説明

計測システム

【課題】構成の自由度を大幅に向上させ、アプリケーションソフトのカスタマイズ化についてのユーザの要望に応えるユーザフレンドリーな計測システムを提供する。
【解決手段】本発明の計測システムは、“アナログ計測信号を出力するセンサ”と、“AD変換手段と、演算手段と、記憶手段と、USBコントローラとを備え、前記センサと1対1に接続され、入力された前記計測信号を測定対象項目の計測データに変換してUSBコントローラを介して外部へ出力する機能を有し、電源部、操作部及び表示部を有しないUSB変換器”と、“前記USB変換器とUSB端子を介して接続され、前記USB変換器の電源部、操作部及び表示部として機能するコンピュータ”とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は計測システムに関わり、特に、センサにより計測した計測信号をUSBケーブルを介してコンピュータのUSB端子に伝送するUSB変換器を備えた計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
環境、プロセス、ラボラトリー及び工業用分析機器の分野においては、各種センサからの計測信号を測定対象項目の計測値に変換して表示したり、アナログ伝送出力などに変換して出力したりする計測機器を総称して変換器と呼んでいる。通常この変換器には、変換器自身の設定を行なったり、センサの制御を行うために、スイッチ等の操作部が設けられている。
【0003】
図7に従来の変換器を示す。同図において、変換器10はセンサ11と外部電源12に接続され、変換器10の出力は必要に応じてAD変換装置13を介してコンピュータ14に接続されている。前記変換器10は、計測のための計測部101とスイッチ等の操作部102と計測データを表示する表示部103から構成されている。
【0004】
図7における、計測動作を、順を追って説明する。初めに、センサ11が計測できる準備を行う。その後、変換器10の電源をオンする。次に、変換器10を設定モードにして、測定範囲の上限値・下限値の設定、アラーム設定点の設定、温度補償のための設定、応答速度設定等の各種設定を変換器10の操作部102で行う。変換器10の計測準備を完了すると、次に変換器10を測定モードにして、計測を開始する。前記センサ11から出力された計測信号は計測部に送られて、例えば、pHや温度などの測定対象項目の計測データに変換され、表示部103において表示される。さらに、変換器10のモードを伝送モードに切り替えると、計測データはコンピュータ14に送られ、解析される。
【0005】
従来、前記計測データをこの種の変換器からコンピュータへ送るための伝送方式として、アナログ伝送(DC4〜20mA等)もしくはRS−232C等のシリアルデータ通信が用いられていた。
アナログ伝送の場合は、破線で示すように一旦デジタル信号へ変換するためのAD変換装置13が必要であり、コンピュータ14に接続する前に別異の装置が必要となる。
また、RS−232Cによるシリアル通信の場合はAD変換装置は不要であるが、RS−232Cを搭載する機種は少なく、高額なものが多いため、環境、プロセス、ラボラトリー及び工業用分析機器の分野において、RS−232Cを活用した計測システムの普及は進んでいない(参考文献1)。
【0006】
他の方式として、GPIB(General Purpose Interface Bus)インタフェースがある。これは1本のバス上に機器をデイジーチェーン接続することができる。しかし、これを使うためには装置は体積も100cm3以上と大きく、独立電源が必要であった。GPIBは3線ハンドシェイクという方法を使用して、確実なデータ転送を保証するものである。データ転送は確実であるが、設定と計測値の読取りを繰り返すような場合は、動作が遅くなる(参考文献2)。
GPIBには高速バージョンに対応した機種もあるが、大量のデータを転送(波形データ等)するものである。GPIBのケーブルの長さは規格で決まっているし、高価なケーブルは頑丈で、かさばるものである。
【0007】
従来、複数の計測データをコンピュータで処理する場合、図8のように、センサ11a〜11e、変換器10a〜10e、コンピュータ14a〜14eの組合せを複数設けて、これをデータ管理装置15で処理を行っていた。このため、システムとしてかなり大規模なシステムになっていたので、スペース、コストの点で問題があった(参考文献3)。
また、コンピュータ14が変換器10を制御することができず、電源も外部からとらねばならなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】横河技報 vol.44、No.1、2000、PP19-24
【非特許文献2】http://www.ocs-lv.co.jp/LabVIEW/Sub3_5.htm
【非特許文献3】http://toyonakakeisou.com/02FA/01Keisoku/01Keisoku.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の変換器10を、別の機器に組み込んで使用するとき種々の制約条件があり、組込みを阻害していた。例えば、計測値の確認は、変換器の表示メータ、デジタル表示を使って確認し、種々の設定、操作は変換器のボタン、キーで行っていたので、機器の表面部分に変換器を組込まざるを得なかった。図9にパネル16をカットして変換器10を取り付ける例を示す。17は固定するための固定具である。
このように、計測システムで使用される変換器を別の機器に組込む際の設計の自由度が大きく制限されていた。
また、従来の計測システムを使って計測したデータをパソコンを使って処理し、解析する場合、従来の変換器では計測データはアナログ信号として出力されているために、これをデジタル信号に変換してパソコンに入力していた。このため信号変換時に変換誤差が発生し、データの精度が低下するという問題もあった。また、AD変換装置も必要でありコストアップの原因であった。
【0010】
他の問題として、次の問題があった。従来、ユーザに提供するソフトウェアは、汎用の画一的なものであった。これに対し、ユーザの要求は多種多様であり、アプリケーションソフトのカスタマイズ化についてのユーザの要望は大きく、専用アプリケーションソフトのプログラムソースコードの公開が求められていた。しかしソースコードの公開はノウハウを含む情報を開示することになるので困難であった。このため、ユーザの要望に対し十分な対応は為されていなかった。
【0011】
本発明の課題は、従来型の計測システムにおける上記問題点を解決することである。つまり、計測システムで使用される変換器を別の機器へ組込む際の自由度の確保、信号変換による変換誤差・AD変換装置のコストの改善、複数データの同時処理、アプリケーションソフトのカスタマイズ化についてのユーザの要望に応えるユーザフレンドリーな計測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題に対し、本発明の計測システムは、環境、プロセス、ラボラトリー及び工業用分析機器のセンサからの計測信号を、測定対象項目の計測データに変換して、USBケーブルを通してコンピュータのUSB端子へ直接接続できるように構成することにより、計測結果の観察、記録、保存、データの解析を行うことができる構成としたものである。このとき同時に、前記USBケーブルを通して、コンピュータからの制御信号により変換器を制御し、変換器の電源の供給を受けることができる。また、1台のコンピュータを使って複数の計測を同時に行い処理し、複数の計測データの処理解析を行うシステムが実現された。
【0013】
本発明の第1の形態は、“アナログ計測信号を出力するセンサ”と、“AD変換手段と、演算手段と、記憶手段と、USBコントローラとを備え、前記センサと1対1に接続され、入力された前記計測信号を測定対象項目の計測データに変換してUSBコントローラを介して外部へ出力する機能を有し、電源部、操作部及び表示部を有しないUSB変換器”と、“前記USB変換器とUSB端子を介して接続され、前記USB変換器の電源部、操作部及び表示部として機能するコンピュータ”とを備えた計測システムである。
本発明の第2の形態は、前記USB変換器の記憶手段には、USB変換器の制御に必要な機能及び指令が予めコマンド(命令語)として定義されて記憶され、
前記コマンドに対応して命令を実行するプログラムが予め記憶されていることを特徴とする前記第1の形態の計測システムである。

本発明の第3の形態は、前記コンピュータから前記定義された前記コマンド(命令語)が入力されると、USB変換器が前記予め記憶されているプログラムを実行することを特徴とする前記第2の形態の計測システムである。
【発明の効果】
【0014】
USBケーブルを使用すると、信号送受、電源受給を、1本のケーブル接続によって行うことができる。このため、本発明によれば、計測データをコンピュータのディスプレイ上に表示すること、計測するために必要な各種の設定操作をコンピュータ側で行うこと、前記設定を本発明の計測システムで使用されるUSB変換器に接続されたコンピュータの画面において確認することができる。前記USB変換器の動作に必要な、例えばDC電源(DC5V500mA)が供給されるので、前記USB変換器には別電源を設ける必要も無い。
また、本発明の計測システムで使用されるUSB変換器は、設定、操作用のキー、表示用のメータ、デジタルディスプレイを設ける必要がなく、また小型であるので、別の機器に組込む場合、組込み箇所に制限が無く、従って装置の形状、組込み設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0015】
本発明の計測システムにおいて、前記USB変換器から出力される信号は、デジタル信号であるために、コンピュータへの入力に際してAD変換する必要がない。このため精度の高い計測データを得ることができる。さらにAD変換装置等の付属装置も不要になる。
【0016】
また、市場に出回っている大半のコンピュータ(デスクトップ型、ノートブック型共に)には、USB接続のための端子が設けられており、最も普及している接続方法である。
【0017】
さらに、従来の変換器では、実際の使用現場の電源品質により、過度のノイズ等の外乱影響を受け、変換器の誤動作などの要因となっているケースがあったが、USBケーブルを使うと、コンピュータから供給される電源は、コンピュータ(USBインターフェース)の技術規格によって電源品質が保証されており、変換器の安定動作を実現できる。また、1台のコンピュータを使って同時に複数の計測を行い、データ処理を行い、複数の計測データの処理解析を行うシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の計測システムのブロック図である。
【図2】本発明の計測システムで使用されるUSB変換器のブロック図である。
【図3】本発明の計測システムで使用されるUSB変換器の機能ブロック図である。
【図4】複数の計測を行う際のUSB変換器とセンサ、コンピュータとの接続を示す計測システムのブロック図である。
【図5】本発明の計測システムで使用されるUSB変換器の概観を表す斜視図である。
【図6】本発明の計測システムを使ったpH、ORP測定のための結線を示す図である。
【図7】従来の変換器の構成と、センサ、コンピュータとの接続を示す図である。
【図8】従来の複数の計測を行う際のUSB変換器とセンサ、コンピュータ、データ管理装置との接続を示す図である。
【図9】従来の変換器を別異の装置に組込んだ状態を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の計測システムを示したものである。センサ1はUSB変換器2に接続され、USB変換器2はUSBケーブル3を介してコンピュータ4に接続される。センサ1の計測信号はUSB変換器2に入り、USB変換器2は、コンピュータ4に測定対象項目の計測データを送る。同時にコンピュータ4はUSBケーブル3を介してUSB変換器2に対し後述するコマンド(命令語)を送り、動作設定を行い、測定値の確認ができ、演算についての指令を行い、さらにデータ処理解析を行うように構成されている。なお、USB変換器2は、USBケーブル3を介してコンピュータ4から電源の供給を受ける。
【0020】
図2は本発明の計測システムで用いられるUSB変換器2の構成を示す。USB変換器2は、入力手段である入力コネクタ23、並びに信号を処理する信号処理手段であるCPU21及びUSBコントローラ22並びに出力手段であるUSB端子24を有している。
CPU21はUSBコントローラ22と接続されており、USBコントローラ22はUSB端子24と接続されている。USB端子24はUSBケーブル3を介してコンピュータ4に接続されている。
【0021】
計測信号はセンサ1からCPU21に送られて測定対象項目の計測データに変換される。そして、計測データは、USBコントローラ22、USB端子24を経て、USBケーブル3を通ってコンピュータ4に送られる。コンピュータ4からの信号はUSBケーブル3、USB端子24を経てUSBコントローラ22、CPU21に送られる。図中、破線は電源ラインであり、USB変換器2の電源はコンピュータ4から供給される。
【0022】
CPU21は、AD変換器211、演算回路212、メモリ213を有している。AD変換器211は演算回路212と接続しており、演算回路212はメモリ213と接続されている。AD変換器211はセンサからのアナログ計測信号をデジタル信号に変換し、演算回路212に出力する。演算回路212は、AD変換器211の出力、メモリ213に記憶されたデータ、プログラムを用いて前記デジタル信号を測定対象項目の計測データに変換する等の演算を行い、演算結果をメモリ213に記憶させ又はUSBコントローラ22に出力する。メモリ213には、USB変換器2を識別する識別子、計器の設定値、変換器に関するファームウェアが記憶されている。
【0023】
コンピュータ4がUSB変換器2を識別できるようにするために各々のUSB変換器2は識別子を有しているが、メモリ213にはこのUSB変換器2の識別子が記憶されている。この識別子を使ってコンピュータ4は、異なる複数の計測(例えば、pHとORPの計測等)について、各変換器2aないし2e毎に、設定、測定、伝送モードを切替えることができ、各種の設定を個別に行うことができ、それぞれの計測を管理することができる。
USB変換器2ごとに測定対象項目が決められているが、この区別をするためにUSB変換器2の扱う測定対象項目を表す識別子がメモリ213に記憶されている。
【0024】
USBコントローラ22は、CPU21とコンピュータ4とのインターフェースである。CPU21から受取ったデータをコンピュータ4に送り、また、コンピュータ4からの信号を前記ケーブル3、USB端子24を通してCPU21に送る。
【0025】
図3は本発明の計測システムで用いられるUSB変換器2を機能面から表したブロック図である。USB変換器2は少なくともAD変換手段26、機能手段27を有している。機能手段27は少なくともタイムスタンプ手段271、コマンド実行手段272から構成されている。
【0026】
AD変換手段26は、センサからのアナログ計測信号をデジタル信号に変換するものであり、図2のAD変換器211と同一である。
機能手段27のタイムスタンプ手段は計測時間271を計り、計測データにタイムスタンプを付加する。
【0027】
コマンド実行手段272は、コンピュータから送られるコマンド(命令語)を解釈して、USB変換器2においてコマンド(命令語)に対応するプログラムを実行する。具体的にはアラーム設定、測定範囲設定、タイマーの設定等の機器を設定するためのコマンド(命令語)及び得られた計測データの補正演算等を行うコマンド(命令語)に対応するプログラムの実行を行う。
【0028】
本発明の計測システムの特徴の1つは、ユーザのために予めUSB変換器2の制御に必要な全ての機能、指令をコマンド(命令語)として定義し、この内容を実行する手段(コマンド実行手段)を設けている点である。本発明において、コマンドとは、変換器にて処理を実行させるための命令語を意味する。
【0029】
通常、ソフトウェアを使って装置を制御する場合、コマンドの内容(コマンドによる動作、演算式の内容)を制御用プログラムに直接書き込む。この場合、コマンドの内容(特に演算式や、数値補正手段)は重要なノウハウを含む場合があり、一般ユーザに対して開示することが出来ない場合が多い。
このため、ユーザは独自の制御用プログラムを作成することができない。仮に演算式を提供した場合、ユーザが正しく演算を理解していないと予期しない演算結果となることも起こりうる。
【0030】
そこで、発明者らは、設定条件、複数の式や処理による命令文を1行のコマンド(命令語)として定め、変換器のメモリにその処理内容を記憶させ、制御用プログラムにおいて命令語を指定して実行する方式を案出した。これにより、条件設定、重要な式や演算の詳細を公開することなく、ユーザに対してアプリケーション構築に必要な環境を提供することが可能となる。
【0031】
以上のとおり、コマンド(命令語)には変換器の設定に関するものと、演算内容に関するものがある。具体的なコマンド実行手段は、前記コマンド(命令語)に対応して、命令を実行するプログラムを予めメモリ213のプログラムエリアに記憶させ、演算回路212によりこれを実行させるように構成されている。
【0032】
上記のような構成になっているので、コンピュータ4からUSB変換器2に対しコマンド(命令語)を送ると、同コマンド(命令語)に対応した処理が変換器2のメモリに記憶されたプログラムと演算手段212を使って実行される。
【0033】
pH測定のための変換器のコマンド(命令語)の例を以下に示す。
1. 条件設定のコマンド(命令語)の例
OFFSET:
pH7における起電力を設定し、メモリに保存する。
CRACK:
電極クラック検知機能を設定し、メモリに設定を保存する。
【0034】
2. 演算のコマンド(命令語)の例
CAL:
例えば、計測データとしての実質的な値である真値Cは、センサ1で測定された測定値Aからオフセット値である補正値Bを引いて求められるが、真値算出というユーザに用意されたコマンドCALがコンピュータ4から送られると、USB変換器2において、C=A−Bの処理が実行される。
TEMP_COMP:
このコマンドは、pH値の試料水温度補償機能を設定し、メモリに設定を保存するものである。試料水温度補償機能は試料水のpH温度特性の補償を行うもので、下式によりpH値について温度補償が行われる。
補償後のpH値 = 生のpH値 -( 試料水温度−25℃) × 試料水温度補償係数
上記式において、試料水温度補償係数は試料水の温度が1℃変化したときのpH値の変化量である。この値は個々の試料水によって異なる。
【0035】
次に図2を参照しながら動作を説明する。初めに、本件発明の計測システムで使用されるUSB変換器2がコンピュータ4からUSBケーブル3を介して接続されると、USB変換器2は動作電源を得てスタートアップされる。すると、変換器識別子、センサ識別子が自動的にコンピュータ4に送られる。次にUSB変換器2は、コンピュータ4からのコマンド(命令語)により計測のための設定モードを設定する。即ち、USB変換器2はコンピュータ4から前記各種設定用のコマンド(命令語)を受取り、必要な設定を行って計測準備を行う。
【0036】
計測準備が完了すると、コンピュータ4からのコマンド(命令語)によりUSB変換器2は計測モードに設定される。このモードにおいて、センサ1は所定の計測を行う。この計測された信号はアナログ信号であるが、USB変換器2に送られると、AD変換手段22によりAD変換され、デジタル信号に変換される。さらに、CPU21の演算手段212において、予めメモリ213に記憶されているデータ及びプログラムを基にして前記デジタル信号に対する温度、ハードウェアの個体差に対する補正、ユーザが予め指定する条件の下で演算が行われ、最終的に計測データが出力される。即ちAD変換されたデジタル信号は、例えばセンサから発生した起電力を電圧とするものであるが、pHを測定項目とする場合には、この電圧値に対応するpH値を表すデータに変換され、補正等の演算が行われて最終的な計測データとされる。他方、タイムスタンプ手段271が計測時間を計時し、前記デジタル信号に計測時刻を表すタイムスタンプを付与する(図3参照)。
【0037】
前記計測データはUSB変換器2から出力され、USBケーブル3を通って、コンピュータ4に入力される。
【0038】
ユーザが計測値、例えば、pH値に対する温度補償をする場合、コンピュータ4上で動作するアプリケーションソフトウェアからTEMP_COMPコマンドを変換器2に送る。すると、CPU21の演算手段212がメモリ213に予め記憶されているコマンド(命令語)の中からTEMP_COMPコマンドを識別して、指定された演算(動作)を行い温度補償の設定を実行する。別のコマンド(命令語)の場合もこれと同様に、コンピュータ4上のアプリケーションソフトウェアからのコマンド(命令語)をUSB変換器2に送ると、USB変換器2において前記コマンド(命令語)が識別され指定された機能、演算が実行される。実行された結果はメモリ214に保存され、又はUSBコントローラを介してコンピュータ4へ送られる。
【0039】
図4は、複数のUSB変換器2a−2eが1台のコンピュータ4に接続された構成を示す。コンピュータ4は前記変換器識別子を使って、接続された複数のUSB変換器2a−2eを自動判別し、計測データを管理することができる。この例では5つであるが、例えば最大12台までのUSB変換器を自動判別することができる。この際、各種センサ種別(測定対象項目)を意識する必要なく扱うことができる。なお、変換器識別子とセンサ識別子を組合わせ、計測対象項目を確実にすることができる。
【0040】
図5は、USB変換器2の概観を示す斜視図であり、23はセンサからの信号を入力する入力手段、即ちセンサからの信号線を接続する接続コネクタである。同コネクタ23の反対側には、USBケーブルを介してコンピュータとの間でデータの授受を行うコンピュータとの接続手段、即ちUSBケーブルに接続するためのコネクタ(USB端子24)が設けられている(当業者に周知であるから図示しない)。
【0041】
図6に本発明の計測システムの一例を示す。
本発明の計測システムで使用されるUSB変換器を2個(2a、2b)使って、pHセンサ1a及び酸化還元電位(ORP:Oxydation Reduction Potential)センサ1bの計測信号を計測する例である。USB変換器2a、2bの入力側端子は、それぞれpHセンサ1aならびにORPセンサ1bに接続され、出力側端子はUSBケーブル3a,3b、ハブ5を介してコンピュータ4に接続される。同図においてセンサからの計測信号は、温度データを含め4ラインを通してUSB変換器に送られる。この構成においては、溶液のpH計測データ、測定溶液の温度計測データ、ORP測定溶液のORP計測データが同時にコンピュータ4に取り込まれ、コンピュータ4のディスプレイ上に同時に表示される。
【0042】
従来からのインターフェースであるRS−232Cでは2つ以上の計測データを同時にコンピュータに読込むことはその仕様上困難であった。また、GPIBインターフェースを使って本発明と同様なシステムを構築することは可能であるが、一般的にインターフェース、ケーブルは高価であり、コンピュータに複数データを同時に取込み、表示させるには、特別なプログラムを作成しなければならなかった。
【0043】
本発明によれば、複数の前記USB変換器、市販されているUSBハブを使ってコンピュータに接続することにより複数のUSB変換器を簡単に接続でき、また、コンピュータ側で各USB変換器を自動的に識別でき、各計測データを自動的に計測、表示、保存することができるので、このためのプラグラムを作成する必要も無い。計測データには計測時間が付加されるので自動的にデータの変化を表示することができる。またコンピュータによる解析において、前記時間データを有効に使って解析することができる。さらに、USB変換器への電源供給はコンピュータから行われ、USB変換器本体もこの種の変換器と比較して小型であるため、実験を省スペースで行うことが出来る。この実験では、奥行30cm、幅60cmの机上に、コンピュータ、USB変換器2台、USBハブ、pHセンサ、ORPセンサを準備した。USBケーブル接続後、pH,pH溶液温度、ORPの3つのパラメータを1秒ごとに読取り、同時にディスプレイ(図示しない)上に表示させ、記憶することができた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
環境、プロセス、ラボラトリー及び工業用分析機器の分野において、計測データを直接コンピュータが扱え、しかも複数データを同時に処理できるのでその利用可能性は極めて大きい。さらに、本発明の計測システムで使用されるUSB変換器は、小型であり、無電源として扱えるので、USB変換器を装置に組込む場合、設計の自由度が高く、システム構築が極めて有利になる。特に、pHセンサ、ORPセンサと接続するものにおいて実用性が高いことが上記のとおり検証されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境、プロセス、ラボラトリーおよび工業用分析機器の分野における計測システムであって、
(A)アナログ計測信号を出力するセンサと、
(B)
(a)AD変換手段と、演算手段と、記憶手段と、USBコントローラとを備え、
(b)前記センサと1対1に接続され、入力された前記計測信号を測定対象項目の計測データに変換してUSBコントローラを介して外部へ出力する機能を有し、
(c)電源部、操作部及び表示部を有しない
USB変換器と、
(C)前記USB変換器とUSB端子を介して接続され、前記USB変換器の電源部、操作部及び表示部として機能するコンピュータと、
を備えた計測システム。
【請求項2】
前記USB変換器の記憶手段には、USB変換器の制御に必要な機能及び指令が予めコマンド(命令語)として定義されて記憶され、
前記コマンドに対応して命令を実行するプログラムが予め記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記コンピュータから前記定義されたコマンド(命令語)が入力されると、USB変換器が前記予め記憶されているプログラムを実行することを特徴とする請求項2に記載の計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−216101(P2011−216101A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127609(P2011−127609)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【分割の表示】特願2006−31646(P2006−31646)の分割
【原出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(506045657)
【出願人】(500473807)山形東亜DKK株式会社 (4)
【Fターム(参考)】