計算機ホログラムを有する表示体及びラベル付き物品
【課題】 意匠性及び記録情報の隠蔽効果を向上させうる表示体を提供することにある。
【解決手段】 光透過性基材111と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層13と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層12とを備えた表示体10であって、凹凸構造形成層13は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備え、該単位領域は、複数のセル、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成され、該ドットは、複数の凹凸構造であり、且つ、その周囲の部分が基材面と略平行な平坦部であり、そのドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定となる計算機ホログラムを有する表示体である。
【解決手段】 光透過性基材111と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層13と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層12とを備えた表示体10であって、凹凸構造形成層13は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備え、該単位領域は、複数のセル、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成され、該ドットは、複数の凹凸構造であり、且つ、その周囲の部分が基材面と略平行な平坦部であり、そのドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定となる計算機ホログラムを有する表示体である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した情報を物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録した計算機ホログラムを有する複数のセル内にそれぞれ異なるドット構造を配置し、意匠性及び記録情報の隠蔽効果を向上させる計算機ホログラムを有する表示体及びラベル付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商品券及び小切手などの有価証券類、クレジットカード、キャッシュカード及びIDカードなどのカード類、並びにパスポート及び免許証などの証明書類には、それらの偽造を防止するため、通常の印刷物とは異なる視覚効果を生じさせる表示体が貼り付けられている。また、近年、証券類,カード類,証明書類等以外の物品についても、偽造品の流通が社会問題化している。そこで、上記証明書類等以外の物品に対しても、同様の偽造防止技術を適用する機会が増えてきている。
【0003】
偽造防止効果を発揮する表示体としては、複数の溝を並べてなる回折格子を含んだ表示体が知られている。この表示体には、例えば,観察条件に応じて変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができる。しかしながら、通常の印刷技術では、回折格子が表現する虹色に輝く分光色を表現することができない。そのため、回折格子を含んだ表示体は、偽造防止対策を必要とする物品に広く用いられている。
【0004】
従来、回折格子を含んだ表示体としては、幾つかの偽造防止に関する技術が提案されている。
【0005】
その1つの偽造防止に関する技術としては、溝の長さ方向又は格子定数(即ち溝のピッチ)が異なる複数の解析格子を配置して絵柄を表すように表示することが記載されている(特許文献1)。
【0006】
この例は、回折格子に対する観察者又は光源の相対的な位置が変化したとき、観察者の目に到達する解析光の波長が変化する。従って、上記のような構成を採用した場合、虹色に変化する画像を表現することができる。
【0007】
さらに、他の1つとなる表示体の偽造防止効果を向上させる方法としては、太陽や蛍光灯などの白色照明光源下で肉眼観察することが難しいが、レーザービームなどの特殊な光源が照明された時のみ、隠蔽画像を再生することが可能なフーリエ変換型の計算機ホログラムが公知である。これは、予め情報が記録されたフーリエ変換型ホログラムに、レーザービームなどの光(コヒーレント光)が入射すると、1次回折光により記録された情報が再生される。なお、計算機ホログラムについては、例えば非特許文献1に記載されている。
【0008】
一般に、ホログラムは、実際の物体(被写体)からの物体光と参照光による干渉現象を利用して作製されるものであるが、計算機ホログラムは、計算機上で対象物に相当する対象物データを元に干渉縞をデジタルデータとして表した干渉縞データを作製し、それを感光フィルムなどの媒体に記録して作製される。
【0009】
従って、計算機ホログラムとしては、計算機を用いて、前述したフーリエ変換型ホログラムなどが持つことになる干渉縞データを算出し、この算出された干渉縞データを各種の手法により、ホログラムと同様な機能(回折現象による情報再生を行う)を奏するように、対象物に関する特定情報が記録される。
【0010】
なお、計算機ホログラムの構成としては、ホログラム画面全面にわたる計算機ホログラムを配置する手法の他、計算機ホログラムからなる微小なセルを構成単位として、計算機ホログラム全体を構成する手法も採用されている。このような構成の計算機ホログラムをセル型計算機ホログラムと称する。
【0011】
このような手法を用いれば、情報再生される絵柄全体が計算機ホログラムにより構成されていないので、任意のセルにだけ特定情報を記録させた計算機ホログラムを配置することができ、そのセルの存在を知る者以外に対して、特定情報を隠蔽させることが可能となる。
【0012】
一般に、フーリエ変換型のセル型計算機ホログラムを、太陽や蛍光灯などの白色の照明光(インコヒーレント光)により照明して射出される回折光を肉眼で観察すると、白濁した領域として知覚され、計算機ホログラムを応用した表示体の意匠性を低下させる原因となっていた。白濁した領域として知覚される理由は、フーリエ変換像が各波長毎に再生されてしまうことに起因する。
【0013】
また、このような計算機ホログラムを用いて特定情報を表示体内に混入させて隠蔽を図る際、白濁した領域として知覚される箇所に前記特定情報が隠蔽されていることを推測させてしまう問題を有している。
【0014】
ところで、このような回折格子やフーリエ変換型計算機ホログラムを利用した表示体では、回折格子やセル型計算機ホログラムの構造が微細なレリーフ構造(凹凸構造)として加工されているのが一般的である。微細なレリーフ構造は、通常、フォトリソグラフィを利用して製造した原版から複製することにより得られる。
【0015】
特許文献1には、微細レリーフ構造の原版の作製方法として、一方の主面に感光性レジストを塗布した平板状の基板をXYステージ上に載置し、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら感光性レジストに電子ビームを照射することにより、感光性レジストをパターン露光する方法が記載されている。
【0016】
通常、微細レリーフ構造の製造は、先ず、特許文献1のような方法により原版を形成し、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。次いで、金属製スタンパを母型として用いて、微細レリーフ構造を複製する。即ち、まず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)からなるフィルム又はシート状の薄い透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、微細レリーフ構造の複製物を得る。
【0017】
一般に、このような微細レリーフ構造は透明である。従って、通常、レリーフ構造を設けた樹脂層上には、蒸着法を用いてアルミニウムなどの金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
【0018】
その後、以上のようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付けることにより、偽造防止対策を施した表示体を得る。
【0019】
微細レリーフ構造を含んだ表示体の製造に使用する原版は、それ自体の製造が困難である。また、金属製スタンパから樹脂層へのレリーフ構造の転写は、高い精度で行わなければならない。即ち、微細レリーフ構造を含んだ表示体の製造には高い技術が要求される。
【0020】
しかしながら、偽造防止対策が必要な多くの物品では、回折格子やセル型計算機ホログラムなどの微細レリーフ構造を含んだ表示体が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、それに伴って偽造品の発生も増加する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5058992号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】辻内順平著、「ホログラフィー」、株式会社裳華房、1997年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、以上のようなドットを内包した複数のセルで構成されるセル型計算機ホログラムは、白色光(インコヒーレント光)による照明下で回折光を肉眼で観察する場合、回折光による再生像が各波長毎に再生される。そのため、フーリエ変換型のセル型計算機ホログラムは、角度依存性が低く白濁した領域として知覚される。通常、計算機ホログラムは、情報の記録を目的として作製されることから、その記録されたパターンを肉眼で観察した際にどのように知覚されるかは言及されず外観に意匠性を求めることはなされていない。
【0024】
その結果、計算機ホログラムが記録された領域では単純な白濁色の単一パターンであることが多く、回折等の光学特性を有するパターンや、印刷によるパターン,特殊顔料によるパターン等と共存した際に、違和感のある領域として認識されてしまう。このように、他の領域と異なる雰囲気を与えてしまうことは表示体の意匠性を低下させるだけでなく、パターン内に混在させた記録情報の存在を推測させることにつながり、情報の隠蔽効果を損ねることにもなる。
【0025】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであって、情報記録(再生)の機能を損なうことなく、意匠性及び記録情報の隠蔽効果を向上させうる計算機ホログラムを有する表示体及びラベル付き物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、光透過性の基材と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層とを備えた表示体であって、前記凹凸構造形成層は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備えており、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域は、複数のセルによって構成され、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成されており、前記ドットは、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部となる構成であり、前記ドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定であることを特徴とする計算機ホログラムを有する表示体である。
【0027】
請求項2に対応する発明は、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域が複数個隣接配置され、これら単位領域毎のドットの前記構造高さ、前記構造深さが変化するように構成したことを特徴とする請求項1に対応する発明に記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0028】
請求項3に対応する発明は、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域毎に少なくとも0.020μm以上異なるようなドットの構造高さ、構造深さとすることにより、認識可能な異なる色を表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に対応する発明に記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0029】
また、請求項4に対応する発明は、前記構造高さ、前記構造深さが変化しているドットで構成される前記各単位領域を画素とし、絵柄や文字,数字,記号等の画像情報を記録し表現していることを特徴とする請求項1ないし請求項3に対応する発明の何れか一つに記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0030】
また、請求項5に対応する発明は、前記基材の一方面側に前記計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域には回折格子パターン、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一種類を施すことを特徴とする請求項1ないし請求項4に対応する発明の何れか一つに記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0031】
さらに、請求項6に対応する発明は、偽造防止の対象となる物品に、前記請求項1ないし請求項5の何れか一項に対応する発明に記載の表示体を適宜な支持手段により支持することを特徴とするラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に対応する発明の構成によれば、複数のドットから構成されるフーリエ変換型計算機ホログラムにおいて、各ドットは、上面が基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部に形成され、ドットの構造高さ、又は構造深さが単位領域内で一定であることから、肉眼で観察した際に、構造高さ、又は構造深さの値に応じた可視光波長のうちの特定の波長の光が干渉によって弱まり他の波長成分の光による固有の色を表示させることが可能になる。また、この表示体は、レーザービームなどのコヒーレント光によって照射されることによって、肉眼では視認不可能な隠蔽画像を回折による再生像として射出することが可能となる。
【0033】
これに対して、従来の計算機ホログラムは、肉眼で観察した際に白濁した単一のパターンが見られるが、本発明に係る表示体では呈色したパターンを表示させることが可能である。呈色が可能になることで、意匠性が向上するとともに、コヒーレント光による像再生が可能な領域の位置をより推測させづらくする効果が得られる。
【0034】
また、請求項2に対応する発明の構成によれば、表示体内にドットの構造高さ、構造深さが異なるフーリエ変換型計算機ホログラムを構成する単位領域を複数個隣接配置するとともに、単位領域毎のドットの構造高さ、構造深さが変化していることで、肉眼で観察した際に、各単位領域がそれぞれ異なる固有色を表示することが可能となる。また、レーザービームなどのコヒーレント光を入射した際には従来の計算機ホログラムと同様に隠蔽画像を再生することが可能である。ドットの構造高さ、構造深さが異なる単位領域を複数備えていることで、複数の固有色を表示可能であり、意匠性の向上をより一層見込むことが可能となる。
【0035】
また、請求項3に対応する発明の構成によれば、単位領域毎のドットの構造高さ、構造深さを0.02μm以上異ならせることにより、相互に認識可能な異なる色で表現することが可能である。
【0036】
また、請求項4に対応する発明の構成によれば、ドットの構造高さ、構造深さが異なる単位領域を画素と見なし、多色による絵柄や文字,数字,記号等の画像を表現することが可能となる。
【0037】
さらに、請求項5に対応する発明の構成によれば、基材の一方面側に計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域に、回折格子、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のいずれかを施すことにより、表示体の意匠性をさらに高めることができ、さらに高い偽造防止効果を実現できる。
【0038】
さらに、請求項6に対応する発明の構成によれば、従来の物品に高い偽造防止効果を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る表示体を構成するセル型計算機ホログラムの複数のセル及びセル内の構造を説明する図。
【図2】マトリクス状にセルを配置し、元となる情報の光の複素振幅データを記録させたセル型計算機ホログラムのパターンの一例を示す図。
【図3】複数個のセルの集まりから成るセル型計算機ホログラム(例えば図2参照)を1つの単位領域とし、これら複数の単位領域をマトリックス状に配置し、レーザービームを照射し、記録情報を再生する様子を説明する図。
【図4】本発明の一実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る表示体の図4のV−V線に沿う拡大断面図。
【図6】ピッチを狭くした回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に説明する図。
【図7】ピッチを広くした回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に説明する図。
【図8】白色照明光源の光を入射した際の本発明に係る表示体の状態を観察している様子を説明する図。
【図9】本発明の実施形態に係る計算機ホログラムデータ形成領域に設けられた複数の一定高さのドットに白色光を入射させたとき、当該計算機ホログラムデータ形成領域から射出する波長光を説明する図。
【図10】従来の計算機ホログラムに白色光を入射させたとき、当該計算機ホログラムの面から射出される光を説明する図。
【図11】ドットの高さが異なる複数の計算機ホログラムデータ形成領域によって画像を表現した一例図。
【図12】他光学機能発揮領域に採用可能な構造である反射防止構造体の一例を示す斜視図。
【図13】他光学機能発揮領域に採用可能な構造である光散乱構造体の一例を示す斜視図。
【図14】本発明の実施形態に係るラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図15】本発明の実施形態に係るラベル付き物品の図14に示すXV−XVに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似する機能を備えた構成体(要素)には同一の参照符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0041】
(1)セル型計算機ホログラムについて
図1はセル型計算機ホログラムを構成するセルの一例を説明する図である。同図において、1はセル型計算機ホログラムであって、複数のセル2から構成されている。
【0042】
このセル型計算機ホログラム1では、各セル2内部における光の複素振幅の振る舞いが1つないしは複数個の略矩形状のドット3で表現される。各セル2内部に配置されるドット3は、振幅の大小に応じてその面積が増減し、その位相がセル2の中心からの距離で表現される。
【0043】
すなわち、セル型計算機ホログラム1は、光の複素振幅データを記録する面上をセル単位に分割し、各セル2内での光の振る舞いをドット3の位置及び大きさによって表現したものである。
【0044】
図2は各セル2,…をマトリクス状に配置したセル型計算機ホログラム1の一例を説明する図である。セル型計算機ホログラム1では、対象となる情報を光の複素振幅の状態で記録するために、複数個のセル2,…が必要となる。通常、このように複数個のセル2,…で構成されるセル型計算機ホログラム1は、一辺数十μm程度の非常に小さな面積から成る。
【0045】
ところで、セル型計算機ホログラム1からレーザービームにより情報再生を行う場合、小さな面積のセル型計算機ホログラム1に対してレーザービームの位置合わせを行うことは困難であり、また、単独のセル型計算機ホログラム1からの回折光だけでは観察時に十分な輝度を得ることが難しく、再生像の観察が困難である。
【0046】
そこで、本実施形態においては、セル型計算機ホログラム1から記録情報を再生する場合、図3に示すような構成を採用し、記録情報の再生を行う。
【0047】
この記録情報再生手段は、複数個のセル2,…の集まりから成る計算機ホログラム1を一つの単位領域4とし、このような単位領域4をもつ複数個の計算機ホログラム1をマトリックス状に隣接配置することで、レーザービームの走査可能な面積を確保する。
【0048】
因みに、図3は、図2に示す100個のセル2,…からなるセル型計算機ホログラム1を単位領域4とし、縦5個×横5個の単位領域4をマトリックス状に配置したものである。このように単位領域4をマトリックス状に配置することで、レーザービームなどの光を入射するのに十分な大きさとなる。
【0049】
そこで、マトリックス状に配置された複数個の単位領域4,…に向けてレーザービーム等のコヒーレント光5を入射することで、任意のスクリーン上に再生像6を投影させることができ、記録された情報の再生を行うことが可能となる。
【0050】
また、光の複素振幅の振る舞いを示すドットを微細レリーフ構造として実現するセル型計算機ホログラム1の場合、前記ドットを凸状又は凹状または凹凸状に周囲の部分とは高さ(深さ)が異なるように加工する。このような凹凸状のドットを有する面に光を入射し、それら凹凸状から回折光を射出させると、周囲の部分との光路差(干渉する2つの光波がたどる光学的な距離の差)によって、記録された干渉縞データにもとづく再生光が射出される。
【0051】
(2)セル型計算機ホログラムを有する表示体について
図4は本発明の一実施形態に係る計算機ホログラムを有する表示体を概略的に示す平面図、図5は図4に示す表示体のV−Vに沿った断面図である。
【0052】
これらの図において、10はセル型計算機ホログラムを用いた表示体であって、この表示体10は、図5に示すように光透過層11と光反射層12との積層体を含んだ構成である。この例においては、光透過層11側が前面側(観察者側)、光反射層12側が背面側とし、且つ、光透過層11の一方面側,つまり背面側面側には凹凸構造形成層が施されている。
【0053】
図4及び図5に示す表示体10は、凹凸構造形成層に計算機ホログラムのドット3である、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部、もしくは上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、それらの周囲が基材面と略並行な平坦部に構成された計算機ホログラムデータ形成領域13を備えている。
【0054】
さらに、計算機ホログラムの光透過層11の一方面側には、計算機ホログラムデータ形成領域13とはその構造や光学的な性質が異なる他光学機能発揮領域14を備えている。他光学機能発揮領域14は、構造が形成されていない平坦面から成る領域であってもよい。また、計算機ホログラムデータ形成領域13及び他光学機能発揮領域14は、各々の表示体10に複数存在していてもよく、或いは1個の表示体10に1つも存在していなくてもよい。
【0055】
光透過層11の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂などの光透過性を有する樹脂を使用する。熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すれば、例えば、計算機ホログラムのドット3や他光学機能発揮領域14に設けられた構造が形成された金属製のスタンパから、一方の主面にそれらの凹凸構造が設けられた光透過層11を転写成形することができる。
【0056】
図5に示す光透過層11は、一例として、光透過性の基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成される。光透過性の基材111は、それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルムまたはシートであり、例えば、PETやポリカーボネート(PC)などを用いることができる。光透過性樹脂層112は、光透過性の基材111上に形成された層である。図5に示す光透過層11は、例えば、光透過性の基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し、この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることによって得られる。
【0057】
光反射層12は、例えば、アルミニウム、銀、金、及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層である。また、光反射層12としては、光透過層11とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよく、或いは、隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体、即ち、誘電体多層膜を使用してもよい。なお、誘電体多層膜が含む誘電体層のうち、光透過層11と接触しているものの屈折率は、光透過層11の屈折率とは異なっていることが望ましい。光反射層12は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0058】
なお、光反射層12としては、部分的に設けないようにすることも可能である。この光反射層12を部分的に設けない方法は、気相堆積法により光反射層12を設けた後、薬品などにより特定の部分のみを溶解させたり、光反射層12と光透過性樹脂層112との密着力よりも強い接着力をもつ接着材料によって特定部分の光反射層12を剥離する方法などがある。また、気相堆積法を行う前に光透過性樹脂層112の前面に障壁を設け光反射層12が形成されるのを防ぐ方法も用いられる。
【0059】
この表示体10は、接着剤層、樹脂層、印刷層などの他の層を更に含むことができる。接着剤層は、例えば、光反射層12を被覆するように設ける。表示体10が光透過層11及び光反射層12の双方を含んでいる場合、通常、光反射層12の表面の形状は、光透過層11と光反射層12との界面の形状とほぼ等しい。接着剤層を設ければ、光反射層12の表面が露出するのを防止できるため、先の界面の凹凸構造を偽造するときの複製を困難にすることができる。例えば、光透過層11側を背面側とし、且つ、光反射層12側を前面側とする場合は、接着剤層は、光透過層11上に形成する。
【0060】
また、樹脂層としては、例えば、使用時に表示体の表面にキズが付くのを防ぐ目的としたハードコート層や汚れの付着を抑制する防汚層、基材表面での光の反射を防止する反射防止層、帯電防止層などの機能を持たせることができる。樹脂層は、光透過層11及び光反射層12の積層体に対して前面側に設ける。例えば、光透過層11側を背面側とし、且つ、光反射層12側を前面側とする場合、光反射層12を樹脂層によって被覆することで、光反射層12の損傷を抑制できるのに加え、その表面の凹凸構造の、偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
【0061】
さらに、印刷層としては、光透過層11の観察者側や、光透過性樹脂層112と光反射層12の間などに設けるものとする。この印刷層を設けることで表示体の意匠性の向上や表示体10に表示される情報を容易に追加できる。
【0062】
(3)呈色の原理と計算機ホログラムデータ形成領域について
計算機ホログラムデータ形成領域13について説明するにあたり、まず、回折格子のピッチ及び照明光の波長と、照明光入射角及び回折光の射出角との関係について説明する。
【0063】
照明光源を用いて回折格子GRに照明光を照射すると、回折格子GRからは、入射光である照明光の進行方向に対応して特定の方向に強い回折光が射出される。
【0064】
このとき、m次回折光(m=0、±1、±2、・・・)の射出角βは、回折格子GRの格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記の式1から算出することができる。
d=mλ/(sinα−sinβ) …(式1)
ここで、上式1において、dは回折格子GRの格子定数(格子周期,ピッチ)、mは回折次数、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、即ち、正反射光RLの射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は照明光の入射角と等しく、反射型回折格子の場合には、照明光の入射方向と正反射光の射出方向とは、回折格子GRが設けられた界面の法線NLに関して対称となる。
【0065】
なお、回折格子GRが反射型である場合、角度αは、0°以上であり、且つ、90°未満である。また、回折格子GRが設けられた界面に対して斜め方向から照明光を照射し、法線方向の角度、即ち0°を境界値とする2つの角度範囲を考えると、射出角βは、回折光の射出方向と正反射光の射出方向とが同じ角度範囲内にあるときには正の値であり、回折光の射出方向と照明光の入射方向とが同じ角度範囲内にあるときには負の値である。
【0066】
図6はピッチdの回折格子GRに対する照明光入射角及び+1次回折光の射出角βの関係を説明する図である。照明光が複数の波長成分を含む白色光である場合、回折光の射出角は波長によって異なる。例えば、太陽や蛍光灯などの白色照明光源下で回折格子GRを観察すると、白色光が分光し、単一波長の光が別々の角度に射出され、観察する角度が変化するのに伴って虹色に見える。
【0067】
具体的には、図6に示すように、点光源LSから白色照明光IL(ここでは、白色照明光を構成する波長成分はR、G、Bの3波長であると仮定する)を入射すると、回折格子GRによって波長成分Rの回折光DL_r、波長成分Gの回折光DL_g、波長成分Bの回折光DL_bに分光する。このとき、波長成分Rの回折光の射出角β_rと、波長成分Gの回折光の射出角β_gと、波長成分Bの回折光の射出角β_bは、波長毎に異なる値を取る。他の次数の回折光についても式1によって導出される角度に射出されるが、図6への記載は省略する。
【0068】
図7は図6よりも広いピッチdの回折格子GRに白色照明光ILを入射した際の+1次回折光を射出する様子を概略的に示す図である。ピッチdが大きい場合、式1から明らかなように、狭いピッチの回折格子GRと比較して回折光は正反射光RLに近い方向に射出され、また、分光した単一波長の光同士の射出角βの差は小さくなる。式1から明らかなように回折格子GRが一定の屈折率分布をもつ媒質中(例えば空気中など)にある場合、回折光の射出角βは入射する白色照明光ILの入射角、波長と、回折格子GRのピッチdにより一意に定まる。
【0069】
次に、回折格子GRのピッチ及び照明光の波長と、回折光の射出角β方向における回折光の強度(回折効率)との関係を説明する。
【0070】
ピッチdの回折格子に対してαの入射角で入射した照明光は、式1に基づいて射出角βの方向に回折光が射出される。この際、波長λの光の射出強度、すなわち回折効率ηは、回折格子GRのピッチdや高さ等によって変化し、下記式2によって導出される。
η=(2/π)2・sin2{(2π/λ)・(r/cosθ)}
・sin2{(π/d)・L} …(式2)
上式において、ηは回折効率(0〜1の値をとる)、rは回折格子GRの高さ、Lは回折格子GRの格子線幅、dは格子線のピッチ、θは照明光の入射角、λは入射光及び回折光の波長である。なお、この式2は、凹凸構造から成る浅い回折格子GRについて成り立つものである。
【0071】
よって、回折効率ηは、前記式2から明らかなように、回折格子GRの高さrや格子線のピッチd、入射光の入射角θ及び波長λによって変化する。また、回折効率ηは、実際には回折次数mが高次になるのに伴って徐々に減少していく傾向にある。
【0072】
従って、前述したようにドット3が微細な凹凸構造で表現された計算機ホログラムにおいては、照明光が入射した際に複数のドット3,…によって光の干渉が起こり、回折光が射出されることから、回折格子パターンと同様の現象が起こる。計算機ホログラムでは、記録される物体光の位相情報に基づいて各ドット同士の間隔が変化するため、図6及び図7で示したようなピッチdの異なる回折格子GRが様々に重なり合ったような光の振る舞いをし、その結果として記録された物体光が回折光となって再生される。
【0073】
その結果、予め記録された物体光は、計算機内で定義された物体情報に対して、単一の波長のコヒーレント光が照射された際の干渉縞データであるので、レーザービームなどの限定された波長のコヒーレント光5を所定の角度から照明した際には、再生像(フーリエ変換像)が再生されるが、ある程度の面積があり、且つ、複数の波長の光から構成される蛍光灯などの一般的な照明器具のもとで肉眼で計算機ホログラムを観察すると、様々な角度に対して、再生像が波長毎に再生されてしまうため、各波長の光が重畳し、白濁した光が知覚される。
【0074】
次に、計算機ホログラムデータ形成領域13の構造とそれによる光学的効果について説明する。
【0075】
計算機ホログラムデータ形成領域13に形成される複数のドット3は図5に示すように、上面が前記基材面と略平行である複数の凸状部、または底面が前記基材面と略平行である複数の凹状部と、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部とで構成されている。なお、複数のドット3が上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状となる構造であってもよい。
【0076】
計算機ホログラムデータ形成領域13に形成される複数のドット3は、凹凸構造形成層と光反射層の界面を基準として、光反射層12側に構造が突出している凸部状の構造であっても良いし、凹凸構造形成層側に構造が埋没している凹部状の構造であっても良い。以後の説明においては、ドット3の構造としては、凸部と表記し、凹部については記載を省略する。また、凸部の高さについて記載している場合、凹部の深さについての説明も含むこととする。
【0077】
図8は、本発明に係る表示体10に、蛍光灯などの白色照明光源15から光を入射した際の計算機ホログラム1の様子を説明する図である。計算機ホログラム1を構成する複数のドット3は、予め定義された物体の干渉縞データを元にその配置が決定され、通常、図2に示すような不規則な配置となっている。このようなパターンに光を入射した場合、式1で示すピッチdが様々な値となっているので、光の波長毎に決まった角度で射出されることはなく、様々な角度に対して様々な波長の光が射出することになり、結果として観察者16は固有の色を呈する計算機ホログラム1を知覚する。図2に示したような構造は、各々異なる配置ピッチを有する回折格子パターンが複数重畳されたパターンと見なすこともできる。
【0078】
ここで、計算機ホログラム1も回折光を射出するパターンであるので、式2で示すとおり、計算機ホログラムデータ形成領域13から射出される回折光は波長に応じて光量、すなわち回折効率ηが変化する。式2において、回折格子GRの格子線幅L及び格子線のピッチdが一定と仮定すれば、回折効率ηは回折格子の高さr(ドットの高さに相当する)と照明光の波長λによって一意に決定され、それは計算機ホログラム1においても同様である。
【0079】
そのため、定点から肉眼で計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した場合において、可視光の波長成分が均等には目に届かず、計算機ホログラムデータ形成領域13に形成されるドット3の高さに応じて特定の波長の光が干渉によって弱まり、回折効率ηが低くなる。その結果、観察者16が知覚できる光は、入射した白色照明光のうち、特定の波長成分が弱くなった光となる。よって、観察者16が肉眼で計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した際、光量に差がある複数の波長の光を知覚することになる。
【0080】
次に、図9はある一定高さの複数のドット3を備えた計算機ホログラムデータ形成領域13に白色光源15から光を入射した際の射出光の様子を示す図である。
【0081】
白色光源15からは可視光域の複数の波長の光、例えば、ここでは代表して赤(R)17,緑(G)18,青(B)19の波長の光が射出されているとする。白色光源15から射出したR17,G18,B19の光は、それぞれ計算機ホログラムデータ形成領域13に入射するが、前述のようにドット3の高さに応じて特定の波長の光は干渉によって弱められて射出されなくなる。ここで、B19の光の回折効率ηが低くなり、計算機ホログラムデータ形成領域13から射出される回折光の波長成分がR17及びG18のみであったとすると、射出される光によって知覚される色は黄色となる。
【0082】
図9とは異なる高さの複数のドット3を有する計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した際、Rの波長成分の光の回折効率ηが低くなるとすれば、計算機ホログラムデータ形成領域13はGとBの光によって、シアン(うすい水色)の色が観察される。
【0083】
なお、これらの色は観察者16が回折光の到達しないような位置に居る場合には観察することができない。
【0084】
ところで、従来の計算機ホログラムにおいては、再生像を表示するための物体光を波面として再生することから、ドット3の平面的(2次元的)な構成が重要であり、その断面形状は特定の形状に限定されない。すわなち、従来の計算機ホログラムでは、図2に示すドット3の2次元的な配置が重要であることから、各ドット3の断面形状に左右されずに再生像を表示するための回折光を射出する機能が発揮される。実際に従来の計算機ホログラム1のドット3の断面形状としては、構造高さが0.1μm未満の浅いものや断面が矩形状でなく、上面や底面が平らではないものが一般的である。
【0085】
計算機ホログラム1のドット3としては、0.1μm未満の構造高さであっても、構造の深さに依らず回折光を射出する機能が発揮されることから、構造を高くする必要がなく、仮に構造を高くすれば製造の難易度が高くなるので、一般に低い構造のものが用いられている。
【0086】
その結果、ドット3の構造高さが0.1μm未満の場合、構造の上面で反射する光と底面に到達して反射してくる光の光路差にはあまり差が生じないため、可視光領域の波長の光については干渉によって弱め合う作用が生じない。そのため、浅いドット構造のものは特定波長の光を弱める光学効果は発揮されず、肉眼で観察したとき、いわゆる磨りガラスのような白濁色の単一パターンが知覚される。
【0087】
図10は従来の計算機ホログラムに白色光を入射させた際の様子を説明する図である。従来の計算機ホログラムのドット3の一例として、上面が平坦でなく、断面が三角形状になっているドット3を図示している。このようなドット構造の計算機ホログラムに対して、図9と同様なR17,G18,B19の光を入射した場合、特定の波長の光のみが弱められることはない。そのため、計算機ホログラムの面からはR17,G18,B19の光がそれぞれ射出され、それらの光が合わさることによって白濁した光が知覚される。
【0088】
従って、本発明に係る計算機ホログラムにおいて、上面または底面が平坦となるドット3で構成される計算機ホログラムデータ形成領域13に対して、白色照明光源の光を入射し、そのときの状態を肉眼で観察した場合、白濁の色ではない固有の色を表示可能な計算機ホログラムを実現することが可能となる。
【0089】
従来の計算機ホログラムでは、白濁色の単一パターンであるため、計算機ホログラムを用いた偽造防止媒体が広く流通するのに従って、その白濁色の部分が計算機ホログラムのパターンを形成している部分であることが容易に認識され、情報の隠蔽効果を大きく損ねることになる。
【0090】
これに対して、本実施形態に係る計算機ホログラムを有する表示体10は、従来の計算機ホログラムとは異なる固有の色で表示することが可能となり、その部分がレーザービーム等によって隠蔽情報の再生が行える部分であることが悟られにくくなり、情報の隠蔽効果を向上させることができる。
【0091】
そこで、本実施形態に係る表示体10の計算機ホログラムデータ形成領域13に形成されるドット3の構造高さとしては、前記式2に基づき、0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲であることが好ましい。すなわち、式2において、ピッチd、格子線幅Lを一定と仮定した場合、可視光の範囲の波長の光が入射角θ(0°より大きく90°未満の範囲)で入射すると、回折効率ηが最も高くなるドット3の高さは前述する0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲内となる。なお、式2から回折効率ηが最も高くなる条件は、それよりも大きな値であっても繰り返し訪れるが、製造上、ドットの高さは極力浅い方が作製が容易であるので、製造上からある程度容易となる高さで高い回折効率ηが得られる0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲が望ましい。
【0092】
なお、ドット3の構造高さが0.15μmよりも浅い場合は、式2から可視光の波長(400〜700nm程度)の光の回折効率ηの変化に大きな影響を与えないため、特定の波長の回折光の光量を弱める効果が生じないため固有の色を表示する機能を発揮しなくなる。また、製造時の外的要因(機械や環境のコンディションの変動や材料組成のわずかな変化等)により安定して同じ品質のものを作製するのが難しくなる。0.5μmより深い場合は、細かく深い構造を精密に転写成形するのが難しくなる。
【0093】
従って、0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲内において、ドット3の構造高さを変えることで、干渉によって弱められる光の波長が変化する。そのため、計算機ホログラムデータ形成領域13毎に、構造高さが異なる複数のドット3によって計算機ホログラムを構成することで、白色照明光源のもとに肉眼で観察した際にはドット3の構造高さが異なる計算機ホログラムデータ形成領域13毎に異なる固有色を知覚することが可能となる。ドット3の構造高さがそれぞれ変化している複数の計算機ホログラムデータ形成領域13を設けることで多色の表示が可能となる。
【0094】
図11はドット3の構造高さがそれぞれ異なる複数の計算機ホログラムデータ形成領域13によって画像を表現する例を説明する図である。
【0095】
図11に示す表示体10は、複数の計算機ホログラムデータ形成領域13を有し、それぞれのドット3の構造深さが異なっていることから各領域13の表示色が変化しており、例えば「ひよこ」の各部位ごとに異なる表示色となる画像で表示されている。複数の計算機ホログラムデータ形成領域13はそれぞれレーザービームなどのコヒーレント光5を照射することによって隠蔽画像6を再生させることが可能となる。
【0096】
本実施形態における計算機ホログラムでは、肉眼で観察した際には白濁色の単一パターンでなく、前述するように多色で表現された画像となるので、表示体10の意匠性を向上でき、且つ、計算機ホログラムに記録されている情報を悟るのが難くなり、隠蔽性をさらに高めることが可能になる。
【0097】
ドット3の構造高さは、計算機ホログラムデータ形成領域13毎に少なくとも0.02μm以上異ならせることで認識可能な別々の色として表示させることができる。本特許の計算機ホログラムデータ形成領域13は、複数の波長の光によって固有の色を表示し、ドットの構造高さが徐々に変化することで定点に向けて射出される光の波長とその比率が徐々に変化するため、表示される色も徐々に変化していく。すなわち、計算機ホログラムデータ形成領域13毎にドット3の構造高さを0.02μm以上異ならしめることで、観察時に異なる色を認識できる計算機ホログラムデータ形成領域13を備えた計算機ホログラムを実現できる。
【0098】
各々ドット3の構造高さが異なる計算機ホログラムデータ形成領域13を画素と見なし、それらを整然と配置することで、多色から成る絵柄や文字,数字,記号等の画像を表現することが可能である。計算機ホログラムデータ形成領域13は、数十μm程度の大きさで構成することができるので、それを画素とし並べることでジャギー(ビットマップ画像の輪郭部分などに見られる画素の大きさに起因する階段状のギザギザ)が目立たない高精細な画像を表現することが可能である。特定の画像を表現することによってレーザービームなどによって再生される情報とは別に肉眼で識別可能な情報を表示体に付与することが可能になる。
【0099】
(4)他光学機能発揮領域について。
【0100】
次に、他光学機能発揮領域14について説明する。
他光学機能発揮領域14は計算機ホログラムデータ形成領域13とはその構造や光学的な性質が異なる領域である。他光学機能発揮領域14は、その構造が形成されていない平坦面であってもよい。また、他光学機能発揮領域14は表示体10に複数存在していてもよい。
【0101】
他光学機能発揮領域14に採用可能な構造としては、回折格子が挙げられる。回折格子は、回折によって虹色に輝く分光色を射出し、光源の位置や観察者の観察角度など観察条件に応じて、色や絵柄が変化する像を表示させたり、立体像を表示させたりする機能を実現させることができる。
【0102】
また、他光学機能発揮領域14に採用可能な別の構造としては、微細な凹凸構造から成る反射防止構造体が挙げられる。この反射防止構造体としては、図12の斜視図で示すような円錐状の構造20や、角錐状の構造が整然と配置されたものが典型的であり、隣接構造20は、可視光の波長以下(例えば400nm以下)のピッチで配置され、その構造の高さは300μm以上となるように高くすることにより、反射防止効果が高くなる。このように反射射防止構造体を設けることにより、入射する可視光の反射を防止もしくは低減する機能を発揮し、観察した際に黒色もしくは暗灰色等の無彩色となって見える。
【0103】
また、他光学機能発揮領域14に採用可能な更に別の構造としては、光散乱構造体が挙げられる。光散乱構造体は、図13の斜視図で示すように、大きさや形、構造の高さが異なる凹凸形状21が不規則に複数配置されたものが典型的である。この光散乱構造体に入射した光は、四方八方に乱反射し、観察した際には白色または白濁色に見える。光散乱構造体は、典型的には、幅3μm以上、高さが1μm以上のものが多く、回折格子や反射防止構造体と比較して大きい構造となる。また、その大きさや配置間隔、形状は不揃いである。そのため、光を散乱する効果が得られる。光散乱構造体は、不規則に配置された微小な凹凸形状によって光を散乱させるものであるため、従来の計算機ホログラムと目視した際の印象がよく似ている。そのため、光散乱構造体を表示体の一部に設けることで、肉眼で観察した際に、計算機ホログラムの領域と光散乱構造体の領域との区別が付きづらくなり、計算機ホログラムの隠蔽効果がさらに高まることが期待できる。
【0104】
また、他光学機能発揮領域14は凹凸構造が形成されていない平坦面であってもよい。他光学機能発揮領域14を平坦面とした場合、他光学機能発揮領域14は光反射層12によって鏡面のように見える。
【0105】
他光学機能発揮領域14と計算機ホログラムデータ形成領域13を組み合わせることによって表示体10の意匠性を向上させることができ、また偽造防止効果のさらなる向上を図ることができる。他光学機能発揮領域14には、計算機ホログラムデータ形成領域13とは異なる光学特性を発揮する前述の構造以外の構造を形成してもよい。
【0106】
(5)表示体10の使用方法について
本発明に係る表示体10は、例えば、偽造防止用ラベルとして粘着材等を介して印刷物やその他の物品に貼り付けて使用することができる。この表示体10は、微細な凹凸構造を有するドット3の構造高さを厳密に制御することによって固有の色を表示することができ、構造の高さを変えることでその色を変化可能とすることから偽造は困難である。このラベルを物品に支持させた場合、真正品であるこのラベル付き物品の偽造又は模造も困難である。
【0107】
図14は偽造防止用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図15は図14に示すラベル付き物品のXV−XV線に沿った断面図である。
【0108】
図14及び図15には、ラベル付き物品の一例として、印刷物100を描いている。この印刷物100は、IC(integrated circuit)カードであって、基材50を含んでいる。基材50は、例えば、プラスチックからなる。基材50の一方の主面には凹部が設けられており、この凹部にICチップ30が嵌め込まれている。ICチップ30の表面には電極が設けられており、これら電極を介してICへの情報の書き込みやICに記録された情報の読出しが可能である。基材50上には、印刷層40が形成されている。基材50の印刷層40が形成された面には、前述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層40に貼りつけることにより、基材50に固定する。
【0109】
従って、印刷物100には、表示体10を含んでいる。それゆえ、印刷物100の同一品を偽造又は模造することは困難である。しかも、印刷物100は、表示体10に加えて、ICチップ30及び印刷層40を更に含んでいることから、それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
【0110】
なお、図14及び図15では、表示体10を含んだ印刷物100としてICカードを例示したが、表示体10を含んだ印刷物100は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物100は、磁気カード、無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードを含んだものであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物100としては、商品券及び株券などの有価証券であってもよく、真正品であることを確認させるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。さらに、表示体10を含んだ印刷物100としては、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0111】
また、図14及び図15に示す印刷物100では、基材50に印刷層40を介して表示体10を貼り付ける構成としているが、他の方法で基材50に表示体10を支持させることができる。例えば、基材50として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材50として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0112】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。すなわち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。例えば、表示体10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
【0113】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0114】
(6)表示体10の原版の作製方法について
次に、本発明に係る表示体の原版の作製方法について説明する。
表示体10の原版は、従来のレリーフ型回折格子パターンや計算機ホログラムの作製プロセスと同様に、フォトリソグラフィの工程を利用して作製することができる。電子線やレーザー等の荷電粒子ビームによって平面状の基板(ガラス基板が一般的に用いられる)に略均一に塗布された感光性レジストを露光し、現像することで所望の凹凸形状を得る。感光性レジストがポジ型レジストと呼ばれるものであれば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後溶解し、ネガ型レジストと呼ばれるものであれば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後に残り、照射されていない部分が溶解する。基板は、高精度に位置調整が可能なXYステージ上に載置され、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら荷電粒子ビームの照射位置が決定される。
【0115】
感光性レジストによる凹凸構造は脆いことから、以上のようにして得られた基板は量産用のスタンパとしては適さない。そのため得られた基板を原版として、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。電鋳とは、電鋳の対象物を所定の水溶液中に浸し、通電することで電子の還元力により、金属皮膜を形成する表面処理技術の一種である。
【0116】
このような方法を用いることで、原版の表面に設けられた微細な凹凸構造を精度良く金属版として転写成形することができる。電鋳の対象物の表面は通電可能である必要があり、一般に感光性レジストは電気を通さないので、電鋳を行う前にスパッタリングや真空蒸着等の気相堆積法により、予め構造の表面に金属薄膜が形成される。
【0117】
次いで、この金属製スタンパを母型として用いて、凹凸構造を複製する。即ち、まず、例えば、ポリカーボネート又はポリエステルからなる透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、凹凸構造を複製することができる。
【0118】
一般に、基材や形成用の樹脂材料は透明である。従って、通常、凹凸構造を設けた樹脂層(凹凸構造形成層)上には、蒸着等によりアルミニウム等の金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
【0119】
その後、以上のようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付けることにより、偽造防止対策を施した表示体を作製できる。
【0120】
また、原版の作製方法としては、フォトリソグラフィの工程だけでなく、先端が微細なダイヤモンドバイト等の切削機器による加工や、エッチングによって金属等の表面を腐食させる工程等にも採用することができる。このような方法を用いると、直接金属板の表面を加工することも可能であり、その場合、電鋳等の方法による金属製スタンパの作成を行うことなく、直接金属スタンパを得ることができる。
【0121】
基板上に塗布された感光性レジストに荷電粒子ビームを照射して凹凸形状を加工する方法では、近接効果と呼ばれる現象が発生する。近接効果とは、加工される凹凸形状の大きさや、単位面積当たりのビームが照射される面積の割合によって、形状の寸法や深さが狙いとする寸法や深さからわずかに変動してしまう現象のことである。例えば、あるエネルギー量で1mm角の面積で深さが0.1mmの凹構造が加工できる条件で、0.5mm角の面積を加工しても、0.1mmの深さが得られず、それよりやや浅い凹構造になってしまう。これは、荷電粒子ビームがレジスト内で散乱する現象が影響している。
【0122】
このような現象には、大きく分けて前方散乱と呼ばれる現象と、後方散乱と呼ばれる現象がある。前方散乱は、荷電粒子ビームがレジスト内に侵入する際に起こるもので、荷電粒子ビームが広がり、照射された面積より広い領域に荷電粒子ビームの影響を与えるものである。一方、後方散乱は、感光性レジストを通過し、感光性レジストの下面にある基板の表面もしくは裏面などで反射した荷電粒子ビームにより、感光性レジストに影響を与えるものである。これらの散乱したビームの影響はビームのエネルギー量や加工されるパターンの形状、深さによってその大小は様々である。また、この近接効果の影響は使用する感光性レジストの材料組成や塗工された膜厚によっても変化する。
【0123】
そのため、計算機ホログラムのドットを原版に形成する際には、ドットの大きさや配置ピッチ、密度などによって近接効果の影響度が変化し、狙いとする高さの構造が得られないおそれがある。ドットの構造高さによって白色照明光源のもとでの表示色が決定されるので近接効果が与える影響を考慮した上で精度よく構造を加工する必要がある。
【0124】
逆に、第三者が高精度な荷電粒子ビームを用いた加工機を用いたとしても、完全に同一な形状が形成された原版を偽造することは極めて難しく、同一の表示色を得るのは困難である。
【0125】
荷電粒子ビームを用いた加工機としては、電子線描画装置、またはレーザー直接描画装置が望ましい。これらの装置は、加工速度が速く、XYステージの位置精度等も高いため、高精度に所望の凹凸パターンを作成することが可能である。また、近接効果の影響を軽減化するため、実験結果をもとに補正をかける機能を備えたものもある。所望の表示色を得るためにはドットの構造高さの制御を厳密に行うことが必要であり、これらの装置はその要求を満たすことができる。近年の電子線描画装置やレーザー直接描画装置は装置の高性能化が進み、照射される荷電粒子ビームの安定性も高くエネルギー照射量やエネルギー密度は同一設定で略同一の値となるが、装置の使用環境(温度や湿度など)のわずかな変化や装置コンディション(長時間動作時など)の影響により変動する可能性はある。しかし、その変動量はわずかであり、同一のパターンを加工する場合、加工されるパターンの形状や深さにはほとんど変化を与えない。
【0126】
一方、切削機器による加工やエッチングを用いる方法であっても、本発明に係る表示体の原版を作製することは可能であるが、その場合、高い加工精度が要求され、且つ、適切な材料の選定が重要となる。また、切削機器による加工やエッチングは、凹凸構造形成領域の構造の作製に加え、他光学機能発揮領域14に形成可能な回折格子、微細凹凸構造による反射防止構造体、光散乱構造体などの作製も困難である。
【0127】
なお、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1…セル型計算機ホログラム、2…セル、3…ドット、4…セル型計算機ホログラムの単位領域、5…コヒーレント光、6…再生像、10…表示体、11…光透過層、12…光反射層、13…計算機ホログラムデータ形成領域、14…他光学機能発揮領域、15…白色照明光源、16…観察者、17…赤の波長の光、18…緑の波長の光、19…青の波長の光、20…反射防止構造体、21…光散乱構造体、30…ICチップ、40…印刷層、50…基材、100…印刷物、111…光透過性の基材、112…光透過性樹脂層、d…回折格子のピッチ、DL…1次回折光、DL_r…+1次回折光(赤)、DL_g…+1次回折光(緑)、DL_b…+1次回折光(青)、GR…回折格子、IL…照明光、LS…光源、NL…法線、RL…0次回折光(正反射光)、α…入射角、β_r…波長成分Rの回折光の射出角、β_g…波長成分Gの回折光の射出角、β_b…波長成分Bの回折光の射出角。
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め設定した情報を物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録した計算機ホログラムを有する複数のセル内にそれぞれ異なるドット構造を配置し、意匠性及び記録情報の隠蔽効果を向上させる計算機ホログラムを有する表示体及びラベル付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商品券及び小切手などの有価証券類、クレジットカード、キャッシュカード及びIDカードなどのカード類、並びにパスポート及び免許証などの証明書類には、それらの偽造を防止するため、通常の印刷物とは異なる視覚効果を生じさせる表示体が貼り付けられている。また、近年、証券類,カード類,証明書類等以外の物品についても、偽造品の流通が社会問題化している。そこで、上記証明書類等以外の物品に対しても、同様の偽造防止技術を適用する機会が増えてきている。
【0003】
偽造防止効果を発揮する表示体としては、複数の溝を並べてなる回折格子を含んだ表示体が知られている。この表示体には、例えば,観察条件に応じて変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができる。しかしながら、通常の印刷技術では、回折格子が表現する虹色に輝く分光色を表現することができない。そのため、回折格子を含んだ表示体は、偽造防止対策を必要とする物品に広く用いられている。
【0004】
従来、回折格子を含んだ表示体としては、幾つかの偽造防止に関する技術が提案されている。
【0005】
その1つの偽造防止に関する技術としては、溝の長さ方向又は格子定数(即ち溝のピッチ)が異なる複数の解析格子を配置して絵柄を表すように表示することが記載されている(特許文献1)。
【0006】
この例は、回折格子に対する観察者又は光源の相対的な位置が変化したとき、観察者の目に到達する解析光の波長が変化する。従って、上記のような構成を採用した場合、虹色に変化する画像を表現することができる。
【0007】
さらに、他の1つとなる表示体の偽造防止効果を向上させる方法としては、太陽や蛍光灯などの白色照明光源下で肉眼観察することが難しいが、レーザービームなどの特殊な光源が照明された時のみ、隠蔽画像を再生することが可能なフーリエ変換型の計算機ホログラムが公知である。これは、予め情報が記録されたフーリエ変換型ホログラムに、レーザービームなどの光(コヒーレント光)が入射すると、1次回折光により記録された情報が再生される。なお、計算機ホログラムについては、例えば非特許文献1に記載されている。
【0008】
一般に、ホログラムは、実際の物体(被写体)からの物体光と参照光による干渉現象を利用して作製されるものであるが、計算機ホログラムは、計算機上で対象物に相当する対象物データを元に干渉縞をデジタルデータとして表した干渉縞データを作製し、それを感光フィルムなどの媒体に記録して作製される。
【0009】
従って、計算機ホログラムとしては、計算機を用いて、前述したフーリエ変換型ホログラムなどが持つことになる干渉縞データを算出し、この算出された干渉縞データを各種の手法により、ホログラムと同様な機能(回折現象による情報再生を行う)を奏するように、対象物に関する特定情報が記録される。
【0010】
なお、計算機ホログラムの構成としては、ホログラム画面全面にわたる計算機ホログラムを配置する手法の他、計算機ホログラムからなる微小なセルを構成単位として、計算機ホログラム全体を構成する手法も採用されている。このような構成の計算機ホログラムをセル型計算機ホログラムと称する。
【0011】
このような手法を用いれば、情報再生される絵柄全体が計算機ホログラムにより構成されていないので、任意のセルにだけ特定情報を記録させた計算機ホログラムを配置することができ、そのセルの存在を知る者以外に対して、特定情報を隠蔽させることが可能となる。
【0012】
一般に、フーリエ変換型のセル型計算機ホログラムを、太陽や蛍光灯などの白色の照明光(インコヒーレント光)により照明して射出される回折光を肉眼で観察すると、白濁した領域として知覚され、計算機ホログラムを応用した表示体の意匠性を低下させる原因となっていた。白濁した領域として知覚される理由は、フーリエ変換像が各波長毎に再生されてしまうことに起因する。
【0013】
また、このような計算機ホログラムを用いて特定情報を表示体内に混入させて隠蔽を図る際、白濁した領域として知覚される箇所に前記特定情報が隠蔽されていることを推測させてしまう問題を有している。
【0014】
ところで、このような回折格子やフーリエ変換型計算機ホログラムを利用した表示体では、回折格子やセル型計算機ホログラムの構造が微細なレリーフ構造(凹凸構造)として加工されているのが一般的である。微細なレリーフ構造は、通常、フォトリソグラフィを利用して製造した原版から複製することにより得られる。
【0015】
特許文献1には、微細レリーフ構造の原版の作製方法として、一方の主面に感光性レジストを塗布した平板状の基板をXYステージ上に載置し、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら感光性レジストに電子ビームを照射することにより、感光性レジストをパターン露光する方法が記載されている。
【0016】
通常、微細レリーフ構造の製造は、先ず、特許文献1のような方法により原版を形成し、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。次いで、金属製スタンパを母型として用いて、微細レリーフ構造を複製する。即ち、まず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)からなるフィルム又はシート状の薄い透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、微細レリーフ構造の複製物を得る。
【0017】
一般に、このような微細レリーフ構造は透明である。従って、通常、レリーフ構造を設けた樹脂層上には、蒸着法を用いてアルミニウムなどの金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
【0018】
その後、以上のようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付けることにより、偽造防止対策を施した表示体を得る。
【0019】
微細レリーフ構造を含んだ表示体の製造に使用する原版は、それ自体の製造が困難である。また、金属製スタンパから樹脂層へのレリーフ構造の転写は、高い精度で行わなければならない。即ち、微細レリーフ構造を含んだ表示体の製造には高い技術が要求される。
【0020】
しかしながら、偽造防止対策が必要な多くの物品では、回折格子やセル型計算機ホログラムなどの微細レリーフ構造を含んだ表示体が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、それに伴って偽造品の発生も増加する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5058992号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】辻内順平著、「ホログラフィー」、株式会社裳華房、1997年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
ところで、以上のようなドットを内包した複数のセルで構成されるセル型計算機ホログラムは、白色光(インコヒーレント光)による照明下で回折光を肉眼で観察する場合、回折光による再生像が各波長毎に再生される。そのため、フーリエ変換型のセル型計算機ホログラムは、角度依存性が低く白濁した領域として知覚される。通常、計算機ホログラムは、情報の記録を目的として作製されることから、その記録されたパターンを肉眼で観察した際にどのように知覚されるかは言及されず外観に意匠性を求めることはなされていない。
【0024】
その結果、計算機ホログラムが記録された領域では単純な白濁色の単一パターンであることが多く、回折等の光学特性を有するパターンや、印刷によるパターン,特殊顔料によるパターン等と共存した際に、違和感のある領域として認識されてしまう。このように、他の領域と異なる雰囲気を与えてしまうことは表示体の意匠性を低下させるだけでなく、パターン内に混在させた記録情報の存在を推測させることにつながり、情報の隠蔽効果を損ねることにもなる。
【0025】
本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであって、情報記録(再生)の機能を損なうことなく、意匠性及び記録情報の隠蔽効果を向上させうる計算機ホログラムを有する表示体及びラベル付き物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、請求項1に対応する発明は、光透過性の基材と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層とを備えた表示体であって、前記凹凸構造形成層は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備えており、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域は、複数のセルによって構成され、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成されており、前記ドットは、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部となる構成であり、前記ドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定であることを特徴とする計算機ホログラムを有する表示体である。
【0027】
請求項2に対応する発明は、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域が複数個隣接配置され、これら単位領域毎のドットの前記構造高さ、前記構造深さが変化するように構成したことを特徴とする請求項1に対応する発明に記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0028】
請求項3に対応する発明は、前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域毎に少なくとも0.020μm以上異なるようなドットの構造高さ、構造深さとすることにより、認識可能な異なる色を表示させることを特徴とする請求項1又は請求項2に対応する発明に記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0029】
また、請求項4に対応する発明は、前記構造高さ、前記構造深さが変化しているドットで構成される前記各単位領域を画素とし、絵柄や文字,数字,記号等の画像情報を記録し表現していることを特徴とする請求項1ないし請求項3に対応する発明の何れか一つに記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0030】
また、請求項5に対応する発明は、前記基材の一方面側に前記計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域には回折格子パターン、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一種類を施すことを特徴とする請求項1ないし請求項4に対応する発明の何れか一つに記載の計算機ホログラムを有する表示体である。
【0031】
さらに、請求項6に対応する発明は、偽造防止の対象となる物品に、前記請求項1ないし請求項5の何れか一項に対応する発明に記載の表示体を適宜な支持手段により支持することを特徴とするラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に対応する発明の構成によれば、複数のドットから構成されるフーリエ変換型計算機ホログラムにおいて、各ドットは、上面が基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部に形成され、ドットの構造高さ、又は構造深さが単位領域内で一定であることから、肉眼で観察した際に、構造高さ、又は構造深さの値に応じた可視光波長のうちの特定の波長の光が干渉によって弱まり他の波長成分の光による固有の色を表示させることが可能になる。また、この表示体は、レーザービームなどのコヒーレント光によって照射されることによって、肉眼では視認不可能な隠蔽画像を回折による再生像として射出することが可能となる。
【0033】
これに対して、従来の計算機ホログラムは、肉眼で観察した際に白濁した単一のパターンが見られるが、本発明に係る表示体では呈色したパターンを表示させることが可能である。呈色が可能になることで、意匠性が向上するとともに、コヒーレント光による像再生が可能な領域の位置をより推測させづらくする効果が得られる。
【0034】
また、請求項2に対応する発明の構成によれば、表示体内にドットの構造高さ、構造深さが異なるフーリエ変換型計算機ホログラムを構成する単位領域を複数個隣接配置するとともに、単位領域毎のドットの構造高さ、構造深さが変化していることで、肉眼で観察した際に、各単位領域がそれぞれ異なる固有色を表示することが可能となる。また、レーザービームなどのコヒーレント光を入射した際には従来の計算機ホログラムと同様に隠蔽画像を再生することが可能である。ドットの構造高さ、構造深さが異なる単位領域を複数備えていることで、複数の固有色を表示可能であり、意匠性の向上をより一層見込むことが可能となる。
【0035】
また、請求項3に対応する発明の構成によれば、単位領域毎のドットの構造高さ、構造深さを0.02μm以上異ならせることにより、相互に認識可能な異なる色で表現することが可能である。
【0036】
また、請求項4に対応する発明の構成によれば、ドットの構造高さ、構造深さが異なる単位領域を画素と見なし、多色による絵柄や文字,数字,記号等の画像を表現することが可能となる。
【0037】
さらに、請求項5に対応する発明の構成によれば、基材の一方面側に計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域に、回折格子、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のいずれかを施すことにより、表示体の意匠性をさらに高めることができ、さらに高い偽造防止効果を実現できる。
【0038】
さらに、請求項6に対応する発明の構成によれば、従来の物品に高い偽造防止効果を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る表示体を構成するセル型計算機ホログラムの複数のセル及びセル内の構造を説明する図。
【図2】マトリクス状にセルを配置し、元となる情報の光の複素振幅データを記録させたセル型計算機ホログラムのパターンの一例を示す図。
【図3】複数個のセルの集まりから成るセル型計算機ホログラム(例えば図2参照)を1つの単位領域とし、これら複数の単位領域をマトリックス状に配置し、レーザービームを照射し、記録情報を再生する様子を説明する図。
【図4】本発明の一実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る表示体の図4のV−V線に沿う拡大断面図。
【図6】ピッチを狭くした回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に説明する図。
【図7】ピッチを広くした回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に説明する図。
【図8】白色照明光源の光を入射した際の本発明に係る表示体の状態を観察している様子を説明する図。
【図9】本発明の実施形態に係る計算機ホログラムデータ形成領域に設けられた複数の一定高さのドットに白色光を入射させたとき、当該計算機ホログラムデータ形成領域から射出する波長光を説明する図。
【図10】従来の計算機ホログラムに白色光を入射させたとき、当該計算機ホログラムの面から射出される光を説明する図。
【図11】ドットの高さが異なる複数の計算機ホログラムデータ形成領域によって画像を表現した一例図。
【図12】他光学機能発揮領域に採用可能な構造である反射防止構造体の一例を示す斜視図。
【図13】他光学機能発揮領域に採用可能な構造である光散乱構造体の一例を示す斜視図。
【図14】本発明の実施形態に係るラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図15】本発明の実施形態に係るラベル付き物品の図14に示すXV−XVに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似する機能を備えた構成体(要素)には同一の参照符号を付し、その重複する説明は省略する。
【0041】
(1)セル型計算機ホログラムについて
図1はセル型計算機ホログラムを構成するセルの一例を説明する図である。同図において、1はセル型計算機ホログラムであって、複数のセル2から構成されている。
【0042】
このセル型計算機ホログラム1では、各セル2内部における光の複素振幅の振る舞いが1つないしは複数個の略矩形状のドット3で表現される。各セル2内部に配置されるドット3は、振幅の大小に応じてその面積が増減し、その位相がセル2の中心からの距離で表現される。
【0043】
すなわち、セル型計算機ホログラム1は、光の複素振幅データを記録する面上をセル単位に分割し、各セル2内での光の振る舞いをドット3の位置及び大きさによって表現したものである。
【0044】
図2は各セル2,…をマトリクス状に配置したセル型計算機ホログラム1の一例を説明する図である。セル型計算機ホログラム1では、対象となる情報を光の複素振幅の状態で記録するために、複数個のセル2,…が必要となる。通常、このように複数個のセル2,…で構成されるセル型計算機ホログラム1は、一辺数十μm程度の非常に小さな面積から成る。
【0045】
ところで、セル型計算機ホログラム1からレーザービームにより情報再生を行う場合、小さな面積のセル型計算機ホログラム1に対してレーザービームの位置合わせを行うことは困難であり、また、単独のセル型計算機ホログラム1からの回折光だけでは観察時に十分な輝度を得ることが難しく、再生像の観察が困難である。
【0046】
そこで、本実施形態においては、セル型計算機ホログラム1から記録情報を再生する場合、図3に示すような構成を採用し、記録情報の再生を行う。
【0047】
この記録情報再生手段は、複数個のセル2,…の集まりから成る計算機ホログラム1を一つの単位領域4とし、このような単位領域4をもつ複数個の計算機ホログラム1をマトリックス状に隣接配置することで、レーザービームの走査可能な面積を確保する。
【0048】
因みに、図3は、図2に示す100個のセル2,…からなるセル型計算機ホログラム1を単位領域4とし、縦5個×横5個の単位領域4をマトリックス状に配置したものである。このように単位領域4をマトリックス状に配置することで、レーザービームなどの光を入射するのに十分な大きさとなる。
【0049】
そこで、マトリックス状に配置された複数個の単位領域4,…に向けてレーザービーム等のコヒーレント光5を入射することで、任意のスクリーン上に再生像6を投影させることができ、記録された情報の再生を行うことが可能となる。
【0050】
また、光の複素振幅の振る舞いを示すドットを微細レリーフ構造として実現するセル型計算機ホログラム1の場合、前記ドットを凸状又は凹状または凹凸状に周囲の部分とは高さ(深さ)が異なるように加工する。このような凹凸状のドットを有する面に光を入射し、それら凹凸状から回折光を射出させると、周囲の部分との光路差(干渉する2つの光波がたどる光学的な距離の差)によって、記録された干渉縞データにもとづく再生光が射出される。
【0051】
(2)セル型計算機ホログラムを有する表示体について
図4は本発明の一実施形態に係る計算機ホログラムを有する表示体を概略的に示す平面図、図5は図4に示す表示体のV−Vに沿った断面図である。
【0052】
これらの図において、10はセル型計算機ホログラムを用いた表示体であって、この表示体10は、図5に示すように光透過層11と光反射層12との積層体を含んだ構成である。この例においては、光透過層11側が前面側(観察者側)、光反射層12側が背面側とし、且つ、光透過層11の一方面側,つまり背面側面側には凹凸構造形成層が施されている。
【0053】
図4及び図5に示す表示体10は、凹凸構造形成層に計算機ホログラムのドット3である、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部、もしくは上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、それらの周囲が基材面と略並行な平坦部に構成された計算機ホログラムデータ形成領域13を備えている。
【0054】
さらに、計算機ホログラムの光透過層11の一方面側には、計算機ホログラムデータ形成領域13とはその構造や光学的な性質が異なる他光学機能発揮領域14を備えている。他光学機能発揮領域14は、構造が形成されていない平坦面から成る領域であってもよい。また、計算機ホログラムデータ形成領域13及び他光学機能発揮領域14は、各々の表示体10に複数存在していてもよく、或いは1個の表示体10に1つも存在していなくてもよい。
【0055】
光透過層11の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂などの光透過性を有する樹脂を使用する。熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すれば、例えば、計算機ホログラムのドット3や他光学機能発揮領域14に設けられた構造が形成された金属製のスタンパから、一方の主面にそれらの凹凸構造が設けられた光透過層11を転写成形することができる。
【0056】
図5に示す光透過層11は、一例として、光透過性の基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成される。光透過性の基材111は、それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルムまたはシートであり、例えば、PETやポリカーボネート(PC)などを用いることができる。光透過性樹脂層112は、光透過性の基材111上に形成された層である。図5に示す光透過層11は、例えば、光透過性の基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し、この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることによって得られる。
【0057】
光反射層12は、例えば、アルミニウム、銀、金、及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層である。また、光反射層12としては、光透過層11とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよく、或いは、隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体、即ち、誘電体多層膜を使用してもよい。なお、誘電体多層膜が含む誘電体層のうち、光透過層11と接触しているものの屈折率は、光透過層11の屈折率とは異なっていることが望ましい。光反射層12は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0058】
なお、光反射層12としては、部分的に設けないようにすることも可能である。この光反射層12を部分的に設けない方法は、気相堆積法により光反射層12を設けた後、薬品などにより特定の部分のみを溶解させたり、光反射層12と光透過性樹脂層112との密着力よりも強い接着力をもつ接着材料によって特定部分の光反射層12を剥離する方法などがある。また、気相堆積法を行う前に光透過性樹脂層112の前面に障壁を設け光反射層12が形成されるのを防ぐ方法も用いられる。
【0059】
この表示体10は、接着剤層、樹脂層、印刷層などの他の層を更に含むことができる。接着剤層は、例えば、光反射層12を被覆するように設ける。表示体10が光透過層11及び光反射層12の双方を含んでいる場合、通常、光反射層12の表面の形状は、光透過層11と光反射層12との界面の形状とほぼ等しい。接着剤層を設ければ、光反射層12の表面が露出するのを防止できるため、先の界面の凹凸構造を偽造するときの複製を困難にすることができる。例えば、光透過層11側を背面側とし、且つ、光反射層12側を前面側とする場合は、接着剤層は、光透過層11上に形成する。
【0060】
また、樹脂層としては、例えば、使用時に表示体の表面にキズが付くのを防ぐ目的としたハードコート層や汚れの付着を抑制する防汚層、基材表面での光の反射を防止する反射防止層、帯電防止層などの機能を持たせることができる。樹脂層は、光透過層11及び光反射層12の積層体に対して前面側に設ける。例えば、光透過層11側を背面側とし、且つ、光反射層12側を前面側とする場合、光反射層12を樹脂層によって被覆することで、光反射層12の損傷を抑制できるのに加え、その表面の凹凸構造の、偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
【0061】
さらに、印刷層としては、光透過層11の観察者側や、光透過性樹脂層112と光反射層12の間などに設けるものとする。この印刷層を設けることで表示体の意匠性の向上や表示体10に表示される情報を容易に追加できる。
【0062】
(3)呈色の原理と計算機ホログラムデータ形成領域について
計算機ホログラムデータ形成領域13について説明するにあたり、まず、回折格子のピッチ及び照明光の波長と、照明光入射角及び回折光の射出角との関係について説明する。
【0063】
照明光源を用いて回折格子GRに照明光を照射すると、回折格子GRからは、入射光である照明光の進行方向に対応して特定の方向に強い回折光が射出される。
【0064】
このとき、m次回折光(m=0、±1、±2、・・・)の射出角βは、回折格子GRの格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記の式1から算出することができる。
d=mλ/(sinα−sinβ) …(式1)
ここで、上式1において、dは回折格子GRの格子定数(格子周期,ピッチ)、mは回折次数、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、即ち、正反射光RLの射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は照明光の入射角と等しく、反射型回折格子の場合には、照明光の入射方向と正反射光の射出方向とは、回折格子GRが設けられた界面の法線NLに関して対称となる。
【0065】
なお、回折格子GRが反射型である場合、角度αは、0°以上であり、且つ、90°未満である。また、回折格子GRが設けられた界面に対して斜め方向から照明光を照射し、法線方向の角度、即ち0°を境界値とする2つの角度範囲を考えると、射出角βは、回折光の射出方向と正反射光の射出方向とが同じ角度範囲内にあるときには正の値であり、回折光の射出方向と照明光の入射方向とが同じ角度範囲内にあるときには負の値である。
【0066】
図6はピッチdの回折格子GRに対する照明光入射角及び+1次回折光の射出角βの関係を説明する図である。照明光が複数の波長成分を含む白色光である場合、回折光の射出角は波長によって異なる。例えば、太陽や蛍光灯などの白色照明光源下で回折格子GRを観察すると、白色光が分光し、単一波長の光が別々の角度に射出され、観察する角度が変化するのに伴って虹色に見える。
【0067】
具体的には、図6に示すように、点光源LSから白色照明光IL(ここでは、白色照明光を構成する波長成分はR、G、Bの3波長であると仮定する)を入射すると、回折格子GRによって波長成分Rの回折光DL_r、波長成分Gの回折光DL_g、波長成分Bの回折光DL_bに分光する。このとき、波長成分Rの回折光の射出角β_rと、波長成分Gの回折光の射出角β_gと、波長成分Bの回折光の射出角β_bは、波長毎に異なる値を取る。他の次数の回折光についても式1によって導出される角度に射出されるが、図6への記載は省略する。
【0068】
図7は図6よりも広いピッチdの回折格子GRに白色照明光ILを入射した際の+1次回折光を射出する様子を概略的に示す図である。ピッチdが大きい場合、式1から明らかなように、狭いピッチの回折格子GRと比較して回折光は正反射光RLに近い方向に射出され、また、分光した単一波長の光同士の射出角βの差は小さくなる。式1から明らかなように回折格子GRが一定の屈折率分布をもつ媒質中(例えば空気中など)にある場合、回折光の射出角βは入射する白色照明光ILの入射角、波長と、回折格子GRのピッチdにより一意に定まる。
【0069】
次に、回折格子GRのピッチ及び照明光の波長と、回折光の射出角β方向における回折光の強度(回折効率)との関係を説明する。
【0070】
ピッチdの回折格子に対してαの入射角で入射した照明光は、式1に基づいて射出角βの方向に回折光が射出される。この際、波長λの光の射出強度、すなわち回折効率ηは、回折格子GRのピッチdや高さ等によって変化し、下記式2によって導出される。
η=(2/π)2・sin2{(2π/λ)・(r/cosθ)}
・sin2{(π/d)・L} …(式2)
上式において、ηは回折効率(0〜1の値をとる)、rは回折格子GRの高さ、Lは回折格子GRの格子線幅、dは格子線のピッチ、θは照明光の入射角、λは入射光及び回折光の波長である。なお、この式2は、凹凸構造から成る浅い回折格子GRについて成り立つものである。
【0071】
よって、回折効率ηは、前記式2から明らかなように、回折格子GRの高さrや格子線のピッチd、入射光の入射角θ及び波長λによって変化する。また、回折効率ηは、実際には回折次数mが高次になるのに伴って徐々に減少していく傾向にある。
【0072】
従って、前述したようにドット3が微細な凹凸構造で表現された計算機ホログラムにおいては、照明光が入射した際に複数のドット3,…によって光の干渉が起こり、回折光が射出されることから、回折格子パターンと同様の現象が起こる。計算機ホログラムでは、記録される物体光の位相情報に基づいて各ドット同士の間隔が変化するため、図6及び図7で示したようなピッチdの異なる回折格子GRが様々に重なり合ったような光の振る舞いをし、その結果として記録された物体光が回折光となって再生される。
【0073】
その結果、予め記録された物体光は、計算機内で定義された物体情報に対して、単一の波長のコヒーレント光が照射された際の干渉縞データであるので、レーザービームなどの限定された波長のコヒーレント光5を所定の角度から照明した際には、再生像(フーリエ変換像)が再生されるが、ある程度の面積があり、且つ、複数の波長の光から構成される蛍光灯などの一般的な照明器具のもとで肉眼で計算機ホログラムを観察すると、様々な角度に対して、再生像が波長毎に再生されてしまうため、各波長の光が重畳し、白濁した光が知覚される。
【0074】
次に、計算機ホログラムデータ形成領域13の構造とそれによる光学的効果について説明する。
【0075】
計算機ホログラムデータ形成領域13に形成される複数のドット3は図5に示すように、上面が前記基材面と略平行である複数の凸状部、または底面が前記基材面と略平行である複数の凹状部と、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部とで構成されている。なお、複数のドット3が上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状となる構造であってもよい。
【0076】
計算機ホログラムデータ形成領域13に形成される複数のドット3は、凹凸構造形成層と光反射層の界面を基準として、光反射層12側に構造が突出している凸部状の構造であっても良いし、凹凸構造形成層側に構造が埋没している凹部状の構造であっても良い。以後の説明においては、ドット3の構造としては、凸部と表記し、凹部については記載を省略する。また、凸部の高さについて記載している場合、凹部の深さについての説明も含むこととする。
【0077】
図8は、本発明に係る表示体10に、蛍光灯などの白色照明光源15から光を入射した際の計算機ホログラム1の様子を説明する図である。計算機ホログラム1を構成する複数のドット3は、予め定義された物体の干渉縞データを元にその配置が決定され、通常、図2に示すような不規則な配置となっている。このようなパターンに光を入射した場合、式1で示すピッチdが様々な値となっているので、光の波長毎に決まった角度で射出されることはなく、様々な角度に対して様々な波長の光が射出することになり、結果として観察者16は固有の色を呈する計算機ホログラム1を知覚する。図2に示したような構造は、各々異なる配置ピッチを有する回折格子パターンが複数重畳されたパターンと見なすこともできる。
【0078】
ここで、計算機ホログラム1も回折光を射出するパターンであるので、式2で示すとおり、計算機ホログラムデータ形成領域13から射出される回折光は波長に応じて光量、すなわち回折効率ηが変化する。式2において、回折格子GRの格子線幅L及び格子線のピッチdが一定と仮定すれば、回折効率ηは回折格子の高さr(ドットの高さに相当する)と照明光の波長λによって一意に決定され、それは計算機ホログラム1においても同様である。
【0079】
そのため、定点から肉眼で計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した場合において、可視光の波長成分が均等には目に届かず、計算機ホログラムデータ形成領域13に形成されるドット3の高さに応じて特定の波長の光が干渉によって弱まり、回折効率ηが低くなる。その結果、観察者16が知覚できる光は、入射した白色照明光のうち、特定の波長成分が弱くなった光となる。よって、観察者16が肉眼で計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した際、光量に差がある複数の波長の光を知覚することになる。
【0080】
次に、図9はある一定高さの複数のドット3を備えた計算機ホログラムデータ形成領域13に白色光源15から光を入射した際の射出光の様子を示す図である。
【0081】
白色光源15からは可視光域の複数の波長の光、例えば、ここでは代表して赤(R)17,緑(G)18,青(B)19の波長の光が射出されているとする。白色光源15から射出したR17,G18,B19の光は、それぞれ計算機ホログラムデータ形成領域13に入射するが、前述のようにドット3の高さに応じて特定の波長の光は干渉によって弱められて射出されなくなる。ここで、B19の光の回折効率ηが低くなり、計算機ホログラムデータ形成領域13から射出される回折光の波長成分がR17及びG18のみであったとすると、射出される光によって知覚される色は黄色となる。
【0082】
図9とは異なる高さの複数のドット3を有する計算機ホログラムデータ形成領域13を観察した際、Rの波長成分の光の回折効率ηが低くなるとすれば、計算機ホログラムデータ形成領域13はGとBの光によって、シアン(うすい水色)の色が観察される。
【0083】
なお、これらの色は観察者16が回折光の到達しないような位置に居る場合には観察することができない。
【0084】
ところで、従来の計算機ホログラムにおいては、再生像を表示するための物体光を波面として再生することから、ドット3の平面的(2次元的)な構成が重要であり、その断面形状は特定の形状に限定されない。すわなち、従来の計算機ホログラムでは、図2に示すドット3の2次元的な配置が重要であることから、各ドット3の断面形状に左右されずに再生像を表示するための回折光を射出する機能が発揮される。実際に従来の計算機ホログラム1のドット3の断面形状としては、構造高さが0.1μm未満の浅いものや断面が矩形状でなく、上面や底面が平らではないものが一般的である。
【0085】
計算機ホログラム1のドット3としては、0.1μm未満の構造高さであっても、構造の深さに依らず回折光を射出する機能が発揮されることから、構造を高くする必要がなく、仮に構造を高くすれば製造の難易度が高くなるので、一般に低い構造のものが用いられている。
【0086】
その結果、ドット3の構造高さが0.1μm未満の場合、構造の上面で反射する光と底面に到達して反射してくる光の光路差にはあまり差が生じないため、可視光領域の波長の光については干渉によって弱め合う作用が生じない。そのため、浅いドット構造のものは特定波長の光を弱める光学効果は発揮されず、肉眼で観察したとき、いわゆる磨りガラスのような白濁色の単一パターンが知覚される。
【0087】
図10は従来の計算機ホログラムに白色光を入射させた際の様子を説明する図である。従来の計算機ホログラムのドット3の一例として、上面が平坦でなく、断面が三角形状になっているドット3を図示している。このようなドット構造の計算機ホログラムに対して、図9と同様なR17,G18,B19の光を入射した場合、特定の波長の光のみが弱められることはない。そのため、計算機ホログラムの面からはR17,G18,B19の光がそれぞれ射出され、それらの光が合わさることによって白濁した光が知覚される。
【0088】
従って、本発明に係る計算機ホログラムにおいて、上面または底面が平坦となるドット3で構成される計算機ホログラムデータ形成領域13に対して、白色照明光源の光を入射し、そのときの状態を肉眼で観察した場合、白濁の色ではない固有の色を表示可能な計算機ホログラムを実現することが可能となる。
【0089】
従来の計算機ホログラムでは、白濁色の単一パターンであるため、計算機ホログラムを用いた偽造防止媒体が広く流通するのに従って、その白濁色の部分が計算機ホログラムのパターンを形成している部分であることが容易に認識され、情報の隠蔽効果を大きく損ねることになる。
【0090】
これに対して、本実施形態に係る計算機ホログラムを有する表示体10は、従来の計算機ホログラムとは異なる固有の色で表示することが可能となり、その部分がレーザービーム等によって隠蔽情報の再生が行える部分であることが悟られにくくなり、情報の隠蔽効果を向上させることができる。
【0091】
そこで、本実施形態に係る表示体10の計算機ホログラムデータ形成領域13に形成されるドット3の構造高さとしては、前記式2に基づき、0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲であることが好ましい。すなわち、式2において、ピッチd、格子線幅Lを一定と仮定した場合、可視光の範囲の波長の光が入射角θ(0°より大きく90°未満の範囲)で入射すると、回折効率ηが最も高くなるドット3の高さは前述する0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲内となる。なお、式2から回折効率ηが最も高くなる条件は、それよりも大きな値であっても繰り返し訪れるが、製造上、ドットの高さは極力浅い方が作製が容易であるので、製造上からある程度容易となる高さで高い回折効率ηが得られる0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲が望ましい。
【0092】
なお、ドット3の構造高さが0.15μmよりも浅い場合は、式2から可視光の波長(400〜700nm程度)の光の回折効率ηの変化に大きな影響を与えないため、特定の波長の回折光の光量を弱める効果が生じないため固有の色を表示する機能を発揮しなくなる。また、製造時の外的要因(機械や環境のコンディションの変動や材料組成のわずかな変化等)により安定して同じ品質のものを作製するのが難しくなる。0.5μmより深い場合は、細かく深い構造を精密に転写成形するのが難しくなる。
【0093】
従って、0.15μm以上且つ0.5μm以下の範囲内において、ドット3の構造高さを変えることで、干渉によって弱められる光の波長が変化する。そのため、計算機ホログラムデータ形成領域13毎に、構造高さが異なる複数のドット3によって計算機ホログラムを構成することで、白色照明光源のもとに肉眼で観察した際にはドット3の構造高さが異なる計算機ホログラムデータ形成領域13毎に異なる固有色を知覚することが可能となる。ドット3の構造高さがそれぞれ変化している複数の計算機ホログラムデータ形成領域13を設けることで多色の表示が可能となる。
【0094】
図11はドット3の構造高さがそれぞれ異なる複数の計算機ホログラムデータ形成領域13によって画像を表現する例を説明する図である。
【0095】
図11に示す表示体10は、複数の計算機ホログラムデータ形成領域13を有し、それぞれのドット3の構造深さが異なっていることから各領域13の表示色が変化しており、例えば「ひよこ」の各部位ごとに異なる表示色となる画像で表示されている。複数の計算機ホログラムデータ形成領域13はそれぞれレーザービームなどのコヒーレント光5を照射することによって隠蔽画像6を再生させることが可能となる。
【0096】
本実施形態における計算機ホログラムでは、肉眼で観察した際には白濁色の単一パターンでなく、前述するように多色で表現された画像となるので、表示体10の意匠性を向上でき、且つ、計算機ホログラムに記録されている情報を悟るのが難くなり、隠蔽性をさらに高めることが可能になる。
【0097】
ドット3の構造高さは、計算機ホログラムデータ形成領域13毎に少なくとも0.02μm以上異ならせることで認識可能な別々の色として表示させることができる。本特許の計算機ホログラムデータ形成領域13は、複数の波長の光によって固有の色を表示し、ドットの構造高さが徐々に変化することで定点に向けて射出される光の波長とその比率が徐々に変化するため、表示される色も徐々に変化していく。すなわち、計算機ホログラムデータ形成領域13毎にドット3の構造高さを0.02μm以上異ならしめることで、観察時に異なる色を認識できる計算機ホログラムデータ形成領域13を備えた計算機ホログラムを実現できる。
【0098】
各々ドット3の構造高さが異なる計算機ホログラムデータ形成領域13を画素と見なし、それらを整然と配置することで、多色から成る絵柄や文字,数字,記号等の画像を表現することが可能である。計算機ホログラムデータ形成領域13は、数十μm程度の大きさで構成することができるので、それを画素とし並べることでジャギー(ビットマップ画像の輪郭部分などに見られる画素の大きさに起因する階段状のギザギザ)が目立たない高精細な画像を表現することが可能である。特定の画像を表現することによってレーザービームなどによって再生される情報とは別に肉眼で識別可能な情報を表示体に付与することが可能になる。
【0099】
(4)他光学機能発揮領域について。
【0100】
次に、他光学機能発揮領域14について説明する。
他光学機能発揮領域14は計算機ホログラムデータ形成領域13とはその構造や光学的な性質が異なる領域である。他光学機能発揮領域14は、その構造が形成されていない平坦面であってもよい。また、他光学機能発揮領域14は表示体10に複数存在していてもよい。
【0101】
他光学機能発揮領域14に採用可能な構造としては、回折格子が挙げられる。回折格子は、回折によって虹色に輝く分光色を射出し、光源の位置や観察者の観察角度など観察条件に応じて、色や絵柄が変化する像を表示させたり、立体像を表示させたりする機能を実現させることができる。
【0102】
また、他光学機能発揮領域14に採用可能な別の構造としては、微細な凹凸構造から成る反射防止構造体が挙げられる。この反射防止構造体としては、図12の斜視図で示すような円錐状の構造20や、角錐状の構造が整然と配置されたものが典型的であり、隣接構造20は、可視光の波長以下(例えば400nm以下)のピッチで配置され、その構造の高さは300μm以上となるように高くすることにより、反射防止効果が高くなる。このように反射射防止構造体を設けることにより、入射する可視光の反射を防止もしくは低減する機能を発揮し、観察した際に黒色もしくは暗灰色等の無彩色となって見える。
【0103】
また、他光学機能発揮領域14に採用可能な更に別の構造としては、光散乱構造体が挙げられる。光散乱構造体は、図13の斜視図で示すように、大きさや形、構造の高さが異なる凹凸形状21が不規則に複数配置されたものが典型的である。この光散乱構造体に入射した光は、四方八方に乱反射し、観察した際には白色または白濁色に見える。光散乱構造体は、典型的には、幅3μm以上、高さが1μm以上のものが多く、回折格子や反射防止構造体と比較して大きい構造となる。また、その大きさや配置間隔、形状は不揃いである。そのため、光を散乱する効果が得られる。光散乱構造体は、不規則に配置された微小な凹凸形状によって光を散乱させるものであるため、従来の計算機ホログラムと目視した際の印象がよく似ている。そのため、光散乱構造体を表示体の一部に設けることで、肉眼で観察した際に、計算機ホログラムの領域と光散乱構造体の領域との区別が付きづらくなり、計算機ホログラムの隠蔽効果がさらに高まることが期待できる。
【0104】
また、他光学機能発揮領域14は凹凸構造が形成されていない平坦面であってもよい。他光学機能発揮領域14を平坦面とした場合、他光学機能発揮領域14は光反射層12によって鏡面のように見える。
【0105】
他光学機能発揮領域14と計算機ホログラムデータ形成領域13を組み合わせることによって表示体10の意匠性を向上させることができ、また偽造防止効果のさらなる向上を図ることができる。他光学機能発揮領域14には、計算機ホログラムデータ形成領域13とは異なる光学特性を発揮する前述の構造以外の構造を形成してもよい。
【0106】
(5)表示体10の使用方法について
本発明に係る表示体10は、例えば、偽造防止用ラベルとして粘着材等を介して印刷物やその他の物品に貼り付けて使用することができる。この表示体10は、微細な凹凸構造を有するドット3の構造高さを厳密に制御することによって固有の色を表示することができ、構造の高さを変えることでその色を変化可能とすることから偽造は困難である。このラベルを物品に支持させた場合、真正品であるこのラベル付き物品の偽造又は模造も困難である。
【0107】
図14は偽造防止用ラベルを物品に支持させてなるラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図15は図14に示すラベル付き物品のXV−XV線に沿った断面図である。
【0108】
図14及び図15には、ラベル付き物品の一例として、印刷物100を描いている。この印刷物100は、IC(integrated circuit)カードであって、基材50を含んでいる。基材50は、例えば、プラスチックからなる。基材50の一方の主面には凹部が設けられており、この凹部にICチップ30が嵌め込まれている。ICチップ30の表面には電極が設けられており、これら電極を介してICへの情報の書き込みやICに記録された情報の読出しが可能である。基材50上には、印刷層40が形成されている。基材50の印刷層40が形成された面には、前述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層40に貼りつけることにより、基材50に固定する。
【0109】
従って、印刷物100には、表示体10を含んでいる。それゆえ、印刷物100の同一品を偽造又は模造することは困難である。しかも、印刷物100は、表示体10に加えて、ICチップ30及び印刷層40を更に含んでいることから、それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
【0110】
なお、図14及び図15では、表示体10を含んだ印刷物100としてICカードを例示したが、表示体10を含んだ印刷物100は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物100は、磁気カード、無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードを含んだものであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物100としては、商品券及び株券などの有価証券であってもよく、真正品であることを確認させるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。さらに、表示体10を含んだ印刷物100としては、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0111】
また、図14及び図15に示す印刷物100では、基材50に印刷層40を介して表示体10を貼り付ける構成としているが、他の方法で基材50に表示体10を支持させることができる。例えば、基材50として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材50として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0112】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。すなわち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。例えば、表示体10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
【0113】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0114】
(6)表示体10の原版の作製方法について
次に、本発明に係る表示体の原版の作製方法について説明する。
表示体10の原版は、従来のレリーフ型回折格子パターンや計算機ホログラムの作製プロセスと同様に、フォトリソグラフィの工程を利用して作製することができる。電子線やレーザー等の荷電粒子ビームによって平面状の基板(ガラス基板が一般的に用いられる)に略均一に塗布された感光性レジストを露光し、現像することで所望の凹凸形状を得る。感光性レジストがポジ型レジストと呼ばれるものであれば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後溶解し、ネガ型レジストと呼ばれるものであれば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後に残り、照射されていない部分が溶解する。基板は、高精度に位置調整が可能なXYステージ上に載置され、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら荷電粒子ビームの照射位置が決定される。
【0115】
感光性レジストによる凹凸構造は脆いことから、以上のようにして得られた基板は量産用のスタンパとしては適さない。そのため得られた基板を原版として、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。電鋳とは、電鋳の対象物を所定の水溶液中に浸し、通電することで電子の還元力により、金属皮膜を形成する表面処理技術の一種である。
【0116】
このような方法を用いることで、原版の表面に設けられた微細な凹凸構造を精度良く金属版として転写成形することができる。電鋳の対象物の表面は通電可能である必要があり、一般に感光性レジストは電気を通さないので、電鋳を行う前にスパッタリングや真空蒸着等の気相堆積法により、予め構造の表面に金属薄膜が形成される。
【0117】
次いで、この金属製スタンパを母型として用いて、凹凸構造を複製する。即ち、まず、例えば、ポリカーボネート又はポリエステルからなる透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、凹凸構造を複製することができる。
【0118】
一般に、基材や形成用の樹脂材料は透明である。従って、通常、凹凸構造を設けた樹脂層(凹凸構造形成層)上には、蒸着等によりアルミニウム等の金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
【0119】
その後、以上のようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付けることにより、偽造防止対策を施した表示体を作製できる。
【0120】
また、原版の作製方法としては、フォトリソグラフィの工程だけでなく、先端が微細なダイヤモンドバイト等の切削機器による加工や、エッチングによって金属等の表面を腐食させる工程等にも採用することができる。このような方法を用いると、直接金属板の表面を加工することも可能であり、その場合、電鋳等の方法による金属製スタンパの作成を行うことなく、直接金属スタンパを得ることができる。
【0121】
基板上に塗布された感光性レジストに荷電粒子ビームを照射して凹凸形状を加工する方法では、近接効果と呼ばれる現象が発生する。近接効果とは、加工される凹凸形状の大きさや、単位面積当たりのビームが照射される面積の割合によって、形状の寸法や深さが狙いとする寸法や深さからわずかに変動してしまう現象のことである。例えば、あるエネルギー量で1mm角の面積で深さが0.1mmの凹構造が加工できる条件で、0.5mm角の面積を加工しても、0.1mmの深さが得られず、それよりやや浅い凹構造になってしまう。これは、荷電粒子ビームがレジスト内で散乱する現象が影響している。
【0122】
このような現象には、大きく分けて前方散乱と呼ばれる現象と、後方散乱と呼ばれる現象がある。前方散乱は、荷電粒子ビームがレジスト内に侵入する際に起こるもので、荷電粒子ビームが広がり、照射された面積より広い領域に荷電粒子ビームの影響を与えるものである。一方、後方散乱は、感光性レジストを通過し、感光性レジストの下面にある基板の表面もしくは裏面などで反射した荷電粒子ビームにより、感光性レジストに影響を与えるものである。これらの散乱したビームの影響はビームのエネルギー量や加工されるパターンの形状、深さによってその大小は様々である。また、この近接効果の影響は使用する感光性レジストの材料組成や塗工された膜厚によっても変化する。
【0123】
そのため、計算機ホログラムのドットを原版に形成する際には、ドットの大きさや配置ピッチ、密度などによって近接効果の影響度が変化し、狙いとする高さの構造が得られないおそれがある。ドットの構造高さによって白色照明光源のもとでの表示色が決定されるので近接効果が与える影響を考慮した上で精度よく構造を加工する必要がある。
【0124】
逆に、第三者が高精度な荷電粒子ビームを用いた加工機を用いたとしても、完全に同一な形状が形成された原版を偽造することは極めて難しく、同一の表示色を得るのは困難である。
【0125】
荷電粒子ビームを用いた加工機としては、電子線描画装置、またはレーザー直接描画装置が望ましい。これらの装置は、加工速度が速く、XYステージの位置精度等も高いため、高精度に所望の凹凸パターンを作成することが可能である。また、近接効果の影響を軽減化するため、実験結果をもとに補正をかける機能を備えたものもある。所望の表示色を得るためにはドットの構造高さの制御を厳密に行うことが必要であり、これらの装置はその要求を満たすことができる。近年の電子線描画装置やレーザー直接描画装置は装置の高性能化が進み、照射される荷電粒子ビームの安定性も高くエネルギー照射量やエネルギー密度は同一設定で略同一の値となるが、装置の使用環境(温度や湿度など)のわずかな変化や装置コンディション(長時間動作時など)の影響により変動する可能性はある。しかし、その変動量はわずかであり、同一のパターンを加工する場合、加工されるパターンの形状や深さにはほとんど変化を与えない。
【0126】
一方、切削機器による加工やエッチングを用いる方法であっても、本発明に係る表示体の原版を作製することは可能であるが、その場合、高い加工精度が要求され、且つ、適切な材料の選定が重要となる。また、切削機器による加工やエッチングは、凹凸構造形成領域の構造の作製に加え、他光学機能発揮領域14に形成可能な回折格子、微細凹凸構造による反射防止構造体、光散乱構造体などの作製も困難である。
【0127】
なお、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
1…セル型計算機ホログラム、2…セル、3…ドット、4…セル型計算機ホログラムの単位領域、5…コヒーレント光、6…再生像、10…表示体、11…光透過層、12…光反射層、13…計算機ホログラムデータ形成領域、14…他光学機能発揮領域、15…白色照明光源、16…観察者、17…赤の波長の光、18…緑の波長の光、19…青の波長の光、20…反射防止構造体、21…光散乱構造体、30…ICチップ、40…印刷層、50…基材、100…印刷物、111…光透過性の基材、112…光透過性樹脂層、d…回折格子のピッチ、DL…1次回折光、DL_r…+1次回折光(赤)、DL_g…+1次回折光(緑)、DL_b…+1次回折光(青)、GR…回折格子、IL…照明光、LS…光源、NL…法線、RL…0次回折光(正反射光)、α…入射角、β_r…波長成分Rの回折光の射出角、β_g…波長成分Gの回折光の射出角、β_b…波長成分Bの回折光の射出角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の基材と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層とを備えた表示体であって、
前記凹凸構造形成層は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備えており、
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域は、複数のセルによって構成され、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成されており、
前記ドットは、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部となる構成であり、
前記ドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定であることを特徴とする計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項2】
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域が複数個隣接配置され、これら単位領域毎のドットの前記構造高さ、前記構造深さが変化するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項3】
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域毎に少なくとも0.020μm以上異なるドットの構造高さ、構造深さとすることにより、認識可能な異なる色を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項4】
前記構造高さ、前記構造深さが変化しているドットで構成される前記各単位領域を画素とし、絵柄や文字,数字,記号等の画像情報を記録し表現していることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項5】
前記基材の一方面側に前記計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域には回折格子パターン、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一種類を施すことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項6】
偽造防止の対象となる物品に、前記請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の表示体を適宜な支持手段により支持することを特徴とするラベル付き物品。
【請求項1】
光透過性の基材と、この基材の一方面側に設けられた凹凸構造形成層と、この凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する光反射層とを備えた表示体であって、
前記凹凸構造形成層は、予め設定した情報が物体光として記録されるホログラムが持つ干渉縞を、計算機を用いて記録したフーリエ変換型計算機ホログラムが形成された単位領域を備えており、
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域は、複数のセルによって構成され、且つ、各セルの内部には略矩形状のドットが形成されており、
前記ドットは、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部状の構造、又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部状の構造、もしくは前記上面及び底面がそれぞれ前記基材面と略平行である凸凹部状をなす構造であり、且つ、その周囲の部分が前記基材面と略平行な平坦部となる構成であり、
前記ドットの構造高さ、又は構造深さは単位領域内において0.15μm以上、且つ、0.5μm以下の範囲内で略一定であることを特徴とする計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項2】
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域が複数個隣接配置され、これら単位領域毎のドットの前記構造高さ、前記構造深さが変化するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項3】
前記フーリエ変換型計算機ホログラムの単位領域毎に少なくとも0.020μm以上異なるドットの構造高さ、構造深さとすることにより、認識可能な異なる色を表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項4】
前記構造高さ、前記構造深さが変化しているドットで構成される前記各単位領域を画素とし、絵柄や文字,数字,記号等の画像情報を記録し表現していることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項5】
前記基材の一方面側に前記計算機ホログラムとは構造や光学的な性質を異にする他光学機能発揮領域が配置され、この他光学機能発揮領域には回折格子パターン、反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一種類を施すことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載の計算機ホログラムを有する表示体。
【請求項6】
偽造防止の対象となる物品に、前記請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の表示体を適宜な支持手段により支持することを特徴とするラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−20084(P2013−20084A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153156(P2011−153156)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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