説明

触覚センサー素子、触覚センサー装置、把持装置および電子機器

【課題】簡略な構成で剪断力の測定が可能な触覚センサー素子を提供すること。
【解決手段】第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bを有する基板11と、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bを覆う支持膜12と、支持膜12上、かつ第一の開口部111Aの上方に配置された第一の検出部13Aと、支持膜12上、かつ第二の開口部111Bの上方に配置された第二の検出部13Bと、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bの上に配置された弾性部材16と、を備え、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bのそれぞれは、圧電積層部14を備え、弾性部材16は、基板11の厚み方向で見た平面視で、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとに挟まれる領域の支持膜12上を覆い、弾性部材16表面は、基板11面と平行に形成されている触覚センサー素子10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚センサー素子、この触覚センサー素子を備えた触覚センサー装置、この触覚センサー装置を備えた把持装置およびこの触覚センサー装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットのアームなどにより、重量や摩擦係数が未知である対象物を把持して持ち上げる把持装置が知られている。このような把持装置では、対象物を破損することなく、かつ対象物を滑り落とすことなく把持するためには、把持面に対して直交する方向に作用する力(正圧)と、把持面の面方向(剪断方向)に作用する力(剪断力)を検出する必要があり、これらの力を検出するセンサーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載の触覚センサーは、センサー基板に開設される開口の縁部から延伸するカンチレバー構造の構造体を有し、この構造体は、平板状の感応部と、感応部とセンサー基板とを連結するヒンジ部とから構成される。そして、この構造体の感応部には導電性磁性体膜が形成され、ヒンジ部には、ピエゾ抵抗膜が形成され、導電性磁性体膜とピエゾ抵抗膜とが導通している。また、ヒンジ部には電極が設けられ、圧力によりヒンジ部が曲がることで、ヒンジ部のピエゾ抵抗で発生する電流が電極から流れる構成となっている。そして、この触覚センサーは、センサー基板上に上記のような構造体が複数形成され、これらの構造体のうち一部がセンサー基板に対して起立し、他の一部がセンサー基板に対して平行に保持されている。また、このセンサー基板上には、弾性体が配置され、起立した構造体は、弾性体に埋め込まれている。そして、起立した構造体により剪断力が測定可能となり、基板面に平行な構造体により正圧が測定可能となる。
【0004】
このような触覚センサーを製造するためには、センサー基板の表面に熱拡散法などによりP型抵抗領域を形成し、スパッタリングにより導電性磁性体層をパターニングする。そして、導電性磁性体層をマスクとして、イオンエッチングにより不純物層およびSi層を除去し、さらにヒンジ部の表面に形成される導電性磁性体膜をエッチングし、この後、反応性イオンエッチングなどにより、構造体の外形を成形する開口を形成する。そして、センサー基板の裏面側から磁場を加えることで、複数の構造体の一部を起立させ、触覚センサーを製造する。
【0005】
また、特許文献2には、カンチレバーを含むセンサー素子を複数備える触覚センサーが記載されている。特許文献2の触覚センサーの当該カンチレバーは、結晶シリコン膜にホウ素をドーピングして当該結晶シリコン膜にドープ層とノンドープ層とを形成し、両層の境界面において格子定数の差に起因して生ずる歪みを緩和させる際に当該シリコン膜が湾曲する性質を利用して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−208248号公報
【特許文献2】特開2009−294140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述の特許文献1や特許文献2に記載のような触覚センサーでは、カンチレバー構造の構造体を起立させた複雑な立体構造を有している。そして、その製造においても、特許文献1では、磁場を加えてカンチレバー構造の構造体を湾曲させたり、特許文献2では、ドーピングによって結晶シリコン膜を湾曲させたりするなど、複雑な製造工程を有し、生産性が悪いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みて、簡略な構成で剪断力の測定が可能な触覚センサー素子、この触覚センサー素子を備えた触覚センサー装置、この触覚センサー装置を備えた把持装置およびこの触覚センサー装置を備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の触覚センサー素子は、第一の開口部および第二の開口部を有する基板と、前記第一の開口部および前記第二の開口部を覆う支持膜と、前記支持膜上、かつ前記第一の開口部の上方に配置された第一の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第二の開口部の上方に配置された第二の検出部と、前記第一の検出部および前記第二の検出部の上に配置された弾性変形する弾性部材と、を備え、前記第一の検出部および前記第二の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、前記弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、前記弾性部材の表面は、前記基板面と平行に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明では、触覚センサー素子に対して、弾性部材側から押圧力が付与され、その状態からさらに前記基板面に沿う方向に剪断力が付与されると、弾性部材は、当該剪断力の方向に弾性変形する。この際、弾性部材には、基板厚さ方向の断面視で、基板とは反対方向に引っ張られる引張力が加わる領域や、基板方向へさらに押し下げられる圧縮力が加わる領域が、当該剪断力の加わる向きに応じて生じる。ここで、当該剪断力の加わる向きを+X方向、それとは反対の向きを−X方向とすると、+X方向側の弾性部材の領域には、圧縮力が加わり、−X方向側の弾性部材の領域には、引張力が生じる。
引張力が加わる領域で弾性部材に覆われている検出部では、支持膜にも引張力が加わり、支持膜が押圧されていない状態に戻ろうとする。一方、圧縮力が加わる領域で弾性部材に覆われている別の検出部では、支持膜にも圧縮力が加わり、支持膜がさらに撓もうとする。
このように弾性部材の領域に応じて各検出部の支持膜の変位方向が反対方向になるので、各検出部の圧電積層部から出力される電気信号(電圧)の極性の正負が逆の関係になる。検出部ごとに電気信号を出力させ、当該電気信号の極性の正負を読み取ることで、剪断力の方向を判定することができる。
【0011】
さらに、この発明では、基板の厚み方向で見た平面視において、第一の検出部および第二の検出部の上に配置された弾性部材は、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆う。そのため、弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、当該弾性部材に覆われている検出部に対して加わり易くなる。特に、第一の検出部と第二の検出部とを結ぶ線分方向に剪断力が付与されると、当該線分上の検出部に対して引張力又は圧縮力が加わり易いので、支持膜の変位が大きくなり、当該電気信号の出力が大きくなる。
また、本発明の触覚センサー素子において、弾性部材の表面は、基板面と平行に形成されているので、弾性部材が押圧されて剪断力が加わった時に、当該弾性部材が当該基板面と平行を維持して変形するようになる。そのため、検出部に対して弾性部材から局所的に引張力又は圧縮力が加わるのを防止できる。なお、本発明において、当該弾性部材の表面が当該基板面と平行というときは、厳密に平行である場合に限られない。弾性部材の変形時に検出部に対して局所的に引張力又は圧縮力が加わるのを防止できるような角度で形成されている場合も当該平行に含まれる。例えば、基板面と弾性部材の表面とが10度程度の角度を成している場合も、当該平行に含まれる。
【0012】
したがって、このような触覚センサー素子を、対象物が接触する接触面に設けることで、触覚センサー素子から出力される電気信号により、接触した対象物から接触面に付与される剪断力の方向を判定できる。また、電気信号の大きさから、剪断力の大きさを演算することができる。
よって、本発明の触覚センサー素子は、基板上に支持膜、圧電積層部、および弾性部材を積層するだけの構成であるため、簡略な構成でありながら剪断力の測定が可能である。
さらに、本発明の触覚センサー素子は、例えば磁場を加えて一部の構成を加工するなどの煩雑な製造工程が不要であり、各構成を積層するだけの簡単な方法により製造できる。それゆえ、触覚センサー素子の生産性が良好となり、製造に要するコストも低減できる。
また、例えばカンチレバー形状の構造体を立設させる構成では、構造体を立設させる分、厚み寸法が増大する。しかし、本発明では、基板上に支持膜、圧電積層部、および弾性部材を積層する構成であるため、厚み寸法の増大を抑えることができ、触覚センサー素子の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の触覚センサー素子では、前記基板の厚み方向で見た平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置していることが好ましい。
【0014】
この発明では、基板の厚み方向で見た平面視において、弾性部材の重心は、第一の開口部の重心と第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置している。そのため、弾性部材の重心を通るある直線であって、第一の開口部の重心と第二の開口部の重心とを結ぶ線分とは重ならない直線を挟んで、第一の開口部上の第一の検出部および第二の開口部上の第二の検出部が位置する。そうすると、当該直線の手前側から奥側へと向かう剪断力に対して、圧縮力が加わる弾性部材の領域と引張力が加わる弾性部材の領域に検出部がそれぞれ配置されていることになり、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。その結果、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
【0015】
本発明の触覚センサー素子では、前記第一の開口部および前記第二の開口部は、前記基板の厚み方向で見た平面視において前記弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置されていることが好ましい。
【0016】
この発明では、第一の開口部および第二の開口部が、基板の厚み方向で見た平面視における当該弾性部材の重心を通る直線に対して、線対称に配置されている。そのため、圧縮力が加わる弾性部材の領域と引張力が加わる弾性部材の領域に検出部がそれぞれバランスよく配置されていることになる。その結果、第一の検出部の電気信号の極性と第二の検出部の電気信号の極性との判別がより明確になり、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
【0017】
本発明の触覚センサー素子では、前記基板は、さらに第三の開口部および第四の開口部を有し、前記支持膜は、さらに前記第三の開口部および前記第四の開口部を覆い、前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、をさらに備え、前記第三の検出部および前記第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部は、前記第一の開口部の重心および前記第二の開口部の重心を結ぶ第一の線分と前記第三の開口部の重心および前記第四の開口部の重心を結ぶ第二の線分とが交差するように配置され、前記弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第三の検出部と前記第四の検出部とを頂点とする4角形領域の支持膜の上を覆い、前記平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の線分と前記第二の線分との交点に位置していることが好ましい。
【0018】
この発明では、第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部および第四の開口部の4つの開口部について、第一の線分および第二の線分が交差するように配置されている。弾性部材は、このような4つの開口部の上方に形成されている、第一の検出部、第二の検出部、第三の検出部および第四の検出部に対して、上記所定の位置関係でこれらを覆うように配置されている。そのため、弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、4つの検出部に対して加わり易くなる。
さらに、平面視における弾性部材の重心は、前記平面視における、前記第一の線分と、前記第二の線分との交点に位置している。そのため、4つの検出部が、上下左右および斜め方向の剪断力を検出可能な位置に配置されている。
よって、この発明では、斜め方向を含む多方向の剪断力を測定できる。
【0019】
本発明の触覚センサー素子では、前記基板は、さらに第三の開口部および第四の開口部を有し、前記支持膜は、さらに前記第三の開口部および第四の開口部を覆い、前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、をさらに備え、前記第三の検出部および第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部は、前記第一の開口部の重心および前記第三の開口部の重心を結ぶ第三の線分と、前記第二開口部の重心および前記第四の開口部の重心を結ぶ第四の線分とが離間するように配置され、前記弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第三の検出部と前記第四の検出部とを頂点とする4角形領域の支持膜の上を覆い、前記平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記4角形領域に位置し、前記第一の検出部および前記第三の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ前記第二の検出部および前記第四の検出部は、電気的に直列に接続されていることが好ましい。
【0020】
この発明では、第一の開口部、第二の開口部、第三の開口部および第四の開口部の4つの開口部について、第三の線分および第四の線分が離間するように配置されている。弾性部材は、このような4つの開口部の上方に形成されている、第一の検出部、第二の検出部、第三の検出部および第四の検出部に対して、上記所定の位置関係でこれらを覆うように配置されている。そのため、弾性部材の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、4つの検出部に対して加わり易くなる。
さらに、第一の検出部および第三の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ第二の検出部および第四の検出部は、電気的に直列に接続されている。そのため、第一の検出部および第三の検出部から出力される電気信号、並びに第二の検出部および第四の検出部から出力される電気信号は、どちらも加算値となる。よって、1つずつの検出部から出力される場合と比べて、電気信号が大きくなり、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
【0021】
本発明の触覚センサー素子では、前記弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記弾性部材よりも剛性が大きい剛性層が配置されていることが好ましい。
【0022】
この発明では、弾性部材の表面に剛性層が配置されているので、剛性層に対して接触物が接触して剪断力が加わると、その剪断力が弾性部材に対して局所的に伝達されることを防止できる。つまり、弾性部材における上述の圧縮力又は引張力が各検出部に対してより確実に加わるようにすることができる。その結果、触覚センサー素子の剪断力の測定精度が向上する。
【0023】
本発明の触覚センサー装置は、上述の本発明の触覚センサー素子と、前記第一の検出部および前記第二の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この発明では、上述したように、本発明の触覚センサー素子は、簡略な構成でありながら剪断力の検出が可能である。そして、触覚センサー装置では、処理部が検出部ごとの電気信号に基づき、前記弾性部材に作用する剪断力を判定するので、簡略な構成でありながら、正確な剪断力の測定が可能となる。
【0025】
また、本発明の触覚センサー装置は、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備えることが好ましい。
【0026】
この発明では、4つの検出部が多方向の剪断力を検出可能に配置されており、処理部が、4つの検出部からの電気信号を個別に受信する。そのため、この発明では、斜め方向を含む多方向の剪断力を正確に測定できる。
【0027】
また、本発明の触覚センサー装置は、前記第一の検出部および前記第三の検出部からの電気信号と、前記第二の検出部および前記第四の検出部からの電気信号とを受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備えることが好ましい。
【0028】
この発明では、検出部は、電気的に直列に接続され、処理部が、第一の検出部および第三の検出部から出力される電気信号の加算値および第二の検出部および第四の検出部から出力される電気信号の加算値を個別に受信する。そのため、この発明では、加算されて大きくなった電気信号の極性に基づいて、剪断力をより正確に測定できる。
【0029】
本発明の把持装置は、上述の本発明の触覚センサー装置を備えて、対象物を把持する把持装置であって、前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサー装置が設けられる少なくとも一対の把持アームと、前記触覚センサー装置から出力される前記電気信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
この発明では、上述したように、触覚センサー装置により、把持の対象物を把持した際の剪断力を計測することで、対象物が把持アームから滑り落ちている状態であるか、把持されている状態であるかを計測することが可能となる。すなわち、対象物を把持する動作において、対象物を十分に把持できていない状態では、動摩擦力に応じた剪断力が働き、把持力を強めるほど、この剪断力も大きくなる。一方、把持力を強め、静摩擦力に応じた剪断力が検出される状態では、対象物の把持が完了した状態であり、把持力を強めた場合でも静摩擦力は一定であるため、剪断力も変化しない。したがって、例えば、対象物の把持力を徐々に増加させ、剪断力が変化しなくなった時点を検出することで、対象物を破損させることなく、最低限の把持力のみで対象物を把持することができる。
また、上述したように、把持装置を構成する触覚センサー装置は、複数の検出部を弾性部材で覆った構成を有するものであり、簡略な構成で、かつ容易に製造可能であるため、このような触覚センサー装置を用いた把持装置においても、同様に簡略な構成とすることができ、製造も容易となる。
【0031】
本発明の電子機器は、上述の本発明の触覚センサー装置を備えたことを特徴とする。
【0032】
この発明では、上述の触覚センサー装置により、接触物が当該接触センサーに接触した際の押圧力や剪断力を測定できる。したがって、本発明の電子機器は、上述の触覚センサー装置により検出される正確な情報に基づいて各種動作を実施することができ、高性能化を図ることができる。
また、上述したように、電子機器が備える触覚センサー装置は、複数の検出部を弾性部材で覆った構成を有するものであり、簡略な構成で、かつ容易に製造可能であるため、このような触覚センサーを用いた電子機器においても、同様に簡略な構成とすることができ、製造も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。
【図2】(A)剪断力が付与される前の第一実施形態に係る触覚センサー装置を示す一部断面図。 (B)剪断力が付与された状態の第一実施形態に係る触覚センサー装置を示す一部断面図。
【図3】第一実施形態に係る触覚センサーの平面視における弾性部材の配置を示す平面図。
【図4】第一実施形態に係る触覚センサーの平面視における弾性部材の外周位置を示す平面図。
【図5】第二実施形態に係る触覚センサー素子を示す平面図。
【図6】第三実施形態に係る触覚センサー素子を示す平面図。
【図7】第四実施形態に係る把持装置の概略構成を示す装置ブロック図。
【図8】第四実施形態に係る把持装置の把持動作における触覚センサーに作用する正圧力および剪断力の関係を示す図。
【図9】第四実施形態に係る制御装置の制御による把持装置の把持動作を示すフローチャート。
【図10】第四実施形態に係る把持装置の把持動作時において、アーム駆動部への駆動制御信号、触覚センサーから出力される検出信号の発信タイミングを示すタイミング図。
【図11】第五実施形態に係る触覚センサー装置を示す平面図。
【図12】第五実施形態に係る近接センサーの概略構成を示すブロック図
【図13】第五実施形態に係るアイロンの概略構成を示すブロック図。
【図14】第五実施形態に係るアイロンの動作を示すフローチャート。
【図15】第六実施形態に係るノート型パソコンの概略構成を示す図。
【図16】参考形態に係る触覚センサー素子を示す平面図。
【図17】(A)実施形態の変形に係る触覚センサー素子を示す平面図。 (B)実施形態の別の変形に係る触覚センサー素子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態の触覚センサーについて、図面に基づいて説明する。
図1は、第一実施形態の触覚センサー装置1の概略構成を示す平面図である。図2は、触覚センサー素子10の概略構成を示す断面図であり、図2(A)は、触覚センサー素子10に対して剪断力が付与されていない状態を示し、図2(B)は、触覚センサー素子10に対して剪断力が付与された状態を示す。
【0035】
〔1.触覚センサーの構成〕
触覚センサー装置1は、触覚センサー素子10と処理部20(図1参照)と、を備えて構成されている。
触覚センサー素子10は、図1および図2に示すように、基板11上に、支持膜12、検出部13、出力部15、弾性部材16、および剛性層17を備える。触覚センサー素子10は、剛性層17に接触物が接触した際に加わる正圧力、および剪断力の検出センサーである。
【0036】
(1−1.基板の構成)
基板11は、例えばSiにより形成され、厚み寸法が例えば200μmに形成されている。この基板11には、図1および図2に示すように、開口部111が複数形成されている。具体的には、図1に示すように、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bが形成されている。基板11の厚み方向から当該基板11を見る平面視(以下、センサー平面視という。)において、四角形状の弾性部材16の各辺近傍の位置に形成されている。より具体的には、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kに対して、左右両側にそれぞれ1つずつ開口部111が形成されている。
【0037】
図3は、弾性部材16と開口部111との位置関係を説明するための平面図であって、センサー平面視と同じ視点から見た状態である。なお、図3において、弾性部材16および開口部111以外の部材や部位は省略している。
弾性部材16の重心Kは、図3に示すように、第一の開口部111Aの重心k1と前記第二の開口部111Bの重心k2とを結ぶ線分を直径とする円C1の内部に位置している。
【0038】
また、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bは、図1に示すように、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kを通る直線L1に対して線対称に配置されている。
また、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bは、図1に示すように、センサー平面視において、弾性部材16の上下方向の略中間に位置する。
【0039】
なお、この開口部111は、センサー平面視において、円形状に形成されているが、例えば多角形状などに形成されていてもよい。また、基板11厚み方向を貫通する開口部111を例示したが、例えば、基板11の弾性部材16側の面(図2(A)、(B)における上側)にエッチング等により凹状溝を形成して開口部111とする構成としてもよい。さらには、基板11上に支持膜12を形成する構成を例示したが、基板11の弾性部材16とは反対側の面(図2の下側)からエッチング等により凹状溝を形成し、溝底部を支持膜12とし溝内部を開口部111とする構成としてもよい。
【0040】
支持膜12は、基板11上に形成されるとともに、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bを覆う。
支持膜12は、図示は省略するが、基板11上に例えば厚み寸法が3μmに成膜されるSiO層と、このSiO層上に積層される厚み寸法が例えば400nmのZrO層との2層構造により形成されている。ここで、ZrO層は、後述する検出部13の焼成形成時に、後述する圧電体141の剥離を防止するために形成される層である。すなわち、圧電体141が例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛:lead zirconate titanate)により形成される場合、焼成時にZrO層が形成されていないと、圧電体141に含まれるPbがSiO層に拡散して、SiO層の融点が下がり、SiO層の表面に気泡が生じ、この気泡によりPZTが剥離してしまう。また、ZrO層がない場合、圧電体141の歪みに対する撓み効率が低下するなどの問題もある。これに対して、ZrO層がSiO層上に形成される場合、圧電体141の剥離、撓み効率の低下などの不都合を回避することが可能となる。
また、以降の説明において、図1に示すようなセンサー平面視において、支持膜12のうち、第一の開口部111Aおよび第二の開口部111Bを閉塞する領域をメンブレン121と称する。
【0041】
(1−2.検出部の構成)
検出部13は、支持膜12上に配置されている。本実施形態では、検出部13は、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bという2つの検出部で構成される。
第一の検出部13Aは、図2に示すように、メンブレン121上、かつ第一の開口部111Aの上方に配置され、第二の検出部13Bは、メンブレン121上、かつ第二の開口部111Bの上方に配置されている。
第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bの上には、弾性部材16が配置されている。第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、共通の弾性部材16で覆われている。
【0042】
各検出部13は、図2に示すように、支持膜12側から順に下部電極142、圧電体141および上部電極143が積層されて構成された圧電積層部14を備える。なお、圧電積層部14は、メンブレン121の下側に接触して形成されていてもよい。
【0043】
圧電体141は、例えばPZTを厚み寸法が例えば500nmとなる膜状に成膜することで形成される。なお、本実施形態では、圧電体141としてPZTを用いるが、膜の応力変化により電荷を発生することが可能な素材であれば、いかなる素材を用いてもよい。このような素材としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)が挙げられる。
【0044】
下部電極142、および上部電極143は、圧電体141の膜厚み方向を挟んで形成される電極であり、下部電極142は、圧電体141のメンブレン121に対向する面に形成され、メンブレン121と接触している。上部電極143は、圧電体141の下部電極142が形成される面とは反対側の面に形成されている。
【0045】
下部電極142は、厚み寸法が例えば200nmに形成される膜状の電極であり、メンブレン121上に形成される。下部電極142としては、導電性を有する導電薄膜であれば、いかなるものであってもよいが、本実施形態では、例えば、Ti/Ir/Pt/Tiの積層構造膜を用いる。
また、上部電極143は、厚み寸法が例えば50nmに形成される膜状の電極である。この上部電極143は、圧電体141の上面を覆って形成される。上部電極143としても、導電性薄膜であれば、いかなる素材を用いてもよいが、本実施形態では、Ir薄膜を用いる。
【0046】
出力部15は、弾性部材16の弾性変形に応じて各検出部13から電気信号を取り出して出力するためのものである。出力部15は、例えば、基板11の外周部に検出部13毎に配置されている。
上述の支持膜12上には、下部電極142の外周部から延出する電極線142Aが形成されている。出力部15は、端子パッドとして形成され、電極線142Aは、当該端子パッドまで引き出され、当該端子パッドから後述する処理部20に接続される。
さらに、支持膜12上には、上部電極143の外周部から延出する電極線(図示略)が形成されている。電極線は、例えば基板11の外周部に検出部13毎に配置される別の端子パッド(図示略)まで引き出され、この別の端子パッドから後述する処理部20に接続される。よって、本実施形態では、出力部は、電極線142A用の端子パッドと、上部電極143の外周部から延出する電極線用の別の端子パッドとで、一対の端子パッドが構成される。そして、一対の端子パッドが、各検出部13のそれぞれに対して配置されている。そのため、触覚センサー素子10では、各検出部13のそれぞれから個別に電気信号が取り出される。
【0047】
弾性部材16は、基板11上に配置され、各検出部13を覆う部材である。
弾性部材16は、直方体状に形成され、センサー平面視において四角形状に形成されている。弾性部材16は、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとに挟まれる領域の支持膜12の上を覆う。そのため、弾性部材16は、センサー平面視において、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13B上だけでなく、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13B同士を結ぶ線分上も覆っている。
弾性部材16の表面は、基板11面と平行に形成されている。なお、ここでの平行についても、上述の説明と同様の考え方である。
弾性部材16は、検出部13の保護膜として機能するとともに、当該弾性部材16に加わる押圧力や剪断力をメンブレン121に伝達して撓ませる。そして、この弾性部材16の撓みにより、メンブレン121が撓むことで、検出部13も撓み、その撓み量に応じた電気信号が出力される。
この弾性部材16としては、本実施形態では、例えばシリコーンゴムを用いるが、これに限定されず、弾性を有する合成樹脂など、その他の弾性素材により形成されるものであってもよい。また、弾性部材16の厚み寸法としては、特に限定されないが、例えば300μmに形成されている。
弾性部材16と基板11とは、図示しない接着層などで接着されていることが好ましい。
【0048】
剛性層17は、弾性部材16の表面を覆い、弾性部材16よりも剛性が大きい層である。この剛性層17は、接触物が接触して剪断方向に変位した際、その剪断力が弾性部材16に対して局所的に伝達されることを防ぐための層である。
剛性層17の表面は、基板11面と平行に形成されている。なお、ここでの平行についても、上述の説明と同様の考え方である。
剛性層17としては、本実施形態では、例えば、アクリル板を用いるが、これに限定されず、剛性を有する合成樹脂や金属など、その他の剛性を有する素材により形成されるものであってもよい。例えば、コーティングを施して、弾性部材16表面に剛性を有する合成樹脂からなる剛性層17を形成しても良い。
また、剛性層17の厚み寸法としては、特に限定されないが、例えば、100μmに形成されている。
弾性部材16と剛性層17とは、図示しない接着層などで接着されていることが好ましい。
【0049】
処理部20は、各検出部13から出力される電気信号を受信し、これに基づいて触覚センサー装置1に付与される押圧力および剪断力を検出する。処理部20は、上述のように各検出部13のそれぞれに対して配置されている一対の端子パッドと接続され、各検出部13のそれぞれから電気信号を受信する。
処理部20は、記憶部21と、演算部22と、を備えている。
記憶部21は、剪断力方向および押圧方向に応じた出力電圧極性パターンや演算部22の各種処理を実施するための各種プログラム等を記憶する。
演算部22は、受信した各検出部13の電気信号(電圧)と、記憶部21に記憶された当該出力電圧極性パターンに基づいて剪断力の方向を判定する。
ここで、出力される電圧の大きさに対する剪断力および押圧力の関係を予め算出しておき、記憶部21に記憶させておくことで、演算部22は、剪断力および押圧力も演算することができる。
【0050】
(2.触覚センサー素子の動作)
次に、上述の触覚センサー素子10の動作について、図面に基づいて説明する。
検出部13においては、剛性層17に押圧力が付与され、さらにその状態で剪断力が所定方向に付与されると、弾性部材16が弾性変形し、メンブレン121がその膜厚方向に変位する。
図2は、触覚センサー素子10に接触物が接触し、矢印P1の方向に応力(剪断力)が加えられた状態を示す図であり、図2(A)は、剪断力が付与される前の状態を示す図であり、図2(B)は、剪断力が付与されて弾性部材16が変形した状態を示す図である。
【0051】
触覚センサー素子10は、図2(B)に示すように、第一の検出部13A側から第二の検出部13B側へ向かう方向(矢印P1の方向)に剪断力が加えられると、メンブレン121が撓んで変位する。
すなわち、剛性層17に矢印P1の方向に剪断力が加えられると、弾性部材16に圧縮力および引張力が発生する。ここで、当該剪断力の矢印P1の先端へ向かう方向を+X方向、それとは反対の向きを−X方向とする。
弾性部材16の第一の検出部13A側(−X方向側)は、矢印P1の方向に向かって伸ばされ、第一の検出部13Aのメンブレン121には、押圧力で下方に押されていた状態から、押圧力が加えられてない状態の位置に戻ろうとする引張力が発生する。つまり、第一の検出部13Aのメンブレン121は、矢印M1方向に変位する。
また、弾性部材16の第二の検出部13B側(+X方向側)は、さらに下方に押圧され、第二の検出部13Bのメンブレン121には、下方への圧縮力が発生する。つまり、第二の検出部13Bのメンブレン121は、矢印M2方向に変位する。
【0052】
このように矢印M1や矢印M2の方向にメンブレン121が変位すると、圧電体141の下部電極142側の面と上部電極143側の面とで電位差が発生し、下部電極142および上部電極143から圧電体141の変位量に応じた電気信号(電圧)が出力される。ここで、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとでは、メンブレン121の変位方向が逆となるため、第一の検出部13Aから出力される電圧と第二の検出部13Bから出力される電圧は、正負が逆の関係になる。
したがって、触覚センサー素子10では、出力電圧の大きさから剪断力の大きさを検出し、出力電圧の極性の関係から剪断力の向きを検出できる。図2(B)に示す矢印P1方向の剪断力を開放すると、第一の検出部13Aから出力される電圧と第二の検出部13Bから出力される電圧は、剪断力を加えたときのそれぞれの電圧と正負が逆転する。
【0053】
さらに、触覚センサー素子10に付与する剪断力の方向を種々変化させた場合の、各検出部13の出力信号の極性パターンを表1に示す。
図4は、センサー平面視における弾性部材16の外周位置を示すための平面図である。
ここで、図4に示すように、センサー平面視における弾性部材16の外周位置をD1〜D8とし、剪断力の方向を表1に示す。例えば、上述の矢印P1方向は、右方向、つまり、D1からD5へ向かう方向に相当する。また、D1からD5へ向かう方向を、D1⇒D5と表記し、他の方向についても同様とする。
表1中、検出部13からの出力電圧極性について、「+」は正の極性、「−」は負の極性、「0」は出力が微量もしくは無い状態であることを示す。各検出部13のメンブレン121に引張力が発生する場合には、「+」となり、圧縮力が発生する場合には、「−」となる。
また、触覚センサー素子10に押圧力を付与した場合の各検出部13の出力信号の極性も表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
表1に示すように、剪断力方向に応じて、各検出部13から出力される電圧の極性が異なるので、処理部20にてこれらの極性に基づいて剪断力方向を判定できる。
D5⇒D1方向は、表1に示すように、D1⇒D5方向と出力電圧極性が反対になる。
D3⇒D7方向やD7⇒D3方向のように、図1における上下方向への剪断力が付与された場合、表1に示すように、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bから出力される電圧極性は、「0」になる。これは、図1に示す、弾性部材16の上下方向の略中間位置では、弾性部材16に圧縮力および引張力が生じないためである。左右方向の略中間位置でも同様である。
【0056】
ここで、処理部20における剪断力方向の判定について、例を挙げて説明する。
第一の検出部13Aから正の極性の電圧が出力され、第二の検出部13Bから負の極性の電圧が出力され、検出部13Bおよび検出部13Dから微量な電圧が出力された場合、処理部20の演算部22は、入力されたこれらの電気信号の極性と、記憶部21に記憶された出力電圧極性パターンに基づいて剪断力の方向を判定する。この例の場合、出力電圧極性パターンの表1より、D1⇒D5方向、すなわち、矢印P1方向に剪断力が付与されていると判定できる。
【0057】
なお、触覚センサー素子10に対する押圧力が付与されると、各検出部13のメンブレン121は、下方に撓むので、出力電圧の極性は、いずれも負となる。よって、このような出力電圧極性パターンとなった場合には、処理部20は、押圧力が付与されたと判定できる。
【0058】
〔第一実施形態の作用効果〕
触覚センサー装置1は、触覚センサー素子10と、処理部20と、を備え、触覚センサー素子10は、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bを備え、各検出部13は、圧電積層部14を備える。
各検出部13を覆う弾性部材16が剪断力の方向へ弾性変形すると、各検出部13の各メンブレン121は、弾性部材16に対する各検出部13の位置に応じて、上方向又は下方向に変位する。そして、各メンブレン121の変位量に応じた電気信号(電圧)が出力され、その極性は、剪断力の方向に対する各検出部13の位置に応じて正負が異なる。そして、処理部20は、出力部15を介して受信した各検出部13の電気信号に基づいて、剪断力の方向を判定するとともに、剪断力の大きさを演算できる。また、弾性部材16が押圧された際も、各検出部13の各メンブレン121が下方向に変位する。その際の各検出部13の電気信号により、処理部20は、押圧力付与を判定するとともに、押圧力の大きさを演算できる。
よって、本実施形態によれば、従来技術のような複雑な立体構造と比べてより簡略な構造でありながら押圧力および剪断力の測定が可能な触覚センサー装置1を提供できる。
【0059】
また、第一実施形態では、センサー平面視において、弾性部材16は、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとに挟まれる領域の支持膜の上を覆う。そのため、弾性部材16の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、当該弾性部材16に覆われている検出部に対して加わり易くなる。特に、第一の開口部111Aの重心と第二の開口部111Bとを結ぶ線分方向に剪断力が付与されると、当該線分上の検出部に対して引張力又は圧縮力が加わり易いので、メンブレン121の変位が大きくなり、電気信号の出力値が大きくなる。その結果、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
【0060】
また、第一実施形態では、弾性部材16の重心Kは、第一の開口部111Aの重心k1と前記第二の開口部111Bの重心k2とを結ぶ線分を直径とする円C1の内部に位置する。弾性部材16の重心Kを通る直線L1は、重心k1および重心k2を結ぶ線分とは重ならない。この直線L1を挟んで、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bが位置する。そうすると、直線L1を挟んで一方側から他方側へと向かう矢印P1方向の剪断力に対して、圧縮力が加わる弾性部材16の領域と引張力が加わる弾性部材16の領域に各検出部13がそれぞれ配置されていることになる。その結果、より明確な反対符号の極性を有する電気信号を取り出すことができる。よって、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
【0061】
また、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kを通る直線L1に対して、第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとが線対称に配置されている。そのため、圧縮力が加わる弾性部材16の領域と引張力が加わる弾性部材16の領域に、各検出部13がバランスよく配置されていることになる。その結果、電気信号の極性の判別がより明確になり、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
【0062】
第一実施形態では、弾性部材16の表面に剛性層17が配置されているので、剛性層17に対して接触物が接触して剪断力が加わると、その剪断力が弾性部材16に対して局所的に伝達されることを防止できる。つまり、弾性部材16における上述の圧縮力又は引張力が各検出部13に対してより確実に加わるようにすることができる。その結果、触覚センサー装置1の剪断力の測定精度が向上する。
【0063】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る触覚センサー装置1Aについて説明する。
図5は、第二実施形態に係る触覚センサー装置1Aを示す平面図である。
なお、第二実施形態以降の説明にあたり、第一実施形態と同一の構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
第二実施形態に係る触覚センサー装置1Aは、触覚センサー素子10Aを備え、この触覚センサー素子10Aは、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bの他、さらに第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dを備える点等で、第一実施形態の触覚センサー素子10と異なる。
【0064】
触覚センサー素子10Aの基板11は、図5に示すように、さらに、第三の開口部111Cおよび第四の開口部111Dを有する。4つの開口部111は、センサー平面視において、弾性部材16の各辺近傍の位置に形成されている。より具体的には、センサー平面視において、図5に示すように、弾性部材16の重心Kに対して、左側に、第一の開口部111A、右側に、第二の開口部111B、下側に、第三の開口部111C、上側に、第四の開口部111Dが形成されている。そして、センサー平面視において、第一の開口部111Aの重心および第二の開口部111Bの重心を結ぶ第一の線分と第三の開口部111Cの重心および第四の開口部111Dの重心を結ぶ第二の線分とが交差する。
【0065】
第二実施形態においては、各開口部111は、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kを通る直線L1または直線L2に対して線対称に配置されている。具体的には、図5に示すように、第一の開口部111Aと第二の開口部111Bとが直線L2に対して線対称に配置され、第三の開口部111Cと第四の開口部111Dとが直線L3に対して線対称に配置されている。
第二実施形態において、支持膜12は、基板11上に形成されるとともに、4つの開口部111を覆う。また、第一実施形態と同様に、図5に示すように、4つの開口部111を閉塞する領域をメンブレン121と称する。
【0066】
第二実施形態において、検出部13は、上述の通り、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dを備える。これら4つの検出部13は、センサー平面視において、開口部111の内側領域に配置されている。各検出部13は、共通の弾性部材16で覆われている。
ここで、第一の検出部13Aは、第一の開口部111Aに対応する位置に配置され、第二の検出部13Bは、第二の開口部111Bに対応する位置に配置され、第3の検出部13Cは、第三の開口部111Cに対応する位置に配置され、第四の検出部13Dは、第四の開口部111Dに対応する位置に配置されている。
4つの検出部13は、いずれも第一実施形態と同様の圧電積層部14を備える。
第二実施形態における出力部15は、4つの検出部13に対してそれぞれ設置されている。
【0067】
第二実施形態の弾性部材16は、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13C、第四の検出部13D、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bと第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとを頂点とする4角形領域の支持膜12の上を覆う。
さらに、弾性部材16の重心Kは、第一の線分と第二の線分との交点に位置する。
また、弾性部材16の表面には、剛性層17が形成されている。
【0068】
次に、第二実施形態における触覚センサー素子10Aの動作について説明する。
第二実施形態において、第一の検出部13A側から第二の検出部13B側へ向かう方向は、第一実施形態における矢印P1の方向に相当し、この方向の剪断力が加えられると、第一実施形態と同様に動作する。
第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dは、第一の検出部13A側から第二の検出部13B側へ向かう方向において弾性部材16の中間付近に位置する。このような位置では、当該方向に剪断力が加えられても弾性部材16に圧縮力および引張力がほとんど生じない。そのため、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dの各メンブレン121の変位もほとんど生じず、第三の検出部13Cから出力される電圧と第四の検出部13Dから出力される電圧は、微量であるか、もしくは出力されない。微量な電圧の出力が得られても、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dから出力される電圧極性は同じである。
【0069】
また、センサー平面視において、第三の検出部13C側から第四の検出部13D側に向かう剪断力が加えられた場合にも、触覚センサー素子10Aは、当該剪断力の大きさと方向を検出できる。この場合、第一の検出部13A側から第二の検出部13B側へ向かう方向への剪断力付与の場合と同様、第三の検出部13Cから出力される電圧と第四の検出部13Dから出力される電圧は、正負が逆の関係になる。一方、第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、この場合の剪断方向において弾性部材16の中間付近に位置するので、第一の検出部13Aから出力される電圧と第二の検出部13Bから出力される電圧は、微量であるか、もしくは出力されない。
【0070】
さらに、触覚センサー素子10Aに付与する剪断力の方向を種々変化させた場合の、各検出部13の出力信号の極性パターンを表2に示す。表2における剪断力の方向についても、図4に基づく。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示すように、触覚センサー素子10Aにおいても、剪断力方向に応じて各検出部13から出力される電圧の極性が異なる。そのため、処理部20は、これらの電圧の極性に基づいて、剪断力方向を判定できる。特に、触覚センサー素子10Aでは、各検出部13が、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kに対して、上下左右側にそれぞれ1つずつ設置されている。そのため、斜め方向に剪断力が付与された場合でも、表2に示すような極性の関係性から処理部20にて剪断力の方向を判定できる。
【0073】
第二実施形態における処理部20による剪断力方向の判定は、4つの検出部13からの出力に基づく点で、第一実施形態と異なる。
第一の検出部13Aから正の極性の電圧が出力され、第二の検出部13Bから負の極性の電圧が出力され、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dから微量な電圧が出力された場合、処理部20の演算部22は、入力されたこれらの電気信号の極性と、記憶部21に記憶された出力電圧極性パターンに基づいて剪断力の方向を判定する。この例の場合、出力電圧極性パターンの表1より、D1⇒D5方向の剪断力が、触覚センサー素子10Aに対して付与されていると判定できる。
別の例として、第一の検出部13Aおよび第三の検出部13Cから正の極性の電圧が出力され、第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dから負の極性の電圧が出力された場合で考える。この場合、出力電圧極性パターンの表2より、D2⇒D6方向、すなわち、図5のセンサー平面視において右上方向の剪断力が、触覚センサー素子10Aに対して付与されていると判定できる。
【0074】
なお、触覚センサー素子10Aに対する押圧力が付与されると、各検出部13のメンブレン121は、下方に撓むので、出力電圧の極性は、いずれも負となる。よって、このような出力電圧極性パターンとなった場合には、処理部20は、押圧力が付与されたと判定できる。
【0075】
〔第二実施形態の作用効果〕
第二実施形態では、第一実施形態で説明した効果に加えて、次のような効果を奏する。
第二実施形態では、センサー平面視において、第一の開口部111Aの重心および第二の開口部111Bの重心を結ぶ第一の線分と第三の開口部111Cの重心および第四の開口部111Dの重心を結ぶ第二の線分とが交差するように、4つのセンサーが配置されている。弾性部材16は、このように配置されている4つの検出部および4つの検出部を頂点とする4角形領域の支持膜12を覆う。さらに、センサー平面視における弾性部材16の重心Kは、センサー平面視における、上記第一の線分と、上記第二の線分との交点に位置している。
そのため、弾性部材16の弾性変形に伴う引張力又は圧縮力が、4つの検出部13に対して加わり易くなる。さらに、表2に示すような出力電圧極性パターンに基づいて、上下方向や左右方向に加え、斜め方向の剪断力についても測定できる。
よって、第二実施形態によれば、付与される3軸方向の力を検出できる。ここで、3軸方向の力は、触覚センサー装置に対する押圧力および触覚センサー装置の基板11面方向の剪断力である。
【0076】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る触覚センサー素子について説明する。
図6は、第三実施形態に係る触覚センサー素子10Bを示す平面図である。
第三実施形態に係る触覚センサー素子10Bは、検出部13同士が、電気的に直列に接続されている点で、上記実施形態の触覚センサー素子と異なる。触覚センサー素子10Bを上述の処理部20と接続させることで、触覚センサー装置が構成される。
【0077】
触覚センサー素子10Bの基板11は、図6に示すように、第一の開口部111A、第二の開口部111B、第三の開口部111Cおよび第四の開口部111Dを有する。4つの開口部111は、図6に示すように、センサー平面視において、左下側に第一の開口部111A、右下側に第二の開口部111B、左上側に第三の開口部111C、右上側に第四の開口部111Dが形成されている。そして、センサー平面視において、第一の開口部111Aの重心および第三の開口部111Cを結ぶ第三の線分と、第二の開口部111Bの重心および第四の開口部111Dの重心を結ぶ第四の線分とが離間する。
【0078】
第三実施形態においては、図6に示すように、センサー平面視において、第一の開口部111Aと第二の開口部111Bとが直線L4に対して線対称に配置され、第三の開口部111Cと第四の開口部111Dとが直線L4に対して線対称に配置されている。
第三実施形態において、支持膜12は、4つの開口部111を覆う。また、上記実施形態と同様に、図6に示すように、4つの開口部111を閉塞する領域をメンブレン121と称する。
【0079】
触覚センサー素子10Bは、図6に示すように、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dを備える。4つの検出部13は、いずれも第一実施形態と同様の圧電積層部14を備える。
第三実施形態において、第一の検出部13Aと第三の検出部13Cとが、電気的に直列に接続され、第二の検出部13Bと第四の検出部13Dとが、電気的に直列に接続されている。このような電気的接続は、図6に示すように、検出部13同士を、電極線142Aにて接続することでなされる。
第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bは、それぞれ出力部15に接続されている。出力部15は、図示しない上述の処理部20に接続されている。なお、第三実施形態においても、出力部15は、圧電積層部14の下部電極に対応するものであり、上部電極に対応する出力部は、第一実施形態と同様に図示を省略する。
各出力部15は、上記実施形態の処理部20と同様の図示しない処理部に接続されている。
【0080】
第三実施形態の弾性部材16は、センサー平面視において、少なくとも、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13C、第四の検出部13D、並びに第一の検出部13Aと第二の検出部13Bと第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとを頂点とする4角形領域の支持膜12の上を覆う。
また、センサー平面視における弾性部材16の重心Kは、センサー平面視における前記4角形領域に位置する。
弾性部材16の表面には、剛性層17が形成されている。
【0081】
次に、第三実施形態における触覚センサー素子10Bの動作について説明する。
まず、第一の検出部13Aから第二の検出部13Bへ向かう方向、すなわち、図6の矢印P2方向の剪断力の場合で説明する。矢印P2方向の剪断力の場合、第一の検出部13Aおよび第三の検出部13Cでは、正の極性の電気信号が発生し、第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dでは、負の極性の電気信号が発生する。そうすると、第一の検出部13Aおよび第三の検出部13Cの電気信号は、加算されて一方の出力部15から出力され、第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dの電気信号は、加算されて他方の出力部15から出力される。
【0082】
一方で、第一の検出部13Aから第三の検出部13Cへ向かう方向やその反対方向(図6においては、上下方向)に付与される剪断力は、検出され難い。この場合、図6における下側の第一の検出部13Aおよび第二の検出部13Bでは、正の極性の電気信号が発生し、上側の第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dでは、負の極性の電気信号が発生する。ここで、上述の通り、検出部13が電気的に接続されていることにより、第一の検出部13Aおよび第三の検出部13Cの電気信号は、加算されて、微量であるか、または検出されない。また、第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dの電気信号も同様に、加算の結果、微量であるか、または検出されない。
【0083】
〔第三実施形態の作用効果〕
第三実施形態では、第一実施形態で説明した効果に加えて、次のような効果を奏する。
第三実施形態では、触覚センサー素子10Bの検出部13は、上述の通り、2つずつ電気的に直列に接続されているので、各検出部13から出力される電気信号を加算して出力部15から出力させることができる。そのため、1つずつの検出部13から電気信号を出力させる場合に比べて、電気信号が大きくなり、剪断力の測定精度が向上する。
【0084】
[第四実施形態]
次に、上述した触覚センサー装置1を用いた装置の応用例として、触覚センサー装置1を備えた把持装置について、図面に基づいて説明する。
【0085】
図7は、本発明に係る第四実施形態の把持装置の概略構成を示す装置ブロック図である。
図7において、把持装置50は、少なくとも一対の把持アーム51を備え、この把持アーム51により、把持対象物Zを把持する装置である。この把持装置50としては、例えば製品を製造する製造工場などにおいて、ベルトコンベアーなどにより搬送された対象物を把持して持ち上げる装置である。そして、この把持装置50は、前記把持アーム51と、把持アーム51を駆動するアーム駆動部52と、アーム駆動部52の駆動を制御する制御装置54と、を備えて構成されている。
【0086】
一対の把持アーム51は、それぞれ先端部に接触面である把持面53を備え、この把持面53を把持対象物Zに当接させて把持することで把持対象物Zを把持し、持ち上げる。ここで、本実施形態において、把持アーム51が一対設けられる構成を例示するが、これに限定されず、例えば3本の把持アーム51により、把持対象物Zを3点支持により把持する構成などとしてもよい。
【0087】
把持アーム51に設けられる把持面53は、表面には、第一実施形態において説明した触覚センサー装置1が設けられており、触覚センサー装置1の剛性層17が露出されている。そして、把持アーム51は、この剛性層17を把持対象物Zに接触させ、把持対象物Zに所定の圧力(正圧力)を印加することで、把持対象物Zを把持する。このような把持アーム51では、把持面53に設けられる触覚センサー装置1により、把持対象物Zに印加する正圧力、および把持した際に把持対象物Zが把持面53から滑り落ちようとする剪断力を検出し、正圧力や剪断力に応じた電気信号を制御装置54に出力する。具体的には、触覚センサー装置1の処理部20にて、各検出部13から出力される電気信号を受信して、演算部22にて正圧力や剪断力を算出する。処理部20は、この算出結果を剪断力検出信号、および正圧力検出信号として制御装置54へと出力する。
【0088】
アーム駆動部52は、一対の把持アーム51を互いに近接する方向、又は離隔する方向に移動させる装置である。このアーム駆動部52としては、把持アーム51を移動可能に保持する保持部材55と、把持アーム51を移動させる駆動力を発生する駆動源56と、駆動源の駆動力を把持アーム51に伝達させる駆動伝達部57を備えている。
保持部材55は、例えば把持アーム51の移動方向に沿う案内溝を備え、この案内溝内で把持アーム51を保持することで、把持アーム51を移動可能に保持する。また、保持部材55は、鉛直方向に移動可能に設けられている。
駆動源56は、例えば駆動モーターであり、制御装置54から入力される駆動制御信号に応じて駆動力を発生させる。
駆動伝達部57は、例えば複数のギアにより構成され、駆動源56で発生した駆動力を把持アーム51および保持部材55に伝達させ、把持アーム51および保持部材55を移動させる。
なお、本実施形態では、一例として上記構成を示したが、これに限定されるものではない。すなわち、把持アーム51を保持部材55の案内溝に沿って移動させる構成に限らず、把持アームを回動可能に保持する構成などとしてもよい。駆動源56としても駆動モーターに限られず、例えば油圧ポンプなどにより駆動される構成としてもよく、駆動伝達部57としても、例えば駆動力を歯車により伝達する構成に限らず、ベルトやチェーンにより伝達する構成、油圧などにより駆動されるピストンを備えた構成などとしてもよい。
【0089】
制御装置54は、把持アーム51の把持面53に設けられる触覚センサー装置1、およびアーム駆動部52に接続され、把持装置50における把持対象物Zの把持動作の全体を制御する。
具体的には、制御装置54は、図7に示すように、アーム駆動部52および触覚センサー装置1に接続され、把持装置50の全体動作を制御する。この制御装置54は、触覚センサー装置1から入力される剪断力検出信号、および正圧力検出信号を読み取る信号検出手段541、把持対象物Zの滑り状態を検出する把持検出手段542、およびアーム駆動部52に把持アーム51の駆動を制御するための駆動制御信号を出力する駆動制御手段543を備えている。また、この制御装置54としては、例えばパーソナルコンピューターなどの汎用コンピューターを用いることもでき、例えばキーボードなどの入力装置や、把持対象物Zの把持状態を表示させる表示部などを備える構成としてもよい。
また、信号検出手段541、把持検出手段542、および駆動制御手段543は、プログラムとして例えばメモリーなどの記憶部に記憶され、CPUなどの演算回路により適宜読み出されて実行されるものであってもよく、例えばICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
【0090】
信号検出手段541は、触覚センサー装置1に接続され、触覚センサー装置1から入力される正圧力検出信号や剪断力検出信号などを取得する。この信号検出手段541にて認識された検出信号は、例えば図示しないメモリーなどの記憶部に出力されて記憶されるとともに、把持検出手段542に出力される。
【0091】
把持検出手段542は、剪断力検出信号に基づいて、把持アーム51により把持対象物Zを把持したか否かを判断する。
ここで、図8に、把持装置50の把持動作における触覚センサーに作用する正圧力および剪断力の関係を示す図を示す。
図8において、正圧力が所定値に達するまでは、正圧力の増加に応じて剪断力が増加する。この状態は、把持対象物Zと把持面53との間に動摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53から滑り落ちている滑り状態で、把持が未完了であると判断する。一方、正圧力が所定値以上となると、正圧力を増大させても剪断力が増加しない状態となる。この状態は、把持対象物Zと把持面53との間に静摩擦力が作用している状態であり、把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53により把持された把持状態であると判断する。
具体的には、剪断力検出信号の値が、静摩擦力に対応した所定の閾値を越える場合に、把持が完了したと判断する。
【0092】
駆動制御手段543は、把持検出手段542にて検出された電気信号に基づいてアーム駆動部52の動作を制御する。
【0093】
次に、制御装置54の動作について図面に基づいて説明する。
図9は、制御装置54の制御による把持装置50の把持動作を示すフローチャートである。図10は、把持装置50の把持動作時において、アーム駆動部52への駆動制御信号、触覚センサー装置1から出力される検出信号の発信タイミングを示すタイミング図である。
【0094】
把持装置50で把持対象物Zを把持するためには、まず制御装置54の駆動制御手段543は、各把持アーム51を互いに近接させる方向に移動させる旨の駆動制御信号をアーム駆動部52に出力する(把持動作)。これにより、把持アーム51の把持面53が把持対象物Zに近接する(図9:ステップS11)。
【0095】
次に、制御装置54の把持検出手段542は、把持対象物Zが把持面53に接触したか否かを判断する(図9:ステップS12)。具体的には、制御装置54は、信号検出手段541で正圧力検出信号の入力が検知されたか否かを判断する。ここで、正圧力検出信号が検出されない場合は、把持面53が把持対象物Zに接触していないと判断し、駆動制御手段543は、ステップS11を継続して、駆動制御信号を出力し、把持アーム51をさらに駆動させる。
【0096】
一方、把持面53が把持対象物Zに接触する(図10:タイミングT1)と、触覚センサー装置1の弾性部材16が歪み、その歪み量に基づいて算出された正圧力に対応する正圧力検出信号が出力される。
駆動制御手段543は、把持検出手段542において、正圧力検出信号を検出すると、把持アーム51の近接移動(把持対象物Zへの押圧)を停止させる(図9:ステップS13、図10:タイミングT2)。また、駆動制御手段543は、アーム駆動部52に駆動制御信号を出力し、把持アーム51を上方に持ち上げる動作(持上げ微動作)を実施させる(図9:ステップS14、図10:タイミングT2〜T3)。
【0097】
ここで、把持対象物Zを持ち上げる際に、弾性部材16が剪断力により剪断方向に歪み、触覚センサー装置1では、その歪み量に応じた剪断力が算出され、その剪断力に対応する剪断力検出信号が出力される。
把持検出手段542は、信号検出手段541に入力される剪断力検出信号に基づいて、滑りがあるか否かを判断する(ステップS15)。
【0098】
この時、把持検出手段542において、滑りがあると判断されると、駆動制御手段543は、アーム駆動部52を制御して、把持アーム51を、把持面53を把持対象物Zに押し付ける方向に移動させて、把持力(正圧力)を増大させる(図9:ステップS16)。
すなわち、制御装置54は、図10におけるタイミングT3において、駆動制御手段543にて把持動作を実施させ、把持対象物Zへの正圧力を増大させ、信号検出手段541にて、再び触覚センサー装置1から出力される剪断力検出信号を検出する。以上のような滑り検知動作(タイミングT2〜T6)を繰り返し、剪断力検出信号が、所定の閾値A1以上となった場合(タイミングT6)に、ステップS15において、滑りがない、すなわち把持が完了したと判断し、滑り検知動作を停止させる。
【0099】
〔第四実施形態の作用効果〕
上述したような第四実施形態の把持装置50では、上記第一実施形態の触覚センサー装置1を備えている。このような触覚センサー装置1は、上述したように、簡略な構造であっても剪断力および正圧力を検出することができるものであるため、把持装置50においても剪断力検出信号および正圧力検出信号に基づいて、正確な把持動作を実施することができる。
【0100】
第四実施形態では、触覚センサー装置1を用いたが、これに換えて触覚センサー装置1Aを用いることもできる。触覚センサー装置1Aは、上述したように、センサー平面視において上下方向だけでなく、左右方向や斜め方向の剪断力を検出することができる。したがって、触覚センサー装置1Aを用いれば、把持対象物Zを持ち上げる際の剪断力に限らず、例えばベルトコンベアー上で搬送される対象物に対して把持を実施する際に、搬送方向への剪断力をも測定することができる。
【0101】
[第五実施形態]
上記第四実施形態では、触覚センサー装置1が設けられた把持装置を例示したが、これに限定されない。
第五実施形態では、触覚センサー装置1を用いた装置の他の応用例として、アイロンについて、図面に基づいて説明する。
ここで、第五実施形態では、図13に示すような概略構成を備えるアイロン60が、接触物との距離を検出する近接センサー70(図11参照)を備えた触覚センサー装置1Bを用いる。
【0102】
図11は、触覚センサー装置1Bの概略構成を示す平面図である。
触覚センサー装置1Bは、第二実施形態で説明した触覚センサー装置1Aが、さらに近接センサー70を備えた構成を有する。近接センサー70は、基板11上に設置され、近接検出用超音波素子71と、制御部80と、を備えている。
この近接検出用超音波素子71は、図11に示すように、基板11に形成される開口部711と、開口部711を閉塞する支持膜72(メンブレン721)と、メンブレン721の内部領域に配置される圧電積層部73と、により構成されている。この圧電積層部73は、上述の第一実施形態の圧電積層部14と同様に、圧電体と、当該圧電体を挟んで配置される下部電極および上部電極と、により構成されている。
近接検出用超音波素子71上には、弾性部材16は形成されない。したがって、近接検出用超音波素子71に交流電圧を印加すると、超音波は、触覚センサー装置1B直上に空気を伝搬して発信される。具体的には、制御部80(図12参照)から、圧電積層部73の下部電極および上部電極間に交流電圧が印加されると、圧電体が印加電圧に応じて伸縮する。これにより、メンブレン721が振動し、超音波が接触物側に発信される。
触覚センサー装置1Bの直上に接触物が近接すると、近接検出用超音波素子71から発信された超音波は、接触物で反射され、近接検出用超音波素子71で受信される。
【0103】
図12は、触覚センサー装置1Bにおける制御部80の概略構成を示すブロック図である。制御部80は、図12に示すように、送受信切替回路81と、送受信切替制御部82と、超音波信号発信回路83と、時間計測部84と、記憶部85と、演算処理部86と、を備えている。
【0104】
送受信切替回路81は、送受信切替制御部82から入力されるモード切替信号に基づいて、接続状態を切り替えるスイッチング回路である。
具体的には、送受信切替制御部82から超音波発信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、送受信切替回路81は、超音波信号発信回路83から入力された駆動信号を、触覚センサー装置1Bの近接検出用超音波素子71に出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
一方、送受信切替回路81は、送受信切替制御部82から超音波受信モードに切り替える旨の制御信号が入力された場合、触覚センサー装置1Bの近接検出用超音波素子71から入力される受信信号を時間計測部84に出力可能なスイッチング状態に切り替わる。
【0105】
送受信切替制御部82は、近接検出用超音波素子71から超音波を発信させる超音波発信モードと、近接検出用超音波素子71にて超音波を受信させる超音波受信モードと、を切り替える。
具体的には、送受信切替制御部82は、例えば、アイロン60に電源が入り、触覚センサー装置1Bの電源がON状態に切り替わると、まず、超音波発信モードに切り替える処理を実施する。
この処理では、送受信切替制御部82は、送受信切替回路81に超音波発信モードに切り替える旨の制御信号を出力し、超音波信号発信回路83から駆動信号を出力させる旨の制御信号を出力する。
また、送受信切替制御部82は、図示しない計時部(タイマー)により計測される時間を監視し、超音波発信モードから所定の発信時間経過後に、超音波受信モードに切り替える処理を実施する。ここで発信時間は、近接検出用超音波素子71から例えば1〜2周波数のバースト波が発信される時間程度に設定されていればよい。
超音波受信モードでは、送受信切替制御部82は、送受信切替回路81に超音波受信モードに切り替える旨の制御信号を出力して、送受信切替回路81を、近接検出用超音波素子71から入力される受信信号を時間計測部84に入力可能な接続状態にスイッチングさせる。
【0106】
超音波信号発信回路83は、発信モードにおいて、送受信切替制御部82から駆動信号を出力させる旨の制御信号が入力されると、近接検出用超音波素子71を駆動させるための駆動信号(駆動パルス)を送受信切替回路81に出力する。
【0107】
時間計測部84は、計時部にて計測される時間を監視し、超音波が受信されるまでの時間を計測する。
具体的には、時間計測部84は、送受信切替制御部82が超音波発信モードに切り替える処理を実施した超音波発信タイミング、すなわち近接検出用超音波素子71から超音波が発信されてからの時間をカウントする。
なお、送受信切替制御部82は、超音波発信タイミングで、計時部でカウントされる時間をリセットする。そして、送受信切替制御部82が超音波受信モードに切り替える処理を実施し、近接検出用超音波素子71で受信された反射超音波に応じた受信信号が送受信切替回路81から時間計測部84に入力されると、時間計測部84は、その入力されたタイミングでの時間(TOFデータ:Time Of Flightデータ)を取得する。また、取得したTOFデータは、演算処理部86に入力される。
【0108】
記憶部85は、演算処理部86の各種処理を実施するための各種プログラムや各種データなどを記憶する。
具体的には、記憶部85には、空気中の音速や、演算処理部86により実施される各種プログラムなどが予め記憶される。また、演算処理部86で算出された各種データが記憶される構成などとしてもよい。
【0109】
演算処理部86は、距離算出部861を備えている。
この距離算出部861は、近接検出用超音波素子71から出力される受信信号に基づいて、時間計測部84でTOFデータが取得されると、触覚センサー装置1Bと接触物との距離を算出する。具体的には、時間計測部84は、取得したTOFデータと記憶部85から読み出した空気中の音速とに基づいて、触覚センサー装置1Bと接触物との距離を算出する。
【0110】
図13は、本実施形態のアイロンの概略構成を示すブロック図である。
図13に示すように、アイロン60は、ヒーター61と、ベース部62と、ベース部62に設けられた温度センサー63と、ベース部62に設けられた触覚センサー装置1Bと、ヒーター駆動回路64と、を備えている。このアイロン60のヒーター駆動回路64は、温度センサー63および触覚センサー装置1Bからの信号に基づいてヒーター61に印加する電圧を制御し、ベース部62を対象布地に対して最適な温度に加熱する。
【0111】
ヒーター61は、ヒーター駆動回路64から印加された電圧により発熱し、ベース部62を加熱する。
ベース部62は、対象布地に接触して、対象布地の皺を伸ばす部分であり、ヒーター61により加熱される。そして、このベース部62の一部には、図13に示すように、触覚センサー装置1Bが設けられ、触覚センサー装置1Bの剛性層17が、対象布地に接触可能に露出されている。
また、ベース部62には、温度センサー63が設けられており、この温度センサー63は、ベース部62の温度を検出してヒーター駆動回路64に出力する。
【0112】
ヒーター駆動回路64は、触覚センサー装置1B、温度センサー63、およびヒーター61に接続され、触覚センサー装置1および温度センサー63からの信号に基づいてヒーター61に印加する電圧を制御する。このヒーター駆動回路64は、図13に示すように、記憶部としてのメモリー641と、信号検出部642と、布地判別部643と、温度制御部644と、を備えている。
このヒーター駆動回路64としては、例えばCPU等の演算回路や、記憶回路を備えたコンピューターとして構成され、布地判別部643や温度制御部644が、演算回路による演算処理により実行されるソフトウェアとして機能される構成としてもよい。例えば、ヒーター駆動回路64としては、ICなどの集積回路により構成され、入力された電気信号に対して所定の処理を実施するものであってもよい。
【0113】
メモリー641は、相関データである応力−粗さ値データを記憶している。この応力−粗さ値データには、触覚センサー装置1Bにより検出された応力に応じた、対象布地の粗さ値が記録されているデータであり、例えば、剪断力に対応する粗さ値が、正圧力毎に記録されている。
また、メモリー641には、粗さ値に対応したベース部62の最適温度が記録された粗さ−温度データが記憶されていてもよい。
【0114】
信号検出部642は、触覚センサー装置1Bに接続され、触覚センサー装置1Bから入力される正圧力検出信号や剪断力検出信号などを取得する。具体的には、触覚センサー装置1Bの処理部20にて、各検出部13から出力される電気信号を受信して、演算手段にて正圧力や剪断力を算出し、この算出結果を剪断力検出信号、および正圧力検出信号として信号検出部642へと出力する。
この信号検出部642にて検出された検出信号は、メモリー641に出力されて記憶されるとともに、布地判別部643に出力される。
【0115】
布地判別部643は、信号検出部642から入力された剪断力および正圧力、およびメモリー641に記憶された応力−粗さ値データに基づいて、対象布地の種別を判別する。
例えば、本実施形態では、応力−粗さ値データとして、正圧力毎に、剪断力に対応する粗さが記憶されている。この場合では、布地判別部643は、正圧力に対応した応力−粗さ値データをメモリー641から読み出し、この応力−粗さ値データから剪断力に対応した粗さ値を取得する。
そして、布地判別部643は、取得した粗さ値を温度制御部644に出力する。
【0116】
温度制御部644は、布地判別部643から入力された粗さ値、および温度センサー63により検出されるベース部62の温度に基づいて、ヒーター61への印加電圧を制御する。
具体的には、温度制御部644は、メモリー641から粗さ−温度データを読み出し、布地判別部643から入力された粗さ値に応じたベース部62の最適温度を取得する。そして、温度制御部644は、温度センサー63から入力された検出温度と最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印加電圧値を算出して、ヒーター61に印加する。
【0117】
〔アイロンの動作〕
次に、上記のようなアイロン60の動作について説明する。
図14は、第五実施形態のアイロンの動作を示すフローチャートである。
利用者によりアイロン60に電力が供給されると、近接センサー70の近接検出用超音波素子71が駆動される。時間計測部84において近接検出用超音波素子71から出力された受信信号に基づくTOFデータが取得されると、距離算出部861は、記憶部85から読み出した空気中の音速とに基づいて、対象布地と触覚センサー装置1B(ベース部62)との距離を算出する。そして、対象布地とベース部62との距離が予め設定された距離以内になると、触覚センサー装置1Bは、駆動モードに移行する(ステップS21)。駆動モードでは、処理部20は、各検出部13から出力される電気信号を処理可能な状態となる。
【0118】
この後、アイロン60のヒーター駆動回路64は、対象布地がベース部62に接触したか否かを判断する(ステップS22)。具体的には、ヒーター駆動回路64は、信号検出部642で正圧力検出信号の入力が検知されたか否かを判断する。ここで、正圧力検出信号が検出されない場合は、ベース部62に対象布地が接触していないと判断する。この場合は、ヒーター駆動回路64は、ステップS22を継続し、対象布地とベース部62との接触判断処理を継続する。
【0119】
また、ステップS22において、信号検出部642が正圧力検出信号の入力を検知した場合、さらに、剪断力検出信号の入力を検出し、剪断力の大きさが0より大きいか否かを判断する(ステップS23)。
つまり、正圧力の大きさは、利用者がアイロン60を対象布地に押し付ける強さにより変化するため、正圧力のみでは対象布地の種別を判別することはできない。したがって、剪断力の大きさが0である場合は、継続してステップS23の処理を実行する。
一方、ステップS23により、剪断力検出信号により検出された剪断力の大きさが0より大きい場合、布地判別部643は、メモリー641から、正圧力に対応した応力−粗さ値データを読み出し、剪断力に対応した粗さ値を取得する(ステップS24)。
【0120】
この後、温度制御部644は、メモリー641から粗さ−温度データを読み出し、ステップS24で取得された粗さ値に対応した温度を取得し、最適温度として設定する(ステップS25)。
さらに、温度制御部644は、温度センサー63により検出された検出温度と、ステップS25により設定された最適温度との差分値から、ベース部62を最適温度に設定するために必要なヒーター61への印加電圧値を算出し、ヒーター61にその電圧値を印加する(ステップS26)。
これにより、アイロン60は、対象布地の種別に応じて、ベース部62の温度を、自動で設定することが可能となる。
【0121】
(第五実施形態の作用効果)
上述したような第五実施形態のアイロン60では、上述の触覚センサー装置1Bを備えており、この触覚センサー装置1Bは、第二実施形態の触覚センサー装置1Aの構成を備えている。触覚センサー装置1Aは、上述したように、簡略な構造であっても剪断力および正圧力を検出することができるため、アイロン60においても、ベース部62に対象布地が接触した際の正圧力および剪断力を検出することができる。
【0122】
そして、アイロン60のヒーター駆動回路64は、布地判別部643により、検出された正圧力および剪断力に対応した、対象布地の粗さを判別することができる。したがって、判断された対象布地の粗さから、対象布地の種別を判断することができ、温度制御部644は、布地の種別に対応してベース部62の温度を設定することができる。したがって、アイロン60において、布地に対応してベース部62の温度を自動で設定することができ、対象布地の種別に応じて、温度設定を変更する煩雑な作業を省略することができる。
【0123】
なお、上記第五実施形態では、メモリー641に、正圧力および剪断力に応じた粗さ値が記録された応力−粗さ値データを記憶する例を示したが、例えば、正圧力および剪断力に応じた対象布地の種類を記録した応力−布地種別データがメモリー641に記憶される構成などとしてもよい。この場合では、布地判別部643は、正圧力および剪断力に応じて、対象布地の種別を直接判別し、温度制御部644は、判別された布地の種別に対応した温度を取得する。
また、相関データとして、正圧力および剪断力に対応したベース部62の最適温度が記憶された応力−温度データが記憶されていてもよく、この場合では、粗さ−温度データを記憶する必要がなくなり、より少ないデータ量で、ベース部62の温度を自動で設定可能なアイロン60を提供することができる。
【0124】
さらに、上記アイロン60では、ヒーター駆動回路64により自動でベース部62の温度が設定される例を示したが、例えば、ベース部62の温度を自動設定する自動モードと、手動により温度を設定する手動モードと、を適宜切り替え可能な構成としてもよい。
【0125】
[第六実施形態]
次に、本発明の第六実施形態として、上述したような触覚センサーを備えた電子機器について説明する。この第六実施形態では、電子機器としてのノート型パソコン90を例示する。
【0126】
図15は、第六実施形態のノート型パソコン90の構成を模式的に示す斜視図である。
図15において、ノート型パソコン90は、装置本体91と、表示部92と、第一の入力部93と、第二の入力部94とを備えている。
表示部92は、例えば液晶パネルや有機パネルなどにより構成され、装置本体91の内部に収容された図示略の演算制御部に接続され、この演算制御部により、種々の操作画像やその他の情報を表示するように構成されている。
【0127】
第一の入力部93は、キーボードやテンキー等で構成される。
第二の入力部94は、第一の入力部93よりも手前側の位置に設けられており、この第二の入力部94に、上述の触覚センサー装置1が用いられている。図15に示されるように第二の入力部94の表面には、触覚センサー装置1の剛性層17の表面を露出させておき、この剛性層17の表面上で、利用者が指を動かしたり、タッチペンなどを動かしたりすると、これらの動きにより剪断力や正圧力が発生する。この剪断力および正圧力を触覚センサー装置1により検出することで、利用者の指やタッチペンの接触位置座標、移動方向を検出して電気信号として出力することができる。そして、出力された電気信号に基づいて、利用者が所望する入力操作の内容を正確に認識することができ、ノート型パソコン90の操作性を向上させることができる。
【0128】
[参考形態]
次に、参考形態に係る触覚センサー素子について説明する。
図16は、本参考形態に係る触覚センサー素子10Cを示す平面図である。
【0129】
本参考形態に係る触覚センサー素子10Cは、上記第二実施形態の構成と上記第三実施形態の構成とを組み合わせた構成である。具体的には、上記第三実施形態における第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dの4つの検出部13並びに検出部15で構成されるまとまりを1ブロックとみなし、本参考形態では、4つのブロックが配置されている。これは、図16において、検出部ブロックB1,B2,B3,B4として示されている。これら検出部ブロックB1,B2,B3,B4を、第二実施形態における、第一の検出部13A、第二の検出部13B、第三の検出部13Cおよび第四の検出部13Dのそれぞれの配置関係で配置したものが本参考形態の触覚センサー素子10Cに当たる。
【0130】
触覚センサー素子10Cでは、各検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13が、弾性部材16で覆われており、弾性部材16の表面には、剛性層17が設置されている。
本参考形態において、各検出部ブロックB1〜B4は、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kに対して、上下左右側にそれぞれ配置されている。
また、本参考形態において、各検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13は、センサー平面視において、弾性部材16の重心Kを通る直線L5,L6に対して線対称に設置されている。図16に示すように、各検出部ブロックB1〜B4を構成する第一の検出部13Aと第二の検出部13Bとが直線L5または直線L6に対して線対称に配置され、第三の検出部13Cと第四の検出部13Dとが直線L5または直線L6に対して線対称に配置されている。直線L5と直線L6とは、直行している。
【0131】
各検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13は、上記第三実施形態と同様に出力部15に接続されており、加算された電気信号が出力部15によって出力される。出力部15は、図示しない上述の処理部20に接続されている。なお、本参考形態においても、出力部15は、圧電積層部14の下部電極に対応するものであり、上部電極に対応する出力部は、第一実施形態と同様に図示を省略する。
各出力部15は、上記実施形態の処理部20と同様の図示しない処理部に接続されている。
【0132】
触覚センサー素子10Cにおいて、弾性部材16に対して直線L5に沿う方向に剪断力が付与されると、検出部ブロックB1を構成する検出部13から出力される電気信号と検出部ブロックB2を構成する検出部13から出力される電気信号との電気信号の極性が反対符号となる。このとき、検出部ブロックB3や検出部ブロックB4は、弾性部材16の直線L5方向において中間付近に位置するので、電気信号が微量である。
また、触覚センサー素子10Cにおいて、弾性部材16に対して直線L6方向に剪断力が付与されると、検出部ブロックB3を構成する検出部13から出力される電気信号と検出部ブロックB4を構成する検出部13から出力される電気信号の極性が反対符号となる。このとき、検出部ブロックB1や検出部ブロックB2は、弾性部材16の直線L6方向において中間付近に位置するので、電気信号が微量である。
【0133】
なお、本参考形態では、各検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13は、重心Kを通る直線L5または直線L6上に設置されていない。しかしながら、図16に示すように、センサー平面視において、第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dは、直線L5と平行な直線L7上に配置されている。さらに直線L7の中間位置Sを挟んで両側に、検出部ブロックB1の第二の検出部13Bおよび第四の検出部13D、検出部ブロックB2の第二の検出部13Bおよび第四の検出部13Dがそれぞれ設置されている。この場合でも、直線L7方向の剪断力に対して、弾性部材16の検出部ブロックB1側では引張力が加われば、検出部ブロックB2側では圧縮力が加わるようになる。そのため、検出部ブロックB1を構成する検出部13と検出部ブロックB2を構成する検出部13とから互いに反対符号の極性の電気信号が出力される。検出部ブロックB3と検出部ブロックB4との関係においても同様である。
【0134】
〔参考形態の作用効果〕
触覚センサー素子10Cでは、直線L5方向の剪断力および直線L6方向の剪断力が付与された場合でも、各検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13から極性の符号が反対となる電気信号を出力させることができる。そのため、処理部において第一実施形態と同様に出力電圧極性パターンに基づいて、上下、左右、斜め方向の剪断力を検出できる。すなわち、触覚センサー素子10Cは、3軸方向の力を測定できる。
さらに、触覚センサー素子10Cでは、検出部ブロックB1〜B4を構成する各検出部13が電気的に直列に接続されている。そのため、触覚センサー素子10Cは、上述の第三実施形態の触覚センサー素子10Bのように、出力される電気信号を大きくして、測定精度を向上させることができる。
【0135】
〔その他の実施形態〕
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0136】
上述の実施形態では、触覚センサー装置1の弾性部材16の表面に剛性層17が配置されている構成について説明したが、剛性層17が配置されていない構成としてもよい。
【0137】
上述の実施形態では、弾性部材16が、センサー平面視で、四角形状のものを例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、センサー平面視で、円形状や楕円形状、その他多角形状の弾性部材16であってもよい。
円形状の弾性部材16Bとした場合の例を挙げる。上述の実施形態では、検出部13を偶数箇所配置した例を挙げて説明したが、これに限られない。例えば、図17(A)に示す触覚センサー素子10Dように、検出部13を3つ設け、これを弾性部材16Bで覆う構成としてもよい。このとき、各検出部13同士を結んで三角形となるように配置されていることが好ましい。このような構成とすることで、多方向の剪断力を検出できる。
また、別の例として、図17(B)に示す触覚センサー素子10Eのように、円形状の弾性部材16Bとし、その円周に沿って複数の検出部13が配置されている構成としてもよい。このような構成とすることで、多方向の剪断力を検出できる。
【0138】
また、開口部を覆う支持膜は、各々の開口部の間で分離した形態の支持膜であっても良い。例えば、第一の開口部を覆う支持膜と、第二の開口部を覆う支持膜とが、連続していなくても良い。ただし、この場合、弾性部材16は、支持膜が形成されていない領域の基板上、かつ第一の開口部と第二の開口部とで挟まれる領域を連続して覆うように配置される。
【0139】
また、検出すべき剪断力の方向が予め決まっており、その方向が一方向のみである場合では、上述の第一実施形態のような3軸方向の検出可能な触覚センサー素子10Aでなくてもよい。例えば、上述の第三実施形態のような特定の方向について良好に検出可能な触覚センサー素子10,10Bを用いて、剪断力の方向と触覚センサー素子10,10Bの検出可能な方向とを合わせて、上述の把持装置などに組み込めばよい。
【0140】
さらに、第四実施形態において、把持装置50として、一対の把持アーム51が設けられる構成を例示したが、3本以上の把持アームを互いに近接離間する方向に移動させて把持対象物Zを把持する構成としてもよい。また、アーム駆動部により駆動される駆動アームと、駆動しない固定アームまたは固定壁とを備え、駆動アームを固定アーム(固定壁)側に移動させて対象物を把持する構成などとしてもよい。
【0141】
また、第五実施形態では、接触物判別部として、メモリー641に記憶された応力−粗さ値データに基づいて、布地の種別(粗さ値)を判別する布地判別部643を例示したが、これに限らない。例えば、触覚センサー装置1,1A,1Bを、パン製造装置に設け、パン生地の柔らかさ(捏ね状態)を判断する接触物判別部を設ける構成としてもよい。この場合、接触部判別部は、パン生地に対して加えた応力と、その応力に対して最適弾性力との関係データをメモリーに記憶する。そして、接触物判別部は、触覚センサー装置1,1A,1Bで検出された正圧力や剪断力が、最適弾性力を中心とした所定閾値以内であれば、捏ね状態が最適であると判断する。このような構成のパン製造装置では、パン生地の捏ね状態を一定に維持することができ、安定した品質のパン生地を製造することができる。
【0142】
そして、上述の圧電積層部14,圧電積層部73として、膜上の圧電体、下部電極、上部電極を備える構成を例示したが、膜状に限られず、例えばバルク状の圧電体や、電極を用いてもよい。
【0143】
また、上述の実施形態で説明した電子機器は、ノート型パソコンを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、PDA(Personal Data Assistance)や携帯ゲーム機や携帯電話、パーソナルコンピューターや電子辞書などにおける入力装置として、本発明の触覚センサーを適用することも可能である。
【0144】
上述のとおり説明した、触覚センサー素子10A,10B,10C,10D,10Eは、いずれも上述の説明で示した例に限定されず、その他の形態に対しても適用することができる。
【0145】
以上、本発明を実施するための最良の構成について具体的に説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、当業者が様々な変形および改良を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0146】
1,1A,1B…触覚センサー装置、10,10A〜10E…触覚センサー素子、11…基板、12…支持膜、13,13A〜13D…検出部、14…圧電積層部、15…出力部、16,16B…弾性部材、17…剛性層、20…処理部、50…把持装置、51…把持アーム、90…ノート型パソコン(電子機器)、111,111A〜111D…開口部、542…把持検出手段、543…駆動制御手段、Z…把持対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の開口部および第二の開口部を有する基板と、
前記第一の開口部および前記第二の開口部を覆う支持膜と、
前記支持膜上、かつ前記第一の開口部の上方に配置された第一の検出部と、
前記支持膜上、かつ前記第二の開口部の上方に配置された第二の検出部と、
前記第一の検出部および前記第二の検出部の上に配置された弾性変形する弾性部材と、を備え、
前記第一の検出部および前記第二の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、
前記弾性部材は、前記基板の厚み方向で見た平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部とに挟まれる領域の支持膜の上を覆い、
前記弾性部材の表面は、前記基板面と平行に形成されている
ことを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項2】
請求項1に記載の触覚センサー素子において、
前記基板の厚み方向で見た平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の開口部の重心と前記第二の開口部の重心とを結ぶ線分を直径とする円の内部に位置している
ことを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の触覚センサー素子において、
前記第一の開口部および前記第二の開口部は、前記基板の厚み方向で見た平面視において前記弾性部材の重心を通る直線に対して線対称に配置されている
ことを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の触覚センサー素子において、
前記基板は、さらに第三の開口部および第四の開口部を有し、
前記支持膜は、さらに前記第三の開口部および前記第四の開口部を覆い、
前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、
前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、をさらに備え、
前記第三の検出部および前記第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、
前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部は、前記第一の開口部の重心および前記第二の開口部の重心を結ぶ第一の線分と前記第三の開口部の重心および前記第四の開口部の重心を結ぶ第二の線分とが交差するように配置され、
前記弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第三の検出部と前記第四の検出部とを頂点とする4角形領域の支持膜の上を覆い、
前記平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記第一の線分と前記第二の線分との交点に位置していることを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の触覚センサー素子において、
前記基板は、さらに第三の開口部および第四の開口部を有し、
前記支持膜は、さらに前記第三の開口部および第四の開口部を覆い、
前記支持膜上、かつ前記第三の開口部の上方に配置された第三の検出部と、
前記支持膜上、かつ前記第四の開口部の上方に配置された第四の検出部と、をさらに備え、
前記第三の検出部および第四の検出部のそれぞれは、前記支持膜側から順に下部電極、圧電体および上部電極が積層されて構成された圧電積層部を備え、
前記基板の厚み方向で見た平面視において、前記第一の開口部、前記第二の開口部、前記第三の開口部および前記第四の開口部は、前記第一の開口部の重心および前記第三の開口部の重心を結ぶ第三の線分と、前記第二の開口部の重心および前記第四の開口部の重心を結ぶ第四の線分とが離間するように配置され、
前記弾性部材は、前記平面視において、少なくとも、前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部、前記第四の検出部、並びに前記第一の検出部と前記第二の検出部と前記第三の検出部と前記第四の検出部とを頂点とする4角形領域の支持膜の上を覆い、
前記平面視における前記弾性部材の重心は、前記平面視における前記4角形領域に位置し、
前記第一の検出部および前記第三の検出部は、電気的に直列に接続され、かつ
前記第二の検出部および前記第四の検出部は、電気的に直列に接続されている
ことを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の触覚センサー素子において、
前記弾性部材の表面に前記基板面と平行な表面を有し、前記弾性部材よりも剛性が大きい剛性層が配置されている
ことを特徴とする触覚センサー素子。
【請求項7】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の触覚センサー素子と、
前記第一の検出部および前記第二の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備える
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項8】
請求項4に記載の触覚センサー素子と、
前記第一の検出部、前記第二の検出部、前記第三の検出部および前記第四の検出部の各々から電気信号を受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備える
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項9】
請求項5に記載の触覚センサー素子と、
前記第一の検出部および前記第三の検出部からの電気信号と、前記第二の検出部および前記第四の検出部からの電気信号とを受信して当該電気信号の極性に基づいて、前記弾性部材に作用する剪断力を検出する処理部と、を備える
ことを特徴とする触覚センサー装置。
【請求項10】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載の触覚センサー装置を備えて、対象物を把持する把持装置であって、
前記対象物を把持するとともに、前記対象物に接触する接触面に前記触覚センサー装置が設けられる少なくとも一対の把持アームと、
前記触覚センサー装置から出力される前記電気信号に基づいて、前記対象物のすべり状態を検出する把持検出手段と、
前記すべり状態に基づいて、前記把持アームの駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする把持装置。
【請求項11】
請求項7から請求項9までのいずれかに記載の触覚センサー装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−36759(P2013−36759A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170536(P2011−170536)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】