説明

触媒

コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を製造する方法は、一般式(1):
HOOC−C−COOH(1)
[式中、CR1及びCR2中のどちらのCもsp炭素であり、R及びRは、同じ又は異なり、それぞれが水素及び有機基からなる群から選択される]
を有する多官能性カルボン酸又はその前駆体を、粒状の触媒支持体中及び/又は触媒支持体上に導入することを含む。支持体表面積に対する使用した多官能性カルボン酸の量の割合は、少なくとも0.3μmolカルボン酸/m支持体表面積である。触媒支持体中及び/又は触媒支持体上へのカルボン酸の導入と同時に、或いはその後に、触媒支持体中及び/又は触媒支持体上にコバルト化合物を導入する。含浸支持体を焼成して、コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、触媒に関する。本発明は特に、コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を製造する方法、フィッシャートロプシュ合成触媒を製造する方法、及びフィッシャートロプシュ合成触媒を用いることを含む炭化水素を製造する方法に関する。
【0002】
支持されたコバルト系フィッシャートロプシュ合成(FTS)触媒は、支持体上にコバルト塩を含浸させ、合わせて含浸支持体を乾燥させ、続いて得られた含浸支持体を焼成してFTS触媒前駆体を得て、次いで前駆体を還元してFTS触媒を得ることによって合成できることを、本出願人は認識している。これらのコバルトFTS触媒は、コバルトクリスタリット(cobalt crystallites)を含めた分散コバルトをこのように含有する。
【0003】
米国特許第5,945,459号は、コバルトFTS触媒の含浸及び調製中における多官能性カルボン酸の使用について記載しており、その中で、多官能性カルボン酸は、Cがsp炭素原子であり、n=1〜4である式
HOOC−(CRR−COOH
を有すると特徴付けられている。これらの多官能性カルボン酸の例は、マロン酸、アスパラギン酸、コハク酸及びクエン酸である。これらのカルボン酸の出願では、はるかに少ないレニウムの促進剤としての使用が可能になるが、それでも高活性金属分散及び高活性を備えた触媒を提供している。
【0004】
米国特許第6,136,868号は、高活性金属分散及び高活性を得るために、活性金属と、炭水化物又は単糖類若しくは二糖類として特徴付けられる糖類との支持体への同時含浸を扱っている。炭水化物又は糖類の同時含浸は、はるかに低レベルでのレニウム貴金属促進剤の使用をこの場合も可能にする。
【0005】
米国特許第5,856,260号は、高活性金属分散及び活性を達成するために、活性金属と、ポリオール又は多価アルコールとの支持体への同時含浸について記載している。米国特許第6,136,868号及び米国特許第5,945,459号と同様に、ポリオール又は多価アルコールの同時含浸はまた、より低いレニウム促進剤レベルでの使用を可能にする。ポリオールは、全ての炭素原子がsp炭素原子であり、nが好ましくは2〜4である式
HOCH−(CHOH)−CHOH
を有することが好ましい。
【0006】
米国特許第5,248,701号は、コバルトとα−ヒドロキシカルボン酸の同時含浸とその後の焼成によって混合コバルトマンガンスピネルを形成する、支持されていない混合コバルトマンガンFTS触媒の調製について記載している。α−ヒドロキシカルボン酸は、1個又は複数個のヒドロキシ基(OH)を含有する。これらのα−ヒドロキシカルボン酸を使うと、スピネルの表面積及び実質的に均一な混合相が改善される。
【0007】
国際公開第01/76734号パンフレットは、α−ヒドロキシカルボン酸及び活性金属の逐次含浸とその後の焼成について記載している。適当なα−ヒドロキシカルボン酸は、クエン酸、グリコール酸、リンゴ酸、グリセリン酸、及び酒石酸である。これら全てのカルボン酸は、ヒドロキシ基を含有する。目的は、選択性及び/又は活性を改善し、活性金属の摩滅又はより少量を最小限に抑える、マクロ的に均一な分散を得ることである。
【0008】
国際公開第03/004153号パンフレットは、高活性のFTS触媒を作製するために、支持体に含浸させるのに使用する含浸溶液を含有する活性金属に界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を加えることについて開示している。非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン化アルキルフェノール、ポリオキシエチレン化アルキルフェノールエトキシレートなどであってもよい。界面活性剤が陽イオン性の場合、適当な界面活性剤には、第四級長鎖有機アミン塩、第四級ポリエチレン化長鎖有機アミン塩などがある。
【0009】
触媒性能の向上をもたらす、コバルト分散を高めたFTS触媒を提供することが本発明の目的である。この目的は、本発明の方法に基づいて触媒を製造したときに達成される。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様によれば、コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を製造する方法を提供しており、この方法は、
一般式(1):
HOOC−C−COOH (1)
[式中、C及びC中のどちらのCもsp炭素であり、R及びRは、同じ又は異なり、それぞれが水素及び有機基からなる群から選択される]
を有する多官能性カルボン酸又はその前駆体を、粒状の触媒支持体中及び/又は触媒支持体上に、支持体表面積に対する使用した多官能性カルボン酸の量の割合が少なくとも0.3μmolカルボン酸/m支持体表面積となるように導入する工程と、
触媒支持体中及び/又は触媒支持体上へのカルボン酸の導入と同時に、或いはその後に、触媒支持体中及び/又は触媒支持体上にコバルト化合物を導入する工程と、
含浸支持体を焼成してコバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を得る工程と、
を含む。
【0011】
触媒支持体上及び/又は触媒支持体中へのカルボン酸の導入は、含浸によるものであってもよい。触媒支持体中及び/又は触媒支持体上へのコバルト化合物の導入も含浸によるものであってもよい。
【0012】
触媒支持体中及び/又は触媒支持体上への式(1)に基づくカルボン酸の導入は、触媒支持体中及び/又は触媒支持体上へのコバルト化合物の導入と同時に行ってもよいことを理解されたい。カルボン酸の導入及びコバルト化合物の導入が含浸によるものである場合、支持体へのカルボン酸の含浸は、このように支持体へのコバルト化合物の含浸と同時に行うことになる。その後、一般的な担体液体又は溶媒を使用することが好ましい。支持体は、以下に記載のように無機改質剤を含有する改質支持体であってもよい。
【0013】
得られたFTS触媒前駆体を、還元によってFTS触媒に転換させた場合、触媒は高いFTS活性を有することが驚くべきことに判明した。先に明記したように、支持体表面積に対して低い投与割合でカルボン酸を用いたときでさえ、式(1)を有するカルボン酸を用いることによって、高度のコバルト(金属及び/又は酸化物)分散及び活性が触媒中に得られることがさらに驚くべきことに判明した。さらに、より低い投与レベルの有機酸を使用すると、有機酸の酸化が原因で乾燥触媒の焼成中に観察される発熱反応が減少することになる。
【0014】
したがって、先に述べたように、支持体表面積に対する使用したカルボン酸の量の割合は、少なくとも0.3μmolカルボン酸/m支持体表面積でなければならないが、支持体表面積に対する使用した最高数量のカルボン酸を10μmolカルボン酸/m支持体表面積に通常は制限できることを本出願人は発見した。したがって、支持体表面積に対する使用したカルボン酸の量は、0.3〜10μmolカルボン酸/m支持体表面積、好ましくは0.3〜4.4μmolカルボン酸/m支持体表面積、より好ましくは0.3〜3.75μmolカルボン酸/m支持体表面積の範囲であってもよい。さらにより具体的には、支持体表面積に対する使用したカルボン酸の量の割合は、1.25〜3.75μmolカルボン酸/m支持体表面積であってもよい。
【0015】
支持体は、未改質支持体、すなわち無機改質剤を含有しない支持体であってもよい。しかしながら、代わりに、支持体は、無機改質剤を含有する改質支持体であってもよい。無機改質剤は、特に、コバルト含浸中の水性環境への溶解に対して又はフィッシャートロプシュ合成中の熱水作用に対して触媒支持体の不活性を増大させる元素周期表の元素、及び/又は支持体の細孔容積を改質する元素周期表の元素であってもよい。したがって、無機改質剤は、Si、Co、Ce、Cu、Zn、Ba、Ni、Na、K、Ca、Sn、Cr、Fe、Li、Tl、Sr、Ga、Sb、V、Hf、Th、Ge、U、Nb、Ta、W、La、Zr及びZnとその混合物からなる群から選択することができる。本発明の好ましい一実施形態では、無機改質剤はSiであってよい。
【0016】
触媒支持体は、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、シリカ(SiO)、マグネシア(MgO)、シリカ−アルミナ、又はその混合物であってもよい。シリカ−アルミナが好ましく、シリカ−アルミナのシリカ含有量は10wt%未満であることが好ましい。
【0017】
支持体表面積は、標準BET分析を用いて決定することができる。
【0018】
カルボン酸に関して、R1及びR2は、それぞれ水素及び炭化水素からなる群から選択されることが好ましい。炭化水素は、アルキルであることが好ましい。より具体的には、アルキルは、6個以下の炭素原子を有するものであってもよく、好ましくは3個以下の炭素原子を有するものであってもよい。本発明の好ましい実施形態では、アルキルはメチルであってもよい。
【0019】
本発明の一見解では、R1又はR2の少なくとも一方は、水素であってもよい。本発明の一実施形態では、R1とR2のどちらもその場合水素であってもよい。別の実施形態では、R1は水素であってもよいが、R2はアルキル、好ましくはメチルであってもよい。
【0020】
本発明の一実施形態では、C原子は、二重結合を用いて互いに結合することができる。R1及びR2は、その場合互いに対してトランスに位置することができる。或いは、しかしながら、R1及びR2は、互いに対してシスに位置することができる。
【0021】
基本的には、式(1)に適合する任意の多官能性カルボン酸又は無水物などのその前駆体を使用することができる。適当なカルボン酸の非限定的な例は、マレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、及びフマル酸である。適当な酸前駆体の例は、無水マレイン酸である。式(1)の酸又はその前駆体の混合物も使用でき、同様に式(1)の酸又はその前駆体と式(1)に適合しない酸、又はその前駆体との混合物も使用することができる。
【0022】
触媒支持体に還元促進剤をさらに含浸させることもできる。還元促進剤は、Pt、Pd又はRu、又はその混合物であってもよい。還元促進剤の含浸は、触媒支持体中及び/又は触媒支持体上へのカルボン酸の導入、及び/又は支持体へのコバルト化合物の含浸と同時に行うことができる。
【0023】
本発明の方法は、カルボン酸を含有する支持体を乾燥させる工程も含んでもよい。乾燥は、支持体にコバルト化合物を含浸させる前に行うことができる。
【0024】
コバルト化合物は、コバルト塩であってもよい。コバルト塩は、特に、硝酸コバルト、より好ましくはCo(NO6HOであってもよい。
【0025】
コバルト化合物は、初期湿潤法を用いて支持体上及び/又は支持体中に含浸させることができる。或いは、コバルト化合物は、スラリー含浸を用いて支持体上及び/又は支持体中に含浸させることができる。
【0026】
本発明の方法は、含浸支持体を焼成する前に、コバルト化合物を含浸させた支持体を少なくとも部分的に乾燥させる工程を含んでもよい。
【0027】
触媒前駆体は、2回以上、例えば2回、又はさらには数回のコバルト化合物の含浸、乾燥及び焼成工程を用いて調製することができる。次いで、カルボン酸は、先に説明したように、最初のかかる含浸、乾燥及び焼成工程中に導入することの他に、少なくとも1回、又はそれぞれの、その後の含浸、乾燥及び焼成工程中に加えることもできる。
【0028】
一般に、コバルト化合物の含浸は、準大気圧で行うことができる。コバルト化合物を含浸させた支持体の乾燥は、準大気圧で行うことが好ましい。
【0029】
より具体的には、支持体へのコバルト化合物及びカルボン酸の含浸と少なくとも部分的な乾燥は、以下のように、
第1の含浸工程では、触媒支持体へのコバルト化合物及びカルボン酸の含浸とその部分的な乾燥が起こり、それによって部分的に乾燥させた含浸触媒支持体が得られるように、40℃≦T1≦95℃の温度T1及び大気圧>P1≧5kPa(a)の範囲の準大気圧P1で、触媒支持体にコバルト化合物及びカルボン酸を含有する溶液による処理を施すこと、
部分的に乾燥させた含浸支持体を焼成すること、
第2の含浸工程では、改質触媒支持体へのコバルト化合物の含浸とその部分的な乾燥が起こり、それによって部分的に乾燥させた含浸触媒支持体が得られるように、40℃≦T1≦95℃の温度T1及び大気圧>P1≧5kPa(a)の範囲の準大気圧P1で、焼成した含浸触媒支持体にコバルト化合物を含有する溶液による処理を施すこと、並びに
部分的に乾燥させた含浸支持体を焼成すること
で行うことができる。
【0030】
カルボン酸の導入は、第1の含浸工程中の他にも、第2の含浸工程中及び/又はその後の他の含浸工程中にさらに行うことができる。
【0031】
含浸工程の一方又は両方の間に、本発明の方法は、触媒前駆体の希釈性を高められるドーパントとしてPt、Pd、若しくはRuの水溶性前駆体塩、又はその混合物を加えることを含んでもよい。
【0032】
焼成は、流動床中、又はロータリーキルン中で通常行う。最高焼成温度は、200℃〜400℃、より好ましくは200℃〜300℃であってもよい。より具体的には、触媒前駆体を得るために、焼成条件は、実質的に全ての還元し得るコバルトが焼成状態で存在するように選択することができる。
【0033】
流動床焼成を用いる場合及び流動化媒体に空気を用いる場合、式(1)の多官能性カルボン酸(マレイン酸であってもよい)を含有する触媒前駆体、又はその前駆体の焼成中の空気の空間速度は、0.7〜13.5m/(kg Co(NO6HO)/時、より好ましくは0.9〜6.8m/(kg Co(NO6HO)/時、及び最も好ましくは4.1〜6.8m/(kg Co(NO6HO)/時であってもよい。
【0034】
式(1)の多官能性カルボン酸(マレイン酸であってもよい)を含有する触媒前駆体、又はその前駆体の焼成中の加熱速度は、0.1〜10℃/分、好ましくは0.5〜5℃/分、最も好ましくは0.8〜3℃/分であってもよい。
【0035】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に基づく方法によって得た触媒前駆体を還元し、それによってフィッシャートロプシュ合成触媒を得ることを含む、フィッシャートロプシュ合成触媒を製造するための方法を提供している。
【0036】
触媒前駆体は、250℃〜550℃の範囲の温度、好ましくは約300℃〜約425℃で、好ましくは0.5時間〜約24時間の範囲の期間、及び好ましくは周囲大気〜約40気圧の範囲の圧力で、触媒前駆体と純粋な水素又は水素を含有するガス状混合物とを接触させることによる還元によって活性化させることができる。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、水素と一酸化炭素のフィッシャートロプシュ反応を用いて、180℃〜250℃の高温及び10〜40バールの高圧で水素(H)及び一酸化炭素(CO)を含む合成ガスと本発明の第2の態様の方法によって生成したフィッシャートロプシュ合成触媒とを接触させることを含む、炭化水素の製造方法を提供している。
【0038】
本発明を、以下の非限定的な実施例に関して、並びに触媒1〜11(図1)及び触媒14〜22(図2)に関するCoクリスタリットサイズ対触媒支持体への有機酸の投与量のプロットを示す添付図(図1及び2)に関して、今回さらに詳細に説明する。
【0039】
実施例1−比較触媒1の調製
参照により本明細書に組み込む、米国特許第5733839号、米国特許第6638889号、及び米国特許第6455462号に一般に開示されているように、水性スラリー相含浸及び乾燥、その後に直接流動床焼成を用いて、30g Co/0.075g Pt/100g(1.5g Si/100g プラロックス(Puralox)SCCa 2/150)スラリー相フィッシャートロプシュ合成(「FTS」)触媒を、粒状改質1.5g Si/100g プラロックス SCCa 2/150(商標)予備成形支持体上に調製した。プラロックスSCCa 2/150は、純粋な予備成形されたγ−アルミナ粒状触媒支持体であり、ベーマイトの焼成によって調製されている。しかしながら、この場合、支持体は、その製造中に改質されたため、1.5g Si/100g支持体を含有していた。この製造に関して、使用した手順は、米国特許第6638889号の実施例1に記載されている通りであった。
【0040】
特に、触媒は、以下のようにして調製した。
Co(NO6HO 43.70gを蒸留水40mlに溶解し、60℃及び大気圧でロートベーパー中の500ml丸底フラスコに入れたこの溶液にPt(NH(NO 0.024g(蒸留水10mlに溶解させたもの)を加え、その後1.5g Si/100g プラロックスSCCa 2/150改質予備成形支持体50.0gを溶液に加えた。以下の手順を用いて水性スラリー相含浸及び真空乾燥を行った。
【表1】

【0041】
この真空乾燥中間体を、以下の手順に従って直接流動床焼成工程にかけた。
・空気の空間速度2.3m/(kg Co(NO6HO)/時、連続空気流量1.7dm/分
・温度プログラム:1℃/分で25℃〜250℃まで、250℃で6時間保持
【0042】
この中間体焼成物質50.0gを、以下の第2のコバルト/白金含浸及び焼成工程にかけた。
【0043】
Co(NO6HO 23.51gを蒸留水40mlに溶解し、60℃及び大気圧でロートベーパー中の500ml丸底フラスコに入れたこの溶液にPt(NH(NO 0.039g(蒸留水10mlに溶解させたもの)を加え、前の第1のコバルト/白金含浸及び焼成中間体50.0gを加えた。以下の手順を用いて水性スラリー相含浸及び真空乾燥を行った。
【表2】

【0044】
この真空乾燥中間体を、以下の手順に従って直接流動床焼成工程にかけた。
・空気の空間速度4.3m/(kg Co(NO6HO)/時である、連続空気流量1.7dm/分
・温度プログラム:1℃/分で25℃〜250℃まで、250℃で6時間保持
【0045】
実験室規模スラリー相連続撹拌タンク形反応器(「CSTR」)フィッシャートロプシュ合成(FTS)試験の調製では、この焼成材料を以下の手順に従って還元し、蝋を被覆させた。
【0046】
触媒8.0gを純粋なH(空間速度=2.0H/(kg触媒)/時)中1バールで還元しながら、温度を1℃/分の速度で25℃〜425℃まで上昇させ、その後この425℃の温度で16時間温度を一定に保った。
【0047】
還元した触媒を室温まで冷まして置き、その段階で水素をアルゴンと置き換え、触媒をアルゴンブランケットの保護下で溶けたフィッシャートロプシュ蝋中に取り出した。次いでこの蝋が被覆した触媒をスラリー反応器に移した。
【0048】
実施例2−触媒2〜10の調製
表1に示してあるように、指定量のカルボン酸を、いずれの場合にも乾燥より前の第1の含浸工程(表1)中に硝酸コバルト/硝酸白金水溶液に加えた点以外は、実施例1に記載されている手順に従って、触媒2〜10、全ての組成物30g Co/0.075g Pt/100g(1.5g Si/100g プラロックス SCCa 2/150)を調製した。第2の含浸工程中、カルボン酸を少しも加えなかった。触媒2〜8は、本発明に基づいている。触媒9及び10は、比較である。加えたそれぞれの酸の量は、表1に示している。
【0049】
実施例3−比較触媒11の調製
シリカ改質アルミナ支持体を、硝酸コバルト含浸の前にシュウ酸二水和物で最初に改質した点以外は、実施例1に記載されている手順に従って、触媒11を調製した。水100ml中でシュウ酸二水和物2.72gとシリカ改質支持体50gを混合することによって支持体を改質した。次いで減圧下にロータリーエバポレータ上で水を蒸発させて、自由に流れる粉体を得た。次いで実施例1に記載しているように有機改質支持体を使用した。
【0050】
実施例4−本発明に基づく触媒12の調製
第1と第2の両方の焼成中に加熱速度3℃/分を用いて触媒を焼成した点以外は、実施例2に記載されている手順に従って、触媒12を調製した。
【0051】
実施例5−本発明に基づく触媒13の調製
シリカ改質アルミナ支持体を、硝酸コバルト含浸の前にマレイン酸で最初に改質した点以外は、実施例1に記載されている手順に従って、触媒13を調製した。水100ml中でマレイン酸2.5gとシリカ改質支持体50gを混合することによって支持体を改質した。次いで減圧下にロータリーエバポレータ上で水を蒸発させて、自由に流れる粉体を得た。次いで実施例1のように有機改質支持体を使用した。
【0052】
実施例6−触媒14〜22の調製
表2に示してあるように、指定量のカルボン酸を、いずれの場合にも乾燥より前の第1の含浸工程中に硝酸コバルト/硝酸白金水溶液に加えた点以外は、実施例1に記載されている手順に従って、触媒14〜22、全ての組成物16g Co/0.025g Pt/100g(1.5g Si/100g プラロックス SCCa 2/150)を調製した。第1の含浸及び焼成工程の後に触媒調製を停止し、すなわち第2の含浸及び焼成工程を実行しなかった。この方法では、コバルト使用量(loading)を16g Co/100g Alに保持した。加えたそれぞれの酸の量は、表2に示している。
【0053】
実施例7−触媒23の調製
空気の空間速度6.5m/(kg Co(NO6HO)/時である、空気流量4.8dm/分を焼成中に使用した点以外は、実施例6に記載されている手順に従って、組成物16g Co/0.025g Pt/100g(1.5g Si/100g プラロックス SCCa 2/150)の触媒23を調製した(表2参照)。
【0054】
【表3】

【0055】
吸着を用いてMicromeritics Tristar 3000測定器で標準的な表面積測定を行った。測定は、77Kで行った。試料約0.25gを乾燥し、終夜窒素流下200℃で脱ガスしてから分析した。表面積は、ブルナウアーエメットテラー(BET)表面積として計算した。
【0056】
【表4】

【0057】
調製した触媒を分析して、触媒の平均Coクリスタリットサイズを触媒のカルボン酸付加レベルの関数として決定した。これは、Philips X’Pert Pro多目的回折計で行った。
【0058】
触媒上のCoクリスタリットの平均Coクリスタリットサイズ(nm)をXRDによって決定し、図1及び図2にμmol有機酸/m支持体表面積の関数としてプロットしている。図中、平均Coクリスタリットサイズが小さい程、クリスタリットの分散の度合いが高くなっている。以下に触媒5及び6で示されているように、分散の増大及びそれ故に活性金属表面積によって触媒活性の増大がもたらされる。結果を表1及び2にも示している。
【0059】
CSTRフィッシャートロプシュ合成試験:
2つの実施例2の有機酸改質触媒、すなわち触媒5及び6、並びに実施例1の比較触媒、すなわち触媒1についてスラリー相CSTRフィッシャートロプシュ合成試験を行った。以下のフィッシャートロプシュ合成反応条件を維持した。
反応器温度 : 230.0℃
反応器圧力 : 17バール
触媒残留量(inventory) : 約6グラム
(H+CO)転化率 : 60%
:CO入口比 : 1.9:1
アルゴン内部標準 : 12体積%
【0060】
カルボン酸としてマレイン酸を使用して本発明に基づいてこのように調製した触媒5及び6(表1参照)は、上記の反応条件下で6日間のFTS活性の後に非有機酸改質触媒(触媒1)と比較して活性が51%及び37%高められた。したがって、式(1)に基づくカルボン酸の使用により、触媒性能が増大する。それぞれ10.5nm及び9.3nmであった、触媒5及び6のCoクリスタリットサイズも、触媒1のCoクリスタリットサイズ(16.0nm)よりも明らかに小さかった。
【0061】
一般式(1)を有する多官能性カルボン酸を用いており、したがって本発明に基づく場合、Coクリスタリットサイズは一般に、m表面積支持体当り同じモル量のカルボン酸を用いているとき、式(1)に適合せず、したがって本発明に基づかない有機酸を用いて調製した触媒のものよりも小さいことが表1及び2からさらに明らかである。したがって、触媒6及び8では、クリスタリットサイズはそれぞれ9.3nm及び9.6nmであるが、比較触媒9、10及び11(式(1)に適合しない当モル量のカルボン酸を用いて生成した)では、クリスタリットサイズはそれぞれ11.0nm、13.6nm及び13.5nmで明らかにより高い。触媒6及び8は、このように触媒10、11及び12よりも明らかに高い活性を有することになる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】触媒1〜11に関するCoクリスタリットサイズ対触媒支持体への有機酸の投与量のプロットを示す添付図である。
【図2】触媒14〜22に関するCoクリスタリットサイズ対触媒支持体への有機酸の投与量のプロットを示す添付図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を製造する方法であって、
一般式(1):
HOOC−C−COOH (1)
[式中、C及びC中のいずれのCもsp炭素であり、R及びRは、同じ又は異なり、それぞれが水素及び有機基からなる群より選択される。]
を有する多官能性カルボン酸又はその前駆体を、粒状の触媒支持体中及び/又は触媒支持体上に、前記支持体の表面積に対する使用した前記多官能性カルボン酸の割合が少なくとも0.3μmolカルボン酸/m支持体表面積となるように導入する工程と、
前記触媒支持体中及び/又は触媒支持体上への前記カルボン酸の導入と同時に、或いはその後に、前記触媒支持体中及び/又は触媒支持体上にコバルト化合物を導入する工程と、
前記含浸支持体を焼成して前記コバルト系フィッシャートロプシュ合成触媒前駆体を得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒支持体中及び/又は触媒支持体上への前記カルボン酸及び前記コバルト化合物の導入が含浸によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記支持体表面積に対する使用したカルボン酸の量の割合が、0.3〜10μmolカルボン酸/m支持体表面積の範囲である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持体表面積に対する使用したカルボン酸の量の割合が、1.25〜4.4μmolカルボン酸/m支持体表面積の範囲である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸に関して、R及びRが選択される群の前記有機基が、炭化水素である、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カルボン酸に関して、R及びRが選択される群の前記炭化水素が、アルキルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボン酸に関して、R及びRが選択される群の前記アルキルが、メチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記カルボン酸に関して、前記C原子が二重結合を用いて互いに結合している、請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記カルボン酸がマレイン酸である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒支持体に還元促進剤をさらに含浸させ、前記還元促進剤の含浸を、前記触媒支持体中及び/又は触媒支持体上への前記カルボン酸の導入、及び/又は前記支持体への前記コバルト化合物の含浸と同時に行う、請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記支持体に前記コバルト化合物を含浸させる前に、前記カルボン酸を含有する支持体を乾燥させる工程を含む、請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記含浸支持体を焼成する前に、前記コバルト化合物を含浸させた前記支持体を少なくとも部分的に乾燥させる工程を含む、請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2回の連続的なコバルト化合物含浸、少なくとも部分的な乾燥、及び、焼成工程を行う、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記カルボン酸を、かかる最初の含浸、少なくとも部分的な乾燥、及び、焼成工程中に導入することの他に、その後の含浸、少なくとも部分的な乾燥、及び、焼成工程中の少なくとも1回又はそれぞれにおいても加える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コバルト化合物の含浸を準大気圧で行い、前記コバルト化合物を含浸させた前記支持体の前記少なくとも部分的な乾燥も同様である、請求項13又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記焼成を200℃〜400℃の温度の流動床中で行い、流動化媒体に空気を用いる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記移動床での焼成中に、空気の空間速度が0.7〜13.5m/(kg Co(NO6HO)/時である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
焼成中の加熱速度が0.1〜10℃/分である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
フィッシャートロプシュ合成触媒を製造する方法であって、請求項1〜18いずれか一項に記載の方法によって得られる触媒前駆体を還元し、それによって前記フィッシャートロプシュ合成触媒を得る工程を含む、方法。
【請求項20】
180℃〜250℃の高温及び10〜40バールの高圧で水素(H)及び一酸化炭素(CO)を含む合成ガスを、請求項19に記載の方法によって生成されるフィッシャートロプシュ合成触媒と接触させる工程を含む、前記水素と前記一酸化炭素のフィッシャートロプシュ反応を用いる、炭化水素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−519308(P2011−519308A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504577(P2011−504577)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/IB2009/051407
【国際公開番号】WO2009/127990
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(500159211)サソール テクノロジー(プロプライエタリー)リミテッド (25)
【Fターム(参考)】