説明

計量装置

【課題】応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる計量装置を提供すること。
【解決手段】計量装置1は、位置センサ83からの変位検出信号からこの変位検出信号に残存する外来振動成分をBPF103により抽出し、抽出された外来振動成分に対して位相補正部104により位相補正を行い、位相補正された外来振動成分に対して振幅補正部105により所定の感度比により振幅補正をし、これら位相補正部104および振幅補正部105により位相および振幅がそれぞれ調整された信号を、信号合成部108において、信号処理手段71が出力する秤量信号に対して、逆位相で加算または同位相で減算することにより、信号処理手段71が出力する秤量信号から外来振動成分を除去するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量して良否を判定する計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品等の生産ラインにおいては、生産ラインに組み込まれ、生産される物品が前段から順次搬入され、搬入された物品を搬送しながら計量し、後段に搬出または選別手段により生産ラインから排除する計量装置が用いられている。この種の計量装置としては、電磁平衡式秤の構成を有するものであって、秤量台と、荷重変化による秤量台の所定位置からの変位を検出する位置検出手段と、荷重に対抗する力を秤量台に与える電磁コイルと、位置検出手段からの検出信号を受け、荷重に応じた制御電圧を出力する制御電圧出力手段と、制御電圧に応じた電流で電磁コイルを駆動し、秤量台の所定位置からの変位を抑制する電流変換回路と、を備え、突発的な入力があった場合でも、電磁コイルに流れる電流を制御電圧に速やかに追従して変化させるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような計量装置は、生産ラインに組み込まれて設置されるため、他の生産設備等により起こる床振動や計量コンベアのローラやベルトによる低周期振動成分などが雑音成分として計量器の出力信号に定常的に重畳し、計量精度を悪化させる要因となっている。現状ではLPFのカットオフ周波数を低くすることにより低周波成分を除去しているが、その場合応答性の悪化により計量時間が長くなり生産能力が低下してしまうという問題があった。
【0004】
また、計量装置において、運転中、温度や物品の残渣によるゼロ点ずれを補正するため物品投入間隔に応じてゼロセットが行われるが、計量と同様に低周波成分を除去するためには十分なLPFを使用するため、ゼロセットにかかる時間が長くなり測定能力が低下し、また、物品の投入間隔が短いときにはゼロセットがされ難くなっているという問題があった。
【0005】
そこで、振動成分の逆位相成分を生成して同期センサにより周期振動を除去するようにした計量装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−268068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のような従来の計量装置にあっては、周期的な振動しか除去することができず、また、別途同期用センサが必要であるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る計量装置は、順次投入される被計量物を所定の搬送条件で秤量台上を搬送する搬送手段と、被計量物による荷重変化による前記秤量台の所定位置からの変位を検出し変位検出信号を出力する位置検出手段と、前記荷重に対向する力を前記秤量台に与える電磁コイルと、前記位置検出手段からの変位検出信号を受け、前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記電磁コイルを駆動制御する駆動制御手段と、前記電磁コイルに流れる電流値に応じた秤量信号を出力する秤量信号出力手段と、前記位置検出手段からの変位検出信号から該変位検出信号に残存する外来振動成分を抽出する抽出手段と、前記抽出された外来振動成分に対して位相補正を行う位相補正手段と、前記位相補正された外来振動成分に対して所定の感度比により振幅補正する振幅補正手段と、前記秤量信号出力手段が出力する秤量信号に対して、前記振幅補正された外来振動成分を、逆位相で加算または同位相で減算し、秤量信号から外来振動成分を除去する信号合成手段と、前記信号合成手段からの秤量信号を受け被計量物の計量値を算出する計量手段と、前記計量手段が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物の良否を判定する良否判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成により、位置検出手段からの変位検出信号から該変位検出信号に残存する外来振動成分が抽出手段により抽出され、抽出された外来振動成分に対して位相補正手段および振幅補正手段により位相および振幅の補正がそれぞれ行われ、この信号が秤量信号出力手段が出力する秤量信号に対して、信号合成手段により逆位相で加算または同位相で減算し秤量信号から外来振動成分が除去される。このため、秤量信号を取得すると同時に外来振動成分の抽出が行われるので、従来のように外来振動成分の算出のために遅延時間が生じることがなく、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去することができる。また、秤量信号を取得すると同時に外来振動成分の抽出が行われるので、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる。
【0011】
したがって、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる。
【0012】
また、本発明に係る計量装置は、前記振幅補正手段が用いる感度比を予め複数記憶する感度比記憶手段と、前記秤量台上に被計量物がないときに、前記信号合成手段からの秤量信号を受け、前記感度比記憶手段が複数記憶する感度比のうち前記信号合成手段からの秤量信号に残存する外来振動成分が最も少なくなる感度比を選択し前記振幅補正手段に設定および更新する感度比設定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成により、最適な感度比が感度比設定手段により感度比記憶手段から選択されて振幅補正手段に設定されるので、信号合成手段からの秤量信号に残存する外来振動成分を最小化することができる。
【0014】
また、本発明に係る計量装置は、前記抽出手段、前記位相補正手段、前記振幅補正手段が、互いに異なる複数の帯域毎にそれぞれ複数設けられることを特徴とする。
【0015】
この構成により、帯域の異なる複数の外来振動成分を信号合成手段により除去することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る計量装置の概要を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る計量装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る計量装置の搬送部を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る計量装置の秤量手段および制御手段の要部を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る計量装置の秤量手段および制御手段の要部の好適な例を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の一実施の形態に係る計量装置の被計量物通過時の秤量手段の荷重変化および外来振動成分を示す図であり、(b)は、秤量信号および外来振動成分を示す図であり、(c)は、抽出された外来振動成分を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る計量装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図4は、本発明に係る計量装置の一実施の形態を示している。
【0020】
図1〜図4に示すように、計量装置1は、装置本体部2と、搬送部3と、搬入センサ4とを備えて構成されている。また、計量装置1の後段には選別部5が接続されている。
【0021】
計量装置1は、生産ラインの一部を構成するベルトコンベア14の下流側に設置されており、所定の間隔で矢印A方向に順次搬入されてくる肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物Wの重量を測定し、得られた測定値を測定結果として出力するようになっている。さらに、予め設定された重量の上限および下限の基準値とそれぞれ比較し、得られた測定値が基準値の範囲内にあるか否かを判定して範囲内のものを良品とし、範囲外のものを不良品として良否判定したり、複数の基準値に対応して重量ランク判定をするようになっていてもよい。また、測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果は、表示手段10に表示されるとともに、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力されるようになっている。選別部5では、計量装置1が出力した測定結果、良否判定結果や重量ランク判定結果に応じて被計量物Wを振り分けるようになっている。
【0022】
装置本体部2は、秤量手段21と、総合制御部7と、表示手段10と、設定手段11と、これらの各部を収納する収納筐体2aとにより構成されている。
【0023】
搬送部3は、ベルトコンベア14から矢印A方向に搬入されてくる被計量物Wを所定の搬送条件により搬送するようになっている。被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32によりさらに搬送され、搬送されている間に重量が秤量手段21により計量されるようになっている。秤量コンベア32は、被計量物を所定の搬送条件により搬送するようになっている。また、被計量物Wは、計量の後にさらに後段の選別部5に搬送され、振り分けられるようになっている。
【0024】
搬送部3は、助走コンベア31および秤量コンベア32により構成されている。助走コンベア31は、前段のベルトコンベア14から搬送されてきた被計量物Wが秤量コンベア32に移動する前に、被計量物Wの助走を行うものであり、2つのローラ31a、31cと、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト31bとにより構成されている。秤量コンベア32は、被計量物Wの計量を行う秤量手段21の上部に支持されており、2つのローラ32a、32cとこれらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルト32bとにより構成されている。
【0025】
搬入センサ4は、一対の投光部4aおよび受光部4bからなる透過形光電センサで構成されており、助走コンベア31と秤量コンベア32との間に配置されている。具体的には、投光部4aは、搬送ベルト32bの装置本体部2側に配置され、受光部4bは、搬送ベルト32bの他の側面側で投光部4aに対向するように配置されており、被計量物Wが投光部4aおよび受光部4bの間を通過すると被計量物Wにより受光部4bが遮光されるので被計量物Wの搬入が開始されたことが検出されるようになっている。検出された搬入開始の信号は、装置本体部2内の総合制御部7に出力されるようになっている。
【0026】
秤量手段21は、秤量コンベア32を支持し被計量物Wの荷重に基づいて秤量信号を出力する荷重センサであり、電磁平衡式秤の構成を有し、被計量物Wが秤量コンベア32で搬送されている間に、秤量手段21に加わる荷重を測定するようになっている。
【0027】
具体的には、秤量手段21は、図4に示すように、秤量コンベア32とともに上下する吊り板85と、吊り板85を懸架する平行バネ86と、一端が吊り板85に固定されたさお82と、さお82を支持する支点81と、さお82の他端の位置を検出して変位検出信号を出力する位置センサ83と、さお82の他端に力を作用させる磁石88付きの電磁コイル84と、電磁コイル84を駆動するコイル印加部92と、位置センサ83からの変位検出信号に基づいてさお82が平衡を保つようPID制御等のサーボ制御によりコイル印加部92を制御するサーボ制御部91と、を備えている。なお、平行バネ86は、その一端側は吊り板85に固定されているが、他端側は支点81および電磁コイル84との共通基台87に固定されており、ロバーバル機構を構成している。
【0028】
秤量手段21としての電磁平衡式秤においては、無負荷時にさお82の平衡をとっておき、被計量物Wが秤量コンベア32に載ると支点81回りのバランスが崩れて、さお82が図中右上がりに傾こうとするが、この傾きを位置センサ83により検出し、傾きをゼロとするように電磁コイル84に電流を流すことにより、この電流は被計量物Wの重量に比例するので、重量値にグラム換算することができるようになっている。すなわち、被計量物Wの質量による負荷と、磁石88と電磁コイル84に流す電流で発生する力を平衡させ、このとき電磁コイル84に流れる電流値を被検査物Wの重量として測定している。
【0029】
総合制御部7は、信号処理手段71、計量手段72、記憶手段73、制御手段74、良否判定手段76、モード切替手段77を備えている。
【0030】
信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号を受け所定の信号処理条件に基づいて信号処理して信号処理済の秤量信号を出力するようになっていて、アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換器を備えている。具体的には、信号処理手段71は、秤量手段21からの秤量信号に対して、種類や特性の異なる複数のローパスフィルタから選択したフィルタを用いて、秤量信号の低周波成分のみを信号処理済の秤量信号として通過させるようになっている。なお、信号処理手段71が選択するローパスフィルタは、1つの場合、または、複数を組み合わせたものの場合がある。このローパスフィルタとしては、FIR(Finite Impulse Response)フィルタと、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタとがある。ここで、FIRフィルタは、インパルス応答波形が入力された場合に、ある決まった時間(有限時間)だけ出力を出す有限インパルス応答フィルタであり、IIRフィルタは、無限にインパルス応答波形の減衰波形を出力する無限インパルス応答フィルタである。
【0031】
ここで、FIRフィルタは、A/D変換器によりディジタル信号に変換された秤量信号に対して、所定の低周波成分を通過するローパスフィルタを構成し、単純平均化処理や高知の窓関数を用いた重み付け平均化処理を行うようになっている。IIRフィルタは、スイッチトキャパシタフィルタのように特性変更が可能なハードウェアを用いて秤量手段21からの秤量信号(アナログ秤量信号)を直接受けて処理済信号をA/D変換器に出力するアナログフィルタで構成してもよいし、A/D変換器からのデジタル秤量信号(図示せず)を受けるデジタルフィルタで構成してもよい。
【0032】
信号処理手段71は、具体的には、図4に示すように、秤量手段21の電磁コイル84に流れる電流を検出するために電磁コイル84に直列に接続された電流検出抵抗93と、検出された信号を増幅する増幅器94と、増幅された信号をデジタル変換するA/D変換器96と、デジタル変換された信号をフィルタ処理するフィルタ97と、を備えている。
【0033】
計量手段72は、信号処理手段71が出力する信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)するようになっている。また、計量手段72においては、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから所定の基準時間Tkが経過し、秤量手段21から秤量信号が出力された被計量物Wに対して、計量値を算出するようになっている。計量手段72により算出された個々の重量は、記憶手段73に算出データとして記憶されるようになっている。
【0034】
計量手段72は、搬入センサ4によって被計量物Wが秤量コンベア32に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。ここで、基準時間Tkは、搬入センサ4で被計量物Wが秤量コンベア32に搬入を開始したことを検出してから、被計量物Wが秤量コンベア32に完全に乗り移り、さらに秤量手段21から出力された秤量信号が安定するまでに必要な時間を意味する。具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア32の速度(m/min)、秤量コンベア32の矢印B方向の長さ(mm)および被計量物Wの搬送方向である矢印B方向の長さ(mm)、被計量物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、図3に示すように、基準時間Tkが経過すると、被計量物Wは、搬入開始検出位置PからLだけ移動して質量測定位置Pに到達し、計量が行われる。
【0035】
なお、計量手段72においては、被計量物Wの品種(特に、サイズ)に応じて、その測定範囲、測定能力および検査精度などの検査条件(パラメータ)が選択されるようになっており、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が6g〜600g、測定能力が最大150個/minで選択されるようになっている。この場合、被計量物Wの1個当たりの基準時間Tkは、最小400msecに設定されていることになり、基準時間Tkは400msec以上であればよいが、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産その他の条件により設定されるようになっている。基準時間Tkは、400msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まることになる。
【0036】
また、被計量物Wの品種に応じて、例えば、測定範囲が1g〜300g、測定能力が最大600個/minで選択されるようになっている。測定能力が最大600個/minであると、被計量物Wの1個当たりの測定時間は最小100msecに設定されていることになり、被計量物Wのサイズ、ラインの処理能力、生産やその他の条件により設定されるようになっている。この基準時間Tkは、100msecに近いほど短時間で測定されるので検査効率は高まり、遠くなるほど検査時間はかかるが、秤量コンベア32上を安定して搬送されるようになるから計量精度は高まる。このように、計量手段72においては、被計量物Wの品種に応じて、その範囲、能力などの検査条件(パラメータ)が選択される。
【0037】
記憶手段73は、記憶媒体などから構成されており、秤量コンベア32による被計量物Wの所定の搬送条件、および信号処理手段71における所定の信号処理条件を含む条件パラメータを被計量物Wの品種に対応させて記憶するようになっている。記憶手段73には、被計量物Wの品種毎に付された各品種番号に対応して、搬送速度、LPF(Low Pass Filter)特性が記憶されている。また、記憶手段73には、被計量物Wの良否を判定するための良品範囲が記憶されている。搬送速度は、被計量物Wを搬送する搬送部3の速度であり、LPF特性は、どのような特性のローパスフィルタであるかを示すものであり、良品範囲とは、良品と判定される被計量物Wの重量の範囲である。これらの記憶情報は、設定手段11からの設定操作または外部機器との接続により予め記憶されるようになっている。記憶手段73は、計量値、良品判定結果等の種々のデータを記憶するようになっている。
【0038】
制御手段74は、被計量物Wの品種に応じて記憶手段73から所定の搬送条件および所定の信号処理条件を読み出して秤量コンベア32および信号処理手段71をそれぞれ制御するようになっている。また、記憶手段73に記憶している複数の品種に対応する条件パラメータを順次切り替えて搬送部3および信号処理手段71を制御するようになっている。また、制御手段74は、図示しないモータの回転速度(rpm)を駆動制御して、搬送部3による被計量物Wの搬送速度を制御するようになっている。
【0039】
良否判定手段76は、被計量物Wの良否を判定するものであり、判定回路などから構成され、計量手段72が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物Wの良否を判定するようになっている。具体的には、良否判定手段76は、計量手段72から出力された被計量物Wの重量信号を受けると、記憶手段73に予め記憶されている重量の上限値Gaおよび下限値Gbを読み出し、算出した被計量物Wの重量と上限値Gaおよび下限値Gbとをそれぞれ比較し、上限値Gaおよび下限値Gbで決定される重量の許容範囲内に被計量物Wの重量が入っているか否かを判定するようになっている。
【0040】
良否判定手段76において判定された判定結果は、表示手段10に出力され、良品または不良品として表示されるようになっている。また、判定結果は、計量装置1の後段に接続された選別部5に出力され、被計量物Wが良品または不良品として選別されるようになっている。さらに、この判定結果は、記憶手段73に出力され、各被計量物Wについての判定結果が記憶されるようになっている。
【0041】
モード切替手段77は、制御手段74に指令を出し、計量装置1の動作モードを、運転モードと設定モードとの間で切り替えるものである。ここで、運転モードとは、計量装置1が被計量物Wの計量、重量の算出および良否判定を行う通常の動作モードのことであり、設定モードとは、運転モードの動作のための各種パラメータの設定をしたり、運転モードの動作を正常に行うことができるか否かの動作確認のための動作モードである。モード切替手段77は、設定手段11からの入力操作に応じて動作モードを設定モードに切り替えたり、または、装置の運転開始時に動作モードを設定モードに切り替えるようになっている。
【0042】
また、総合制御部7は、BPF103、位相補正部104、振幅補正部105、信号合成部108を備えている。
【0043】
BPF103は、位置センサ83からの変位検出信号からこの変位検出信号に残存する外来振動成分を抽出するものであり、帯域通過フィルタ(Band Pass Filter)から構成されている。なお、位置センサ83からの変位検出信号には、サーボ制御部91の制御性能の限界等により残存するため、位置センサ83の出力信号から振動成分を検出することが可能となっている。
【0044】
位相補正部104は、BPF103により抽出された外来振動成分に対して位相補正を行うようになっている。秤量信号と位置センサ83の出力信号との間にはサーボ制御により位相差が生じているため、位相補正部104は、振動成分の帯域におけるサーボ制御の位相特性を考慮して、変位検出信号から抽出した外来振動成分の位相補正を行っている。
【0045】
振幅補正部105は、位相補正部104により位相補正された外来振動成分に対して所定の感度比により振幅補正をするようになっている。このように、位相補正部104および振幅補正部105は、後段の信号合成部108において信号処理手段71からの秤量信号に含まれる外来振動成分を除去するための信号の位相および振幅をそれぞれ調整するようになっている。
【0046】
信号合成部108は、信号処理手段71が出力する秤量信号に対して、振幅補正部105により振幅補正された外来振動成分を、逆位相で加算または同位相で減算することにより、信号処理手段71が出力する秤量信号から外来振動成分を除去するようになっている。
【0047】
また、総合制御部7は、図4に示すように、振幅補正部105が用いる感度比を予め複数記憶する感度比記憶部107と、信号合成部108からの秤量信号を受け、感度比記憶部107が複数記憶する感度比のうち信号合成部108からの秤量信号に残存する外来振動成分が最も少なくなる感度比を選択し振幅補正部105に設定および更新する感度比設定部106とを備えている。感度比設定部106は、秤量コンベア32上に被計量物Wがないときに、振幅補正部105の感度比を設定および更新するようになっている。秤量コンベア32上の被計量物Wの有無の判別は、例えば、搬入センサ4からの検知信号、秤量手段21からの秤量信号、または、位置センサ83からの変位検出信号に基づいて行われる。
【0048】
なお、図4では、BPF103、位相補正部104、振幅補正部105がそれぞれ1つずつ設けられているが、図5に示すように、BPF103、位相補正部104、振幅補正部105が、高帯域用、中帯域用、低帯域用等、互いに異なる複数の帯域毎にそれぞれ複数設けられるように構成すると、帯域の異なる複数の外来振動成分を信号合成部108により除去することができ好適である。
【0049】
表示手段10は、図1に示すように、装置本体部2の搬送部3側の上端部に設けられ、液晶ディスプレイなどの表示デバイスで構成される。表示手段10は、計量装置1の動作モードが運転モードのときにおいては、計量装置1の動作状態、被計量物Wの計量値、良否判定結果を表示し、計量装置1の動作モードが設定モードのときにおいては、パラメータの設定や動作確認に関する表示をするようになっている。なお、表示手段10は、表示された数字、文字などがタッチ操作により入力されるタッチパネルとして構成し、設定手段11と一体化した構成にしてもよい。
【0050】
選別部5は、計量装置1の後段に接続されており、選別機構部5aおよび搬送ベルト5bにより構成されている。選別機構部5aは、例えば、押し出し型の選別機構により構成されている。選別機構部5aは、良品と不良品とを選別できるものであればよく、フリッパ機構、ドロップアウト機構、エアジェット機構などの選別機構で構成してもよい。選別機構部5aは、上流の秤量コンベア32から搬送される被計量物Wが搬送ベルト5bで矢印B方向に搬送されている間に、不良品と判定された被計量物Wに対して搬送ベルト5bの側面方向への押し出しやジェットエアの吹き付けを行うようになっており、不良の被計量物Wを搬送ベルト5b上から排出し、良品の被計量物Wと区別することにより選別を行っている。また、搬送ベルト5bは、ローラ5cおよびローラ5cに対向して配置されるローラ(不図示)と、これらのローラに巻き付けられている無端状の搬送ベルトとして構成されており、測定を終了した被計量物Wを所定の速度で下流側に搬送するようになっている。
【0051】
次に、本実施の形態に係る計量装置1の動作を説明する。
【0052】
被計量物Wは、助走コンベア31により測定するのに最適な速度になるよう加速または減速されて搬送され、秤量コンベア32により搬送されている間にその重量が秤量手段21により秤量される。秤量手段21からの秤量信号は信号処理手段71により所定の信号処理条件に基づいて信号処理されて信号処理済の秤量信号となり、計量手段72は、この信号処理済の秤量信号に基づいて被計量物Wの計量値を算出(グラム換算)する。ここで、秤量コンベア32に加わる荷重は、図6(a)に示すように、被計量物Wによる荷重Laと、他の生産設備等により起こる床振動やベルトコンベア14のローラやベルトによる外来振動による荷重Lbとが混ざったものとなる。また、秤量手段21からの秤量信号は、図6(b)に示すように、被計量物Wによる荷重Laの変化に応じた信号Saと、外来振動による荷重Lbに応じた信号Sbとが混ざったものとなる。このため、仮に、秤量手段21からの秤量信号に基づいて計量手段72で被計量物Wの計量値を算出すると、その計量値は誤差を含んだものとなってしまう。
【0053】
そこで、本実施の形態の計量装置1では、位置センサ83からの変位検出信号からこの変位検出信号に残存する外来振動成分をBPF103により抽出し、抽出された外来振動成分に対して位相補正部104により位相補正を行い、位相補正された外来振動成分に対して振幅補正部105により所定の感度比により振幅補正をし、これら位相補正部104および振幅補正部105により位相および振幅がそれぞれ調整された信号を、信号合成部108において、信号処理手段71が出力する秤量信号に対して、逆位相で加算または同位相で減算することにより、信号処理手段71が出力する秤量信号から外来振動成分を除去する。ここで、図6(c)において、信号Sbは、BPF103により抽出された外来振動成分を示し、信号Sb´は、位相補正部104、振幅補正部105により位相および振幅が調整された信号を示している。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態に係る計量装置1は、位置センサ83からの変位検出信号からこの変位検出信号に残存する外来振動成分をBPF103により抽出し、抽出された外来振動成分に対して位相補正部104により位相補正を行い、位相補正された外来振動成分に対して振幅補正部105により所定の感度比により振幅補正をし、これら位相補正部104および振幅補正部105により位相および振幅がそれぞれ調整された信号を、信号合成部108において、信号処理手段71が出力する秤量信号に対して、逆位相で加算または同位相で減算することにより、信号処理手段71が出力する秤量信号から外来振動成分を除去するよう構成されている。
【0055】
この構成により、位置センサ83からの変位検出信号からこの変位検出信号に残存する外来振動成分がBPF103により抽出され、抽出された外来振動成分に対して位相補正部104および振幅補正部105により位相および振幅の補正がそれぞれ行われ、この信号が信号処理手段71が出力する秤量信号に対して、信号合成部108により逆位相で加算または同位相で減算し秤量信号から外来振動成分が除去される。このため、秤量信号を取得すると同時に外来振動成分の抽出が行われるので、従来のように外来振動成分の算出のために遅延時間が生じることがなく、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去することができる。また、秤量信号を取得すると同時に外来振動成分の抽出が行われるので、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる。
【0056】
したがって、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る計量装置1は、振幅補正部105が用いる感度比を予め複数記憶する感度比記憶部107と、秤量コンベア32上に被計量物Wがないときに、信号合成部108からの秤量信号を受け、感度比記憶部107が複数記憶する感度比のうち信号合成部108からの秤量信号に残存する外来振動成分が最も少なくなる感度比を選択し振幅補正部105に設定および更新する感度比設定部106と、を備えたことを特徴とする。
【0058】
この構成により、最適な感度比が感度比設定部106により感度比記憶部107から選択されて振幅補正部105に設定されるので、信号合成部108からの秤量信号に残存する外来振動成分を最小化することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る計量装置1では、BPF103、位相補正部104、振幅補正部105が、互いに異なる複数の帯域毎にそれぞれ複数設けられることを特徴とする。
【0060】
この構成により、帯域の異なる複数の外来振動成分を信号合成部108により除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る計量装置は、応答性に影響を与えず低周波振動成分を除去できるとともに、高速に精度良く計量およびゼロセットすることができるという効果を有し、肉、魚、加工食品、医薬品などの被計量物を計量して良否を判定する計量装置として有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 計量装置
3 搬送部(搬送手段)
7 総合制御部
14 ベルトコンベア(搬送手段)
21 秤量手段
32 秤量コンベア(秤量台)
71 信号処理手段(秤量信号出力手段)
72 計量手段
73 記憶手段
74 制御手段
76 良否判定手段
77 モード切替手段
81 支点
82 さお
83 位置センサ(位置検出手段)
84 電磁コイル
85 吊り板
86 平行バネ
87 共通基台
88 磁石
91 サーボ制御部(駆動制御手段)
92 コイル印加部(駆動制御手段)
93 電流検出抵抗
94 増幅器
96 A/D変換器
97 フィルタ
101 増幅器
102 A/D変換器
103 BPF(抽出手段)
104 位相補正部(位相補正手段)
105 振幅補正部(振幅補正手段)
106 感度比設定部(感度比設定手段)
107 感度比記憶部(感度比記憶手段)
108 信号合成部(信号合成手段)
W 被計量物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次投入される被計量物(W)を所定の搬送条件で秤量台(32)上を搬送する搬送手段(14)と、
被計量物による荷重変化による前記秤量台の所定位置からの変位を検出し変位検出信号を出力する位置検出手段(83)と、
前記荷重に対向する力を前記秤量台に与える電磁コイル(84)と、
前記位置検出手段からの変位検出信号を受け、前記秤量台の所定位置からの変位を抑制するよう前記電磁コイルを駆動制御する駆動制御手段(91、92)と、
前記電磁コイルに流れる電流値に応じた秤量信号を出力する秤量信号出力手段(71)と、
前記位置検出手段からの変位検出信号から該変位検出信号に残存する外来振動成分を抽出する抽出手段(103)と、
前記抽出された外来振動成分に対して位相補正を行う位相補正手段(104)と、
前記位相補正された外来振動成分に対して所定の感度比により振幅補正する振幅補正手段(105)と、
前記秤量信号出力手段が出力する秤量信号に対して、前記振幅補正された外来振動成分を、逆位相で加算または同位相で減算し、秤量信号から外来振動成分を除去する信号合成手段(108)と、
前記信号合成手段からの秤量信号を受け被計量物の計量値を算出する計量手段(72)と、
前記計量手段が算出した計量値と良否判定基準とを比較して被計量物の良否を判定する良否判定手段(76)と、を備えたことを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記振幅補正手段が用いる感度比を予め複数記憶する感度比記憶手段(107)と、
前記秤量台上に被計量物がないときに、前記信号合成手段からの秤量信号を受け、前記感度比記憶手段が複数記憶する感度比のうち前記信号合成手段からの秤量信号に残存する外来振動成分が最も少なくなる感度比を選択し前記振幅補正手段に設定および更新する感度比設定手段(106)と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記抽出手段、前記位相補正手段、前記振幅補正手段が、互いに異なる複数の帯域毎にそれぞれ複数設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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