1の金属酸化物を約4〜約15nmの粒子に結晶化させるステップと、
(c)金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、
(d)金属触媒前駆体を、(c)で得られた第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(e)金属触媒前駆体を、第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(f)金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、
を含む、触媒材料の製造方法。
【請求項19】
一種又は複数の反応物を触媒材料と接触させて、一種又は複数の所望の生成物を得るステップを含む、請求項1及び13に記載の触媒材料の使用方法。
【請求項1】
第1の金属酸化物と金属触媒とを含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有するナノサイズの結晶粒子を含み、
金属触媒が遷移金属を含む触媒材料。
【請求項2】
第1の金属酸化物が、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
金属触媒が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項4】
第1の金属酸化物の少なくとも約70%がアナターゼである、請求項1に記載の触媒材料。
【請求項5】
TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される第1の金属酸化物と、
Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む金属触媒と、
を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有する触媒材料。
【請求項6】
TiO2と、Auを含む金属触媒と、を含む触媒材料であって、
TiO2が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有する触媒材料。
【請求項7】
第1の金属酸化物と、第2の金属酸化物と、金属触媒と、を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有するナノサイズの結晶粒子を含み、
第2の金属酸化物が、第1の金属酸化物の表面に付着して、第1の金属酸化物の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採り、
金属触媒が遷移金属を含む触媒材料。
【請求項8】
第1の金属酸化物が、TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される一種である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項9】
第2の金属酸化物が遷移金属を含む、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項10】
第2の金属酸化物が、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化クロム及び酸化モリブデンからなる群より選択される一種である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項11】
金属触媒が、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項12】
第2の酸化物の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項7に記載の触媒材料。
【請求項13】
TiO2、SiO2、Al2O3、ZrO2及びWO3からなる群より選択される第1の金属酸化物と、
酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化クロム及び酸化モリブデンからなる群より選択される第2の金属酸化物と、
Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Au、Ag及びCuからなる群より選択される一種の金属を含む金属触媒と、
を含む触媒材料であって、
第1の金属酸化物が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有し、
第2の金属酸化物が、第1の金属酸化物の表面に付着して、第1の金属酸化物の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採る触媒材料。
【請求項14】
第2の酸化物の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項13に記載の触媒材料。
【請求項15】
TiO2、V2O5及びAuを含む触媒材料であって、
TiO2が、
(a)約4〜約15nmのサイズと、
(b)約60%より大きい結晶化度と、
(c)乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgが水和された表面と、
を有し、
V2O5が、TiO2の表面に付着して、TiO2の表面上でモノマー型又はオリゴマー型を採る触媒材料。
【請求項16】
V2O5の少なくとも約60%がモノマー型である、請求項15に記載の触媒材料。
【請求項17】
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、
(b)第1の金属酸化物を約4〜約15nmの粒子に結晶化させるステップと、
(c)金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、
(d)金属触媒前駆体を、(c)で得られた第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(e)金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、
を含む、触媒材料の製造方法。
【請求項18】
(a)第1の金属酸化物の非晶質材料を形成させるステップと、
(b)第1の金属酸化物を約4〜約15nmの粒子に結晶化させるステップと、
(c)金属酸化物の粒子の表面の水和レベルを、乾燥した第1の金属酸化物1g当たり約5〜約100mgの範囲に調節するステップと、
(d)金属触媒前駆体を、(c)で得られた第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(e)金属触媒前駆体を、第1の金属酸化物に付着させるステップと、
(f)金属触媒前駆体を金属触媒に変換するステップと、
を含む、触媒材料の製造方法。
【請求項19】
一種又は複数の反応物を触媒材料と接触させて、一種又は複数の所望の生成物を得るステップを含む、請求項1及び13に記載の触媒材料の使用方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図1G】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25A】
【図25B】
【図25C】
【公表番号】特表2008−504957(P2008−504957A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519596(P2007−519596)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000704
【国際公開番号】WO2006/002582
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(506429570)ザ ホンコン ユニヴァーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【国際出願番号】PCT/CN2005/000704
【国際公開番号】WO2006/002582
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
2.テフロン
【出願人】(506429570)ザ ホンコン ユニヴァーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】
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